JP4632514B2 - 配線基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体素子収納パッケージなどに用いられる半導体素子を実装搭載するのに適した配線基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
多層配線基板や半導体素子収納用パッケージなどに使用される配線基板は、各種電子機器の高性能化に伴って、今後益々高密度化が進み、配線幅や配線ピッチを50μm以下にすることが要求されており、ICチップの実装方法もワイヤーボンディングからフリップチップと代わるため、基板自体の平坦度(基板の歪や表面粗さ)を小さくする必要が生じている。
【0003】
絶縁基板が有機樹脂を含有する絶縁材料からなる樹脂製配線基板は、一般に、銅箔等の金属箔を絶縁基板上に貼り付け、次いで金属箔の不要な部分をエッチング法やメッキ法により除去して回路パターンを形成する手段により金属回路層を形成するものである。
【0004】
多層化にあたっては、表面金属回路層の形成により絶縁基板上に凸部が形成されるために平坦度も低く、フリップチップ実装に要求される平坦度を満足するに至っていない。
【0005】
また、配線基板の高密度配線化に伴い、配線の多層化が求められており、従来のような配線基板の表面から裏面まで貫通するスルーホール導体に替えて、任意の箇所で所定の金属回路層間を電気的に接続するために、ビアホール導体をインタースティシャルビアホール(IVH)にする必要が生じている。従来の多層配線基板の製造方法ではIVHを形成するのに逐次積層によらねばならず、工程が複雑になるため、歩留まりが低くコストダウンができない等の問題がある。
【0006】
そこで、本発明者らは、樹脂フィルムに金属箔を接着し、それをエッチング法、メッキ法で金属回路層を形成し、これを予めビアホール導体を形成した軟質の絶縁シートの表面に転写し、それらの絶縁シートを積層して一括硬化する配線基板の製造方法を提案した。この方法は、ビアホール導体をあらゆる場所に形成することができるとともに、金属回路層の転写にあたり、絶縁シートが軟質であるために、金属回路層を絶縁シートの表面に埋設でき、金属回路層の厚みを無視できる結果、多層化した場合においても平坦性に優れるというメリットがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図2に示すように、多層配線基板を作製する場合、絶縁基板21の表面や内部の金属回路層として、微細な回路パターンの金属回路層22aとともに線幅が広い回路パターンのグランド層やノイズ対策用のシールド層などの比較的面積の広い回路パターンの金属回路層22bが形成された場合、この回路パターンの金属回路層22bを完全に絶縁シート21の表面に埋設することは非常に難しく、金属回路層21の厚みを無視できない場合がある。特に、図2(b)のように、そのような広い金属回路層22bが配線基板内に部分的に形成された場合、その部分のみが、他の部分に比較して全体厚さが厚くなってしまい、その結果、配線基板の表面にうねりや段差が発生するという問題があった。そのために、半導体素子をフリップチップ実装する場合等において、実装不良が発生しやくなるという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、幅広い回路パターンを有する配線基板においても、表面の平坦度が優れた配線基板とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、有機樹脂を含有する複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板と、前記絶縁層の表面に埋設された金属回路層と、所定の金属回路層間を電気的に接続するために前記絶縁層に形成されたビアホール導体とを具備する配線基板であって、前記金属回路層が埋設されている前記絶縁層のうち前記金属回路層が形成された領域の前記絶縁層内に、電気的接続に寄与せず、少なくとも一端が前記金属回路層によって閉塞された貫通孔を具備することを特徴とする。
【0010】
かかる配線基板は、a)有機樹脂を含有する絶縁シートに、ビアホール導体用貫通孔を形成する工程と、b)ビアホール導体用貫通孔に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成する工程と、c)ビアホール導体が形成された前記絶縁シートの表面または両面に、金属回路層を埋設する工程と、d)a)〜c)を経て作製された複数の前記絶縁シートを積層一体化する工程と、を具備する配線基板の製造方法において、前記a)工程と同時またはb)またはc)工程の前に、e)前記金属回路層が形成される領域の前記絶縁シート内に、電気的接続に寄与しない貫通孔を形成する工程を具備する。
【0011】
なお、上記の配線基板およびその製造方法においては、前記貫通孔が、単位面積あたり金属回路層の占有面積率が30%以上の領域に形成されてなることが平坦性向上の効果を発揮する上で望ましい。また、前記電気的接続に寄与しない貫通孔はビアホール導体からビアホール導体の直径の3倍以上離間した位置に形成されていることがビアホール導体に悪影響を及ぼさない。さらには前記電気的接続に寄与しない貫通孔内には、絶縁層中の有機樹脂が流動して存在していることが望ましい。
【0012】
即ち、本発明によれば、面積の大きい金属回路層を形成した領域の絶縁シート内に貫通孔を形成しておくことによって、積層時に絶縁層の剛性を低下させることができると同時に、積層して加熱加圧時に貫通孔に面積の大きい金属回路層の絶縁シートへの埋め込み量に相当する有機樹脂が貫通孔内に流動し、面積の大きい金属回路層の絶縁シートへの埋め込みを促進させることができる結果、微細パターンの金属回路層が形成され、またビアホール導体が形成された他の領域と同様に金属回路層を絶縁シート表面に埋め込むことができる。その結果、面積の大きい金属回路層が形成された領域と、それ以外の領域との間で段差やうねりなどが発生することがなく、配線基板表面の平坦性を高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の配線基板の製造方法について図1の工程図をもとに説明する。
(a)まず、絶縁シート1にビアホール導体用貫通孔2を形成する。絶縁シート1は、例えば、無機質フィラーに液状の有機樹脂を加えた組成物を混練機(ニーダ)や3本ロール等の手段によって十分に混合してスラリーを調製する。その後、その混合物を圧延法、押し出し法、射出法、ドクターブレード法によってシート状に成形して絶縁シート1を作製する。この時、絶縁シート1を半硬化させることによって取り扱いを容易にすることができる。
【0014】
絶縁性スラリーは、好適には、絶縁シートを構成する前述したような有機樹脂と無機フィラーの複合材料に、トルエン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メタノール、メチルセロソルブアセテート、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアシド等の溶媒を添加して所定の粘度を有する流動体からなる。かかる観点から、スラリーの粘度は、形成方法にもよるが100〜3000ポイズが適当である。
【0015】
半硬化には、有機樹脂は熱可塑性樹脂の場合には、加熱下で混合したものを冷却し、熱硬化性樹脂の場合には、完全固化するに十分な温度よりもやや低い温度に加熱すればよい。また、織布、不織布を用いる場合には、織布、不織布等の繊維にワニス状の樹脂を含浸、乾燥させ半硬化のプリプレグを作製することもできる。
【0016】
また、貫通孔2の形成は、レーザー、ドリル、パンチング等公知の方法によって形成できる。
(b)次に、上記絶縁シートのビアホール導体用貫通孔2に対して導体ペーストを充填してビアホール導体3を形成する。導体ペーストは、金属粉末と有機溶剤とバインダーを添加して得ることができる。導体ペースト中に配合される金属粉末としては、銅、アルミニウム、銀、金のうち少なくとも1種の低抵抗金属からなることが望ましく、さらには半田、Snなどの低融点金属を配合することもできる。
(c)次に、この半硬化状の絶縁シート1に金属回路層4を形成する。金属回路層4の形成は、銅等の金属箔を絶縁シートに接着剤で張りつけた後に、回路パターンのレジストを形成して酸等によって非レジスト領域の金属をエッチング除去しレジストを除去する方法、フィルム、ガラス、金属板などの転写シート表面にメッキ法や金属箔を接着し、これをエッチングにより金属回路層を形成し、その後、転写シートを絶縁シート上に加圧しながら金属回路層を転写する方法、などが採用される。このうち、後者は、金属回路層の形成を別工程で行なうことができるとともに、絶縁シートをエッチングなどの薬剤と接触させる必要がない、絶縁シートが軟質である場合、金属回路層を表面に埋設できるために、基板の平坦性を向上できる、などの理由から望ましい。
【0017】
そこで、この転写法による金属回路層4の形成は、図1(c−1)に示すように、例えば、樹脂フィルムからなる転写シート4の表面に接着剤を介して銅、金、銀、アルミニウム等から選ばれる少なくとも1種、または2種以上の合金からなる金属箔を貼り合せたものに対して、レジスト形成、エッチングによる不要部分の除去、レジスト除去の工程を経て所定の回路パターンの金属回路層4を形成することができる。
【0018】
そして、金属回路層4を付設した転写シート5を、ビアホール導体3を形成した絶縁シート1に位置合わせして積層し、10〜500kg/cm2程度の圧力で印加した後、転写シート5を接着層(不図示)とともに剥離することにより金属回路層4を絶縁シート1の表面に転写することができる(図1(c−2))。
(d)そして、上記(a)〜(c)を経て作製された複数の配線板x1〜x3を位置合わせして積層した後、一括して熱硬化することによって多層構造の配線板を作製することができる(図1(e))。
【0019】
上記の配線基板の製造方法によれば、(d)工程において、絶縁シート1が半硬化状態であれば、上記機械的圧力によって金属回路層4を絶縁シート1の表面に埋め込むことができ、金属回路層4の厚みを無視でき、基板の平坦性を高めることができる。
【0020】
しかしながら、金属回路層4において、グランド層や電磁波遮蔽用導体層などはその面積が非常に広い金属回路層4aが存在すると、それらを形成した部分では、絶縁シート1の表面に埋め込むことができず基板の表面に段差やうねりが発生する。
【0021】
そこで、本発明によれば、このようなグランド層や電磁波遮蔽用導体層などの金属回路層4aが形成された部分の絶縁シート1に電気的接続に寄与しない貫通孔6を形成することによって絶縁シート1の剛性を低めるとともに、絶縁シート中の樹脂を貫通孔に流動させることによって面積の大きい金属回路層の埋め込みを助長することができ、これによって、一括積層する場合においてもグランド層や電磁波遮蔽用導体層などが形成されていない部分における積層体の収縮(特に厚み方向の収縮)に対して、グランド層や電磁波遮蔽用導体層などが形成されていない部分の収縮を同調させることができる結果、配線基板の表面における段差やうねりなどの発生を防止することができる。
【0022】
このような電気的接続に寄与しない貫通孔6は、絶縁シートの表面から裏面で完全に貫通した孔以外に、一方の表面から貫通していない非貫通孔であっても同様な効果を発揮できる。以下、総称して「貫通孔」と称する
【0023】
この電気的接続に寄与しない貫通孔6の形成は、上記の一連の製造方法において、前記a)工程乃至)工程のいずれかの工程の前あるいはa)工程と同時にe)e)金属回路層が形成される領域の絶縁層内に、電気的接続に寄与しない貫通孔を形成する工程を具備することが大きな特徴である。
【0024】
例えば、ビアホール導体用貫通孔の形成と同時またはその前後に行なう場合について以下に説明する。
【0025】
まず、絶縁シート1に対して(a)工程と同様にして複数の貫通孔を形成するが、貫通孔の一部または全部は、信号が伝達される金属回路層間の電気的接続を行なうビアホール導体を形成するための貫通孔2であるが、本発明に基づき、電気的接続を行わない貫通孔6を同時に加工する。
【0026】
電気的接続に寄与しない貫通孔6の位置は、厳密には試行錯誤により定める必要があるが、形成する貫通孔の直径の3〜10倍の面積領域の中心部に1個の貫通孔を形成することが適当である。
【0027】
なお、この貫通孔の近傍に電気的接続を行うビアホール導体が存在すると、電気的接続を行わない貫通孔の近傍で絶縁シート中の有機樹脂の流動が起こるため、ビアホール導体の導電性ペーストが流動し電気的接続が正常に行われない場合があることから、貫通孔は、ビアホール導体の直径から3倍以上離して配置することが望ましい。
【0028】
そして、(b)ペースト充填工程では、電気的接続を行う貫通孔2にのみ導電性ペーストを充填することが必要となるが、導電性ペースト充填時にマスクを使用して、電気的接続を行わない貫通孔6形成部分を覆っておけば良い。また、貫通孔形成前に絶縁シートの表面に微粘着性フィルムを貼りこれをマスクとして使用することもできる。この場合、フィルムを貼った状態でビアホール導体形成部分に貫通孔2を加工し、その貫通孔2に導電性ペーストを充填した後に、(b)金属回路層4を形成する工程の前に、電気的接続を行なわない貫通孔6を加工して用いることができる。
【0029】
そして、上記のようにして、ビアホール導体3と電気的接続に寄与しない貫通孔6を有する絶縁シート1に対して、上記(c)金属回路層4形成、(d)積層一体化の工程を経て本発明の多層化された配線基板を作製することができる。
【0030】
また、電気的接続に寄与しない貫通孔6を形成する工程を、(c)金属回路層4が形成された絶縁シート1に対して行なうこともできる。その場合には、絶縁シート1の片方に金属回路層4が形成された部分に、金属回路層4が形成されていない表面から、レーザーやドリルによって穿孔することによって、貫通孔6を形成することができる。
【0031】
また、本発明によれば、上記の貫通孔6は、絶縁シート中の有機樹脂が流動して完全に塞がれることが望ましいが、その調整が非常に難しく、貫通孔6が残る場合がある。その場合、貫通孔6を通じて水分が基板内部に浸入する場合等もあることから、この貫通孔内に充填材を適量充填することもできる。その場合、この貫通孔6の形成によって絶縁層の剛性を低下させることが重要であることから、その充填材自体も低剛性の材質からなることが望ましく、特に絶縁層の剛性よりも低いことが必要となる。
【0032】
充填材としては、低剛性材料であれば、特に材質は問わないが、充填の容易性などの点から室温で低剛性を有する熱可塑性樹脂、合成ゴムなどが挙げられる。
【0033】
このようにして、本発明によれば、図1(e)に示すように、有機樹脂を含有する複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板11と、絶縁基板11の表面および絶縁層間のうち少なくとも一方に形成された金属回路層12と、所定の金属回路層12間を電気的に接続するために絶縁層に形成されたビアホール導体13とを具備し、絶縁基板11内の少なくとも1層の絶縁層内に、電気的接続に寄与せず、少なくとも一端が金属回路層12によって閉塞された貫通孔14を具備する配線基板が得られる。
【0034】
この貫通孔14は、前述したように、単位面積あたり金属回路層の占有面積率が30%以上の領域に形成されてなることが望ましく、例えば、グランド層や電磁波遮蔽用導体層などを形成した部分に好適である。
【0035】
また、貫通孔14は、電気的な接続を担うビアホール導体13からビアホール導体の直径の3倍以上離間した位置に形成されていることが望ましく、これよりも近すぎると、導体ペースト中の樹脂の流動が起こるため、導電性ペーストが流動し電気的接続が正常に行われない場合があるからである。
【0036】
そして、前記電気的接続に寄与しない貫通孔14内には、低剛性材料を充填していてもよい。
【0037】
本発明において、絶縁基板を形成する絶縁材料は、少なくとも有機樹脂を含有するものであり、望ましくは有機樹脂とともに無機フィラー、無機繊維、有機繊維から選ばれる少なくとも1種以上含む複合材料等からなる。なお、無機フィラー、無機繊維、有機繊維は、有機樹脂中に合計20〜80体積%の割合で均一に分散されたものを用いると良い。
【0038】
このような複合材料を構成する有機樹脂としては、熱硬化型PPE(ポリフェニレンエーテル樹脂)、BTレジン(ビスマレイドトリアジン)、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミノビスマレイミド等の樹脂からなり、とりわけ原料として室温で液体の熱硬化性樹脂であることが望ましい。
【0039】
他方、前記無機フィラーとしては、SiO2、Al23、ZrO2、TiO2、AlN、SiC、BaTiO3、SrTiO3、MgTiO3、ゼオライト、CaTiO3、ほう酸アルミニウム等の公知の材料が使用できる。また、その形状としては球状、針状など任意のものとすることができる。
【0040】
さらに、無機又は有機の繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、セルロース繊維等があり、織布、不織布など任意の性状のものを用いれば良い。いずれにしても、多層配線基板の強度を高めて高信頼性の基板とするためには、繊維を含む絶縁基板を少なくとも1層以上含むことが望ましい。
【0041】
【実施例】
ポリエチレンテレフタレートフィルムに対して、接着層を形成した後、厚み12μmの銅箔を100g/25mmの接着力で形成し、金属回路層形成用の金属箔付きフィルムを作製した。そして、上記金属箔付きフィルムの銅箔の表面に感光性のレジストを塗布し、ガラスマスクを通して回路パターンを露光した後、これを塩化第二鉄溶液中に浸漬して非パターン部をエッチング除去し、レジスト剥離して銅箔の回路パターンを形成した。なお、作製した金属箔による配線は、最大線幅が2mm、最小線幅が50μm、配線ピッチが50μmのパターンと、絶縁基板の面積の60%相当の面積を有するグランド層パターンとを形成した。
【0042】
その後、この銅箔の回路パターンを10%の蟻酸で処理して、銅箔のフリー面(接着層側と反対表面)の十点平均粗さ3.5μmに粗化処理を施した。
【0043】
熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂に平均粒径が5μmの球状溶融SiO2を50体積%加え、これに溶媒として酢酸ブチル、トルエンおよびメチルエチルケトンを加え、さらに有機樹脂の硬化を促進させるための触媒を添加し、1時間混合して絶縁性スラリーを調製した。そして、この絶縁性スラリーをドクターブレード法により厚さ200μmの絶縁シートに成形した。
【0044】
この絶縁シートを150mmにカットし、COレーザーにより直径100μmの貫通孔を形成し、この貫通孔のうち、電気的接続を行なわない貫通孔形成部は、マスキングして、電気的な接続を担うビアホール導体用貫通孔のみに対して、銅−銀合金粉末を主成分とする銅ペーストをスクリーン印刷により埋め込んだ。
【0045】
そして、形成した金属回路層が形成された金属箔付きフィルムとビアホール導体および貫通孔が形成された絶縁基板用シートを位置合わせして真空積層機により30kg/cm2の圧力で30秒加圧した後、樹脂フィルムと接着層のみを剥離して金属回路層を転写させて、金属回路層を絶縁基板シート表面に埋設した。最後に、この金属回路層が形成された絶縁基板シートを6枚重ね合わせ、30kg/cm2の圧力下で200℃で5時間加熱処理して完全硬化させて多層配線基板を得た。
【0046】
なお、電気的接続を行なわない貫通孔は、絶縁基板のうち、絶縁基板の全体面積の60%の面積を有するグランド層からなる内部金属回路層を形成した部分に互いに0.5mmの間隔を置いて形成した。
【0047】
また、比較のために、電気的接続を行なわない貫通孔を何ら形成することなく、上記と同様にして多層配線基板を作製した。
(特性評価)
得られた多層配線基板に対して、配線基板の平坦度の評価として、配線基板のグランド層を形成した部分と、微細配線を形成した部分における厚みを測定し、そのバラツキを求めた結果、いずれの配線基板も回路の断線などの発生は認められなかったが、本発明の配線基板では、配線基板の厚さばらつきは5μmであり、フリップチップ実装が充分に可能なレベルであったのに対して、貫通孔を有していない比較品の多層配線基板では、25μmと大きく、半導体素子のフリップチップ実装できるレベルではなかった。
【0048】
また、他の実施例として、上記の本発明品の多層配線基板の製造にあたって、ビアホール導体用貫通孔に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成した後、このビアホール導体をマスキングして、電気的接続に寄与しない貫通孔に微量のシリコンゴムを充填した。それ以外は、上記と全く同様にして多層配線基板を作製し、上記と同様の評価を行なった。その結果、多層配線基板の厚さばらつきは12μmと良好な平坦性を示した。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、グランド層や電磁波シールドなどの面積の広いパターンの金属回路層と、微細な回路パターンやビアホール導体などが共存するような配線基板を作製した場合においても、配線基板の表面の平坦度を高めることができ、これによって半導体素子のフリップチップ実装などが可能な配線基板を作製ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の製造方法を説明するための工程図である。
【図2】従来の多層配線基板の概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁シート
2 ビアホール導体用貫通孔
3 ビアホール導体
4 金属回路層
5 転写シート
6 貫通孔

Claims (7)

  1. 有機樹脂を含有する複数の絶縁層を積層してなる絶縁基板と、前記絶縁層の表面に埋設された金属回路層と、所定の金属回路層間を電気的に接続するために前記絶縁層に形成されたビアホール導体とを具備する配線基板であって、前記金属回路層が埋設されている前記絶縁層のうち前記金属回路層が形成された領域の前記絶縁層内に、電気的接続に寄与せず、少なくとも一端が前記金属回路層によって閉塞された貫通孔を具備することを特徴とする配線基板。
  2. 前記貫通孔が、単位面積あたり前記金属回路層の占有面積率が30%以上の領域に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
  3. 前記貫通孔が前記ビアホール導体からビアホール導体の直径の3倍以上離間した位置に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の配線基板。
  4. 前記貫通孔内に、前記絶縁層中の前記有機樹脂が流動して存在していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか記載の配線基板。
  5. a)有機樹脂を含有する絶縁シートに、ビアホール導体用貫通孔を形成する工程と、b)ビアホール導体用貫通孔に導体ペーストを充填してビアホール導体を形成する工程と、c)ビアホール導体が形成された前記絶縁シートの表面または両面に、金属回路層を埋設する工程と、d)a)〜c)を経て作製された複数の前記絶縁シートを積層一体化する工程と、を具備する配線基板の製造方法において、前記a)工程と同時またはb)またはc)工程の前に、e)前記金属回路層が形成される領域の前記絶縁シート内に、電気的接続に寄与しない貫通孔を形成する工程を具備することを特徴とする配線基板の製造方法。
  6. 前記貫通孔が、単位面積あたり前記金属回路層の占有面積率が30%以上の領域に形成されてなることを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
  7. 前記貫通孔が前記ビアホール導体からビアホール導体の直径の3倍以上離間した位置に形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載の配線基板の製造方法。
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