請求項1記載の発明によれば、円筒形状の外周面を有するハブ部とハブ部の外周面から遠心方向に延びる複数のブレード部とを有する遠心ファンと、遠心ファンを回転自在に収容し遠心ファンを挟んで対向配置された一対の吸気口を有するファンケーシングと、を備えた遠心ファン装置であって、ブレード部の回転方向の面(正圧面)は、ブレード部の先端から所定の距離だけ内径側の位置から始端して一対の吸気口のいずれかの投影面積領域内に位置するブレード部の内径側に延びる凸部を有することにより、その凸部が、対向配置された一対の吸気口から吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部の正圧面上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
加えて、吸気領域外の領域においては風路抵抗を低減し、遠心ファンの外径側で空気を円滑に遠心方向へ流すことにより、風量の増加も同時に実現できる。
また、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、より回転数を上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上する。
請求項2記載の発明によれば、凸部は、吸気口の投影面積領域外でかつブレード部の先端から所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口の投影面積領域内に延びることにより、その凸部が、対向配置された一対の吸気口から吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部の正圧面上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
加えて、吸気領域外の領域においては風路抵抗を低減しブレード部の面上で空気の平行流をスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことにより、風量の増加も同時に実現できる。
請求項3記載の発明によれば、凸部は、ブレード部の幅方向の略中央に位置することにより、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部の正圧面上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが効果的に抑制されるので、それぞれの空気をバランスよく円滑に遠心方向へ流すことができる。
請求項4記載の発明によれば、ブレード部の回転方向の面(正圧面)と反回転方向の面(負圧面)の両面に凸部を有することにより、その凸部が、対向配置された一対の吸気口から吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部の正圧面上に加え負圧面上でもぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
また、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、より回転数を上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上する。
請求項5記載の発明によれば、一対の吸気口のいずれかの投影面積領域外に位置するブレード部の長さの20%よりも長い距離だけブレード部の先端から内径側の位置で始端することにより、吸気領域外の領域における風路抵抗を有効に低減しブレード部の面上で空気の平行流をよりスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、さらに風量の増加が図れる。
請求項6記載の発明によれば、凸部は、吸気口の投影面積領域内まで延びてハブ部の外周面から所定の距離だけ外径側の位置で終端することにより、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部の面上でのぶつかりが比較的少ない吸気領域の内径側において風路抵抗を有効に低減できるので、より風量の増加が図れる。
請求項7記載の発明によれば、凸部は、内径側にハブ部の方向に漸次幅が小さくなる第1の傾斜部を有し、外径側にブレード部の先端の方向に漸次高さが小さくなる第2の傾斜部を有することにより、第1の傾斜部は、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部の面上でのぶつかりが比較的多い吸気領域の外径側において空気の分流板としての作用を徐々に増大できるので、より効果的にファン騒音や異音の低減と風量の増加を同時に実現でき、第2の傾斜部は、分流されて流れてきた空気の流れがファンケーシング内において遠心方向へ流れる平行流となって整流化され、吸気領域の外側における風路抵抗が徐々に低減し渦流や乱流を発生させることなく少しずつ合流され、より円滑に空気を遠心方向へ流すことができるので、風量をより増加できる。
請求項8記載の発明によれば、前述したいずれかの本発明による遠心ファン装置を備えたことにより、ファン騒音や異音が低減されるので、電子機器の動作中における静音性を高め、より快適な作業環境をオペレータに提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1における遠心ファン装置の上方からの斜視図で、図1(b)は、本発明の実施の形態1における遠心ファン装置のカバーを外した状態での上方からの斜視図で、図2(a)は、本発明の実施の形態1における遠心ファン装置の平面図で、図2(b)は、(a)のラインA−A矢視断面図で、図3は、本発明の実施の形態1における遠心ファンの平面図で、図4(a)は、本発明の実施の形態1における遠心ファンの斜視図で、図4(b)は、本発明の実施の形態1における遠心ファンのブレード部の円筒断面形状図で、図5(a)は、本発明の実施の形態1における遠心ファンのブレード部の部分拡大斜視図で、図5(b)は、本発明の実施の形態1における遠心ファンのブレード部の部分拡大平面図で、図6は、同一の風量におけるファン騒音(Aレンジ騒音)の比較グラフで、図7は、同一のファン騒音における風量静圧特性の比較グラフである。
まず、図1(a)で示したように遠心ファン装置11のファンケーシング12は、下部に位置するフレーム12aと上部に位置するカバー12bにより構成されている。
ここで、フレーム12aは、樹脂成型やアルミニウム合金のダイカスト成型などにより底壁と側壁が一体的に形成され、その一方の側面にファンケーシング12内に吸気した空気を外部へ排気する排気口13が配設されており、またその底壁には図1(b)で示したように略円形状の吸気口14aが配設されている。
一方、カバー12bは、スチール、アルミニウム、銅などの金属材料の打ち抜き成形や樹脂成型によりプレート状に成形されており、その中央部に空気を吸気する略円形状の吸気口14bが配設されている。
また、そのファンケーシング12は、遠心ファン15を回転自在に収容し、その遠心ファン15を挟んで対向配置するように一対の吸気口14aと吸気口14bを有している。
さらに、その遠心ファン15は、円筒形状の外周面を有するハブ部15aとその外周面から遠心方向に延びる複数の平板形状のブレード部15bを有している。
したがって、遠心ファン15が回転方向Rで示した方向に高速で回転すると、遠心ファン15のハブ部15aの上方に位置する吸気口14bと遠心ファン15のハブ部15aの下方に位置する吸気口14aの両方から外部の空気が吸気される。
ここで、吸気口14aと吸気口14bとから吸気されるそれぞれの空気は、後述する遠心ファン15の回転軸16(図2(b)参照)の方向において相互に反対方向となって吸気され、さらにその吸気された空気がブレード部15bの回転運動によりファンケーシング12の内部で複数の平板形状のブレード部15bの遠心方向へと急激に風向きが変えられるので、大部分の空気はフレーム12aやカバー12bの内壁にもぶつかりながら、その内壁に沿って遠心ファン15の回転方向と同一の方向へそれらの空気が送られて最終的に排気口13から外部へ排気される。
次に、図2(a)や図2(b)で示したように、遠心ファン装置11は、前述したように円筒形状の外周面を有するハブ部15aとその外周面から遠心方向に延びる複数の平板形状のブレード部15bを有する遠心ファン15と、そのハブ部15aの内側中央に固定された回転軸16と、そのハブ部15aの下方にはハブ部15aに覆われるように配置され回転軸16に回転駆動力を与えるモータ駆動部17と、そのモータ駆動部17を下方より保持するフレーム12aと、そのフレーム12aと組み合わさってファンケーシング12を構成するカバー12bを備えており、ファンケーシング12は遠心ファン15を取り囲むようにして回転自在に収容している。
また、図2(b)でも明らかなように、カバー12bに配設された吸気口14bとフレーム12aの底壁に配設された吸気口14aは、どちらも回転軸16を中心として同一半径の略円形状で設計されていて、さらに吸気口14aと吸気口14bは遠心ファン15を挟んで対向配置されている。
ここで、モータ駆動部17は、回転軸16に回転駆動力を与えるためのモータ駆動回路が組み込まれた回路基板などで構成されており、そのモータ駆動部17はフレーム12aの底壁に配設された吸気口14aをその吸気方向と直交する方向に横断するようにフレーム12aから延設された3本の連結部18(図2(a)参照)を介して保持されている。
そして、下方に位置するフレーム12aと上方に位置するようにカバー12bが上下方向で組み合わさったファンケーシング12は、遠心ファン15のブレード部15bの外周部を取り囲むように収容しているので、遠心ファン15が図2(a)の回転方向Rで示した方向に回転することにより送風に必要な静圧を発生させることができている。
なお、この図からも明らかように、フレーム12aの吸気口14aを横断するように延設された3本の連結部18を除いて考えると、吸気口14aと吸気口14bは、同一中心、同一半径の略円形状に形成されているため、それぞれの吸気口14a、14bの投影面積領域は、遠心ファン15に対してほぼ同一であるものとみなすことができる。
次に、図3は、フレーム12aの外形とブレード部15bの外径側に位置するフレーム12aの側壁を実線で示し、吸気口14bを2点鎖線で示すことによって、遠心ファン15に対する吸気口14bの位置関係を分かり易くしたものである。
ここで、2点鎖線で示した吸気口14bの円内の領域は、カバー12bに配設された吸気口14bの開口領域を回転軸16の方向と平行に遠心ファン15の方向へ投影させた投影面積領域であって、少なくともその領域内に位置する全てのブレード部15bの回転方向Rで示した方向の面(以下、正圧面Pと称する)には凸部15baが形成されている。
この凸部15baは、詳細に後述するが、正圧面Pにおける幅方向の略中央に位置し吸気口14bの投影面積領域外でかつブレード部15bの先端15beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口14bの投影面積領域内に延びて、ハブ部15aの外周面まで連続して形成されている。
したがって、それぞれのブレード部15bに形成された凸部15baが、対向配置された一対の吸気口14aと吸気口14bから吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に真逆方向となって吸込まれた空気がブレード部15bの正圧面P上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
加えて、吸気領域外の領域においては風路抵抗を低減しブレード部15bの正圧面P上で空気の平行流をスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことにより、風量の増加も同時に実現できる。
また、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、より回転数を上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上する。
なお、凸部は、一対の吸気口のいずれかの投影面積領域外に位置するブレード部15bの正圧面P側における長さの20%よりも長い距離だけブレード部15bの先端15beから内径側の位置で始端するように形成されるのが好ましく、吸気領域外の領域における風路抵抗を有効に低減しブレード部の面上で空気の平行流をよりスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、さらに風量の増加が図れる。
また、この図でも明らかなように、凸部15baは、いずれもブレード部15bの正圧面P上において、ブレード部15bの先端15beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口14bの投影面積領域内に延びて、ハブ部15aの外周面まで連続して形成されている。
なお、仮に、吸気口14aと吸気口14bの半径またはその中心位置が相互に異なる場合には、吸気口14aと吸気口14bのそれぞれの投影面積領域が重複する領域に加えて
一対の吸気口14a、14bのいずれか一方のみの投影面積領域に位置するブレード部15bにも凸部15baを形成することが好ましく、吸気領域において空気をより円滑に遠心方向へ流すことができる。
次に、図4(a)で示したように、遠心ファン15の投影面積領域内に位置するブレード部15bの正圧面Pには凸部15baが形成されているが、その凸部15baはブレード部15bの回転軸16(図2(b)参照)の方向である幅方向の略中央に形成されている。
ここで、ハブ部15aやブレード部15bの素材としてはポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料を用いて、凸部15baをブレード部15bと一体成型により形成するのが好ましい。
また、図4(b)は、図4(a)における一点鎖線の直線で示した回転軸16の軸線CLを中心軸とし、円筒半径が吸気口14bの半径よりも小さな仮想の円筒Sの外周面によってブレード部15bを切断したときの円筒断面形状を示していて、凸部15baは、高さTHaが幅TWaよりも大きな矩形の断面形状を有している。
ここで、凸部15baが形成されるブレード部15bの幅方向の略中央となる領域BWcは、ブレード部15bの全体幅BWを比較基準として、少なくともそのブレード部15bの上端部15buからの距離BWuと下端部15blからの距離BWlがいずれもブレード部15bの全体幅BWの20%以上確保された領域であることが好ましい。
このブレード部15bの幅方向の略中央となる領域BWc内に凸部15baが形成されることで、対向配置された一対の吸気口14aと吸気口14bから吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部15bの正圧面P上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
また、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、より回転数を上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上する。
なお、凸部15baは、ブレード部15bの正圧面Pにおいて、吸気口14bの投影面積領域外でかつブレード部15bの先端15beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口14bの投影面積領域内に延びて、ハブ部15aの外周面まで連続して形成されているが、前述したブレード部15bの幅方向の略中央となる領域BWc内であれば、回転軸16と直交する方向に対してやや傾斜しながら遠心方向へ延びるように形成されてもよいし、湾曲または蛇行しながら遠心方向へ延びるように形成されてもよい。
特に、前述したように、吸気口14aは、連結部18により空気の流入路が遮蔽されているため、その分吸気面積が吸気口14bと比較して小さくなり吸気量が減るので、前述したブレード部15bの幅方向の略中央となる領域BWc内において凸部15baの幅方向の中心をやや吸気口14aに近くなるように下方へずらして、吸気口14aと比較して吸気量の大きな吸気口14bから吸入した空気に対して凸部15baが大きな風路抵抗とならないようにすることもできる。
つまり、連結部18により空気の流入路が遮蔽された場合や吸気口14aと吸気口14bのそれぞれの半径が相互に異なる場合などでは、吸気面積が相互に異なる吸気口14aと吸気口14bの吸気量の差に応じて吸気した空気が円滑に流れるように、凸部15baの幅方向の中心位置をブレード部15bの幅方向の中心よりも上下方向へずらしてバランスをとってもよい。
また、本発明による遠心ファン装置11が電子機器へ実装され、その実装状態によっては、それぞれの吸気口14aと14bの間で、吸気する空気の流入経路における風路抵抗に大きな差が生じて、それぞれの吸気口14a、14bの吸気量に大きな差が発生する場合にも、その吸気量の差に応じて吸気した空気が円滑に流れるように、凸部15baの幅方向の中心位置をブレード部15bの幅方向の中心よりも上下方向へずらしてバランスをとってもよい。
また、凸部15baの幅TWaは、風路抵抗となってしまう影響を少なくするためなるべく小さい方が好ましいが、凸部15baの受ける風圧や回転振動などに耐えうる十分な強度を確保するため、例えばブレード部15bの外形寸法が内径側の幅長で4.6mm、外径側の幅長で8.0mm、全長で19.0mm、厚みで0.9mmの場合であれば、凸部15baの幅TWaを0.3mm〜3.0mmの範囲に設定するのがより好ましい。
また、凸部15baの高さTHaは、分流板としての作用を考慮するとなるべく大きい方が好ましいが、あまり大きいとそれが大きな風路抵抗となって作用するため、例えばブレード部15bの外形寸法が内径側の幅長で4.6mm、外径側の幅長で8.0mm、全長で19.0mm、厚みで0.9mmの場合であれば、凸部15baの高さTHaを0.3mm〜3.0mmの範囲に設定するのがより好ましい。
さらに、実施の形態1における凸部15baは、矩形の断面形状を有しているが、前述したような所定の高さが十分に確保できれば、三角形、多角形、蒲鉾形状または円弧状の断面形状などであっても構わない。
次に、図5(a)と図5(b)を参照して、前述した内容をさらに詳細に説明する。
まず、図5(a)で示したように、ブレード部15bの正圧面Pにおいて、吸気口14bの投影面積領域外でかつブレード部15bの先端15beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口14bの投影面積領域内に延びて、ハブ部15aの外周面まで連続して形成されている。
ここで、ブレード部15bが回転方向Rで示した方向に高速回転すると、下方に位置する吸気口14a(図2(b)参照)を通過した空気は、破線の矢印LFで示したように上方へ向かってブレード部15bの内径側に吸込まれた後、ブレード部15bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部15baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部15bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域の外径側において破線の矢印UFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端15beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
一方、上方に位置する吸気口14b(図2(b)参照)を通過した空気は、破線の矢印UFで示したように下方へ向かってブレード部15bの内径側に吸込まれた後、ブレード部15bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部15baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部15bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印LFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端15beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
したがって、相互に反対方向となって吸込まれた空気は、ブレード部15bの正圧面P上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、円滑に遠心方向へ流されるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
また、図5(b)で示したように、ブレード部15bの正圧面Pに位置する凸部15baは、ブレード部15bにおける吸気口14bの投影面積領域外である2点鎖線で示した円弧の外径側の領域でかつブレード部15bの先端15beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して、吸気口14bの投影面積領域内である2点鎖線で示した円弧の内径側の領域に延びて、ハブ部15aの外周面まで連続して形成されている。
ここで、吸気口14bの投影面積領域は、吸気口14aの投影面積領域とも重複するため、前述したようにブレード部15bの正圧面Pに形成された凸部15baが分流板として有効に作用するが、2点鎖線で示した円弧の外側の領域である吸気口14bの投影面積領域外においては、分流されたそれぞれの空気の流れがブレード部15bの長手方向に沿って遠心方向へ流れる平行流となって整流化されているため、投影面積領域外に位置するブレード部15bの正圧面P側における長さLaの20%よりも長い距離laだけブレード部15bの先端15beから内径側の位置で始端するように形成されるのが好ましく、吸気領域の外側における風路抵抗を有効に低減しブレード部15bの正圧面P上で空気の平行流をよりスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、さらに風量の増加が図れる。
次に、図6では、同一の風量(0.15m3/min)において、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11のファン騒音(Aレンジ騒音)を、後述する実施の形態2による遠心ファン装置(図示せず)と併せて、凸部15baが形成されてなく他の構成要素の形状・寸法などが同一の従来の遠心ファン装置のファン騒音(Aレンジ騒音)と比較して示している。
このグラフで明らかなように、従来の遠心ファン装置のファン騒音は49.0dBAであるのに対して、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11のファン騒音は47.5dBAと1.5dBA低減され、さらに実施の形態2による遠心ファン装置のファン騒音は47.0dBAと2.0dBA低減されている。
つまり、前述したようにブレード部15bの正圧面Pに形成された凸部15baが、対向配置された一対の吸気口14a、14bから吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部15bの正圧面P上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できていることが分かる。
また、図7では、同一のファン騒音(45.0dBA)において、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11の風量静圧特性を、凸部15baが形成されておらず他の構成要素の形状・寸法などが同一の従来の遠心ファン装置と比較して示している。
このグラフで明らかなように、従来の遠心ファン装置に対して、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11は、横軸の風量の全域に亘って静圧特性が向上している。
つまり、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、遠心ファン装置11の遠心ファン15の回転速度をより上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上していることを示している。
なお、以上の比較において、従来の遠心ファン装置のブレード部の外形寸法は、内径側の幅長で4.8mm、外径側の幅長で7.2mm、全長で22.0mm、厚みで0.8mmに設定されたものを用い、本発明の実施の形態1のブレード部15bも同一寸法に設定され、さらに凸部15baが幅TWaで0.5mm、高さTHaで1.5mm、先端15beからの距離laで7.0mmに形成されたものを用いた。
(実施の形態2)
次に、図8(a)と図8(b)を参照して、実施の形態2について説明する。
ここで、図8(a)は、本発明の実施の形態2における遠心ファンのブレード部の部分拡大斜視図で、図8(b)は、本発明の実施の形態2における遠心ファンのブレード部の部分拡大平面図で、図9は、吸気口の投影面積領域外に位置するブレード部の長さとブレード部の先端から凸部の始点までの距離との比に対する風量とファン騒音のグラフである。
まず、図8(a)で示したように、凸部25baは、ブレード部25bの回転方向Rの正圧面Pにおいて、幅方向の略中央に位置し吸気口(図示せず)の投影面積領域外でかつブレード部25bの先端25beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部25aの外周面まで連続して形成され、加えて、凸部25bbは、ブレード部25bの回転方向Rで示した方向とは反対の面(以下、負圧面Mと称する)において、幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部25bの先端25beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口(図示せず)の投影面積領域内に延びて、ハブ部25aの外周面まで連続して形成されている。
ここで、ブレード部25bが回転方向Rで示した方向に高速回転すると、下方に位置する吸気口(図示せず)を通過した空気は、破線の矢印LFで示したように上方へ向かってブレード部25bの内径側に吸込まれた後、ブレード部25bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部25baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部25bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印UFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端25beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
また、正圧面Pの表面に流入する空気の量と比較するとその流入量は少ないものの、負圧面Mの表面にも上方へ向かって吸込まれた空気の一部が流入するが、同様に負圧面Mの幅方向の略中央に位置する凸部25bbがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部25bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印UFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端25beに近い負圧面M側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
一方、上方に位置する吸気口(図示せず)を通過した空気は、破線の矢印UFで示したように下方へ向かってブレード部25bの内径側に吸込まれた後、ブレード部25bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部25baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部25bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印LFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端25beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
また、正圧面Pの表面に流入する空気の量と比較するとその流入量は少ないものの、負圧面Mの表面にも下方へ向かって吸込まれた空気の一部が流入するが、同様に負圧面Mの幅方向の略中央に位置する凸部25bbがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部25bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印LFで示した空気の流れと合流し、最終的に先端25beに近い負圧面M側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
したがって、ブレード部25bの正圧面Pと負圧面Mの両面に凸部25baと凸部25bbを有することにより、相互に反対方向となって吸込まれた空気は、ブレード部25bの正圧面P上や負圧面M上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、円滑に遠心方向へ流されるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できる。
また、図8(b)で示したように、遠心ファン25のブレード部25bにおける吸気口の投影面積領域は、2点鎖線で示した円弧の内径側の領域であり、凸部25baは、ブレード部25bの回転方向Rの正圧面Pにおいて、幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部25bの先端25beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口の投影面積領域内に延び、ハブ部25aの外周面まで連続して形成され、加えて、凸部25bbは、ブレード部25bの回転方向Rで示した方向とは反対の面(以下、負圧面Mと称する)において、幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部25bの先端25beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部25aの外周面まで連続して形成されている。
ここで、前述したようにブレード部25bの正圧面Pに形成された凸部25baとブレード部25bの負圧面Mに形成された凸部25bbがそれぞれ分流板として有効に作用するが、2点鎖線で示した円弧の外側の領域である吸気口の投影面積領域外においては、分流されたそれぞれの空気の流れがブレード部25bの長手方向に沿って遠心方向へ流れる平行流となって整流化されているため、凸部25baは投影面積領域外に位置するブレード部25bの正圧面P側における長さLaの20%よりも長い距離laだけブレード部25bの先端25beから内径側の位置で始端するように形成され、凸部25bbは投影面積領域外に位置するブレード部25bの負圧面M側における長さLbの20%よりも長い距離lbだけブレード部25bの先端25beから内径側の位置で始端するように形成されるのが好ましく、吸気領域外の領域における風路抵抗を有効に低減しブレード部の正圧面P面上と負圧面M上で空気の平行流をよりスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、さらに風量の増加が図れる。
また、図9では、ブレード部25bの正圧面Pには凸部25baを形成し、負圧面Mには凸部25bbを形成した場合において、吸気口の投影面積領域外に位置するブレード部25bの正圧面P側の長さLaとブレード部25bの先端25beから凸部25baの始点までの距離laとの比(la/La)と吸気口の投影面積領域外に位置するブレード部25bの負圧面M側の長さLbとブレード部25bの先端25beから凸部25bbの始点までの距離lbとの比(lb/Lb)とのいずれもが同時に変化したときに、風量とファン騒音がどのように変化するかを示した。
ここで、比較用としては、従来の正圧面Pと負圧面Mのいずれにも凸部が形成されていない平坦な形状のブレード部を有する遠心ファンを用い、同一のファン騒音(35.0dBA)となる条件で動作させたときの風量(0.104m3/min)に対する差異及び同一の風量(0.110m3/min)となる条件で動作させたときのファン騒音(36.1dBA)に対する差異を示した。
この図からも明らかなように、凸部25baは吸気口の投影面積領域外に位置するブレード部25bの正圧面P側における長さLaの20%よりも長い距離laだけブレード部25bの先端25beから内径側の位置で始端するように形成され、凸部25bbは吸気口の投影面積領域外に位置するブレード部25bの負圧面M側における長さLbの20%よりも長い距離lbだけブレード部25bの先端25beから内径側の位置で始端するように形成されることにより、風量、ファン騒音いずれも従来の遠心ファンを用いた場合よりも改善されている。
なお、以上の比較において、従来の遠心ファン装置のブレード部の外形寸法は、内径側の幅長で4.8mm、外径側の幅長で7.2mm、全長で22.0mm、厚みで0.8mmに設定されたものを用い、本発明の実施の形態2のブレード部15bも同一寸法に設定され、さらに凸部25baと凸部25bbは幅TWaで2.0mm、高さTHaで1.2mmと一定に設定し、距離laと長さLaとの比及び距離lbと長さLbとの比を0%〜100%で変化させて測定を行った。
また、風量計測時には同一のファン騒音(35.0dBA)となる条件で動作させ、ファン騒音計測時には同一の風量(0.110m3/min)となる条件で動作させた。
また、前述したように、図6では、同一の風量(0.15m3/min)において、前述した遠心ファン25を実施の形態1で説明した他の構成要素と組み合わせた実施の形態2による遠心ファン装置(図示せず)のファン騒音(Aレンジ騒音)を、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11のファン騒音(Aレンジ騒音)と併せて、従来の遠心ファン装置のファン騒音(Aレンジ騒音)と比較して示している。
そのグラフで明らかなように、従来の遠心ファン装置のファン騒音は49.0dBAであるのに対して、本発明の実施の形態2による遠心ファン装置のファン騒音は、本発明の実施の形態1による遠心ファン装置11のファン騒音よりもさらに0.5dBA低い47.0dBAまで低減されている。
つまり、前述したようにブレード部25bの正圧面Pに形成された凸部25baとブレード部25bの負圧面Mに形成された凸部25bbが、対向配置された一対の吸気口(図示せず)から吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部25bの正圧面P上や負圧面M上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を、より一層実現できていることが分かる。
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3における遠心ファンの斜視図で、図11(a)は、本発明の実施の形態3における遠心ファンのブレード部の部分拡大斜視図で、図11(b)は、本発明の実施の形態3における遠心ファンのブレード部の部分拡大平面図で、図12(a)は、本発明の実施の形態3における遠心ファンのブレード部を正圧面側から見た正面図で、図12(b)は、本発明の実施の形態3における遠心ファンのブレード部を真上から見た平面図で、図13は、同一の風量におけるファン騒音(Aレンジ騒音)の比較グラフで、図14は、同一のファンケーシングと駆動回路を用いた場合の風量静圧特性の比較グラフである。
まず、図10において、吸気口(図示せず)の開口領域を回転軸の方向と平行に遠心ファン35の方向へ投影させた投影面積領域として、全てのブレード部35bの回転方向Rで示した方向の面(以下、正圧面Pと称する)には凸部35baが形成されている。
そして、凸部35baは、詳細には後述するが、ブレード部35bの回転方向Rの正圧面Pにおいて、幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部35bの先端35beから所定の距離だけ内径側の位置から始端して吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部35aの外周面から所定の距離だけ外径側の位置で終端するように形成されている。
さらに、凸部35baは、内径側にハブ部35aの方向に漸次幅が小さくなる第1の傾斜部351bを有し、外径側にブレード部35bの先端35beの方向に漸次高さが小さくなる第2の傾斜部352bを有している。
ここで、第1の傾斜部351bは、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部35bの面上でのぶつかりが比較的多い吸気領域の外径側において空気の分流板としての作用を徐々に増大できるので、より効果的にファン騒音や異音の低減と風量の増加を同時に実現できる。
また、第2の傾斜部352bは、分流されて流れてきた空気の流れがファンケーシング(図示せず)内において遠心方向へ流れる平行流となって整流化され、吸気領域の外側における風路抵抗が徐々に低減し渦流や乱流を発生させることなく少しずつ合流され、より円滑に空気を遠心方向へ流すことができるので、風量をより増加できる。
次に、図11(a)と図11(b)を参照して、前述の内容をさらに詳細に説明する。
まず、図11(a)で示したように、凸部35baは、ブレード部35bの回転方向Rの正圧面Pにおいて、幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部35bの先端35beから所定の距離だけ内径側の位置に外径側先端35bo(図12(a)、(b)参照)を有し、吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部35aの外周面から所定の距離だけ外径側の位置に内径側先端35bi(図12(a)、(b)参照)を有するように形成されている。
ここで、ブレード部35bが回転方向Rで示した方向に高速回転すると、下方に位置する吸気口(図示せず)を通過した空気は、破線の矢印LFで示したように上方へ向かってブレード部35bの内径側に吸込まれた後、ブレード部35bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部35baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部35bの長手方向に沿って遠心方向へ流れる。
また、凸部35baは、吸気口の投影面積領域外でかつブレード部35bの先端35beから所定の距離だけ内径側の位置に外径側先端35boを有するように形成されているので、吸気領域の外側においては風路抵抗を低減しブレード部35bの面上で破線の矢印UFで示した空気の流れとスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことにより、最終的に先端35beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
加えて、その凸部35baは、投影面積領域内のハブ部35aの外周面から所定の距離だけ外径側の位置に内径側先端35biを有するように形成されているので、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部35bの面上でのぶつかりが比較的少ない吸気領域の内径側において風路抵抗を有効に低減できるので、より風量の増加が図れる。
一方、上方に位置する吸気口(図示せず)を通過した空気は、破線の矢印UFで示したように下方へ向かってブレード部35bの内径側に吸込まれた後、ブレード部35bの正圧面Pの表面に流入するものの、その正圧面Pの幅方向の略中央に位置する凸部35baがその流入した空気の風路抵抗となり分流板として作用するため、略直角に風向きが変えられそのブレード部35bの長手方向に沿って遠心方向へ流れ、吸気領域外の領域において破線の矢印LFで示した空気の流れとスムーズに合流し、最終的に先端35beに近い正圧面P側を通過してその外周方向へ空気が押し出される。
また、図11(b)で示したように、ブレード部35bにおける吸気口(図示せず)の投影面積領域は、2点鎖線で示した円弧の内径側の領域であり、凸部35baは、吸気口の投影面積領域外でかつブレード部35bの先端35beから所定の距離だけ内径側の位置に外径側先端35boを有し、吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部35aの外周面から所定の距離だけ外径側の位置に内径側先端35biを有するようにブレード部35bの幅方向の略中央に形成されている。
次に、図12(a)で示したように、2点鎖線の内径側の領域が吸気口の投影面積領域内で、2点鎖線の外径側の領域が吸気口の投影面積領域外であるが、ブレード部35bの正圧面P上において、凸部35baは、ブレード部35bの正圧面Pにおける幅方向の略中央に位置し吸気口の投影面積領域外でかつブレード部35bの先端35beから距離laだけ内径側の位置に外径側先端35boを有し、吸気口の投影面積領域内に延びて、ハブ部35aの外周面から距離liだけ外径側の位置に内径側先端35biを有するように形成されている。
ここで、凸部35baは、内径側にハブ部35aの方向に漸次幅が小さくなる第1の傾斜部351bを有し、外径側にブレード部35bの先端35beの方向に漸次高さが小さくなる第2の傾斜部352bを有している。
第1の傾斜部351bは、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部35bの面上でのぶつかりが比較的多い吸気領域の外径側において空気の分流板としての作用を徐々に増大できるので、より効果的にファン騒音や異音の低減と風量の増加を同時に実現できる。
また、第2の傾斜部352bは、分流されて流れてきた空気の流れがファンケーシング(図示せず)内において遠心方向へ流れる平行流となって整流化され、吸気領域の外側における風路抵抗が徐々に低減し渦流や乱流を発生させることなく少しずつ合流され、より円滑に空気を遠心方向へ流すことができるので、風量をより増加できる。
また、その凸部35baは、投影面積領域外に位置するブレード部35bの長さLaの20%よりも長い距離laだけ先端35beから内径側の位置に外径側先端35boを有するように形成されるのが好ましく、吸気領域の外側における風路抵抗を有効に低減しブレード部35bの正圧面P上で空気の平行流をよりスムーズに合流させて空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、さらに風量の増加が図れる。
また、ブレード部35bの全体幅を、一対の吸気口のいずれかの投影面積領域内において遠心方向へ向かって漸次大きくしたことにより、それぞれの吸気口から相互に反対方向となって吸込まれた空気のブレード部35bの面上でのぶつかりが比較的少ない吸気領域の内径側において風路抵抗を有効に低減できるので、より風量の増加が図れる。
なお、図示は省略するが、凸部35baの最大幅は、風路抵抗となってしまう影響を少なくするためなるべく小さい方が好ましいが、凸部35baの受ける風圧や回転振動などに耐えうる十分な強度を確保するため、例えばブレード部35bの外形寸法が内径側の幅長で4.8mm、外径側の幅長で7.2mm、全長で22.0mm、厚みで0.8mmの場合であれば、凸部35baの最大の幅TWaを0.3mm〜3.0mmの範囲に設定するのがより好ましい。
また、凸部35baの最大高さは、分流板としての作用を考慮するとなるべく大きい方が好ましいが、あまり大きいとそれが大きな風路抵抗となって作用するため、例えばブレード部35bの外形寸法が内径側の幅長で4.6mm、外径側の幅長で8.0mm、全長で19.0mm、厚みで0.9mmの場合であれば、凸部35baの最大の高さTHaを0.3mm〜3.0mmの範囲に設定するのがより好ましい。
次に、図13では、同一の風量(0.138m3/min)において、本発明の実施の形態3による遠心ファン装置(図示せず)のファン騒音(Aレンジ騒音)を、凸部35baが形成されてなく他の構成要素の形状・寸法などが同一の従来の遠心ファン装置のファン騒音(Aレンジ騒音)と比較して示している。
このグラフで明らかなように、従来の遠心ファン装置のファン騒音は40.6dBAであるのに対して、本発明の実施の形態3による遠心ファン装置のファン騒音は39.4dBAと1.2dBA低減されている。
つまり、前述したようにブレード部35bの正圧面Pに形成された凸部35baが、対向配置された一対の吸気口から吸込まれたそれぞれの空気の分流板として作用し、相互に反対方向となって吸込まれた空気がブレード部35bの正圧面P上でぶつかりながら相互に干渉し合うことが抑制され、それぞれの空気を円滑に遠心方向へ流すことができるので、吸気領域における渦流や乱流の発生に起因するファン騒音や異音の低減を実現できていることが分かる。
また、図14では、同一のファンケーシングと駆動回路を用いて、本発明の実施の形態3による遠心ファン装置(図示せず)の風量静圧特性を、凸部35baが形成されておらず他の構成要素の形状・寸法などが同一の従来の遠心ファン装置と比較して示している。
ここで、電源電圧Vccを3V、4V、5V、6Vに設定した場合のそれぞれにおいて、風量静圧特性を測定しており、マーカー塗りつぶしありが本発明の実施の形態3による遠心ファン装置の風量静圧特性で、マーカー塗りつぶしなしが従来の遠心ファン装置の風量静圧特性である。
このグラフで明らかなように、従来の遠心ファン装置の風量静圧特性に対して、本発明の実施の形態3による遠心ファン装置の風量静圧特性は、電源電圧Vccが3V、4V、5V、6Vのいずれの場合においても、横軸の風量の全域に亘って静圧特性が向上している。
つまり、同一のファンケーシングと駆動回路を用いて比較した場合には、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上していることを示している。
また、同一のファン騒音レベルで比較した場合には、より回転数を上昇させることが可能なので、高風量化と高静圧化が容易となり送風能力が向上する。
なお、以上の比較において、従来の遠心ファン装置のブレード部の外形寸法は、内径側の幅長で4.8mm、外径側の幅長で7.2mm、全長で22.0mm、厚みで0.8mmに設定されたものを用い、本発明の実施の形態3のブレード部35bも同一寸法で設定され、さらに正圧面Pには、凸部35baが最大の幅TWaで2.6mm、最大の高さTHaで0.6mm、先端35beからの距離laで5.0mm、ハブ部35aの外周面からの距離liで6.0mmに形成されたものを用いた。
(実施の形態4)
図15(a)は、本発明の実施の形態4における電子機器の筐体内部を示した図で、図15(b)は、本発明の実施の形態4における電子機器の筐体内部の部分断面図である。
ここで、電子機器60は、操作部を有する本体装置61の端部のヒンジ機構62に開閉型の液晶表示装置63が回動支持された構成のノート型PCである。
この電子機器60の本体装置61の筐体内部に配置された回路基板64の下側面には、冷却されるべきMPUやCPUなどの発熱電子部品65が実装されていて、さらにそれらを同時に冷却する遠心ファン装置66が搭載されている状態を示している。
ここで、図15(a)における遠心ファン装置66は、実施の形態1で説明した構成に加えて、受熱部67が連接されたもので、回路基板64の下側面に実装された発熱電子部品65に遠心ファン装置66と連接した受熱部67が熱的に接続されるようにその回路基板64の下側面の所定の位置に配置されている。
そして、実施の形態1で説明したように、その遠心ファン装置66は、複数のブレードの回転によって空気を送風する遠心ファン68と、その遠心ファン68を回転自在に収容し発熱電子部品65と熱的に接続される受熱部67と連接されたファンケーシング69と、を備え、発熱電子部品65からファンケーシング69へ伝達した熱を遠心ファン68の送風によって放熱する遠心ファン装置66であって、発熱電子部品65と熱的に接続された受熱部67の熱が熱輸送部70を伝熱してファンケーシング69内の送風路へ熱輸送され、その送風路を流れる空気とファンケーシング69とが直接的に接触するので、より熱交換が促進され効率的に放熱する作用がある。
ここで、電子機器60の本体装置61の筐体の底面61aには、ファンケーシング69の取り付け位置に対応する場所に複数個の通風口71が設けられているので、遠心ファン68の吸気作用によってその本体装置61の筐体の底面61aの下側における外部の冷えた空気が、矢印で示したようにその通風口71を通過してファンケーシング69内の送風路に吸気され、ファンケーシング69内を流れる間に受熱部67から熱輸送部70を伝熱してファンケーシング69へより熱輸送された熱を熱交換により受け取り、矢印で示したように本体装置61の筐体の側面61bの通風口72から外部に吹き出される。
さらに詳細に説明すると、図15(b)は、図15(a)における遠心ファン装置66の排気口73からの送風方向に沿った部分断面図を示しており、前述した電子機器60の本体装置61の筐体内部に配置された回路基板64の下側面には、冷却されるべき発熱電子部品65が実装されていて、それを冷却する遠心ファン装置66が搭載されている状態が詳細に示されている。
そして、実施の形態1で説明したように、この遠心ファン装置66は、正圧面Pに凸部68aの形成されたブレード部の回転によって空気を送風する遠心ファン68と、その遠心ファン68を回転自在に収容しその遠心ファン68を挟んで対向配置された一対の吸気口69a、69bを有するファンケーシング69と、を備えているので、その遠心ファン装置66のファン騒音や異音が低減されるため、電子機器60の動作中における静音性を高め、より快適な作業環境をオペレータに提供することができる。
なお、以上の各実施の形態の説明において、各構成要素の寸法、数量、材質、形状、その相対的な配置などは、特にそれらに限定される旨の記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なるひとつの実施の形態の説明に過ぎず、様々な変形が可能である。
特に、主要な構成要素である遠心ファンのハブ部、ブレード部、及び凸部の寸法、数量、形状、その相対的な配置などについては、前記の実施の形態のみに限定されず、特に凸部は、所望の作用・効果が得られれば、カバー及びフレームの一対の吸気口のいずれかの投影面積領域内において形成されればよいし、それぞれのブレード部に対して非連続的に複数個形成してもよいし、幅、高さ、断面形状がその長手方向において不均一でもよいし、遠心ファンの全ブレード部に形成するのではなくその一部のブレード部のみに形成してもよい。
また、ブレード部の形状についても、特に限定はなく、幅方向において上下非対称であったり、全体幅が内径側から外径側まで均一であったり、回転軸と直交する方向の形状がストレートではなく内径側、外径側、または中間で湾曲するような形状であったり、ブレード部の先端部に円環板やリブを設けてもよい。
また、ファンケーシングの外形についても、特に限定はなく、略円形、略三角形、略四角形、略平行四辺形、あるいはそれ以外の種々の多角形でも構わなく、排気口も1方向ではなく、2方向やそれ以上の方向に設けてもよい。
また、ファンケーシングの構成についても、単にカバーとフレームとからのみ構成されたものではなく、そのカバーまたはフレームの一部に発熱電子部品と熱的な接続を行う受熱部を設けたり、放熱性を有する放熱フィンからなるヒートシンクなどをダイカスト成型やプレス成形などによって一体的に設けたりする構成でもよいし、さらにその間の熱輸送を効率的に行うヒートパイプや熱伝導性シートなどの熱輸送部材を別に備えていてもよい。