JP4631215B2 - 弾性体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム又はエラストマーなどの高分子弾性体よりなる基材表面に強固に結合した炭素系被膜を備えてなる弾性体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ゴム又はエラストマー(以下、高分子弾性体という)からなる基材の表面に関して、低摺動抵抗性や非粘着性などの向上を目的に、炭素系被膜を基材の表面に形成することが行われている。
例えば、特開平9−249873号公報に記載されたものがある。上記従来技術における炭素系被膜は、一般にダイアモンドライクカーボン被膜(以下、DLC被膜という)と呼称され、高い表面硬度を有し、良好な低摺動抵抗性を有することを特徴とするものである。このDLC被膜は、被膜処理物質を真空層内にて炭化水素プラズマガスに曝して、上記被膜処理物質表面に炭素系イオンを堆積させたものである。高分子弾性体表面にも成膜可能であり、形成条件によっては、ある程度まで柔軟性を持たせることもできる。
【0003】
また、合成樹脂、合成ゴムなどの高分子弾性体質の表面改質方法として、例えば特開平9−208706号公報に記載されたものがある。上記従来技術におけるイオンコーティング又は注入技術は、真空領域内において、蒸気発生装置としての密閉型るつぼの中で元素を加熱して蒸気を生成し、蒸気るつぼに設けた噴射用ノズルにより真空領域内へ或いは低圧ガス雰囲気内へ噴射させ、蒸気の一部或いは全部がイオン化されるように電子ビームを照射し、且つイオン加速電極部でイオンを加速させた後、質量分離装置で必要なイオンのみを分離して取り出し、その後、その取り出されたイオンを、撹拌装置で撹拌されている試料として高分子弾性体質に照射することによって、その高分子弾性体質にイオン注入又は表面にコーティングを行い、高分子弾性体質の機械的物性を改質するというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の高分子弾性体に設けた炭素系被膜は、高分子弾性体のごく表面、すなわち炭素被膜との結合境界面でしか結合が生じていないため、基材との十分な結合力が得づらく、高負荷がかかる摺動部品や大変形するような高分子弾性体部品では、剥離し易く、適用が難しいものであった。
また、従来の高分子弾性体質へのイオン注入処理は、成形前の素材状態の高分子弾性体質にイオンをコーティング又は注入することにより、素材そのものの機械的特性を改質せんとするものであり、素材である高分子弾性体がもとから有する、優れた機械的特性を生かしつつ、その表面あるいは表層の摺動性や非粘着性を改良する用途には向かないものであった。
【0005】
そこで、本発明は、高分子弾性体よりなる基材と強固な結合を有し、かつ柔軟性を有する基材表層に炭素系被膜を備えた弾性体を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ゴム又はエラストマーよりなる基材と、上記基材の表層の少なくとも一部に炭素系イオンの注入処理後、炭素系イオンを堆積させてなる炭素系被膜とを備え、上記炭素系被膜は、上記基材を導体に接続した状態で真空槽内に配置し、上記真空槽内にガスを導入し、上記導体を通じて高周波電力を印加して、上記基材の周囲に上記ガスのプラズマを発生させ、上記導体を通じて上記基材に高電圧パルスを印加することにより、上記プラズマ中の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、炭素系イオンを堆積させて設けたこととしたものである。
【0007】
本発明における炭素系イオンは、そのイオン生成方法によって異なるが、例えば、炭化水素ガスをプラズマ化することによって炭化水素イオンとして得ることができる。
【0008】
この炭化水素イオンすなわち炭素系イオンを、例えば、真空槽内に設定した電界を利用して加速し、高分子弾性体からなる基材の被膜形成部位に照射して、上記被膜形成部位の表層内部に注入し、基材の表面に堆積させて、炭素系被膜としたものである。
従って、上記基材表面から所定深さまで炭素系イオンが入り込み、この表層内部に入り込んだ炭素系イオンと基材表面の上方に形成された炭素系被膜の炭素系イオンとが立体的な結合を生じるので、強固な結合を実現することができる。
また、表層内部から表面への炭素系イオンの密度は徐々に高くなるので、比較的高硬度を有する炭素系被膜と高分子弾性体よりなる基材の機械的特性が徐々に変化するので、剥離が生じづらい。
【0009】
特に基材が炭素原子を有するゴムなどでは、注入された炭素系イオンと、基材自身の炭素とが化学結合するので、より結合力が強く、剥離しづらい炭素系被膜を備えた弾性体とすることができる。
【0010】
また、一般に、イオンを基材に誘引させるためには、基材に高い高周波電力かける必要があり、基材が熱に弱いゴムやエラストマーの場合には発熱によって破壊することがあるため、冷却機構が必要となるが、本発明においては、高電圧パルスによって炭素系イオンを基材に誘引するので、基材に印加される電力量が少なくて済み、熱に弱いゴムやエラストマーにも冷却機構なしにイオン注入、あるいは堆積させることが出来る。
【0011】
本発明の作用を図1および図2を用いて説明する。
図1は、従来の炭素系被膜、所謂DLCにおける成膜を説明する図であり、図1(a)は、従来の成膜前の基材断面の概念図、図1(b)は、成膜後の基材および処理層(炭素系被膜)断面の概念図である。
図1(a)において、基材の周囲に、例えば、原料ガスである炭化水素ガスのプラズマを発生させて炭化水素を分解し、電子および非常に高活性な水素、炭化水素ラジカルあるいはこれらのイオンなどを生成せしめる。そして、これらのラジカル、イオンに電界を与えて、基材となる高分子弾性体(被コーティング物)の表面に接触させて、例えば、高分子弾性体の表面に存在する炭化水素原子の水素原子を引き抜き、高分子弾性体の表面を活性化させる。このとき、水素原子を得た上記ラジカル、イオンは、安定な炭化水素、水素ガスとなり飛散する。活性化された高分子弾性体の表面では、新たな炭化水素ラジカル、炭化水素イオンと出会ったときに炭素−炭素結合が生じ、炭素原子を高分子弾性体の表面に固定させ、堆積させることによって、炭素系被膜をなさしめるのである。従って、この反応は高分子弾性体のごく表面のみで行われるものである。
【0013】
次に、本発明に係る成膜を図2を用いて説明する。
図2(a)は、高周波電圧を基材に印加することによって、基材に沿った周囲空間にプラズマを生成させる。さらに、高電圧パルスを印加し、基材自身を電極の一端とすることによって、炭素イオンを誘引し、炭素イオンを基材内部へ注入する。そして、上記イオンが高分子弾性体の表層内部の、主としてゴムやエラストマーが主鎖あるいは側鎖に有している炭素原子と結合し、表面から内部方向に厚みを有するイオン注入層(ミキシング層)が生成されるのである。
従って、C−C結合は表面だけでなく表層内部にも形成されるので、強固な炭素系被膜を生成することが出来る。
上記イオン注入層は、深部から表層に向かって徐々に、注入された炭素イオン密度が高くなっていくので、このイオン注入層は、炭素系被膜に向けて徐々に硬度を増すことになる。よって、柔軟なゴムやエラストマー層と高硬度の炭素系被膜の硬度変化が緩やかになるので、硬度の境界が存在せず、応力が集中しづらい。よって柔軟な基材に設けても剥離しづらい炭素系被膜とすることができるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の弾性体を具現化した一実施例であるガソリン燃料用のゴム製弁を例に取り、図3〜図4を用いて説明する。
図3は、本発明に係るガソリン燃料用ゴム製弁の断面図である。
1は、自動車などの燃料供給配管に用いられるガソリン燃料用のゴム製弁であり、2は略円筒状の金具であり、この金具2は、一端に内周方向へ縮径するフランジ部2aを有し、他端に外周方向へ拡径するフランジ部2bを有し、このフランジ部2bにフッ素ゴムより形成される弁ゴム本体3を加硫成型により成形し、固着させている。
【0015】
図4は、図3における炭素被膜形成部位Aの部分拡大断面図であり、3はフッ素ゴムよりなる基材であり、3aは基材3の基材内層である。3bは炭素系イオン注入層であり、基材表面より0.1〜1.0μm程度の深さに達しているものと推測される。3cは、炭素系被膜であり、約1〜3μmの膜厚を有する。上記炭素系イオン処理層や炭素系被膜の厚さは、炭素被膜表面から基材内部へ向けて炭素系イオン濃度が推移していくため、それぞれの境界がはっきりしないので、それぞれの膜あるいは層の明確な厚みは測定できない。
【0016】
次に、本発明に係る弾性体に炭素系被膜を形成するための装置を図5に示す被膜形成装置の概略図を用いて説明する。
図において、4は真空槽であり、この真空槽4の中には、基材を固定し、被処理物に直接電圧を印加可能な導体からなるホルダ電極5が設置され、このホルダ電極5には高周波電源6から供給される電圧とパルス発生用電源7から供給される電圧を重畳装置8によって重畳された高周波電圧が適宜印加可能に設置されている。
また、この真空槽4にはガス供給部9および、排気装置10が付設され、ガス供給部9により内部にプラズマ原料ガスを導入できるようになっており、排気装置10により内部ガスの排出および真空度の調節を行うものである。
なお、図における矢印は、炭素イオンの誘因方向を示す。
【0017】
次に、炭素系被膜を成膜する方法について、図5に示す被膜形成装置を用いて上記一実施例であるゴム製弁1に成膜した例を用いて説明する。
まず、ゴム製弁1を通常の加硫成型手段にて成形する。そして、成膜予定部位について、アルコールで表面の油脂やゴミなどを除去する。
次に、ゴム製弁1を真空槽4内に搬入し、ホルダ電極5にゴム製弁1を固定し、排気装置10の運転にて真空槽4の内部を所定の真空度(例えば0.3〜0.5Pa)まで排気する。
次に、ガス供給部9から真空槽4の内部に洗浄処理用ガスとして、水素ガスを導入する。なお、上記洗浄処理用ガスは、水素ガス、窒素ガス、酸素ガス、フッ素ガス、及びフッ化物ガス、不活性ガスのうち1種以上のガスであれば良く、適当に選定することが出来る。
【0018】
次に、高周波電源6からホルダ電極5に高周波電圧800V〜1000V、10minを供給し、これにより真空槽4内に導入した洗浄処理ガスをプラズマ化し、このプラズマのもとでゴム製弁1の洗浄処理を行う。
そして、洗浄処理後、高周波電圧の供給を停止し、上記洗浄処理用ガスを排気する。
【0019】
次に、必要に応じて真空槽4の内部を再び真空引きした後、ガス供給部9から真空槽4の内部にイオン注入用原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入し、上記と同様の手段にてプラズマ化する。そして、高周波電源6より供給される高周波電圧600V〜800Vに、パルス発生用電源7から供給される高電圧パルス20kV(10μsec)、60minを重畳装置8にて重畳し、ホルダ電極5を介してゴム製弁1に印加する。ゴム製弁1は、印加された高電圧パルスにより帯電して、電極として機能し、ゴム製弁1のごく近傍に発生したプラズマ化された炭化水素ガス中に存在する炭素系イオンを引き寄せる。誘引された炭素系イオンは、ゴム製弁1の表層内部に誘引注入されて、炭素系イオン注入層が成形される。
【0020】
続いて、ゴム製弁1に印加される高電圧パルスを調整して、炭素系イオンの衝突速度を落とし、炭素系イオンを上記炭素系イオン注入層の上層に誘引堆積させ、炭素系被膜の層を形成するのである。
【0021】
従って、上記誘引注入により基材の表層内部に入り込んだ炭素系イオンと、上記誘引堆積により表層に堆積した炭素系イオンは、表層内部への注入から表層への堆積へと連続的に成形されたものであるので、炭素系イオン同士が強固に結合するうえ、結合が表層内部にまで及ぶため、高分子弾性体と成膜された炭素被膜は強固な結合力を有するのである。
また、上記炭化水素化合物ガスのプラズマは、重畳して印加される高電圧パルスにより、基材に沿った周囲空間に生成されるため、炭素系イオンの発生場所との距離が近いので、基材に過大な電力を印加することなく、基材に沿った周囲空間から炭素系イオンを誘引するので、基材を動かすことなく、あらゆる表面に成膜することが出来る。
【0022】
次に、本発明に係る弾性体と従来技術にかかる弾性体を比較するため、2枚の100mm×50mm×2mmのフッ素ゴムよりなるシートゴムを通常の加硫手段にて成型して用意し、一方を上記に説明した本発明に係る炭素被膜をシート表面に形成したゴムシートを実施例1として製作し、他方を、下記に記載する従来の方法にて、従来の炭素被膜を形成したゴムシートを比較例1として製作した。
【0023】
比較例1における従来の炭素被膜の形成方法は、図6に概略図を示した成膜装置を用い、以下の方法にて行った。なお、図5に示す成膜装置と同様の部位に関しては、同一の符号とした。
まず、ゴムシートを真空槽4内に搬入し、成膜する部分が上側電極11と相対するように図示せぬゴムシートをホルダを兼ねる下側電極12に支持し、排気装置の運転にて真空槽4の内部を所定の真空度まで排気する。表面処理工程として、ガス供給部から真空槽4の内部に水素ガスを導入し、再度10Paまで真空引きする。高周波電源6よりマッチングボックス13から上側電極11に高周波電力、800V〜1000V、10min供給し、これにより上記導入した前処理用ガスをプラズマ化し、このプラズマのもとでゴム製弁の表面処理を行う。そして、表面処理後、高周波電力の供給を停止し、上記前処理用ガスを排気する。
炭素被膜の成膜工程として、真空槽4の内部を再び真空引きした後、ガス供給部から真空槽4の内部に炭素被膜成膜用原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入し、再び10Paまで真空引きし、高周波電圧600V〜800V、60min印加してプラズマ化する。そして、プラズマ化した炭化水素イオンを上記上側電極11と上記下側電極12間に生じた電界によって加速し、ゴムシートの表面に炭素系被膜、所謂DLC被膜を形成した。
【0024】
試験は、上記実施例1および比較例1について、熱老化試験前後の摩擦係数および剥離試験によって評価した。
熱老化試験は、雰囲気温度175℃×70Hrの熱老化試験を行うこととし、図7に示す摩擦係数測定試験装置(新東科学製HEIDON−14R試験装置)を用いて、熱老化前後の摩擦係数を測定した。
また、剥離試験は、JIS−K5400塗料一般試験方法の碁盤目テープ法に従って、評価した。
ここで、図7において、14は実施例1又は比較例1などの被測定体であり、被測定体14は、滑らかな表面を有する試験台15の上面に載置される。この被測定体14の中央上面には、直径10mmのSUS製の球体16およびこの球体16に接続されている重り17、支持棒18が載置され、上記球体16を介して、押しつけ加重200gが負荷されている。この支持棒18は、上下方向に自由支持されているが、水平方向にはロードセル19に接続された測定バー20にて位置規制されている。被測定体14を水平方向に速度600mm/minにて移動させた時に生じる被測定体14と球体16の摩擦によって球体16が引かれる力を支持棒18および測定バー20を介して水平方向への荷重をロードセル19によって測定する。
【0025】
それぞれの実施例1および比較例1について、静摩擦係数および熱老化試験後の剥離試験の結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0004631215
【0027】
表1に示すように、実施例1によれば、従来技術による炭素被膜を有するものよりも低い摩擦係数を示すことがわかる。また、熱老化試験175℃、70時間後の剥離試験においては、比較例1に剥離が見られたのに対して、本発明に係る実施例1には、剥離が生じておらず、熱老化後においても強い結合性を有することがわかる。
従って、本発明に係る実施の形態によれば、従来技術による炭素被膜成形技術に対して、高い耐久性を有するとともに、より低い静摩擦係数が実現できるといえる。
【0028】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成の一部を適宜に変更できることはもちろんである。
上記実施例の成膜時の高電圧パルスの印加は、高周波数電圧と重畳して印加することとしたが、基材や注入深度、プラズマガスに応じて、高電圧パルスと高周波電圧の印加を交番印加したりするなど種々変更することが出来る。また、上記実施例においては、炭素系被膜の成膜に際し、誘引注入から誘引堆積に切り替えるため、高電圧パルスを調整、具体的には電圧値あるいはパルス印加パターンを調整することもできるが、誘引注入から誘引堆積まで一定の高電圧パルスを印加することとしても良い。
また、上記実施例においては、高分子弾性体をフッ素ゴムとしたが、これに限定されるものではないことはもちろんであり、特にカーボンを混練りしたゴムや同様にカーボンを混入したエラストマーあるいは炭素分子鎖、炭素分子を側鎖に有する高分子弾性体およびそのブレンド材が好適である。
また、炭素系被膜の膜厚や、炭素系イオンの注入深度は、弾性体の形状、用途により適宜選ばれるものであって、上記に限定されないことはもちろんである。
【0029】
従って、摺動性および非固着性を有しつつ高荷重に耐えることができるうえ、弾性変形も可能であるので、例えば、高荷重摺動用パッキン、弁体、ダイヤフラムなどに適用することが出来る。
【0030】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明の請求項1記載の発明は、ゴム又はエラストマーよりなる基材に炭素系イオン注入層を設け、その上層に、上記基材を導体に接続した状態で真空槽内に配置し、上記真空槽内にガスを導入し、上記導体を通じて高周波電力を印加して、上記基材の周囲に上記ガスのプラズマを発生させ、上記導体を通じて上記基材に高電圧パルスを印加することにより、上記プラズマ中の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、炭素系イオンを堆積させて炭素被膜を設けたことにより、基材である高分子弾性体と炭素被膜間に強固な結合を生じさせることができ、優れた耐剥離性を有するとともに、低摩擦性を発揮する弾性体とすることができる。さらに、上記において、炭素系イオン注入層と炭素被膜を連続して設けた場合には、さらに強固な結合を有する炭素系被膜を有する弾性体とすることができる。また、ゴム又はエラストマーよりなる基材の、少なくとも炭素系イオン注入層に炭素原子が存在するときには、上記基材とその表面に形成した炭素被膜間にさらに強い結合生じさせることができ、さらに優れた耐剥離性を奏することができる。また、上記炭素系皮膜は、炭素系イオンを低い電力量で誘引注入、誘引堆積させて設けることが出来るため、熱に弱いゴム又はエラストマーを基材に選んだ場合においても、基材と炭素被膜間に強固な結合を生じさせることができ、優れた耐剥離性を有するとともに、低摩擦性を発揮する弾性体とすることができる。また、基材に沿った周囲空間から炭素系イオンを誘引するので、基材を動かすことなく、基材のあらゆる表面に成膜することが出来るなどの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術に係る炭素系被膜の成膜を説明する図である。
【図2】本発明に係る炭素系被膜の成膜を説明する図である。
【図3】本発明の弾性体を具現化した一実施例であるガソリン燃料用ゴム製弁の断面図である。
【図4】図3における炭素被膜形成部位Aの部分拡大断面図である。
【図5】本発明に係る弾性体を製造可能な被膜形成装置を示す概略図である。
【図6】従来技術に係る弾性体を製造可能な被膜形成装置を示す概略図である。
【図7】摩擦係数測定試験装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・ゴム製弁
2・・・金具
2a、2b・・・フランジ
3・・・基材
3a・・・基材内層
3b・・・ミキシング層
3c・・・炭素被膜
4・・・真空槽
5・・・ホルダ電極
6・・・高周波電源
7・・・パルス発生用電源
8・・・重畳装置
9・・・ガス供給部
10・・・排気装置
11・・・上側電極
12・・・下側電極
13・・・マッチングボックス

Claims (1)

  1. ゴム又はエラストマーよりなる基材と、上記基材の表層の少なくとも一部に炭素系イオンの注入処理後、炭素系イオンを堆積させてなる炭素系被膜とを備え
    上記炭素系被膜は、上記基材を導体に接続した状態で真空槽内に配置し、上記真空槽内にガスを導入し、上記導体を通じて高周波電力を印加して、上記基材の周囲に上記ガスのプラズマを発生させ、上記導体を通じて上記基材に高電圧パルスを印加することにより、上記プラズマ中の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、炭素系イオンを堆積させて設けたことを特徴とする弾性体。
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