JP2002326304A - 弾性体 - Google Patents

弾性体

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JP2002326304A
JP2002326304A JP2001170276A JP2001170276A JP2002326304A JP 2002326304 A JP2002326304 A JP 2002326304A JP 2001170276 A JP2001170276 A JP 2001170276A JP 2001170276 A JP2001170276 A JP 2001170276A JP 2002326304 A JP2002326304 A JP 2002326304A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高分子弾性体よりなる基材と強固な結合を
有し、かつ柔軟性を有する基材表層に炭素系被膜を備え
た弾性体を提供すること。 【解決手段】 ゴム又はエラストマーよりなる基材3
と、上記基材の表層の少なくとも一部に炭素系イオンの
注入処理後、炭素系イオンを堆積させてなる炭素系被膜
3cとを備えたこととしたものである。また、上記炭素
系被膜3cは、上記基材を導体に接続した状態で真空槽
内に配置し、上記真空槽内にガスを導入し、上記導体を
通じて高周波電力を印加して、上記基材の周囲に上記ガ
スのプラズマを発生させ、上記導体を通じて上記基材3
に高電圧パルスを印加することにより、上記プラズマ中
の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、炭素系イ
オンを堆積させて設けたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム又はエラスト
マーなどの高分子弾性体よりなる基材表面に強固に結合
した炭素系被膜を備えてなる弾性体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ゴム又はエラストマー(以
下、高分子弾性体という)からなる基材の表面に関し
て、低摺動抵抗性や非粘着性などの向上を目的に、炭素
系被膜を基材の表面に形成することが行われている。例
えば、特開平9−249873号公報に記載されたもの
がある。上記従来技術における炭素系被膜は、一般にダ
イアモンドライクカーボン被膜(以下、DLC被膜とい
う)と呼称され、高い表面硬度を有し、良好な低摺動抵
抗性を有することを特徴とするものである。このDLC
被膜は、被膜処理物質を真空層内にて炭化水素プラズマ
ガスに曝して、上記被膜処理物質表面に炭素系イオンを
堆積させたものである。高分子弾性体表面にも成膜可能
であり、形成条件によっては、ある程度まで柔軟性を持
たせることもできる。
【0003】また、合成樹脂、合成ゴムなどの高分子弾
性体質の表面改質方法として、例えば特開平9−208
706号公報に記載されたものがある。上記従来技術に
おけるイオンコーティング又は注入技術は、真空領域内
において、蒸気発生装置としての密閉型るつぼの中で元
素を加熱して蒸気を生成し、蒸気るつぼに設けた噴射用
ノズルにより真空領域内へ或いは低圧ガス雰囲気内へ噴
射させ、蒸気の一部或いは全部がイオン化されるように
電子ビームを照射し、且つイオン加速電極部でイオンを
加速させた後、質量分離装置で必要なイオンのみを分離
して取り出し、その後、その取り出されたイオンを、撹
拌装置で撹拌されている試料として高分子弾性体質に照
射することによって、その高分子弾性体質にイオン注入
又は表面にコーティングを行い、高分子弾性体質の機械
的物性を改質するというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
高分子弾性体に設けた炭素系被膜は、高分子弾性体のご
く表面、すなわち炭素被膜との結合境界面でしか結合が
生じていないため、基材との十分な結合力が得づらく、
高負荷がかかる摺動部品や大変形するような高分子弾性
体部品では、剥離し易く、適用が難しいものであった。
また、従来の高分子弾性体質へのイオン注入処理は、成
形前の素材状態の高分子弾性体質にイオンをコーティン
グ又は注入することにより、素材そのものの機械的特性
を改質せんとするものであり、素材である高分子弾性体
がもとから有する、優れた機械的特性を生かしつつ、そ
の表面あるいは表層の摺動性や非粘着性を改良する用途
には向かないものであった。
【0005】そこで、本発明は、高分子弾性体よりなる
基材と強固な結合を有し、かつ柔軟性を有する基材表層
に炭素系被膜を備えた弾性体を提供することを目的とす
るものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、ゴム又はエラストマーより
なる基材と、上記基材の表層の少なくとも一部に炭素系
イオンの注入処理後、炭素系イオンを堆積させてなる炭
素系被膜とを備えたこととしたものである。さらに、請
求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に加えて、上
記炭素系被膜は、上記基材を導体に接続した状態で真空
槽内に配置し、上記真空槽内にガスを導入し、上記導体
を通じて高周波電力を印加して、上記基材の周囲に上記
ガスのプラズマを発生させ、上記導体を通じて上記基材
に高電圧パルスを印加することにより、上記プラズマ中
の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、炭素系イ
オンを堆積させて設けたこととしたものである。
【0007】本発明における炭素系イオンは、そのイオ
ン生成方法によって異なるが、例えば、炭化水素ガスを
プラズマ化することによって炭化水素イオンとして得る
ことができる。
【0008】この炭化水素イオンすなわち炭素系イオン
を、例えば、真空槽内に設定した電界を利用して加速
し、高分子弾性体からなる基材の被膜形成部位に照射し
て、上記被膜形成部位の表層内部に注入し、基材の表面
に堆積させて、炭素系被膜としたものである。従って、
上記基材表面から所定深さまで炭素系イオンが入り込
み、この表層内部に入り込んだ炭素系イオンと基材表面
の上方に形成された炭素系被膜の炭素系イオンとが立体
的な結合を生じるので、強固な結合を実現することがで
きる。また、表層内部から表面への炭素系イオンの密度
は徐々に高くなるので、比較的高硬度を有する炭素系被
膜と高分子弾性体よりなる基材の機械的特性が徐々に変
化するので、剥離が生じづらい。
【0009】特に基材が炭素原子を有するゴムなどで
は、注入された炭素系イオンと、基材自身の炭素とが化
学結合するので、より結合力が強く、剥離しづらい炭素
系被膜を備えた弾性体とすることができる。
【0010】また、一般に、イオンを基材に誘引させる
ためには、基材に高い高周波電力かける必要があり、基
材が熱に弱いゴムやエラストマーの場合には発熱によっ
て破壊することがあるため、冷却機構が必要となるが、
本発明においては、高電圧パルスによって炭素系イオン
を基材に誘引するので、基材に印加される電力量が少な
くて済み、熱に弱いゴムやエラストマーにも冷却機構な
しにイオン注入、あるいは堆積させることが出来る。
【0011】本発明の作用を図1および図2を用いて説
明する。図1は、従来の炭素系被膜、所謂DLCにおけ
る成膜を説明する図であり、図1(a)は、従来の成膜
前の基材断面の概念図、図1(b)は、成膜後の基材お
よび処理層(炭素系被膜)断面の概念図である。図1
(a)において、基材の周囲に、例えば、原料ガスであ
る炭化水素ガスのプラズマを発生させて炭化水素を分解
し、電子および非常に高活性な水素、炭化水素ラジカル
あるいはこれらのイオンなどを生成せしめる。そして、
これらのラジカル、イオンに電界を与えて、基材となる
高分子弾性体(被コーティング物)の表面に接触させ
て、例えば、高分子弾性体の表面に存在する炭化水素原
子の水素原子を引き抜き、高分子弾性体の表面を活性化
させる。このとき、水素原子を得た上記ラジカル、イオ
ンは、安定な炭化水素、水素ガスとなり飛散する。活性
化された高分子弾性体の表面では、新たな炭化水素ラジ
カル、炭化水素イオンと出会ったときに炭素−炭素結合
が生じ、炭素原子を高分子弾性体の表面に固定させ、堆
積させることによって、炭素系被膜をなさしめるのであ
る。従って、この反応は高分子弾性体のごく表面のみで
行われるものである。
【0013】次に、本発明に係る成膜を図2を用いて説
明する。図2(a)は、高周波電圧を基材に印加するこ
とによって、基材に沿った周囲空間にプラズマを生成さ
せる。さらに、高電圧パルスを印加し、基材自身を電極
の一端とすることによって、炭素イオンを誘引し、炭素
イオンを基材内部へ注入する。そして、上記イオンが高
分子弾性体の表層内部の、主としてゴムやエラストマー
が主鎖あるいは側鎖に有している炭素原子と結合し、表
面から内部方向に厚みを有するイオン注入層(ミキシン
グ層)が生成されるのである。従って、C−C結合は表
面だけでなく表層内部にも形成されるので、強固な炭素
系被膜を生成することが出来る。上記イオン注入層は、
深部から表層に向かって徐々に、注入された炭素イオン
密度が高くなっていくので、このイオン注入層は、炭素
系被膜に向けて徐々に硬度を増すことになる。よって、
柔軟なゴムやエラストマー層と高硬度の炭素系被膜の硬
度変化が緩やかになるので、硬度の境界が存在せず、応
力が集中しづらい。よって柔軟な基材に設けても剥離し
づらい炭素系被膜とすることができるのである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の弾性体を具現化し
た一実施例であるガソリン燃料用のゴム製弁を例に取
り、図3〜図4を用いて説明する。図3は、本発明に係
るガソリン燃料用ゴム製弁の断面図である。1は、自動
車などの燃料供給配管に用いられるガソリン燃料用のゴ
ム製弁であり、2は略円筒状の金具であり、この金具2
は、一端に内周方向へ縮径するフランジ部2aを有し、
他端に外周方向へ拡径するフランジ部2bを有し、この
フランジ部2bにフッ素ゴムより形成される弁ゴム本体
3を加硫成型により成形し、固着させている。
【0015】図4は、図3における炭素被膜形成部位A
の部分拡大断面図であり、3はフッ素ゴムよりなる基材
であり、3aは基材3の基材内層である。3bは炭素系
イオン注入層であり、基材表面より0.1〜1.0μm
程度の深さに達しているものと推測される。3cは、炭
素系被膜であり、約1〜3μmの膜厚を有する。上記炭
素系イオン処理層や炭素系被膜の厚さは、炭素被膜表面
から基材内部へ向けて炭素系イオン濃度が推移していく
ため、それぞれの境界がはっきりしないので、それぞれ
の膜あるいは層の明確な厚みは測定できない。
【0016】次に、本発明に係る弾性体に炭素系被膜を
形成するための装置を図5に示す被膜形成装置の概略図
を用いて説明する。図において、4は真空槽であり、こ
の真空槽4の中には、基材を固定し、被処理物に直接電
圧を印加可能な導体からなるホルダ電極5が設置され、
このホルダ電極5には高周波電源6から供給される電圧
とパルス発生用電源7から供給される電圧を重畳装置8
によって重畳された高周波電圧が適宜印加可能に設置さ
れている。また、この真空槽4にはガス供給部9およ
び、排気装置10が付設され、ガス供給部9により内部
にプラズマ原料ガスを導入できるようになっており、排
気装置10により内部ガスの排出および真空度の調節を
行うものである。なお、図における矢印は、炭素イオン
の誘因方向を示す。
【0017】次に、炭素系被膜を成膜する方法につい
て、図5に示す被膜形成装置を用いて上記一実施例であ
るゴム製弁1に成膜した例を用いて説明する。まず、ゴ
ム製弁1を通常の加硫成型手段にて成形する。そして、
成膜予定部位について、アルコールで表面の油脂やゴミ
などを除去する。次に、ゴム製弁1を真空槽4内に搬入
し、ホルダ電極5にゴム製弁1を固定し、排気装置10
の運転にて真空槽4の内部を所定の真空度(例えば0.
3〜0.5Pa)まで排気する。次に、ガス供給部9か
ら真空槽4の内部に洗浄処理用ガスとして、水素ガスを
導入する。なお、上記洗浄処理用ガスは、水素ガス、窒
素ガス、酸素ガス、フッ素ガス、及びフッ化物ガス、不
活性ガスのうち1種以上のガスであれば良く、適当に選
定することが出来る。
【0018】次に、高周波電源6からホルダ電極5に高
周波電圧800V〜1000V、10minを供給し、
これにより真空槽4内に導入した洗浄処理ガスをプラズ
マ化し、このプラズマのもとでゴム製弁1の洗浄処理を
行う。そして、洗浄処理後、高周波電圧の供給を停止
し、上記洗浄処理用ガスを排気する。
【0019】次に、必要に応じて真空槽4の内部を再び
真空引きした後、ガス供給部9から真空槽4の内部にイ
オン注入用原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入
し、上記と同様の手段にてプラズマ化する。そして、高
周波電源6より供給される高周波電圧600V〜800
Vに、パルス発生用電源7から供給される高電圧パルス
20kV(10μsec)、60minを重畳装置8に
て重畳し、ホルダ電極5を介してゴム製弁1に印加す
る。ゴム製弁1は、印加された高電圧パルスにより帯電
して、電極として機能し、ゴム製弁1のごく近傍に発生
したプラズマ化された炭化水素ガス中に存在する炭素系
イオンを引き寄せる。誘引された炭素系イオンは、ゴム
製弁1の表層内部に誘引注入されて、炭素系イオン注入
層が成形される。
【0020】続いて、ゴム製弁1に印加される高電圧パ
ルスを調整して、炭素系イオンの衝突速度を落とし、炭
素系イオンを上記炭素系イオン注入層の上層に誘引堆積
させ、炭素系被膜の層を形成するのである。
【0021】従って、上記誘引注入により基材の表層内
部に入り込んだ炭素系イオンと、上記誘引堆積により表
層に堆積した炭素系イオンは、表層内部への注入から表
層への堆積へと連続的に成形されたものであるので、炭
素系イオン同士が強固に結合するうえ、結合が表層内部
にまで及ぶため、高分子弾性体と成膜された炭素被膜は
強固な結合力を有するのである。また、上記炭化水素化
合物ガスのプラズマは、重畳して印加される高電圧パル
スにより、基材に沿った周囲空間に生成されるため、炭
素系イオンの発生場所との距離が近いので、基材に過大
な電力を印加することなく、基材に沿った周囲空間から
炭素系イオンを誘引するので、基材を動かすことなく、
あらゆる表面に成膜することが出来る。
【0022】次に、本発明に係る弾性体と従来技術にか
かる弾性体を比較するため、2枚の100mm×50m
m×2mmのフッ素ゴムよりなるシートゴムを通常の加
硫手段にて成型して用意し、一方を上記に説明した本発
明に係る炭素被膜をシート表面に形成したゴムシートを
実施例1として製作し、他方を、下記に記載する従来の
方法にて、従来の炭素被膜を形成したゴムシートを比較
例1として製作した。
【0023】比較例1における従来の炭素被膜の形成方
法は、図6に概略図を示した成膜装置を用い、以下の方
法にて行った。なお、図5に示す成膜装置と同様の部位
に関しては、同一の符号とした。まず、ゴムシートを真
空槽4内に搬入し、成膜する部分が上側電極11と相対
するように図示せぬゴムシートをホルダを兼ねる下側電
極12に支持し、排気装置の運転にて真空槽4の内部を
所定の真空度まで排気する。表面処理工程として、ガス
供給部から真空槽4の内部に水素ガスを導入し、再度1
0Paまで真空引きする。高周波電源6よりマッチング
ボックス13から上側電極11に高周波電力、800V
〜1000V、10min供給し、これにより上記導入
した前処理用ガスをプラズマ化し、このプラズマのもと
でゴム製弁の表面処理を行う。そして、表面処理後、高
周波電力の供給を停止し、上記前処理用ガスを排気す
る。炭素被膜の成膜工程として、真空槽4の内部を再び
真空引きした後、ガス供給部から真空槽4の内部に炭素
被膜成膜用原料ガスとして炭化水素化合物ガスを導入
し、再び10Paまで真空引きし、高周波電圧600V
〜800V、60min印加してプラズマ化する。そし
て、プラズマ化した炭化水素イオンを上記上側電極11
と上記下側電極12間に生じた電界によって加速し、ゴ
ムシートの表面に炭素系被膜、所謂DLC被膜を形成し
た。
【0024】試験は、上記実施例1および比較例1につ
いて、熱老化試験前後の摩擦係数および剥離試験によっ
て評価した。熱老化試験は、雰囲気温度175℃×70
Hrの熱老化試験を行うこととし、図7に示す摩擦係数
測定試験装置(新東科学製HEIDON−14R試験装
置)を用いて、熱老化前後の摩擦係数を測定した。ま
た、剥離試験は、JIS−K5400塗料一般試験方法
の碁盤目テープ法に従って、評価した。ここで、図7に
おいて、14は実施例1又は比較例1などの被測定体で
あり、被測定体14は、滑らかな表面を有する試験台1
5の上面に載置される。この被測定体14の中央上面に
は、直径10mmのSUS製の球体16およびこの球体
16に接続されている重り17、支持棒18が載置さ
れ、上記球体16を介して、押しつけ加重200gが負
荷されている。この支持棒18は、上下方向に自由支持
されているが、水平方向にはロードセル19に接続され
た測定バー20にて位置規制されている。被測定体14
を水平方向に速度600mm/minにて移動させた時
に生じる被測定体14と球体16の摩擦によって球体1
6が引かれる力を支持棒18および測定バー20を介し
て水平方向への荷重をロードセル19によって測定す
る。
【0025】それぞれの実施例1および比較例1につい
て、静摩擦係数および熱老化試験後の剥離試験の結果を
表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】表1に示すように、実施例1によれば、従
来技術による炭素被膜を有するものよりも低い摩擦係数
を示すことがわかる。また、熱老化試験175℃、70
時間後の剥離試験においては、比較例1に剥離が見られ
たのに対して、本発明に係る実施例1には、剥離が生じ
ておらず、熱老化後においても強い結合性を有すること
がわかる。従って、本発明に係る実施の形態によれば、
従来技術による炭素被膜成形技術に対して、高い耐久性
を有するとともに、より低い静摩擦係数が実現できると
いえる。
【0028】なお、本発明は上記各実施の形態に限定さ
れるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成
の一部を適宜に変更できることはもちろんである。上記
実施例の成膜時の高電圧パルスの印加は、高周波数電圧
と重畳して印加することとしたが、基材や注入深度、プ
ラズマガスに応じて、高電圧パルスと高周波電圧の印加
を交番印加したりするなど種々変更することが出来る。
また、上記実施例においては、炭素系被膜の成膜に際
し、誘引注入から誘引堆積に切り替えるため、高電圧パ
ルスを調整、具体的には電圧値あるいはパルス印加パタ
ーンを調整することもできるが、誘引注入から誘引堆積
まで一定の高電圧パルスを印加することとしても良い。
また、上記実施例においては、高分子弾性体をフッ素ゴ
ムとしたが、これに限定されるものではないことはもち
ろんであり、特にカーボンを混練りしたゴムや同様にカ
ーボンを混入したエラストマーあるいは炭素分子鎖、炭
素分子を側鎖に有する高分子弾性体およびそのブレンド
材が好適である。また、炭素系被膜の膜厚や、炭素系イ
オンの注入深度は、弾性体の形状、用途により適宜選ば
れるものであって、上記に限定されないことはもちろん
である。
【0029】従って、摺動性および非固着性を有しつつ
高荷重に耐えることができるうえ、弾性変形も可能であ
るので、例えば、高荷重摺動用パッキン、弁体、ダイヤ
フラムなどに適用することが出来る。
【0030】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明のうち請
求項1記載の発明は、ゴム又はエラストマーよりなる基
材に炭素系イオン注入層を設け、その上層に炭素被膜を
設けたことにより、基材である高分子弾性体と炭素被膜
間に強固な結合を生じさせることができ、優れた耐剥離
性を有するとともに、低摩擦性を発揮する弾性体とする
ことができる。さらに、上記において、炭素系イオン注
入層と炭素被膜を連続して設けた場合には、さらに強固
な結合を有する炭素系被膜を有する弾性体とすることが
できる。また、ゴム又はエラストマーよりなる基材の、
少なくとも炭素系イオン注入層に炭素原子が存在すると
きには、上記基材とその表面に形成した炭素被膜間にさ
らに強い結合生じさせることができ、さらに優れた耐剥
離性を奏することができる。また、請求項2記載の発明
においては、炭素系イオンを低い電力量で誘引注入、誘
引堆積させることが出来るので、熱に弱いゴム又はエラ
ストマーを基材に選んだ場合においても、基材と炭素被
膜間に強固な結合を生じさせることができ、優れた耐剥
離性を有するとともに、低摩擦性を発揮する弾性体とす
ることができる。また、基材に沿った周囲空間から炭素
系イオンを誘引するので、基材を動かすことなく、基材
のあらゆる表面に成膜することが出来るなどの効果があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術に係る炭素系被膜の成膜を説明する図
である。
【図2】本発明に係る炭素系被膜の成膜を説明する図で
ある。
【図3】本発明の弾性体を具現化した一実施例であるガ
ソリン燃料用ゴム製弁の断面図である。
【図4】図3における炭素被膜形成部位Aの部分拡大断
面図である。
【図5】本発明に係る弾性体を製造可能な被膜形成装置
を示す概略図である。
【図6】従来技術に係る弾性体を製造可能な被膜形成装
置を示す概略図である。
【図7】摩擦係数測定試験装置の構成を示す概略図であ
る。
【符号の説明】
1・・・ゴム製弁 2・・・金具 2a、2b・・・フランジ 3・・・基材 3a・・・基材内層 3b・・・ミキシング層 3c・・・炭素被膜 4・・・真空槽 5・・・ホルダ電極 6・・・高周波電源 7・・・パルス発生用電源 8・・・重畳装置 9・・・ガス供給部 10・・・排気装置 11・・・上側電極 12・・・下側電極 13・・・マッチングボックス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F006 AA04 AB63 BA02 BA12 DA01 4F100 AA37A AA37C AK17B AL09B AN00B BA02 BA03 BA06 BA10A BA10B BA10C BA13 EJ611 EJ612 GB32 GB51 JK06 JK16 JM02A JM02C 4K030 AA09 BA27 CA07 DA02 FA03 KA20 LA11

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム又はエラストマーよりなる基材
    と、 上記基材の表層の少なくとも一部に炭素系イオンの注入
    処理後、炭素系イオンを堆積させてなる炭素系被膜とを
    備えたことを特徴とする弾性体。
  2. 【請求項2】 上記炭素系被膜は、 上記基材を導体に接続した状態で真空槽内に配置し、 上記真空槽内にガスを導入し、 上記導体を通じて高周波電力を印加して、上記基材の周
    囲に上記ガスのプラズマを発生させ、上記導体を通じて
    上記基材に高電圧パルスを印加することにより、上記プ
    ラズマ中の炭素系イオンを基材表層に誘引注入処理し、
    炭素系イオンを堆積させて設けたことを特徴とする請求
    項1記載の弾性体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH09208706A (ja) * 1994-12-22 1997-08-12 Ijiri Seiji 合成樹脂,合成ゴム等の高分子物質の硬さ,親水性,機械的強度等の物性制御方法
JPH1053870A (ja) * 1996-08-08 1998-02-24 Nissin Electric Co Ltd ゴム・樹脂にダイヤモンド状炭素膜を形成する方法

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