JP4630452B2 - キャップ部材の製造方法 - Google Patents

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【発明の属する技術分野】
本発明は、インク滴を吐出するノズルを有するインクジェット式記録ヘッドの端面を封止するキャップ部材に関する。
【従来の技術】
従来、インクジェット式記録ヘッドを具備し、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に印刷データを記録するインクジェット式記録装置では、ノズル近傍のインクの増粘やインクの固化、あるいは塵埃の付着等によって印刷不良が発生する虞があるため、一般的に、インクジェット式記録ヘッドに当接してノズルを密封するキャップ部材が設けられている。
このようなキャップ部材は、例えば、特開2000−79697号公報に見られるように、弾性部材からなりヘッドと当接する当接部材(パッキン部)と、プラスチック等の剛体からなる保持部材(本体部)とからなる構成が知られている。また、このようなキャップ部材では、当接部材は、例えば、保持部材に設けられた溝に嵌合されて保持されている。
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、当接部材を保持部材の溝に組み付けるのに手間がかかり、製造効率が低いという問題がある。また、このようなキャップ部材では、ヘッドとの当接時に、当接部材と保持部材との接合面から空気が漏れたり、インクの回り込みが発生するという問題がある。
このような問題を解決するために、当接部材と保持部材とを、接着剤による接着、あるいは熱溶着等によって接合することが考えられるが、この場合、界面が均一に形成されないため空孔が形成される虞がある。また、接着剤及び各部材の経時変化、あるいは耐インク性能による変化によって、機密性が低下する虞がある。また、当接部材と保持部材とを成形によって一体的に形成することも考えられるが、当接部材として比較的ゴム硬度の高い材料を用いなければならないため、ヘッドとの当接部分での機密性が低くなってしまうという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑み、機密性の低下を防止できると共に、製造工程を簡略化してコストを低減できるキャップ部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、インク滴を吐出させる複数のノズルを有するインクジェット式記録ヘッドの端面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部材の製造方法において、前記キャップ部材は弾性部材からなり前記ヘッド端面に当接する当接部材と、樹脂材料からなり前記当接部材を保持する保持部材とを有し、前記当接部材は前記ノズルの周囲に対応する領域で前記ヘッドの端面に当接して前記ノズルを密封する空間部を画成する突出部と、前記空間部と外部とを連通する貫通孔と、を有し、前記保持部材は前記突出部と嵌合して前記突出部を支持するために前記突出部に対応する領域に前記突出部よりも低い高さで突出する支持部と、前記貫通孔の開口に対応する領域の周囲及び前記支持部の内側の周囲に設けられた溝部と、を有し、前記当接部材と前記保持部材とを少なくとも前記溝部において加硫による化学結合で一体的に結合させる工程を有することを特徴とするキャップ部材の製造方法にある。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記溝部にフェノール系溶液を充填し前記当接部材と前記保持部材とを加硫による化学結合で一体的に結合することを特徴とするキャップ部材の製造方法にある。
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記支持部の内側の周囲に設けられた前記溝部は前記支持部の内側の周囲であって前記支持部の内側の基端部に設けられていることを特徴とするキャップ部材の製造方法にある
かる本発明では、当接部材と保持部材とが少なくとも前記溝部において加硫による化学結合で一体的に結合された複合部材からなるため、当接部材と保持部材との接合面での機密性が著しく向上されると共に、信頼性の高い機密性を長期間に亘って確保することができる。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るキャップ部材が搭載されるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
本発明の一実施形態に係るキャップ部材が搭載されるインクジェット式記録装置は、図1に示すように、インクを吐出する記録ヘッド11と、図示しないインク流路を介して記録ヘッド11にインクを供給するインクカートリッジ12を着脱可能に保持するタンクホルダ13とを有するヘッドユニット14がキャリッジ15に固定され、このキャリッジ15は一対のガイドレール16a,16b上に軸方向に移動自在に搭載されている。また、カイドレール16a,16bの一端側には駆動モータ17が設けられており、この駆動モータ17による駆動力が、当該駆動モータ17に連結されたプーリ18aと、ガイドレール16a,16bの他端側に設けられたプーリ18bとの間に掛け渡されたタイミングベルト19を介してキャリッジ15に伝達され、これによりキャリッジ15がガイドレール16a,16bに沿って移動されるようになっている。
また、キャリッジ15の搬送方向と直交する方向の両端部側には、ガイドレール16a,16bに沿ってそれぞれ一対の搬送ローラ20,21が設けられている。これらの搬送ローラ20,21は、キャリッジ15の下方に当該キャリッジ15の搬送方向とは直交する方向に被記録媒体Sを搬送するものである。
そして、これら搬送ローラ20,21によって被記録媒体Sを送りつつキャリッジ15をその送り方向とは直交方向に走査することにより、記録ヘッド11によって被記録媒体S上に文字及び画像等が記録される。
さらに、ガイドレール16a,16bの軸方向一端側には、記録ヘッド11のヘッド端面に当接してノズルを密封するキャップ部材30が設けられており、比較的長期間待機状態にある場合や電源OFF時に、このキャップ部材30によってノズルを密封してノズル内のインクの増粘等を抑えることにより、印刷不良を防止している。また、このキャップ部材30には、吸引手段40が接続されており、所定のタイミングで、キャップ部材30を介してノズル内のインクの吸引等を行う、いわゆるクリーニング操作が行われるようになっている。
以下、本実施形態に係るキャップ部材30について説明する。なお、図2は、本実施形態に係るキャップ部材の上面図及び断面図であり、図3は図2の要部拡大図である。
本実施形態に係るキャップ部材30は、図2に示すように、弾性部材からなりヘッド端面に当接する当接部材31と、樹脂材料からなり当接部材31を保持する保持部材32とで構成されている。
ここで、キャップ部材30を構成する当接部材31と保持部材32とは、接着剤を介することなく化学結合によって一体的に接着された複合部材である。このようなキャップ部材30の製造方法としては、まず、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することによって保持部材32を形成する。その後、連続的に又は別工程で、金型に保持部材32を保持した状態で、未加硫のゴム等の弾性部材を金型内に充填して保持部材32に接触させる。その後、弾性部材を所定時間加硫することによって当接部材31が形成される。このとき、弾性部材が加硫されると共に、当接部材31と保持部材32とが接着剤を介することなく化学結合によって一体的に接着されてキャップ部材30となる。なお、このような製造方法は、
いわゆるK&Kプロセスと呼ばれるものである。
また、本実施形態では、当接部材31と保持部材32とを、フェノール系溶液を介して接着するようにした。すなわち、保持部材32を形成後、この保持部材32の当接部材31が接着される領域にフェノール系溶液を塗布し、その上に未加硫のゴム等を接触させて加硫するようにした。これにより、当接部材31と保持部材32とをより強固に接着することができる。勿論、このフェノール系溶液は用いなくてもよい。
このようなキャップ部材30を構成する保持部材32の材料としては、ゴム等の弾性部材との接着性が良好であり、加硫時の加熱及び成形圧力下で変形が起こらない材料であることが好ましく、例えば、変性特殊ポリフェニレンエーテル(<VESTORAN>1900,1900GF20:CREANOVA社製)、又は特殊ポリアミド6−12(<BESTAMID>X7094,X7099:CREANOVA社製)等の所定のプラスチック材料を用いることが好ましい。
一方、当接部材31としては、保持部材32との接着性を考慮して適宜決定すればよいが、例えば、スチレンゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、シリコンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、酸変性エチレンプロピレンゴム(X−EPDM)、酸変性ニトリルゴム(X−NBR)及びこれらの複合体、並びにエチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム(EAM)等を用いることが好ましい。
このように、キャップ部材30は、所定材料を用い且つ所定の製造方法によって製造することにより、比較的容易に形成することができと共に、当接部材31と保持部材32との間の機密性を著しく向上することができる。すなわち、キャップ部材30が、接着剤を介さずに化学結合によって接着された複合部材である当接部材31及び保持部材32によって構成されているため、当接部材31と保持部材32との間に隙間が生じることがなく、気密性が著しく向上する。また、接着剤を用いていないため、接着剤の劣化等による機密性の低下も防止でき、長期間に亘って信頼性の高い機密性を確保することができる。
また、このようなキャップ部材30を構成する当接部材31は、図2に示すように、その周縁部に亘って記録ヘッド11側に突出する突出部33を有し、この突出部33の内側には空間部34が画成されている。したがって、キャップ部材30がヘッド端面に当接されると、ノズルはこの空間部34内で開放された状態で密封されるようになっている。
また、キャップ部材30の記録ヘッド11と対向する面には、空間部34内の長手方向両端部近傍に、当接部材31及び保持部材32を貫通して空間部34と外部とを連通する二つの貫通孔35A,35Bがそれぞれ設けられている。一方の貫通孔35Aは、ノズル内のインクを吸引するための吸引手段40等に接続され、他方の貫通孔35Bは、通常は開閉可能に封止されており、所定のタイミングで開放されるようになっている。例えば、一方の貫通孔35Aから吸引手段40によってインクを吸引し、空間部34内が負圧になった状態では、キャップ部材をヘッド端面から取り外し難くなる。このような場合に他方の貫通孔35Bが開放され、空間部34内を常圧に戻すことによってキャップ部材30の取り外しを容易にする。
また、当接部材31の空間部34内には、その長手方向に亘って、例えば、本実施形態では、二つの貫通孔35A及び35Bの間にこれら二つの貫通孔35A,35Bに連通する連通溝36が形成されている。この連通溝36は、クリーニング動作時等にインク及びエアーの通路となる。すなわち、空間部34内には、後述する吸引シートが載置されるため、連通溝36によって吸引シートを通過したインクの貫通孔35Aまで通路を確保している。
一方、保持部材32は、当接部材31の突出部33に対応する領域に、突出部33よりも低い高さで突出して突出部33を支持する支持部37を有する。例えば、本実施形態では、当接部材31の突出部33がこの支持部37を覆って形成されている。これにより、キャップ部材30をヘッド端面に当接する際、突出部33のヘッド端面への付勢による倒れ込み等の形崩れを防止することができる。
なお、本実施形態では、突出部33が支持部37を覆って形成、すなわち、支持部37が突出部33内に形成されているが、この支持部37は、勿論突出部33の表面に接着されていてもよい。
また、図3の拡大図に示すように、保持部材32には、支持部37の内側の基端部、及び各通孔35A,35Bの周囲のそれぞれに、溝部38が連続的に形成されている。ここで、上述したように、本実施形態では、当接部材31と保持部材32とは、フェノール系溶液を介して化学結合させることにより、強固に接着されるようにしている。このため、上記各部に溝部38を設けて、少なくともこれら溝部38内に確実にフェノール系溶液が充填されるようにし、これら溝部38に対応する部分では当接部材31と保持部材32とが確実に且つ強固に接着されるようにして、当接部材31と保持部材32との間の機密性を確保している。勿論、溝部の形成位置は、上記各部のみに限定されず、他の部分に設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
なお、このような本実施形態のキャップ部材30は、例えば、図4に示すように、ばね等の付勢部材51を介して、図中上下方向に移動可能にユニットフレーム52に保持され、このユニットフレーム52がインクジェット式記録装置に搭載される。また、保持部材32の通孔35A,35Bの外側は、ゴム等の弾性部材からなるジョイント部材53を介してユニットフレーム52に保持され、このジョイント部材53によって通孔35A,35Bからのインク又は空気等の漏れを防止している。なお、当接部材31の空間部34内には、ノズルから吐出されたインク滴を吸収するためのインク吸収シート54が載置される。
また、インクジェット式記録装置に搭載されたキャップ部材30は、所定のタイミングで、図5に示すように、記録ヘッド11のヘッド端面11aに当接される。具体的には、当接部材31の突出部33がヘッド端面11aに当接して、ノズルを空間部34に開放した状態で密封する。このとき、キャップ部材30は付勢部材51によってヘッド端面11a側に付勢されるため、突出部33がヘッド端面11aに密着し、ノズルが確実に密封される。
また、本実施形態では、当接部材31の突出部33を保持部材32の支持部37によって支持するようにしているので、突出部33が付勢部材51によってヘッド端面11aに比較的強い力で付勢されていても形崩れすることがなく、ノズルを確実に密封することができる。
したがって、長期保存する場合等には、ノズル内のインクの増粘等が確実に抑えられ、印刷不良を防止することができる。また、クリーニング動作時等には、吸引手段40によってノズル内のインクを確実且つ効率的に吸引することができる。すなわち、ノズル内で増粘したインクや、インク内の気泡あるいは異物を確実に除去して、印刷不良を防止することができる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、当接部材と保持部材とが接着剤を介することなく化学結合により一体的に接着された複合部材からなるため、当接部材と保持部材とが確実に接着され、機密性が著しく向上する。また、接着剤を用いていないため、接着剤の劣化等による機密性の低下がなく、長期間に亘って信頼性の高い機密性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るキャップ部材が搭載されるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【図2】 本発明の一実施形態に係るキャップ部材の上面図及び断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係るキャップ部材の要部拡大図である。
【図4】 本発明の一実施形態に係るキャップ部材の組立工程を示す概略図である。
【図5】 本発明の一実施形態に係るキャップ部材の使用状態を示す概略図である。
【符号の説明】
11 記録ヘッド
30 キャップ部材
31 当接部材
32 保持部材
33 突出部
34 空間部
35A,35B 貫通孔
36 連通溝
37 支持部
38 溝部
40 吸引手段

Claims (3)

  1. インク滴を吐出させる複数のノズルを有するインクジェット式記録ヘッドの端面に当接して前記ノズルを封止するキャップ部材の製造方法において、
    前記キャップ部材は弾性部材からなり前記ヘッド端面に当接する当接部材と、樹脂材料からなり前記当接部材を保持する保持部材とを有し、
    前記当接部材は前記ノズルの周囲に対応する領域で前記ヘッドの端面に当接して前記ノズルを密封する空間部を画成する突出部と、前記空間部と外部とを連通する貫通孔と、を有し、
    前記保持部材は前記突出部と嵌合して前記突出部を支持するために前記突出部に対応する領域に前記突出部よりも低い高さで突出する支持部と、前記貫通孔の開口に対応する領域の周囲及び前記支持部の内側の周囲に設けられた溝部と、を有し、
    前記当接部材と前記保持部材とを少なくとも前記溝部において加硫による化学結合で一体的に結合させる工程を有することを特徴とするキャップ部材の製造方法。
  2. 請求項1において、前記溝部にフェノール系溶液を充填し前記当接部材と前記保持部材とを加硫による化学結合で一体的に結合することを特徴とするキャップ部材の製造方法
  3. 請求項1又は2において、前記支持部の内側の周囲に設けられた前記溝部は前記支持部の内側の周囲であって前記支持部の内側の基端部に設けられていることを特徴とするキャップ部材の製造方法
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