JP4626122B2 - 芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は芳香族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミドはその高い耐熱性、機械強度から工業材料として有用なポリマーである。特に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下PPTAと記す)に代表されるようなパラ配向性芳香核からなる芳香族ポリアミドはその剛直性から上記特性に加え強度、弾性率に優れた成形体を与えるのでその利用価値は高い。しかしながらPPTAのごときパラ配向性芳香族ポリアミドは溶媒に対する溶解性が低く、硫酸等極めて限定された溶媒にしか溶解しないためにプロセス上の制約が大きく、また、その溶液も光学異方性を与えるため繊維を得る場合には大きな問題はないがフィルムなど2次元以上の成形体とするには、特許文献1〜3等に記載された特殊な成形法による必要があり、その改善が求められている。
【0003】
一方で、溶解性を改善する手段として、酸素あるいはメチレン基等のブリッジを有する構造単位の導入が、特許文献4、5等で知られているが、一般にかかる構造単位の導入はパラ配向性芳香族ポリアミド本来のヤング率、強度等の優れた機械特性を損ねることとなる。また、別な手段として特許文献6、7等には芳香核に塩素原子を導入した芳香族ポリアミドが提案されているが、かかる芳香族ポリアミドはモノマが高価な上に、それから得られる成形物は特殊な条件で燃焼させた場合、有害なガスが発生する可能性がある。
【0004】
さらに特許文献8、9には塩素原子等のハロゲン原子を含まない高剛性芳香族ポリアミドの開示があるが、該発明に使用される3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジンなどのベンジジン誘導体は一部に毒性が強い物があり、取扱いが困難となる事がある。また、特許文献10にはジアミノベンズアニリド類を用いた芳香族ポリアミドの開示があるが、ジアミノベンズアニリド類と酸ジクロライドから成るホモポリマーは、酸ジクロライドとしてテレフタル酸ジクロライドを用いた場合、非プロトン性極性溶媒には加熱時僅かに溶解溶解するか、不溶となり好ましくない。一方、酸ジクロライドとしてイソフタル酸ジクロライドを用いた場合は得られるフィルムのヤング率が低くなるため好ましくない。さらに2,6−ナフタレンカルボン酸ジクロライドと4,4’−ジアミノベンズアニリドとの重合体はゲルを生じるため好ましくない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−39634号公報
【0006】
【特許文献2】
特開昭62−104714号公報
【0007】
【特許文献3】
特開昭62−115036号公報
【0008】
【特許文献4】
特開昭51−76836号公報
【0009】
【特許文献5】
特開昭52−98795号公報
【0010】
【特許文献6】
特開昭52−84826号公報
【0011】
【特許文献7】
特開昭54−106564号公報
【0012】
【特許文献8】
特開平9−118748号公報
【0013】
【特許文献9】
特開平9−118749号公報
【0014】
【特許文献10】
特公昭42−17510号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。すなわち、本発明の目的は、非プロトン性極性溶媒可溶で、ハロゲン原子を含まず、フィルムに成形した場合にヤング率が高く、かつ難燃性を有する芳香族ポリアミドを得ることにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(4)を満足している芳香族ポリアミドを特徴とする。
【0017】
0.5≦l/m≦2 ・・・ (1)
2≦(l+m)/n≦6 ・・・ (2)
l、m、n>0 ・・・ (3)
l+m+n=100 ・・・ (4)
【0018】
【化15】
【0019】
R1:次化学式で表される基
【化16】
【0020】
【化17】
【0021】
X:ニトロ基、またはメチル基(ただし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在してもよい。)
R2:次化学式で表される基
【化18】
【0022】
【化19】
【0023】
R3:次化学式で表される基
【化20】
R4:次化学式で表される基
【化21】
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明における芳香族ポリアミドは、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(3)を満足している。
【0025】
0.5≦l/m≦2 ・・・ (1)
1.5<(l+m)/n ・・・ (2)
l、m、n>0 ・・・ (3)
【0026】
【化7】
【0027】
R1:ハロゲン原子を含まない芳香族基
【0028】
【化8】
【0029】
X:ニトロ基、またはハロゲン原子を含まない炭素数1以上の置換基(だたし、分子内においてこれらの基を有する構造単位が混在してもよい。)
R2:ハロゲン原子を含まない芳香族基
【0030】
【化9】
【0031】
R3:ハロゲン原子を含まず、かつ分子内に−O−、CH2、−SO2−のいずれか1つ以上の構成単位を有する炭素数12以上の芳香族基
R4:ハロゲン原子を含まない芳香族基
上記一般式(I)〜(III)において、lが0の場合、得られたフィルムの難燃性が低下することがある。
【0032】
また、mやnが0の場合、非プロトン性極性溶媒に対する溶解性が低くなることがある。
【0033】
本発明は種類の異なるの剛直成分(I)および(II)と、柔軟成分(III)の組成比を規定する事により、目的とした物性を得るという技術思想を有しており、剛直成分と柔軟成分の比、即ち(l+m)/nの値は1.5を超えていることが重要である。好ましくはこの比の値は2.3以上4以下である。上記比の値が1.5以下である場合、引張り弾性率が低下し、芳香族ポリアミド本来の高剛性を達成できないことがある。一方、上限値としては好ましくは4以下であるが、9を超えると溶解性が低くなることがある。
【0034】
また、2つの剛直成分、(I)と(II)の比すなわち、l/mは0.5以上2以下であることが重要であり、好ましくは0.8以上1以下である。(I)および(II)で表される構造単位を含んでいることにより、(I)の分子中のアミド結合と(II)のベンゼン環に置換した置換基の相互作用により、それぞれ単独に用いた場合よりも溶解性が向上すると考えられるが、いずれか一方が他方の2倍を超えると、この効果が得られないことがある。さらに、l/mが0.5未満の場合は難燃性が低下する傾向にあり、2を超える場合には溶解性が低下することがある。
【0035】
置換基R1、R2、R4は、具体的には次化学式で表される基であることが好ましい。
【0036】
【化10】
【0037】
また、置換基R3は、次化学式で表される基であることが好ましい。
【0038】
【化11】
【0039】
もちろん、これら置換基同士はそれぞれ同一種の場合であっても、異なっていても構わない。
【0040】
さらに、これら置換基の中でも、R1、R2、R4が、パラ配向フェニレン残基即ち、
【0041】
【化12】
【0042】
であり、R3が、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基即ち、
【0043】
【化13】
【0044】
であることがより好ましい。
【0045】
上記のR1、R2、R4として用いるとより好ましいとしたパラ配向フェニレン残基は、テレフタル酸ジクロライドから誘導されるが、このテレフタル酸ジクロライドは入手が容易であり、また、パラ配向性であるために得られるポリマーの剛性向上に寄与し、さらにパラ配向芳香族酸ジクロライドの中では最も優れた溶解性を持つ。また、R3として用いるとより好ましいとした4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基は4,4’−ジアミノジフェニルエーテルから誘導されるが、これも入手が容易であり、溶解性に優れ、得られるポリマーに、制御された柔軟性を付与するのに適する。
【0046】
ここで、R2として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基を選択した場合は、特にl、m、nに関し、2≦(l+m)/n≦5を満足することが好ましい。(l+m)/nが2未満であると、ヤング率が低くなることがあり、また、5を超えると非プロトン性極性溶媒に対する溶解性が低くなることがある。もちろん、これはR2を4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基に限定した場合であり、R2が4,4’−ジアミノジフェニルエーテルよりも柔軟なジアミン残基である場合は(l+m)/nは上記よりも大きい値が好ましい。ここで、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルよりも柔軟なジアミンとはジアミン分子内の−O−、−CH2−、−SO2−の総数が2以上である場合をいう。たとえば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルよりも柔軟なジアミンの一例として、1,4ビス−(4アミノフェノキシ)ベンゼンを挙げることができる。分子内に2つの−O−結合を持つこの1,4ビス−(4アミノフェノキシ)ベンゼン残基即ち、
【0047】
【化14】
【0048】
を持つ場合は、(l+m)/nの値は3.5≦(l+m)/n≦6を満たすことが好ましい。
【0049】
以下に本発明の芳香族ポリアミド組成物の製造方法や成形体としてフィルムを製造する例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
芳香族ポリアミドを得る方法は種々の方法が利用可能であり、例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などを用いることができる。低温溶液重合法つまり酸ジクロライドとジアミンから得る場合には、非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸ジクロライドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0051】
2種類以上のジアミンを用いて重合を行う場合、ジアミンは1種類づつ添加し、該ジアミンに対し10〜99モル%の酸ジクロライドを添加して反応させ、この後に他のジアミンを添加して、さらに酸ジクロライドを添加して反応させる段階的な反応方法、およびすべてのジアミンを混合して添加し、この後に酸ジクロライドを添加して反応させる方法などが利用可能である。また、2種類以上の酸ジクロライドを利用する場合も同様に段階的な方法、同時に添加する方法などが利用できる。いずれの場合においても全ジアミンと全酸ジクロライドのモル比は95〜105:105〜95が好ましく、この値を外れた場合、成形に適したポリマー溶液を得ることが困難となる。
【0052】
本発明の芳香族ポリアミドの製造において、使用する非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。さらにはポリマーの溶解を促進する目的で溶媒には50重量%以下のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩を添加することができる。
【0053】
本発明の芳香族ポリアミドには、表面形成、加工性改善などを目的として10重量%以下の無機質または有機質の添加物を含有させてもよい。表面形成を目的とした添加剤としては例えば、無機粒子ではSiO2、TiO2、Al2O3、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
【0054】
本発明でいう「溶解」とは懸濁、またはゲル状物を生じることなく流動性を保ったポリマーが溶媒に分散している状態が24時間以上継続することをいう。ここで、ポリマーの溶解工程においては100℃以下の温度で加熱撹拌することが可能である。
【0055】
次にフィルム化について説明する。本発明の芳香族ポリアミドは有機溶媒に可溶であるため、PPTAの様に濃硫酸を用いた特殊な製膜方法は必ずしも必要としない。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがありいずれの方法で製膜されても差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0056】
乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレスベルトの表面はなるだけ平滑であれば表面の平滑なフィルムが得られる。乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。
【0057】
延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜8(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラックスを意味する。)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.3〜8である。また、熱処理としては200℃〜500℃、好ましくは250℃〜400℃の温度で数秒から数分間熱処理が好ましく実施される。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷することは有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却することが有効である。
【0058】
本発明の芳香族ポリアミドから得られるフィルムは単層フィルムでも、積層フィルムであっても良い。また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、半導体実装用基板、多層積層回路基板、コンデンサー、プリンターリボン、音響振動板、太陽電池のベースフィルム等種々の用途に好ましく用いられるが、少なくとも片面に磁性層を設けた磁気記録媒体として用いられると高出力、高耐久性を兼ね備えた本発明の芳香族ポリアミドフィルムの効果が充分に発揮されるため、特に好ましい。
【0059】
本発明において難燃性とはUL94試験において、V0もしくはVTM0を満足するものをいう。
【0060】
これまでに多くの芳香族ポリアミドが報告されているが、ハロゲンを含有せず、さらに難燃性と溶媒可溶性を両立したものは見出されていない。上述した特許文献8、9には特殊な原料を用いてこれを達成した例が記載されているが、該発明に使用される3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジンなどのベンジジン誘導体は一部に毒性が強い物があり、取扱いが困難となる事がある。即ち、ハロゲン非含有、難燃性および溶媒可溶な芳香族ポリアミドを取扱いの容易な原料から得る事が本発明の特徴である。さらに得られた芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一方向の引張りヤング率が6GPa以上であることが好ましい様態である。以下に詳細を説明する。
【0061】
代表的な芳香族ポリアミドであるPPTAは難燃性である。また、PPTAの位置異性体であるメタフェニレンイソフタルアミドはさらに優れた難燃性を持ち、消防服などに利用されている。しかしながら、これら両者は一般的な溶媒に不溶である事から、繊維やフィルム等の製造には特殊な製膜方法が必要であり工業的には不利である。
【0062】
特許文献6、7等には芳香核に塩素原子を導入した芳香族ポリアミドの開示がある。この塩素原子含有芳香族ポリアミドは優れた難燃性と溶媒可溶性を両立したが、特殊な条件で燃焼させた場合、有害なガスが発生する可能性がある事から、近年、塩素原子を含有しない溶媒可溶性の芳香族ポリアミドを求める声が出てきた。一般にハロゲン原子は難燃性の付与に寄与する事が知られており、さらに特許文献6、7で得られる芳香族ポリアミドは、塩素原子のかさ高さが、溶媒可溶性にも寄与していると考えられる。
【0063】
特許文献6、7で得られる芳香族ポリアミドから単純に塩素原子を除去した場合、得られる芳香族ポリアミドは溶媒不溶のPPTAである。次に塩素原子をニトロ基やメチル基等に置換した場合、若干の溶媒可溶性は付与されるものの、難燃性は得られず、可燃性となってしまう。芳香族ポリアミドフィルムをフレキシブル回路基板などの電気、電子用途に使用する場合、難燃性は必須条件であり、可燃性のフィルムは多くの場合、使用できない。
【0064】
また、柔軟な成分を分子鎖に組み込む事により溶媒可溶性が向上する事が知られているが、この場合、ヤング率が低下し、6GPa未満になる問題がある。
本発明の芳香族ポリアミドは、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位を含み、かつ、化学式(I)、(II)および(III)で示される構造単位のモル分率をそれぞれl、m、nとしたとき、次式(1)〜(3)を満足する事により上記問題を解決できる。
【0065】
0.5≦l/m≦2 ・・・ (1)
1.5<(l+m)/n ・・・ (2)
l、m、n>0 ・・・ (3)
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは少なくとも一方向の引張りヤング率が6GPa以上であることが好ましい。ヤング率が高いことにより、巻き取り時の高張力、張力変動に対抗することができ、巻き姿がより良好となる。また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一方向のヤング率はより好ましくは8GPa以上であることが好ましい。また、全ての方向のヤング率が5.5GPa以上であることが好ましい。
【0066】
芳香族ポリアミドの構造は、その原料であるジアミンとカルボン酸ジクロライドによって決定される。原料が不明である場合は芳香族ポリアミド組成物から構造分析を行うが、この手法としては、質量分析、核磁気共鳴法による分析、分光分析などを用いることができる。
【0067】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0068】
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0069】
(1)ヤング率
ロボットテンシロンRTA−100(オリエンテック社製)を用い、試料幅10mm、試料長50mm、引張速度300mm/分、23℃、65%RHで測定した。
【0070】
(2)ハロゲン含有率
分子構造からの計算値を重量%で示した。
【0071】
(3)溶解性
重合終了時、ゲル化などにより製膜不可能な状態にあるものを×、ゲル化、失透などはあるが製膜可能なものを△とした。また、重合終了時および23℃24時間静置後ともに透明であり、製膜可能なものは○とした。
【0072】
(4)難燃性
UL94垂直燃焼試験(94VTM−0)により評価した。
【0073】
(実施例1)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノベンズアニリド2.045g、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン1.838g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.802g、N−メチル−2−ピロリドン79.3mlを入れ窒素雰囲気下、0℃で攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。また、このポリマー溶液は2週間放置後も透明で流動性を保っていた。
【0074】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0075】
(実施例2)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノベンズアニリド2.727g、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン・2塩酸塩2.341g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.201g、N−メチル−2−ピロリドン75.0mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。また、このポリマー溶液は2週間放置後も透明で流動性を保っていた。
【0076】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0077】
(実施例3)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に1,4ビス−(4アミノフェノキシ)ベンゼン1.754g、2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン1.838g、4,4’−ジアミノベンズアニリド2.727g、N−メチル−2−ピロリドン75.0mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。また、このポリマー溶液は2週間放置後も透明で流動性を保っていた。
【0078】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0079】
(比較例1)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノベンズアニリド3.409g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.004g、N−メチル−2−ピロリドン85.6mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。また、このポリマー溶液は1週間放置後も透明で流動性を保っていた。
【0080】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0081】
(比較例2)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノベンズアニリド4.773g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.802g、N−メチル−2−ピロリドン87.1mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和した。反応物は製膜困難なゲル状物であった。
【0082】
(比較例3)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に2−ニトロ−1,4−フェニレンジアミン2.757g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.403g、N−メチル−2−ピロリドン74.7mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。また、このポリマー溶液は2週間放置後も透明で流動性を保っていた。
【0083】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0084】
(比較例4)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に1,4−フェニレンジアミン1.622g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.0036g、N−メチル−2−ピロリドン70.3mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して透明なポリマー溶液を得た。このポリマー溶液は12時間放置後にゲル化、製膜出来ない状況であった。
【0085】
(比較例5)
攪拌機を備えた200ml4つ口フラスコ中に4,4’−ジアミノベンズアニリド1.705g、1,4−フェニレンジアミン0.811g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.0036g、N−メチル−2−ピロリドン77.8mlを入れ窒素雰囲気下、氷冷下攪拌した。10分から30分後にかけてテレフタル酸ジクロライド6.091gを5回に分けて添加した。さらに1時間攪拌した後、反応で発生した塩化水素を炭酸リチウムで中和して白濁したポリマー溶液を得た。
【0086】
得られたポリマー溶液の一部をガラス板上に取り、バーコーターを用いて均一な膜を形成せしめた。これを120℃で7分間加熱し、自己保持性のフィルムを得た。得られたフィルムをガラス板から剥がして金枠に固定して、流水中10分間水洗し、さらに280℃1分で熱処理を行い芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルムのヤング率を測定し、表1に示した。
【0087】
【表1】
Claims (4)
- 請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドを含む芳香族ポリアミドフィルム。
- 少なくとも1方向の引張り弾性率が6GPa以上であり、かつUL94試験においてV0またはVTM0を満足する、請求項3に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
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