JP4625602B2 - ミオスタチン遺伝子プロモータおよびその活性化阻害 - Google Patents
ミオスタチン遺伝子プロモータおよびその活性化阻害 Download PDFInfo
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Description
(技術分野)
本発明は、ミオスタチン遺伝子の発現を調節するプロモータ、ならびにこのプロモータを阻害する方法、およびそのような阻害のために使用される組成物に関する。特に、プロモータの阻害剤は、ミオスタチン遺伝子の発現を妨げ、従って筋肉消耗を妨げる。
【0002】
(背景情報)
ミオスタチンまたは増殖/分化因子8(GDF−8)は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーに属している(McPherron他、Nature、387:83〜90(1997))。ヒトのミオスタチン遺伝子がクローニングされており(Nestor他、Proc.Natl.Acad.Sci.95:14938〜43(1998))、そしてミオスタチンの免疫反応性がヒト骨格筋において1型線維および2型線維の両方で検出され得ることが報告されている。機能に関して、ミオスタチンは、骨格筋の増殖および発達を負に調節することにおいて役割を果たしていると考えられる(Nestor他、上記)。
【0003】
筋肉発達を負に調節することにおいてミオスタチンが重要な役割を果たし得るという最初の証拠が、ミオスタチンのノックアウトマウスを用いた研究からもたらされた(McPherron他、Nature、387:83〜90(1997))。ミオスタチンヌルマウスにおいて、この動物は、野生型マウスよりも著しく大きく、そして骨格筋の量が大きく広範囲に増大していることを除いてかなり正常であった。さらに、増大した筋肉量を特徴とする2系統のウシはミオスタチンのコード配列に変異を有することもまた明らかにされた(McPherron他、Proc.Natl.Acad.Sci.94、12457〜61(1997))。さらに、免疫反応性ミオスタチンの血清濃度および筋肉内濃度は、健康者と比較して、筋肉消耗を伴うHIV感染者では増大しており、そして脂肪を含まないマスインデックスと負の相関を有することに留意しなければならない。これらのデータは、ミオスタチンが成人における骨格筋増殖の負の調節因子であり、HIV感染者における筋肉消耗に寄与しているという仮説を支持している(Nestor他、上記)。
【0004】
上記の知見を考慮すれば、特に、例えば、老化、自己免疫不全症候群(AIDS)、多発性硬化症およびガンなどの状態または疾患状態の結果としての筋肉消耗を受けている個体においてミオスタチンの発現を調節する方法が求められている。本発明は、そのような筋肉消耗状態の個体を助けるために用いることができる方法および組成物を提供し、そしてミオスタチンの遺伝子発現の調節に対するさらなる洞察を提供する。
【0005】
本明細書中において参照されているすべての米国特許および刊行物は、これらにより参考としてその全体が組み込まれる。
【0006】
(発明の開示)
本発明は、図2(配列番号1)によって表される単離された核酸配列を包含する。
【0007】
さらに、本発明は、上記の核酸配列と、レポーター分子をコードする核酸配列とを含むベクターを包含する。レポーター分子をコードする核酸配列は、図2によって表される核酸配列に機能的に連結されている。レポーター分子は、例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)からなる群から選択され得る。好ましくは、レポーター分子はルシフェラーゼである。本発明はまた、上記のベクターを含む宿主細胞を包含する。
【0008】
さらに、本発明は、ミオスタチンによる免疫感作に応答して産生される精製された抗体、ならびにこの精製された抗体を含む組成物を包含する。
【0009】
さらに、本発明はまた、ミオスタチンプロモータの活性化を阻害する組成物を同定する方法を包含する。この方法は下記の工程を含む:a)図2(配列番号1)によって表される核酸配列と、レポーター分子をコードする核酸配列とを含むベクターを構築する工程であって、レポーター分子をコードする核酸配列は、図2によって表される配列をコードする核酸配列に機能的に連結されている工程;b)ミオスタチンの発現に好適な時間および条件のもとでベクターを宿主細胞に導入する工程;c)ミオスタチンプロモータの活性化を阻害し得る組成物と、レポーター分子に特異的な基質とに宿主細胞をさらす工程;およびd)レポーター分子と基質との反応によって生じるシグナルを、コントロールの宿主細胞によって産生されるシグナルと比較して測定する工程であって、(c)の宿主細胞によるシグナルの方が小さいことにより、組成物がミオスタチンプロモータの活性化を阻害することが示される工程。
【0010】
また、本発明は、ミオスタチンの発現を阻害する組成物を同定する方法を包含する。この方法は下記の工程を含む:a)ミオスタチンに対して産生されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体からなる群から選択される抗体を固相に加える工程;b)既知濃度のミオスタチン、または試験組成物にさらされたミオスタチン含有細胞サンプルを、抗体と既知濃度のミオスタチンまたは細胞サンプル内のミオスタチンとの間での第1の複合体を形成させるために固相に加える工程;c)ミオスタチンに対して産生されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体からなる群から選択される第2の抗体を、第1の複合体と第2の抗体との間での第2の複合体が形成されるのに十分な時間および条件のもとで第1の複合体に加える工程;d)第2の複合体を、前記第2の複合体の前記抗体に対する抗体に結合させたシグナル生成化合物を含む指示試薬と、第3の複合体が形成されるのに十分な時間および条件のもとで接触させる工程:e)測定可能なシグナルの存在を検出する工程であって、シグナルが存在しないことにより、組成物がミオスタチンの発現を阻害することが示され、そしてシグナルが存在することにより、組成物がミオスタチンの発現を阻害しないことが示される工程。
【0011】
さらに、本発明はまた、ミオスタチンの発現を阻害する組成物を同定する方法を包含する。この方法は下記の工程を含む:a)一定量のミオスタチンを固相にコーティングする工程;b)既知濃度のミオスタチン、または組成物にさらされたミオスタチン含有細胞サンプルを加える工程;c)ミオスタチンに対して産生されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体からなる群から選択される抗体を、第1の複合体を形成させるのに十分な時間および条件のもと、(a)および(b)におけるミオスタチンに接触させる工程であって、(a)のミオスタチンは、抗体に対する競合において、(b)のミオスタチンと競合する工程;d)前記複合体を、第1の複合体の抗体に対する抗体に結合させたシグナル生成化合物を含む指示試薬と、第2の複合体を形成させるのに十分な時間および条件のもとで接触させる工程:および(e)測定可能なシグナルを検出する工程であって、コントロールと比較してシグナルがより大きいことにより、組成物がミオスタチンの発現を阻害することが示される工程。
【0012】
さらに、本発明は、ミオスタチンがミオスタチン受容体に結合することを阻害する組成物を組成物の混合物の中から同定する方法を包含する。この方法は下記の工程を含む:a)精製したミオスタチンを組成物の混合物と混合する工程;b)工程(a)の得られた混合物を、ミオスタチンと複合体化した組成物がフィルターを通り抜けないようなサイズの細孔を有するフィルターに通す工程;およびc)複合体化した組成物の構造を明らかにし、それによってミオスタチンがミオスタチン受容体に結合することを阻害する組成物を同定する工程。
【0013】
また、本発明は、ミオスタチンがミオスタチン受容体に結合することを阻害する組成物を同定する方法を包含する。この方法は下記の工程を含む:a)組換えミオスタチンを放射能標識する工程;b)放射能標識された組換えミオスタチンを、ミオスタチン受容体を含む細胞または膜と一緒にインキュベーションする工程;c)工程(b)でインキュベーションした混合物を目的とする組成物と接触させる工程;d)細胞または膜に結合した放射能標識ミオスタチンを非結合ミオスタチンから分離する工程;およびe)コントロールと比較して、結合ミオスタチンにおける放射能の量を測定する工程であって、コントロールと比較して結合ミオスタチンにおける放射能のレベルがより低いことにより、ミオスタチンが受容体に結合することを阻害する組成物が示される工程。
【0014】
さらに、本発明は、哺乳動物における筋肉消耗を防止する方法を包含する。この方法は、筋肉消耗が防止されるように、ミオスタチンプロモータの活性化を防げること、ミオスタチンの合成を妨げること、およびミオスタチンがその標的受容体に結合することを妨げることからなる群から選択される作用を引き起こす有効成分を治療効果的な量で含む組成物を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0015】
(図面の簡単な説明)
図1は、ヒトミオスタチン遺伝子の概念図を表す。ヒトミオスタチン遺伝子は3つのエキソンと2つのイントロンとを含み、これらが、1.1kbのミオスタチンcDNAにコードされる。ヒトP1由来人工染色体(PAC)ライブラリーを、ヒトミオスタチンのエキソン1およびエキソン2をコードする740bpのプローブを使用してスクリーニングしたとき、120kbのインサートを有する1個の陽性クローンが同定された。このクローンをEcoRIで消化した後、2つのヒトゲノムサブクローンが単離された。このサブクローンの一方(クローンC11)は、0.37kbのエキソン1、1.53kbのイントロン1、およびヒトミオスタチンプロモータ領域を含有する3.4kbの配列を含有していた。
【0016】
図2は、ヒトミオスタチンプロモータ領域の核酸配列を表す。転写因子の結合領域と推定される領域がいくつか同定され、下線が引かれている。
【0017】
図3は、ヒトの骨格筋、横紋筋肉腫細胞および前立腺平滑筋細胞から得られたRNAサンプルの、ヒトミオスタチンに特異的なプライマーを使用したRT−PCRによるミオスタチンmRNAの検出を表す。G3PDHにはG3PDHに特異的なプライマーが使用される。増幅されたミオスタチン遺伝子(1.1kb)は、ヒトの骨格筋細胞(レーン1)および横紋筋肉腫細胞(レーン2)の両方で認められたが、前立腺平滑筋細胞(レーン3)では認められなかった。増幅されたG3PDH遺伝子(0.9kb)は、骨格筋細胞(レーン4)、横紋筋肉腫細胞(レーン5)および前立腺平滑筋細胞(レーン6)で認められた。
【0018】
図4は、ルシフェラーゼレポーター構築物を表す。3.4kbのヒトミオスタチンプロモータ領域を、ルシフェラーゼをレポーターとするpGL3−エンハンサーベクター(Promega、Madison、WI)のXhoI部位およびHindIII部位にクローニングした。このベクターは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と、転写レベルを増大させるためのSV40エンハンサーエレメントとを含有した。
【0019】
図5は、ヒトの骨格筋細胞および横紋筋肉腫細胞におけるヒトミオスタチンプロモータ領域に対するルシフェラーゼアッセイから得られた結果を表す。
【0020】
(発明の詳細な説明)
上記に記されているように、本発明は、ミオスタチン遺伝子の発現の活性化、または調節に関与するプロモータの同定および単離に関する。ミオスタチンは、骨格筋の増殖および発達を負に調節する。
【0021】
特に、本発明は、ミオスタチンのプロモータ活性を阻害する化合物を同定するために使用され得る方法に関する。ミオスタチンの発現を調節するミオスタチンプロモータ領域または核酸配列は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結される。従って、ルシフェラーゼの発現を妨げるミオスタチンプロモータ領域の活性を阻害する化合物が同定できる場合、プロモータ領域の機能発現が妨げられ、それによってミオスタチンの発現を妨げることができる。
【0022】
ミオスタチンプロモータ活性およびルシフェラーゼ産生を阻害する化合物の同定は、薬物スクリーニングアッセイを使用することにより行うことができる。最初に、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結されたミオスタチンのプロモータ領域をコードする単離されたDNA配列を含むベクターが作製される。ベクターとしては、例えば、プラスミド、バクテリオファージまたはコスミドがあり得る。その後、ベクターは、ミオスタチンプロモータの活性化に好適な時間および条件のもとで宿主細胞に導入される。宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞であり得る。好ましくは、真核生物細胞(例えば、筋肉系の細胞株)が利用される。例には、ヒト骨格筋細胞、ヒト横紋筋肉腫細胞、ならびにラットのL6細胞およびL8細胞が含まれる。その後、宿主細胞は、ミオスタチンプロモータの活性化およびルシフェラーゼ遺伝子の発現を阻止すると考えられる試験組成物にさらされる。細胞はルシフェラーゼの基質にもさらされる。その後、ルシフェラーゼ−基質の反応から発するシグナルまたは光の量を測定する。問題とする組成物にさらされた宿主細胞によって産生されるシグナルの量が、コントロールの細胞(すなわち、組成物にさらされていない細胞)によって産生されるシグナルの量よりも少ない場合、その組成物は、ミオスタチンプロモータの活性を阻害しており、ミオスタチン遺伝子の発現を阻害することにおいて有用である。処理された細胞によって産生されるシグナルの量がコントロールの細胞によって産生されるシグナルの量に等しい場合、その組成物は、ミオスタチンプロモータの活性を阻害しておらず、ミオスタチン遺伝子の発現を阻害しない。
【0023】
ミオスタチンプロモータの活性を阻害する組成物が同定されると、そのような組成物は、筋肉消耗を含む任意のタイプの状態、例えば、後天的免疫不全症候群(AIDS)、ガン、多発性硬化症および老化を伴う患者に投与することができる。そのような薬学的組成物は、治療有効量の阻害剤および適切な生理学的に受容可能なキャリア(例えば、水、緩衝液または生理食塩水)を含むことができる。薬学的組成物の投薬量、形態(例えば、懸濁物、錠剤、カプセルなど)および投与経路(例えば、経口的、局所的、静脈内、皮下など)は、医師によって容易に決定することができ、例えば、患者の年齢、体重、免疫状態および全体的な健康状態のような様々な要因に依存し得る。
【0024】
さらに、本発明はまた、例えば、適切なキャリア(例えば、水、緩衝液または生理食塩水)とともに投与され得る精製されたミオスタチンタンパク質またはその一部を使用して得られる抗体を含む組成物を包含する。抗体が投与された後、抗体は体内の発現ミオスタチンに結合して、複合体を形成し、それによって、発現したミオスタチンが筋肉の発達を負に調節することを妨げることができる。抗体自体ならびにその一部もまた、そのような抗体またはその一部を含むアッセイと同様に本発明の範囲に包含される。
【0025】
上記の薬学的組成物および抗体は、獣医学的適用のために(例えば、老化または疾患動物における筋肉消耗を防止するために)、あるいは農業的適用のために(例えば、ミオスタチンを有しない動物ははるかに多くの筋肉量を示すので、家畜における食肉生産を増大させるために)用いられ得ることに留意しなければならない。例えば、ミオスタチンプロモータの活性を阻害する治療組成物は、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌおよびブタなどの哺乳動物に投与することができる。
【0026】
本発明はまた、精製されたミオスタチンおよび/またはミオスタチン抗体を使用する方法で、ミオスタチンタンパク質の合成および分泌を阻害する組成物を同定する2つの方法を包含する。サンドイッチ法では、成熟型のミオスタチンに対する哺乳動物のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体(ウサギまたはマウス)を、固体表面(例えば、Immulon−4プレート(Dynateck Laboratories INC.、Chantilly、VA)にコーティングする。表面は、既知のブロッティング剤、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッティングし、洗浄する。サンプル(例えば、試薬の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)または既知濃度の精製された成熟型ミオスタチンを表面(例えば、プレート)に加える。ミオスタチンを抗体(1つまたは2つ以上)に結合させた後、表面を洗浄し、その後、ミオスタチンに対する哺乳動物のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体(例えば、ヤギ、ウサギまたはマウス)と一緒にインキュベーションする。第2の抗ミオスタチン抗体の結合が、シグナル生成化合物(例えば、酵素)と結合した抗体を含む指示試薬の使用により検出される。酵素に対する基質もまた、酵素を使用した場合に加える。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびその基質O−フェニレンジアミン塩酸塩(OPD)を用いることができる。特に、酵素−基質の反応は、例えば、マイクロプレートリーダーで読み取ることができる検出可能なシグナルまたは変化(例えば、発色)を生じさせる。利用され得る酵素以外のシグナル生成化合物の例には、例えば、発光性化合物、放射活性元素、視覚的標識および化学発光化合物が含まれる。既知濃度の精製されたミオスタチンは、標準曲線を作製するために使用される。未知サンプル(例えば、試薬の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)におけるミオスタチンの濃度は、この標準曲線を使用して決定することができる。上清中のミオスタチン濃度を低下させる試験剤は、ミオスタチンの合成および/または分泌を阻害することに関して有用な可能性がある。
【0027】
競合的方法では、一定量のヒトミオスタチンを固体表面(例えば、Immulon−4プレート)にコーティングする。プレートを、例えば、BSAまたは別の既知のブロッティング剤によってブロッティングし、そして洗浄する。サンプル(例えば、例えば、試験剤の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)または既知濃度の精製された成熟型ミオスタチンを、ミオスタチンに対する哺乳動物のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体(例えば、ヤギ、ウサギまたはマウス)とともにプレートに加える。プレートを洗浄し、その後、シグナル生成化合物、例えば、酵素(または上記に記載された成分)と結合した抗体を含む指示試薬と一緒にインキュベーションする。酵素を使用した場合は、酵素に対する基質もまた供給する。酵素は、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であり得る。従って、基質はO−フェニレンジアミン塩酸塩(OPD)であり得る。再度ではあるが、酵素−基質の反応は、例えば、マイクロプレートリーダーで読み取ることができる検出可能なシグナルまたは変化(例えば、発色)を生じさせる。既知濃度の精製されたミオスタチンは、標準曲線を作製するために使用することができる。未知サンプル(例えば、試験剤の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)におけるミオスタチンの濃度は、この標準曲線を使用して決定することができる。上清中のミオスタチン濃度を低下させる試験剤は、ミオスタチンの合成および/または分泌を阻害することに関して潜在的に有用である。既知濃度のミオスタチンまたはサンプル中のミオスタチンは、ミオスタチン抗体に対する結合において、プレートにコーティングされたミオスタチンタンパク質と競合する。より多くのミオスタチンがサンプル中に存在する場合、より少ないシグナルが生じる。試験剤がミオスタチンの合成/分泌を阻止できる場合、その特定のサンプルにおけるミオスタチンの量はコントロールよりも少なくなり、そのサンプルにおけるシグナルはコントロールよりも多くなる。
【0028】
さらに、本発明は、ミオスタチンに結合して、ミオスタチンがその受容体に結合することを妨げ、それによってミオスタチンの機能発現を妨げる組成物を同定するために、ろ過アッセイにおいて精製ミオスタチンを使用するアフィニティー選択法を包含する。簡単に記載すると、精製されたミオスタチンを、いくつかの試験化合物と混合する。この混合物を、特定分子量の分子のみが通過することができるフィルターに通す。ミオスタチンに結合した組成物は、フィルターによって保持される。結合していない化合物は保持されず、結合した組成物から分離され得る。ミオスタチンに結合した組成物の構造は、例えば、質量分析法によって決定される。
【0029】
さらに、本発明はまた、ミオスタチン受容体を含む組織または細胞から調製された細胞または膜に結合する放射能標識されたミオスタチンを使用する受容体結合法を包含する。この方法では、ミオスタチンがその受容体に結合することを阻止し、従って、ミオスタチンの機能発現を阻害する組成物を同定することができる。特に、細菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞に由来する精製された組換えミオスタチンタンパク質を放射能標識する([125I]、[3H]、[14C]など)。その後、放射能標識されたミオスタチンを、ミオスタチン受容体を含有する組織または細胞から調製された細胞または膜と一緒に試験組成物の存在下または非存在下でインキュベーションする。放射能標識された細胞および膜を、その後、放射能標識されていない細胞および膜から、例えば、ろ過および遠心分離などの分離方法により分離する。細胞または膜に結合しているミオスタチンの量は、放射能を計測することによって決定される。試験組成物の存在下で放射能が減少することにより、その組成物がミオスタチンの結合を阻害していること、従ってミオスタチンの機能を阻害することにおいて有用であることが示される。
【0030】
本発明は、下記の非限定的な実施例の使用によって例示され得る。
【0031】
実施例I
ヒトミオスタチンプロモータをコードするヌクレオチド配列および有用な転写因子結合領域の同定
1.ヒトミオスタチンcDNAのクローニング。ヒトミオスタチンcDNAを、ヒト骨格筋の5’−plus cDNAライブラリー(Clontech、Palo Alto、CA)から、下記の特異的なプライマーを使用して、PCRにより増幅した:5’−ATGCAAAAACTGCAACTCTGTGTTT−3’および5’−TCATGAGCACCCACAGCGGTC−3’。PCR産物を真核生物TAクローニングベクターのpCR3.1(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングした。DNAを配列決定することによってインサートを確認した。
【0032】
2.ヒトミオスタチンプロモータ領域のクローニング。ヒトミオスタチン遺伝子のエキソン1およびエキソン2を含むヒトミオスタチンcDNA(図1)のEcoRIおよびHindIIIのフラグメント(740bp)を、ヒトP1由来人工染色体(PAC)ライブラリーをスクリーニングするためのプローブとしてGenomeSystems Inc.(St.Louis、MO)に送った。120kbのインサートを有する1個の陽性クローンが、同じプローブを使用するゲノムサザンブロットによって同定され、確認された。この120kbのインサートをEcoRI制限酵素で消化して、プラスミドpZero(Invitrogen、Carlbad、CA)にサブクローニングした。5kb〜7kbのインサートを有する2つの陽性サブクローンが同定された(図1)。配列決定の結果は、クローン10がエキソン2とイントロン1およびイントロン2の一部とを含有することを示している。クローン11(5.3kb)は、エキソン1、イントロン1の一部、および3.4kbの5’非翻訳領域(すなわち、推定的なミオスタチンプロモータ領域)を含有する。プログラムMatInspector V2.2(Gesellschaft fur Biotechnologische Forschung mbH、Braunschweig、ドイツ)による検索が行われ、潜在的な転写因子結合領域がいくつか同定された(図2)。MatInspectorは、コンセンサスモチーフに対する配列データの迅速な走査を可能にするソフトウエアである。MatInspectorは、類似性インデックスを計算するためにMatIndによって作製されるコア類似性、マトリックス類似性およびCiベクトルを使用する。潜在的な転写因子結合部位は、コア類似性およびマトリックス類似性の両方が0.95に達するときに選択された。プログラムの詳細は、Quandt他、Nucleic Acids Research、23:4878〜4884、1995に説明されている。
【0033】
3.ミオスタチンを発現するヒト骨格筋細胞または筋肉系統の他の細胞株の同定。ヒトの骨格筋細胞および横紋筋肉腫細胞に由来する全RNAを、Trizol試薬(Life Technologies、Gaithersburg、MD)を使用して単離し、逆転写用のテンプレートとして使用した。ミオスタチン遺伝子を、ヒトミオスタチンに特異的な下記のプライマーを使用してPCRにより増幅した:5’−ATGCAAAAACTGCAACTCTGTGTTT−3’および5’−TCATGAGCACCCACAGCGGTC−3’。ヒト前立腺平滑筋細胞に由来する全RNAも同様に試験した。内因性のG3PDH遺伝子に対するプライマーを使用して、全RNAの完全性を調べた。PCR産物を1%アガロースゲルで分析した(図3)。1.1kbのPCR産物(1.1kbはミオスタチンの正しいサイズである)により、ヒトの骨格筋細胞および横紋筋肉腫細胞の両方がミオスタチンを発現していることが示される。
【0034】
実施例II
ルシフェラーゼアッセイ
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを、哺乳動物遺伝子発現の定量的分析のために設計した。ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼのコード領域を、ヒトミオスタチン遺伝子の3.4kbの5’非翻訳領域(5’−UTR)に連結した。この構築物をヒト骨格筋細胞またはヒト横紋筋肉腫細胞に一過性トランスフェクションして、48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性を分析するために、ルシフェリンおよびMg2+−ATPを細胞抽出物に加え、光の生成をモニターした。3.4kbの5’−UTR領域がプロモータ活性を有する場合、ルシフェラーゼ活性は増大する。従って、ルシフェラーゼ活性は、上流のプロモータ領域の機能の指標(レポーター)として使用することができる。
【0035】
3.4kbのヒトミオスタチンの5’非翻訳領域を、pGL3−エンハンサーベクター(Promega、Madison、WI)のXhoI部位およびHindIII部位にクローニングし、ルシフェラーゼレポーター遺伝子に連結した(図4)。この構築物を、Superfect試薬(Qiagen,Inc.、Santa Clarita、CA)を使用してヒト骨格筋細胞またはヒト横紋筋肉腫細胞に一過性トランスフェクションした。β−ガラクトシダーゼ遺伝子またはウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ遺伝子などの別のレポーター遺伝子を、トランスフェクション効率のためのコントロールとして同時にトランスフェクションした。細胞を48時間後に溶解緩衝液中で溶解し、細胞抽出物を、検出キット[例えば、LucLite(Packard、Meriden、CT)、発光β−ガラクトシダーゼ検出キットII(Clontech、Palo Alto、CA)、または二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega、Madison、WI)]を使用してルシフェラーゼ活性およびβ−gal活性について分析した。pGL3−エンハンサー親ベクターをネガティブコントールとして使用し、SV40プロモータを有するpGL3コントロールベクターをルシフェラーゼ活性のポジティブコントロールとして使用した。ルシフェラーゼ活性は、MicroBetaカウンターまたはLuminometer(EG&G Life Sciences−Wallac、Turku、フィンランド)などの発光光検出器で計数し、結果はトランスフェクション効率により標準化した。ヒトミオスタチンプロモータ構築物のルシフェラーゼ活性は、その親ベクターと比較して、ヒト骨格筋細胞では約5倍増大していた(図5A)。ヒト横紋筋肉腫細胞では、ルシフェラーゼ活性の増大は約7倍であった(図5B)。予想されるように、ルシフェラーゼ活性は、ミオスタチンを発現していないヒト前立腺平滑筋細胞では増大しなかった(図5A)。
【0036】
上記の結果を考慮すると、3.4kbのヒトミオスタチンプロモータ領域を含有するルシフェラーゼレポーター構築物は、高処理能スクリーニングのために、SV−40で形質転換されたヒト骨格筋細胞または横紋筋肉腫細胞などの哺乳動物細胞株に安定的または一過性にトランスフェクションすることができる。ルシフェラーゼ活性は、ミオスタチン遺伝子の発現を阻害する化合物を選択するための指標として使用することができる。
【0037】
実施例III
高処理能スクリーニングのための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
サンドイッチ法ELISAまたは競合的ELISAを、ヒトミオスタチンタンパク質の合成および/または分泌を阻害する化合物を同定するために使用することができる。例えば、サンドイッチELISAでは、成熟型のミオスタチンに対するウサギまたはマウスのモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体をImmulon−4プレート(Dynatech Laboratories,Inc.、Chantilly、VA)にコーティングし、そしてプレートをBSAによってブロッティングし、洗浄する。サンプル(例えば、試験剤の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)または既知濃度の精製された成熟型ミオスタチンをプレートに加える。ミオスタチンタンパク質を結合させた後、プレートを再び洗浄し、その後、ミオスタチンに対するウサギまたはマウスのモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体と一緒にインキュベーションする。第2の抗ミオスタチン抗体の結合が、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗体によって、基質としてo−フェニレンジアミン塩酸塩(OPD)を使用して検出される。既知濃度のミオスタチンは、標準曲線を作製するために使用される。
【0038】
競合的ELISAでは、ヒトミオスタチンタンパク質をImmulon−4プレートにコーティングし、そしてプレートをBSAでブロッティングし、洗浄する。サンプル(例えば、試験剤の存在下または非存在下で処理されたヒト骨格筋細胞に由来する上清)または既知濃度の精製された成熟型ミオスタチンまたはミオスタチンペプチドを、ミオスタチンに対するヤギまたはウサギまたはマウスのモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体とともにプレートに加える。プレートを再び洗浄し、その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合した抗体とともに、基質としてo−フェニレンジアミン塩酸塩(OPD)を使用してインキュベーションする。既知濃度のミオスタチンは、標準曲線を作製するために使用する。
【0039】
ミオスタチンを合成して分泌するヒト骨格筋細胞または筋肉系統の他の細胞株は、ミオスタチンの合成または分泌を阻害すると考えられる化合物を試験するために使用することができる。細胞は、所定の時間、例えば、6時間〜48時間試験化合物と一緒にインキュベーションする。その後、細胞培地におけるミオスタチンの量をELISAによって測定する。ミオスタチン量の減少により、試験化合物がミオスタチンの合成および分泌を阻害することにおいて効果的であること、これに対して、ミオスタチン量の増大またはミオスタチンの同じレベルの維持により、試験化合物がミオスタチンの合成および分泌を阻害することにおいて効果的でないことが示される。
【0040】
実施例IV
受容体結合アッセイにおいて使用される放射能標識されたミオスタチンの作製
細菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞に由来する精製された組換えミオスタチンタンパク質が放射能標識される([125I]、[3H]、[14C]など)。その後、放射能標識されたミオスタチンは、ミオスタチン受容体を含有する組織または細胞から調製された細胞または膜とともに試験組成物の存在下または非存在下でインキュベーションされる。膜に結合しているミオスタチンの量は、放射能を計測することによって決定される。試験組成物の存在下で放射能が減少することにより、その組成物がミオスタチンの結合を阻害していること、従ってミオスタチンの機能を阻害することにおいて有用であることが示される。
【0041】
実施例V
アフィニティー選択において使用される精製されたミオスタチン
細菌細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞に由来する精製された組換えミオスタチンタンパク質は、試験組成物との結合において使用される。特に、ミオスタチンに結合した試験組成物はフィルターに保持され、そしてその構造が質量分析法によって決定される。ミオスタチンに結合する試験組成物は、ミオスタチンがその受容体に結合することを阻害することにおいて、従ってミオスタチンの機能を阻害することにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ヒトミオスタチン遺伝子の概念図を表す。ヒトミオスタチン遺伝子は3つのエキソンと2つのイントロンとを含み、これらにより、1.1kbのミオスタチンcDNAがコードされる。ヒトP1由来人工染色体(PAC)ライブラリーを、ヒトミオスタチンのエキソン1およびエキソン2をコードする740bpのプローブを使用してスクリーニングしたとき、120kbのインサートを有する1個の陽性クローンが同定された。このクローンをEcoRIで消化した後、2つのヒトゲノムサブクローンが単離された。このサブクローンの一方(クローンC11)が、0.37kbのエキソン1、1.53kbのイントロン1、およびヒトミオスタチンプロモータ領域を含有する3.4kbの配列を含有した。
【図2】 図2は、ヒトミオスタチンプロモータ領域の核酸配列を表す。推定的な転写因子結合領域がいくつか同定され、下線が引かれている。
【図3】 図3は、ヒトの骨格筋、横紋筋肉腫細胞および前立腺平滑筋細胞から得られたRNAサンプルの、ヒトミオスタチンに特異的なプライマーを使用したRT−PCRによるミオスタチンmRNAの検出を表す。G3PDHにはG3PDHに特異的なプライマーが使用される。増幅されたミオスタチン遺伝子(1.1kb)が、ヒトの骨格筋細胞(レーン1)および横紋筋肉腫細胞(レーン2)の両方で認められたが、前立腺平滑筋細胞(レーン3)では認められなかった。増幅されたG3PDH遺伝子(0.9kb)が、骨格筋細胞(レーン4)、横紋筋肉腫細胞(レーン5)および前立腺平滑筋細胞(レーン6)で認められた。
【図4】 図4は、ルシフェラーゼレポーター構築物を表す。3.4kbのヒトミオスタチンプロモータ領域を、ルシフェラーゼをレポーターとするpGL3−エンハンサーベクター(Promega、Madison、WI)のXhoI部位およびHindIII部位にクローン化した。このベクターは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子と、転写レベルを増大させるためのSV40エンハンサーエレメントとを含有した。
【図5】 図5は、ヒトの骨格筋細胞および横紋筋肉腫細胞におけるヒトミオスタチンプロモータ領域に対するルシフェラーゼアッセイから得られた結果を表す。
Claims (6)
- 図2(配列番号1)によって表される単離された核酸。
- 請求項1に記載される前記核酸と、レポーター分子をコードする核酸とを含むベクターであって、前記レポーター分子をコードする前記核酸は請求項1に記載される前記核酸に機能的に連結しているベクター。
- 前記レポーター分子は、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)からなる群から選択される、請求項2に記載のベクター。
- 前記レポーター分子はルシフェラーゼである、請求項3に記載のベクター。
- 請求項3に記載されるベクターを含む宿主細胞。
- ミオスタチンプロモータの活性化を阻害する組成物を同定する方法であって、
a)図2(配列番号1)によって表される核酸と、レポーター分子をコードする核酸とを含むベクターを構築する工程であって、前記レポーター分子をコードする前記核酸は、図2によって表される前記配列をコードする前記核酸に機能的に連結されている工程;
b)ミオスタチンの発現に好適な時間および条件のもとで前記ベクターを宿主細胞に導入する工程;
c)ミオスタチンプロモータの活性化を阻害し得る組成物と、前記レポーター分子に特異的な基質とに前記宿主細胞をさらす工程;および
d)前記レポーター分子と前記基質との反応によって生じるシグナルを、コントロールの宿主細胞によって産生されるシグナルと比較して測定する工程であって、(c)の前記宿主細胞によるシグナルの方が小さいことにより、前記組成物が前記ミオスタチンプロモータの活性化を阻害することが示される工程
を含む方法。
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