JP4622020B2 - 絶縁被膜を有する酸化物超電導線材およびその製造方法 - Google Patents

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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、酸化物超電導線材およびその製造方法に関し、より特定的には、絶縁被膜を有する酸化物超電導線材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、酸化物超電導線材の1つとして、ビスマス系の酸化物超電導線材が知られている。このビスマス系の酸化物超電導線材は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度を得ることができる。また、このビスマス系の酸化物超電導線材は、長尺化が比較的容易なため、超電導ケーブルやマグネットへの応用が期待されている。
【0003】
そして、このような酸化物超電導線材をマグネットへと応用する場合には、巻線作業性などの観点から、絶縁被膜を有する酸化物超電導線材が求められている。
【0004】
上記のようなビスマス系の酸化物超電導線材は、テープ線材として用いられる場合が多い。これは、以下のような理由による。つまり、酸化物超電導体においては、臨界電流密度の異方性が極めて強い。この結果、高い臨界電流密度を実現するためには、酸化物超電導体の多結晶組織を配向させる必要があるためである。
【0005】
そして、ビスマス系の酸化物超電導線材においては、圧延などの塑性加工を行なうことにより、線材をテープ形状に加工する。この塑性加工により、酸化物超電導体の多結晶組織を配向させている。
【0006】
ここで、上記のような塑性加工工程においては、酸化物超電導体のテープ線材の幅が±0.2mm程度変動する。このため、テープ線材の幅が変動する場合にも、このテープ線材の全面に確実に絶縁被膜を形成する方法を採用する必要がある。この結果、上記のようなテープ線材に対する絶縁被膜の形成方法としては、絶縁被膜基剤をしみ込ませたフェルトにテープ線材を挟んでテープ線材に絶縁被膜基剤を塗布し、その後焼付処理を行なうといった方法の適用が考えられている。このようなフェルトを用いた絶縁被膜の形成方法においては、1回の絶縁被膜基剤の塗布処理によってはテープ線材に絶縁被膜基剤を1.5μm程度の膜厚でしか塗布することができない。このため、通常このようなフェルトを用いた絶縁被膜の形成方法においては、絶縁被膜基剤の塗布処理と焼付処理とを10回程度繰返すという方法が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような絶縁被膜の形成方法をビスマス系の酸化物超電導テープ線材に適用した場合には、絶縁被膜を形成した後に、酸化物超電導テープ線材の臨界電流密度が大幅に低下するという問題が発生していた。これは、以下のような理由による。
【0008】
つまり、上記のような絶縁被膜の形成方法を、酸化物超電導テープ線材に適用した場合には、テープ線材が焼付工程において高温加熱される。そして、この高温加熱によりテープ線材の温度が上昇する。ここで、テープ線材は、酸化物超電導体フィラメントと、その酸化物超電導体フィラメントの周囲に形成された金属被覆膜とからなる。そして、上記のようにテープ線材の温度が上昇することにより、テープ線材の金属被覆膜と酸化物超電導体フィラメントとが熱膨張する。このとき、金属被覆膜と酸化物超電導体フィラメントとの熱膨張率の差から、テープ線材において歪みが発生する。このため、酸化物超電導体フィラメントに機械的歪みが加えられることになる。この結果、酸化物超電導テープ線材の臨界電流密度が低下するなど、超電導特性が劣化していた。
【0009】
また、絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理を10回程度繰返す際には、焼付炉へとテープ線材を所定回数導入する必要がある。この際、絶縁被膜の塗布・焼付装置の構成にもよるが、テープ線材を複数回焼き付け炉へと導入するため、ローラを用いてテープ線材の進行方向を変更する場合がある。この場合には、テープ線材が上記ローラに沿うように曲げられるため、テープ線材が曲げ加工を受けることになる。
【0010】
また、テープ線材をフェルトおよび焼付炉の中において移動させるために、テープ線材に一定の張力をかけておく必要もある。このように、テープ線材が受ける曲げ加工や張力の印加により、やはり酸化物超電導体フィラメントに過度の機械的歪みが加えられることになる。この結果、酸化物超電導テープ線材の超電導特性が劣化し、臨界電流密度が低下するという問題が発生していた。
【0011】
このように、従来の酸化物超電導テープ線材においては、超電導特性の劣化を招くことなく絶縁被膜を形成することは困難であった。
【0012】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、超電導特性の劣化を招くことなく、絶縁被膜を形成することが可能な酸化物超電導線材およびその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の1の局面における酸化物超電導線材は、酸化物超電導体フィラメントとマトリックス材と被覆膜と絶縁被膜とを備える。マトリックス材は、酸化物超電導体フィラメントを取囲むように配置され、銀からなる。被覆膜は、マトリックス材を取囲むように配置され、銀とマンガンとを含み、膜厚が10μm以上50μm以下である。絶縁被膜は、被覆膜を取囲むように配置されている。被覆膜はマンガンを0.1重量%以上0.5重量%以下含有する。
【0014】
このため、被覆膜として銀とマンガンとを含む材料を用いるので、被覆膜の機械的強度を向上させることができる。これにより、絶縁被膜を形成する際に酸化物超電導線材に印加される張力や曲げ加工に十分耐えることが可能な被覆膜の強度を確保することができる。つまり、このように酸化物超電導線材の被覆膜が十分な強度を備えているので、絶縁被膜を形成する工程、この酸化物超電導線材を用いてマグネットやケーブルなどを構成する工程、さらにはこの酸化物超電導線材を用いたマグネットなどの機器を運転する際の冷却による温度変化や電磁力によって線材に応力が加えられる場合などにおいて、酸化物超電導体フィラメントに機械的な歪が過剰に加えられることを防止できる。その結果、酸化物超電導体フィラメントにおける超電導特性の劣化を防止することができる。このため、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下することを防止できる。
【0015】
また、強度向上のため被覆膜に含有させる元素としてマンガンを用いているが、マンガンは酸化物超電導体との反応性が比較的低い。このため、酸化物超電導体を生成するための焼結工程において、被覆膜中の元素により酸化物超電導体の生成反応が阻害されるという問題の発生を抑制できる。また、酸化物超電導体フィラメントと被覆膜との間には銀からなるマトリックス材が位置するので、被覆膜中のマンガンが酸化物超電導体フィラメントへ拡散することをマトリックス材の存在により抑制できる。この結果、被覆膜のマンガンにより酸化物超電導体の生成反応が阻害されるという上記問題の発生をより確実に抑制できる。
【0016】
また、被覆膜の膜厚が10μm以上50μm以下であるので、酸化物超電導線材の製造工程において、亀裂などの欠陥を形成することなく被覆膜を形成できる。また同時に、酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスを線材の外部へと確実に放出できるので酸化物超電導体を確実に生成できる。ここで、被覆膜の膜厚が10μm未満の場合,酸化物超電導線材の製造工程における線材の成型工程で被覆膜に亀裂やピンホールなどの欠陥が発生する。また、被覆膜の膜厚が50μmより大きい場合、上記酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスが線材の外部にうまく放出されず、結果的に酸化物超電導体の生成反応が不完全になる、あるいは線材の内部に上記ガスに起因する空隙が形成されるなどの現象が起きることがある。この場合、酸化物超電導線材の超電導特性が著しく低下する。さらに、被覆膜の膜厚が50μmより大きい場合、酸化物超電導線材の全断面積に対する酸化物超電導体フィラメントの占有面積の割合が小さくなるので、酸化物超電導線材における電流密度が低下するという問題が顕著になる。
【0017】
また、酸化物超電導線材が絶縁被膜を備えているので、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどの機器に適用する場合、優れた巻線作業性を得ることができる。また、従来のように巻線作業の際に超電導線材の間に絶縁材を挟みこむ作業を行う場合とは異なり、酸化物超電導線材のパッキング率および寸法精度を向上させることができるとともに、高い絶縁性能を容易に得ることができる。
【0018】
また、絶縁被膜があらかじめ形成されているので、酸化物超電導線材が液体窒素や液体ヘリウムなどの寒剤にさらされる場合、寒剤が被覆膜あるいはマトリックス材の内部に侵入することを防止するための保護膜として絶縁被膜を利用できる。ここで、絶縁被膜が形成されていない酸化物超電導線材をマグネットやケーブルなどに適用する場合、この酸化物超電導線材の間を何らかの手段で絶縁する必要がある。たとえば、酸化物超電導線材の間に絶縁体を挟み込ながら巻線作業などを行うという手法が考えられる。このようにして形成されたマグネットなどの機器を冷却するため寒剤を用いる場合、機器を構成する酸化物超電導線材における絶縁皮膜の形成されていない表面が直接寒剤に接触する場合がある。このとき、酸化物超電導線材の表面にピンホールなどの欠陥がある場合には、寒剤が酸化物超電導線材の内部に侵入する。この状態で酸化物超電導線材の温度が寒剤の沸点以上に上昇すると、線材の内部で寒剤が気化する。この気化した寒剤により線材の内部に空隙が形成される。このような空隙が形成されると、絶縁被膜の無い酸化物超電導線材の超電導特性は著しく劣化する。しかし、本発明による酸化物超電導線材には絶縁被膜が形成されているため、上述のような問題の発生を防止できる。
【0020】
また、確実に被覆膜の強度を向上させることができると同時に、酸化物超電導体の生成反応をマンガンが阻害することを防止できる。ここで、マンガンの含有率が0.1重量%未満の場合、被覆膜の強度を十分に向上させることができない。また、マンガンの含有率が0.5重量%より大きい場合、銀からなるマトリックス材を用いた上記1の局面における酸化物超電導線材では、被覆膜のマンガンが被覆膜からマトリックス材の中にまで拡散して到達する。この結果、酸化物超電導体の生成反応がこのマンガンにより阻害される。
【0021】
この発明の他の局面における酸化物超電導線材は、酸化物超電導体フィラメントと、マトリックス材と、被覆膜と絶縁被膜とを備える。マトリックス材は、酸化物超電導体フィラメントを取囲むように配置され、銀とアンチモンとを含む。被覆膜は、マトリックス材を取囲むように配置され、銀とマンガンとを含み、膜厚が10μm以上50μm以下である。絶縁被膜は、被覆膜を取囲むように配置されている。マトリックス材はアンチモンを0.1重量%以上0.5重量%以下含有し、被覆膜はマンガンを0.5重量%以上1.0重量%以下含有する。
【0022】
このため、本発明の上記1の局面における酸化物超電導線材と同様に、被覆膜として銀とマンガンとを含む材料を用いるので、被覆膜の機械的強度を向上させることができる。これにより、絶縁被膜を形成する際に酸化物超電導線材に印加される張力や曲げ加工に十分耐えることが可能な被覆膜の強度を確保することができる。つまり、絶縁被膜を形成する工程などにおいて、酸化物超電導体フィラメントに機械的な歪が過剰に加えられることを防止できる。その結果、酸化物超電導体フィラメントにおける超電導特性の劣化を防止することができる。このため、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下することを防止できる。
【0023】
また、強度向上のため被覆膜に含有させる元素としてマンガンを用いているが、マンガンは酸化物超電導体との反応性が比較的低い。このため、酸化物超電導体を生成するための焼結工程において、被覆膜中の元素により酸化物超電導体の生成反応が阻害されるという問題の発生を抑制できる。また、酸化物超電導体フィラメントと被覆膜との間には銀とアンチモンとを含むマトリックス材が位置するので、被覆膜中のマンガンの酸化物超電導体フィラメントへの拡散をマトリックス材の存在により抑制できる。この結果、被覆膜のマンガンにより酸化物超電導体の生成反応が阻害される上記問題の発生をより確実に抑制できる。
【0024】
また、マトリックス材はアンチモンを含有するが、このアンチモンは被覆膜中のマンガンが超電導体フィラメントの位置する領域にまで拡散することを抑制する機能を有する。このため、マトリックス材として銀のみを用いる場合より、酸化物超電導線材の超電導特性を劣化させること無く、被覆膜中のマンガンの含有率を高くすることができる。この結果、被覆膜の機械的強度をより向上させることができる。
【0025】
また、被覆膜の膜厚が10μm以上50μm以下であるので、上記1の局面における酸化物超電導線材と同様に、後述する製造工程において、亀裂などの欠陥を発生させることなく被覆膜を形成できる。同時に、酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスを線材の外部へと確実に放出できる。このため、酸化物超電導体を確実に生成できる。なお、被覆膜の膜厚が10μm未満の場合,酸化物超電導線材の製造工程における線材の成型工程で被覆膜に亀裂などの欠陥が発生する。また、被覆膜の膜厚が50μmより大きい場合、上記酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスが線材の外部にうまく放出されず、結果的に酸化物超電導体の生成反応が不完全になる。また、線材の内部において上記ガスに起因する空隙が形成される場合もある。この場合、酸化物超電導線材の超電導特性が著しく低下する。さらに、被覆膜の膜厚が50μmより大きい場合、酸化物超電導線材の全断面積に対する酸化物超電導体フィラメントの占有面積の割合が小さくなるので、酸化物超電導線材における電流密度が低下するという問題が顕著になる。
【0026】
また、酸化物超電導線材が絶縁被膜を備えているので、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどの機器に適用する場合、優れた巻線作業性を得ることができる。また、従来のように巻線作業の際に超電導線材の間に絶縁材を挟みこむ場合とは異なり、酸化物超電導線材のパッキング率および寸法精度を向上させることができるとともに、高い絶縁性能を容易に得ることができる。
【0027】
また、絶縁被膜があらかじめ形成されているので、酸化物超電導線材が液体窒素や液体ヘリウムなどの寒剤にさらされる場合、寒剤が被覆膜あるいはマトリックス材の内部に侵入することを防止するための保護膜として絶縁被膜を利用できる。
【0029】
また、マンガンにより被覆膜の機械的強度を十分に向上させることができると同時に、被覆膜中のマンガンがマトリックス材の内部へと拡散することをアンチモンにより確実に防止できる。つまり、アンチモンによってマンガンの拡散を抑制できるので、被覆膜においてマンガンの含有率を上記1の局面における酸化物超電導線材より大きくできる。この結果、被覆膜の機械的強度を向上させることができる。
【0030】
ここで、マトリックス材におけるアンチモンの含有率が0.5重量%を超える場合には、被覆膜から酸化物超電導体フィラメントへとアンチモンが拡散、侵入する。この結果、酸化物超電導体フィラメントの超電導特性が劣化する。このため、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下するという問題が発生する。また、マトリックス材でのアンチモンの含有率が0.1重量%未満の場合、マンガンの拡散を防止するアンチモンの効果を十分に得ることができない。
【0031】
また、被覆膜中のマンガンの濃度が0.5重量%以上であれば、本発明の1の局面における酸化物超電導線材における被覆膜の機械的強度以上の十分な強度を得ることができる。一方、このマンガンの濃度が1.0重量%を超える場合、酸化物超電導体フィラメントが位置する領域にマンガンが拡散し到達する場合がある。この場合、酸化物超電導線材の製造工程において、酸化物超電導体の生成反応がこのマンガンによって阻害される。
【0032】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、被覆膜ではマンガンが酸化物粒子として分散して配置されていることが好ましい。
【0033】
この場合、マンガンの酸化物粒子が被覆膜中に分散しているため、被覆膜の機械的強度をこの酸化物粒子によって確実に向上させることができる。
【0034】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、被覆膜ではマンガンが被覆膜中に固溶した状態で存在していることが好ましい。
【0035】
この場合、被覆膜を構成するマンガンと異なる材料(たとえば銀)中にマンガンが固溶することにより、この材料中に格子ひずみが形成される。この結果、被覆膜の機械的強度を向上させることができる。
【0036】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、被覆膜の膜厚は20μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0037】
この場合、酸化物超電導線材において、確実に高い臨界電流密度を達成できると共に、酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へ確実に放出できる。このため、超電導特性の優れた酸化物超電導線材を得ることができる。
【0038】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、酸化物超電導線材は平坦部を有するテープ状であることが好ましい。
【0039】
この場合、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどへと適用する際に、巻線作業などを容易に行なうことができる。
【0040】
また、テープ状の酸化物超電導線材において絶縁被膜を形成する場合には、フェルトを用いた絶縁被膜の形成方法が適用される。そして、このフェルトを用いた絶縁被膜の形成方法のように、絶縁被膜となるべき基剤の塗布処理と焼付処理とを複数回繰り返すような場合、本発明による酸化物超電導線材では超電導特性の劣化を確実に防止できる。このため、テープ状の酸化物超電導線材において、本発明の上記効果は特に顕著である。
【0041】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、平坦部における被覆膜の膜厚は10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0042】
この場合、上記平坦部はテープ状の酸化物超電導線材の表面において大部分を占めているので、この平坦部における被覆膜の膜厚が上述のように10μm以上50μm以下であれば、上述の本発明による酸化物超電導線材の効果をより確実に発揮できる。
【0043】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、平坦部における前記被覆膜の膜厚は20μm以上40μm以下であることがより好ましい。
【0044】
この場合、酸化物超電導線材において、上述のように確実に高い臨界電流密度を達成できると共に、酸化物超電導体の生成反応に起因して発生するガスを線材の外部へ確実に放出できる。このため、超電導特性の優れた酸化物超電導線材をより確実に得ることができる。
【0045】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、絶縁被膜の膜厚は5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0046】
ここで、絶縁被膜の膜厚が5μm未満では、局所的な絶縁破壊が容易に起きるとともに、絶縁被膜にピンホールなどの欠陥が発生しやすくなる。また、酸化物超電導線材を用いた機器の運転時、酸化物超電導線材は液体窒素などの寒剤により冷却される。この際、上記欠陥から絶縁被膜の内側に寒剤が侵入する場合がある。この状態で酸化物超電導線材の温度が寒剤の沸点より高くなると寒剤が気化する。このため、気化した寒剤により絶縁被膜が破壊される、あるいは酸化物超電導線材の内部に空隙が形成され、部分的に膨れたような形状となる。この場合、酸化物超電導線材の超電導特性は著しく低下する。また、絶縁被膜の膜厚が100μmを超える場合、酸化物超電導線材の断面積に対する超電導体フィラメントの占有面積の割合が低下するので、電流密度が低下することになる。このため、上述のような絶縁被膜の膜厚範囲であれば、上記のような問題の発生を防止できる。
【0047】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、絶縁被膜は樹脂を含むことが好ましい。
【0048】
この場合、樹脂は酸化物超電導体の特性が劣化しない温度域での焼付処理が可能であるので、酸化物超電導体フィラメントの超電導特性を劣化させること無く絶縁被膜を形成することができる。また、樹脂を用いれば、比較的薄い膜厚で、かつピンホールなどの欠陥の無い絶縁被膜を形成することが可能である。この結果、高い電流密度を実現すると同時に、寒剤が酸化物超電導線材の内部に侵入することを有効に防止できる。また、樹脂の材質を適宜選択すれば、十分な絶縁性能、耐水性、温度変化に対する安定性および耐熱性を備える絶縁被膜を実現できる。
【0049】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、樹脂はホルマール樹脂であることが好ましい。
【0050】
ここで、ホルマール樹脂は400℃以下という他の樹脂に比べて比較的低い焼付温度で焼付を行なうことが可能である。このため、絶縁被膜を形成する工程における焼付温度を、他の樹脂を用いる場合よりも低くすることができる。これにより、絶縁被膜を形成する工程での酸化物超電導線材の加熱温度を低減することができる。そのため、この熱に起因する酸化物超電導体フィラメントでの機械的歪の発生を低減できる。この結果、酸化物超電導線材の超電導特性が劣化することを確実に防止できる。
【0051】
上記1の局面または他の局面における酸化物超電導線材において、酸化物超電導体フィラメントはビスマス系の酸化物超電導体フィラメントであることが好ましい。
【0052】
ビスマス系の酸化物超電導体は液体窒素温度での使用が可能である。また、このビスマス系の酸化物超電導体は比較的高い臨界電流密度を得ることができ、さらに、長尺化もが可能であるため、マグネットなどへの適用が期待されている。そして、マグネットなどへの適用の際には、巻線作業性などの観点から、絶縁被膜を有する酸化物超電導線材が求められる。このため、ビスマス系の酸化物超電導線材に本発明を適用すれば、特に顕著な効果を奏する。
【0053】
この発明の別の局面における酸化物超電導線材の製造方法は、焼結によって酸化物超電導体となる原料粉末と、この原料粉末を取囲むように配置され、銀からなるマトリックス材と、このマトリックス材を取囲むように配置され、銀と0.1重量%以上0.5重量%以下のマンガンとを含む被覆膜とを備える線材を準備する準備工程と、線材を加熱することにより、原料粉末から酸化物超電導体を生成させる焼結工程と、酸化物超電導体を備える線材の長手方向に張力を印加した状態で被覆膜を取囲むように被覆膜の外表面上に絶縁被膜を形成する被覆工程とを備える。準備工程では、被覆膜の膜厚を10μm以上50μm以下とする。
【0054】
このように、被覆膜が銀と0.1重量%以上0.5重量%以下のマンガンとを含んでいるので、絶縁被膜を形成する被覆工程において線材に印加される張力や曲げ加工に十分耐えることが可能な強度を有する線材を得ることができる。つまり、このように酸化物超電導線材の被覆膜が十分な強度を備えているので、絶縁被膜を形成する被覆工程において、酸化物超電導体に機械的な歪が過剰に加えられることを防止できる。その結果、過剰な機械的歪により酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下することを防止できる。
【0055】
なお、マンガンの含有率が0.1重量%未満の場合、被覆膜の強度を十分に向上させることができない。また、マンガンの含有率が0.5重量%より大きい場合、銀からなるマトリックス材を用いた上記線材では、焼結工程において被覆膜のマンガンが被覆膜中からマトリックス材の中にまで拡散して到達する。この結果、焼結工程における酸化物超電導体の生成反応がこのマンガンにより阻害される。
【0056】
この発明のもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法は、焼結によって酸化物超電導体となる原料粉末と、この原料粉末を取囲むように配置され、銀と0.1重量%以上0.5重量%以下のアンチモンとを含むマトリックス材と、このマトリックス材を取囲むように配置され、銀と0.5重量%以上1.0重量%以下のマンガンとを含む被覆膜とを備える線材を準備する準備工程と、線材を加熱することにより、原料粉末から酸化物超電導体を生成させる焼結工程と、酸化物超電導体を備える線材の長手方向に張力を印加した状態で被覆膜を取囲むように被覆膜の外表面上に絶縁被膜を形成する被覆工程とを備える。準備工程では、被覆膜の膜厚を10μm以上50μm以下とする。
このため、被覆膜として銀と0.5重量%以上1.0重量%以下のマンガンとを含む材料を用いるので、被覆膜の機械的強度を上記別の局面における酸化物超電導線材の製造方法における線材よりさらに向上させることができる。これにより、被覆工程において線材に印加される張力や曲げ加工に十分耐えることが可能な被覆膜の強度を確保することができる。つまり、絶縁被膜を形成する被覆工程などにおいて、酸化物超電導体に機械的な歪が過剰に加えられることを防止できる。その結果、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下することを防止できる。
【0057】
また、被覆膜中のマンガンがマトリックス材の内部へと拡散することをマトリックス材中のアンチモンにより確実に防止できる。
【0058】
なお、マトリックス材におけるアンチモンの含有率が0.5重量%を超える場合、被覆膜から酸化物超電導体へとアンチモンが拡散、侵入する。この結果、酸化物超電導体の超電導特性が劣化する。また、マトリックス材でのアンチモンの含有率が0.1重量%未満の場合、マンガンの拡散を防止するアンチモンの上記効果を十分に得ることができない。
【0059】
また、被覆膜中のマンガンの濃度が0.5重量%以上であれば、被覆膜において本発明の別の局面における被覆膜の機械的強度以上の十分な強度を得ることができる。一方、このマンガンの濃度が1.0重量%を超える場合、酸化物超電導体が位置する領域にマンガンが拡散し到達する場合がある。この場合、焼結工程において、酸化物超電導体の生成反応がこのマンガンによって阻害される。
【0060】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、準備工程が、マトリックス材となるべき第1のパイプ状部材の内部に原料粉末を充填する工程と、原料粉末が充填された第1のパイプ状部材を縮径する工程と、縮径された第1のパイプ状部材を、被覆膜となるべき第2のパイプ状部材の内部に配置する工程と、縮径された第1のパイプ状部材が内部に配置された第2のパイプ状部材を縮径する工程とを含むことが好ましい。
【0061】
この場合、被覆膜となるべき部材としてシート状の部材を用いる場合より、より容易に準備工程を実施できる。
【0063】
また、上記別の局面またはもう一つの局面では、焼結工程において酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスが被覆膜を容易に透過できるので、このガスを線材の外部へと確実に放出させることができる。このため、酸化物超電導体を確実に生成できる。なお、被覆膜の膜厚が10μm未満の場合,準備工程で被覆膜に亀裂などの欠陥が発生する場合がある。また、被覆膜の膜厚が50μmより大きい場合、上記酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスが線材の外部にうまく放出されず、結果的に酸化物超電導体の生成反応が不完全になる。また、線材の内部に上記ガスに起因する空隙が形成される場合もある。この場合、製造された酸化物超電導線材の超電導特性が著しく低下する。
【0064】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法において、準備工程では、被覆膜の膜厚を20μm以上40μm以下とすることがより好ましい。
【0065】
この場合、被覆膜における欠陥の発生を防止できると同時に、焼結工程における酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へ確実に放出できる。
【0066】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、準備工程において線材は平坦部を有するテープ状に成形されることが好ましい。
【0067】
この場合、断面形状が円形状の線材より、被覆膜の表面積を大きくできるので、被覆膜を介して焼結工程における酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へより確実に放出できる。
【0068】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、平坦部における被覆膜の膜厚が10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0069】
この場合、上記平坦部はテープ状の酸化物超電導線材の表面において大部分を占めているので、この平坦部における被覆膜の膜厚が上述のように10μm以上50μm以下であれば、焼結工程における酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へより確実に放出できる。この結果、超電導特性の優れた酸化物超電導線材を確実に得ることができる。
【0070】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、平坦部における被覆膜の膜厚が20μm以上40μm以下であることがより好ましい。
【0071】
この場合、被覆膜に欠陥が発生することを確実に防止できると同時に、焼結工程において酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へより確実に放出できる。
【0072】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、被覆工程において、絶縁被膜の膜厚を5μm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0073】
ここで、絶縁被膜の膜厚が5μm未満では、準備工程において絶縁被膜にピンホールなどの欠陥が発生しやすくなる。また、絶縁被膜の膜厚が100μmを超える場合、酸化物超電導線材の断面積に対する酸化物超電導体の占有面積の割合が低下するので、電流密度が低下することになる。
【0074】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、絶縁被膜は樹脂を含むことが好ましい。
【0075】
この場合、樹脂は酸化物超電導体の特性が劣化しない温度域での焼付処理が可能であるので、酸化物超電導体の超電導特性を劣化させること無く被覆工程を実施することができる。
【0076】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、樹脂がホルマール樹脂であることがより好ましい。
【0077】
ホルマール樹脂は400℃以下という他の樹脂に比べて比較的低い焼付温度にて焼付処理を行なうことが可能である。このため、被覆工程における焼付温度を、他の樹脂を用いる場合よりも低くすることができる。
【0078】
上記別の局面またはもう一つの局面における酸化物超電導線材の製造方法では、酸化物超電導体はビスマス系の酸化物超電導体であることが好ましい。
【0079】
ビスマス系の酸化物超電導体は液体窒素温度での使用が可能であり、また、比較的高い臨界電流密度を得ることができるとともに長尺化もが可能であるため、マグネットなどの機器への適用が期待されている。そして、このような機器を製造する際の巻線作業性などの観点から、絶縁被膜を有する酸化物超電導線材が求められる。そのため、ビスマス系の酸化物超電導線材の製造方法に本発明を適用すれば、特に顕著な効果を奏する。
【0080】
この発明のさらに他の局面における酸化物超電導線材は、酸化物超電導体フィラメントと、被覆膜と、絶縁被膜とを備える。被覆膜は、酸化物超電導体フィラメントを取囲むように配置され、マンガンを0.1重量%以上1.0重量%未満含有する銀合金を含む。絶縁被膜は、被覆膜を取囲むように配置されている。
【0081】
このため、酸化物超電導線材が絶縁被膜を備えているので、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどに適用する場合にも、優れた巻線作業性を得ることができる。
【0082】
また、被覆膜がマンガンを0.1重量%以上1.0重量%未満含有する銀合金を含んでいるので、酸化物超電導線材において、絶縁被膜を形成する際にも酸化物超電導線材に印加される張力や曲げ加工に十分耐えることが可能な強度を確保することができる。つまり、このように酸化物超電導線材の被覆膜が十分な強度を備えているので、絶縁被膜を形成する工程においても、酸化物超電導体フィラメントに機械的な歪が過剰に加わることを防止できる。その結果、酸化物超電導体フィラメントにおける超電導特性の劣化を防止することができる。このため、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下することを防止できる。
【0083】
なお、ここで、マンガンの含有率が1.0重量%以上となる場合には、酸化物超電導線材のコアの部分にマンガンが侵入し、酸化物超電導体フィラメントにまでマンガンが到達する場合がある。このような場合には、このマンガンの侵入により、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下してしまう。また、マンガンの含有率を0.1重量%以上とすれば、第2の被覆膜の引張り強度を確実に向上させることができる。この結果、酸化物超電導線材の引張り強度を確実に向上させることができる。
【0084】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材においては、被覆膜における銀合金のマンガンの含有率を0.5重量%以上1.0重量%未満とすることが好ましい。
【0085】
この場合、酸化物超電導線材の高温環境下における引張り強度を確実に向上させることができる。この結果、絶縁被膜を形成する工程において、酸化物超電導線材の超電導特性の劣化をより確実に防止することができる。
【0086】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、被覆膜が、第1の被覆膜と、第2の被覆膜とを含むことが好ましい。
【0087】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、第1の被覆膜が銀を含むことが好ましい。
【0088】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、第1の被覆膜がアンチモンを含有する銀合金からなることが好ましく、第2の被覆膜が第1の被覆膜を取囲むように配置され、マンガンを0.1重量%以上1.0重量%未満含有する銀合金からなることが好ましい。
【0089】
この場合、第1の被覆膜におけるアンチモンにより、第2の被覆膜に含有されるマンガンが酸化物超電導体フィラメントへと拡散、侵入することを抑制することができる。この結果、このマンガンの拡散に起因する酸化物超電導線材の超電導特性の劣化を、より確実に防止することができる。
【0090】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、第1の被覆膜が、アンチモンを0.1重量%以上0.5重量%未満含有する銀合金からなることが好ましい。
【0091】
この場合、上記のようなアンチモンの含有率の範囲であれば、アンチモンが酸化物超電導体フィラメントへと拡散することを抑制できる。また、同時に、第1の被覆膜中のアンチモンにより、マンガンの酸化物超電導体フィラメントへの拡散を防止することが可能となる。この結果、酸化物超電導線材の超電導特性の劣化をより確実に防止できる。
【0092】
ここで、アンチモンの含有率が0.5重量%以上の場合には、第1の被覆膜から酸化物超電導体フィラメントへとアンチモンが拡散、侵入する。この結果、酸化物超電導体フィラメントの超電導特性が劣化する。このため、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下するという問題が発生する。
【0093】
また、アンチモンを0.1重量%以上含有させることにより、上記のようなマンガンの拡散を防止する効果を確実に発揮させることができる。
【0094】
また、上記のような割合のアンチモンを含有する銀合金を第1の被覆膜として用いるので、酸化物超電導線材の引張り強度をより向上させることができる。このため、絶縁被膜を酸化物超電導線材に形成する工程において、酸化物超電導体フィラメントに過剰な機械的歪が加えられることをより確実に防止できる。この結果、酸化物超電導線材の超電導特性の劣化を確実に防止することができる。
【0095】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、絶縁被膜の膜厚が10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0096】
ここで、酸化物超電導線材の製造工程では、800℃以上の高温かつ酸化雰囲気において酸化物超電導線材の焼結を行なう。このため、第2の被覆膜において結晶粒の粗大化、添加元素の酸化析出などが発生する場合がある。たとえば、マンガンを含有する銀合金を含む第2の被覆膜においては、上記のような焼結工程によって、その表面に2〜10μm程度の突起物が形成される場合がある。このため、絶縁被膜の膜厚を10μm以上とすれば、上記のような突起物が焼結工程において形成されるような場合、上記のような突起物によって絶縁被膜にピンホールなどの欠陥が発生することを防止できる。この結果、酸化物超電導線材の絶縁を確実に行なうことができる。
【0097】
また、絶縁被膜の膜厚が100μmを超えるような場合には、酸化物超電導線材における酸化物超電導体フィラメント部分の、酸化物超電導線材全体における割合が低下する。この結果、酸化物超電導線材において、単位断面積当たりの電流量など、所定の電気的特性を得ることが困難になる。
【0098】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、絶縁被膜がホルマール樹脂を含むことが好ましい。
【0099】
ここで、ホルマール樹脂は、400℃以下という他の樹脂に比べて比較的低い焼付温度で焼付を行なうことが可能である。このため、絶縁被膜を形成する工程における焼付温度を、他の樹脂を用いる場合よりも低くすることができる。これにより、絶縁被膜を形成する工程における酸化物超電導線材の加熱温度を低減することができる。そのため、酸化物超電導体フィラメントにおける、この熱に起因する機械的歪の発生を低減することができる。この結果、酸化物超電導線材の超電導特性が劣化することを確実に防止できる。
【0100】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、酸化物超電導線材の外形がテープ状であることが好ましい。
【0101】
この場合、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどへと適用する際に、巻線作業等を容易に行なうことができる。
【0102】
また、テープ状の酸化物超電導線材において絶縁被膜を形成する場合には、フェルトを用いた絶縁被膜の形成方法が適用される。そして、このフェルトを用いた絶縁被膜の形成方法のように、絶縁被膜となるべき基剤の塗布処理と焼付処理とを複数回繰り返すような場合、本発明による酸化物超電導線材では、超電導特性の劣化を確実に防止できる。このため、テープ状の酸化物超電導線材において、本発明の上記効果は特に顕著である。
【0103】
上記さらに他の局面における酸化物超電導線材では、酸化物超電導体フィラメントが、ビスマス系の酸化物超電導体フィラメントであることが好ましい。
【0104】
この場合、ビスマス系の酸化物超電導体は、液体窒素温度での使用が可能である。また、このビスマス系の酸化物超電導体は比較的高い臨界電流密度を得ることができ、さらに、長尺化もが可能であるため、マグネットなどへの適用が期待されている。そして、マグネットなどへの適用の際には、巻線作業性などの観点から、絶縁被膜を有する酸化物超電導線材が求められる。このため、ビスマス系の酸化物超電導線材に本発明を適用すれば、特に顕著な効果を奏する。
【0105】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0106】
図1は、本発明による酸化物超電導線材の実施の形態を示す断面模式図である。図1を参照して、酸化物超電導線材を説明する。
【0107】
図1を参照して、酸化物超電導線材は、ビスマス系の酸化物超電導体からなる酸化物超電導体フィラメントとしての超電導体フィラメント1と、アンチモンを含有する銀合金(Ag−Sb合金)からなるマトリックス材としての第1の被覆膜2と、マンガンを含有する銀合金(Ag−Mn合金)からなる被覆膜としての第2の被覆膜3と、ポリビニルホルマール樹脂からなる絶縁被膜4とを備える。超電導体フィラメント1を取囲むように第1の被覆膜2が形成されている。第1の被覆膜2を取囲むように第2の被覆膜3が形成されている。第2の被覆膜3を取囲むように絶縁被膜4が形成されている。
【0108】
なお、第1の被覆膜2は、アンチモンを含有していない銀からなっていてもよい。また、第2の被覆膜3のAg−Mn合金では、マンガン(Mn)は合金中に固溶した状態で存在している。この場合、第2の被覆膜3を構成する銀マトリックス中にマンガンが固溶することにより、この合金中に格子ひずみが形成される。この結果、第2の被覆膜3の機械的強度を向上させることができる。また、第2の被覆膜3では、マンガンは酸化物粒子として合金の基材中に分散して存在していてもよい。この場合、この酸化物粒子によって第2の被覆膜3の機械的強度を確実に向上させることができる。
【0109】
第2の被覆膜3の膜厚は10μm以上50μm以下であることが好ましい。このように、第2の被覆膜3の膜厚が10μm以上50μm以下であるので、後述する製造工程において、亀裂などの欠陥を形成することなく第2の被覆膜3を形成できると同時に、酸化物超電導体フィラメント1の生成反応に伴って発生するガスを線材の外部へと確実に放出できる。
【0110】
また、酸化物超電導線材に絶縁被膜4を形成することにより、この酸化物超電導線材をマグネットなどに適用する際の巻線作業性を向上させることができる。
【0111】
また、絶縁被膜4があらかじめ形成されているので、酸化物超電導線材が液体窒素や液体ヘリウムなどの寒剤にさらされる場合、寒剤が第2の被覆膜3あるいはマトリックス材としての第1の被覆膜2の内部に侵入することを防止するための保護膜として絶縁被膜4を利用できる。
【0112】
ここで、第2の被覆膜3においては、マンガンの含有率が0.1重量%以上1.0重量%以下である。このようにマンガンの含有率を規定することにより、マンガンが第2の被覆膜3から超電導体フィラメント1へと拡散することを抑制すると同時に、酸化物超電導線材の強度を向上させることができる。この結果、後述する酸化物超電導線材の製造工程における絶縁被膜の形成工程において、酸化物超電導線材に張力や曲げ加工が加えられる場合の酸化物超電導線材における超電導特性の劣化を防止することができる。
【0113】
また、強度向上のため第2の被覆膜3に含有させる元素としてマンガンを用いているが、マンガンは酸化物超電導体との反応性が比較的低い。このため、酸化物超電導体フィラメント1を生成するための焼結工程において、第2の被覆膜3中の元素により酸化物超電導体の生成反応が阻害されるという問題の発生を抑制できる。
【0114】
なお、マンガンの含有率が0.1重量%以上であれば、確実に酸化物超電導線材の強度を向上させることができる。また、マンガンの含有率が1.0重量%以下であれば、この第2の被覆膜3からマンガンが超電導体フィラメント1へと拡散することを抑制できる。この結果、酸化物超電導線材における超電導特性の劣化を有効に防止することができる。
【0115】
また、マトリックス材としての第1の被覆膜2が銀からなる場合、第2の被覆膜3におけるマンガンの含有率は0.1重量%以上0.5重量%以下とすることが好ましい。この場合、第2の被覆膜3の強度を向上させることができると同時に、酸化物超電導体フィラメント1の生成反応をマンガンが阻害することを確実に防止できる。
【0116】
また、マトリックス材としての第1の被覆膜2が銀とアンチモンとを含む場合、第2の被覆膜3におけるマンガンの含有率は、0.5重量%以上1.0重量%以下とすることがより好ましい。
【0117】
この場合、酸化物超電導線材の高温環境下における引張り強度を確実に向上させることができる。この結果、絶縁被膜を形成する工程における焼付工程などの高温環境下においても、酸化物超電導体フィラメント1に過剰な機械的歪みが加えられることを確実に防止できる。
【0118】
また、第1の被覆膜2がアンチモンを含有する銀合金であるので、第2の被覆膜3からマンガンが酸化物超電導体フィラメント1へ拡散することをより確実に抑制することができる。
【0119】
また、第1の被覆膜2におけるアンチモンの含有率を0.1重量%以上0.5重量%以下とすることが好ましい。
【0120】
第1の被覆膜2において、このような濃度範囲となるようにてアンチモンを含有させれば、第1の被覆膜2からアンチモンが超電導体フィラメント1へと拡散することを抑制しつつ、同時に、第2の被覆膜3からマンガンが超電導体フィラメント1へと拡散することを抑制できる。ここで、アンチモンの含有率が0.5重量%を超える場合には、第1の被覆膜2からアンチモンが超電導体フィラメント1へと拡散、侵入する。この結果、酸化物超電導線材の臨界電流密度が低下するという問題が発生する。
【0121】
また、アンチモンの含有率を0.1重量%以上とすれば、上記のような効果を確実に発揮させることができる。
また、絶縁被膜4の膜厚は5μm以上100μm以下であることが好ましい。絶縁被膜の膜厚が5μm未満では、局所的な絶縁破壊が容易に起きるとともに、絶縁被膜にピンホールなどの欠陥が発生しやすくなる。
【0122】
また、絶縁被膜4の膜厚は10μm以上100μm以下とすることがより好ましい。
【0123】
ここで、図1に示したようなビスマス系の酸化物超電導線材は、その製造工程において800℃以上の高温かつ酸化性雰囲気という条件にて焼結を行なう。そして、この焼結の際に、第2の被覆膜3などにおいて、結晶粒の粗大化や、添加元素の酸化析出といった現象が起こる。たとえば、第2の被覆膜3のようなAg−Mn合金の場合には、その表面に2〜10μm程度の突起物が形成される場合がある。このため、被覆膜4の膜厚を10μm以上とすることにより、上記のような突起物が形成されるような場合においても、確実に酸化物超電導線材の表面を絶縁被膜4で覆い、絶縁することができる。
【0124】
また、絶縁被膜4の膜厚が100μmを超えるような場合には、酸化物超電導線材の全断面積に対して酸化物超電導体フィラメント1の体積の割合が低下する。このため、マグネットなどを形成した場合に必要な電気的特性を得ることが困難になるという問題が発生する。
【0125】
また、絶縁被膜4の材料として用いられているポリビニルホルマール樹脂は、他の絶縁被膜材料と比べてもより低温で焼付を行なうことができる。このため、後述する絶縁被膜4の形成工程における焼付処理での加熱温度を低減することができる。そのため、この焼付処理における熱に起因して、酸化物超電導線材において発生する機械的歪みを低減することができる。この結果、この機械的歪みに起因して酸化物超電導線材の超電導特性が劣化することを防止できる。
【0126】
また、図1に示すように、酸化物超電導線材がテープ状であるので、本発明による酸化物超電導線材をマグネットなどに容易に適用することができる。
【0127】
また、液体窒素温度で使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度を有し、また長尺化が容易なビスマス系の酸化物超電導線材に対して、このように本発明を適用すれば、マグネットなどへの酸化物超電導線材の適用をより容易に行なうことができる。
【0128】
ここで、図1に示した酸化物超電導線材は、銀シース法により製造される。具体的には、まず、Bi−Pb、Sr、Ca、Cuの酸化物または炭酸塩の粉末を混合焼成・粉砕することにより、原料粉末を準備する。上記粉末は、たとえば原子比でBi−Pb:Sr:Ca:Cu=2.2:2:2:3、かつそれぞれの組成比が±5%以内であって、Pbの比率が0.3以上0.4以下という条件を満たすように、Bi23、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを混合したものを用いることができる。次に、この原料粉末を第1の被覆膜となるべき第1のパイプ状部材としてのAg−Sb合金製のパイプに充填する。そして、この原料粉末を充填したパイプを伸線加工して縮径する工程を実施することにより、単芯線を形成する。この単芯線を複数本束ねて、第2の被覆膜となるべき第2のパイプ状部材としてのAg−Mn合金製のパイプに挿入する。そして、このように、単芯線を複数挿入したAg−Mn合金製のパイプを伸線加工して縮径した後、テープ状に圧延加工して線材を準備する。このようにして本発明の準備工程を行う。ここで、線材の断面積が同一である場合、断面形状が円形状の線材より、テープ状線材の方が第2の被覆膜3の表面積を大きくできるので、第2の被覆膜3を介して焼結工程における酸化物超電導体の生成反応に起因するガスを線材の外部へより確実に放出できる。
【0129】
その後、焼結工程としての熱処理を施すことにより酸化物超電導線材を得ることができる。その後、酸化物超電導線材に絶縁被膜4を形成する被覆工程を実施する。ここで、絶縁被膜4を形成する被覆工程においては、図2に示すような絶縁被膜焼付装置を用いる。ここで、図2は、絶縁被膜焼付装置を示す模式図である。
【0130】
図2を参照して、絶縁被膜焼付装置5は、キャプスタン8a、8bと絶縁被膜基剤を塗布するためのフェルト7a、7bと、焼付炉6とを備える。図2に示したような絶縁被膜焼付装置5を用いて、図3に示すように酸化物超電導線材に絶縁被膜4(図1参照)を形成する。ここで、図3は、絶縁被膜の焼付工程を説明するための模式図である。
【0131】
図3を参照して、テープ状の酸化物超電導線材9は、まず図3の左下からキャプスタン8a上を通過し、絶縁被膜基剤がしみ込んでいるフェルト7a、7bの間を通過する。この際、フェルト7a、7bは酸化物超電導線材9の表裏面に押圧され、絶縁被膜基剤が酸化物超電導線材9の表裏面の全面に塗布される。
【0132】
その後、酸化物超電導線材9は焼付炉6の内部へと侵入し、この焼付炉6において、加熱処理を施される。この加熱処理により、絶縁被膜の焼付処理が行なわれる。
【0133】
焼付炉6を通過した酸化物超電導線材9はキャプスタン8bに巻付き、進行方向をほぼ180°変えることになる。そして、焼付炉6およびフェルト7a、7bの下を通過し、再度キャプスタン8aに巻付けられる。ここで、再度酸化物超電導線材9は進行方向を変え、再度フェルト7a、7bおよび焼付炉6を通過する。このようにして、絶縁被膜基剤の塗布処理と絶縁被膜の焼付工程とを繰返す。
【0134】
図3に示した絶縁被膜焼付工程においては、このような絶縁被膜基剤の塗布処理と焼付処理とを4回繰返している。そして、これらの絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理を4回繰返した酸化物超電導線材9は、白抜きの矢印に示したように図の右上方向へと引抜かれる。
【0135】
ここで、酸化物超電導線材9には、長手方向に張力Tが印加されている。そして、このような酸化物超電導線材9に印加される張力Tは、室温においては100MPa未満であることが好ましい。また、焼付炉6の内部におけるような高温雰囲気においては酸化物超電導線材9に印加される張力Tは20MPa未満であることが好ましい。また、キャプスタン8a、8bの直径D(酸化物超電導線材9を曲げる際の曲率半径の2倍)(図2参照)に対する酸化物超電導線材9の厚みの割合として定義される曲げ歪みが0.2%未満であることが好ましい。
【0136】
このような酸化物超電導線材の製造工程における絶縁被膜焼付工程において、酸化物超電導線材9に印加される張力Tおよび曲げ歪みを規定することにより、酸化物超電導線材9において過剰な機械的歪みが発生することを防止できる。この結果、絶縁被膜焼付工程を行なった後においても、酸化物超電導線材9の超電導特性が劣化することを防止できる。つまり、酸化物超電導線材9の臨界電流密度が絶縁被膜焼付工程に起因して低下するといった問題の発生を防止できる。
【0137】
ここで、図3においては、絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理を4回繰返す絶縁被膜焼付工程を説明した。しかし、酸化物超電導線材9に印加される張力Tおよび曲げ歪みの条件を上記のような数値範囲とすれば、図4に示すように、絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理を5回繰返すような絶縁被膜焼付工程を行なっても、図3に示した絶縁被膜焼付工程と同様の効果を得ることができる。ここで、図4は、図3に示した絶縁被膜の焼付工程の変形例を説明するための模式図である。
【0138】
【実施例】
(実施例1)
発明者らは、本発明の実施例として、ビスマス系の超電導体フィラメント1(図1参照)、銀からなるマトリックス材としての第1の被覆膜2(図1参照)、マンガンの含有率が0.5重量%である銀合金からなる被覆膜としての第2の被覆膜3(図1参照)という構成の酸化物超電導線材を発明の実施の形態で説明した製造方法により製造した。この酸化物超電導線材の臨界電流は30Aであった。また、この酸化物超電導線材の厚みは0.24mmであった。
【0139】
そして、図3に示した絶縁被膜焼付工程を用いて、絶縁被膜4(図1参照)を形成した。具体的には、絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理を4回繰返す図3に示したような絶縁被膜焼付工程を2回繰返した。この結果、絶縁被膜4の膜厚は10μmであった。なお、この絶縁被膜焼付工程において酸化物超電導線材9(図3参照)に印加した張力Tは20MPaであり、キャプスタン8a、8bの直径Dは90mmであった。ここで、キャプスタン8a、8bの直径Dに対する酸化物超電導線材の厚みの割合として定義される曲げ歪みは、0.27%であった。この曲げ歪みは、後述するように、実施例の被覆膜の組成における臨界曲げ歪みの値より小さい。また、焼付炉6における焼付温度は300℃以上350℃以下という温度条件であり、絶縁被膜4としてはポリビニルホルマール樹脂を用いた。
【0140】
このような絶縁被膜焼付工程を行なった後、酸化物超電導線材の臨界電流密度を測定したところ、臨界電流密度は30Aと絶縁被膜焼付工程を行う前と比較しても劣化していなかった。また、この絶縁被膜4の絶縁耐圧は線材のフラット面において3kVであった。また、この酸化物超電導線材の導通検査も行なったが、特性の劣化は見られなかった。なお、このように第1の被覆膜2においてアンチモンを含有しないような場合には、第2の被覆膜におけるマンガンの含有率は0.1重量%以上0.5重量%以下とすることが好ましい。
【0141】
この場合、第1の被覆膜2にアンチモンが含有されていない場合にも、上記のようなマンガンの含有率であれば、マンガンが超電導体フィラメント1へと拡散、侵入することを確実に防止できる。この結果、酸化物超電導線材における超電導特性の劣化を確実に防止できる。
【0142】
また、キャプスタン8a、8bの直径Dを90mmとしているが、90mm以上の直径としてもよい。この場合、キャプスタン8a、8bの直径Dをより大きくすれば、酸化物超電導線材9の曲げ歪みの値をより小さくすることができるので、より確実に超電導特性の劣化を防止できる。
【0143】
また、ここで、酸化物超電導線材9に印加する張力を20MPa以下とすれば、焼付炉6における焼付処理のような高温環境下においても、酸化物超電導線材9の超電導体フィラメント1における過剰な機械的歪みの発生を防止できる。この結果、酸化物超電導線材の超電導特性が劣化することを防止できる。
【0144】
また、実施例のように、一度に行なう絶縁被膜基剤の塗布処理および焼付処理の繰返し回数を4回とすることにより、酸化物超電導線材9に印加される張力Tの値を容易に小さくすることができる。
【0145】
ここで、比較例として、ビスマス系の酸化物超電導体フィラメントと銀からなる被覆膜とを備えるテープ状の酸化物超電導線材を準備した。なお、この酸化物超電導線材の臨界電流は30Aであった。また、この酸化物超電導線材の厚みは、実施例としての酸化物超電導線材と同じく0.24mmであった。
【0146】
そして、この酸化物超電導線材に対して、本発明の実施例としての酸化物超電導線材の製造方法と同様の絶縁被膜焼付工程を実施した。具体的には、絶縁被膜基剤の塗布処理と焼付処理との繰返し回数を4回とした、図3に示すような絶縁被膜焼付工程を2回実施した。この時、酸化物超電導線材に印加する張力は20MPaであり、キャプスタン8a、8bの直径Dは90mmであった。なお、この場合の曲げ歪みは、0.27%となる。また、焼付炉6における焼付温度は300℃以上350℃以下という温度条件であり、絶縁被膜4としてはポリビニルホルマール樹脂を用いた。
【0147】
この結果、膜厚10μmの絶縁被膜を形成することができた。しかし、絶縁被膜を形成した後、この酸化物超電導線材の臨界電流を測定したところ、絶縁被膜形成前には30Aであった臨界電流は3Aに低下していた。
【0148】
また、もう1つの比較例として、ビスマス系の酸化物超電導体からなる超電導体フィラメント1(図1参照)と、アンチモンを0.5重量%含有する銀合金からなる第1の被覆膜2(図1参照)と、マンガンを1.0重量%含有する銀合金からなる第2の被覆膜3(図1参照)とを備える酸化物超電導線材を準備した。この酸化物超電導線材の臨界電流は20Aであった。また、この酸化物超電導線材の厚みは0.24mmであった。
【0149】
そして、この酸化物超電導線材に対して、絶縁被膜基剤の塗布処理と焼付処理との繰返し回数が8回である絶縁被膜焼付工程を行なった。このときの絶縁被膜焼付装置のキャプスタン8a、8bの直径Dは90mmであった。なお、この場合の曲げ歪みは、0.27%となる。また、酸化物超電導線材に印加された張力は90MPaであり、焼付炉の焼付温度は300℃以上350℃以下であった。
また、絶縁被膜の材料としてはポリビニルホルマール樹脂を用いた。
【0150】
この場合、焼付炉での焼付処理時においても、酸化物超電導線材には90MPaという高い張力が印加されることになる。このため、高温環境下において酸化物超電導線材に印加される張力が90MPaと、本発明による酸化物超電導線材の製造方法に規定する張力範囲を超えることになる。この結果、絶縁被膜焼付工程終了後に、この酸化物超電導線材の臨界電流を測定したところ、絶縁被膜形成前には20Aであった臨界電流が、4Aと著しく低下していた。
【0151】
このように、比較例では臨界電流の低下が発生しているのに対して、本発明の実施例においては、臨界電流の低下といった超電導特性の劣化は発生しなかった。つまり、上記のように、本発明によれば絶縁被膜焼付工程後においても、酸化物超電導線材の臨界電流が低下するといったような問題は発生しないことがわかる。
【0152】
また、本発明による酸化物超電導線材において、第2の被覆膜3(図1参照)におけるマンガンの含有率(Mn濃度)を変化させて、絶縁被膜焼付工程における、臨界電流が低下しない臨界引張応力(張力)および臨界曲げ歪みを測定した。ここで、引張応力については、室温でのデータと高温時(300℃)でのデータを測定した。その結果を図5に示す。
【0153】
ここで、図5は、酸化物超電導線材の第2の被覆膜におけるMn濃度と臨界引張応力および臨界曲げ歪みとの関係を示すグラフである。図5に示すように、マンガンの濃度を上昇させるほど、臨界引張応力および臨界曲げ歪みが向上する傾向があることがわかる。
【0154】
また、上記の実施例における第2の被覆膜のMn濃度は0.5%であり、この場合の臨界曲げ歪みは図5に示すように約0.33%である。一方、上述したように、実施例における曲げ歪みは0.27%であり、上記の臨界曲げ歪みの値よりも小さくなっている。このことからも、本発明の実施例では超電導特性の劣化を防止できることがわかる。
【0155】
(実施例2)
発明者らは、表1に示すように、被服膜としての第2の被覆膜3の材質と膜厚とをそれぞれ変更した試料を作成した。
【0156】
【表1】
Figure 0004622020
【0157】
表1を参照して、本発明による酸化物超電導線材の実施例および比較例1〜3の製造方法としては、基本的に本発明の実施の形態で説明した銀シース法を用いた。具体的には、Bi23、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを混合して組成比(原子比)がBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.8:0.4:2:2:3となる混合粉末を準備した。この混合粉末について700〜850℃の熱処理および粉砕加工を数回繰り返し、原料粉末を得た.この原料粉末を第1の被覆膜2となる第1のパイプ状部材としての第1の銀パイプに充填した。次に、原料粉末を充填した第1の銀パイプを伸線加工して縮径した。その後、縮径された第1の銀パイプを適当な長さに切断した。切断された第1の銀パイプを所定本数(61本)束ねて、表1に示したような組成の第2の被覆膜3となるべき第2のパイプ状部材としての第2の銀パイプまたは銀マンガン合金パイプに挿入した。その後、この第2の銀パイプまたは銀マンガン合金パイプを伸線加工することにより縮径して、直径が1.29mmの多芯線材を得た。この多芯線材を圧延加工によって矩形断面形状のテープ状線材とした。テープ状線材の長径はそれぞれ3.8mmであり、短径(テープ状線材の平坦部での厚み)は0.24mmであった。その後、テープ状線材に845℃で50時間の焼結処理を実施した。さらにその後、テープ状線材に840℃で100時間の焼結処理を実施した。この焼結処理により原料粉末から酸化物超電導線材を生成する。このようにして、実施例および比較例1〜3の試料を得た。それぞれの試料の長さは約1kmであった。そして、それぞれの試料について、焼結処理後の膨れの発生状況の調査、臨界電流値の測定、さらに液体窒素に浸漬後通電した後の膨れの発生状況の調査を実施した。その結果が表1に示されている。
【0158】
表1からもわかるように、比較例1と比較例3とにおいては焼結処理後に膨れが発生した。これは、比較例1および3では第2の被覆膜3の膜厚が55μmと厚いため、焼結工程で酸化物超電導体の生成反応に伴って発生するガスが第2の被覆膜3を充分透過できないためである。
【0159】
また、比較例2については、焼結処理後に膨れは発生しなかった。これは実施例と同様に被覆膜の膜厚が40μmと上記ガスを透過させるのに十分な薄さのであったためと考えられる。しかし、液体窒素に約2分間浸漬後、最大約70Aの電流を通電した後、比較例2では多数の膨れが発生した。これは以下の理由によると考えられる。すなわち、液体窒素へ浸漬した際、線材の内部に液体窒素が侵入する。そして、この侵入した液体窒素が通電に起因するジュール熱によって気化する。この線材の内部で気化した窒素によって、実施例より相対的に強度の低い銀製の被覆膜が外側に押し上げられる。このようにして比較例2では多数の膨れが発生する。
【0160】
また、実施例の線材に本発明の実施の形態において記載した方法を用いてポリビニルホルマール樹脂製の絶縁被膜4を形成した。絶縁被膜4を形成した本発明の実施例2の酸化物超電導線材の断面模式図を図6に示す。図6を参照して、試料の平坦部における第2の被覆膜3の膜厚t1は表1に示したように40μmでる。上記平坦部はテープ状の酸化物超電導線材の表面において大部分を占めているので、この平坦部における第2の被覆膜3の膜厚が10μm以上50μm以下であれば、上述の本発明による酸化物超電導線材の効果をより確実に発揮できる。
【0161】
また、絶縁被膜4の膜厚t2をさまざまに変化させた試料を用意した。それぞれの試料について箔電極法を用いて絶縁被膜4の交流絶縁破壊電圧を測定した。絶縁被膜4の膜厚が5μm未満の試料では、測定時導通していたものがあった。絶縁被膜4の膜厚が14μmの試料では、平均1100V〜1350Vという絶縁破壊電圧を示した。
【0162】
(実施例3)
実施例2と同様の製造工程により、第2の被覆膜3の膜厚を変化させた酸化物超電導線材の試料を作成した。それぞれの試料のスペックは、第2の被覆膜3の膜厚以外は基本的に実施例2の本発明の実施例の試料のスペック(表1参照)と同様である。そして、それぞれの試料について、臨界電流が低下しない臨界引張応力、臨界電流密度(Jc)および酸化物超電導体を生成するための焼結工程における膨れ発生率を測定した。その結果を図7に示す。図7は、第2の被覆膜3の膜厚と、臨界引張応力、臨界電流密度および酸化物超電導体を生成するための焼結工程における膨れ発生率との関係を示すグラフである。
【0163】
図7を参照して、第2の被覆膜3の膜厚が50μmを超えると、焼結工程での膨れが多発する事がわかる。また、第2の被覆膜3の膜厚が10μm未満の場合、試料の製造工程において第2の被覆膜3に割れが発生した。また、第2の被覆膜3の平坦部での膜厚t1が20μm以上40μm以下の場合、焼結工程での膨れがほとんど発生せず、かつ、臨界電流密度を高く維持できるとともに十分な臨界引張応力を備えることがわかる。なお、図6を参照して、測定では第2の被覆膜3の膜厚として、第2の被覆膜3の表面10から酸化物超電導体フィラメント1までの最短距離を近似的に用いた。
【0164】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0165】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、十分な機械的強度を有し、超電導特性の劣化を招くことなく絶縁被膜を形成することが可能な酸化物超電導線材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による酸化物超電導線材の実施の形態を示す断面模式図である。
【図2】 絶縁被膜焼付装置を示す模式図である。
【図3】 絶縁被膜の焼付工程を説明するための模式図である。
【図4】 図3に示した絶縁被膜の焼付工程の変形例を説明するための模式図である。
【図5】 酸化物超電導線材の第2の被覆膜におけるMn濃度と臨界引張応力および臨界曲げ歪みとの関係を示すグラフである。
【図6】 本発明による酸化物超電導線材の実施例の断面模式図である。
【図7】 第2の被覆膜の膜厚と、臨界引張応力、臨界電流密度および酸化物超電導体を生成するための焼結工程における膨れ発生率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 超電導体フィラメント、2 第1の被覆膜、3 第2の被覆膜、4 絶縁被膜、5 絶縁被膜焼付装置、6 焼付炉、7a,7b フェルト、8a,8bキャプスタン、9 酸化物超電導線材、10 第2の被覆膜の表面。

Claims (23)

  1. 酸化物超電導体フィラメントと、
    前記酸化物超電導体フィラメントを取囲むように配置され、銀からなるマトリックス材と、
    前記マトリックス材を取囲むように配置され、銀とマンガンとを含み、膜厚が10μm以上50μm以下の被覆膜と、
    前記被覆膜を取囲むように配置された絶縁被膜とを含み、
    前記被覆膜は前記マンガンを0.1重量%以上0.5重量%以下含有する、酸化物超電導線材。
  2. 酸化物超電導体フィラメントと、
    前記酸化物超電導体フィラメントを取囲むように配置された銀とアンチモンとを含むマトリックス材と、
    前記マトリックス材を取囲むように配置され、銀とマンガンとを含み、膜厚が10μm以上50μm以下の被覆膜と、
    前記被覆膜を取囲むように配置された絶縁被膜とを含み、
    前記マトリックス材は前記アンチモンを0.1重量%以上0.5重量%以下含有し、
    前記被覆膜は前記マンガンを0.5重量%以上1.0重量%以下含有する、酸化物超電導線材。
  3. 前記被覆膜では、前記マンガンが酸化物粒子として分散して配置されている、請求項1または2に記載の酸化物超電導線材。
  4. 前記被覆膜では、前記マンガンが前記被覆膜中に固溶した状態で存在する、請求項1または2に記載の酸化物超電導線材。
  5. 前記被覆膜の膜厚は20μm以上40μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
  6. 前記酸化物超電導線材は平坦部を有するテープ状である、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
  7. 前記平坦部における前記被覆膜の膜厚が10μm以上50μm以下である、請求項に記載の酸化物超電導線材。
  8. 前記平坦部における前記被覆膜の膜厚が20μm以上40μm以下である、請求項に記載の酸化物超電導線材。
  9. 前記絶縁被膜の膜厚は5μm以上100μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
  10. 前記絶縁被膜は樹脂を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
  11. 前記樹脂はホルマール樹脂である、請求項1に記載の酸化物超電導線材。
  12. 前記酸化物超電導体フィラメントは、ビスマス系の酸化物超電導体フィラメントである、請求項1〜1のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
  13. 焼結によって酸化物超電導体となる原料粉末と、この原料粉末を取囲むように配置され、銀からなるマトリックス材と、このマトリックス材を取囲むように配置され、銀と0.1重量%以上0.5重量%以下のマンガンとを含む被覆膜とを備える線材を準備する準備工程と、
    前記線材を加熱することにより、前記原料粉末から酸化物超電導体を生成させる焼結工程と、
    前記酸化物超電導体を備える前記線材の長手方向に張力を印加した状態で前記被覆膜を取囲むように前記被覆膜の外表面上に絶縁被膜を形成する被覆工程とを備え
    前記準備工程では、前記被覆膜の膜厚を10μm以上50μm以下とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  14. 焼結によって酸化物超電導体となる原料粉末と、この原料粉末を取囲むように配置され、銀と0.1重量%以上0.5重量%以下のアンチモンとを含むマトリックス材と、このマトリックス材を取囲むように配置され、銀と0.5重量%以上1.0重量%以下のマンガンとを含む被覆膜とを備える線材を準備する準備工程と、
    前記線材を加熱することにより、前記原料粉末から酸化物超電導体を生成させる焼結工程と、
    前記酸化物超電導体を備える前記線材の長手方向に張力を印加した状態で前記被覆膜を取囲むように前記被覆膜の外表面上に絶縁被膜を形成する被覆工程とを備え
    前記準備工程では、前記被覆膜の膜厚を10μm以上50μm以下とする、酸化物超電導線材の製造方法。
  15. 前記準備工程は、
    前記マトリックス材となるべき第1のパイプ状部材の内部に前記原料粉末を充填する工程と、
    前記原料粉末が充填された前記第1のパイプ状部材を縮径する工程と、
    前記縮径された第1のパイプ状部材を、前記被覆膜となるべき第2のパイプ状部材の内部に配置する工程と、
    前記縮径された第1のパイプ状部材が内部に配置された第2のパイプ状部材を縮径する工程とを含む、請求項1または1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  16. 前記準備工程では、前記被覆膜の膜厚を20μm以上40μm以下とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  17. 前記準備工程では、前記線材は平坦部を有するテープ状に成形される、請求項1〜1のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  18. 前記平坦部における前記被覆膜の膜厚が10μm以上50μm以下である、請求項17に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  19. 前記平坦部における前記被覆膜の膜厚が20μm以上40μm以下である、請求項18に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  20. 前記被覆工程では、前記絶縁被膜の膜厚を5μm以上100μm以下とする、請求項119のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  21. 前記絶縁被膜は樹脂を含む、請求項1〜2のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  22. 前記樹脂はホルマール樹脂である、請求項2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  23. 前記酸化物超電導体は、ビスマス系の酸化物超電導体である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
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