JP4619472B2 - 木材保存剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は木材保存剤に関し、より詳細には木材が使用された例えば建築物や家具等を侵食するシロアリやヒラタキクイムシ等の木材害虫による虫害や、例えばオオウズラタケなどの木材腐朽菌による腐朽に対して優れた作用を有する木材保存剤及びそれを用いる木材の保存方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、木材害虫防除剤又は木材防腐剤として種々の化合物が知られているが、これらは人畜に対する安全性及び環境に及ぼす影響が大きく、自然の生態系を破壊する虞がある。
【0003】
一方、天然物由来の害虫防除剤も知られている。例えば、キハダ(Phellodend ron amurense Rupr.,P.molle Nakai)に含まれるオバクノン、オウレン(Coptis japonica Makino)の根、キハダ(Phellodendron amurense Rupr.)の樹皮などに含まれるベルベリンは、シロアリに対する食毒がみとめられている。
【0004】
さらに、高級アルコール及び高級脂肪酸エステルが人体に対する毒性が低く、環境にも優しい木材害虫防除剤であることも知られている(特開平8−133909)。
【0005】
またさらには、炭素数7〜12の脂肪酸が木材害虫防除剤として用いられ得ることも知られている(特開平10−67607)。
【0006】
このような木材保存剤は製造工場から出荷されたあと、倉庫に保管されたり、使用者に供給されて木材保存のために使用されたりするのであるが、気温が0℃以下となる寒冷地においては、保存時あるいは用事に希釈した場合に木材保存剤自体又はその水による希釈物が低温のために固化する現象がしばしば起こり、木材保存剤が実際には使用できないという問題が発生する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、木材害虫に対して高い防除性又は木材腐朽菌に対して高い防腐性を有する木材保存剤を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、人畜に対する安全性が高く、環境に対して悪影響を及ぼすことのない木材保存剤を提供することにある。
【0009】
しかも、本発明は、寒冷地においても固化しない木材保存剤を提供することを目的としている。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、有効成分を高濃度に含浸させることができる木材保存剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭利検討した結果、脂肪酸、脂肪酸エステルのうち少なくとも1種の有効成分に植物細切物を担体として含有されることにより有効成分を高濃度含浸させることができ、また、木材保存剤が低温で保存・使用されるときに固化せず流動性を保つことができるという思いがけない新知見を得た。さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は(1)(1)デカン酸および(2)デカン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分と、防虫又は/及び防腐性を有する植物の細切物とを含有することを特徴とする木材保存剤、
(2)防腐用木材保存剤である前記(1)記載の木材保存剤、
(3)防虫用木材保存剤である前記(1)記載の木材保存剤、
(4)前記防虫又は/及び防腐性を有する植物の細切物として下記(1)〜(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる前記(1)記載の木材保存剤、
(1)ヒノキ粉砕物
(2)ヒバ粉砕物
(3)パルプ
(5)さらに、前記有効成分として、(3)防虫又は/及び防腐性を有する植物又はその植物の処理物を含有する前記(1)記載の木材保存剤、
(6)(3)防虫又は/及び防腐性を有する植物又はその植物の処理物が、下記の属に属する植物又はその処理物からなる群から選ばれる1種以上である前記(5)記載の木材保存剤、
(1)モリンガ(Moringa)属
(2)マラー(Marah)属
(3)モモルディカ(Momordica)属
(4)ソフォラ(Sophora)属
(5)マーキア(Maackia)属
(6)チノスポラ(Tinospora)属
(7)ザントキシラム(Zantoxylum)属
(8)ピクラスマ(Picrasma)属
(9)ピパー(Piper)属
(10)ストリキノス(Strychnos)属
(11)スチラックス(Styrax)属
(12)リキッドアンバー(Liquidambar)属
(13)ゲラニウム(Geranium)属
(14)モルス(Morus)属
(15)アルテミシア(Artemisia)属
(16)ディオスピロス(Diospyros)属
(17)クラタエグス(Crataegus)属
(18)クルクマ(Curcuma)属
(19)ルビア(Rubia)属
(20)ポリゴヌム(Polygonum)属
(21)クリサンテムム(Chrysanthemum)属
(23)ガルデニア(Gardenia)属
(24)コルヌス(Cornus)属
(25)ウンカリア(Uncaria)属
(26)レウム(Rheum)属
(27)テルミナリア(Terminalia)属
(28)サウスレア(Saussurea)属
(29)ベルベリス(Berberis)属
(30)エピメデイウム(Epimedium)属
(31)ペラルゴニウム(Pelargonium)属
(32)フムルス(Humulus)属
(33)ラバンデュラ(Lavandula)属
(34)ラファヌス(Raphanus)属
(35)クレマテイス(Clematis)属
(36)ジクラノプテニス(Dicranoptenis)属
(37)アストロガルス(Astrogarus)属
(38)リゴジウム(Lygodium)属
(39)プルネラ(Prunella)属
(40)シゾネペタ(Scizonepeta)属
(41)マグノリア(Magnolia)属
(42)アキランテス(Achyranthes)属
(43)エヴォデイア(Evodia)属
(44)スミラックス(Smilax)属
(45)プランタゴ(Plantago)属
(46)アリスマ(Alisma)属
(47)インペラタ(Imperata)属
(48)アネマアレナ(Anemaarhena)属
(49)ポリポラス(Polyporus)属
(50)ジユンクス(Juncus)属
(51)アンジエリ力(Angelica)属
(52)ゼア(Zea)属
(53)ロニセラ(Lonicera)属
(54)アトラクチロデス(Atractylodes)属
(55)ポリア(Poria)属
(56)レデボウリエラ(Ledebouriella)属
(57)サルガスム(Sargassum)属
(58)アケビア(Akebia)属
(59)カエノメレス(Chaenomeles)属
(60)フォルシチア(Forsythia)属
(61)ホウットウイニア(Houttuynia)属
(62)フラグミテス(Phragmites)属
(63)カステネア(Castanea)属
(64)コミフォラ(Commiphora)属
(65)コフェア(Coffea)属
(66)プルヌス(Prunus)属
(7)前記(1)〜(6)記載の木材保存剤を用いることを特徴とする木材保存方法、に関する。
【0013】
本発明で使用される防虫性を有する植物として、例えば次に掲げる属に属する植物を挙げることができる。
(1) モリンガ(Moringa) 属
(2) マラー(Marah) 属
(3) モモルディカ(Momordica) 属
(4) ソフォラ(Sophora) 属
(5) マーキア(Maackia) 属
(6) チノスポラ(Tinospora) 属
(7) ザントキシラム(Zantoxylum) 属
(8) ピクラスマ(Picrasma) 属
(9) ピパー(Piper) 属
(10)ストリキノス(Strychnos) 属
(11)スチラックス(Styrax) 属
(12)リキッドアンバー(Liquidambar) 属
(13)ゲラニウム(Geranium)属
(14) モルス(Morus)属
(15)アルテミシア(Artemisia)属
(16)ディオスピロス(Diospyros)属
(17) クラタエグス(Crataegus)属
(18) クルクマ(Curcuma)属
(19)ルビア(Rubia)属
(20)ポリゴヌム(Polygonum)属
(21)クリサンテムム(Chrysanthemum)属
(23)ガルデニア(Gardenia)属
(24)コルヌス(Cornus)属
(25)ウンカリア(Uncaria)属
(26)レウム(Rheum)属
(27)テルミナリア(Terminalia) 属
(28)サウスレア(Saussurea) 属
(29)ベルベリス(Berberis) 属
(30)エピメデイウム(Epimedium) 属
(31)ペラルゴニウム(Pelargonium) 属
(32)フムルス(Humulus) 属
(33)ラバンデュラ(Lavandula) 属
(34)ラファヌス(Raphanus) 属
(35)クレマテイス(Clematis) 属
(36)ジクラノプテニス(Dicranoptenis) 属
(37)アストロガルス(Astrogarus)属
(38)リゴジウム(Lygodium) 属
(39)プルネラ(Prunella) 属
(40)シゾネペタ(Scizonepeta) 属
(41)マグノリア(Magnolia) 属
(42)アキランテス(Achyranthes) 属
(43)エヴォデイア(Evodia) 属
(44)スミラックス(Smilax) 属
(45)プランタゴ(Plantago) 属
(46)アリスマ(Alisma) 属
(47)インペラタ(Imperata) 属
(48)アネマアレナ(Anemaarhena) 属
(49)ポリポラス(Polyporus) 属
(50)ジユンクス(Juncus) 属
(51)アンジエリ力(Angelica) 属
(52)ゼア(Zea)属
(53)ロニセラ(Lonicera) 属
(54)アトラクチロデス(Atractylodes) 属
(55)ポリア(Poria) 属
(56)レデボウリエラ(Ledebouriella) 属
(57)サルガスム(Sargassum) 属
(58)アケビア(Akebia) 属
(59)カエノメレス(Chaenomeles) 属
(60)フォルシチア(Forsythia) 属
(61)ホウットウイニア(Houttuynia) 属
(62)フラグミテス(Phragmites) 属
(63)カステネア(Castanea)属
(64)コミフォラ(Commiphora)属
(65)コフェア(Coffea)属
(66)プルヌス (Prunus) 属
【0014】
前記モリンガ(Moringa )属(ワサビノキ属)に属する植物には、例えば、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)、モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)、モリンガ・コンカネンシス(Moringa concanensis)などが含まれる。前記モリンガ・オレイフェラは、フィリピンなどに生育する植物であり、その葉は食用とされている。
【0015】
マラ-(Marah)属に属する植物には、例えば、マラー・オレガヌス(Marah oregaous)などが含まれる。マラー・オレガヌスは北米に生育するニガウリに似た植物であり、ビッグ・ルート(Big root)とも称される。
【0016】
モモルディカ(Momordica)属に属する植物としては、例えば、モモルディカ・キャランティア(Momordica charantia;ニガウリ、ニガゴリ、ツルレイシ)などが挙げられる。モモルディカ・キャランティアは沖縄に生育する植物であり、食用とされている。
【0017】
ソフォラ(Sophora)属に属する植物には、ソフォラ・トンキネンシス(Sophora tonkinensis)などが含まれる。ソフォラ・トンキネンシスは中国に生育する植物であり、その根は、解熱、止痛作用を有する生薬「山豆根」の原料に用いられている。
【0018】
マーキア(Maackia )属に属する植物としては、例えば、マーキア・アムレンゼ・サブスピーシーズ・ブエルゲリ(Maackia amurense subsp.buergeri;イヌエンジュ)などが挙げられる。マーキア・アムレンゼ・サブスピーシーズ・ブエルゲリは日本にみられる植物で、止血作用を示す成分を含んでいることが知られている。
【0019】
チノスポラ(Tinospora)属に属する植物には、例えば、チノスポラ・クリスパ(Tinospora.crispa)などが含まれる。チノスポラ・クリスパは、フィリピンなどに生育する植物で、清熱、解熱作用を有する成分を含有することが知られている。
【0020】
ザントキシラム(Zantoxylum)属に属する植物には、例えば、ザントキシラム・ピペリツム(Zantoxylum piperitum;サンショウ)など、が含まれる。ザントキシラム・ピペリツムの成熟した果実の乾燥物は、健胃整腸作用を有する、生薬「サンショウ」や香辛料に用いられる。
【0021】
ピクラスマ(Picrasma)属に属する植物としては、例えば、ピクラスマ・クアシオイデス(Plcrasna quassioides ;ニガキ)、ピクラスマ・アイランソイデス(Picrasma ailanthoides)、ピクラスマ・エクセルサ(Picrasma excelsa)などが含まれる。ピクラスマ・クアシオイデスは、苦味健胃薬として知られる生薬「ニガキ」の原料に用いられている。
【0022】
ピパー(Piper)属に属する植物には、例えば、ピパー・レトロフラクツム(Piper retrofractum;ヒハツモドキ)などが含まれる。ピパー・レトロフラクツムは沖縄などに生育する植物である。
【0023】
ストリキノス(Strychnos )属に属する植物としては、例えば、ストリキノス・ナックスホミカ(Strychnos nux-vomica;ホミカ)などが含まれる。ストリキノス・ナックスホミカはインドからオーストラリアに至る熱帯アジアに分布する常緑高木の植物であり、その成熟した果実の乾燥物は、強壮興奮剤としての生薬「ホミカ」に用いられている。
【0024】
スチラックス(Styrax)属に属する植物には、例えば、スチラックス・ベンゾイデス(Styrax benzoides)、スチラックス・トンキネンシス(Styrax tonkinensis)、スチラックス・ベンゾイン(Styrax benzoin)、スチラックス・スマトラヌス(Styrax sumatranus )などが含まれる。これらの植物の樹幹から滲出する樹脂「安息香」は、去痰作用を有する生薬以外に、香料、化粧品などに用いられている。
【0025】
リキッドアンバー(Liquidambar)属に属する植物には、例えば、リキッドアンバー・オリエンタリス(Liquidambar orientalis)、リキッドアンバー・スチラシフルア(Liquidambar styraciflua)などが含まれる。リキッドアンバー・オリエンタリスの樹皮などから採取される樹脂は、去痰作用を有する生薬「流動蘇合香」として用いられている。
【0026】
前記ゲラニウム(Geranium)属に属する植物には、例えば、ゲラニウム・ツンベルギイ(Geranium thunbergii;ゲンノショウコ)、ゲラニウム・ロベンチアヌム(Geranium robentianum;ヒメフウロ)などが含まれる。ゲンノショウコは日本全国の山野に自生する多年草であり、整腸瀉下薬として頻用されている。
ヒメフウロはヨーロッパで民間薬として用いられている。
【0027】
モルス(Morus)属に属する植物には、例えば、モルス・アルバ(Morus alba;マグワ)、モルス・ボンビシス(Morus bombycis;ヤマグワ)などが含まれる。ヤマグワ及びマグワは、日本全国の山野に自生、又は栽培される落葉高木であり、消炎・利尿・鎮咳・去痰作用を有する成分を含むことが知られている。
【0028】
アルテミシア(Artemisia)属に属する植物には、例えば、アルテミシア・プリンセプス(Artemisia princeps;ヨモギ)、アルテミシア・アブシンチウム(Artemisia absinthium;ニガヨモギ)、アルテミシア・モンタナ(A.montana;ヤマヨモギ)、アルテミシア・シナ(A.cina:シナ)、アルテミシア・キャピラリス(A.capillaris:カワラヨモギ)、アルテミシア・アンヌア(A.annua:クリニンジン)、アルテミシア・スコパリア(A.scoparia:ハマヨモギ)、アルテミシア・マリティマ(A.maritima:ミブヨモギ)などが含まれる。ヨモギは、山野に広く野生する多年草であり、その葉を乾燥したガイヨウは腹痛などに煎じて用いられ、止瀉、止血などの作用を有する成分を含むことが知られている。
【0029】
ディオスピロス(Diospyros)属に属する植物には、例えば、ディオスピロス・カキ(Diospyros kaki;カキ)、デイオスピロス・エベヌム(Diospyros ebenum;セイロンコクタン)などが含まれ、カキの未熟果のがく(へた)を乾燥したシテイは、しゃっくり止めとして用いられている。
【0030】
クラタエグス(Crataegus)属に属する植物には、例えば、クラタエグス・クネアータ(Crataegus cuneata;サンザシ)、クラタエグス・ペンタギナ(Crataegus pentagyna;オオサンザシ)、クラタエグス・ペンタギナ(C.pentagyna:オオサンザシ)、クラタエグス・オキシアカンタ(C.oxyacantha:セイヨウサンザシ)などが合まれ、サンザシ及びオオサンザシは中国原産の落葉低木であり、健胃、消化、整腸、抗菌、血管拡張作用があるとされ、強心剤としても用いられることが知られている。
【0031】
クルクマ(Curcuma)属に属する植物には、例えば、クルクマ・ドメスチカ(Curcuma domestica;ウコン)、クルクマ・キサントリーザ(Curcuma xanthorriza;クスリウコン)、クルクマ・アロマチカ(Curcuma aromatica;ハルウコン)、クルクマ・ゼドアリア(C.zedoaria;ガジュツ)などが含まれる。ウコンは、熱帯アジア原産の多年草で、薬用としインド及び中国など各地で栽培される。利胆、健胃などの作用を有する成分を含むことが知られている。ハルウコンも同種に、利胆、芳香健胃薬として用いられている。
【0032】
ルビア(Rubia)属に属する植物には、例えば、ルビア・コルヂフロリア・バリエタス・ムンジスタ (Rubia cordiflolia var.munjista;アカネ)、ルビア・チンクトルム(Rubia tinctorum;セイヨウアカネ)などが合まれる。アカネは、山野に自生するつる性の多年草であり、古来より緋色染料として用いられる他、止血・利尿などの作用を有する成分を含むことが知られている。セイヨウアカネは、同様に染色や腎膀胱等の疾患に用いられている。
【0033】
ポリゴヌム(Polygonum)属に属する植物には、例えば、ポリゴヌム・チンクトリウム(Polygonum tinctorium;アイ)、ポリゴヌム・ムルチフロルム(Polygonum multiflorum;ツルドクダミ)、ポリゴヌム・アヴィキュラレ(P.avicurare;ミチアナギ)などが含まれ、アイはインドシナ原産の植物であり、藍染め染料として知られている。ツルドクダミは、中国原産の多年草であり、緩下・強壮薬として用いられている。
【0034】
クリサンテムム(Chrysanthemum)属に属する植物には、例えば、クリサンテムム・ボレアレ(Chrysanthemum boreale;キクタニギク)、シロバナムショケギク(除虫菊)などが含まれる。除虫菊は害虫防除効果を有することが知られており、除虫菊の頭状花を乾燥したキクカは、打撲・頭痛・腫物などの鎮痛消炎作用を有する成分を含むことが知られている。本発明ではキクタニギクなど除虫菊以外のものも、害虫防除効果を有することが明らかとなった。
【0035】
ガルデニア(Gardenia)属に属する植物には、例えば、ガルデニア・ジャスミノイデス・バリエタス・グランヂフロラ(Gardenia jasminoides var.grandiflora;クチナシ)、ガルデニア・ジャスミノイデス(Gardenia jasminoides;コリンクチナシ)、サンシンなどが含まれる。クチナシは、解熱、止血、降圧などの薬効が知られるほか、飲食物の黄色着色料としても用いられる。サンシンは、黄疸・充血などの鎮静解熱作用を有する成分を含むことが知られている。
【0036】
コルヌス(Cornus)属に属する植物には、例えば、コルヌス・オフィシナリス(Cornus officinalis;サンシュユ)、コルヌス・フロリダ(Cornus florida;アメリカヤマボウシ)などが含まれる。サンシュユは、中国原産の落葉小高木であり、滋養強壮、止血などの作用を有する成分を含むことが知られている。アメリカヤマボウシは収斂、強壮等の効果を有することが知られている。
【0037】
ウンカリア(Uncaria)属に属する植物には、例えば、ウンカリア・ガンビイ(Uncaria gambir)、アセンヤクなどが含まれる。アセンヤクは、インドに広く分布し、マレー、スマトラなどが主産地である。収斂、止瀉などの作用を有する成分を含むことが知られている。
【0038】
レウム(Rheum)属に属する植物には、例えば、レウム・パルマツム(Rheum palmatum;掌葉大黄)、レウム・コレアヌム(Rheum coreanum;信州大黄がこれに関連)、レウム・オフイシナーレ(Rheum officinale;薬用大黄)、レウム・タングティクム(R.tanguticum)などが含まれる。ダイオウは、東アジア原産の植物であり、緩下・健胃・整腸などの作用を有する成分を含むことが知られている。
【0039】
テルミナリア(Terminalia)属に属する植物には、テルミナリア・チェブラ(Terminalia chebu1a;カシ)、テルミナリア・ベレリカ(Terminalia bellerica)などが含まれる。カシは、インド・ミャンマー原産の落葉高木であるテルミナリア・チェブラの成熟果実を乾燥したものであり、収斂止瀉、鎮咳、止血作用が知られている。
【0040】
サウスレア(Saussurea)属に属する植物には、サウスレア・ラッパ(Saussurea lappa;モッコウ)などが含まれる。モッコウは、インド北部に自生する大型多年草サウスレア・ラッパの根を乾燥したものであり、芳香性健胃薬として下痢、嘔吐、腹痛、食欲不振などに用いられるほか、薫香料としても知られている。
【0041】
ベルベリス (Berberis) 属に属する植物には、ベルベリス・ツンベルギイ(Berberis thunbergii、メギ)が含まれ、その根、茎、葉から得られる生薬は苦味健胃薬として有用である。
【0042】
エピメデイウム (Epimedium) 属に属する植物には、エピメデイウム・ブレビコルム(Epimedium brevicorum、)が含まれ、その全草から得られる生薬であるイカリソウは強壮薬として有用である。
【0043】
ペラルゴニウム (Pelargonium) 属に属する植物には、ペラルゴニウム・グラベオレンス(Pelargonium graveolens、ニオイテンジクアオイ)、ペラルゴニウム・オドーラテイスムム(P.odoratissimum)、ペラルゴニウム インクイナンス(P.inquinans、テンジクアオイ)、ペラルゴニウム・ゾナレ(P. zonale、モンテンジクアオイ)等が含まれる。ニオイテンジクアオイから得られる生薬であるゼラニウムは香料として有用である。
【0044】
フムルス (Humulus) 属にする植物には、フムルス・ルプルス(Humulus lupulus)、H.lupulus var.cordifolius(カラハナソウ)が含まれ、その果穂はホップと称され、苦味健胃薬として有用である。
【0045】
ラバンデュラ(Lavandula) 属に属する植物には、ラバンデュラオフィシナリス(Lavandula officinalis、ラベンダー)が含まれる。香水、鎮痛薬として有用である。
【0046】
ラファヌス (Raphanus) 属に属する植物には、ラファヌス・サテイブス(Raphanus sativus、大根)が含まれる。その種子が生薬ラブ子として使用され、健胃薬、去淡薬として有用である。
【0047】
クレマテイス (Clematis) 属に属する植物には、クレマテイス・キネンシス(Clematis chinensis、シナボタンヅル)が含まれ、その根、根茎が生薬イレイセンとして使用される。
【0048】
ジクラノプテニス (Dicranoptenis) 属に属する植物には、ジクラノプテニス・ジコトマ(Dicranoptenis dichotoma、コシダ)が含まれ、その葉は生薬ウラジロとして使用される。
【0049】
アストロガルス (Astrogarus)属に属する植物には、アストロガルス・メムブラネセウス(Astrogarus membranaceus、キバナオウギ)アストロガルス・ヘンリイ(A.henryi)、アストロガルス・ホアントキイ(A.hoantchy、オウギ)が含まれ、それらの根は生薬オウギとして使用される。
【0050】
リゴジウム (Lygodium) 属に属する植物には、リゴジウム・ジャポニクム(
Lygodium japonicum、カニクサ)が含まれ、その胞子は生薬である海金砂として使用される。
【0051】
プルネラ (Prunella) 属に属する植物には、プルネラ・ブルガリス・サブスピーシーズ・アジアティカ(Prunella vulgaris subsp. asiatica、ウツボグサ)が含まれ、その花穂又は全草は生薬カゴソウとして使用される。
【0052】
シゾネペタ (Scizonepeta) 属に属する植物には、シゾネペタ・テウイフォリア(Scizonepeta teuiforia、荊芥)が含まれ、その花穂又は全草は生薬ケイガイとして使用される。
【0053】
マグノリア (Magnolia) 属に属する植物には、マグノリア・オフィシナリス(Magnolia officinalis、厚朴)、マグノリア・オボバタ(M.obovata、ホウノキ)、マグノナリア・リリフロラ(M.liliflora、シナモクレン)、マグノリア・コブス(M.kobus、タムシバ)が含まれ、その樹皮は生薬コウボクとして使用される。
【0054】
アキランテス (Achyranthes) 属に属する植物には、アキランテス・ファウリエイ(Achyranthes faurie、ヒナタイノコズチ)が含まれ、その根は生薬ゴシツとして使用される。
【0055】
エヴォデイア (Evodia) 属に属する植物には、エヴォデイア・オフィシナリス(Evodia officinalis、ホンゴシュユ)、エヴォデイア・ルタエカルパ(E.rutaecarpa、ゴシュユ)、が含まれ、それらの根は生薬ゴシュユとして使用される。
【0056】
スミラックス (Smilax) 属に属する植物には、スミラックス・グラブラ(Smilax glabra、山帰来、土茯苓)、スミラックス・チャイナ(S.china、サルトリイバラ)が含まれ、その塊茎は生薬サンキライとして使用される。
【0057】
プランタゴ (Plantago) 属に属する植物には、プランタゴ・アシアティカ(Plantago asiatica、オオバコ)が含まれ、その種子は生薬シャゼンシとして使用される。
【0058】
アリスマ (Alisma) 属に属する植物には、アリスマ・オリエンタレ(Alisma orientale、サジオモダカ)、アリスマ・ラリフロルム(A.rariflorum、トウゴクヘラオモダカ)が含まれ、それらの塊茎は生薬タクシャとして使用される。
【0059】
インペラタ (Imperata) 属に属する植物には、インペラタ・シリドリカ(Imperata cylindrica var.koenigii、チガヤ)が含まれ、その根茎は生薬茅根ボウコンとして使用される。
【0060】
アネマアレナ (Anemaarhena) 属に属する植物には、アネマアレナ・アスフォデロイデス(Anemarrhena asphodeloides、ハナスゲ)が含まれ、その根茎は生薬チモとして使用される。
【0061】
ポリポラス (Polyporus) 属に属する植物には、ポリポラス・ウムベラタス(Polyporus umbellatus、チョレイマイタケ)が含まれ、その菌核は生薬チョレイとして使用される。
【0062】
ジユンクス (Juncus) 属に属する植物には、ジユンクス・デシピエンス(Juncus decipiens、イ、トウシンソウ)が含まれ、その茎は生薬トウシンソウとして使用される。
【0063】
アンジエリ力 (Angelica) 属に属する植物には、アンジエリ力・プベセンス(Angelica pubescens、シシウド)が含まれ、その根は生薬ドッカツとして使用される。
【0064】
ゼア(Zea)属に属する植物には、ゼア・マイス(Zea mays、トウモロコシ)が含まれ、その花柱又は柱頭は生薬ナンバンゲとして使用される。
【0065】
ロニセラ (Lonicera) 属に属する植物には、ロニセラ・ジャポニカ(Lonicera japonica、スイカズラ)、キンギンカが含まれ、それらの茎、葉、花は生薬ニンドウとして使用される。
【0066】
アトラクチロデス (Atractylodes) 属に属する植物には、アトラクチロデス・ジャポニカ(Atractylodes japonica、オケラ)、アトラクチロデス・マクロセファラ(A.macrocephala、オオバナオケラ)がふくまれ、それらの根茎は生薬ビャクジュツとして使用される。
【0067】
ポリア (Poria) 属に属する植物には、ポリア・ココス(Poria cocos、マツホド)が含まれ、その菌核は生薬ブクリョウとして使用される。
【0068】
レデボウリエラ (Ledebouriella) 属に属する植物には、レデボウリエラ・セセロイデス(Ledebouriella seseloides、ボウフウ)が含まれ、その根又は根茎は生薬ボウフウとして使用される。
【0069】
サルガスム (Sargassum) 属に属する植物には、サルガスム・フレルム(Sargassum fulellum、ホンダワラ)が含まれ、その仮葉は生薬ホンダワラとして使用される。
【0070】
アケビア (Akebia) 属に属する植物には、アケビア・キナタ(Akebia quinata、アケビ)が含まれ、その茎は生薬モクツウとして使用される。
【0071】
カエノメレス (Chaenomeles) 属に属する植物には、カエノメレス・ラジェナリア(Chaenomeles lagenaria、ボケ)、カエノメレス・ジャポニカ(C.japonica、クサボケ)が含まれ、それらの 偽果は生薬モッカとして使用される。
【0072】
フォルシチア (Forsythia) 属に属する植物には、フォルシチア・サスペンサ(Forsythia suspensa、レンギョウ)、フォルシチア・コレアナ(F.koreana、チョウセンレンギョウ)が含まれ、その果実は生薬レンギョウとして使用される。
【0073】
ホウットウイニア (Houttuynia) 属に属する植物には、ホウットウイニア・コルダタ(Houttuinia cordata、ドクダミ)が含まれ、その葉は生薬ジュウヤクとして使用される。
【0074】
フラグミテス (Phragmites) 属に属する植物には、フラグミテス・コミュニス(Phragmites communis、ヨシ)、フラグミテス・ジャポニカ(P.japonica、ツルヨシ)が含まれ、その根茎は生薬ロコンとして使用される。
【0075】
また防虫性を有する植物の処理物として下記の生薬を挙げることができる。
【表1】
Figure 0004619472
【0076】
本発明で使用される防腐性を有する植物として、例えば次に掲げる属に属する植物を挙げることができる。
(1) プルヌス (Prunus) 属
(2) ゲラニウム(Geranium) 属
(3) マグノリア(Magnolia) 属
(4) コルヌス(Cornus) 属
(5) アトラクチロデス(Atractylodes) 属
(6) クリサンテムム(Chrysanthemum) 属
(7) アルテミシア(Artemicia) 属
(8) ラファヌス(Raphanus) 属
(9) テルミナリア(Terminalia) 属
(10)ポリゴナム(Polygonum) 属
(11)クレマチス(Clematis) 属
(12)サウスレア(Saussrea) 属
(13)ジュンクス(Juncus) 属
(14)モルス(Morus) 属
(15)ルビア(Rubia) 属
(16)ベルベリス(Berberis) 属
(17)スミラックス(Smilax) 属
(18)クルクマ(Culcuma) 属
(19)カステネア(Castanea)属
(20)コミフォラ(Commiphora)属
(21)スチラックス(Styrax)属
(22)ウンカリア(Uncaria)属
(23)ソフォラ(Sophora)属
【0077】
また防腐性を有する植物の処理物として、下記の生薬を挙げることができる。
【表2】
Figure 0004619472
【0078】
本発明で使用される防虫又は/及び防腐性を有する植物の処理物はこれら植物を処理したもの、例えば、乾燥裁断、抽出、滲出物採取、粉砕など、人為的手段をこれら植物に加えたものが本発明で使用されうる。生薬はこれら植物の処理物であるから、そのまま本発明の有効成分原料としてもよい。さらに処理して本発明の有効成分原料としてもよい。
【0079】
前記抽出物は慣用の方法により得ることができる。例えば、前記植物又は生薬を、必要に応じて裁断、乾燥、粉砕などの処理を施した後、適当な抽出溶媒を用いて、常圧又は加圧下、室温又は加熱下で抽出し、必要に応じて濾過した後、濃縮することにより、前記抽出物を得ることができる。植物は一種又はニ種以上混合して抽出に供することができる。
【0080】
抽出に供する植物体の部位は、植物の種類によっても異なるが、植物体全体であってもよく、植物体のー部分、例えば、根、茎、葉、果実、種子、果皮、樹皮、幹、技、花などであってもよい。例えば、(1)モリンガ(Moringa)属、(2)マラ(Marah)属、(4)ソフォラ(Sophora)属、及び(5)マーキア(Maackia)属の植物は、例えば、根又は根に近い幹などを抽出工程に供することができる。また、(3)モモルディカ(Momordica)属の植物では、例えば、果実などを、(6)チノスポラ(Tinospora)属の植物では、通常、茎などを、(7)ザントキシラム(Zantoxylum)属の植物では、通常、果実や果皮などを抽出工程に供することができる。さらに、(8)ピクラスマ(Picrasma)属の植物では、例えば、幹などを、(9)ピパー(Piper)属に属する植物では、例えば、植物体全体を、(10)ストリキノス(Strychnos)属に属する植物では、例えば、種子などをそれぞれ抽出工程に供することができる。(11)スチラックス(Styrax)属の植物では、例えば、樹幹などを、(12)リキッド・アンバー(Liquid ambar)属の植物では、例えば、樹皮などを抽出工程に供してもよい。また、(13)ゲラニウム(Geranium)属の植物は全草を抽出工程に供することができる。(14)モルス(Morus)属の植物は根皮を、(15)アルテミシア(Artemisia)属及び(20)ポリゴヌム(Polygonum)属の植物は葉を、(16)ディオスピロス(Diospyros)属の植物は、例えば、へたを、(17)クラタエグス(Crataegus)属、(22)ガルデニア(Gardenia)属、(23)コルヌス(Cornus)属、(27)テルミナリア(Terminalia)属の植物は、通常、果実を抽出工程に供することができる。さらに、(18)クルクマ(Curcuma)属、(19)ルビア(Rubia)属、(25)レウム(Rheum)属、(28)サウスレア(Saussurea)属ではおもに根茎を、(21)クリサンテムム(Chrysanthemum)属及び(26)シジギウム(Syzygium)属では、花やつぼみを抽出工程に供することができる。また、(24)ウンカリア(Uncaria)属のアセンヤクなど、エキスとして市販されているものを用いてもよい。
【0081】
なお、(11)スチラックス属や(12)リキッドアンバー属の植物においては、必要に応じて、これらの植物からの滲出物である「安息香」や「流動蘇合香」などを抽出工程に供することもできる。
【0082】
抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールなどのアルコール類;エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、環状エーテル(例えば、ジオキサン、テロラヒドロフランなど)、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルなど)などのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2ージクロロエタンなどのハロゲン炭化水素類;へキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類;ギ酸、酢酸などの力ルボン酸類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンなどの非ブロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒はー種又はニ種以上混合して用いることができる。
【0083】
これらのうち、好ましい抽出溶媒には、水、親水性溶媒及びこれらの混合物が含まれる。前記好ましい親水性溶媒には、炭素数1〜4程度の直鎖又は分枝鎖アルコール類;ジメトキシエタン、環状エーテル、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;ニトリル類;有機力ルボン酸類;非ブロトン性極性溶媒などが含まれる。
【0084】
特に好ましい溶媒には、水;炭素数1〜4の道鎖又は分枝鎖アルコール、アセトンなどの水溶性溶媒;及びこれらの混合物が含まれる。
【0085】
前記抽出溶媒の使用量は、抽出効率及び抽出操作を損なわない範囲であればよく、例えば、被抽出物100重量部に対して、50〜10000重量部、好ましくは100〜20000重量部程度である。抽出温度は、例えば0〜150℃、好ましくは室温〜120℃程度である。
【0086】
本発明における前記滲出物も慣用の方法により得ることができる。例えば、植物体のー部、例えば、樹幹などに傷を付け、樹脂などの滲出物を採取したり、植物体又はそのー部を、必要に応じて熱水処理などを施した後、圧搾して採取することにより前記滲出物を得ることができる。なお、本発明においては、このように植物から分離した滲出物のみならず、植物体又はそのー部から滲出する滲出物をも利用できる。例えば、破砕、乾燥などの処理を施した植物から、滲出物が滲出する場合がある。このような滲出物も、本発明における「滲出物」に含まれ、本発明の有効成分原料として使用できる。
【0087】
本発明においては、二種以上の植物同士及びその抽出物同士、あるいは滲出物同士を混合してもよく、また、処理物、抽出物及び滲出物から選択された二種以上を組み合わせて混合してもよい。前記抽出物及び滲出物は、液状であってもよく、粉末状、粒状などの固形状やぺースト状などの半固形状であってもよい。前記処理物、抽出物及び滲出物には、木材腐朽菌に対して高い防腐作用を示す成分が含まれている。しかも、木材防腐成分は、天然物であり且つ食用、生薬などとして用いられている植物に由来するため、一般に人畜に対して安全性が高く、環境に対しても悪影響を及ぼすことが少ない。
【0088】
本発明で使用される防虫又は/及び防腐性を有する植物又はそれら植物の処理物としての生薬としては次のものをあげることができるが、これら植物の変種又はその処理物であってもよい。
【0089】
本発明に用いられる脂肪酸は、直鎖構造を有するものであっても枝分かれした構造のものであってもかまわない。また、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸であってもよい。具体的には、好ましくは炭素数8〜35のものが挙げられる。より好ましくは炭素数7〜12のものが挙げらる。例えば、デカン酸、カプロン酸、ペプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0090】
本発明で用いられる脂肪酸エステルとしては、総炭素数が8〜25の脂肪酸エステルが好ましい。前記脂肪酸エステルは、炭素数が1〜18のアルコール残基と炭素数が1〜18の脂肪族力ルボン酸残基とからなるものが好ましく、その具体例としては、例えばデカン酸エチル、ぺンタン酸アリル、カプロン酸アリル、ヘプタン酸アリル、力プリル酸アリル、ノナン酸アリル、力プリン酸フリル、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、力プリン酸エチル、カプリン酸ブチル、力プリン酸へプチル、力プリン酸デシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸アリル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸アミル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸アリル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸アリル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、酢酸オクタデシルが挙げられる。
【0091】
本発明で使用される植物の細切物の好適な例は木材粉砕物である。公知の木材粉砕物はいかようなものでも使用されうる。例えば、おがくず、削りくず、樹皮の細切物、泥炭、樹皮の削りくず、樹皮のスライバー、樹皮繊維、ココナツ繊維、ココナツあら粉、パルプ、サトウダイコンパルプ残留物などが挙げられる。
【0092】
木材の種類としてはいかようなものでもよいが、好ましくはヒバ、コウヤマキ、イヌマキ、スダジイ、ビャクシン、イスノキ、タブノキ、カヤ、ベニヒ、タイワンスギペリコプシス、クルイン、アゾベ、マンソニア、ブビンガ、ドウシエ、イロコ、コチベ、マコレモバンギ、タウン、ターミナリア、モンキーポット、タウキャン、チンベン、ニオベ、コクロジュア、ローズウッド、シャシャンポ、ヨン、シタン、メラワン、チーク、マラス、インツィア、ランラン、アンジェリュク、ヒノキ、スギ、ツガ、カラマツ、ベイヒ、クスノキ、イタヤカエデ、カツラ、ケヤキ、ブナ、トチノキ、イチイガシ、アカガシ、フラミレ、レッドメランチ、イェローメランチ、ナトー、カメレレ、クイラ、ラミンシポ、ブラックウォールナット、シルバービーチ、ブラックビーンなどである。
【0093】
木材粉砕物は通常は粒度が約5〜200メッシュ、好ましくは約50〜150メッシュである。
【0094】
パルプとしては、例えばケミカルパルプやメカニカルパルプ、バージンパルプなどのパルプ、これらパルプに紙力増強剤や硫酸バンドを添加したもの等を挙げることができる。またバージンパルプをベースにしたダンボール、不織布、紙等の加工品等でもよい。又さらに、植物の細切物として、上記した防虫又は/及び防腐性を有する植物の細切物、そのような植物の処理物の細切物、そのような植物の抽出物の残渣が好ましい例として挙げられる。
【0095】
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド、力ルボキシメチルセルロース、ポリエチレンイミゾ、澱粉等を挙げることができる。
【0096】
本発明の木材保存剤は、上記有効成分原料を含んでいる限り、その製剤の形態は特に制限されないず、前記植物の処理物及びその抽出物又は滲出物そのものであってもよい。また、木材防腐剤は、製剤化されていてもよい。前記製剤形態として、例えば、溶液剤、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油剤、ローションなどの液剤;粉剤、粒剤、マイクロカプセル剤、マイクロスフエア、フロアブル剤、発泡剤などの固形剤;ペースト剤、クリームなどの半固形剤;噴霧剤、エアゾール剤;塗料などが挙げられ、これらは使用目的や適用部位に応じて適宜選択できる。これらの製剤は、慣用の簡単な方法で製造できる。
【0097】
前記液剤、半固形剤は、例えば、前記抽出物又は滲出物を適当な液体希釈剤又は担体を用いて希釈することにより製造できる。なお、水和剤の場合には、さらに固体希釈剤又は担体を用いてもよい。
【0098】
前記液体希釈剤又は担体としては、例えば、前記例示の抽出溶媒以外に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;可塑剤(例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのエステル系可塑剤など);ケロセンなどの石油系溶剤;エチルナフタレン、フェニルキシリルエタンなどの芳香族炭化水素;2−エチルヘキシルフェニルホスフェートなどのリン酸エステルなども使用できる。これらの液体希釈剤や担体は、一種又はニ種以上混合して使用できる。前記固体希釈剤又は担体としては、例えば、ケイソウ土、雲母、粘土、カオリン、タルク、石英粉末、ベントナイトなどが挙げられる。これらの固体希釈剤又は担体も、単独又は二種以上の混合物として用いることができる。
【0099】
前記固形剤は、例えば、前記抽出物又は滲出物を適当な固体希釈剤又は担体で希釈したり造粒することにより製造できる。固体希釈剤又は担体としては、前記例示の固体希釈剤以外に、滑石粉、ロウ石粉などのタルク粉、微粉末クレイなどのクレイ類や炭酸カルシウムなどの鉱物性粉末;硫黄粉末;尿素粉末;木粉、澱粉などの植物性粉末;農薬、園芸用製剤などに繁用される各種担体が挙げられる。これらの固形希釈剤や担体は、増量剤として使用される場合も多い。固形希釈剤や担体も、一種又は二種以上混合して使用できる。
【0100】
前記エアゾール剤は、例えば、前記抽出物又は滲出物を必要に応じて適当な溶剤で希釈し、噴射剤と共に容器に充填することにより製造できる。溶剤としては、例えば、前記例示の溶媒などが挙げられる。噴射剤としては、フロン、液化天然ガスなどが挙げられる。
【0101】
なお、木材防腐剤は、製剤の種類に応じて、必要により種々の添加剤、例えば、防腐防力ビ剤;酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤;結合剤;皮膜形成能を有する樹脂;乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤;増粘剤;流動助剤;固結防止剤;凝集剤;紫外線散乱剤;水分除去剤;着色剤などを含んでいてもよい。
【0102】
前記防腐剤防カビ剤としては、例えば、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマールなどの有機ヨード系化合物;2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾールなどのベンズイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾールなどのベンズイミダゾール及びベンゾチアゾール系化合物;1−(2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール、1−(2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール、α−(2−(4−クロロフェニル)エチル)−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどのトリアゾール系化合物;ジンク−ビス−(2−ピリジン−チオール−1−オキシド)フタル酸亜鉛などの有機亜鉛等;4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)、ホウ砂などの天然化合物などが挙げられる。
【0103】
酸化防止剤としては、例えば、4,4’チオビス−6−t−ブチル−3−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール(2−t−ブチル−4−メトキシフェノールと3−t−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)、p−オクチルフェンノール、モノ(又はジ又はトリ)−(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤;N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤;2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノリンなどのヒドロキノリン系酸化防止剤;ジラウリルチオジウロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが例示できる。
【0104】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;サリチル酸フェニル、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物;2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。
【0105】
皮膜形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示できる。
【0106】
乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などの慣用の界面活性剤が使用できる。アニオン系界面活性剤には、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム[例えば、竹本油脂(株)製、商品名ニューカルゲンBX−C]などのアルキルナフタレンスルホン酸、2−スルホコハク酸ジアルキルナトリウム[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C]などの2−スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤[例えば、三洋化成(株)製、商品名トキサノンGR−30]、α―オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ディクスゾール60A]、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが例示できる。ノニオン系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名イノゲン・イーエー−142(EA−142)]、ポリオキシエチレンアリールエーテル、脂肪酸多可価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコーポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体[例えば、三洋化成(株)製、商品名ニューポールPE−64]などが例示できる。
【0107】
増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸とその塩、キサンタンガムなどが例示でき、流動助剤として、PAP助剤(例えば、イソプロピルリン酸)、ワックス、ポリエチレン、脂肪酸金属塩、パラフィン、シリコーンオイルなどの有機滑剤、タルクなどの無機滑剤が例示できる。固結防止剤として、例えば、ホワイトカーボン、珪藻土、ステアリン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタンなどが挙げられる。凝集剤としては、例えば、流動パラフィン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、イソブチレン重合体[例えば、出光石油化学(株)製、商品名IPソルベントー2835]などが挙げられる。紫外線散乱剤としては、二酸化チタンなどが例示できる。水分除去剤としては、無水石膏、シリカゲル粉末などの乾燥剤が挙げられる。着色剤には、例えば、有機又は無機顔料や染料が含まれる。
【0108】
本発明の木材害虫防除剤は、他の防虫剤や害虫忌避剤、効力増強剤を含んでいてもよい。前記他の防虫剤としては、例えば、ホキシム、クロルピリホス、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、イソフェンホスなどの有機リン系化合物;バッサ、プロポキサーなどのカルバメート系化合物;サイフルスリン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンパレレート、エトフェンプロックス、Hoe−498などのピレスロイド系化合物、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリドなどのネオニコチノイド系化合物、フィプロニールなどのフェニルピラゾール系化合物、ベンスルタップなどのネライストキシン系化合物、ヒバ油、ヒバ中性油、デカン酸、オクタン酸などの脂肪酸やホウ酸などの他、ニーム(特開平3−41011号公報)、モリンガ属、マラー属をはじめとした植物(特開平6−329514号公報)などが挙げられる。また、昆虫成長制御剤(IGR)として知られているルフェヌロン、ヘキサフルムロン、ジフルベンズロン、フルフェノクスロンなどのキチン合成阻害剤やメトプレン、ハイドロプレンなどの幼若ホルモン様化合物を含んでいてもよい。
【0109】
前記有効成分、すなわち、防虫又は/及び防腐性を有する植物又はその植物の処理物、脂肪酸、脂肪酸エステルの群から選ばれた少なくとも1種以上の有効成分の製剤全体に対する含有量は、例えば5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%程度である。前記木材粉砕物などの植物細切物の含有量は、例えば5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%程度である。有効成分と植物細切物との比率は有効成分1重量部に対して植物細切物約0.1〜100重量部、好ましくは約0.3〜20重量部程度である。又、有効成分が(a)上記植物と(b)脂肪酸又は/及び脂肪酸エステルとの混合物である場合、(a)と(b)との重量比は通常は約1:0.1〜1000、好ましくは約1:0.3〜200、さらに好ましくは約1:100程度である。本発明の木材保存剤の使用量は、木材の種類や有効成分の種類、害虫又は腐朽菌の種類によって異なるため一概には云えないが、木材表面積1mに対して通常約10〜100グラム、好ましくは約20〜60グラム程度である。土壌用としては、水で薄めて用いられるが、水希釈液を1〜6L/m、好ましくは2〜4L/mとなる量を用いる。
【0110】
【発明の実施の形態】
本発明に係る木材保存剤の対象となる木材害虫としては以下のようなものが挙げられる。例えばシロアリ目、コウチュウ目、ハチ目に属する昆虫が挙げられる。前記シロアリ目に属する昆虫の具体例としては、例えばヤマトシロアリ、イエシロアリ等のミゾガシラシロアリ科に属するもの、ダイコクシロアリ等のレイビシロアリ科に属するものが挙げられる。前記コウチュウ目に属する昆虫の具体例としては、ヒラタキクイムシ、ナラヒラタキクイムシ、ケヤキヒラタキクイムシ、アラゲヒラタキクイムシ等のヒラタキクイムシ科に属するもの、ケブカシバンムシ、マツザイシバンムシ、クシヒゲシバンムシ、クロノコヒゲシバンムシ、チビキノコシバンムシ等のシバンムシ料に属するもの、チビタケナガシンクイムシ、ニホンタケナガシンクイムシ、コナナガシンクイムシ、オオナガシンクイムシ等のナガシンクイムシ科に属するもの、イエカミキリ等の力ミキリムシ科に属するもの、オサゾウムシ等のオサゾウムシ科に属するもの、サクセスキクイムシ等のキクイムシ科に属するものが挙げられ、その他にタマムシ科やゾウムシ科に属するものが挙げられる。前記ハチ目に属する昆虫の具体例としては、例えばクマバチ等のコシブトハナバチ科に属するもの、ムネアカオオアリ等のアリ科に属するものが挙げられる。その他にゴキブリ、ハエ、カ、アブ、ナンキンムシ、などの衛生害虫などにも適用できる。
【0111】
本発明に係る木材保存剤の対象となる木材腐朽菌としては種々の菌類、例えば、褐色腐食菌(例えば、オオウズラタケ、イドタケ、キカイガラタケ、キチリメンタケ、ナミダタケ)や白色腐朽菌(例えば力ワラタケ)などが挙げられる。
【0112】
本発明の木材保存剤を用いた保存方法においては、木材害虫や木材腐朽菌類の侵入源や発生源、例えば、建築物においては、台所、浴室、居間、床のコーナー部、床下、天井、土台、柱、壁、木製の窓やドア、また、線路のまくら木、架橋部品、防波堤、木製の車、箱、パレット、容器、木製被覆材などに前記木材防虫剤や木材防腐剤を適用すればよい。木材防腐剤の適用方法には、木材腐朽菌類の侵入源や発生源に応じた種々の態様、例えば、塗布、散布、浸漬、注入、混和、噴霧などの方法が含まれる。木材防腐剤は、合成樹脂シート、紙、布などのシート状基材に、塗布、含浸、混練などにより保持させてシート剤を調整し、これを前記害虫や菌類の侵入個所や発生個所などに載置したり貼りつけたりすることによっても、木材の虫害や腐朽を防除できる。又さらに本発明の木材保存剤を家屋の床下の地面に、木材柱が垂下する礎石の中心として半径約10〜30cmの円を描くように散布することによって、木材害虫又は/及び木材腐朽菌から木材を永年にわたり保護することができる。
【0113】
【実施例】
〔実施例1〕
デカン酸を40℃にて溶解したあと、2mmに粉砕したヒノキ木粉を混ぜ、よく攪拌した。その後、増粘剤(アルギン酸ナトリウム)を加え、再びよく攪拌して木材保存剤を製造した。各成分の含有量はヒノキ木粉が34重量%、デカン酸が64重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0114】
〔実施例2〕
上記実施例1においてヒノキ木粉の代わりにヒバ木粉を用いる以外は実施例1と同一の方法で木材保存剤を製造した。各成分の含有量はヒバ木粉が44重量%、デカン酸が54重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0115】
〔実施例3〕
上記実施例1においてヒノキ木粉の代わりに80メッシュに粉砕したパルプを用いる以外は実施例1と同一の方法で木材保存剤を製造した。各成分の含有量はパルプが33重量%、デカン酸が65重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0116】
〔実施例4〕
上記実施例1においてヒノキ木粉の代わりに80メッシュに粉砕したウコンと100メッシュに粉砕したヒノキ木粉を混ぜ合わせたもの用いる以外は実施例1と同一の方法で木材保存剤を製造した。各成分の含有量はヒノキ木粉が32重量%、ウコンが2重量%、デカン酸が64重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0117】
〔実施例5〕
80メッシュに粉砕したウコン、ゲンノショウコ、サンズコン、ガイヨウを100メッシュに粉砕したヒノキ木粉、ヒバ木粉に混ぜ合わせる。これに40℃にて溶解したデカン酸及びデカン酸エチルを加えよく攪拌した。その後、増粘剤(カルボキシメチルセルロース ナトリウム)を加え、再びよく攪拌して木材保存剤を製造した。各成分の含有量はヒノキ木粉が28重量%、ヒバ木粉が10重量%、デカン酸が50重量%、デカン酸エチルが6重量%、ウコン、ゲンノショウコ、サンズコン、ガイヨウがそれぞれ1重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0118】
参考例1〕アセンヤクとアンソッコウをメタノールで抽出し、抽出液を100メッシュに粉砕したヒノキ木粉を混ぜよく攪拌したあと溶媒を除去した。残渣に増粘剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を加え、再びよく攪拌して木材保存剤を製造した。各成分の含有量はヒノキ木粉が48重量%、アセンヤクが20重量%、アンソッコウが30重量%、分散剤が2重量%であった。
【0119】
〔比較例1〕
デカン酸を40℃にて溶解したあと、粉末のセピオライトを混ぜ、よく攪拌した。その後、増粘剤(アルギン酸ナトリウム)を加え、再びよく攪拌して木材保存剤を製造した。各成分の含有量はセピオライトが80重量%、デカン酸が18重量%、増粘剤が2重量%であった。
【0120】
なお、この場合実施例1〜のように有効成分を高濃度に含浸させることはできなかった。
【0121】
〔比較例2〕
デカン酸を40℃にて溶解したあと、植物油(綿実油)を混ぜ、よく攪拌した。その後、界面活性剤剤(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)を加え、再びよく攪拌して木材保存剤を製造した。各成分の含有量は植物油が30重量%、デカン酸が50重量%、界面活性剤が20重量%であった。
【0122】
上記のように調整した木材保存剤を水で10倍容量に希釈し冷蔵庫に保管して、外観を観察し、以下の結果を得た。
【0123】
【表3】
Figure 0004619472
【0124】
〔試験例1〕
実施例1の木材保存剤を水で5倍容量に希釈した後、よく振とうさせた後、シャーレに塗布して、室温で2日間乾燥した。次に巣から採取したイエシロアリの職蟻10頭を、無作為にシャーレの上において。水が入れられた容器にシャーレを入れ、その容器を温度28±2℃の恒温室に1週間静置し、1日後と1週間後にイエシロアリの健康状態を観察して次の結果を得た。
Figure 0004619472
【0125】
〔試験例2〕
実施例1の木材保存剤を水で希釈して5倍容量に希釈し、よく振とうさせたのち、これを木口をエポキシ樹脂でシールした杉試験片(20×40×5mm、2方正目)に塗布した。これを60℃で2日間乾燥して重量測定を行いエチレンオキシドガスで滅菌した後、培地上にオオウズラタケを接種したシャーレにこの試験片を設置した。8週間放置した後、取り出し、60℃で2日間乾燥した後、重量を測定し、重量減少率を求めた。
Figure 0004619472
【0126】
〔試験例3〕実施例1〜で調整した木材保存剤を冷凍庫(−11℃)中に保存し、冷水(4℃)で10倍容量に希釈して、外観を観察し、以下の結果を得た。参考例1および比較例1も同様に行った。
【表4】
Figure 0004619472
【0127】
【発明の効果】
本発明の方法においては、木材腐朽菌又は木材害虫を効率よく防御することができ、木材の腐朽被害又は害虫被害を顕著に低減でき、有効成分が天然の植物由来であるため、人畜に対する安全性が高く、環境に対して悪影響を及ぼすことが少ないだけではなく、本発明の木材保存剤は、寒冷地での保存時又は使用時においても固化しないため、産業上有利に使用できる。
【0128】
本発明の保存方法によれば、低温でも流動性を保っているので、寒冷地であっても好都合に実施が可能であり、かかる地での木材の腐朽被害又は害虫被害を低減することができる。又さらに、本発明の製剤が脂肪酸と植物の処理物を共に含有する時、製剤中の脂肪酸の腐敗が植物の処理物の存在によって防止される。

Claims (7)

  1. (1)デカン酸および(2)デカン酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分と、防虫又は/及び防腐性を有する植物の細切物とを含有することを特徴とする木材保存剤。
  2. 防腐用木材保存剤である請求項1記載の木材保存剤。
  3. 防虫用木材保存剤である請求項1記載の木材保存剤。
  4. 前記防虫又は/及び防腐性を有する植物の細切物として下記(1)〜(3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる請求項1記載の木材保存剤。
    (1)ヒノキ粉砕物
    (2)ヒバ粉砕物
    (3)パルプ
  5. さらに、前記有効成分として、(3)防虫又は/及び防腐性を有する植物又はその植物の処理物を含有することを特徴とする請求項1に記載の木材保存剤。
  6. (3)防虫又は/及び防腐性を有する植物又はその植物の処理物が、下記の属に属する植物又はその処理物からなる群から選ばれる1種以上である請求項5に記載の木材保存剤。
    (1)モリンガ(Moringa)属
    (2)マラー(Marah)属
    (3)モモルディカ(Momordica)属
    (4)ソフォラ(Sophora)属
    (5)マーキア(Maackia)属
    (6)チノスポラ(Tinospora)属
    (7)ザントキシラム(Zantoxylum)属
    (8)ピクラスマ(Picrasma)属
    (9)ピパー(Piper)属
    (10)ストリキノス(Strychnos)属
    (11)スチラックス(Styrax)属
    (12)リキッドアンバー(Liquidambar)属
    (13)ゲラニウム(Geranium)属
    (14)モルス(Morus)属
    (15)アルテミシア(Artemisia)属
    (16)ディオスピロス(Diospyros)属
    (17)クラタエグス(Crataegus)属
    (18)クルクマ(Curcuma)属
    (19)ルビア(Rubia)属
    (20)ポリゴヌム(Polygonum)属
    (21)クリサンテムム(Chrysanthemum)属
    (23)ガルデニア(Gardenia)属
    (24)コルヌス(Cornus)属
    (25)ウンカリア(Uncaria)属
    (26)レウム(Rheum)属
    (27)テルミナリア(Terminalia)属
    (28)サウスレア(Saussurea)属
    (29)ベルベリス(Berberis)属
    (30)エピメデイウム(Epimedium)属
    (31)ペラルゴニウム(Pelargonium)属
    (32)フムルス(Humulus)属
    (33)ラバンデュラ(Lavandula)属
    (34)ラファヌス(Raphanus)属
    (35)クレマテイス(Clematis)属
    (36)ジクラノプテニス(Dicranoptenis)属
    (37)アストロガルス(Astrogarus)属
    (38)リゴジウム(Lygodium)属
    (39)プルネラ(Prunella)属
    (40)シゾネペタ(Scizonepeta)属
    (41)マグノリア(Magnolia)属
    (42)アキランテス(Achyranthes)属
    (43)エヴォデイア(Evodia)属
    (44)スミラックス(Smilax)属
    (45)プランタゴ(Plantago)属
    (46)アリスマ(Alisma)属
    (47)インペラタ(Imperata)属
    (48)アネマアレナ(Anemaarhena)属
    (49)ポリポラス(Polyporus)属
    (50)ジユンクス(Juncus)属
    (51)アンジエリ力(Angelica)属
    (52)ゼア(Zea)属
    (53)ロニセラ(Lonicera)属
    (54)アトラクチロデス(Atractylodes)属
    (55)ポリア(Poria)属
    (56)レデボウリエラ(Ledebouriella)属
    (57)サルガスム(Sargassum)属
    (58)アケビア(Akebia)属
    (59)カエノメレス(Chaenomeles)属
    (60)フォルシチア(Forsythia)属
    (61)ホウットウイニア(Houttuynia)属
    (62)フラグミテス(Phragmites)属
    (63)カステネア(Castanea)属
    (64)コミフォラ(Commiphora)属
    (65)コフェア(Coffea)属
    (66)プルヌス(Prunus)属
  7. 請求項1〜6記載の木材保存剤を用いることを特徴とする木材保存方法。
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