現在、レーザビームの利用の試みは、避雷針レーザ誘導、大気環境計測、光増幅、粒子加速およびレーザ加工など、広範囲にわたるものとなっている(非特許文献1)。例えば、落雷事故から設備を保護するために長波長の炭酸ガスレーザや短波長のエキシマレーザを用いて落雷を避雷針に誘導するレーザ誘雷技術、紫外域短波長のエキシマレーザを用いた半導体製造ステッパー、各種レーザー加工などがそれぞれ報告されている。しかしながら、上記報告のいずれにおいても、電界強度が強くないため伝播によりビームが広がり、連続したプラズマチャンネルができない、長尺なプラズマチャンネルが形成できないなどの、レーザーの特徴に依存する問題点が指摘されている。
一方、長尺で連続したプラズマチャンネルが得られるレーザビームとして、パルス幅が数10fs、パルスエネルギーが数100mJの超短パルスレーザビームが報告されている(非特許文献2)。
この超短パルスレーザは、電界強度が極めて高い高強度パルスレーザであるため、空気の屈折率を変えたりプラズマを発生させ、フィラメンテーションを容易に起こす。つまり、超短パルスレーザビームを大気中に伝播させる際、一般にビーム断面強度分布は中央部ほど高いため、空気の屈折率が周辺部よりも中央部の方が大きくなってあたかも凸レンズが存在しているかのような挙動を示す。その反面、凸レンズ効果によりビームが収束すると、光電離によってプラズマが生成され、そのプラズマによりビーム断面の中央部の屈折率が周辺部よりも小さくなって、今度はあたかも凹レンズが存在しているかのような挙動を示す。この2つの挙動が平衡して、レーザビームが絞られた状態のままで伝播される。因みに、このことをセルフチャネリング、絞られた状態で伝播するレーザビームのことをフィラメントと呼ぶ。
したがって、超短パルスレーザビームを大気中に伝播させた場合、レーザビームに僅かな波面歪みがあると、たとえ図15に示すような均一なビーム断面強度分布でも、伝播に伴い強度斑が発生してビーム断面中に超高強度の部分が現れることでフィラメントが容易に生成される(図16参照)。
この超短パルスレーザビームのフィラメントは、レーザビームが絞られた状態のままで遠距離への伝播を可能として大気中などでの遠距離の伝播によっても必要な強度分布を維持できるため、長尺かつ連続のプラズマチャンネルが形成できると共に、自己位相変調により多波長かつ連続なスペクトルを形成する。このことから、前述のレーザ誘雷技術の他、多種同時計測による大気環境計測、エアロゾルや雲の成分計測、構造物に付着した物質の成分計測、フィラメントを光増幅媒質にして誘導放出させる光増幅、電子を加速させる粒子加速、そして媒質の組成を変化させるレーザ加工など多分野での応用が期待されている。
IEEJ Trans.EIS,Vol.123,No.10,2003 P.1714-1720「ラマン散乱とミー散乱を併用したレーザレーダを用いた大気観測」
レーザ研究2003年11月 P.730-736「超短パルス超高強度レーザ用いた極短パルス電子ビームの発生とその応用」
しかしながら、超短パルスレーザビーム中でのフィラメントの発生は偶然的なものであり、ビーム断面のどの部位に生成されるか、またそれが連続的に発生するのか否かについても不明である。ビーム断面のどの部位にフィラメントが発生するかは、初期の波面歪みや大気中に存在する気体密度の変化などに起因するものであり、発生位置の特定もできなければ、制御もできないものであった。即ち、従来の超短パルスレーザの利用においては、予め決められた位置にフィラメントを形成することも、またフィラメントが形成される位置を制御したり、フィラメントの数を制御することもできない問題を有している。また、大小様々なフィラメントが同時発生して互いに競合するため、制御性が悪いという問題を有している。
本発明は、大気中、高密度ガス中あるいは固体媒質中に超短パルスレーザビームを伝播させる場合に、ビーム断面および伝播経路の予め決められた任意の位置にフィラメントを生成できるフィラメント形成方法および装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ビーム断面上に発生するフィラメントの数、フィラメントの位置を自在に制御可能とするフィラメント形成方法および装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明のフィラメントの形成方法は、超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーに超短パルスレーザビームを照射し、前記局部的凸部または凹部を有する反射ミラーにより反射したビーム断面の任意の部位に強度斑を作ることでフィラメント発生の起点とするようにしている。
局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーに照射された超短パルスレーザビームは、反射の際にミラー表面の局部的な凸部または凹部に応じた局所的な空間変調がビームの波面に与えられ、これが起点(種)となってフィラメントをビーム伝播の過程で形成する。このフィラメントは、反射ミラーの表面の局部的な凸部または凹部の存在により安定して生成されることから、局部的な凸部または凹部を任意の位置に形成することで、ビーム断面の任意の位置に一意的に連続して形成される。
また、本発明のフィラメントの形成方法は、超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーに超短パルスレーザビームを照射し、局部的凸部または凹部を有する反射ミラーにより反射したビーム断面の任意の部位に強度斑を作ることでフィラメント発生の起点を生成する工程と、局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部をビーム断面の局部的な凸部または凹部の周りに相当する位置に形成する反射ミラーに超短パルスレーザビームを照射し、大域的な凹部により反射した超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を強度斑の周りに集合させる工程とを、同時または連続的に実施することで反射ビーム断面および伝播経路の任意の位置に任意の密度のフィラメントを生成させるものである。この場合、局部的凸部又は凹部の周りあるいは周りに相当する位置に大域的な凹部が形成されることにより、局部的凸部または凹部により反射したビーム断面の任意の部位に形成された強度斑の周りあるいはそれに相当する位置に、大域的な凹部により反射した超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑が集合し、中心となる強度斑の電界強度をさらに強くして、反射ビーム断面および伝播経路の任意の位置に任意の密度のフィラメントを生成させることを可能とする。
ここで、フィラメント発生の起点となる強度斑を生成する工程と超短パルスレーザビームのエネルギを前記強度斑の周りに集合させる工程とを同時に実施するフィラメント形成方法としては、例えば反射ミラーを反射面が任意に変形可能な可変形ミラーとし、局部的な凸部または凹部の周りに局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を形成することである。この場合には、局部的凸部または凹部により形成される強度斑の生成位置と大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑の集合位置とが予め関連づけられており、ビーム断面の任意位置の強度斑の電界強度をより確実にさらに強くする。
また、フィラメント発生の起点を生成する工程と超短パルスレーザビームのエネルギを強度斑の周りに集合させる工程とを連続的に実施するフィラメント形成方法としては、例えば局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーと局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部をビーム断面の強度斑の周りに相当する位置に形成する反射ミラーとの別々の反射ミラーで順番に反射させることがある。この場合には、局部的凸部または凹部により反射後のビーム断面の任意の位置に一意的に形成される強度斑とは独立して大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑の集合が制御される。
さらには、本発明にかかるフィラメントの形成方法は、大域的凹部の形成位置を制御することでビーム断面上におけるフィラメントの発生位置を制御することが可能である。
また、本発明のフィラメント発生装置は、超短パルスレーザ源と反射ミラーとからなるフィラメント発生装置であって、前記ミラーは、前記超短パルスレーザ源から出力された超短パルスレーザビームの光路上に配置されて前記超短パルスレーザビームを反射し、その反射面に超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的な凸部または凹部を有し、前記局部的凸部または凹部を有する前記反射ミラーにより反射したビーム断面の任意の部位にフィラメント発生の起点となる強度斑を作るものである。また、本発明のフィラメント発生装置は、超短パルスレーザビームの光路上に配置されて超短パルスレーザビームを連続的に反射する第1の反射ミラーと第2の反射ミラーを備え、第1の反射ミラーは超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的凸部または凹部を反射面に有し、かつ第2反射ミラーはビーム断面の強度斑の周りに相当する位置に第1反射ミラーの局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を形成する反射面を有し、第1の反射ミラーで反射したビーム断面の任意の部位に強度斑を作ると共に第2の反射ミラーで反射した超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を前記強度斑の周りに集合させるようにしたものである。
ここで、本発明のフィラメント発生装置において、反射ミラーあるいは第2の反射ミラーは反射面が任意に変形可能な可変形ミラーであり、かつ可変形ミラーの背面側に複数のアクチュエータを備え、アクチュエータの駆動により任意の局部的な凸部または凹部の周りにこの局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を形成するものであることが好ましい。
この場合には、アクチュエータで可変形ミラーを裏面から押すかまたは引っ張ることによって任意の曲率あるいは形状に可変形ミラーを変形させることによって、反射後のビーム断面の任意位置に超短パルスレーザビームのエネルギあるいは強度斑を集合させる大域的な凹部が反射面に形成される。局部的凸部または凹部を有しかつ大域的に変形させた可変形ミラーで超短パルスレーザビームが反射されると、そのビーム断面に可変形ミラーの局部的な凸部または凹部でフィラメント発生起点となる強度斑が生成されると同時に、曲率調整された大域的な窪みによって強度斑の周辺にさらに超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑が集合され、電界強度をさらに強くして任意の密度あるいは単一のフィラメントが生成される。しかも、大域的な凹部の中心に向けて超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑が集合することによってより強い電界強度の強度斑が形成されるため、ビーム断面上における大域的な凹部の形成位置を制御することで、ビーム断面上におけるフィラメントの発生位置を制御できる。
さらに、可変形ミラーとアクチュエータとは接着剤による直付けで連結され、接着剤の硬化または固化時の収縮または応力により局部的な凸部または凹部が形成されたものであることが好ましい。この場合には、反射ミラーとロッドとを連結すると同時に接着剤の硬化または固化に伴って反射ミラーの表面に局部的な凸部又は凹部が形成されるので、局部的な凸部または凹部と大域的凹部とが同心状に形成可能となる。したがって、アクチュエータの駆動で可変形ミラーを大域的に凹に変形させることで、可変形ミラーに局部的に生じさせた凸部または凹部を中心にして大域的な凹部が形成され、レーザービームエネルギーあるいは周辺の強度斑を中心の強度斑の周辺に集中させて電界強度をさらに強くするので、任意の密度のフィラメントが生成される。しかも、特定の局部的な凸部または凹部を中心に反射ミラー全体を大域的に凹部を形成するようにアクチュエータを駆動させて変形させれば、ビーム断面上の任意の位置に単一あるいは任意密度のフィラメントを発生させ得る。
さらに、反射ミラーの反射面に形成される局部的な凸部または凹部は、上述の如き接着剤の固化時のミラーの局部的変形によって形成される場合に限られず、反射ミラーの表面の鏡面に形成される蒸着膜の厚さを制御することによって形成するものでも良い。この場合には、反射ミラーの表面に形成される局部的な凸部または凹部の位置はアクチュエータが連結される位置に限定されない。
また、本発明のフィラメント発生装置は、アクチュエータは反射ミラーの背面に固着されているロッドを含み、該ロッドが当該アクチュエータの可動部に対して切り離し可能に連結されているものであることが好ましい。この場合には、反射ミラーに固着されたロッドとアクチュエータの駆動部に固着された可動部との切り離しによって、可変形ミラーの取り替えを可能とする。
請求項1記載の発明にかかる超短パルスレーザビームのフィラメント形成方法によれば、超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える反射ミラーの局部的な凸部または凹部の存在により、反射後の超短パルスレーザビームの波面に局所的な空間変調が与えられ、これが起点(種)となってフィラメントがビーム伝播の過程で生成されるので、反射ミラーの表面の局部的な凸部または凹部の存在によりビーム断面の任意位置に安定してフィラメントが生成される。したがって、反射ミラー表面の局部的な凸部または凹部を任意の位置に形成することで、ビーム断面の任意の位置に一意的にフィラメントを連続して安定的に形成できる。
また、請求項2記載の発明にかかるフィラメント形成方法によれば、超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的凸部または凹部により反射したビーム断面の任意の位置に形成された強度斑の周りに、大域的な凹部により反射した超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を集合させて任意の位置の強度斑の電界強度をさらに強くすることができるので、反射ビーム断面の任意の位置に任意の密度若しくは単一のフィラメントをさらに容易に安定生成させることを可能とする。
また、請求項3記載の発明にかかるフィラメント形成方法によれば、局部的凸部または凹部により形成される強度斑と大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑の集合とが予め位置関係を関連づけて行えるので、より確実にビーム断面の任意位置の強度斑の電界強度をさらに強くすることができ、より容易にフィラメントをビーム断面の任意位置に形成できる。
また、請求項4記載の発明にかかるフィラメント形成方法によれば、局部的凸部または凹部により反射後のビーム断面の任意の位置に一意的に形成される強度斑とは独立して大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギの集合あるいは強度斑の集合を制御できるので、大域的凹部の曲率、曲率中心位置、形状などを制御することによりビーム断面におけるフィラメントの形成位置、強度、密度などを制御できる。
さらに、請求項5記載のフィラメントの形成方法によると、大域的凹部の形成位置を制御することでビーム断面上におけるフィラメントの発生位置を制御することが可能であるので、反射ミラーの表面のフィラメント生成の起点となる局部的な凸部または凹部の位置を変更しなくとも、反射ミラー表面に形成される大域的凹部の形成位置を制御することでフィラメントが顕著に形成される位置、高密度のフィラメントが形成される位置を制御できる。
また、請求項6記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、超短パルスレーザビームが照射される領域内で超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーを超短パルスレーザビームの光路上に配置するだけで、反射ビームの波面の任意の位置即ち局部的な凸部または凹部に応じた位置に局所的な空間変調を与え、これが起点(種)となってフィラメントをビーム伝播の過程で形成することを可能とする。このフィラメントは、反射ミラーの表面の局部的な凸部または凹部の存在により安定して生成されることから、局部的な凸部または凹部を任意の位置に形成することで、ビーム断面の任意の位置に一意的に連続して形成できる。
また、請求項8記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、局部的凸部または凹部により反射後のビーム断面の任意の位置に一意的に形成される強度斑とは独立して大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギの集合あるいは強度斑の集合を制御できるので、第1の反射ミラーの位置制御あるいは交換による局部的凸部または凹部のビーム断面上における位置変更と、大域的凹部の曲率、曲率中心位置、形状などの制御により、ビーム断面におけるフィラメントの形成位置、強度、密度などを制御できる。即ち、反射ビームの波面に局所的な空間変調を与える局部的凸部または凹部を反射面に有する第1の反射ミラーとビーム断面の強度斑の周りに相当する位置に第1反射ミラーの局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を形成する反射面を有する第2の反射ミラーとを独立して制御できるので、第1の反射ビームのx−y方向への位置制御あるいは異なる位置に局部的凸部または凹部を有する別種の第1の反射ミラーとの交換による入力ビームに対する局部的凸部または凹部の位置修正を可能とすると共に、第2の反射ミラーによる大域的凹部の曲率の変化を任意に可能とする。
また、請求項7並びに9記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、任意の曲率あるいは形状に可変形ミラーを変形させることにより、反射後のビーム断面の任意位置に超短パルスレーザビームのエネルギあるいは強度斑を集合させる大域的な凹部を反射面に形成できるので、その反射面で反射された超短パルスレーザビームのビーム断面には可変形ミラーの局部的な凸部または凹部でフィラメント発生起点となる強度斑が生成されると同時に、ミラー反射面の大域的な凹部によって強度斑の周辺にさらに超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑が集合して、大気などでの伝播中に任意の密度あるいは単一のフィラメントが生成される。しかも、ビーム断面上における大域的な凹部の形成位置を可変形ミラーの変形によって制御することで、ビーム断面上におけるフィラメントが発生する位置を制御できる。
また、請求項10記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、アクチュエータにより大域的な凹部または凸部を形成する際の中心となりうるアクチュエータの軸と同軸上に局部的凸部または凹部を形成できるので、レーザービームエネルギーを強度斑の周辺に集中させて、局部的な凸部あるいは凹部での反射より形成される起点を中心にしてエネルギを合流させ、任意の密度のフィラメントを生成させ得る。しかも、可変形ミラーの裏面にアクチュエータの先端を直付けする接着剤の硬化または固化に伴って可変形ミラーの反射面に局部的な凸部または凹部を形成するようにしているので、局部的な凸部または凹部の形成が簡単である。
請求項11記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、反射ミラーの表面に形成される局部的な凸部または凹部の位置は、可変形ミラーがアクチュエータに連結される位置に限られず、反射面の任意の位置に形成できるので、フィラメントの生成の起点となる強度斑の位置をアクチュエータが連結される位置に限定されない。
また、請求項12記載の発明にかかるフィラメント形成装置によれば、可変形ミラーの反射面の反射特性の劣化など、反射ミラーに不具合が発生したときには、反射ミラーの裏面に連結されたロッドをアクチュエータ本体から切り離すことによって、反射ミラー部分だけの交換を可能とし、アクチュエータを含む支持部材側の装置全体はそのまま再使用できるので経済的である。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のフィラメントの形成方法は、局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーに超短パルスレーザビームを照射し、局部的凸部または凹部により反射したビーム断面の任意の部位に強度斑を作ることでフィラメント発生の起点とするものである。
即ち、局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーを超短パルスレーザビームの光路上へ介装することにより、超短パルスレーザビームが反射する際に、ミラー表面の局部的な凸部または凹部に応じた局所的な空間変調がビームの波面に与えられ、これが起点(種)となってフィラメントをビーム伝播の過程で形成する。このフィラメントは、反射ミラーの表面の局部的な凸部または凹部の存在により安定して生成されることから、局部的な凸部または凹部を任意の位置に形成することで、ビーム断面の任意の位置に一意的に連続して形成される。尚、局部的な凸部または凹部は、反射ミラーの表面・反射面のビームが照射される領域内の任意の位置に少なくとも1つは設けられるが、必要に応じて2カ所以上設けることも可能である。
ここで、局部的凸部または凹部により強度斑を作る工程と同時にあるいは前後して、局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を有する反射ミラーで超短パルスレーザビームを反射させることにより、超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を大域的凹部の中心に向けて集合させるようにすれば、フィラメント生成の起点となる強度斑の電界強度をより強くしてビーム伝播中のフィラメント生成をより確実なものとできる。より具体的には、局部的凸部または凹部の周りあるいはビーム断面の局部的な凸部または凹部の周りに相当する位置に、局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を有する反射ミラーで超短パルスレーザビームを反射させることにより、反射ビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を中心となる強度斑の周りに集合させて、フィラメント生成の起点となる強度斑の電界強度をより強くしてビーム伝播中のフィラメント生成をより確実なものにすると共に反射ビーム断面の任意の部位に任意の密度のフィラメントを生成させることを可能とする。
また、大域的な凹部の形成位置を制御することで、ビーム断面上におけるフィラメントの発生位置を制御できる。即ち、反射ミラーの反射面に予め形成されている局部的な凸部または凹部により、ビーム伝播の過程でビームの波面にフィラメントを形成する起点(種)となる局所的な空間変調がビームが照射される領域内の局部的な凸部または凹部の数だけ与えられて反射ビームに形成されるが、その内の一部の強度斑について超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑が集合するように大域的凹部を反射面に形成すれば、大域的凹部の中心にある強度斑の電界強度がより強くされることによって、更には周辺の強度斑が集合ないし合流することによって、ビーム断面中の大域的凹部の中心に位置する場所に確実により密度の高いあるいは強いフィラメントが生成される。そこで、大域的な凹部の形成位置を制御することで、ビーム断面上の任意位置に任意密度あるいは数のフィラメントを発生させるように制御できる。
上述のフィラメント発生起点の生成工程と超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を強度斑の周りに集合させる工程とは、同時に実施する場合ばかりでなく、いずれかを先に実施しても良い。しかし、同時あるいは超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を強度斑の周りに集合させる工程を後で実施する場合の方が、幾つか発生しているフィラメント発生起点のうちの1つあるいは複数の強度斑の電界強度をさらに強くしてフィラメントの生成を促すことが容易である。
ここで、フィラメント発生の起点となる強度斑を生成する工程と超短パルスレーザビームのエネルギを前記強度斑の周りに集合させる工程とを同時に実施するフィラメント形成方法としては、例えば反射面に局部的な凸部または凹部を有しかつこの局部的な凸部または凹部の周りに局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部を形成するように任意に変形可能な可変形ミラーの採用である。この場合には、局部的凸部または凹部により形成される強度斑の生成位置と大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑の集合位置とが予め関連づけられており、ビーム断面の任意位置の強度斑の電界強度をより確実にさらに強くする。
また、フィラメント発生の起点を生成する工程と超短パルスレーザビームのエネルギを強度斑の周りに集合させる工程とを連続的に実施するフィラメント形成方法としては、例えば局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーと局部的凸部または凹部に比して大域的な凹部をビーム断面の局部的な凸部または凹部の周りに相当する位置に形成する反射ミラーとの別々の反射ミラーで順番に反射させることがある。この場合には、局部的凸部または凹部により反射後のビーム断面の任意の位置に一意的に形成される強度斑とは独立して大域的凹部により起こる超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑の集合が制御される。
尚、独立制御可能な複数のアクチュエータを備えることによって反射面が任意に変形可能な可変形ミラーを用いる場合には、少なくとも搭載されたアクチュエータの数の大域的凹部が反射面に形成されることから、各大域的凹部の中心に相当する位置ごとに、あるいはその周辺に局部的な凸部または凹部を設けることが好ましい。
図1および図2に本発明にかかる超短パルスレーザビームのフィラメント形成装置の一実施形態を示す。このフィラメント形成装置は、独立制御可能な複数のアクチュエータを備える可変形ミラーを用いたものであり、反射面が任意に変形可能な反射ミラー(本明細書では可変形ミラーと呼ぶ)2と、該可変形ミラー2の背面側に連結されて可変形ミラー2に対して変位を与えるアクチュエータ8とを備え、アクチュエータ8の駆動によって可変形ミラー2を大域的に変形可能としたものである。
ここで、可変形ミラー2としては、独立して制御可能な複数本のアクチュエータ8の駆動により反射面が任意に変形可能な薄肉の平面ミラーが採用されている。本実施形態の場合、アクチュエータ8の駆動により所望の大域的凹部を容易に形成できる程度の剛性を有するものであり、例えば縦横寸法が100×100(mm)程度の正方形状のミラーにおいては厚さ3mm程度の薄肉の平面鏡の使用が好ましい。
反射ミラー2の背面はアクチュエータ8に連結され、アクチュエータ8を介してフレーム1に支持されている。本実施形態では、13本のアクチュエータ8が可変形ミラー2の裏面全域にほぼ均等な間隔で縦横並びに対角線上に配置されているが、この本数に特に限られるものではない。
アクチュエータ8は、反射ミラーの背面に固着されているロッド3を含み、該ロッド3が当該アクチュエータ8の可動部(本実施形態ではロッドホルダ4)に対して切り離し可能に連結されている。例えば、アクチュエータ8は、駆動素子6の先端に固定されているロッドホルダ4の少なくともロッド3を固定する端部側にロッド3を嵌め込む孔を設け、ロッド3の後端側を嵌め込んだ状態でロッド3をねじ5で締め付けることによって着脱可能に固定されている。本実施形態では、ロッドホルダ4のねじ孔に螺合されたねじ5の先端でロッド3の外周面を押しつけることによって摩擦力でロッド3を固定するようにしているが、場合によってはピンなどで着脱可能に連結しても良い。ロッド3を簡単に着脱できる構造とすることによって、可変形ミラー2の反射特性が劣化した場合など、可変形ミラー2の交換が必要となった場合には、ビス5を弛めてロッドホルダ4からロッド3を取り外すことで、劣化した可変形ミラー2(裏面に接着されたロッド3を含む)だけを交換することができる。即ち、ロッドホルダ4、アクチュエータ8及び支持フレーム1はそのまま再利用できるので経済的である。
アクチュエータと可変形ミラー2との連結は、本実施形態の場合、エポキシ樹脂系接着剤7を使って、ロッド3の先端と可変形ミラー2の背面とを接着することによって行われている。この場合、厚さ3mmという薄肉の可変形ミラー2では、接着剤7が硬化するときの応力変化の影響がミラー表面に現れやすく、アクチュエータ8が接着された部分の可変形ミラーの表面側(反射面側)が僅かに隆起した。例えばエポキシ樹脂系接着剤7でロッド3を接着させた本実施形態の場合、0.4μmの凸部9が形成された。ここで、接着剤の硬化または固化により形成される凸部または凹部が局部的であれば、超短パルスレーザビームが反射したときに生ずるビームの波面に与えられる局所的な空間変調は、フィラメントを形成する起点となる十分なものとなる。また、接着剤を利用して生じさせた高さ0.4μm程度の隆起や窪みであれば、可変形ミラー2の鏡面を蒸着形成して製作する時、予め蒸着面手前に穴開きマスクをセットし、蒸着工程時に鏡面蒸着の膜厚を局部的にコントロールすることで局部的凸部または凹部を形成することも可能である。
ここで、可変形ミラーの厚みが大域的な凹部が形成できる程度の可撓性を有する厚さであっても、接着剤によってロッドを直付けすることにより局部的な凸部または凹部が形成されないことがある。例えば、図7は厚さ3mmの可変形ミラー2の表面形状を示す。この場合には、点状の局部的な隆起(凸部)あるいは窪み(凹部)が発生している。他方、図6には厚さ6mmの可変形ミラー2の表面形状を示す。この場合には、図6のミラーとは異なって、点状の局部的な隆起(凸部)あるいは窪み(凹部)が発生していない。これは、可変形ミラーが厚過ぎるので、接着剤の硬化時または固化時の収縮やストレスでは局部的隆起あるいは窪みが起きないものと思われる。このことから、ロッド3の接着によってミラー表面に局部的凸部または凹部を形成する場合には、厚さ2〜3mm程度のミラーを使用することが好ましい。勿論、可変形ミラー2の裏面とアクチュエータの接着剤による直付けによって局部的な凸部または凹部を形成しないのであれば、例えば蒸着膜の制御などで局部的な凸部または凹部を形成するのであれば、アクチュエータ8の駆動によって大域的な凹部が形成できる程度の可撓性を有する厚さであれば実施可能である。
また、駆動素子6としては、圧電素子(PZT:Pb−Zr−Ti)または電歪素子(PMN:Pb−Mg−Nb)などの、可変形ミラーの微小変位を可能とする駆動源が用いられている。電歪素子などの駆動素子の場合、印加電圧の大きさや方向を切り替えることで、駆動素子の変位方向・量を容易に制御できるので使用が好ましいが、これに限られるものではない。駆動素子6はフレーム1の土台に対して垂直に配置されている壁1bに固定され、可動部となるロッドホルダ4は貫通孔を有する壁1aを通して前後方向(図上左右)へ進退動可能に支持されている。可変形ミラー2は互いに平行に配置された複数のアクチュエータ8の駆動を適宜制御することによって、即ちロッド3を前方に押し出すアクチュエータ8と後方へ引き戻すアクチュエータ8あるいは駆動させないアクチュエータ8とを組み合わせることによって、可変形ミラー2の所望の領域に大域的凹部を形成するように変形させられる。
以上のように構成されたフィラメント形成装置に超短パルスレーザビームを入射し、その反射光を大気中伝播させたときにフィラメントが生成されることを以下に説明する。尚、説明を簡単にするため、一辺100mmのミラーに対して超短パルスレーザビームの直径を50√2mmとすることで、13本のアクチュエータのうちの、中心付近の5本(符号E,J,K,L,M)について注目することとした。
まず、反射面に局部的な凸部または凹部を有する反射ミラーのみを使ってフィラメントを形成する方法について説明する。図7に示すような点状の局部的な隆起(凸部)あるいは窪み(凹部)が発生している反射ミラーを超短パルスレーザビームの光路上へ介装することによって、波面が整った超短パルスビームであっても(図4(A)参照)、反射ビーム中には、ミラー表面の局部的な凸部または凹部に応じた局所的な空間変調がビームの波面に与えられ(図4(B)参照)、ビームの伝播の過程で前述のビームの波面に与えられる局所的な空間変調がさらに顕著となり(図4(C,D)参照)、これが起点(種)となってフィラメントをビーム伝播の過程で形成する。このフィラメントは、反射ミラーの表面の局部的な凸部または凹部の存在により安定して生成されることから、局部的な凸部または凹部を任意の位置に形成することで、ビーム断面の任意の位置に一意的に連続して形成される。図10は近距離におけるビーム13の断面強度分布を示し、図11は遠距離におけるビーム13の断面強度分布を示す。このように、ミラー中央部に作られた局部的凸部または凹部によって単一のフィラメント14が優先的に生成されていることが判る。超短パルスレーザビームを反射させて大気中伝播させた場合、反射したビームの断面には、強度斑によってフィラメントの起点11が生成され、さらに伝播が進む中でフィラメント14が成長することが判明した。
次ぎに、局部的凸部または凹部とそれよりも大きな大域的な凹部を有する反射ミラーを使ってフィラメントを形成する方法について説明する。図9に示すように、符号E,J,K,L,Mの5個のアクチュエータ8を駆動させ、可変形ミラー2を裏面側から引っ張って、可変形ミラー2の表面側を大域的に窪ませて変形させる。この状態においても、図3に示すように、アクチュエータによってミラー表面形状が大域的な凹部10に形成され尚かつ局部的凸部9(または凹部)が存在する特殊な表面形状が実現されている(図10参照)。これによって、局部的凸部9または凹部の周りあるいはビーム断面の局部的な凸部または凹部の周りに相当する位置に、反射ビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を中心となる強度斑の周りに集合させて、フィラメント生成の起点となる強度斑の電界強度をより強くしてビーム伝播中のフィラメント生成をより確実なものにする。図12に可変形ミラーの中央部を引っ張ったときのビーム断面の状態を示す。ビーム中央部に相当するミラー中央部のアクチュエータ(E)を引っ張ってミラー中央部に大域的凹部を形成した場合、周辺の強度斑がビーム中央に集合し高密度のフィラメント14が形成された(図12参照)。
さらに、ビーム断面上における大域的凹部の形成位置を制御することによって、フィラメント14が生成される位置を制御できる。例えば、ビーム中央部に相当するミラー中央部のアクチュエータ(E)を引っ張ってミラー中央部に大域的凹部10を形成した場合、周辺の強度斑がビーム中央に集合し高密度のフィラメント14が形成された(図12参照)。他方、反射ミラーのビームが照射される領域12内のミラー周辺部(ビーム周辺部)に相当するアクチュエータ(M)を引っ張ってミラー周辺部に大域的凹部を形成した場合、強度斑もビーム周辺部に片寄り、周辺部の方がフィラメントの形成が顕著となって高密度のフィラメント14が形成された(図13参照)。このことから、反射ミラーの表面のフィラメント生成の起点となる局部的な凸部または凹部の位置を変更しなくとも、反射ミラー表面に形成される大域的凹部の形成位置を制御することでフィラメントが顕著に形成される位置、高密度のフィラメントが形成される位置を制御できることが明らかになった。
したがって、このフィラメントは、例えば放電経路のコントロールに応用することができる。また、フィラメントを用いた伝播は屈折率の非線形効果を伴うために多波長でかつ連続なスペクトルとなり、大気環境計測などにおいて多種多様な測定種に対し同時計測にも応用できる。また、高密度のガス中で超短パルスレーザビームを伝播させる場合、大気中で伝播させる場合と比べてプラズマの発生がより顕著である。フィラメントには超高強度のレーザ電場が局在しているため、発生したプラズマとレーザ電場との相互作用により電子を加速させることが可能となる。また、発生したプラズマを光増幅媒質とした場合は誘電放出が可能となり、長尺で連続したフィラメントを用いれば増幅効率が向上する。さらに、ガラスなどの固体媒質中に超短パルス高強度レーザを伝播させる場合でもフィラメントの発生が顕著である。その伝播の際、媒質の組成が変化するために局部的に屈折率や透過率を変化させるなどして微細な加工や改質が可能であり、長尺で連続したフィラメントを用いれば導波路などの加工も容易になると考えられる。
このことから、前述のレーザ誘雷技術の他、多種同時計測による大気環境計測や、フィラメントを光増幅媒質にして誘導放出させる光増幅、電子を加速させる粒子加速、そして媒質の組成を変化させるレーザ加工などに応用可能である。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
例えば、本実施形態では図5(A)に示すような1枚の薄肉反射鏡による可変形ミラー2を用いて、局部的凸部または凹部と大域的凹部とを形成し、フィラメント発生の起点を生成する工程と、超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を中心の強度斑の周りに集合させる工程とを同時に実施させる例を挙げて主に説明しているが、図5(B)に示すように局部的凸部または凹部を有する第1のミラー2’と大域的凹部を有する第2のミラー2”との少なくとも2枚のミラーを光路上で組み合わせ、上述の2つの工程を別々の反射ミラーで前後させて実施することも可能である。これによっても、反射ビーム断面の任意の部位に任意の密度のフィラメントを生成させたり、あるいは大域的凹部の形成位置を制御することによりフィラメントの生成位置を任意に制御することも可能である。
この局部的凸部または凹部を有する第1のミラーと大域的凹部を形成する第2のミラーとを組み合わせてフィラメントを形成する装置の場合、第1のミラーの局部的凸部または凹部と第2のミラーの大域的凹部は共に変位または変形しない固定的構成としても良いが、それぞれ可動的な構成としても良い。例えば、図14に示すように、超短パルスレーザビームの光路上に局部的凸部9を有する第1の反射ミラー2’とビーム断面の局部的凸部9の周りに相当する位置に大域的な凹部10を形成する可変形ミラーから成る第2の反射ミラー2”を配置し、超短パルスレーザビームがこれら第1及び第2のミラー2’,2”間を経由して反射する間に、ビーム断面の任意の部位に強度斑を作ってその周りあるいは複数形成された強度斑のうちの任意の1つあるいは複数の強度斑の周りに超短パルスレーザビームのエネルギあるいは周辺の強度斑を集合させるようにすることも可能である。ここで、第1の反射ミラー2’と第2の反射ミラー2”とは独立して制御可能とできるので、第1の反射ミラー2’をX−Y方向に制御可能とすることにより反射面に形成した局部的凸部9のビーム断面上における位置を変更することができる。また、可変形ミラーから成る第2の反射ミラー2”は、可変形ミラーの背面側にそれぞれ独立制御可能な複数のアクチュエータ8を備えているので、アクチュエータ8の駆動により反射面を任意の曲率の大域的凹部10としたり、あるいは大域的凹部10の曲率中心位置、形状などを制御して、ビーム断面におけるフィラメントの形成位置、強度、密度などを自在に制御できる。また、第1の反射ミラー2’は、場合によっては局部的凸部9が異なる位置に形成された別のミラーを用意しておき、これを交換することによって局部的凸部9あるいは凹部の位置を変更可能とすることもある。
また、上記実施形態においては可変形ミラー2の裏面にロッド3を接着剤7で直に接着した構造が示されたが、アクチュエータ8の駆動素子そのものあるいは駆動素子に固着された部材の先端部を直にミラー裏面に接着し、可変形ミラー2をアクチュエータ8で直接担持することもできる。