JP4614617B2 - エアゾール容器入り食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油中水型エマルションである食品において、保存性や利便性に優れるだけでなく噴射時に起泡して安定なムース状となりスプレッドとして優れた特性が付加された新規なエアゾール容器入り食品に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアゾール容器を利用して保存性や利便性を向上させた食品は既に知られている。それらの多くはホイップクリームを代表とする水中油型エマルションを対象としたものである(例えば特許文献1)。
【0003】
また、同じ水中油型ではあるが起泡していることが通常の物性のクリームと異なり通常は液状で噴射後の性状がムース状となることを特徴としたエアゾール容器入り食品(ドレッシング)も既に知られている(特許文献2)。この場合にムース状とした目的は見た目の楽しさを提供するというものでムース状となることの機能性に着目したものではない。
【0004】
また、起泡性を有する粘性食品素材を噴射剤ガスと共に加圧充填したことを特徴とするエアゾール容器入り嗜好性食品という特許も認められる(特許文献3)。この場合も対象としている食品は水中油型エマルションであるアイスクリーム等であり油中水型エマルションの食品を対象としたものでは無い。
【0005】
油中水型エマルションをエアゾール容器入り食品に適用した例としてはコーヒーオイルを乳化後にエアゾール容器に充填した例がある。この場合はコーヒーの芳香増強が目的の為、噴射時に噴霧物が空気中にも飛散してコーヒーの香りが周囲に拡散することが発明の要件となっており噴射物がムース状となることは元より想定されてはいない(特許文献4)。
【0006】
またエアゾール型ではないが弾性体の圧力により加圧された容器に常温で流動性となるバターやマーガリン等の食品を入れ、簡便にこれらの食品を取り出すことの出来る容器とその容器入り食品が報告されている(特許文献5)。この場合も、噴射剤は封入されていないので食品は単に押し出されるだけでありムース状となることは通常考えられずまたムース状に押し出されるとの記載も示唆もない。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−280232
【特許文献2】
特開平04−148662
【特許文献3】
特開平03−061450
【特許文献4】
特開昭64−086833 実施例3
【特許文献5】
特開平05−132010
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の先行例のエアゾール容器とそれに類する容器に封入した食品はそのような形態の食品とすることで利便性が付与され、またその密閉性と使用時に他の食品と直接接触しないことから衛生的に保存できるという特性を持っている。
【0009】
本発明者らもスプレッドとして用いられる食品に利便性と良好な保存性を付与する目的でエアゾール容器や加圧容器を適用する検討を行ったところ、エアゾール容器に単に各種食品を充填するだけではスプレッドとしては多くの問題点を有する食品となってしまうという事実に直面した。その問題点は次のようなものである。
【0010】
調味油等の液状油をスプレー状に噴射した場合は利便性はあるにしても▲1▼パンの切れ目の中やカナッペの上などに局所的に施与することができない▲2▼液状油であるため流れ落ちてしまう(丸いパンなどに施与できない)▲3▼直接サラダ油をなめるのと同様べたべたした不快な食感であり、いわゆるマーガリン・スプレッド類の食感とは全く異なる等スプレッドとしては問題の多い物性となる。
【0011】
特許文献5のように加圧容器に入れたマーガリン等をところてん様に押し出す場合にはノズルから細い紐状に吐出され、十分な展延性が得られずにさらに塗り広げる必要があり、また吐出物の密度が高いため利便性を優先して広範囲に吐出すると非常に多い吐出量となってしまう等、既存のスティック状やチューブ状のスプレッドに比べて保存性は優れるものの実質的な利便性が同等もしくは劣る結果となる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの問題点を解決する為に各種検討を行ったところその過程で次のような興味深い現象を観察した。その内容は以下のようなものであった。
【0013】
冷蔵温度で液体である食用油に脱脂粉乳などの食品原料を添加した水を分散させ、さらに乳化剤を加えて油中水型エマルションを調製したところ、この調製物は液状で、可塑性は有しておらず、スプレッドとして用いるには問題のある物性であった。この調製物を噴射剤とともに密閉容器にいれ、密閉容器に設けた細孔を通じて内容物を取り出したところ、予期せざることに、噴出物は起泡してムース状となり適度な可塑性を有したスプレッドとして用いるに適した性状となった。
【0014】
本発明者らは先の観察事実についてさらに検討を行った結果、ガス噴射剤と共に油中水型エマルションまたは使用に際しての軽いミキシングで油中水型エマルションとなる組成物をエアゾール容器に充填すると噴出時に油中水型エマルションがスプレー状やミスト状とはならずに起泡して安定なムース状となること、また本発明品によりムース状にパン等に塗られたスプレッドは塗布量を適切な量に制御しやすくまたそのままでさらに塗り広げる手間もなく非常に簡便に食することが可能であること等を見出し、エアゾール容器入り食品の持つ利便性と良好な保存性に加えて従前のような問題点がなくスプレッドとしての特性にも優れた本発明の新規なエアゾール容器入り食品を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明品はバター等の油中水型エマルションまたはバターオイル等の油脂と水成分を適当な乳化剤で乳化して油中水型エマルションを形成した後あるいは容器中で油中水型エマルションの形成が可能な組成物とした物を適当なガス噴射剤と共にエアゾール容器中に封入する事で得ることができる。このようにして製造したエアゾール容器入り食品はそのままあるいは噴射操作前に軽くミキシングした後に噴射すると噴出時に起泡してムース状となりスプレッドとしてこれまでにない優れた特性を示すエアゾール容器入り食品となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明品は油中水型エマルションまたは使用に際し油中水型エマルションとなる組成物、ガス噴射剤、エアゾール容器から成っている。
【0017】
本発明の油中水型エマルションまたは使用に際し油中水型エマルションとなる組成物とは油脂と水相と乳化剤から成るものあるいはバター等の元より油中水型エマルションであるものを意味している。
【0018】
本発明で用いられるそれらの組成物は少なくとも使用に際して流動性を有し、ガス噴射剤が噴射時に発泡する程度に溶解しているという性質を持っていなければならない。ここでいう流動性とはノズルから取り出すことが可能な状態ということであり必ずしも液体状態である事を意味するものではない。例えばガス噴射剤の種類と充填圧の選択によってはゲル状の組成物であってもムース状に噴出することが可能である。
【0019】
使用時に流動性を有する組成物とする為には▲1▼固体脂含量の少ない油脂を選択する。▲2▼固体脂含量の多い油脂と液体油を組み合わせて使用する。 ▲3▼油脂への親和性の高いガス(例えば炭化水素ガス)を用いて油脂の流動性を高める。▲4▼流動性を示す温度で使用する。等の方法を用いる。
【0020】
またガス噴射剤を噴射時に発泡する程度に溶解させる為には、
a)まず油相に溶解性の高いガスを選択し、組成物の内容に合わせて水相に溶解性の高いガスをさらに組合わせたり油相、水相両方に溶解し易いガスを選択する。
b)ガス噴射剤の充填圧を高める。等の方法を用いる。
【0021】
以上の流動性やガス噴射剤の溶解方法の選択は本発明の実施が家庭で使用されるエアゾール容器で用いられるのか、店頭等に備え付けのベンダー中のエアゾール容器で用いられるのか、製造工場等での細かな制御が可能なエアゾール容器で用いられるのか等を考慮して選択すれば良い。
【0022】
また本発明に用いられる食品は、水分含量が1%から75%、好ましくは2%から65%のものであるが、使用に際して流動性を有するかミキシング等で流動性を回復するものであれば先の水分含量からはずれるものも用いることができる。このことから本発明は通常スプレッドとして用いられている食品に限らず油中水型のドレッシング等他のカテゴリーの食品であっても油中水型エマルションとして用いることができ、使用に際し流動性を有するものであれば本発明を適用することができる。
【0023】
以下、本発明の内容を発明の構成別により具体的に説明する。
【0024】
本発明の乳化剤との組合わせで油中水型エマルションに用いられる油脂としては、ナタネ、大豆、コーン、ヤシ、パーム、パーム核、カカオ脂、ピーナッツ油、バターオイル等の植物油脂、乳脂肪または、牛脂、豚脂、魚油等の動物性脂肪、あるいは、これらの混合油、加工油脂等の油脂、さらにジアシルグリセロール等が使用できる。特にバターオイルのような乳脂肪を単独または他の油脂と組み合わせて用いることにより食品に好ましい風味を付与することができる。また乳脂肪を多く含むバター等を他の油脂と組合わせて用いても良い。
【0025】
本発明で油中水型エマルションを形成させる為に用いられる乳化剤はHLB値が7.0以下、好ましくは5.0以下のものが用いられる。具体的にはショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン等を単独または組み合わせて用いる。中でもグリセリン脂肪酸エステルは起泡後の泡の形状と安定性がよく、本発明に好適に用いることができる。
【0026】
先の乳化剤の添加量は例えばグリセリン脂肪酸エステルを単独で用いる場合は0.1%〜10%、好ましくは0.3%〜3%である。他の乳化剤と組合わせて用いる場合にはその添加量は0.15%〜10%、好ましくは0.3%〜6%となるように調整する。乳化剤濃度の下限付近では泡の安定性が悪くなり、上限付近では味覚に影響を与え、またコスト的にも不利となることに留意して使用濃度を決定すればよい。
【0027】
バターのような元より油中水型エマルションである食品の場合は乳化剤を添加することなく本発明に適用することができる。またバター等に乳化剤以外の食品例えば油脂、水、調味料等を混合して用いることもできる。さらにそれらの食品に乳化剤を添加して用いることも可能である。
【0028】
本発明にガス噴射剤として用いられるガスとしては亜酸化窒素、二酸化炭素、窒素、LPG、LNG等を用いることができる。それらは単独でまたは組合わせて用いることが可能である。ただし用いるに当ってはガス噴射剤の性状を考慮し、適用する食品や封入時の圧力などの設定を変える必要が生じる。
【0029】
例えば亜酸化窒素または二酸化炭素は水および油に対する溶解度が高いので25℃で300kPa程度の比較的低い充填圧でも噴出時に起泡してムース状の泡を形成することができるが先のガスに比べて溶解度が低い窒素等のガスを用いた場合にはムース状の泡を形成させるための充填圧は25℃で800kPa程度の圧が必要となる。
【0030】
また、二酸化炭素を選択した場合には噴出後の食品には酸味が付加されたものとなるのでその点を考慮して適用する食品を設計しなければならない。
【0031】
LPG等の炭化水素ガスはバター等の冷蔵温度で固体脂を多く含む油中水型エマルションに本発明を適用する場合に用いることのできるガス噴射剤である。LPG等は油脂との親和性が高いので油脂が流動性を示す温度範囲を広げることができる。
【0032】
これらのガスは互いに補完的に用いることも出来る。例えば、亜酸化窒素1容に対して窒素1容を混合して用いた場合、亜酸化窒素単独で用いた場合に比べて発泡の程度を低く抑えることができる。このことは、より安定できめの細かいムースとする必要がある場合に応用することができる。
【0033】
本発明に用いられるエアゾール容器は、既存のエアゾール食品、例えばホイップクリームに用いているスチール缶やアルミ缶などの金属製容器をそのまま用いることができる。また、高圧に耐えられるならばプラスチック製容器も対象とすることができる。さらに油中水型エマルションまたは使用に際し油中水型エマルションとなる組成物とガス噴出剤を保管する容器を別体として有し、食品の供給時に両者を混合する仕組みを持つベンダー型エアゾール容器も用いることができる。
【0034】
これらエアゾール容器入り食品の製造に当ってのガス圧、使用容器、加熱殺菌等の注意点については例えば特公平6−2041「エアゾール缶入り食品の製造方法」に記載の内容を参考とすることができる。
【0035】
以上のようにして製造された本発明のエアゾール容器入り食品は通常のスプレッドに比べてより高い温度での保管も可能である。
【0036】
また保管に際し油中水型エマルションまたは油中水型エマルションとなる組成物はエアゾール容器とは別体に保管しても良い。この場合は先に挙げたベンダー型容器中でガス噴出剤と混合された後エアゾール容器入り食品となり混合後すぐ噴出されムース状のスプレッドとして供給される。
【0037】
また容器内で水相と油相が分離している場合や、保管中に水相と油相が分離した場合においては、使用直前にミキシングするなどの操作により、油中水型エマルション状態を回復させることができる。また、冷蔵静置保管により、流動性を失った場合でも、使用直前にミキシングするなどの操作により、流動状態を回復させることができれば、本発明は実施可能である。
【0038】
以上述べた本発明品の実施形態の例を製造工程に従ってまとめると次のようになる。
【0039】
本発明品の製造に当っては油脂に乳化剤を分散溶解させる。ホモミキサーにより油脂を攪拌させながら、別途食塩等の呈味成分を必要に応じて分散溶解させた水を添加して油脂中に分散乳化させ、油中水型エマルションを形成させる。必要に応じて、色素、香料などを添加してもよい。また、油脂と水相を別々に容器に充填した後に震とうする等の方法により、エマルションを形成させることも可能である。
【0040】
また、充填前に油脂、水相またはエマルションを無菌ろ過や95℃で1分間加熱すること等により殺菌処理を行ってもよい。
【0041】
充填は、耐圧容器に必要量のエマルションを入れ、充填ガス(ガス噴射剤)を同容器に導き所用のガス圧を維持させる。容器下部に設けた充填用ノズルとエアゾール容器のノズルを連結し両ノズルを介して耐圧容器内のエマルションおよび充填ガスがエアゾール容器に充填される。
【0042】
2種以上のガスを充填する場合は、予め所用の比率で混合したガスを用いるが、各個順次充填することも可能である。また、内容物とガスの充填も別々に行うことも可能である。さらに、エアゾール容器のノズル部を容器本体に取り付ける前に内容物を容器内に投入し、ノズル部を取り付けた後ノズルを介してガスを充填することも可能である。
【0043】
以上の様にして得られた、本発明のエアゾール容器入り食品は優れた利便性と保存性を有するだけでなく、安定なムース状に噴出されることでこれまでの油中水型エマルジョン食品にはなかったスプレッドとしての優れた特性を多数有する食品と成る。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する
(実施例1)
下記配合に従って、ナタネ油を70℃に加温しモノグリセリン脂肪酸エステルを添加溶解させた。ホモミキサー(ポリトロンPT-3100;セントラル科学)を4,000rpmで油脂を攪拌しながら水を加えて、水滴を油脂中に分散させることにより油中水型エマルションを調製した。うち100gをノズル付き耐圧容器(250ml)に窒素ガスとともに充填圧800kPa(25℃)で充填した。
【0045】
ナタネ油 87.7 部
モノグリセリン脂肪酸エステル 1.3 部
水 11.0 部
【0046】
充填後室温でまたは冷蔵で保管してから、使用時に容器を3〜5回震とうしノズルから充填物を吐出させたところ、発泡しながら展延してムース状となり適量でパン表面に塗布され、適度な保型性を有したスプレッドとして用いるに好ましい性状を呈していた。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様に下記配合に従って原料を混合し原液を調製した。うち50gをノズル付き耐圧容器(90ml)に亜酸化窒素ガスとともに充填圧500kPa(25℃)で充填した。
【0048】
コーン油 90.0 部
ジグリセリン脂肪酸エステル 2.8 部
水 7.2 部
【0049】
充填後室温でまたは冷蔵で保管してから、使用時に容器を3〜5回震とうしノズルから充填物を吐出させたところ、発泡しながら展延してムース状となり適量でパン表面に塗布され、適度な保型性を有したスプレッドとして用いるに好ましい性状を呈していた。
【0050】
(実施例3)混合ガスを用いた例
水を40℃に加温し食塩およびホエイパウダーを分散溶解させ水相を調製した。大豆白絞油を70℃に加温しモノグリセリン脂肪酸エステルを添加溶解させた。ホモミキサー(ポリトロンPT-3100;セントラル科学)を4,000rpmで油脂を攪拌しながら水相を加えて、油中水型エマルションを調製した。炭酸ガス3容、窒素ガス7容の割合で混合したガスを、調製液80gとともに充填圧500kPa(25℃)でノズル付き耐圧容器(250ml)に充填した。
【0051】
大豆白絞油 94.7 部
モノグリセリン脂肪酸エステル 1.4 部
ホエイパウダー 0.3 部
食塩 0.67 部
水 2.63 部
香料 0.3 部
【0052】
充填後室温でまたは冷蔵で保管してから、使用時に容器を3〜5回震とうしノズルから充填物を吐出させたところ、発泡しながら展延して炭酸ガス単独の場合よりきめの細かいムース状となり適量でパン表面に塗布され、適度な保型性を有したスプレッドとして用いるに好ましい性状を呈していた。また風味も炭酸ガス単独の場合より酸味が抑えられスプレッドとして問題のないものであった。
【0053】
(実施例4)冷蔵保存後の物性を確認した例
水を40℃に加温し食塩および脱脂粉乳を分散溶解させ水相を調製した。なたね油とバターオイルを混合し70℃に加温しレシチンおよびモノグリセリン脂肪酸エステルを添加溶解させた。ホモミキサー(ポリトロンPT-3100;セントラル科学)を4,000rpmで油脂を攪拌しながら水相を加えて、油中水型エマルションを調製した。香料およびカロチンを添加し95℃1分間加熱殺菌を行った後調製液を25℃まで冷却した。調製液100gをノズル付き耐圧容器(250ml)に亜酸化窒素とともに充填圧500kPa(25℃)で充填した。
【0054】
なたね油 46.0 部
バターオイル(融点15℃) 25.0 部
レシチン 0.2 部
モノグリセリン脂肪酸エステル 1.3 部
香料 0.9 部
βカロチン(30%) 0.0008部
食塩 1.1 部
脱脂粉乳 0.8 部
水 24.7 部
【0055】
充填後室温でまたは5℃で保管してから、使用時に容器を3〜5回震とうしノズルから充填物を吐出させたところ、発泡しながら展延してムース状となり適量でパン表面に塗布され、適度な保型性を有したスプレッドとして用いるに好ましい性状を呈していた。
【0056】
冷蔵1ヶ月後に容器を震とうして充填物を取り出したところ、噴出物の性状は変わることなくスプレッドとして用いるに好ましい性状を維持していた。
【0057】
(実施例5)ベンダーへ適用した例
実施例4と同様に調製した油中水型エマルション100gを、底部に弁を設けたステンレス製耐圧密閉容器(直径40mm×長さ200mm)に入れ、容器上部に設けた孔より亜酸化窒素を容器内に導入し、ガス圧500kPa(25℃)を保ったまま底部の弁を開き、内容物をステンレス配管(直径8mm×長さ150mm)およびビニルチューブ(直径8mm×長さ200mm)を通して取り出したところ、発泡しながら展延し、良好なムース状となりスプレッドとして用いるに好ましい性状を呈していた。
【0058】
(実施例6)乳化処理を行わずに充填した例
常温の水に食塩を溶解させ水相を調製した。なたね油を70℃に加温しモノグリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルを添加溶解させた後25℃まで冷却した。調製油脂42.5gをノズル付き透明PET容器(90ml)に亜酸化窒素とともに充填圧200kPa(25℃)で充填し、ついで水相7.5gを亜酸化窒素とともに充填圧500kPa(25℃)で充填した。
【0059】
なたね油 83.7 部
モノグリセリン脂肪酸エステル 0.9 部
ポリグリセリン脂肪酸エステル 0.4 部
食塩 0.1 部
水 14.9 部
【0060】
容器を20回程度震とうしたところ、水相が油相に白濁分散し油中水型エマルション状態となったことが目視により認められた。ノズルから充填物を吐出させたところ、良好なムース状に発泡した。吐出物を一部採取し光学顕微鏡により、油中に水相が分散したエマルション状態を成していることが観察された。
【0061】
(実施例7)乳化剤を添加しないバター単独の系に適用した例
28℃に加温した有塩バター100gを、実施例5のステンレス製耐圧密閉容器(直径40mm×長さ200mm)に入れ、容器上部に設けた孔より亜酸化窒素を容器内に導入し、ガス圧1MPa(28℃)を保ったまま底部の弁を開き、内容物をステンレス配管(直径8mm×長さ150mm)およびビニルチューブ(直径8mm×長さ200mm)を通して取り出したところ、発泡しながら展延し、良好なムース状を呈した。またその食感はファットスプレッド様の軽い食感であり、風味はバターそのものという従来のバターとは異なる新規な食品と言えるものであった。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、利便性、保存性等エアゾール容器入り食品として通常具備する性質だけでなく、噴出後安定なムース状を呈することでスプレッドとして優れた展延性、付着性、食感、また見た目の面白さ等多くのこれまでの食品にない特性を有する新規で有用なエアゾール容器入り食品を提供するものである。
Claims (3)
- 油中水型エマルション及び/または使用に際してのミキシングで油中水型エマルションとなる組成物を亜酸化窒素、二酸化炭素、窒素のいずれか1種以上を単独または組み合わせたガス噴射剤と共に、エアゾール容器に充填し、噴射時に油中水型エマルションである該組成物が起泡してムース状となるエアゾール容器入り食品であって、
上記油中水型エマルション及び/または使用に際してのミキシングで油中水型エマルションとなる組成物が、油脂と、水相と、グリセリン脂肪酸エステルを含む乳化剤から成るものであることを特徴とするエアゾール容器入り食品。 - 油中水型エマルション及び/または使用に際してのミキシングで油中水型エマルションとなる組成物を亜酸化窒素、二酸化炭素、窒素のいずれか1種以上を単独または組み合わせたガス噴射剤と共に、エアゾール容器に充填し、噴射時に油中水型エマルションである該組成物が起泡してムース状となるエアゾール容器入り食品であって、
上記油中水型エマルションが乳化剤を添加されていないバターまたはバターに乳化剤以外の食品を混合したものであることを特徴とするエアゾール容器入り食品。 - スプレッドとして用いられる請求項1又は2に記載のエアゾール容器入り食品。
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