JP4614037B2 - 円筒状ターゲット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜形成等に用いられるマグネトロンスパッタリング装置(特に、直流マグネトロンスパッタリング装置)に適用される円筒状ターゲットの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラスやプラスチックなどの基板に薄膜を形成する技術の一つとしてマグネトロンスパッタリング法が知られている。特表平5−501587号公報には、回転する円筒形のターゲットを使用するスパッタリングシステムが開示されている。この装置は、円筒状ターゲットの内側に磁石を有し、ターゲットの内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらスパッタを行うものである。円筒状ターゲットは、平板形状(プレーナー型)ターゲットと比較して使用効率が高く、高速成膜が可能であるという利点がある。
【0003】
円筒状ターゲットの製造方法として、特開平5−214525号公報には、ステンレスやチタンなどのバッキングチューブの外表面に、膜の材料となるスパッタすべきターゲット材料をプラズマ溶射法により付着形成する方法が開示されている。また、バッキングチューブの外表面周囲に、円筒状に製造されたターゲット材料を配置して両者の間にインジュウム等の金属を挿入して接合する方法や、バッキングチューブに相当する部分をターゲット材料で一体的に形成する方法なども知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、溶射法の場合、溶射可能な材料とバッキングチューブの材料との相性(例えば、熱膨張差)によってターゲット材料あるいはバッキンブチューブ材料が限定されるという欠点がある。インジュウム等で接合する方法は、バッキングチューブの外周面とターゲット材料の内周面に表面処理が必要である上、接合部にインジュウムを溶かし入れるための加熱装置も必要で、溶けたインジュウムが漏れないような工夫も必要となる。更に、ターゲット材料がセラミックス製の場合には、一般的にターゲット材料の熱膨張率の方が金属製のバッキングチューブ及び接合材であるインジュウムよりも小さいために、接合後の冷却時の収縮差により接合部に隙間ができてしまうという不具合が生じる。
【0005】
また、スパッタによってターゲット材料が消耗したときはターゲットを交換することになるが、溶射法又はインジュウム接合法で製造されたターゲットの場合、バッキングチューブとターゲット材料の分離が困難で、バッキングチューブの再利用(リサイクル)にも適さない。
【0006】
一方、バッキングチューブに相当する部分をターゲット材料で一体的に形成することも可能であるが、セラミックスや一部の金属材料では強度不足、あるいは機械的な耐衝撃性が低いなどの理由により、一体型ターゲットは構造体としての信頼性に欠ける。更に、高価なターゲット材料を一体的に形成するのは、製造コスト上問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ターゲット材料及びバッキングチューブの材料選択の可能性を広げるとともに、製造の簡易化を図り、再利用性を高めることができる円筒状ターゲットを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明に係る円筒状ターゲットは、円筒状のバッキングチューブの外周に中空円筒形状のターゲット材料が配置されるとともに、前記バッキングチューブと前記ターゲット材料の間に緩衝部材を介して前記バッキングチューブと前記ターゲット材料とが接合されており、前記緩衝部材として導電性フェルト又は導電性シートが用いられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、成膜の材料となるターゲット材料と、これを支持するバッキングチューブ(ターゲットホルダー)の間に緩衝部材を介在させたので、両者の熱膨張差による体積変化を緩衝部材によって吸収できる。したがって、ターゲット材料とバッキングチューブの材質に関する組合せの自由度が広がり、より適切な材料選択が可能となる。また、消耗したターゲット材料をバッキングチューブから分離する作業も容易であり、バッキングチューブの再利用が可能である。
【0010】
ターゲット材料とバッキングチューブの間に緩衝部材を設ける一態様として、圧縮変形可能なシート状の緩衝部材をバッキングチューブとターゲット材料の間に圧縮充填することが好ましい。なお、シート状の緩衝部材は予め円筒状に加工され用いられてもよい。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記導電性フェルトとしてカーボンフェルトが適用される。該カーボンフェルトは、緩衝性の観点から圧縮充填前の初期状態(以下、単に初期状態という)の密度が0.05〜0.5g/cm3であることが好ましい。
【0012】
本発明に用いるカーボンフェルトは、初期状態の厚さが0.5〜10mmであり、圧縮充填時の圧縮率が10〜80%となるものであることが好ましい。また、該カーボンフェルトは導電性の観点から初期状態における厚さ方向の体積固有抵抗が0.1〜100Ω・cmであることが好ましい。
【0013】
上記構成の円筒状ターゲットを製造する方法を提供するために、中空円筒形状を有するターゲット材料の内面に緩衝部材を設け、これにバッキングチューブを挿嵌し、当該挿入動作によって前記バッキングチューブの外周面と前記ターゲット材料の内面との間に前記緩衝部材を位置させることにより、前記ターゲット材料を前記バッキングチューブと接合させて円筒状ターゲットを得ることを特徴とする円筒状ターゲットの製造方法を提供する。
【0014】
上記製造方法の一態様として、前記ターゲット材料の内面に圧縮変形可能なシート状の緩衝部材を設け、前記バッキングチューブの挿入動作によって前記緩衝部材を圧縮して前記バッキングチューブの外周面と前記ターゲット材料の内面との間に前記緩衝部材を充填する態様がある。
【0015】
更に、カーボンフェルト等の前記緩衝部材は、圧縮充填することにより、発塵しやすい状態となるので、スパッタリング中の発塵を防止するために、前記ターゲット材料の両端内面部に耐熱性Oリングなどのシール部材を配置することが望ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係る円筒状ターゲットの好ましい実施の形態について説明する。
【0017】
まず、本発明が適用される円筒形ターゲットを用いるマグネトロンスパッタリングシステムの構成について特表平5−501587号公報を援用しながら概説する。図1は、円筒形マグネトロンスパッタリングシステムの構成図である。ただし、同図において符号14で示した円筒状ターゲットについては内部構造を示すために切断面図とした。プラズマが生成される密閉反応室10内は真空が保たれ、成膜対象の基材12が設置される。本発明の円筒状ターゲット14においては、バッキングチューブ16の外周に中空円筒状のターゲット材料20が配置されるとともに、バッキングチューブ16とターゲット材料20との間に図2に示すような圧縮変形可能なシート状の緩衝部材(本例では、導電性フェルト52)が圧縮充填されてバッキングチューブ16とターゲット材料20とが接合されている。なお、図1に示したように、バッキングチューブ16内には磁石ユニット18が収容されている。バッキングチューブ16は、水その他の冷却液が通されることにより冷却される。
【0018】
ターゲット材料20を保持したバッキングチューブ16は、ターゲット駆動装置22により長手方向の軸の回りに回転可能に支持されている。図1では、平板状の基材12が水平に保持され、円筒状ターゲット14の長手方向の軸も水平に保持されているが、基材12と円筒状ターゲット14の配置関係はこれに限定されない。
【0019】
磁石ユニット18は、バッキングチューブ16の軸に沿って平行な3列の磁極24、26、28を含む。磁極24、26及び28はそれぞれ、N極、S極、及びN極を有するように配置され、磁力線はバッキングチューブ16を貫通して反対の極性を有する隣接の磁極に入る。この磁極配置により、磁気トンネルが生成され、スパッタリング速度の高速化が達成されている。
【0020】
スパッタリングを生じさせるために必要なカソード電位Vは、DC電源30から電力線32及び滑り接点34を介してバッキングチューブ16に供給される。また、スパッタリングに必要な低圧を得るために、密閉反応室10は図示せぬ真空ポンプと連結される出口チューブ36を備えている。
【0021】
密閉反応室10には、スパッタリングに必要なガスを与えるためのガス供給手段が設けられている。第1ガス供給チューブ40は図示せぬ不活性ガス源から密閉反応室10内に配管されている。第1ガス供給チューブ40に連結されたノズル44は、円筒状ターゲット14の上部領域に不活性ガス(例えばアルゴンガス)を分配する。密閉反応室10に導入された不活性ガスはイオン化され、磁場領域内で電場の影響下にターゲット材料20の表面に衝突する。
【0022】
第2ガス供給チューブ46は、図示せぬ反応性ガス源から密閉反応室10内に配管されている。第2ガス供給チューブ46に連結されたノズル50は、基材12の付近にその幅方向にわたって反応性ガス(例えば、純酸素)を分配する。反応性ガスの分子は、イオン衝撃の結果としてターゲット表面からスパッタリングされた分子と化合して、基材12の表面に付着される所定の分子を生成する。
【0023】
図2は、本発明の実施形態に係る円筒状ターゲットの斜視図であり、図3は図2の3−3線に沿う断面図、図4はターゲット製造時の分解斜視図である。これらの図面に示したように、円筒状ターゲット14は、内筒である金属製のバッキングチューブ16と、外筒である円筒形のターゲット材料20の間に緩衝部材としての導電性フェルト52を圧縮充填することにより両者を接合して構成される。なお、導電性フェルト52に代えて導電性シートを用いることも可能であるが、以下の説明では、フェルトを例に説明する。
【0024】
ターゲット材料20は、成膜の材料から成る金属製又はセラミックス製の中空円筒形状体であり、例えば、長さ:0.4〜4m,外径:φ80〜150mm,内径:φ60〜130mm,厚み:5〜10mmのものが用いられる。具体的には、Sn、Al、Zn、Ti、Ag、Mo、Si−Zr、Si−Snなどの金属、ITO、SiC、AlドープZnO、SnドープZnOなどの導電性セラミックスが挙げられる。特に導電性セラミックスが好ましい。ターゲット材料20を支持するバッキングチューブ16は、ターゲット材料20の寸法に対応して例えば、長さ:0.4〜4m,外径:φ60〜130mm,内径:φ50〜120mm,厚み:2〜5mmのものが用いられる。バッキングチューブ16の材質としては、ステンレス、銅、チタン、モリブデンなどの金属を使用できる。導電性フェルト52は、導電性を有する繊維から成るフェルト性のシート材であり、例えば、炭素繊維から成るカーボンフェルト(又はシート)が適用される。
【0025】
図4に示したように、ターゲット材料20の内面に導電性フェルト52を設け(巻き付け)、これを専用の治具(不図示)を用いてバッキングチューブ16の外側に挿嵌する。これにより、導電性フェルト52が圧縮され、ターゲット材料20とバッキングチューブ16とが接合される。なお、バッキングチューブ16の先端部には、挿入し易いようにテーパー治具17を取り付けている。
【0026】
図5には、本実施形態で使用可能なカーボンフェルト又はカーボンシートの初期物性値の例を示す。導電性フェルト(又はシート)52は、その初期物性値(圧縮充填前の状態における物性値)として、ターゲット材料20内径とバッキングチューブ16外径の隙間よりも大きい厚さを有するものが使用される。ターゲット材料20とバッキングチューブ16の隙間寸法にバラツキが大きい場合は、カーボンシートよりもクッション性の高いカーボンフェルトを使用することにより、隙間全体に導電性物質を充填することができる。
【0027】
例えば、初期厚さ0.5〜10mm(より好ましくは1〜5mm)のカーボンフェルトを、隙間0.1〜8mm(より好ましくは、0.5〜2.5mm)に圧縮充填することにより、バッキングチューブ16とターゲット材料20とを接合する。初期厚さが0.5mmよりも小さいと、圧縮時のクッション効果が十分に発揮できない。逆に、初期厚さが10mmよりも大きいと、フェルトの特徴である断熱効果が大き過ぎるために、ターゲットとして使用したときにターゲット材料20の温度が異常に上昇して破損等の不具合の原因となり、更には、ターゲット材料20外径が大きく成りすぎるため装置上の寸法の制約から利用できなくなるという問題が生じる。
【0028】
フェルトの圧縮充填時の圧縮率は、10〜80%(より好ましくは30〜60%)とする。圧縮率が10%よりも小さいと充填密度が低すぎるために接合強度不足となる。逆に、圧縮率が80%よりも大きいとフェルトを構成している繊維が切断されて接合強度不足となるか、若しくは充填密度が大きくなり過ぎるために接合作業が困難となる。
【0029】
カーボンフェルト(又はシート)は、例えば、幅1m、長さ5mのロール状フェルト(又はシート)から、ターゲット材料20の内側面積に合う寸法に切断して使用する。ターゲット材料20の長さはバッキングチューブ16の長さよりも若干短く形成する。ターゲット材料20は、図1で説明した基材12の幅方向の長さ以上の長さ寸法を有する一体ものである必要はなく、製造容易な適当な長さに分割して複数本のターゲット材料20を連結する構造としてもよい。例えば、図6に示すように、長さ3mのバッキングチューブ16に対し、長さ295mmのターゲット材料20を10本接合する態様がある。
【0030】
上記の如く構成された円筒状ターゲット14によれば、金属製のバッキングチューブ16とセラミックス製のターゲット材料20では熱膨張率に大きな差があるが、両者の間に導電性フェルト52を位置させたことによって、その熱膨張差による寸法変化を導電性フェルト52によって吸収できる。したがって、バッキングチューブ16とターゲット材料20の材質に関する組合せの自由度が広がり、より適切な材料選択が可能となる。
【0031】
ターゲット材料20が消耗した時には、ターゲット材料20をバッキングチューブ16から分離して、新しいターゲット材料20に交換する。本実施の形態に係る円筒状ターゲット14は、消耗したターゲット材料20の分離作業も容易であり、バッキングチューブ16の再利用が可能である。
【0032】
また、シリコンカーバイト(SiC)その他のセラミックス製の中空円筒形状のターゲット材料20の場合、中空内面は加工し難く、いわゆる「焼き肌」の状態では、寸法精度があまり良くない。しかしながら、本例の円筒状ターゲット14は、ターゲット材料20とバッキングチューブ16の間にクッション性のある導電性フェルト52を圧縮充填して両者を接合しているので、ターゲット材料20の内面寸法に関して高い精度が要求されない。したがって、内周面の二次加工などが不要で製造が容易である。
【0033】
〔実施例1〕
以下、実施例によって本発明の更に具体的な態様を説明する。
【0034】
直流マグネトロンスパッタリング装置にてSiO2 薄膜を形成するための円筒状ターゲットを以下のように製造した。
【0035】
ターゲット材料20としては、外径φ152mm、内径φ138mm、長さ220mmの寸法を有する中空円筒形状のSi含浸SiC焼成体を製作し、これを6本連結することにより、全長1320mmとした。なお、ターゲット材料20の内周面及び外周面は焼き肌のままとし、焼成体両端面を切断加工して長さ220mmとした。内外径寸法精度は、焼成体製造時の変形等により約±0.5mmであった。
【0036】
ターゲット材料20を支持するバッキングチューブ16は、市販のSUS304製チューブ(JIS G 3459の記載方法で135A(外径)×Sch40(厚さ))を用い、外径φ136mm、内径φ127mm、長さ1377mmの寸法に加工することにより製作した。
【0037】
外筒であるターゲット材料20と内筒であるバッキングチューブ16は、これらの間隙に厚さ(初期状態の厚さ)2mmのカーボンフェルト(初期状態の密度は0.12g/cm3 、初期状態の厚さ方向の体積固有抵抗は8Ω・cm)を圧縮充填することにより接合する構造とした。間隙は平均で1mmであるため、この時のカーボンフェルトの圧縮率は50%となる。
【0038】
カーボンフェルトは、市販の幅1m、長さ5mのロール状フェルトから、ターゲット材料20の内面積に合う寸法、すなわち430mm×220mmに切断して使用した。
【0039】
接合工程は、カーボンフェルト切断品をターゲット材料20内面に設け(巻き付け)、これを専用の治具を用いてバッキングチューブ16の外側に挿入することにより行い、6本のターゲット材料20につきこの操作を繰り返すことにより全長1320mmのターゲット材料の接合を完了した。
【0040】
接合工程に用いる専用の治具は、内周面にカーボンフェルトを設けた(巻き付けた)ターゲット材料20を外周面で固定し、バッキングチューブ16をターゲット材料20と同軸となるようにセットして、油圧によりバッキングチューブ16をターゲット材料20に挿入できるようにしたものである。
【0041】
なお、接合に際しては、バッキングチューブ16の先端にテーパー状の治具(図4中符号17で示した部材)を取り付けることにより、接合をスムースに行うことができ、接合後はこのテーパー治具17は取り外す。
【0042】
以上のようにして得られた円筒状ターゲットを直流マグネトロンスパッタリング装置に取り付けてスパッタリングを行った。このときの背圧は1.3×10-3Pa、スパッタリング圧力は0.4Paとした。また、スパッタリングガスとしては酸素/アルゴン=1/1(体積比)の混合ガスを用いた。スパッタリングを行っている間、安定した放電を確認し、またガラス基板(図1の基材12に相当)上に所望のSiO2 薄膜が形成されていることを確認した。
【0043】
また、スパッタリングにより消耗したターゲット材料20は、前記した接合用専用治具を利用して容易にバッキングチューブ16より取り外すことができるため、バッキングチューブ16は再利用が可能である。
【0044】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0045】
図7は、本発明の他の実施形態に係る円筒状ターゲットの断面図である。図7において図3と同一又は類似の部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。図7に示すように、緩衝部材たる導電性フェルト52の発塵防止を確実にするためには、ターゲット材料20の両端内面に段加工を施し、その段差部分20Aに耐熱性Oリング53を配置することが望ましい。耐熱性Oリング53の材質としては、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリアクリルゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等が上げられる。特に耐熱性の高いシリコンゴム又はフッ素ゴムが好ましい。耐熱性Oリングの内径はバッキングチューブ16の外径よりもやや小さいものが好ましく、太さは2〜5mmであることが好ましい。
【0046】
上記耐熱性Oリング53を使用する態様の具体的実施例を以下に述べる。
【0047】
〔実施例2〕
直流マグネトロンスパッタリング装置にてSiO2 薄膜を形成するための円筒状ターゲットを以下のように製造した。
【0048】
ターゲット材料20としては、外径φ152mm、内径φ138mm、長さ220mmの寸法を有する中空円筒形状のSi含浸SiC焼成体を製作し、これを6本連結することにより、全長1320mmとした。ターゲット材料20の内周面は焼き肌のままとし、外周面は研削加工して、焼成体両端面を切断加工して長さ220mmとし、更に、両端内面部に段加工した。内径寸法精度は、焼成体製造時の変形等により約±0.5mmであった。
【0049】
ターゲット材料20を支持するバッキングチューブ16は、市販のSUS304製チューブ(JIS G 3459の記載方法で135A(外径)×Sch40(厚さ))を用い、外径φ136mm、内径φ127mm、長さ1377mmの寸法に加工することにより製作した。
【0050】
外筒であるターゲット材料20と内筒であるバッキングチューブ16は、これらの間隙に厚さ(初期状態の厚さ)2mmのカーボンフェルト(初期状態の密度は0.12g/cm3 、初期状態の厚さ方向の体積固有抵抗は8Ω・cm)を圧縮充填することにより接合する構造とした。間隙は平均で1mmであるため、この時のカーボンフェルトの圧縮率は50%となる。
【0051】
カーボンフェルトは、市販の幅1m、長さ5mのロール状フェルトから、ターゲット材料20の内面積に合う寸法に切断して使用した。ターゲット材料20の両端内面部に配置される耐熱性Oリング53の太さを考慮し、長さ方向についてはターゲット材料20の長さ寸法(220mm)よりも僅かに小さい寸法のカーボンフェルトが使用される。
【0052】
本実施例2では、シリコンゴムから成る太さ3mm,内径φ129mmの耐熱性Oリング53を用いるものとし、この場合、段差部分20Aの寸法を耐熱性Oリング53の太さよりもやや大きい5mmとする。これに対応してカーボンフェルトは、430mm×210mmの寸法のものが使用される。
【0053】
接合工程において、カーボンフェルト切断品をターゲット材料20内面に設け(巻き付け)、これを実施例1と同様に専用の治具によってバッキングチューブ16の外側に挿入し、更に、ターゲット材料20の両端内面部に耐熱性Oリング53を配置し、図8に示したように、6本のターゲット材料20につきこの操作を繰り返すことにより、全長1320mmのターゲット材料の接合を完了した。
【0054】
こうして得られた円筒状ターゲットは、実施例1と同様にスパッタリングできるとともに、耐熱性Oリング53のシール効果により長期間にわたって発塵を防止できるという利点がある。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る円筒状ターゲットによれば、中空円筒型ターゲット材料と、これを支持するバッキングチューブの間にカーボンフェルト等の緩衝部材を介在させて両者を接合する構造にしたので、ターゲット材料とバッキングチューブの材質に関する組合せの制約が少なく、より適切な材料選択が可能となる。また、本発明はターゲット材料とバッキングチューブの接合作業並びに消耗したターゲット材料をバッキングチューブから分離する作業が容易であり、バッキングチューブの再利用も可能であるため、製造コストの削減による経済的効果も大きい。
【0056】
更に、本発明に係る円筒状ターゲットは、ターゲット材料とバッキングチューブの間を緩衝部材によって隙間なく満たすことができるため、接合部に隙間が生じることがないという効果を有している。また、本発明に係る円筒状ターゲットの製造方法は実施が容易であり、円筒状ターゲットの低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円筒状ターゲットが適用される円筒形マグネトロンスパッタリングシステムの構成図
【図2】本発明の実施形態に係る円筒状ターゲットの斜視図
【図3】図2の3−3線に沿う断面図
【図4】本例の円筒状ターゲットの製造時の分解斜視図
【図5】カーボンフェルト及びカーボンシートの初期物性値の例を示す図表
【図6】複数のターゲット材料を接合した形態の例を示す断面図
【図7】耐熱性Oリングを挿入した円筒状ターゲットの断面図
【図8】複数のターゲット材料を接合した他の例を示す断面図
【符号の説明】
10…密閉反応室、12…基材、14…円筒状ターゲット、16…バッキングチューブ、17…テーパー治具、18…磁石ユニット、20…ターゲット材料、20A…段差部分、22…ターゲット駆動装置、24,26,28…磁極、30…DC電源、32…電力線、34…滑り接点、36…出口チューブ、38…真空ポンプ、40…第1ガス供給チューブ、44,50…ノズル、46…第2ガス供給チューブ、52…導電性フェルト(緩衝部材)、53…耐熱性Oリング
Claims (6)
- 円筒状のバッキングチューブの外周に中空円筒形状のターゲット材料が配置されるとともに、前記バッキングチューブと前記ターゲット材料の間に緩衝部材を介して前記バッキングチューブと前記ターゲット材料とが接合されており、前記緩衝部材として導電性フェルト又は導電性シートが用いられていることを特徴とする円筒状ターゲット。
- 圧縮変形可能なシート状の緩衝部材がバッキングチューブとターゲット材料の間に圧縮充填されていることを特徴とする請求項1に記載の円筒状ターゲット。
- 前記導電性フェルトとしてカーボンフェルトが用いられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状ターゲット。
- 前記カーボンフェルトは、前記バッキングチューブと前記ターゲット材料の間に圧縮充填される前の初期状態の厚さが0.5〜10mmであり、圧縮充填時の圧縮率が10〜80%となることを特徴とする請求項3に記載の円筒状ターゲット。
- 前記ターゲット材料は、セラミックスから成る中空円筒形状体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の円筒状ターゲット。
- 一本のバッキングチューブに複数のターゲット材料が接合されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の円筒状ターゲット。
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