JP4613008B2 - キト−オリゴマーを含む医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、医薬分野、特にリウマチ関節炎や変形性関節炎のような関節障害の治療のための発明である。
キチンとキトサンは、一般に甲殻類の殻の廃棄物から得られるバイオポリマーであるが、特定の菌から得ることもできる。キトサンはキチンから化学的脱アセチル化によって製造することができる。これは、一般にキチン中のN−アセチル結合を濃縮アルカリ(40〜50%のNaOHまたはKOH)で加水分解することにより行われる。
定義上、キトサンは一般にD-グルコサミン(GlcN)とN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAcまたはNAG)のコポリマーとして記載されており、遊離アミン基の等電点であるpH6.2より上では水に不溶であるが、pH6.2より下では溶解する(スキーム1および2参照)。キトサン中、モノマー単位の65〜100%はD-グルコサミンであり、このものは通常、65〜100%の脱アセチル化キチンとして記載されている。キトサンの化学的および生物学的性質は、脱アセチル化度(DDA)および重合度(DP)、すなわちポリマーの鎖長により直接的に影響を受ける。
pH6.2より下の溶液中で、D-グルコサミン残基のアミン基がプロトン化されているとき、キトサンは正電荷をもつポリマーである。アミンであるキトサンは弱塩基であり、カルボン酸や無機酸のような酸と塩を形成することができる。これら塩の大半は水溶性である。
その本来の形態では、キチンは水に不溶である。しかしながら、アルカリ処理を通して部分的に脱アセチル化することにより、それを水溶性にすることが可能である[1]。DDAが35〜50%の部分脱アセチル化キチンは、pHの広い範囲で水に溶解する。この形態の水溶性キチンは、キチン変換酵素にとって優れた基質であることを示している[2,3]。
さらに、不溶性キチンがキチナーゼで非常にゆっくり加水分解されるので、水溶性キチンの生成はキチナーゼを用いるキト−オリゴマーの高収率を維持するために必要な工程であることを示している[1]。
Figure 0004613008
スキーム1:完全アセチル化キチン(ポリN-アセチル−D−グルコサミン)の構造
Figure 0004613008
スキーム2:完全脱アセチル化キトサン(ポリD-グルコサミン、低いpHにおけるプロトン化フォーム)の構造
モノマーに連結するベータ−(1,4)−結合の加水分解により、高分子量のポリサッカリドから製造されるキト−オリゴマー(COs)ならびに、低分子量のキチンおよびキトサンは、より短いセグメントである。ここで、キト−オリゴマーとは、短〜中の長さのポリマー、好ましくは2〜50の範囲の重合度(DP)をもち、約360〜約10,000Daの分子量に相当するものを言う。水溶性キチン(DDA35〜50%)から製造されるCOsは、それらの水溶性を維持している。
COsは、塩酸のような強酸を用いて、高温でベータ-(1,4)-結合の加水分解に触媒作用を及ぼして化学的に、あるいは酵素的加水分解により製造される[4,5]。酵素的加水分解は、コントロールがより容易であり、条件が非常に緩和であり、物質の化学的修飾をもたらす副反応の危険性がより低いため好ましい。
関節炎は、関節部の炎症ための一般的な用語であり、時にはすべての関節障害を含むのに用いられる。変形性関節炎は、関節の表面に対するダメージと、基礎をなす骨に異常な反応が見られる、関節疾患の最も一般的な形態である。骨関節症、関節症および変形性関節症といったようなその他の用語もこの疾患を示すのに用いられる。この疾患は、主に膝、臀部および手(最も一般的)に、ならびに足、首および背中に影響を及ぼす。リウマチ性関節炎は、関節部の一般的な炎症性疾患であり、関節部の内面膜(滑膜)の炎症を引き起こす。これは、通常の骨関節症よりひどい腫れと他の徴候を生じ、関節部に深刻なダメージを引き起こし得る。
キト-オリゴサッカライドの生物学的作用
キチンおよびキトサンの生物学的作用は、文献にて数多く立証されている。
生物学的作用の研究は、脱アセチル化度(DDA)と同様に、重合度(DP)の重要性を明瞭に証明している[6]。植物中では、DP5〜7オリゴマーは、DP1〜4よりも活性である[7]。
その理由は、キト−オリゴマーを結合させるいわゆるキチナーゼ様のプロテイン(CLPs)の能力と関係している。これらのプロテインは、高い配列相同性およびファミリー18キチナーゼとの構造的関連性を共有している[8]。それらの触媒領域における単独点突然変異のために、CLPsは触媒作用が欠落しているが、通常5〜7キト−オリゴサッカライド単位を含むオリゴサッカライドの結合能力を維持している。
N-アセチル-グルコサミン、キト−オリゴサッカライドおよびヒアルロナン:
グルコサミン(GNまたはGlcN)は、糖分子における炭素2上のOH基をNH2で置換して修飾されたグルコースである。動物の細胞中で、グルコサミンは、グルコサミン6−ホスフェート(GN-6-P)およびN−アセチルグルコサミン(NAGまたはGlcNAc)として、2つの形態のみが見出されている。
アミノ糖GN-6-Pは、グルタミンとフルクトース-6-ホスフェート(F−6−P)から合成される。この反応は、グルコサミンシンターゼにより触媒作用を受け、これがアミノ糖生合成における律速工程である。GN-6-Pは、あらゆるヘキソサミンおよびヘキソサミン誘導体への前駆体である。GN-6-Pは、引き続き、アセチル補酵素Aでアセチル化されてN-アセチルグルコサミン(NAG)になり得る。
次いで、NAGはN-アセチルガラクトサミンまたはN-アセチルマンノサミンに変換され得る。これら3つのアミノ糖は、プロテインのグリコシル化ならびに糖脂質、グリコサミノグリカン(CAG)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンのためのブロック形成に重要である。多くのプロテオグリカンのバックボーンであるヒアルロナン(HA)は、NAGとグルクロン酸(GlcA)のジサッカライドくり返し単位(25,000糖単位までの)からなるポリサッカライドである。
HAはGAGの最も初期の進化形態であると考えられている。
HAは、単に軟骨、滑膜液、眼のガラス体液や脊椎動物の皮膚における重要なポリサッカライドであるだけでなく、組織編成、形態形成、ガン転移、創傷治療および炎症においても重要な役割を果たし得る[9]。
それは創傷修復の間に大量に生成され、潤滑液として作用する滑液(滑流流体)の不可欠な構成物質でもある[10]。NAGは、中皮細胞および繊維芽細胞によるヒアルロナンの合成を用量依存的に増進させる[11]。
HAは、プラズマ膜組織中に埋め込まれたHAシンターゼ(HAS)という酵素錯体により細胞から分泌される[9]。これらの酵素は、キチンシンターゼまたはセルロースシンターゼから進化したと考えられている[9]。マウスHAシンターゼ(HAS1)は、UDP-GlcAおよびUDP-NAGと共に供給されるとき、インビトロでHAを合成することができる[12]。HAS1がUDP-NAGのみと培養されると、それはキト−オリゴサッカライド(COs)を合成する[12]。生体内真核HAシンターゼの類似作用の立証は、哺乳動物におけるCOsのための新規な機能を示唆している[9]。
COsは、脊椎動物(爪蛙、ゼブラフィッシュやネズミ)の発達の間に生体内で生成される。そこで、キチナーゼ様のDG42/HASサブファミリーは、細胞分化の間にCOsとHAの両方を合成し、COsは後期原腸胚中での通常の前後軸形成にとってきわめて重要であることが示されてきた[9,12〜16]、[8]により再検討。
最近の研究は、グルコサミンの投与による関節炎の治療方法を提案している。これらの研究は、グルコサミンの投与が軟骨代謝を正常化する傾向があり、劣化を防ぎ、プロテオグリカンの合成を促進し、関節機能の修復をもたらすことを示している。
グルコサミンを用いることによる治療効果は、多数の動物およびヒトでの研究で立証されている。
米国特許第6,117,851号[17]は、(ポリ)−N−アセチルグルコサミン(ポリ-NAG)、すなわちキチンが関節炎の治療および/またはそれらの症状の緩解のために用いられ得ることを教示している。
しかしながら、内臓中で不溶性繊維のように作用するキチンは、消化・吸収されにくいようである。また、内臓環境では溶解性が乏しいために、キチンは最近発見された酸性の哺乳類キチナーゼ(AMCase)[18]、または吸収可能な低分子キチンフラグメントを生成する腸内細菌によって、効果的に加水分解されにくいようである。
しかしながら、部分的に脱アセチル化されたキチンは、いずれのpHでも水溶性であり、AMCaseまたは腸内細菌のための基質としてすぐに利用できる。
免疫応答および炎症反応に対するキト−オリゴマーの作用−軟骨細胞およびマクロファージ:
哺乳動物類において、キチンおよびキトサンは免疫賦活作用を有することが示唆されている[19〜22]。
また、キチンおよびキトサンは、創傷治療や人工皮膚代替物において数年間にわたり研究されてきた[19〜22]。これらの研究で、キチンおよびキトサンは、活性マクロファージによる酸化窒素(NO)の生成に対して顕著な阻害効果を示している。
ヘキサ−N−アセチルキトヘキサオース (GlcNAc)6 およびペンタ−N−アセチルキトペンタオース(GlsNAC5も、NOの生成を阻害したが、その効能は低い。
これらの結果は、創傷治療に対するキチン物質の効能が活性化されたマクロファージによるNO生成の阻害に少なくとも部分的には関係していることを示している[23]。
また、グルコサミンおよびN-アセチルグルコサミンの両方が、正常なヒトの関節軟骨細胞におけるNO生成を阻害し、N-アセチルグルコサミンが炎症プロセスの阻害のための新しいメカニズムを有することが示されている[24]。
ヒト軟骨グリコプロテイン-39(HCgp-39)とも呼ばれているキチナーゼ様のプロテインYKL-40は、ファミリー18キチナーゼの一種である[25]。YKL-40は、軟骨細胞、滑膜細胞およびマクロファージにより分泌される[26]。HCgp-39(YKL-40)は、高齢者および若年の関節炎患者において誘発されると思われる[28]。YKL-40は、リウマチ性関節炎(RA)において自己抗原としての役割を有することが報告されており[29−31]、非病変組織においてではなく、病人の変形性関節症軟骨および骨増殖体において発現している。
参照文献
Figure 0004613008
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発明の要約
われわれは、キト−オリゴマー(2〜50mers)を含む組成物が、関節炎のような関節障害の症状を和らげるのに著しく良好な結果をもたらすことを見出した。結果は、特にオリゴマーの投与が炎症を実質的に抑えるので、この点においてキト−オリゴマーがモノマーグルコサミンよりも驚くほど有効であると思われることを示している。
われわれはキチンのリガンド、すなわちキト−オリゴサッカライド(COs)がYKL-40または同様のキチナーゼ様プロテインに結合することによって、それらの発現を低減させ、そして/またはそれらのエピトープをマスクするか、または変化させることにより自己抗原活性を低減させることを示唆する。
われわれは、キト−オリゴマーを3〜4週間投与した後、リウマチ性関節炎を患う被験者における抗炎症効果を観察した。
これらの抗炎症効果は、YKL-40を介して軟骨細胞、マクロファージおよびおそらく骨芽細胞に影響を与え得るだろう。
予備的な結果は、キト−オリゴマーと共に培養したとき、インビトロでヒト軟骨細胞成長の誘発を示している(未公開データ)。
ここに提示の仮説によると、本発明のオリゴマー組成物は、キチナーゼ様プロテインをブロックする有益なオリゴマー基質を提供するとともに、オリゴマーが減成するにつれて、モノマーNAGおよびGlcNの公知の有益な効果を与える。
さらに、ここで、そのような水溶性ポリマーが酸性キチナーゼおよび腸内細菌叢によって与えられるキトリティック酵素による分解をいくらか許容するように、部分的に脱アセチル化されたポリマー水溶性キチンは、そのままで水溶性キト−オリゴマーおよびNAGおよびグルコサミンモノマーを供給して、同様に抗炎症効果および関節障害に対する治療効果を与えるであろうと仮定される。
第一の観点では、本発明は、少なくとも50%のキト−オリゴマーが約DP2〜50の範囲の鎖長を有し、オリゴマーの脱アセチル化度が約0〜70%の範囲にあるN-アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンのオリゴマーを含む組成物を提供する。
さらなる観点では、それを必要とする対象者の関節障害治療のために、キチンの部分脱アセチル化および部分解重合によって得られる医薬組成物が提供される。
さらなる本発明の観点は、関節障害治療用医薬品の製造に用いるキト−オリゴマーの使用を提供する。ここで、キト−オリゴマーはN-アセチルグルコサミン(NAG)とグルコサミンのオリゴマーを含み、キト−オリゴマーの鎖長はおよそ1〜50の範囲にあり、少なくとも60重量%のキト−オリゴマーは2以上の鎖長を有し、グルコサミンの脱アセチル化度は約0〜50%の範囲にある。
もう一つの観点では、本発明はヒトにおける炎症作用の治療用医薬品を製造するためのキト−オリゴマーの使用を提供する。
図面の説明
図1:サンプル1のバイオゲルP4 GPC分析。DP(ポリマー鎖長)および各鎖長のホモログが表1に挙げられている。
図2:全サンプルのMALDI−TOFにより測定されたサンプル1およびサンプル2中のキト−オリゴマーホモログ分布。分析からの相対シグナルは、DP2〜DP10からの全ホモログに対するシグナルを加え、100%に調節することにより計算される。各ホモログのシグナルは相対シグナル(%)で表される。
図3:MALDI−TOF MSにより判断された、サンプル1およびサンプル2からのキト−オリゴマーの合わされたDP分布。図2に示されたDP2〜DP10からの各DPに対するホモログを加え、合わせた相対シグナル(%)で表す。
詳細な説明
本発明の組成物は、少なくとも50%のキト−オリゴマーが約2〜50の範囲の鎖長を有し、オリゴマーの脱アセチル化度が約0〜70%(FA=0.3−1.0)の範囲にある、N-アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンのオリゴマーを含む。
ここで用いられるキト−オリゴマーという用語は、N-アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンの一方、または両方のオリゴマーおよびポリマー、すなわち最短鎖長が2(二量体)であるオリゴマー鎖を意味する。この説明と実施例に記載の通り、本組成物はとりわけ医薬品としての使用のために有用である。
ホモログという用語は、異なる配列を有していてもよい、同じモノマー比を有する同じ長さのオリゴマー鎖を規定する。すなわち、ホモログA3D2は例えばオリゴマー配列A-A-A-D-DおよびA-A-D-A-D(AおよびDは、それぞれN-アセチルグルコサミンおよびグルコサミンを意味する)を含み得る。
好ましくは、キト-オリゴマーの脱アセチル化度は、約0〜50%の範囲にあり、より好ましくは約30〜50%、さらに好ましくは約40%または約50%を含み、約40〜50%のような、約35〜50%の範囲にある。脱アセチル化度DDAは、アセチル化因子FAとして表すこともでき、ここで例えばDDA30%はFA=0.7に相当する。
好ましくは、キト-オリゴマーの少なくとも約60%が、より好ましくは少なくとも約75%が、さらに好ましくは少なくとも約85%が約2〜50の範囲の鎖長を有する。
本発明の組成物は、海老の殻のようなキチン質の原料から好適に得ることができる。キチンは、約70〜90℃、例えば約70℃、約80℃、または約90℃のような、約70〜95℃の範囲を含む、約70〜100℃の範囲にある温度で、実質的に乾燥したキチンを塩基の濃縮溶液(例えば、40〜60%のNaOHまたはKOH)中、溶解することにより、強塩基で有利に脱アセチル化され得る。
反応時間およびキチンの濃度は、所望の脱アセチル化度によって変動してよく、個々の処理装置および個々の所望の脱アセチル化度にも、容易に最適化できる。この反応は、得られたキチン/キトサンを冷水で洗浄することにより中断され、得られた溶解性キチンの溶液は、キト−オリゴマーを得るために加水分解に付してもよく、あるいはその物質を次の処理または保存のために適当な乾燥手段によって乾燥してもよい。
上記の通り、キト−オリゴマーを得るには、キチン/キトサンの酵素加水分解が好ましいが、解重合のための適当な鉱酸(例えば、塩酸あるいは亜硝酸)の使用も本発明に包まれる。いくつかのキチナーゼ活性酵素、例えばSigma−AlDrichから得られるキチナーゼ(ECNo.3.2.1.14)が入手可能であり、この点において採用することができる。また、リゾチーム(ECNo.3.2.1.17)もキチナーゼ作用のあることが見出されている(例えば、米国特許第5,262,310号参照)。
酵素培養条件(酵素/基質比、温度、pH、反応時間)は、採用される酵素の個々の活性および至適反応条件により変動し得る。実施例2で行われているように(サンプル1およびサンプル2参照;製造)、小〜中サイズのオリゴマーの所望の比を得るように、条件を最適化することができる。
より長いオリゴマーおよびポリマー(DP30以上)は、分離用クロマトグラフィーによって、あるいは高いpH(約pH9以上)での沈殿によって、所望の短および中の長さを有するオリゴマーから任意に分離することができる。
キト−オリゴマー組成物は、カプセル充填あるいは摂取用の水溶液中に溶解または懸濁できる粉末、フレークまたは繊維性材料を含む実質的に乾燥した形態で都合よく供給され得る。
そのような組成物は、実質的に前記のオリゴマー、すなわち約80〜100重量%の範囲のキト−オリゴマーのみからなっていてもよい。有用な具体例では、該組成物は約50〜90重量%のように、約25〜95重量%を含む20〜100重量%の範囲で該オリゴマーを含む。製造方法によっては、組成物は、オリゴマー塩例えばNaClまたはKCl以外の塩を相当量含み得るが、そのような余分な塩の含量は最小限に維持されるのが好ましい。
原料ポリマーの加水分解の際に適用される方法および条件によっては、全サッカライドの約50重量%未満のような、約0〜60重量%であるような量で、若干量のグルコサミンおよびNAGのモノマーが本発明の組成物中に存在する。しかし、該モノマーは全サッカライドの20重量%未満を含む約25重量%未満のような、約40重量%未満であるのが好ましい。
しかしながら、われわれの試験結果は、本発明の組成物中に存在する、ある量のモノマー、特にNAGは好ましい相乗効果を有することを示している。
さらに、この組成物は、医薬的に受け入れられる賦形剤、希釈剤、着香剤、栄養剤あるいは着色剤を含み得る。
より短いオリゴマーは、本発明の組成物の活性にとって極めて重要であると思われる。有用な具体例では、組成物の少なくとも約10重量%のオリゴマーが2〜12の鎖長を有し、より好ましくは少なくとも25重量%を含んで少なくとも15重量%、さらに好ましくはオリゴマーの少なくとも50重量%が2〜12の鎖長を有する。
ある具体例では、オリゴマーの約50重量%のような約15〜75重量%が2〜12の鎖長を有し、オリゴマーの約15〜75重量%が2〜9の鎖長を有することが好ましい。ある具体例では、オリゴマーの少なくとも70%または少なくとも約80%を含んで、少なくとも60重量%のような、少なくとも50重量%が2〜15の範囲の鎖長を有する。
本発明のもう一つの観点においては、本発明のオリゴマー組成物を含む医薬組成物が、ここに記載のように供給される。
医薬組成物は、例えばグラス1杯の水に容易に溶ける乾燥形態のような、経口投与に適した形態にあるのが好ましい。
そのような形態は、粉末、顆粒、フレーク、繊維状やペースト形態を含む。
しかしながら、本組生物はピルまたはカプセル中に包まれることも可能である。
その他の有用な具体例では、本発明の組成物は、筋肉内、皮下または静脈内投与のような、全身投与に適した形態にある。そのような好適な形態は、標準的な医薬の実務に従って、医薬的に受け入れられる担体または賦形剤と共に溶液の形態である。この溶液の形態は、無菌で、そのpHは適切に調整され、緩衝されている。静脈内に用いるためには、溶質の全濃度は製剤を等張化するために調節されるべきである。
添付の実施例に示されるように、医薬組成物は、それを必要とする対象者のリウマチ性関節障害の治療に有用であることが見出されており、とりわけ変形性関節炎およびリウマチ性関節炎を含む群から選ばれる関節障害の治療に有用であることが見出されている。
このことから、治療は、組成物が投与される対象者において関節障害の症状を緩和することを含む。
さらなる観点において、本発明は、それを必要とする対象者の関節障害治療のための医薬組成物を提供する。該組成物は、キチンの部分脱アセチル化および部分解重合により得られる。そのような組成物は、上記のようなものが好ましい。
さらなる観点では、脱アセチル化度が約35〜約50%の範囲にある水溶性の部分脱アセチル化キチンを含む組成物が、抗炎症治療および関節障害の治療に提供される。ポリマーの水溶性は、腸内細菌叢により生成されるキトリテック酵素によるポリマーの分解をいくらか許容する。したがって、組成物が摂取されると、上記の加水分解されたキト−オリゴマーと同程度までではあるが、その場で水溶性のキト−オリゴマーおよびグルコサミンモノマーを提供する。
さらなる観点によれば、本発明は、キト−オリゴマーの鎖長が約2〜50の範囲にあり、オリゴマーの脱アセチル化度が約30〜50%の範囲を含む約0〜70%(FA=0.3-10)の範囲、好ましくは約0〜50%の範囲にある、N−アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンのオリゴマーの治療的に活性な量を、それを必要とする対象者に投与することからなる、関節障害および炎症性障害の治療方法を提供する。好ましい具体例では、この方法は、ここに記載のような組成物の投与を含む。
本発明の方法で有利に治療できる関節障害は、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、炎症性障害、およびその他のリウマチ性症状を含む。
さらなる観点によれば、本発明は、変形性関節炎およびリウマチ性関節炎のような関節障害の治療用医薬の製造のための、上記のようなキト−オリゴマーの使用を提供する。
その他の観点によれば、ヒトにおける炎症性作用に対する治療のための上記組成物の使用、ならびに骨および肉組織における炎症性作用に対する治療用薬剤の製造用組成物の使用を提供する。
実施例1
キト−オリゴマーの特徴づけ:分析方法
1A:水分および灰分含量の測定
噴霧乾燥したキト−オリゴマーのサンプル4〜5gを、105℃で3時間培養の前後に、重量測定分析により水分含量のために分析した。800℃で3時間の完全燃焼により灰分含量を測定し、乾燥重量に基づく無機残渣の重量%として計算した。
1B:直接摘定による脱アセチル化度の測定
キト−オリゴマー(500mg、水分および灰分修正済)を、密封エルレンマイヤーフラスコ中で125mlの0.060N HClと混合し、回転式振とう機(150rpm)中、22℃で一夜溶解した。続いて、125mlの蒸留水を加え、溶液をさらに少なくとも15分間振とうした。50.0gの溶液をビーカーに移し、1.00ml/分(HPLCポンプ)の流速で、0.500N NaOH溶液で滴定した。pHをpH1.8〜9の間でモニターし、pH3.75〜PH8.0の滴定曲線の変曲点間で消費されたNaOHの量に基づいて、等式DDA=VOl(ml)NaOH*16116*0.0500/100mgキトサンを用いてDDAを計算した。
各サンプルをそれぞれ3回滴定した。
1C:平均重合度(DP)測定のためのDNS検定
0.50%のオリゴマー溶液の平均重合度(DP値)を、3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)を試薬として、グルコースをスタンダードとして用いて、糖還元末端基分析により測定した。この方法は、ミラーにより最初に記載された[34]。キトサンオリゴマー溶液(5.00mg/ml 、0.5%酢酸中で水分と灰分を修正)1.00mlの量を、DNS試薬2.00mlと混合し、8分間沸騰させ、冷却し、2000×gで3分間遠心分離した。上清の光学密度を540nmで分光光度計で測定し、グルコース100mg/ml(5.55mM)の吸光度を基準として用いて、平均DP値を計算した。水(2.00mlのDNS溶液中1.00ml)を、540nmでブランクとして供給した。DP計算に用いられる平均分子量は200Daであった。各サンプルそれぞれ2回分析した。
1D:バイオゲルP4ゲル浸透クロマトグラフィー分析(GPC)
高級のバイオゲルP4を備えた2つの連結カラム(Pharmacia)(BioRaD、ミュンヘン、ドイツ)を、0.05M酢酸アンモニウム緩衝液を用い、流動相として0.23M酢酸でpH4.2に調整した。流速は27.7ml/時間であった。島津製作所製RID6A屈折インデックス検出器を用いて検出を行った。MALDI−TOF MS分析に先立って、フラクションを集め、適当に組み合わせ、凍結乾燥した。
1E:MALDI−TOF 質量分析
サンプルの調製:
2O(lμL)中のサンプルの溶液を標的上に置き、MeOH中のTHAPまたはDHBの5%溶液1μLと混合した。室温で乾燥後、MeOH1μL中にサンプルを再度溶解して、室温乾燥したとき、非常に微細な結晶の薄層を得た。質量スペクトルを[34]中にさらに詳細に記載されているようにBruker ReflexII装置(Bruker Daltonik ブレーメン、ドイツ)で記録した。
実施例2
関節炎に対する経口投与に用いられるキト−オリゴマー(COs)の製造
サンプル1(G000823-1K)の製造:
25kgの水酸化ナトリウムを80Lのブレンダー中で25kgの水に溶解し、70℃に加熱した。2.5kgのエビのキチン(Primex ehf.)を加え、15rpmで20分間撹拌した。次いで、スラリーを水で冷却し、チーズ・クロス袋(200×40cm)で濾過し、10〜15分間洗浄した。キチンゲルをブレンダー中に戻し、30%HClを加えてpH4に調節し、水を加えて80Lにした。380g(750U/g)のキチナーゼ溶液を加え、ゲルを30℃で16時間撹拌した。pHを7に調節し、溶液を10分間で70℃に加熱することによって、酵素を変性させた。冷却後、オリゴマー溶液をメッシュの大きさが280μmの濾し器を通して注入した。回転式噴霧乾燥機を用いて、吸気温度190℃、排気温度80℃で、溶液を噴霧乾燥に付した。噴霧ローター速度は20,000rpmであった。2.0kgの微細な白色のキトサン粉末を集め、室温に維持した。サンプル1と言う。
サンプル1の分析
噴霧乾燥したキト−オリゴマーサンプルを灰分と水分含量について分析した。灰分含量は53.7%(W/W)であり、水分は5.4%(W/W)であった。キト−オリゴマーおよびモノマーは40.9%(W/W)であった。脱アセチル化度(DDA)は42.3%+/-0.1%(SD)であった。
MALDI−TOF分析(表1)後のバイオゲルP4GPC(図1)は、モノマー(DP1)が主にN-グルコサミン(GlcN)がわずかに見られるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)であることを示した。二量体(DP2)は、(GlcNAc)2と(GlcNAc)(GlcN)との混合物であった。三量体(DP3)は、(GlcNAc)2(GlcN)を主な物質として含み、(GlcNAc)3をマイナーな物質として含んでいた。
主な三量体物質の配列は、GlcN-GlcNAc-GlcNAc、すなわちD-A-Aであると決定された。バイオゲルP4分析で判定されたように、より長いオリゴマー(DP4〜DP20)が少量検出された。中間の長さのオリゴマーの存在を、バイオゲルP4およびMALDI−TOF MS分析の両方によって確認した。
表1 図1に示されたのサンプル1からのバイオゲルP4GPCピークのMALDI−TOF MS
それぞれ番号の付いたピークを回収し、MALDI−TOF MSにより分析した。表は、フラクション番号および各フラクションの算出したオリゴマーおよびホモログを示す。
Figure 0004613008
A=GlcNAcおよびD=GlcN
サンプル2(G010430-1K)の製造:
このサンプルは、酵素の不活性化(10%NaOHによりpH8.0に調節)および篩過後、溶液をAlfa−Lavalフロー遠心機(LAPX型)を用いて9800rpmで清浄化したことを除いては、サンプル1のために記載したものと実質的に同じプロトコルで製造された。液体の流速は520ml/分であり、ローターを3〜5分毎に空にした。ペレットを処分し、清澄なオリゴマー溶液を実施例2のようにして噴霧乾燥した。製品の収量は粉末で1.74kgであった。
サンプル2の分析
このサンプルの灰分含量は48.3%(W/W)と測定された。NaCl含量は47.0%であった。水分含量は5.0%(W/W)であった。キト−オリゴマーおよびモノマーは、46.7%(W/W)であった。脱アセチル化度(DDA)は38.7%+/-0.9であった。
サンプル1および2のMALDI−TOF MS分析を図2および3に示す。図2は、DP2〜DP10のキト−オリゴマーのホモログ分布を表す。ホモログ分布は、2つのサンプル間で多少異なっている。図3に示すように、同じDPに異なるホモログを加えると、2つのサンプルについてDP分布が類似していることが明らかである。MALDI−TOF MS分析における異なったオリゴマーに対する強度シグナルは、定量的ではなくて定性的シグナルであり、特により高いオリゴマーのピークはより低いオリゴマーのピークよりも強度が比較的弱く現れるかもしれないことを、念頭に置くことが重要である。
実施例3
キト−オリゴマー(COs)の経口投与
関節炎を患う対象者が、水に溶かしたサンプル1の噴霧乾燥キト−オリゴマー粉末を1日用量3.0g(小さじ1杯;5.0ml, 1223mgのCOs)で、最長2年間、少なくとも5週間服用した。これらの患者の2人は連続投与後に5〜6週間投与を中止し、その後2.9gのサンプル2(小さじ1杯;5.0ml、1331mgのCOs)の服用を再開した。
投与の結果
対象者1: リウマチ性関節炎の治療
55歳の女性被験者はリウマチ性関節炎を患っていた。両手の関節の腫れがひどく、指は硬直し、動かすと痛みが走った。この被験者はサンプル1キト−オリゴマー粉末を毎日3g服用した。この被験者は4〜5週間後に顕著な改善を報告した。症状が顕著に軽減され、炎症が治まり、指の関節が正常に戻った。痛みが緩和され、この被験者は緻密な作業が再びできるほどに指をより自由に動かすことができるようになった。約2ヶ月で、彼女はキト−オリゴマー粉末の服用を5〜6週間中止した。3〜4週間のうちに、関節炎の症状が徐々に再発した。服用中止後2〜3週間で、2.9gのサンプル2(1331mgのCOs)を用いて毎日の服用を再開し、2回目の投与開始後4〜5週間で緩和したと報告されている。この被験者は、およそ21ヶ月間、炎症も痛みも伴わずに、サンプル1、2および類似のキト−オリゴマー製品を1日用量で服用している。
被験者2−4:リウマチ性関節炎の治療
この被験者らはリウマチ性関節炎を患っていた。彼らは3.0gのサンプル2キト−オリゴマー粉末を毎日服用した。1ヵ月後、被験者らはRA症状が顕著に緩和したことを報告した。炎症(関節の腫れ)が治まり、関節の硬直は和らいだ。
被験者5−14:変形性関節炎の治療
変形性関節炎を患う10人の被験者が、3.0gのサンプル1、2.9gのサンプル2および類似のキト−オリゴマー製品をそれぞれ毎日服用した。2〜4週間後、8人の被験者が炎症および痛みが軽減したという好結果を報告した。2人の被験者は、症状の軽減がないと報告した。
試験を受けた被験者全員について、サンプル1と2の間で症状の軽減に明白な差異は見られなかった。被験者が判断した通り、サンプル1および2(より高いDDA、より高いDP)とは異なって、サンプルの製造における変更は、抗関節炎活性における向上をもたらさなかった。試験は引き続き進行中である。
図1は、サンプル1のバイオゲルP4 GPC分析。DP(ポリマー鎖長)および各鎖長のホモログが表1に挙げられている。 図2は、全サンプルのMALDI−TOFにより測定されたサンプル1およびサンプル2中のキト−オリゴマーホモログ分布。分析からの相対シグナルは、DP2〜DP10からの全ホモログに対するシグナルを加え、100%に調節することにより計算される。各ホモログのシグナルは相対シグナル(%)で表される。 図3は、MALDI−TOF MSにより判断された、サンプル1およびサンプル2からのキト−オリゴマーの合わされたDP分布。図2に示されたDP2〜DP10からの各DPに対するホモログを加え、合わせた相対シグナル(%)で表す。

Claims (9)

  1. キト−オリゴマーの鎖長が2〜50の範囲にあり、脱アセチル化度が30〜50%の範囲にある、変形性関節炎およびリウマチ性関節炎を含む関節障害の治療用医薬製造のための、N−アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンのキト−オリゴマーの使用。
  2. キト−オリゴマーの少なくとも10重量%が2〜12の鎖長をもつ請求項1の使用。
  3. キト−オリゴマーの15〜75重量%が2〜12の鎖長をもつ請求項1の使用。
  4. 変形性関節炎およびリウマチ性関節炎を含む群から選択される関節障害の治療用医薬製造のための請求項1の使用。
  5. 治療が対象者の関節障害の症状を緩和する請求項1の使用。
  6. 医薬品が経口投与用である請求項1の使用。
  7. キト−オリゴマーの鎖長が2〜50の範囲にあり、脱アセチル化度が30〜50%の範囲にあるN−アセチルグルコサミン(NAG)およびグルコサミンのキト−オリゴマーを含む、変形性関節炎およびリウマチ性関節炎を含む関節障害の治療用医薬組成物。
  8. キト−オリゴマーの少なくとも10重量%が2〜12の鎖長をもつ請求項7の医薬組成物。
  9. キト−オリゴマーの15〜75重量%が2〜12の鎖長をもつ請求項7の医薬組成物。
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