JP4609333B2 - 車両の衝撃吸収構造 - Google Patents

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Description

本発明は車両の衝撃吸収構造に係り、特に、エンジンが搭載された車両において衝突安全性を高めるための衝撃吸収構造に関する。
一般に、エンジンにはオルタネータやエアコンコンプレッサなどの複数の補機が設けられており、これら補機をベルトなどを介してクランクシャフトにより駆動するようにしている。そして車両前部にエンジンを横置きに配置した車両(例えばFF車)において、これら補機は、エンジン本体よりも車両前方側又は車両後方側にはみ出す或いは突出するように位置される。つまり、補機を配設することにより、エンジンの全幅はエンジン本体の幅よりも拡大される。
かかる補機の配置により車両のクラッシュストロークが少なからず減少してしまうという問題がある。即ち、補機を含めたエンジンは、車両衝突時にほとんど変形しない剛体とみなされているため、エンジン本体から補機が車両前方側又は車両後方側にはみ出していると、その分ボディの潰れ代が少なくなり、クラッシュストロークが減少してしまう。これは車両の衝突安全性という観点からは好ましいことではない。一方、実際の設計上は、補機がエンジン本体よりも車両前方側又は車両後方側にはみ出すことはやむを得ない。従ってその突出量を抑える提案が従来よりなされている。
例えば特許文献1には、シリンダブロック一端部におけるクランク軸芯と気筒軸芯を通る仮想平面に対して一側部にウォータポンプを配設し、かつそのシリンダブロックの一側方に1又は複数のその他の補機を配設し、クランクプーリに巻き掛けた無端状の伝達ベルトの回動方向下手側をその他の補機のプーリに順次巻き掛け、ウォータポンププーリに背面を巻き掛け、クランクプーリに巻き掛ける内燃機関の補機配置構造が開示されている。これは、シリンダブロックの一側方に各補機を配置し、内燃機関の全幅の拡大を防止してクラッシュストロークを確保することを狙いとしている。
特開平9−280067号公報
しかしながら、単に補機の突出量を抑制するのみでは自ずと限界がある。
そこで、本発明の目的は、車両衝突時のクラッシュストロークを確保して衝突安全性を高めることができる車両の衝撃吸収構造を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態は、エンジンが搭載された車両の衝撃吸収構造であって、エンジン本体の側方にウォータポンプを配設し、該ウォータポンプのハウジングの少なくとも一部を車両衝突時の衝突荷重で破壊可能な材料で形成したことを特徴とする。
この本発明の一形態によれば、車両の前面衝突時、衝突物がウォータポンプに衝突した場合、その衝突荷重で、ウォータポンプのハウジングのうち前記材料で形成された部分を破壊させ、脱落させることができる。従って、その破壊ないし脱落部分の長さだけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。ここで「エンジン本体の側方にウォータポンプを配設」とは、車両の前後軸及び左右軸に関してウォータポンプがエンジン本体に対し前、後、左及び右のうちの少なくとも一つに配設されていることをいう。
ウォータポンプの場合、オルタネータなどの他の補機と異なり、ハウジングの内部は冷却水通路をなす空洞部が支配的で、インペラ等の比較的小さい或いは壊れやすい部品が収容されているだけである。よってウォータポンプのハウジングの少なくとも一部を破壊可能な材料からなすことで、車両衝突時にそのハウジングの少なくとも一部を破壊・消失させ、これと同時に内部の収容部品を脱落、破壊させ、その分のクラッシュストロークを容易に確保できる。
好ましくは、前記ウォータポンプの前記ハウジングのうち、内部に渦室を区画する渦室部が前記材料で形成されている。
渦室部は、エンジンの大きさ拡大に最も寄与し、エンジン本体から最もはみ出す部分である。従ってこの渦室部を前記材料で形成することにより、衝突時に渦室部を破壊、脱落させ、大きなクラッシュストロークを得ることが可能となる。
また、好ましくは、前記ウォータポンプの前記ハウジングのうち、前記材料で形成された部分に、前記ウォータポンプ以外の補機が連結されている。
これによれば、車両衝突時の衝突荷重でウォータポンプのハウジングの前記材料で形成された部分が破壊、脱落されたとき、当該部分と補機との連結を外し、補機を脱落させることができる。よってその分クラッシュストロークを拡大することができる。
また、好ましくは、前記ウォータポンプが、前記ハウジングの前記材料で形成された部分から延びる入口管部を有し、該入口管部に、前記ハウジングよりも車両前方側に突出する突出部材が設けられる。
これによれば、車両衝突時に、衝突物が突出部材の先端に最初に衝突する。こうなると、突出部材の先端に加えられた衝突荷重は、突出部材、入口管部と順に伝わって、ウォータポンプのハウジングの前記材料で形成された部分に伝達され、当該部分を破壊、脱落せしめる。よってその破壊長だけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。前記突出部材は前記入口管部に斜めに接続されているのが好ましい。
或いは、前記ウォータポンプが、前記ハウジングの前記材料で形成された部分から延びる入口管部を有し、該入口管部の上流端が、前記ハウジングよりも車両前方側に位置されるのも好ましい。
これによれば、衝突荷重が入口管部の先端に最初に加えられ、この衝突荷重は入口管部を伝わってウォータポンプのハウジングの前記材料で形成された部分に伝達され、当該部分を破壊、脱落せしめる。よってその破壊長だけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。
好ましくは、前記材料が発泡材料からなる。発泡材料は衝撃吸収特性及び衝撃破壊特性に優れるので、前記材料で形成された部分の破壊時に衝突エネルギを好適に吸収できると共に、当該部分を確実且つ良好な態様で破壊させることができる。
本発明によれば、車両衝突時のクラッシュストロークを確保して衝突安全性を高めることができるという、優れた効果が発揮される。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて詳述する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両の衝撃吸収構造、特に車両Vの前部の構造を示す概略側面図である。また図2は、同構造におけるエンジンを示す概略平面図である。これら図において右側が車両前方側である。本実施形態の車両VはFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車であり、その前部にはエンジンルームRが区画形成されている。このエンジンルームR内にエンジン(内燃機関)10が横置きに、即ちクランク軸18が車幅方向(車両の左右方向)と平行になるように、配置されている。本実施形態のエンジン10は直列4気筒エンジンである。ただしエンジンの形態(気筒数、燃料の種類、燃焼方式、噴射方式等)に特に制限はない。エンジンルームRの後方には乗員室Pが区画形成され、エンジンルームRと乗員室PとはダッシュパネルDで仕切られる。エンジン10の前方にはラジエータRdが配置されている。
エンジン10は、シリンダブロック12及びシリンダヘッド13を含むエンジン本体14を備える。エンジン本体14はさらに、シリンダヘッド13の頂部に取り付けられたヘッドカバー11をも含む。
エンジン10には複数の補機が設けられるが、ここでは代表的に、補機のうちの一つであるウォータポンプ15を示す。ウォータポンプ15は周知のようにエンジン冷却水をエンジン各部の被冷却部に送るように循環駆動するものである。ウォータポンプ15はブラケット16を介してエンジン本体14に取り付けられる。ウォータポンプ15は被駆動用のプーリ17を有し、クランク軸18にも同様にクランクプーリ19が設けられ、これらプーリ17,19に無端ベルト20が巻き掛けられている。これによりウォータポンプ15はクランク軸18によって駆動されることになる。
ウォータポンプ15はエンジン本体14の側方に配設されている。ここで「ウォータポンプがエンジン本体の側方に配設されている」とは、車両の前後軸及び左右軸に関してウォータポンプがエンジン本体に対し前、後、左及び右のうちの少なくとも一つに配設されていることをいう。本実施形態の場合、ウォータポンプ15はエンジン本体14の前方に配設されており、その中心軸Cがクランク軸18と平行とされている。
ウォータポンプ15はハウジング21を有し、ハウジング21は、内部に渦室を区画形成する渦室部22と、渦室部22から一体に延出して下流端がエンジン本体14に接続される吐出管部23とを有する。図中、冷却水の流れ方向を矢印で示す。
渦室部22内の渦室には、導入された冷却水を吐出管部23に向けて駆動するインペラ(図示せず)が中心軸C回りを回転可能に設けられる。そしてインペラが固定される回転軸24が中心軸Cに沿ってハウジング21から突出され、この回転軸24の先端部にプーリ17が取り付けられる。ブラケット16は、L字状の金属板からなり、その基端部16Aがシリンダブロック12の前面部12Fの右端且つ下部にボルト等の締結具で締結される。またブラケット16の支持面部16Bが基端部16Aから前方に延び、シリンダブロック12の右側面部12Rと同一面をなすように配置されている。渦室部22は支持面部16Bの右側面(被取付面)に着座されてボルト等の締結具40により締結される。渦室部22はシリンダブロック12の下部の高さ位置に配置される。こうして渦室部22は、エンジン本体14に対し前方且つ右側方にはみ出して配置されるようになる。
吐出管部23は、その断面が概ね矩形とされて内部に冷却水の吐出流路を区画形成する。吐出管部23は、冷却水流れ方向に沿って渦室部22から後斜め上方に延出して湾曲され、その後上方に直線的に立ち上げられて、シリンダブロック12の右側面部12Rの上部にボルト等の締結具41で締結される。吐出管部23はシリンダブロック12の右側面部12Rに沿って延出する。吐出管部23の下流端は、シリンダブロック12に形成された冷却水の導入口に連通接続され、これによりシリンダブロック12に導入された冷却水はエンジン本体14内の冷却水通路(ウォータジャケット)を循環される。
また、ウォータポンプ15は、渦室部22から中心軸Cに沿って延びる入口管部24を有する。入口管部24は、内部に冷却水の導入流路を区画形成し、冷却水を渦室部22内の渦室に供給する。入口管部24は、直管状に形成され、その上流端が図示しない連絡管を介してラジエータRdに接続され、ラジエータRdから低温の冷却水を供給される。入口管部24は渦室部22と別体に形成され、入口管部24の下流端部が渦室部22にボルト等の締結具により締結される。なお、ブラケット16には入口管部24の貫通を許容する穴が設けられている。
特に、ウォータポンプ15のうち、渦室部22及び吐出管部23をなすハウジング21は、ドット部分で示されるように、その全体が、車両衝突時の衝突荷重で破壊可能な材料から形成されている。かかる材料は、好ましくは内部に無数の気孔を有する発泡材料であり、より好ましくは発泡金属である。本実施形態の場合、ハウジング21は発泡アルミ製である。特にハウジング21はエンジン本体14と同種の金属からなる発泡金属からなり、エンジン本体14がアルミ製なので、ハウジング21も発泡アルミ製とされている。ハウジング21は、エンジン本体14に比べて低荷重で破壊・崩壊することができ、車両衝突時に衝突荷重を受けた際、破壊・崩壊可能である。ただしハウジング21はエンジンの通常運転時にその機能を達成するのに十分な剛性は備えている。
なお、入口管部24はそのような材料から形成されておらず、ハウジング21よりも高剛性の通常用いられる材料から形成されている。本実施形態の場合、入口管部24はアルミ又は鉄などから形成されている。また、ブラケット16については、素材自体は通常の材料(鉄など)が用いられるが、その剛性は、エンジンの通常運転時には十分であるが車両衝突時に衝突荷重を受けた際には変形・破壊可能な程度とされる。
さて、以上の構成によれば、車両の前面衝突時、衝突物(例えばラジエータRdなど)がウォータポンプ15に衝突した場合、その衝突荷重(白抜き矢印で示す)でウォータポンプ15のハウジング21、特に相対的に前方に位置する渦室部22を破壊・崩壊させ、脱落させることができる。従って、その破壊ないし脱落部分の長さだけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。図示されるように、前後方向では最大で、エンジン本体14からの前方へのはみ出し長L1だけクラッシュストロークを拡大することができる。なお、この衝突時にブラケット16は衝突荷重を受けて変形し、車両ボディの潰れを実質的に阻害しない。また、入口管部24はハウジング21の破壊と同時に脱落し、車両ボディの潰れを実質的に阻害しない。
ウォータポンプ15の場合、オルタネータなどの他の補機と異なり、ハウジング21の内部は冷却水通路をなす空洞部が支配的で、インペラ、回転軸24、ベアリング及びシール等の小さい複数の部品が収容されているだけである。またインペラは通常金属板又は樹脂からなり、衝撃を受けた際には容易に破壊、変形される。よって、ウォータポンプ15のハウジング21を破壊可能な材料からなすことで、車両衝突時にそのハウジング21部分を破壊・消失させ、これと同時に内部の収容部品を脱落、破壊させ、その分のクラッシュストロークを容易に確保できる。逆に、例えばオルタネータの場合には、ハウジングを破壊可能な材料から形成しても、その内部に高剛性のロータが入っているので、ハウジングを破壊できたとしてもロータを破壊することができず、クラッシュストロークの確保は難しいであろう。
なお、従来のウォータポンプは、シリンダブロックやタイミングチェーンカバーの一部を前方或いは後方に突出させ、そこに内蔵されたり或いは取り付けられていて、衝撃に対して破壊されないように構成されていた。これに対し本発明に係るウォータポンプはそのハウジングの少なくとも一部が破壊可能であるが故、本明細書で述べるような作用効果をもたらす。
発泡材料、特に発泡金属は、衝撃吸収特性及び衝撃破壊特性に優れた材料である。従ってハウジング21を発泡金属から形成した場合、ハウジング21の破壊過程で衝突エネルギを好適に吸収できると共に、ハウジング21を確実且つ良好な態様で破壊させることができる。
また、発泡金属を発泡アルミとした場合には、必要な衝撃吸収特性及び衝撃破壊特性を容易に得られると同時に、剛性と重量のバランスを最適化することができる。
また、エンジン本体14より車両前方側にはみ出して配置されるウォータポンプ15のハウジング21は、車両の前面衝突時に早期に衝撃を受ける部材である。従ってこのような部材を破壊可能とすることで早期の段階でウォータポンプ15を脱落させ、衝突エネルギを吸収することができる。
ハウジング21を発泡金属から形成する場合、単位体積当たりの気泡の割合即ち発泡率は、必要に応じて部位毎に設定することが可能である。発泡率は、それが高いほど衝撃吸収という点では好ましいが、冷却水漏れという点では好ましくない。従って、例えば冷却水通路を形成する内面部は発泡率を小さくし、好ましくはゼロとし、衝突物が衝突する外面部は発泡率を大きくするといった態様が考えられる。
ところで、ウォータポンプ15は、図示例とは逆に、エンジン本体14より車両後方側にはみ出して配置されることも可能である。一方、エンジン10は、前方から衝撃を受けたとき、車両Vに対して相対的に後方に移動し、衝突荷重が大きいと、ダッシュパネルDに激突して乗員室P内にまで入り込もうとする。よって乗員室P内の乗員の安全を確保するためには、エンジン本体14より車両後方側にはみ出して配置されるウォータポンプ15のハウジング21の少なくとも一部を、破壊可能な材料で形成することも好ましい。こうすることにより、エンジンの後退によりハウジング21がダッシュパネルDに激突したときにハウジング21を破壊或いは圧壊させ、ウォータポンプ15を脱落させることができる。そしてその破壊・脱落部分の前後長だけクラッシュストロークを確保し、衝突安全性を高めることができる。
なお、ウォータポンプのハウジングは、必ずしもその全体を破壊可能な材料で形成する必要はないが、渦室部についてはこれを破壊可能な材料で形成するのが好ましい。渦室部がエンジンの全幅拡大に最も寄与し、エンジン本体から最もはみ出す部分だからである。従って、例えば、破壊可能な材料で形成された渦室部のみを持つハウジングと、実質的に破壊不可能な吐出管部とを別体で構成し、これらを互いに締結する実施形態も可能である。また、吐出管部の下流端はシリンダヘッドに接続されてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を図3を用いて説明する。この第2実施形態も前記第1実施形態と大略同様であり、以下、相違点を中心に説明する。同一の構成要素には同一の参照符号が付されている。
この第2実施形態によれば、ウォータポンプ15以外の別の補機30が追加して設けられており、この補機30は例えばオルタネータであるが、エアコンコンプレッサ、パワーステアリングポンプなどであってもよい。補機30は、エンジン本体14の前方且つウォータポンプ15の上方に配置され、上部ブラケット31によってシリンダヘッド13に、また下部ブラケット32によってハウジング21の吐出管部23に、取り付けられている。補機30にもプーリ33が設けられ、プーリ33に無端ベルト20が巻き掛けられる。こうして補機30がウォータポンプ15と一緒にクランク軸18によって駆動される。
上部ブラケット31及び下部ブラケット32は、前記ブラケット16同様、エンジンの通常運転時には十分で且つ車両衝突時に衝突荷重を受けた際には変形・破壊可能な程度の剛性を有する。上部ブラケット31は、L字状の金属板からなり、その基端部がシリンダヘッド13の前面部にボルト等の締結具で締結され、その先端部に補機30がボルト等の締結具42で締結される。また下部ブラケット32は、同様にL字状の金属板からなり、その基端部32Aがウォータポンプハウジング21の吐出管部23の湾曲部内側コーナー面にボルト等の締結具により締結され、その先端部に補機30がボルト等の締結具43で締結される。
この第2実施形態によれば、車両の前面衝突時に衝突物がウォータポンプ15に衝突した場合、その衝突荷重(白抜き矢印で示す)でウォータポンプ15のハウジング21を破壊、脱落させることができる。また、このとき同時に吐出管部23が破壊されるので、吐出管部23と下部ブラケット32との連結を外し、補機30を脱落させることができる。上述したように、補機30はエンジン本体14と同様に堅い部材であるので、通常だと補機30が残存し、衝突物とエンジン本体14との間に補機30が挟まれてその分クラッシュストロークが得られない。しかしながら本実施形態のように補機30が脱落すれば、その補機30の長さ分クラッシュストロークを得ることができる。
或いは、衝突物がウォータポンプ15より先に補機30に衝突する場合もあり得る。しかしながらこの場合でも、衝突荷重を補機30から下部ブラケット32を通じて吐出管部23に伝達させ、吐出管部23を破壊することができる。これにより下部ブラケット32と吐出管部23との連結を外し、補機30に加えられた衝突荷重をも利用して補機30を脱落させることができる。
なお、補機30は上部ブラケット31によりシリンダヘッド13にも取り付けられているが、下部ブラケット32による補機30の支持が無くなれば、もはや上部ブラケット31のみによっては補機30を支持することが困難となる。また、多くの場合、衝突荷重は補機30にも直接加えられる。よってこれらのことが相俟って、補機30は上述のように殆どの場合脱落すると考えられる。
変形例として、補機30を渦室部22に連結する構成も可能である。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を図4及び図5を用いて説明する。この第3実施形態も前記第1実施形態と大略同様であり、以下、相違点を中心に説明する。同一の構成要素には同一の参照符号が付されている。
この第3実施形態によれば、高剛性の部材である入口管部24に、ハウジング21よりも車両前方側に突出する突出部材35が接続して設けられている。突出部材35は入口管部24に斜めに接続されている。より具体的には、突出部材35は、車両衝突時の衝突荷重でも破壊されぬような高剛性の部材として形成され、例えば中空又は中実の軸からなる。そして基端(接続端)から先端(自由端)に延びる入口管部24の中心軸Cに対し、基端(接続端)から先端(自由端)に延びる突出部材35の中心軸C1が、所定角度θ1をなしている。この所定角度θ1は90°より小さい角度である。突出部材35は入口管部24の長手方向の途中に、且つ入口管部24の前面部に接続され、前方に延びている。突出部材35の先端35Aは、ウォータポンプ15のハウジング21よりも車両前方側に位置される。また突出部材35の先端35Aは、入口管部24の中心軸Cに平行になるように斜めに形成されている。
この第3実施形態によれば、車両の前面衝突時に、衝突物が突出部材35の先端35Aに最初に衝突する(白抜き矢印参照)。こうなると、突出部材35の先端35Aに加えられた衝突荷重は、突出部材35、入口管部24と順に伝わって、ウォータポンプ15のハウジング21に伝達され、ウォータポンプ15のハウジング21を破壊、脱落せしめる。よって第1実施形態と同様に、ハウジング21の破壊長だけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。なお、衝突物が突出部材35に続いてハウジング21に直接衝突することも当然あり得、これによってもハウジング21の破壊を生じさせることができる。
ここで、ウォータポンプ15のハウジング21の破壊の態様については様々な態様が考えられる。一つには、突出部材35の先端35Aに加わった後ろ向きの衝突荷重のうち、突出部材35の中心軸C1方向の成分が、突出部材35を入口管部24に向けて中心軸C1方向に押し、これが、入口管部24を、ハウジング21に向けて中心軸C方向に押し、この押圧荷重によってハウジング21を破壊させる態様である。もう一つには、突出部材35の先端35Aに加わった後ろ向きの衝突荷重が、入口管部24の基端(ハウジング21との接続部)を中心としたモーメントとして働き、これによりハウジング21を破壊させる態様である。これらを複合させた態様も考えられる。いずれにしても、突出部材35及び入口管部24が高剛性の部材であるので、突出部材35に加わった荷重はハウジング21に確実に伝達され、ハウジング21の破壊を生じさせる。
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を図6及び図7を用いて説明する。この第4実施形態は前記第3実施形態に類似の構成である。即ち、入口管部24は、その上流端或いは先端24Aがハウジング21よりも車両前方側に位置されている。より具体的には、入口管部24は途中で湾曲させられ、その下流側部分24Bが中心軸C方向に延びるのに対し、その上流側部分24Cは下流側部分24Bから徐々に曲げられ、先端24Aがハウジング21よりも車両前方側に位置される。そして先端24Aの中心軸C2が下流側部分24Bの中心軸Cと90°より小さい所定角度θ2で交差するようにされている。
この第4実施形態によっても前記第3実施形態と同様の作用効果が達成される。即ち、車両の前面衝突時に、衝突物が入口管部24の先端24Aに最初に衝突し(白抜き矢印参照)、この衝突荷重は入口管部24を伝わってウォータポンプ15のハウジング21に伝達され、ウォータポンプ15のハウジング21を破壊、脱落せしめる。よってその破壊長だけクラッシュストロークを確保でき、衝突安全性を高めることができる。衝突荷重の伝達の態様としては前記第3実施形態と同様に軸方向の伝達、モーメントによる伝達及びこれらの複合などが考えられる。
以上、本発明の第1乃至第4実施形態を説明したが、本発明の実施形態は他にも様々なものが考えられる。例えば、発泡材料として発泡樹脂を用いることも可能である。また入口管部を渦室部と一体に形成し、渦室部のみを破壊可能な材料とすることも可能である。
本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限定されず、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
本発明の第1実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を示し、車両前部の構造を示す概略側面図である。 同構造におけるエンジンを示す概略平面図である。 本発明の第2実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を示し、車両前部の構造を示す概略側面図である。 本発明の第3実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を示し、車両前部の構造を示す概略側面図である。 同構造におけるエンジンを示す概略平面図である。 本発明の第4実施形態に係る車両の衝撃吸収構造を示し、車両前部の構造を示す概略側面図である。 同構造におけるエンジンを示す概略平面図である。
符号の説明
10 エンジン
14 エンジン本体
15 ウォータポンプ
16 ブラケット
22 渦室部
23 吐出管部
24 入口管部
24A 入口管部の先端
30 補機
31 上部ブラケット
32 下部ブラケット
35 突出部材
35A 突出部材の先端
θ1 所定角度
θ2 所定角度
V 車両

Claims (7)

  1. エンジンが搭載された車両の衝撃吸収構造であって、
    エンジン本体の側方にウォータポンプを配設し、該ウォータポンプのハウジングの少なくとも一部を車両衝突時の衝突荷重で破壊可能な材料で形成したことを特徴とする車両の衝撃吸収構造。
  2. 前記ウォータポンプの前記ハウジングのうち、内部に渦室を区画する渦室部が前記材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両の衝撃吸収構造。
  3. 前記ウォータポンプの前記ハウジングのうち、前記材料で形成された部分に、前記ウォータポンプ以外の補機が連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両の衝撃吸収構造。
  4. 前記ウォータポンプが、前記ハウジングの前記材料で形成された部分から延びる入口管部を有し、該入口管部に、前記ハウジングよりも車両前方側に突出する突出部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の車両の衝撃吸収構造。
  5. 前記突出部材が前記入口管部に斜めに接続されていることを特徴とする請求項4記載の車両の衝撃吸収構造。
  6. 前記ウォータポンプが、前記ハウジングの前記材料で形成された部分から延びる入口管部を有し、該入口管部の上流端が、前記ハウジングよりも車両前方側に位置されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の車両の衝撃吸収構造。
  7. 前記材料が発泡材料からなることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の車両の衝撃吸収構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH0554055U (ja) * 1991-12-19 1993-07-20 三菱自動車工業株式会社 補機部品の支持構造
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