以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る微小共振器の構成について説明する。図1は、微小共振器の平面構成(XY面に沿った平面構成)を表している。
本実施の形態に係る微小共振器は、例えば、周波数の制御用途などに使用される微小構造物(いわゆるマイクロマシン)であり、具体的には周波数の制御機構を有する高周波フィルタとして無線通信分野の携帯電話器などの通信装置に代表される電子機器に適用されるものである。この微小共振器は、例えば、図1に示したように、共振動作を担う主要部である共振回路101と、この共振回路101に設けられた3つの電極、すなわち直流電圧印加用のDC印加電極102、信号入力用の入力電極103および信号出力用の出力電極104とを備えている。これらの入力電極103および出力電極104は、例えば、いずれも共振回路101に近い側において複数に分岐されており、共振回路101から遠い側において集束されている。なお、図1では、共振回路101を模式的に表している。
次に、図1〜図8を参照して、微小共振器の詳細な構成について説明する。図2〜図8は共振回路101の構成を拡大して表しており、図2〜図4は平面構成を表し、図5〜図8は断面構成を表している。ここで、図4は全体の平面構成(XY面に沿った平面構成)を模式的に示しており、図2は図4に示した一部の領域(領域R1)を拡大して示し、図3は図4に示した他の一部の領域(領域R2)を拡大して示している。また、図5は図2に示したA−A線に沿った断面構成(YZ面に沿った断面構成)を示し、図6は図2に示したB−B線に沿った断面構成(YZ面に沿った断面構成)を示し、図7は図2に示したC−C線に沿った断面構成(XZ面に沿った断面構成)を示し、図8は図2に示したD−D線に沿った断面構成(XZ面に沿った断面構成)を示している。
共振回路101は、例えば、図2〜図8に示したように、基板1上に、絶縁層2,3と、微小共振器構造体10とがこの順に積層された構成を有している。
基板1は、主に、微小共振器構造体10を支持するものであり、例えば、シリコン(Si)などにより構成されている。絶縁層2,3は、いずれも微小共振器構造体10を基板1から電気的に分離するものであり、例えば、絶縁層2は酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成され、絶縁層3は窒化ケイ素(SiN)などの絶縁性材料により構成されている。
微小共振器構造体10は、図2〜図8に示したように、半導体プロセスを使用して形成された複数の微小な共振器素子Fを含み、その複数の共振器素子Fが電気的に共振可能となるように2次元的に配列されることにより構成された集合構造体であり、特に、上記した複数の共振器素子Fと共に、電気的に共振不能な複数の非共振器素子Nが併せて配列されたものである。この微小共振器構造体10は、所定の基体としての基板1および絶縁層2,3上(実質的には絶縁層3上)にマトリックス状に配列された共振可能な複数の共振器素子Fを有する共振器素子構造体11と、それらの基板1および絶縁層2,3上に共振器素子構造体11の周囲を囲むように配設され、複数の共振器素子Fの共振動作に寄与しない複数の非共振器素子Nを有する非共振器素子構造体12とを備えている。なお、微小共振器構造体10には、上記した入力電極103および出力電極104が組み込まれており、すなわち微小共振器構造体10は、上記したDC印加電極102と共に2種類の信号電極(入力電極103,出力電極104)を備えた構造(いわゆる3ポート型構造)を有している。
共振器素子構造体11は、微小共振器構造体10において実質的に共振動作に寄与するものであり、図2〜図4に示したように、絶縁層3上の中央領域、すなわちX軸方向における中央領域R3およびY軸方向における中央領域R4の双方により規定される領域に配置されている。この共振器素子構造体11は、例えば、図2および図3に示したように、共振器素子Fを繰り返し構成しながらY軸方向に延在する複数の電極部分11Pを含み、その複数の電極部分11PがX軸方向に隙間Gを隔てて並列に配列された構成を有している。すなわち、共振器素子Fは、上記した入力電極103および出力電極104と、電気的に振動可能な振動板とを有しており、所定の周波数の信号を通過させるものである。この「振動板」の詳細に関しては、後述する。
電極部分11Pは、例えば、図2、図3、図6および図7に示したように、所定の間隔Sを隔ててY軸方向に繰り返し配置された複数の電極パターン11PAと、その間隔Sを確保したまま各電極パターン11PAを連結しながらY軸方向に繰り返し配置されることにより、その電極パターン11PAと共に共振器素子Fを構成する複数の電極パターン11PBとを含んで構成されている。この電極部分11Pを構成する電極パターン11PA,11PBは、例えば、いずれもリン(P)が含有されたポリシリコン(Poly−Si)などの半導体材料により構成されている。電極パターン11PAは、例えば、図2、図3および図6に示したように、矩形型の平面構造および断面構造を有している。電極パターン11PBは、例えば、図2および図3に示したように、矩形型の平面構造を有していると共に、図6および図7に示したように、ビーム型(梁型)の断面構造を有しており、具体的には一端側において互いに隣り合う2つの電極パターン11PAのうちの一方の電極パターン11PAに連結されると共に他端側において他方の電極パターン11PAに連結された鳥居型の断面構造を有している。なお、上記した共振器素子Fのうちの「振動板」とは、例えば、図6に示したように、電極パターン11PBが振動部分11PBXとその振動部分11PBXを支持する2つの支持柱部分11PBYとを含んで構成されており、すなわち振動部分11PBXがその一端側および他端側に設けられた2つの支持柱部分11PBYにより振動可能に支持されている場合に、その振動部分11PBXである。
非共振器素子構造体12は、微小共振器構造体10において実質的に共振動作に寄与しないものであり、図2および図4に示したように、絶縁層3上の外郭領域、すなわちX軸方向における2つの端部領域R5およびY軸方向における2つの端部領域R6の双方により規定される領域に配置されている。この非共振器素子構造体12は、例えば、絶縁層3上において共振器素子構造体11と並列的に形成されたものであり、上記したように、Y軸方向およびX軸方向にマトリックス状に配列された共振不能な複数の非共振器素子Nを有している。特に、非共振器素子構造体12は、例えば、Y軸方向のうちの一端側および他端側の双方、すなわち図4に示した端部領域R6において、非共振器素子Nを1列以上有していると共に、X軸方向のうちの一端側および他端側、すなわち図4に示した端部領域R5において、非共振器素子Nを2行以上有している。
この非共振器素子構造体12の構成は、上記したように、共振動作に寄与せず、かつ端部領域R5,R6において非共振器素子Nが所定の行数および列数に渡って存在する限りにおいて、自由に設定可能である。ここでは、例えば、図2および図4に示したように、非共振器素子構造体12が、端部領域R6において非共振器素子Nを1列有していると共に、端部領域R5において非共振器素子Nを2行有している。非共振器素子構造体12は、具体的には、例えば、図4に示した中央領域R4(中央領域R3,R4の双方により規定される領域(共振器素子構造体11の配置領域)を除く。)に配置されたダミーパターン12A,12Bと、端部領域R6に配置されたダミーパターン12C,12Dとを含んで構成されている。ダミーパターン12A,12Bは、例えば、図2および図5に示したように、電極部分11Pのうちの電極パターン11PA,11PBにそれぞれ対応した平面構造および断面構造を有している。ダミーパターン12Cは、例えば、図2、図5、図6および図8に示したように、複数の電極パターン11PAおよび複数のダミーパターン12Aを連結可能な矩形型の平面構造および断面構造を有している。特に、ダミーパターン12Cは、例えば、図2および図4に示したように、中央領域R3と端部領域R5との間に設けられた分離スペースPを隔てて分離されている。ダミーパターン12Dは、例えば、図2、図5、図6および図8に示したように、電極パターン11PBおよびダミーパターン12Bとは異なり、それらの電極パターン11PBおよびダミーパターン12BをY軸方向において分離した構造に相当する矩形型の平面構造および下向き凸型の断面構造を有している。この場合には、例えば、非共振器素子構造体12のうちの端部領域R5に配置された部分では、中央領域R3に配置された残りの部分から分離スペースPを隔てて分離され、すなわち電気的に分離されているために共振不能になっていると共に、中央領域R3に配置された残りの部分では、ダミーパターン12Dがビーム構造(電極パターン11PBに対応する構造)を構成していないために共振不能になっている。
ここで、上記した非共振器素子構造体12(複数の非共振器素子N)の配設範囲、すなわち「Y軸方向において非共振器素子Nを1列以上有していると共にX軸方向において非共振器素子Nを2行以上有している」配設範囲を他の構成的表現で説明すれば、以下の通りとなる。すなわち、図6に示したように、共振器素子Fを構成している電極パターン11PBが、振動部分11PBXおよび2つの支持柱部分11PBYを含んで構成されているのに対して、非共振器素子Nを構成しているダミーパターン12Dが、支持柱部分11PBYに対応する支持柱部分12DYを含むと共に振動部分11PBXに対応する部分を含まずに構成されている。この場合には、上記した支持柱部分12DYの配列数に基づいて非共振器素子Nの配設範囲を規定すれば、非共振器素子構造体12(複数の非共振器素子N)は、共振器素子Fから周囲に向かう方向、すなわち複数の共振器素子Fの配設領域(図4に示した中央領域R3,R4の双方により規定される領域)を中心として放射状に向かう方向において、支持柱部分12DYを2つ以上含んでいることとなる。
なお、入力電極103および出力電極104は、例えば、図2、図3、図5〜図7に示したように、いずれも間隔Sと共に隙間Gを経由しながらX軸方向に延在している。これらの入力電極103および出力電極104は、例えば、電極部分11P(電極パターン11PA,11PB)の構成材料と同様の材料により構成されている。
確認までに、図2および図3では、電極パターン11PA,11PB、ダミーパターン12A〜12D、入力電極103および出力電極104の配置関係を見やすくするために、電極パターン11PA、ダミーパターン12A,12C、入力電極103および出力電極104に濃い網掛を施しており、電極パターン11PBおよびダミーパターン12B,12Dに淡い網掛を施している。また、図4では、微小共振器構造体10の領域区分(共振器素子構造体11,非共振器素子構造体12の別)を見やすくするために、共振器素子構造体11の領域区分に濃い網掛を施しており、非共振器素子構造体12の領域区分に淡い網掛を施している。図2および図3と図4との間の対応関係から明らかなように、図2に示した領域R1では共振器素子構造体11と非共振器素子構造体12とが混在しており、図2に示した領域R2では共振器素子構造体11のみが存在している。なお、図2において太い一定鎖線により囲まれている領域は、微小共振器構造体10のうちの図2に示した範囲内における共振器素子構造体11と非共振器素子構造体12との間の境界を表している。
なお、図1〜図8に示した微小共振器は、上記した一連の構成要素、すなわち共振器素子構造体11および非共振器素子構造体12と共に、図示しない他の構成要素も併せて備えている。この「他の構成要素」としては、例えば、DC印加電極102に電圧を印加するための電源などが挙げられる。
この微小共振器では、図1〜図8に示したように、微小共振器構造体10のうちの共振器素子構造体11において、DC印加電極102を通じて一連の電極部分11Pに電圧が印加されると、その電圧印加に応じて静電力が発生するため、一連の共振器素子Fが静電力に基づいて振動することにより共振する。具体的には、図6に示したように、電極パターン11PBのうちの振動部分11PBXが、2つの支持柱部分11PBYにより両端を支持された状態において、緊張して水平に維持された位置と撓んで落ち込んだ位置との間で反復的に変位するため、一連の共振器素子Fが共振する。そして、入力電極103および出力電極104を通じて信号が入出力されることにより、所定の周波数の信号が取り出される。この際、非共振器素子構造体12のうちの一連の非共振器素子Nは共振不能に構成されているため、その一連の非共振器素子Nは共振器素子Fの共振動作に寄与しない。
次に、図1〜図12を参照して、図1〜図8に示した微小共振器の製造方法について説明する。図9〜図12は微小共振器の製造工程を説明するためのものであり、いずれも図6に対応する断面構成を示している。以下では、主に、図6および図9〜図12を参照して、微小共振器のうちの図6に示した断面構成の製造工程について言及する。なお、微小共振器を構成する各構成要素の構造的特徴に関しては既に詳しく説明したので、以下ではそれらの説明を随時省略する。
微小共振器を製造する際には、まず、図9に示したように、シリコン製の基板1上に、例えば、減圧CVD(Chemical Vapor Deposition )法を使用して酸化ケイ素などの絶縁性材料を成膜することにより絶縁層2を形成したのち、同様に減圧CVD法を使用して窒化珪素などの絶縁性材料を成膜することにより絶縁層3を形成し、これらの絶縁層2,3を積層させる。
続いて、図6および図9〜図12に示したように、絶縁層3上に、互いに直交するY軸方向およびX軸方向に配列された共振可能な複数の共振器素子Fを有するように共振器素子構造体11を形成すると共に、その共振器素子構造体11の周囲を囲むように、複数の共振器素子Fの共振動作に寄与しない複数の非共振器素子Nを有するように非共振器素子構造体12を形成することにより、微小共振器構造体10を形成する。特に、微小共振器構造体10を形成する際には、例えば、非共振器素子構造体12を絶縁層3上に共振器素子構造体11と並列的に形成する。
微小共振器構造体10(共振器素子構造体11,非共振器素子構造体12)の形成手順は、例えば、以下の通りである。
すなわち、まず、例えば、減圧CVD法を使用して絶縁層3を覆うように、リンが含有されたポリシリコンなどの半導体材料膜を形成したのち、フォトリソグラフィ処理およびドライエッチング処理を使用して半導体材料膜をパターニングすることにより、図9に示したように、所定の間隔Sを隔ててY軸方向に繰り返し配置されるように、後工程において形成される電極部分11Pのうちの一部を構成する複数の電極パターン11PAを形成する。この場合には、図2に示したように、複数の電極パターン11PAがX軸方向において隙間Gを隔てて並列に配列されるようにする。より具体的には、最終的に共振器素子Fを繰り返し構成しながらY軸方向に延在する複数の電極部分11Pを含み、その複数の電極部分11Pが隙間Gを隔ててX軸方向に配列された構成を有する共振器素子構造体11を形成可能となるように、各電極パターン11PAを配置する。なお、以下では、上記したフォトリソグラフィ処理およびドライエッチング処理を使用したパターニング処理を、単に「パターニング」と呼称する。
特に、電極パターン11PAを形成する際には、例えば、その電極パターン11PAの形成工程と同一工程において半導体材料膜をパターニングすることにより、図5および図9に示したように、複数のダミーパターン12A,12Cを併せて形成すると共に、入力電極103および出力電極104を併せて形成する。この場合には、例えば、図2および図4に示したように、ダミーパターン12Aが電極パターン11PAと同様の配置構成を有し、かつダミーパターン12Cが分離スペースPを隔てて部分的に分離されるようにすると共に、入力電極103および出力電極104が間隔Sと共に隙間Gを経由しながらX軸方向に延在するようにする。特に、最終的に非共振器素子構造体12を形成した際に、例えば、Y軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R6)において非共振器素子Nを1列以上有すると共に、X軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R5)において非共振器素子Nを2行以上有することが可能となるように、各ダミーパターン12A,12Cを配置する。ここでは、例えば、Y軸方向のうちの一端側および他端側の双方において非共振器素子Nを1列有すると共に、X軸方向のうちの一端側および他端側の双方において非共振器素子Nを2行有することが可能となるようにする。なお、確認までに説明しておけば、上記した「Y軸方向において非共振器素子Nを1列以上有すると共にX軸方向において非共振器素子Nを2行以上有する」ことは、後述するダミーパターン12Dの構成(図11参照)に置き換えて説明すれば、「複数の共振器素子Fの配設領域から周囲に向かう方向において、複数の非共振器素子Nが支持柱部分12DYを2つ以上含む」ことに該当する。
続いて、例えば、減圧CVD法を使用して間隔Sを埋め込むように酸化ケイ素などの絶縁性材料膜を形成したのち、その絶縁性材料膜をパターニングすることにより、図10に示したように、その間隔Sを埋め込むように犠牲膜20を形成する。この場合には、例えば、後工程においてビーム型(梁型)の断面構造を有するように電極パターン11PB(図11参照)を形成可能とするために、間隔Sを埋め込みながら電極パターン11PAを部分的に覆うと共に、同様にビーム型(梁型)の断面構造を有するようにダミーパターン12B(図5参照)を形成し、かつ下向き凸型の断面構造を有するようにダミーパターン12D(図5参照)を形成可能とするために、ダミーパターン12A,12Cを併せて部分的に覆うように犠牲膜20を形成することにより、それらの電極パターン11PAおよびダミーパターン12A,12Cをそれぞれ部分的に露出させる。
続いて、例えば、減圧CVD法を使用して電極パターン11PAの露出面および犠牲膜20を覆うように、リンが含有されたポリシリコンなどの半導体材料膜を形成したのち、その半導体材料膜をパターニングすることにより、図11に示したように、電極パターン11PAおよび犠牲膜20上に、その犠牲膜20上を経由して各電極パターン11PA間を連結しながらY軸方向に繰り返し配置されるように、電極部分11Pのうちの他の一部を構成する複数の電極パターン11PBを形成する。この電極パターン11PBは、電気的に共振可能な振動部分11PBXと、その振動部分11PBXの一端側および他端側に設けられ、振動部分11PBXを支持する2つの支持柱部分11PBYとを含み、これらの振動部分11PBXと2つの支持柱部分11PBYとが一体化されたものである。この場合には、図2に示したように、電極パターン11PAの配列構成に対応して複数の電極パターン11PBがX軸方向において並列に配列されるようにする。
特に、電極パターン11PBを形成する際には、例えば、ダミーパターン12A,12Cの露出面および犠牲膜20を覆うように半導体材料膜を形成したのち、その電極パターン11PBの形成工程と同一工程において半導体材料膜をパターニングすることにより、図5および図11に示したように、複数のダミーパターン12B,12Dを併せて形成する。この場合には、例えば、図2に示したように、各ダミーパターン12Bが電極パターン11PBと同様に犠牲膜20上を経由して各ダミーパターン12A間を連結しながらY軸方向に繰り返し配置されるようにすると共に、各ダミーパターン12Dが互いに分離配置されるようにする。
最後に、例えば希フッ化水素(DHF;Diluted Hydrogen Fluoride )溶液などの溶解液を使用して犠牲膜20を溶解することにより、その犠牲膜20を選択的に除去する。これにより、図6に示したように、犠牲膜20が設けられていた箇所に、電極パターン11PA,11PBにより間隔Sが構成される結果、それらの電極パターン11PA,11PBにより構成された複数の共振器素子Fを有するように複数の電極部分11Pが形成されることにより、その複数の電極部分11Pを含むように共振器素子構造体11が形成されると共に、その間隔Sを経由するように入力電極103および出力電極104が配置される。この場合には、特に、共振器素子構造体11の周囲を囲み、ダミーパターン12A〜12Dにより構成された複数の非共振器素子Nを有するように、非共振器素子構造体12が併せて形成される。したがって、共振器素子構造体11および非共振器素子構造体12と共に入力電極103および出力電極104を併せて備えるように微小共振器構造体10が形成されるため、基板1上に絶縁層2,3および微小共振器構造体10がこの順に積層された構成を有するように微小共振器が完成する。
なお、上記した製造工程を経て微小共振器構造体10が形成される場合には、例えば、図12に示したように、図6および図9〜図12を参照して説明した一連の工程を経て電極パターン11PBが形成されたのち、最外端に位置する電極パターン11PAに部分的に乗り上げるように配線電極30が形成される場合がある。この配線電極30は、例えば、スパッタリングを使用してアルミニウム銅合金(AlCu)やアルミニウムケイ素合金(AlSi)などの導電性膜を形成したのち、その導電性膜をパターニングすることにより形成可能である。
本実施の形態に係る微小共振器では、複数の共振器素子Fを有して共振動作に寄与する共振器素子構造体11と共に、その共振器素子構造体11の周囲に配設され、複数の非共振器素子Nを有して共振動作に寄与しない非共振器素子構造体12を併せて備えるようにしたので、以下の理由により、各共振器素子F間における中心周波数のばらつきを抑制することにより周波数特性を確保することができる。
図13は本実施の形態に係る微小共振器に対する比較例としての微小共振器の構成を表しており、図2に対応した平面構成を示している。図13に示した比較例の微小共振器は、微小共振器構造体10が共振器素子構造体11と共に非共振器素子構造体12を併せて備えている本実施の形態に係る微小共振器とは異なり、その微小共振器構造体10に対応する微小共振器構造体200を備え、その微小共振器構造体200が非共振器素子構造体12を備えずに共振器素子構造体11のみを備えている点を除き、本実施の形態に係る微小共振器と同様の構成を有している。
この比較例の微小共振器(図13参照)では、微小共振器構造体200が共振器素子構造体11のみを備えていて非共振器素子構造体12を備えていないため、本実施の形態に係る微小共振器のうちの微小共振器構造体10の配置構成(図2参照)と比較した場合に、その微小共振器構造体10のうちの共振器素子構造体11の配置領域に対応して配置された共振器素子F群、すなわち図13中において太い一定鎖線で囲んだ領域R201内に配置されている共振器素子F群だけでなく、非共振器素子構造体12の配置領域に対応して配置された共振器素子F群、すなわち図13中において太い一定鎖線で囲んだ領域R202内に配置されている共振器素子F群までもが共振動作に寄与することとなる。この場合には、例えば、微小共振器構造体200の製造工程において、フォトリソグラフィ処理を使用して絶縁層3上に複数の電極部分11P(電極パターン11PA,11PB)を形成することにより複数の共振器素子Fを形成する際に、その絶縁層3上の外郭領域(領域R202)において露光時に生じる反射光の影響が顕著に大きくなり、すなわち反射光の影響を受けて露光範囲が意図せずに拡大することに起因して電極パターン11PA,11PBの形成精度が顕著に低下する。絶縁層3上の外郭領域において反射光の影響が顕著に大きくなる要因としては、例えば、絶縁層3を支持している基板1の周囲に、その基板1を固定するための高反射性の治具などが存在していることが挙げられる。これらの電極パターン11PA,11PBの形成精度が低下すると、各共振器素子Fの形成寸法がばらつきやすくなり、具体的には電極パターン11PBのうちの振動部分11PBX(図6参照)の形成寸法Lが各共振器素子F間においてばらつきやすくなるため、各共振器素子F間において中心周波数がばらつきやすくなる。なお、絶縁層3上の中央領域(領域R201)では、反射光の影響が外郭領域(領域R202)ほど大きくならないため、電極パターン11PBのうちの振動部分11PBXの形成寸法Lが各共振器素子F間においてばらつきにくくなり、すなわち各共振器素子F間において中心周波数がばらつきにくくなる。このことから、比較例の微小共振器では、中心周波数のばらつきが大きな共振器素子F群が共振動作に寄与する結果、全体として各共振器素子F間における中心周波数のばらつきを十分に抑制し得ないため、周波数特性を確保することが困難になる。
これに対して、本実施の形態に係る微小共振器(図2参照)では、共振動作に寄与する共振器素子構造体11の周囲を囲むように、その共振動作に寄与しない非共振器素子構造体12が設けられており、すなわち絶縁層3上において中央に配置された共振器素子構造体11と共に、外郭に配置された非共振器素子構造体12を併せて備えるように微小共振器構造体10が構成されている。この場合には、微小共振器構造体10の製造工程においてフォトリソグラフィ処理時に反射光の影響を受けたとしても、上記したように、その反射光の影響が外郭の非共振器素子Nの形成精度に及びやすい一方で中央の共振器素子Fの形成精度に及びにくいため、非共振器素子Nの形成精度が低下する一方で共振器素子Fの形成精度が確保される。これにより、共振器素子構造体11では、電極パターン11PBのうちの振動部分11PBX(図6参照)の形成寸法Lが各共振器素子F間においてばらつきにくくなるため、各共振器素子F間において中心周波数がばらつきにくくなる。したがって、本実施の形態に係る微小共振器では、中心周波数のばらつきが大きな非共振器素子N群(非共振器素子構造体12)が共振動作に寄与せず、中心周波数のばらつきが小さな共振器素子F群(共振器素子構造体11)のみが共振動作に寄与する結果、各共振器素子F間における中心周波数のばらつきを抑制することが可能なため、周波数特性を確保することができるのである。
なお、本発明の微小共振器において上記した効果(周波数特性の確保)を生ずるための条件について補足しておくと、形成精度が確保された所定数の共振器素子Fを含むように共振器素子構造体11を構成するためには、例えば、上記したように、Y軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R6)において非共振器素子Nを1列以上有すると共に、X軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R5)において非共振器素子Nを2行以上有するように非共振器素子構造体12を構成し、言い換えれば、共振器素子構造体11(複数の共振器素子F)から周囲に向かい方向において、非共振器素子構造体12(複数の非共振器素子N)が支持柱部分12DYを2つ以上含むようにすればよい。この「非共振器素子構造体12のうちの非共振器素子Nの列数および行数」あるいは「非共振器素子構造体12が支持柱部分12DYを含む数」の設定範囲は、以下の実施例で詳細に説明するように、非共振器素子構造体12の構成(非共振器素子Nの行数)と電極パターン11PBのうちの振動部分11PBXの形成精度(振動部分11PBXの形成寸法Lの均一性)との間の相関を調べることにより確認されたものである。
また、本実施の形態に係る微小共振器の製造方法では、複数の共振器素子Fを有して共振動作に寄与する共振器素子構造体11と共に、その共振器素子構造体11の周囲に配設され、複数の非共振器素子Nを有して共振動作に寄与しない非共振器素子構造体12を併せて備えた微小共振器を製造するために、減圧CVD法に代表される成膜技術、フォトリソグラフィ処理およびドライエッチング処理に代表されるパターニング技術、ならびに犠牲膜20の溶解処理を利用した部分的除去技術を含む既存の薄膜プロセスのみを使用し、新規かつ煩雑な製造プロセスを使用しない。したがって、本実施の形態では、既存の薄膜プロセスのみを使用して、周波数特性が確保された微小共振器を容易に製造することができる。
なお、本実施の形態では、図2に示したように、非共振器素子構造体12の構成に関して、Y軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R6)において非共振器素子Nを1列有すると共に、X軸方向のうちの一端側および他端側の双方(図4に示した端部領域R5)において非共振器素子Nを2行有するようにし、すなわち共振器素子構造体11(複数の共振器素子F)から周囲に向かう方向において非共振器素子構造体12(複数の非共振器素子N)が支持柱部分12DYを2つ有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記したように、非共振器素子Nの列数は1列以上の範囲内で自由に設定可能であると共に、非共振器素子Nの行数は2列以上の範囲内で自由に設定可能であり、すなわち非共振器素子構造体12が支持柱部分12DYを含む数は2つ以上の範囲内で自由に設定可能である。非共振器素子Nの列数および行数、あるいは非共振器素子構造体12が支持柱部分12DYを含む数を変更した場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、図1、図2、図5および図6に示したように、微小共振器構造体10がDC印加電極102と共に2種類の信号電極(入力電極103,出力電極104)を備えた3ポート型構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図2、図5および図6にそれぞれ対応する図14、図15および図16に示したように、微小共振器構造体10が電極部分11と共に1種類の信号電極(出力電極105)を備えた2ポート型構造を有するようにしてもよい。この2ポート型の微小共振器構造体10では、電極部分11Pが入力電極103の機能を兼ねることとなる。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、図14〜図16に示した微小共振器に関する上記以外の構成は、図1、図2、図5および図6に示した場合と同様である。
参考までに、図14〜図16に示した場合には、電極部分11Pが入力電極103の機能を兼ねる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、電極部分11Pが入力電極103に代えて出力電極104の機能を兼ねるようにしてもよい。この場合においても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る微小共振器およびおよびその製造方法についての説明を終了する。
次に、図17を参照して、本発明の微小共振器を搭載した電子機器の構成について説明する。図17は電子機器としての通信装置のブロック構成を表している。
図17に示した通信装置は、上記実施の形態において説明した微小共振器を高周波フィルタ302として搭載したものであり、例えば、携帯電話器、無線LAN機器、無線トランシーバ、テレビチューナまたはラジオチューナなどである。この通信装置は、例えば、図17に示したように、送信系回路300Aと、受信系回路300Bと、送受信経路を切り替える送受信切換器301と、上記実施の形態において説明した微小共振器により構成された高周波フィルタ302と、送受信用のアンテナ303とを備えている。
送信系回路300Aは、Iチャンネルの送信データおよびQチャンネルの送信データに対応した2つのデジタル/アナログ変換器(DAC;Digital/Analogue Converter)311I,311Qおよび2つのバンドパスフィルタ312I,312Qと、変調器320および送信用PLL(Phase-Locked Loop )回路313と、電力増幅器314とを備えている。この変調器320は、上記した2つのバンドパスフィルタ312I,312Qに対応した2つのバッファアンプ321I,321Qおよび2つのミキサ322I,322Qと、移相器323と、加算器324と、バッファアンプ325とを含んで構成されている。
受信系回路300Bは、高周波部330、バンドパスフィルタ341およびチャンネル選択用PLL回路342と、中間周波回路350およびバンドパスフィルタ343と、復調器360および中間周波用PLL回路344と、Iチャンネルの受信データおよびQチャンネルの受信データに対応した2つのバンドパスフィルタ345I,345Qおよび2つのアナログ/デジタル変換器(ADC;Analogue/Digital Converter)346I,346Qとを備えている。高周波部330は、低ノイズアンプ331と、バッファアンプ332,334と、ミキサ333とを含んで構成されており、中間周波回路350は、バッファアンプ351,353と、自動ゲイン調整(AGC;Auto Gain Controller)回路352とを含んで構成されている。復調器360は、バッファアンプ361と、上記した2つのバンドパスフィルタ345I,345Qに対応した2つのミキサ362I,362Qおよび2つのバッファアンプ363I,363Qと、移相器364とを含んで構成されている。
この通信装置では、送信系回路300AにIチャンネルの送信データおよびQチャンネルの送信データが入力されると、それぞれの送信データを以下の手順で処理する。すなわち、まず、DAC311I、311Qにおいてアナログ信号に変換し、引き続きバンドパスフィルタ312I,312Qにおいて送信信号の帯域以外の信号成分を除去したのち、変調器320に供給する。続いて、変調器320において、バッファアンプ321I,321Qを介してミキサ322I,322Qに供給し、引き続き送信用PLL回路313から供給される送信周波数に対応した周波数信号を混合して変調したのち、両混合信号を加算器324において加算することにより、1系統の送信信号とする。この際、ミキサ322Iに供給する周波数信号に関しては、移相器323において信号移相を90°シフトさせることにより、Iチャンネルの信号とQチャンネルの信号とが互いに直交変調されるようにする。最後に、バッファアンプ325を介して電力増幅器314に供給することにより、所定の送信電力となるように増幅する。この電力増幅器314において増幅された信号は、送受信切換器301および高周波フィルタ302を介してアンテナ303に供給されることにより、そのアンテナ303を介して無線送信される。この高周波フィルタ302は、通信装置において送信または受信する信号のうちの周波数帯域以外の信号成分を除去するバンドパスフィルタとして機能する。
一方、アンテナ303から高周波フィルタ302および送受信切換器301を介して受信系回路300Bに信号が受信されると、その信号を以下の手順で処理する。すなわち、まず、高周波部330において、受信信号を低ノイズアンプ331で増幅し、引き続きバンドパスフィルタ341で受信周波数帯域以外の信号成分を除去したのち、バッファアンプ332を介してミキサ333に供給する。続いて、チャンネル選択用PPL回路342から供給される周波数信号を混合し、所定の送信チャンネルの信号を中間周波信号とすることにより、バッファアンプ334を介して中間周波回路350に供給する。続いて、中間周波回路350において、バッファアンプ351を介してバンドパスフィルタ343に供給することにより中間周波信号の帯域以外の信号成分を除去し、引き続きAGC回路352でほぼ一定のゲイン信号としたのち、バッファアンプ353を介して復調器360に供給する。続いて、復調器360において、バッファアンプ361を介してミキサ362I,362Qに供給したのち、中間周波用PPL回路344から供給される周波数信号を混合し、Iチャンネルの信号成分およびQチャンネルの信号成分を復調する。この際、ミキサ362Iに供給する周波数信号に関しては、移相器364において信号移相を90°シフトさせることにより、互いに直交変調されたIチャンネルの信号成分およびQチャンネルの信号成分を復調する。最後に、Iチャンネルの信号およびQチャンネルの信号をそれぞれバンドパスフィルタ345I,345Qに供給することによりIチャンネルの信号およびQチャンネルの信号以外の信号成分を除去したのち、ADC346I,346Qに供給してデジタルデータとする。これにより、Iチャンネルの受信データおよびQチャンネルの受信データが得られる。
この通信装置では、上記実施の形態において説明した微小共振器を高周波フィルタ302として搭載しているため、上記実施の形態において図2を参照して説明したように、非共振器素子Nの形成精度が低下する一方で共振器素子Fの形成精度が確保される。これにより、各共振器素子Fの形成寸法がばらつきにくくなるため、各共振器素子F間において中心周波数がばらつきにくくなる。したがって、微小共振器を搭載して周波数特性を確保することができる。
なお、図17に示した通信装置では、上記実施の形態において説明した微小共振器を高周波フィルタ302に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、高周波フィルタ302に代えて、バンドパスフィルタ312I,312Qに代表される一連のバンドパスフィルタに微小共振器を適用してもよい。この場合においても、やはり周波数特性を確保することができる。
1…基板、2,3…絶縁層、10…微小共振器構造体、11…共振器素子構造体、11P…電極部分、11PA,11PB…電極パターン、11PBX…振動部分、11PBY…支持柱部分、12…非共振器素子構造体、12A〜12D…ダミーパターン、20…犠牲膜、30…配線電極、101…共振回路、102…DC印加電極、103…入力電極、104,105…出力電極、300A…送信系回路、300B…受信系回路、301…送受信切換器、302…高周波フィルタ、303…アンテナ、311I,311Q…DAC、312I,312Q,341,343,345I,345Q…バンドパスフィルタ、313…送信用PLL回路、314…電力増幅器、320…変調器、321I,321Q,325,332,334,351,353,361,363I,363Q…バッファアンプ、322I,322Q,333,362I,362Q…ミキサ、323,364…移相器、324…加算器、330…高周波部、331…低ノイズアンプ、342…チャンネル選択用PLL回路、350…中間周波回路、352…AGC回路、360…復調器、346I,346Q…ADC、F…共振器素子、G…隙間、L…形成寸法、N…非共振器素子、P…分離スペース、R1,R2…領域、R3,R4…中央領域、R5,R6…端部領域、S…空間。