JP4608811B2 - 歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、時効処理後に降伏応力並びに引張強さの大幅な増加が図れる、いわゆる歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の構造部材や足まわり部品において特に深絞り性が要求される部品には、板厚が2mm程度以上と比較的に厚くかつ軟質である、深絞り用熱延鋼板が供されている。この深絞り用熱延鋼板において深絞り性に影響を与える因子は、冷延鋼板の場合がr値であるのと異なり、むしろ延性が重要とされており、全伸びで45%程度以上が要求されている。
【0003】
一方、昨今の地球環境問題を発端とする排出ガス規制に関連し、自動車等の車体重量の軽減は極めて重要な問題となっている。この車体重量の軽減のためには、鋼板強度を高めて鋼板板厚を低減することが有効である。しかし、強度上昇は延性の低下を招いて深絞り性に悪影響を及ぼすために、要求される深絞り加工性が損なわれることが問題となる。
【0004】
この問題に対して、鋼板の歪み時効による強度上昇を利用して、軟質な状態でプレス成形を行い、その後の塗装焼付け処理により強度の上昇を図って、成形性と強度とを両立する、試みが種々なされている。
例えば、特開2000−297350号公報には、C:0.01〜0.12質量%およびN:0.003〜0.02質量%を含み、固溶N量が0.003質量%〜0.01質量%であり、結晶粒径8μm以下のフェライト相を主相とする組織を有し、さらにフェライト結晶粒界に存在する平均固溶N濃度とフェライト結晶粒内に存在する平均固溶N濃度との比を所定範囲とすることにより、加工−塗装焼き付け処理後に引張り強さが増加し、耐常温時効性にも優れる高張力熱延鋼板について開示されている。
【0005】
また、ドラム缶用熱延鋼板に関して、特開平11−80889号公報には、0.0050〜0.02質量%のNを含有する鋼板において、Nによる歪み時効硬化を活用して成形後に高強度化することが提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術はいずれも、熱延鋼板において深絞り性を確保するのに不可欠である延性に関しては、未だ不十分であり、上述した使途に代表される、厳しい深絞り成形を伴う部品の素材として、十分な特性をそなえているとは言い難い。
【0007】
そこで、この発明は、上記問題に鑑みて、優れた深絞り成形性と必要充分な強度を両立させた熱延鋼板について、その有利な製造方法に併せて提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記の課題を解決するための手段について鋭意究明した結果、以下の知見を得るに至った。
すなわち、この発明で所期する高い加工性を有する熱延鋼板の分野において、従来は積極的に利用されることの少なかったNを活用して歪み時効硬化を発現させ、かつ鋼成分および組織を適正化し、かかる鋼成分元素の作用を有利に発現させることにより、高加工性を確保しつつ大きな歪み時効硬化現象を有利に活用することができ、高い深絞り加工性と成形後の高強度化を容易に両立できることを見出した。
【0009】
また、発明者らは、Nによる歪み時効硬化現象を、例えば自動車の塗装焼付け工程等を利用し、同時に成形性を考慮してC含有量を低くした成分系で問題とされやすい、耐2次加工脆性を良好にするためには、添加成分量の適性化に加えて、熱延条件を適正化して鋼板の微視組織を制御することが有効であることを見出した。
【0010】
さらに、Nによる歪み時効硬化現象を安定して発現させるためには、特にAl含有量をN含有量に応じて制御することが重要であることも見出した。
この発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下に示す通りである。
【0011】
(1)C:0.0040質量%以下、Si:0.2質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.015質量%以下、S:0.0035質量%以下、Al:0.02質量%以下およびN:0.0050〜0.0250質量%を含み、さらに〔N質量%〕/〔Al質量%〕が0.3以上、かつ固溶状態のNが0.0010質量%以上0.0150質量%以下であり、残部が Fe および不可避的不純物からなる成分組成と、平均結晶粒径30μm以下の組織とを有することを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
【0012】
(2)上記(1)において、成分組成としてさらにTi:0.01〜0.04質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
【0013】
(3)上記(1)または(2)において、成分組成としてさらに、B:0.0002〜0.0015質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
【0014】
(4)上記(1)、(2)または(3)において、成分組成としてさらに、Cr:0.1〜1.0質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
【0015】
(5)C:0.0040質量%以下、Si:0.2質量%以下、Mn:1.0質量%以下、P:0.015質量%以下、S:0.0035質量%以下、Al:0.02質量%以下およびN:0.0050〜0.0250質量%を含み、〔N質量%〕/〔Al質量%〕が0.3以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを、1100℃以上1280℃以下に加熱したのち粗圧延を施し、次いで仕上圧延を仕上圧延出側温度:850〜920℃にて施し、該仕上圧延に引き続く0.5秒以内に冷却速度20℃/s以上で冷却してから、350〜550℃の温度で巻き取ることを特徴とする歪み時効硬化性に優れた深絞り用熱延鋼板の製造方法。
【0016】
(6)上記(5)において、スラブは、さらにTi:0.01〜0.04質量%、B:0.0002〜0.0015質量%およびCr:0.1〜1.0質量%のいずれか1種または2種以上を含む成分組成を有することを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板の製造方法。
【0017】
なお、上記歪み時効特性は、引張り歪み5%の予変形後に170℃の温度に20分間保持する条件にて時効処理した際、この時効処理の前後における変形応力増加量(以下、BHと記す:BH=時効処理後の降伏応力−時効処理前の予変形応力)と、同様に時効処理の前後における引張り強さの増加量(以下、ΔTSと記す:ΔTS=時効処理後の引張強さ−予変形前の引張り強さ)とで評価される。そして、この発明において、「歪み時効特性に優れた」とは、上記BHが80Mpa以上、かつΔTSが40Mpa以上であることを意味する。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の深絞り用熱延鋼板について、まず、鋼組成の各成分量の限定理由から順に、詳しく説明する。
C:0.0040質量%以下
この発明で所期するような高い加工性を確保するためには、鋼組織をフェライト単相とすることが好ましく、C量が0.004質量%を超えると、フェライト単相組織を安定して得ることが難しくなり、延性の劣化をまねくおそれがあるため、C量の上限を0.0040質量%とする。なお、C量が低いほど延性の確保は容易にあるが、一方でC量が少なくなると、結晶粒径が粗大化しやすくなり、後述するような結晶粒径25μm以下を達成し難くなる可能性があるため、C量は0.0005質量%以上とすることが好ましい。
【0019】
Si:0.2質量%以下
Siは、フェライト組織を強化し過ぎて延性を低下させるとともに、この発明に従う組成の鋼においては、Nと結合して歪み時効硬化特性を低下させるため、0.2質量%以下に制限する必要がある。
【0020】
Mn:1.0質量%以下
Mnは、変態点を低下させて、オーステナイト単相での仕上げ圧延完了を容易にして組織を均質とするのに有効であり、また結晶粒の微細化にも有効であるために、適量、好ましくは0.1質量%以上を添加をすることができる。しかしながら、多量に添加すると、フェライト地を強化して延性を低下する原因となるため、上限を1.0質量%とする。
【0021】
P:0.015質量%以下
Pは、粒界に偏析して鋼の粒界強度を低下させて耐2次加工脆性を劣化させるとともに、鋼中で偏析する傾向が強いために、鋼板の異方性を大きくし深絞り加工性を低下させることから、その含有量は少ない程好ましく、0.015質量%以下とする。
【0022】
S:0.0035質量%以下
Sは、粒界に偏析して鋼の粒界強度を低下させ、耐2次加工脆性を劣化させるため、上限を0.0035質量%とする。
【0023】
Al:0.02質量%以下
Alは、鋼の脱酸剤として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有効な元素であり、鋼の組織を微細化するためにも添加が望ましい元素であり、好ましくは0.005質量%以上で添加する。しかし、0.02質量%を超えると、この発明に従う鋼組成では、歪み時効硬化に必要な固溶N量を確保することが困難になる。従って、Alは0.02質量%以下とする。なお、材質安定性の観点からは、0.016質量%以下の範囲とすることがより好ましい。
【0024】
N:0.0050〜0.0250質量%
Nは、この発明において最も重要な成分元素である。すなわち、Nを適量添加して製造条件を制御することにより、母板(熱延ままの状態)において固溶状態のNを必要かつ充分な量で確保することができ、BH:80Mpa以上およびΔTS:40Mpa以上という、この発明で所期する鋼板の機械的性質に関する要件を安定して満足することができる。なお、Nが0.0050質量%未満では、上記の強度上昇効果が安定して現れにくい。一方、Nが0.0250質量%を超えると、鋼板の内部欠陥発生率が高くなるとともに、連続鋳造時のスラブ割れなどが多発するようになる。従って、Nは0.0050〜0.0250質量%の範囲とした。さらに、製造工程全体を考慮した材質の安定性並びに歩留まり向上の観点からは、0.0070〜0.0170質量%がより好ましい。
【0025】
固溶状態でのN:0.0010質量%以上0.0150質量%以下
Nによる歪み時効硬化を充分に発揮させる、すなわち熱延鋼板におけるBHを80Mpa以上およびΔTSを40Mpa以上とするには、熱延鋼板中に固溶状態のNが0.0010質量%以上存在する必要がある。ここで、固溶N量は、鋼中の全N量から析出N量を差し引いて求めることができる。ここで、析出Nの抽出には電解法を用いることとする。すなわち、抽出残渣を化学分析して、抽出残渣中のN量を求め、析出N量を同定する。なお、材質の安定性の観点からは、固溶N量は0.0030質量%以上とするのが好ましい。一方、0.0150質量%を超えて含有すると、室温時効による延性の低下が顕著となるため、固溶状態でのN量の上限は0.0150質量%とする。
【0026】
〔N質量%〕/〔Al質量%〕が0.3以上
前述のように、製造条件の変動によらず安定して固溶Nを0.0010質量%以上残すには、Nを強力に固定する元素であるAlの量を制限する必要がある。すなわち、Alを0.02質量%以下とし、かつ〔N質量%〕/〔Al質量%〕を0.3以上とし、さらには仕上圧延後の冷却条件および巻き取り条件を後述する範囲とすることにより、熱延後の固溶Nが0.0010質量%以上とすることが初めて可能になるのである。従って、〔N質量%〕/〔Al質量%〕は0.3以上とする必要がある。
【0027】
以上の基本組成に加えて、さらに必要に応じて、Ti、BおよびCrのいずれか1種または2種以上を添加することができる。各成分の添加量の限定理由は次のとおりである。
Ti:0.01〜0.04質量%
Tiは、仕上げ圧延前のオーステナイト粒径の微細化により、熱延板のフェライト結晶粒径を微細にする効果があり、適宜添加することができる。Ti量は0.01質量%以上でその効果が顕著になり、一方0.04質量%より多い場合には歪み時効硬化に寄与する固溶Nの確保が困難になる上、固溶Cが全く残留しなくなり耐2次加工脆性を劣化させる。従って、Tiは、0.01〜0.04質量%の範囲とすることが好ましい。
【0028】
B:0.0002〜0.0015質量%
Bは、脆性遷移温度を低下させて耐2次加工脆性を改善する効果があるため、適宜添加することができる。この効果は、0.0002質量%以上で顕著になる。一方、0.0015質量%を超えると、効果が飽和するばかりでなく深絞り加工性を低下させることになる。従って、Bを添加する場合は、その含有量を0.0002〜0.0015質量%とすることが好ましい。
【0029】
Cr:0.1〜1.0質量%
Crは、炭化物の存在形態の変化により局部延性を向上させるとともに、変態点を低下させてオーステナイト単相での仕上げ圧延完了を容易とするとともに、結晶粒の微細化に有効であるため、適宜添加をすることができる。この効果は、0.1質量%以上で顕著になり、一方1.0質量%より多い場合にはフェライト地を強化して延性を低下させることになる。従って、Crを添加する場合は、その含有量を0.1〜1.0質量%とすることが好ましい。
【0030】
次に、鋼板の組織について詳述する。
平均結晶粒径30μm以下
上記した組成に成る鋼は、フェライト単相鋼であり、この発明ではフェライトの平均結晶粒径を30μm以下とすることが肝要である。すなわち、平均結晶粒径が30μmを超える場合は、上述の成分組成とし固溶N量を確保してもなお、所定の歪み時効硬化現象を発揮することが難しい。
すなわち、結晶粒の微細化は、粒界面積を増大させ、粒界に存在する固溶Nを増大させる。加工の際、転位は粒界近傍にて発生し易いため、時効硬化が効果的に発現することになる。平均結晶粒径が30μmを超えて粗大化すると、粒界に存在する固溶N量が少なくなりすぎ、時効硬化に効果的に作用する固溶N量が少なくなりすぎるため、所定の歪み時効硬化現象を発揮することが難しくなるものと考えられる。
【0031】
また、平均結晶粒径が30μmを超えると、低温における脆化割れの破面単位が顕著に大きくなり耐2次加工脆性を劣化させる。従って、平均結晶粒径は30μm以下に限定した。なお、これら効果をより高位に安定させるためには、平均結晶粒径を20μm以下とすることが好ましい。
ここで、結晶粒径としては、断面写真からASTMに規定の求積法によって算出したものを用いる。
【0032】
次に、この発明の熱延鋼板を製造するための条件について詳しく述べる。
この発明の熱延鋼板は、基本的に、上記したC,Si,Mn,P,S,Al,N,[N質量%]/[Al質量%]を満足する成分組成になる鋼スラブを加熱したのち、粗圧延、次いで仕上圧延を施して冷却して巻き取る、熱延工程により製造することを基本とする。この熱延条件を以下のように規定することが肝要である。
【0033】
スラブ加熱温度:1100℃〜1280℃
スラブ加熱温度が1100℃より低いと、鋼中のNとAlあるいはさらにTiとの析出物の形成が顕著になり、所定の歪み時効硬化の現出に必要な固溶N量を確保できない。一方、1280℃を超えて加熱した場合には、熱間圧延前のオーステナイト粒径が著しく粗大となり、熱延鋼板における結晶粒を所定の結晶粒径に制御することが困難となる。従って、スラブ加熱温度は1100〜1280℃とする。
【0034】
仕上げ圧延出側温度:850〜920℃
仕上げ圧延出側温度が850℃より低いと、鋼板表層および板幅端部に変態点以下の圧延による不均一組織が形成され、延性の低下および面内異方性の増大を招き深絞り加工性を劣化させる。一方、920℃を超えて圧延を完了したときには、圧延後のフェライトの粒成長が顕著となり、熱延鋼板における結晶粒を所定の結晶粒径に制御することが困難となる。従って、仕上げ圧延出側温度は850〜920℃とする。
【0035】
仕上圧延に引き続く0.5秒以内に20℃/s以上で冷却
仕上圧延後の冷却開始時間が0.5秒を超える、あるいは冷却速度が20℃/s未満となると、圧延後のフェライトの粒成長が顕著となり、熱延鋼板における結晶粒を所定の結晶粒径に制御することが困難となると同時に、圧延歪みによりAlNの析出が促進されているため、所定の歪み時効硬化の現出に必要な固溶Nの確保が困難になる。従って、仕上圧延後0.5秒以内に20℃/s以上で冷却する必要がある。なお、冷却速度は、少なくとも700℃程度までの平均冷却速度を前記範囲とすることが好ましい。
【0036】
巻取温度:350℃〜550℃
上記冷却後の鋼板を350℃より低い温度で巻き取った場合には、フェライト組織の形状が変化するためと考えられるが、良好な延性を得ることができない。一方、550℃を超える温度で巻き取った場合には、巻取後にもフェライト成長が進行し熱延鋼板における結晶粒を所定の結晶粒径に制御することが困難となると同時に、巻取後にNが析出物を形成し所定の歪み時効硬化の現出に必要な固溶Nの確保が困難になる。従って、巻き取り温度は350℃〜550℃とする。
【0037】
【実施例】
表1に示す組成になる鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によりスラブとなし、該スラブに表2に示す条件で熱間圧延を施して板厚2.7mmの熱延鋼板とした。かくして得られた熱延鋼板について、固溶N量、ミクロ組織、引張特性、歪み時効硬化特性および耐2次加工脆性を調査した。
【0038】
【表1】
Figure 0004608811
【0039】
【表2】
Figure 0004608811
【0040】
なお、固溶N量は、上述した方法に従って測定し、またミクロ組織は圧延方向に平行な断面(L断面)について、ASTMにて規定された求積法(ASTM Designation E112−82)に準拠して結晶粒径を調査した。
【0041】
また、引張特性および歪み時効硬化特性の調査に係る引張り試験は、圧延方向と直交する方向に採取したJIS5号試験片を用いてJIS Z 2241に準拠した方法で行った。ここで、歪み時効処理条件は、予歪み量を5%とし、熱処理を塗装焼き付け相当の熱処理条件である170℃×20分で行った。
【0042】
さらに、耐2次加工ぜい性は、熱延鋼板を100mmφに打ち抜いたものに、50mmφの円筒ポンチにて深絞り成形を施した後、カップ状の成形品について高さが40mmとなるように端部を切断する。かくして得られたサンプルを所定の試験温度に10分間以上保持した後に、5kgの重りを1.0mの高さから落下衝突させ、サンプルに脆性的に割れが発生するか否かを判定した。この判定は同種の3つのサンプルについて実施し、2個以上が脆性的な割れを生じない最低の温度をもって脆性遷移温度として評価した。
【0043】
以上の調査結果を表3に示す。表3に示すように、この発明の熱延鋼板は、BH80Mpa以上かつΔTS40Mpa以上と、比較例よりも格段に高い歪み時効硬化特性を呈するとともに、全伸び(El)が50%以上と良好な深絞り加工性(延性)を呈していた。また、脆性遷移温度も−80℃以下と耐2次加工脆性も良好であった。
【0044】
【表3】
Figure 0004608811
【0045】
【発明の効果】
この発明の深絞り用熱延鋼板は、固溶Nを適切に活用したことにより、高い深絞り加工性を有しつつ、歪み時効処理をされた後に、BH80Mpa以上かつΔTS40Mpa以上の優れた歪み時効硬化特性を呈するから、特に自動車用部品に適用した場合に、自動車用部品としての性能を維持したまま、その板厚を低減することが可能であり、自動車車体の軽量化推進に大きく寄与するものである。

Claims (6)

  1. C:0.0040質量%以下、
    Si:0.2質量%以下、
    Mn:1.0質量%以下、
    P:0.015質量%以下、
    S:0.0035質量%以下、
    Al:0.02質量%以下および
    N:0.0050〜0.0250質量%
    を含み、さらに〔N質量%〕/〔Al質量%〕が0.3以上、かつ固溶状態のNが0.0010質量%以上0.0150質量%以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、平均結晶粒径30μm以下の組織とを有することを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
  2. 請求項1において、成分組成としてさらにTi:0.01〜0.04質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
  3. 請求項1または2において、成分組成としてさらに、B:0.0002〜0.0015質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
  4. 請求項1、2または3において、成分組成としてさらに、Cr:0.1〜1.0質量%を含むことを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板。
  5. C:0.0040質量%以下、
    Si:0.2質量%以下、
    Mn:1.0質量%以下、
    P:0.015質量%以下、
    S:0.0035質量%以下、
    Al:0.02質量%以下および
    N:0.0050〜0.0250質量%
    を含み、〔N質量%〕/〔Al質量%〕が0.3以上であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有するスラブを、1100℃以上1280℃以下に加熱したのち粗圧延を施し、次いで仕上圧延を仕上圧延出側温度:850〜920℃にて施し、該仕上圧延に引き続く0.5秒以内に冷却速度20℃/s以上で冷却してから、350〜550℃の温度で巻き取ることを特徴とする歪み時効硬化性に優れた深絞り用熱延鋼板の製造方法。
  6. 請求項5において、スラブは、さらにTi:0.01〜0.04質量%、B:0.0002〜0.0015質量%およびCr:0.1〜1.0質量%のいずれか1種または2種以上を含む成分組成を有することを特徴とする歪み時効硬化特性に優れた深絞り用熱延鋼板の製造方法。
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