JP5286217B2 - 熱間加工性、冷間加工性、および冷間加工後の硬さに優れた機械構造用鋼 - Google Patents
熱間加工性、冷間加工性、および冷間加工後の硬さに優れた機械構造用鋼 Download PDFInfo
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0.60≦[Ti]/[N]≦3.00 ・・・(1)
[式(1)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。]
本発明ではC量を0.0005〜0.025%とする。C量が0.025%を超えると、オーステナイトからフェライト変態が生じる温度幅が拡大し、オーステナイト粒界上にフィルム状のフェライトが析出し、熱間加工性を劣化させる。また、鋼中にパーライトが生成し、冷間加工時にパーライトの加工硬化によって変形抵抗が過大となる恐れがある。さらにC量を0.025%以下とすることによって、冷間加工中の変形抵抗を抑制でき、良好な冷間加工性も達成できる。一方、Cが少なすぎると鋼材の溶製中の脱酸が困難となる。C量の下限は好ましくは0.0008%であり、より好ましくは0.0010%である。またC量の上限は好ましくは0.023%であり、より好ましくは0.020%である。
NとともにTiを添加しTiNを析出させることによって、オーステナイト粒を整粒化し粒界強度を向上させることができる。また、固溶NをTiによって所定量固定させることで、固溶N量が過剰になることを抑制する。固溶N量が過剰になると、熱間加工中にAlと結合し、AlNがオーステナイト粒界に偏析して粒界強度を低下させてしまうためである。このように、TiNの析出によってオーステナイト粒界強度を向上させるとともに、AlNのオーステナイト粒界への偏析を抑制することにより、熱間加工中の割れを抑制することができる。
固溶Nを所定量以上確保することによって、動的歪み時効による転位を増殖させ、その後固溶Nで転位を固着することによって静的歪み時効を発生させ、冷間加工後の部品硬さを確保することができる。
NはTiNとなって析出することによって、熱間加工時の結晶粒整粒化による熱間加工性の向上に有効な元素である。また、固溶Nは冷間加工後に所定の部品硬さを確保するために必要である。従って、熱間加工性および冷間加工後の部品硬さを両方満足させるためには、N量、固溶N量を厳密に制御する必要がある。
Tiは鋼中の固溶Nと結合して、Ti窒化物(TiN)を形成する元素である。TiNはオーステナイト粒の成長を抑制し整粒化することによって、粒界強度を向上させる効果を有する。このような効果を得るため、Ti量を0.007%以上と定めた。Ti量は好ましくは0.009%以上であり、より好ましくは0.012%以上である。一方、Ti量が過剰になるとTiNが過剰に析出することによって、固溶N量が確保できないこととなり、冷間加工後の部品硬さの低下を招く。そこでTi量を0.03%以下と定めた。Ti量は好ましくは0.025%以下であり、より好ましくは0.020%以下である。
0.60≦[Ti]/[N]≦3.00・・・(1)
[式(1)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。]
Siは鋼の溶製時に脱酸元素として有効に作用し、Si量が不足すると、脱酸の効果が発揮されず、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなる。また、Siはセメンタイトの成長を抑制する働きがある。そこでSi量を0.005%以上と定めた。Si量は好ましくは0.007%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。一方、Siはフェライト相を固溶強化させるため、Si量が過剰になると変形抵抗が増大し、変形能の低下を招く。従ってSi量を0.03%以下と定めた。Si量は好ましくは0.027%以下であり、より好ましくは0.025%以下である。
Mnは鋼の溶製時に脱酸、脱硫元素として有効に作用し、また熱間加工時に加工性の劣化を抑制する効果を有する。更に、Sと結合することで鋼材の変形能を向上させることにも有効であり、割れの発生を抑制することができる。このような効果を有効に発揮させるため、Mn量を0.4%以上と定めた。Mn量は好ましくは0.42%以上であり、より好ましくは0.45%以上である。一方、Mn量が1.0%を超えると固溶強化による変形抵抗が顕著に増大するため、却って変形能を低下させる。そこでMn量を1.0%以下と定めた。Mn量は好ましくは、0.98%以下であり、より好ましくは0.95%以下である。
Pは不純物として不可避的に存在する元素であるが、Pはフェライト粒界に偏析することによって、変形能を劣化させる。また、Pはフェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。従って、Pは変形能の観点から極力抑制することが望ましく、0.05%以下と定めた。P量の下限は特に制限されないが、極端な低減は製鋼コストの増大を招くだけであり、また製造上0%とすることは困難である。P量は好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
Sは不純物として不可避的に存在する元素であるが、Feと結合するとFeSとして粒界上に膜状に析出するため、変形能を劣化させる。従って、Mnを添加してSの全量をMnSとして析出させる必要がある。但し、MnSの析出量が過剰になると、変形能が劣化するため、S量を0.05%以下と定めた。S量は好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。一方、Sは被削性を向上させる作用を有する。そこでS量を0.005%以上と定めた。S量は好ましくは0.007%以上であり、より好ましくは0.01%以上である。
Alは鋼の溶製時に脱酸元素として有効に作用し、Al量が不足すると溶製時の脱酸が不十分となり、ガス欠陥が生じやすくなる。また、Alは熱間加工時に固溶Nと結合してAlNとして析出することで、フェライト粒の整粒化にも有効である。そこで、Al量を0.01%以上と定めた。Al量は好ましくは0.013%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。一方、Al量が過剰になると、熱間加工中に固溶Nと結合しやすくなって過剰のAlNを形成することとなり、固溶Nを減少させて冷間加工後の部品硬さを確保できなくなる他、AlNは過剰に生成すると熱間加工時にオーステナイト粒界に偏析しやすくなって熱間加工性を劣化させる。そこでAl量を0.05%以下と定めた。Al量は好ましくは0.045%以下であり、より好ましくは0.040%以下である。
Mo:1%以下(0%を含まない)
Cr、Moは共に、冷間加工時の変形能と冷間加工後の硬さを向上させる効果を有する。このような効果を有効に発揮させるため、Cr量は0.1%以上とすることが好ましく(より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上)、Mo量は0.04%以上とすることが好ましい(より好ましくは0.08%以上、さらに好ましくは0.12%以上)。一方、Cr量、Mo量が過剰になると、変形抵抗が増大し、却って変形能が劣化する。そこでCr量は2%以下が好ましく(より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下)、Mo量は1%以下が好ましい(より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下)。Cr、Moは単独で添加しても良いし、併用しても良い。
Bは、フェライト粒界に集まる傾向があり、Pのフェライト粒界偏析による粒界強度の低下を抑制し、冷間加工時の変形能の向上に有効な元素である。このような効果を発揮させるため、B量は0.0002%以上添加することが好ましく、より好ましくは0.0004%以上、さらに好ましくは0.0006%以上である。一方、BはNとの親和力が強いため、B量が過剰になるとBNを形成し固溶N量が低減すると共に、フェライト粒界に偏析したBNが粒界強度を低下させ、熱間および冷間加工性が低下する。そこでB量は0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.0035%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。
Ni:5%以下(0%を含まない)
Cu、Niはいずれも鋼材をひずみ時効させ、冷間加工後の部品硬さを向上させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Cu量、Ni量はいずれも0.1%以上が好ましく、より好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上である。一方、Cu、Ni量が過剰になると効果が飽和し、また冷間加工時の割れも促進される。従って、Cu量、Ni量はいずれも5%以下とすることが好ましく、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。Cu、Niは単独で添加しても良いし、併用しても良い。
REM:0.02%以下(0%を含まない)
Mg:0.01%以下(0%を含まない)
Li:0.01%以下(0%を含まない)
Ca、REM、Mg、LiはMnS等の硫化物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めるとともに、被削性向上に寄与する元素である。このような効果を有効に発揮するため、CaおよびREMはいずれも0.0005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.001%以上(特に0.0015%以上)である。Mg、Liはいずれも0.0001%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0003%以上(特に0.0005%以上)である。一方、これらの元素は過剰に添加しても効果が飽和し、添加量に見合う効果が期待できず経済的に不利である。したがって、Ca、REMはいずれも0.02%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01%以下(特に0.008%以下)である。Mg、Liはいずれも0.01%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以下(特に0.003%以下)である。Ca、REM、Mg、Liは単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
上記の製造方法[1]または[2]により得られたφ80mmの棒鋼のD/4(D:棒鋼の直径)位置から、試験片の長手方向が棒鋼の長手方向となるように図1に示す形状の引張試験片を採取した。熱間加工再現試験装置(富士電波工業(株)製)で、アルゴン雰囲気下、1300℃まで試験片を加熱した後、900℃まで冷却し、900℃において0.01mm/sの速度で引張試験を行った。試験片が破断するまで引張試験を行い、下記(2)式で表される断面減少率で熱間加工性を評価した。
(断面減少率)={(標点間部の断面積)−(破断部の断面積)}/(標点間部の断面積) ・・・(2)
上記の製造方法[1]または[2]により得られたφ80mmの棒鋼のD/4(D:棒鋼の直径)位置から、φ10mm×長さ15mmの試験片を切り出した。1600トンプレスを使用し、加工温度:20℃、ひずみ速度:10/s、圧縮率80%の冷間鍛造条件で、端面を拘束した状態で該試験片を圧縮加工した。その際の変形抵抗を測定するとともに、割れの有無を確認した。
Claims (5)
- 質量%で、
C :0.0005〜0.025%、
Si:0.005〜0.03%、
Mn:0.4〜1.0%、
P :0.05%以下(0%を含まない)、
S :0.005〜0.05%、
Al:0.01〜0.05%、
Ti:0.007〜0.03%、
N :0.009〜0.013%をそれぞれ含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であり、固溶状態としてのNの含有量が0.004〜0.0075%であり、かつ、
TiとNの含有量が下記(1)式の関係を満足することを特徴とする熱間加工性、冷間加工性、および冷間加工後の硬さに優れた機械構造用鋼。
0.60≦[Ti]/[N]≦3.00 ・・・(1)
[式(1)中、[ ]は各元素の含有量(質量%)を表す。] - 更に、
Cr:2%以下(0%を含まない)および/またはMo:1%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の機械構造用鋼。 - 更に、
B:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または2に記載の機械構造用鋼。 - 更に、
Cu:5%以下(0%を含まない)および/またはNi:5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の機械構造用鋼。 - 更に、
Ca:0.02%以下(0%を含まない)、REM:0.02%以下(0%を含まない)、Mg:0.01%以下(0%を含まない)、およびLi:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の機械構造用鋼。
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