JP5379651B2 - 冷間加工用鋼材およびその製造方法ならびに冷間加工部品 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間加工用鋼材およびその製造方法ならびに冷間加工部品に関する。
近年、環境保護の観点から、自動車などの車両の燃費向上を目的として、自動車用の各種部品の軽量化に対する要求が益々高まっている。例えば、ボルト・ナット等を製造するための冷間加工用鋼材について軽量化の要求が高まっている。この種の軽量化に応えるために、一般に、母材鉄に添加される各種合金元素の含有量を調整することにより、所要強度を確保する方法が採用されている。
ところで、この種の鋼材に適用される加工方法は、通常、200℃以下の雰囲気における冷間加工であり、この冷間加工は、熱間加工や温間加工に比較して生産性が高く、しかも寸法精度および鋼材の歩留まりがともに良好な利点がある。
しかし、このような冷間加工によって部品を製造する場合に問題となるのは、部品によっては非常に複雑な形状のものがあり、数回の鍛造によって部品を作製することがある。その際、全ての工程を冷間鍛造で実施すると、加工途中で変形抵抗の増加、変形能の劣化を招き、冷間加工時に割れが発生する場合があり、冷間鍛造工程の間に焼もどし等の熱処理を行ったり、初期の工程を熱間あるいは温間鍛造で行い、最終の工程を冷間鍛造で仕上げることが行われている。
しかし、熱処理、熱間あるいは温間鍛造は、部品寸法がなかば必然的に変化するため、二次的に切削などの機械加工により修正する必要があり、熱処理やその後の加工が省略できるような解決策が望まれている。そこで、冷間加工中における鋼材の変形抵抗を低減すると同時に、所定の強度を確保できる優れた冷間加工性を有する鋼材を得るために、いくつかの対策が提案されている。例えば、特許文献1には、優れた冷間加工性を得るためにセメンタイトフリー組織を活用する技術が開示され、特許文献2には、固溶Cと結晶粒径を制御することによって、常温時効を抑制し、冷間鍛造後に時効硬化させる技術が開示されている。
すなわち、特許文献1では、平均結晶粒径が500nm以下で、セメンタイトフリーのフェライト組織を有する変形能に優れた高強度鋼線または棒鋼(すなわち鋼材)に関する技術が開示されている。この特許文献1では、C量を所定範囲に制限した鋼材に、350〜800℃の範囲内で温間加工を施した後、冷間加工を施すことによって平均結晶粒径を500nm以下のフェライト主相組織とし、強度と変形能を両立させている。
また、特許文献2では、常温時効の進行を抑制し、冷間鍛造後の時効処理によって部品強度を向上させることができる技術が開示されている。この特許文献2では、C量をできるだけ低減すると共に、20μm以上のフェライトを90面積%以上とする鋼材の構成としている。そして、この鋼材では、フェライト粒径をできるだけ大きくし、固溶C、固溶Nが常温で転位に固着する距離を稼ぐことによって、常温時効を抑制している。つまり、この鋼材では、フェライト粒径が大きいほど常温時効が発生しにくくなるように構成されている。
特開2005−320630号公報 特開平10−306345号公報
しかし、従来の鋼材では以下に示すような問題点が存在している。
特許文献1では、強加工による動的再結晶によってフェライト相の結晶粒径を微細化させているため、使用雰囲気温度が上昇すると、再結晶が容易に生じてしまい、目標とする強度特性を維持することができない。また、特許文献2では、時効強化は固溶Cによるものであり、使用雰囲気温度が上昇すると、固溶Cは炭化物を形成し始めるので、強度が低下しやすい。
本発明は、前記した問題点に鑑みて創案したものであり、冷間加工性に優れると共に、冷間加工によって部品とした後、その部品を長期使用、あるいは、使用環境の温度が増加するような雰囲気での使用において(以下、長期使用は、雰囲気温度の上昇と等価と考えられるので、雰囲気温度の上昇を対象とする)、強度特性が低下しにくい耐時効軟化性に優れた冷間加工用鋼材およびその製造方法、ならびにその冷間加工用鋼材を用いた冷間加工部品を提供することを課題とする。
本発明者は、冷間加工性に優れた冷間加工用鋼材および冷間加工部材を提供すべく種々の検討を行ってきた。例えば、鋼材中に固溶するN量を制御することによって冷間加工性を向上させた鋼材を提案している(特願2008−49489号参照)。しかしながら、この鋼材は、固溶Nによる静的ひずみ時効によって部品強度を高めているため、部品使用中に次第に過時効状態へと移行していく懸念がある。即ち、転位を固着している固溶Nが転位からはずれる、あるいは、N化合物として析出することによって部品強度が低下し、所望の強度が保持できなくなる可能性がある。
また、鋼材に固溶限以上のCを添加しその大部分を固溶させると共に、固溶Nを所定量含有させ、かつ、フェライト相を粒内変態させることによって、冷間および温間加工時の動的ひずみ時効が抑制できる鋼材を提案している(特願2009−136382号参照)。ここで、固溶Cと固溶Nは同じ侵入型の固溶元素であり、鋼中の同じ位置に優先的に存在する。そのため、固溶Cと固溶Nは相互作用の関係にあり、お互いの活量を低下させる。そのため、加工温度が増加しても、固溶C、Nは転位を固着させにくくなり、結果として、動的ひずみ時効の発生を抑制することができる。しかしながら、この鋼材では、フェライトが微細で、固溶C量が高いことがポイントであり、冷間および温間加工時の変形抵抗の増加を抑制するには有効であったが、使用雰囲気温度が上昇すると、転位の消失、炭窒化物の析出が容易に生じるため、鋼材強度が低下する可能性がある。
そこで、前記鋼材をベースに使用雰囲気温度が上昇しても部品強度が低下しない成分、組織について検討を重ねた結果、固溶C量、固溶N量およびフェライト相の結晶粒径を所定範囲とすることが有効であるという知見を得ることができた。
つまり、本発明の冷間加工用鋼材は、C:0.03〜0.06質量%、Si:0.01〜0.06質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.008〜0.015質量%、残部はFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、固溶C量が0.01〜0.02質量%、かつ、固溶N量が0.008〜0.015質量%であり、組織中のセメンタイト相分率が2%以下(0%を含む)で残部がフェライト相であり、前記フェライト相の平均結晶粒径が20〜100μmであることを特徴とする。
前記構成によれば、所定範囲のC、Si、Mn、P、S、Al、Nを含有し、固溶状態としてのCおよびNを所定範囲含有すると共に、鋼材組織中のセメンタイト相分率およびフェライト相の平均結晶粒径を所定範囲とすることによって、冷間加工性が確保されると共に、使用雰囲気温度の上昇による部品強度の低下が抑制される。
特に、Cを所定量以下としていることによって、変形抵抗および変形能に影響を及ぼすパーライト(セメンタイト)の生成を抑制し、固溶Nによって動的ひずみ時効が発生しても、十分な変形能が確保される。また、セメンタイト相分率およびフェライト相の平均結晶粒径を所定範囲とすることによって、使用雰囲気温度の上昇による部品強度の低下が抑制される。
本発明の冷間加工用鋼材は、前記成分組成がさらに、Cr:2質量%以下(0質量%を含まない)およびMo:1質量%以下(0質量%を含まない)のうち1種以上を含有することを特徴とする。
前記構成によれば、CrおよびMoのうちの1種以上を含有することによって、加工後の部品の硬さと変形能が向上する。また、Crは結晶粒界の強度を高めることにより鋼素材の変形能を向上させる。
本発明の冷間加工用鋼材は、前記成分組成がさらに、Cu:5質量%以下(0質量%を含まない)およびNi:5質量%以下(0質量%を含まない)のうち1種以上を含有することを特徴とする。
前記構成によれば、CuおよびNiのうちの1種以上を含有することによって、鋼材がひずみ時効し、加工後の部品強度が向上する。
本発明の冷間加工用鋼材は、前記成分組成がさらに、Ca:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、REM:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.01質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.01質量%以下(0質量%を含まない)より成る群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする。
前記構成によれば、Ca、REM、Mg、Liより成る群から選ばれた少なくとも1種を含有することによって、MnS等の硫化化合物系介在物が球状化し、鋼素材の変形能が向上すると共に、被削性が向上する。
本発明の冷間加工用鋼材の製造方法は、前記冷間加工用鋼材を製造する方法であって、
前記成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上の温度に加熱して熱間圧延または熱間鍛造する工程と、前記熱間圧延または熱間鍛造した後に、700〜750℃まで1〜3℃/sの冷却速度で冷却し、引き続き5℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却する工程とを含むことを特徴とする。
前記手順によれば、所定の成分組成を有する鋼素材を所定温度で加熱して熱間圧延(鍛造)し、所定速度で冷却することによって、鋼材の固溶C量、固溶N量、セメンタイト相分率およびフェライト相の平均結晶粒径が所定範囲となり、冷間加工性が確保されると共に、使用雰囲気温度の上昇による部品強度の低下が抑制される。
本発明の冷間加工部品は、前記冷間加工用鋼材に冷間加工を施して製造された冷間加工部品であって、前記冷間加工部品に400℃×120分の時効処理を施した後の部品硬さが、下式(1)を満足することを特徴とする。
(H/H)×100≧90・・・(1)
:冷間加工直後の部品硬さ(Hv)
:時効処理後の部品硬さ(Hv)
前記構成によれば、所定の鋼材を用いて製造したことによって、冷間加工部品が所定の部品硬さを有することとなる。その結果、冷間加工部品は、割れ等の発生なく製造され、使用雰囲気温度が上昇しても部品強度が低下しない。
本発明の冷間加工用鋼材によれば、冷間加工性に優れると共に、耐時効軟化性に優れたものとなる。また、本発明の冷間加工用鋼材の製造方法によれば、冷間加工性および耐時効軟化性に優れた冷間加工用鋼材が製造される。
さらに、本発明の冷間加工部品によれば、冷間加工性に優れると共に、耐時効軟化性に優れたものとなる。その結果、冷間加工によってボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール、トーションバー等を連続操業で製造する時、加工後の加工部品硬さも維持できるので、軽量化、高強度化することができる。また、これまで熱間加工と切削によって加工されていた歯車、プーリー、クランクシャフト、等速ジョイント、コンロッド、トランスミッションギヤ等の部品を冷間加工によって製造することができ、部品製造工程におけるCOの排出量を削減することができる。
内部摩擦の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の冷間加工用鋼材について説明する。
冷間加工用鋼材は、C:0.03〜0.06質量%、Si:0.01〜0.06質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.008〜0.015質量%、残部はFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、固溶C量が0.01〜0.02質量%、かつ、固溶N量が0.008〜0.015質量%であり、組織中のセメンタイト相分率が2%以下(0%を含む)で残部がフェライト相であり、前記フェライト相の平均結晶粒径が20〜100μmである構成とする。
以下、冷間加工用鋼材の構成における成分組成と組織について説明する。
はじめに、冷間加工用鋼材(以下、鋼材と称す)の必須成分について説明する。
(C:0.03〜0.06質量%)
Cは、冷間加工時の変形抵抗および変形能に大きな影響を及ぼす元素である。また、時効軟化を抑制するのに有効な固溶Cを確保するために重要な元素でもある。C量が0.03質量%未満である場合、固溶Cが十分に確保されず、雰囲気温度が上昇した時、部品強度が低下しやすくなる。一方、C量が0.06質量%を超える場合、パーライトを形成しやすくなり、変形抵抗の増加および変形能の劣化を招くと共に、固溶Cがパーライト中のセメンタイトに集まりやすくなる。なお、C量の下限値は、好ましくは0.033質量%、より好ましくは0.035質量%である。また、C量の上限値は、好ましくは0.055質量%、より好ましくは0.050質量%である。
(Si:0.01〜0.06質量%)
溶製中の脱酸元素として有効であり、また、セメンタイトの成長を抑制し、固溶Cを確保するのに有効であるため、0.01質量%以上添加する必要がある。ただし、Siはフェライト相を固溶強化させるため、添加量の増加に伴い、変形抵抗の増大、変形能の低下を生じさせる。Si量が0.06質量%を超えると、Siによる固溶強化の影響が顕著に現れ始め、冷間加工時に割れが発生する。一方、Si量が0.01質量%未満であると、脱酸の効果が十分に発揮されず、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなる。なお、Si量の下限値は、好ましくは0.012質量%、より好ましくは0.015質量%である。また、Si量の上限値は、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.04質量%である。
(Mn:0.4〜1質量%)
溶製中の脱酸、脱硫元素として有効であり、また、Sと結合することで鋼材の変形能を向上させるためには、0.4質量%以上添加する必要がある。ただし、Mnは1質量%を超えると、固溶強化の影響が顕著に増大するため、変形抵抗の増大、変形能の劣化を招く。一方、Mn量が0.4質量%未満であると、Sの影響が顕在化してくるため、変形能が低下し、割れが生じる。なお、Mn量の下限値は、好ましくは0.42質量%、より好ましくはで0.45質量%ある。また、Mn量の上限値は、好ましくは0.9質量%、より好ましくは0.8質量%である。
(P:0.05質量%以下(0質量%を含まない))
Pは不可避的に不純物として含有する元素であるが、Pはフェライト粒界に偏析し、変形能を劣化させる。また、Pはフェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。従って、変形能の観点からは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招くため、0.05質量%以下とする。そして、P量の下限は特に定めないが、低いほどよい。ただし、0質量%とすることは製造上困難である。なお、0.04質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がさらに好ましい。
(S:0.005〜0.05質量%)
Sは不可避的に不純物として含有する元素であるが、Feと結合すると、FeSとして粒界上に膜状に析出するため、変形能を劣化させる。従って、全量をMnと結合させ、MnSとして析出させる必要がある。ただし、S量が0.05質量%を超えると、MnSの析出量が増え、変形能が劣化する。一方、S量の極端な低減は被削性を劣化させるので、0.005質量%以上とする。なお、変形能と被削性のバランスを考慮し、S量の下限値は、好ましくは0.007質量%、より好ましくは0.01質量%である。また、S量の上限値は、好ましくは0.04質量%、より好ましくは0.03質量%である。
(Al:0.005〜0.03質量%)
溶製中の脱酸元素として有効であり、0.005質量%以上添加する必要がある。ただし、Al量が0.03質量%を超えると、熱間加工中に固溶Nと結合しやすくなり固溶N量を減少させるため、冷間加工後に所望の部品強度が得られなくなる。また、AlNによるγ粒の整粒効果によって結晶粒が微細化されるため、十分な耐時効軟化性を得ることができなくなる。一方、Al量が0.005質量%未満であると、溶製中の脱酸が不十分となり、ガス欠陥が生じやすくなるので、割れが生じやすくなる。なお、Al量の下限値は、好ましくは0.008質量%、より好ましくは0.01質量%である。また、Al量の上限値は、好ましくは0.025質量%、より好ましくは0.02質量%である。
(N:0.008〜0.015質量%)
Nは、冷間加工後に所望の部品強度を得るために必要な固溶Nを確保するため、所定量添加する必要がある。冷間加工時に変形抵抗をあまり増加させずに部品強度を大きく増加させ、所望の部品強度を得るための固溶N量は後記するように0.008質量%以上である。N量が0.008質量%未満となると、必要とされる部品強度を得るための固溶N量を確保することができない。一方、N量が0.015質量%を超えると、変形能が劣化し始めるため、冷間加工後に割れが生じる。なお、N量の下限値は、好ましくは0.0085質量%、より好ましくは0.009質量%である。また、N量の上限値は、好ましくは0.013質量%、より好ましくは0.012質量%である。
(固溶C量:0.01〜0.02質量%、かつ、固溶N量:0.008〜0.015質量%)
固溶Nは冷間加工後の部品強度を確保するために重要な元素である。一方、固溶Cは、固溶Nの静的時効によって強化した鋼材の使用雰囲気温度の上昇による部品強度の低下を抑制する作用を有する。なお、固溶C量および固溶N量は、鋼材に含有されるC量およびN量と、後記する鋼材の製造方法における加熱温度および冷却速度によって制御される。
固溶N量、固溶C量共に必要量を満たさない場合には、加工直後の部品強度が十分でなく、使用雰囲気温度の上昇に伴い部品強度が低下する。
固溶N量が所定範囲、固溶C量が所定範囲外の場合には、使用雰囲気温度の上昇に伴う部品強度の低下を招く、なお、固溶C量が上限値を超える場合には、セメンタイトの形成の促進によって使用雰囲気温度の上昇に伴う部品強度の低下を招く。
固溶C量が所定範囲、固溶N量が下限値未満である場合には、所望の部品強度が得られない、固溶N量が上限値を超える場合には割れが生じる。
つぎに、鋼材の任意成分について説明する。
(Cr:2質量%以下およびMo:1質量%以下(共に0質量%を含まない)のうちの1種以上)
Cr、Moは、加工後硬さと変形能を向上させる効果を有するので、所定量に限って選択的に添加することが可能である。Cr量は2質量%、Mo量は1質量%を超えると、変形抵抗が増大し、かえって変形能が低下する。Cr、Mo添加の効果を得るための下限値は、Cr量が0.1質量%以上、Mo量が0.05質量%以上好ましい。なお、Cr量の下限値は、より好ましくは0.2質量%、最適には0.3質量%である。Cr量の上限値は、より好ましくは1.5質量%、最適には1質量%である。また、Mo量の下限値は、より好ましくは0.1質量%、最適には0.15質量%である。Mo量の上限値は、より好ましくは0.8質量%、最適には0.5質量%である。
(Cu:5質量%以下およびNi:5質量%以下(共に0質量%を含まない)のうちの1種以上)
Cu、Niはいずれも鋼材をひずみ時効させ、加工後の部品強度を向上させるのに有効である。必要に応じて、Cu:0.1質量%以上、Ni:0.1質量%以上添加することが好ましい。一方、Cu量、Ni量の添加量がそれぞれ5質量%を超えると効果が飽和し、また冷間加工時の割れも促進される。Cu量の下限値は、より好ましくは0.2質量%、最適には0.3質量%である。Cu量の上限値は、より好ましくは4質量%、最適には2質量%である。Ni量の下限値は、より好ましくは0.2質量%、最適には0.3質量%である。Ni量の上限値は、より好ましくは4質量%、最適には2質量%である。
(Ca:0.02質量%以下、REM:0.02質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Li:0.01質量%以下(全て0質量%を含まない)よりなる群から選ばれる少なくとも1種)
Ca、REM、Mg、Liは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めると共に、被削性向上に寄与する元素である。Ca量、REM量を0.0005質量%以上、Mg量、Li量を0.0001質量%以上含有させることが好ましい。しかしながら、過剰に添加してもその効果が飽和し、添加量に見合う効果が期待できず経済的に不利である。そのため、Ca量、REM量の上限は0.02質量%、Mg量、Li量の上限は0.01質量%が好ましい。
なお、Ca量の下限値は、より好ましくは0.001質量%、最適には0.0015質量%である。Ca量の上限値は、より好ましくは0.01質量%、最適にはで0.008質量%ある。REM量の下限値は、より好ましくは0.001質量%、最適には0.0015質量%である。REM量の上限値は、より好ましくは0.01質量%、最適には0.008質量%である。Mg量の下限値は、より好ましくは0.0003質量%、最適には0.0005質量%である。Mg量の上限値は、より好ましくは0.005質量%、最適には0.003質量%である。Li量の下限値は、より好ましくは0.0003質量%、最適には0.0005質量%である。Li量の上限値は、より好ましくは0.005質量%、最適には0.003質量%である。
つぎに、鋼材の組織について説明する。
(セメンタイト相分率:2%以下(0%を含む))
セメンタイト相分率とは、光学顕微鏡等で観察した鋼材表面の組織におけるセメンタイトの面積率をいう。本発明の鋼材は、パーライト相(フェライト相+セメンタイト)組織またはフェライト単相組織(セメンタイト相分率0%に相当する)からなる。そして、セメンタイト相分率は、固溶C量と、後記する鋼材の製造方法における加熱温度および冷却速度によって制御される。
セメンタイト(パーライト)は、冷間加工中の変形抵抗を増加させやすく、また、フェライト相とセメンタイトの界面において、割れを生じさせる。また、セメンタイトが多く生成することによって、使用雰囲気温度が上昇すると固溶Cが引き寄せられやすくなるため、固溶Nとの相互作用力が低下する。これらのことにより、セメンタイトは極力低減することが有効で、2%以下(0%を含む)とする。なお、1.5%以下が好ましく、1%以下がさらに好ましい。
(フェライト相の平均結晶粒径:20〜100μm)
フェライト相の平均結晶粒径(結晶粒径)は、変形抵抗と固溶Cの存在位置に影響を及ぼす。そして、フェライト相の結晶粒径は、後記する鋼材の製造方法における加熱温度および冷却速度によって制御される。
フェライト結晶粒径を20μm以上とすることで変形能を劣化させずに初期変形抵抗を低減することができる。その効果は、フェライト結晶粒径が100μmまで有効である。一方、フェライト結晶粒径が100μmを超えると、固溶Cがフェライト粒界に多く存在するため、変形能が低下し、割れが生じやすくなる。また、フェライト結晶粒径が20μm未満の場合は、転位と固溶Cの距離が近くなるため、固溶Cも動的ひずみ時効に寄与するようになり、変形抵抗が増加しやすい。なお、フェライト相の平均結晶粒径の下限値は、好ましくは25μm、より好ましくは35μmであり、上限値は、好ましくは90μm、より好ましくは80μmである。
つぎに、耐時効軟化性に及ぼす固溶C量、固溶N量および平均結晶粒径(フェライト相)の影響に関するメカニズムについて説明する。
固溶Cはセメンタイトを形成しやすい性質があることから、主にフェライト相の粒界付近に存在する。一方、固溶Nは粒内に存在することが多い。固溶Nは塑性変形に伴って移動する転位を固着し、転位は固溶Nを引きずりながら移動することになる(動的ひずみ時効)。そして、冷間加工後、固溶Nは可動転位を固着することによって部品強度を増加させる(静的ひずみ時効)。その際、固溶C量が0.01〜0.02質量%の場合には、このドラッグ効果にはあまり寄与せず、部品強度の向上にもほとんど影響がない結果が得られた。このことは、転位を固着しているのが固溶Nであり、固溶Cは、転位に引き寄せられるが、転位あるいは固溶Nの近傍に存在するだけであると考えられる。
固溶Cが存在しない場合、固溶Nは使用雰囲気温度の上昇に伴い、次第に固溶N同士が集まり、転位の固着からはずれるため、部品強度が低下する。一方、固溶Cが存在すると、固溶Cによって固溶Nの活量が下げられているため、固溶Nが集まるための余分なエネルギーが必要になる。そのため、使用雰囲気温度の上昇に対して固溶Nの移動は鈍感になる。その結果、転位の固着状態が保たれるため、強度の低下がほとんど起こらない。
なお、固溶Nが存在せず、固溶Cが存在する場合には、固溶Cは、固溶Cとセメンタイトの中間相(FeC)の形成を経て、セメンタイトとして析出する。即ち、固溶Cが転位の固着からはずれるため、強度が低下する(特許文献2の鋼材に相当する)。
また、フェライト相の結晶粒径(平均結晶粒径)が大きくなると、固溶Cは動的ひずみ時効に寄与せず、固溶Nによる静的ひずみ時効発生時に効果的に固溶Cが集まってくることから、耐時効軟化性を十分に得るためには、固溶Cと固溶Nの所定量の確保とフェライト相の結晶粒径(平均結晶粒径)を規定する必要がある。
つぎに、本発明の鋼材の製造方法について説明する。
鋼材の製造方法は、前記した成分組成を有する鋼を、1100℃以上の温度に加熱して熱間圧延または熱間鍛造する工程と、前記熱間圧延または熱間鍛造した後に、700〜750℃まで1〜3℃/sの冷却速度で冷却し、引き続き5℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却する工程とを含むことを特徴とする。ここで、加熱温度および冷却速度は、前記した鋼材において、所定範囲の固溶C量、固溶N量および平均結晶粒径(フェライト相)を得るために設定されたものである。
(1100℃以上の温度に加熱)
1100℃以上の温度に加熱することで、AlNを分解して固溶N量を確保させる。加熱温度が1100℃未満の場合には、AlNを十分分解することができず、その後の熱処理工程によっても固溶Nを確保することができない。温度が高ければ高いほど、AlNの分解が促進されるが、高すぎると(例えば1250℃以上)、AlNの分解に対する効果が飽和するだけでなく、ビレットの端部が熱変形してしまう問題が生じることがある。
(700〜750℃まで1〜3℃/sの冷却速度で冷却し、引き続き5℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却)
AlNとセメンタイトが析出せず、フェライトが十分成長でき、固溶Nが所定量確保できるよう700〜750℃まで1〜3℃/sの冷却速度で冷却する。
700〜750℃までの冷却速度が1℃/s未満の場合は、AlNが再び析出し始め、固溶N量を所定範囲とすることが困難になる。また、冷却速度が3℃/sを超えると、フェライトが微細化するため、変形抵抗が増加する。
750℃を超える温度で前記冷却速度(1〜3℃/s)での冷却を終了した(冷却速度変化点温度が750℃を超える)場合は、フェライトが十分析出していないため、その後の冷却工程で、微細なフェライト相が析出する。
700℃未満の温度まで前記冷却速度での冷却を行った(冷却速度変化点温度が700℃未満)場合は、セメンタイトが析出し、所定量の固溶Cを確保しにくくなる。
700〜750℃の範囲まで前記冷却速度で冷却した後は、当該温度から300℃以下までは、固溶Cを所定量確保するため、5℃/s以上の冷却速度で冷却する方法が用いられる。
300℃以下までの冷却速度が5℃/s未満の場合、または、300℃を超える温度で冷却を停止した(冷却停止温度が300℃を超える)場合は、セメンタイトが析出し、所定量の固溶Cを確保しにくくなる。なお、冷却速度は、速いほど固溶C量の確保が容易となるが、操業条件に合わせて決定することができる。
本発明の鋼材の製造方法は、以上説明したとおりであるが、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、例えば、熱間圧延(鍛造)する工程の前に行う鍛造工程や、鋳塊や熱間加工材等を切断する切断工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程等、他の工程を含めてもよい。
つぎに、本発明の冷間加工部品について説明する。
本発明において、冷間加工部品とは、自動車用の各種部品、例えば、ボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール、トーションバー、歯車、プーリー、クランクシャフト、等速ジョイント、コンロッド、トランスミッションギヤ等である。
本発明の冷間加工部品は、前記した鋼材に冷間加工を施して製造されたものであって、400℃×120分の時効処理を施した後の部品硬さ(H)が、時効処理前(冷間加工直後)の部品硬さ(H)の90%以上であることを特徴とする。そして、前記した鋼材を用いることによって、冷間加工部品が、前記のような部品硬さを有することとなる。その結果、冷間加工部品は、冷間加工の際に割れ等が発生せず、使用雰囲気温度が上昇しても部品強度が低下しない(耐時効軟化性に優れる)。
以下、本発明の実施例について、比較例と比較して具体的に説明する。
表1、2に記載の成分組成からなる供試材No.1A〜2Zの供試鋼を調製し、この供試鋼150kgを真空誘導炉で溶解して、上面:φ245mm、下面:φ210mm×長さ480mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを、1200℃で3hrのソーキングをした後、155mm角の四角材に熱間鍛造して、長さ600mm程度に切断し、155mm角×600mm長さのビレットとした。
次に、表1、2に示す供試材No.1A〜2Rについては、このビレットを、ダミービレット(155mm角×9〜10m長さ)に溶接し、ダミービレットごと、表1、2に示す加熱温度まで加熱した後、φ80mmの丸棒に熱間圧延した。その後、表1、2に示す冷却速度で所定温度(冷却停止温度)まで冷却し、熱間圧延材を作製した。
また、表2に示す供試材No.2S〜2Zについては、このビレットを、表2に示す加熱温度まで加熱した後、φ80mmの丸棒に熱間鍛造した。その後、表2に示す冷却速度で所定温度(冷却停止温度)まで冷却し、熱間鍛造材を作製した。
さらに、固溶N量、固溶C量、セメンタイト相分率およびフェライト結晶粒径(フェライト相の平均結晶粒径)について、以下の方法により測定した。これらの結果を表1、2に示す。
<固溶N量>
供試材から切り出したサンプルで、JIS G 1228に準拠する鋼中の全N量から、全N化合物量を差し引いて固溶N量を算出する。
(a)鋼中の全N量は、不活性ガス融解法−熱伝導度法を用いる。供試鋼素材からサンプルを切り出し、サンプルをるつぼに入れ、不活性ガス気流中で融解してNを抽出し、熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定する。
(b)鋼中の全N化合物量は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法を用いる。供試鋼素材からサンプルを切り出し、10%AA系電解液(鋼表面に不働態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中で、定電流電解を行なう。約0.5gサンプルを溶解させ、不溶解残渣(N化合物)を穴サイズが0.1μmのポリカーボネート製のフィルタでろ過する。不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウム及び純Cuチップ中で加熱して分解し、ろ液に合わせる。この溶液を水酸化ナトリウムでアルカリ性にした後、水蒸気蒸留を行い、留出したアンモニアを希硫酸に吸収させる。フェノール、次亜塩素酸ナトリウム及びペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させ、光度計を用いて、その吸光度を測定する。
上記の方法によって求めた鋼中の全N量から全N化合物量を差し引くことで鋼中の固溶N量を算出する。
<固溶C量>
固溶C量の測定には、高温弾性率等同時測定装置(日本テクノプラス株式会社製,EG−HT)を用いた。試験方法は下記のとおりである。そして、図1に示すように内部摩擦のピーク値を固溶C量とした。図1は、供試材1Bの内部摩擦の測定結果を示すものである。
方法:片持ち共振法
温度:室温〜200℃(2℃ピッチ)
雰囲気:アルゴン雰囲気
試料形状:2mm(厚さ)×10mm(幅)×60mm(長さ)
<セメンタイト相分率、および、フェライト結晶粒径>
前記それぞれの丸棒材(熱間圧延材、熱間鍛造材)の表面から円柱の直径の1/4の深さの位置かつ横断面が観察できるように、丸棒材の長手方向に対して垂直に切断して樹脂に埋め込み、切断面をエメリー紙およびダイヤモンドバフで鏡面に研磨し、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させた。腐食面を光学顕微鏡で観察して構成組織および結晶粒を判別した。組織解析は、100倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、これらの写真に対して、画像解析ソフト(Image Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用いて画像を2値化して、白色の領域をフェライト相、黒色の領域をセメンタイトとし、それぞれの面積率を求め、5視野の平均値をセメンタイトの面積率(相分率)とした。
フェライト結晶粒径の測定は、400倍で5箇所(5視野)の写真を撮影し、写真に直線を引き、この直線と交差する結晶粒界の数をカウントして結晶粒径の平均値を算出し、さらに5視野の平均値を平均結晶粒径とした。
Figure 0005379651
Figure 0005379651
これらの供試材について、最大変形抵抗(MPa)、部品硬さHとしてビッカース硬さ(Hv)を測定し冷間加工性について評価を行うと共に、耐時効軟化性について評価を行った。その結果を表3、4に示す。
<冷間加工性の評価>
表1、2に示す供試材(φ80mmの丸棒材)No.1A〜2Zの中心部(直径の1/4位置)から、φ10mm×15mmの試験片を切り出した。この試験片を、1600トンプレスを用い、端面を拘束した状態で、表3、4に示す室温加工温度で、ひずみ速度10/sの冷間鍛造により試験片の軸方向に80%まで圧縮して、冷間鍛造材を作製した。なお、加工ひずみ速度は、加工中(塑性変形中)のひずみ速度の平均値とした。なお、圧縮率は、試験片の圧縮方向長をH、圧縮後(冷間鍛造材)の圧縮方向長をHとして表したとき、(H−H)/H×100で算出される。そして、冷間鍛造時に、1600トンプレスに付属のロードセルと変位計を用いて、変位抵抗−変位曲線を記録し、この曲線における変形抵抗の最大値を最大変形抵抗とした。また、冷間鍛造により割れの発生した冷間鍛造材を「×」、割れのない冷間鍛造材を「○」として、評価した。
得られた各冷間鍛造材について、冷間加工後の強度(部品硬さH)として、冷間鍛造材のビッカース硬さを測定した。冷間鍛造材を中心位置で圧縮方向と平行に切断、樹脂に埋め込んで試料として調整し、表面研磨後、荷重を1000gとして、冷間鍛造材の円柱形の軸方向中央における直径の1/4位置の左右3点ずつ計6点のビッカース硬さH(Hv)を測定した。
<耐時効軟化性の評価>
前記で得られた各冷間鍛造材を400℃×120分で時効処理し、前記と同様にして部品硬さH(ビッカース硬さ(Hv))を測定した。そして、耐時効軟化性の指標として、下式(1)を用い、式(1)を満足する冷間鍛造材を「○」、満足しない冷間鍛造材を「×」として評価した。
(H/H)×100≧90・・・(1)
:冷間加工直後の部品硬さ(Hv)
:時効処理後の部品硬さ(Hv)
これらの試験結果において、冷間加工性が「○」、耐時効軟化性が「○」のものを、総合判定を「○」と表示した。一方、冷間加工性および耐時効軟化性の少なくとも一方が「×」のものを、総合判定「×」と表示した。これらの結果を表3、4に示す。
Figure 0005379651
Figure 0005379651
表3、4に示すように、供試材No.1A〜1C、1D−2、1D−3、1E−3、1E−4、1E−7、1E−8、1F、1G−3、1G−4〜2F、2S〜2Z(実施例)は、本発明の範囲を満たすため、総合判定が「○」であった。一方、供試材No.1D−1、1E−1、1E−2、1E−5、1E−6、1E−9、1G−1、1G−2、1G−5、2G〜2R(比較例)は、本発明の範囲を満たさないため、総合判定が「×」であった。具体的には、以下のとおりである。
供試材No.1D−1は、加熱温度が低く、固溶N量およびフェライト結晶粒径が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.1E−1は、冷却速度が小さく、固溶N量が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.1E−2は、冷却速度が小さく、固溶N量およびフェライト結晶粒径が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材験No.1E−5は、冷却速度が大きく、フェライト結晶粒径が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。
供試材No.1E−6は、冷却速度変化点温度が低く、固溶C量が下限値未満、セメンタイト相分率が上限値を超えるため、割れが発生し、式(1)も満足しなかった。供試材No.1E−9は、冷却速度変化点温度が高く、フェライト結晶粒径が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.1G−1は、冷却速度が小さく、固溶C量が下限値未満、セメンタイト相分率が上限値を超えるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.1G−2は、冷却速度が小さく、固溶C量が下限値未満、セメンタイト相分率が上限値をこえるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.1G−5は、冷却停止温度が高く、固溶C量が下限値未満、セメンタイト相分率が上限値を超えるため、式(1)を満足しなかった。
供試材No.2Gは、C量が下限値未満、固溶C量が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.2Hは、C量が上限値を超え、固溶C量およびセメンタイト相分率が上限値を超えるため、割れが発生した。供試材No.2Iは、Si量が下限値未満であるため、割れが発生した。供試材No.2Jは、Si量が上限値を超えるため、割れが発生し、式(1)も満足しなかった。
供試材No.2Kは、Mn量が下限値未満であるため、割れが発生した。供試材No.2Lは、Mn量が上限値超えるため、割れが発生した。供試材No.2Mは、P量が上限値を超えるため、割れが発生した。供試材No.2Nは、S量が上限値を超えるため、割れが発生した。
供試材No.2Oは、Al量が下限値未満、フェライト結晶粒径が上限値を超えるため、割れが発生した。供試材No.2Pは、Al量が上限値を超え、固溶N量が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.2Qは、N量および固溶N量が下限値未満であるため、式(1)を満足しなかった。供試材No.2Rは、N量および固溶N量が上限値を超えるため、割れが発生した。

Claims (6)

  1. C:0.03〜0.06質量%、Si:0.01〜0.06質量%、Mn:0.4〜1質量%、P:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、S:0.005〜0.05質量%、Al:0.005〜0.03質量%、N:0.008〜0.015質量%、残部はFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    固溶C量が0.01〜0.02質量%、かつ、固溶N量が0.008〜0.015質量%であり、
    組織中のセメンタイト相分率が2%以下(0%を含む)で残部がフェライト相であり、
    前記フェライト相の平均結晶粒径が20〜100μmであることを特徴とする冷間加工用鋼材。
  2. 前記成分組成がさらに、Cr:2質量%以下(0質量%を含まない)およびMo:1質量%以下(0質量%を含まない)のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間加工用鋼材。
  3. 前記成分組成がさらに、Cu:5質量%以下(0質量%を含まない)およびNi:5質量%以下(0質量%を含まない)のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷間加工用鋼材。
  4. 前記成分組成がさらに、Ca:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、REM:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.01質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.01質量%以下(0質量%を含まない)より成る群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の冷間加工用鋼材。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の冷間加工用鋼材を製造する方法であって、
    前記成分組成を有する鋼素材を、1100℃以上の温度に加熱して熱間圧延または熱間鍛造する工程と、
    前記熱間圧延または熱間鍛造した後に、700〜750℃まで1〜3℃/sの冷却速度で冷却し、引き続き5℃/s以上の冷却速度で300℃以下まで冷却する工程とを含むことを特徴とする冷間加工用鋼材の製造方法。
  6. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の冷間加工用鋼材に冷間加工を施して製造された冷間加工部品であって、
    前記冷間加工部品に400℃×120分の時効処理を施した後の部品硬さが、下式(1)を満足することを特徴とする冷間加工部品。
    (H/H)×100≧90・・・(1)
    :冷間加工直後の部品硬さ(Hv)
    :時効処理後の部品硬さ(Hv)
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