JP4934481B2 - 高速冷間加工用鋼、並びに高速冷間加工部品およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.03%〜0.6%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.005〜0.6%、
Mn:0.05〜2%、
P:0.05%以下(0%を含まない)、
S:0.05%以下(0%を含まない)、
N:0.008〜0.04%、
をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物からなり、該不純物において、
Al:0.001%以下(0%を含む)、
Ti:0.002%以下(0%を含む)、
Nb:0.001%以下(0%を含む)、
V:0.001%以下(0%を含む)、
Zr:0.001%以下(0%を含む)、
B:0.0001%以下(0%を含む)、
Ta:0.0001%以下(0%を含む)、
Hf:0.0001%以下(0%を含む)、
を満たし、かつ下記(1)式を満足する。
14[Al]/27+14[Ti]/47.9+14[Nb]/92.9+14[V]/50.9+14[Zr]/91.2+14[B]/10.8+14[Ta]/180.9+14[Hf]/178.5≦0.002% ・・・式(1)
[式(1)中、[ ]は各元素の鋼中の全含有量(質量%)を表す。]
Ca:0.05%以下(0%を含まない)、
希土類元素(REM):0.05%以下(0%を含まない)、
Mg:0.02%以下(0%を含まない)、
Li:0.02%以下(0%を含まない)、
Pb:0.1%以下(0%を含まない)、
Bi:0.1%以下(0%を含まない)、
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
H≧(DR+1000)/6 ・・・(2)式
但し、H:部品強度(Hv)、DR:変形抵抗(MPa)
また、高速で冷間加工を行なうことは、部品の生産性向上および省エネルギー化に寄与することができる。
本発明の高速冷間加工用鋼は、良好な冷間加工性を達成するために、化学成分量が適正化されていることが特徴の一つであるので、以下、鋼の化学成分および固溶N量について説明する。
Cは、高速冷間加工部品の強度を確保するために必要な元素である。そこでC量を0.03%以上と定めた。より好ましくは0.04%以上、さらに好ましくは0.05%以上である。一方、C量が多すぎると被削性および冷間加工性が劣化する。そこでC量の上限を0.6%と定めた。より好ましい上限は、0.5%、さらに好ましくは0.4%である。
Siは製鋼過程において脱酸剤として使用される元素である。Si量が少ないと、脱酸が不足することによって、凝固過程でガスが発生し、これらが欠陥として作用しやすくなるため、変形能を劣化させる。この効果を有効に発揮させる為には0.005%以上添加する必要がある。より好ましい下限は、0.01%である。しかしながら、Siの過剰な添加は、脱酸の効果が飽和し、且つ冷間加工性が劣化する。そのため、上限を0.6%とする。より好ましい上限は、0.5%である。
Mnは製鋼過程において脱酸・脱硫元素として有効な元素である。Mn量が少ないと、結晶粒界にFeSが膜状に析出し、粒界強度を著しく低下させ、変形能を劣化させる。脱酸・脱硫の効果を有効に発揮させる為にはMnを0.05%以上添加する必要がある。より好ましい下限は、0.1%である。しかしながら、Mnの過剰な添加は、冷間加工性を劣化させるため、その上限を2%とする。より好ましい上限は、1.5%である。
Pは不可避的に不純物として含有される元素であるが、Pがフェライトに含有されるとフェライト粒界に偏析するので、冷間加工性を劣化させる。また、Pはフェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。従って、冷間加工性の観点からは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招く。そのため、冷間加工性および工程能力を考慮して、上限を0.05%とした。より好ましくは、0.03%以下とするのが良い。但し、P量を0とすることは、工業的に困難である。
Sは不可避的に不純物として含有する元素であるが、MnSの介在物を形成し、変形能を劣化させる。従って、極力低減することが望ましいので、変形能の観点から上限を0.05%とした。好ましい範囲は、0.03%以下である。一方、Sは被削性の向上には有効な元素であり、積極的に含有させる場合もある。被削性を考慮すると、Sは、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.006%以上含有させることが推奨される。
ここでは、鋼中の全N量について説明する。N(窒素)は、鋼中に固溶して、冷間加工後の部品強度を向上させる効果を有し、本発明において重要な元素である。しかしながら、鋼中の全N量が過剰であると、固溶N量が過剰となり、冷間加工時に割れが生じることがある。更に、鋼材の内部欠陥や、連続鋳造時のスラブ割れも発生しやすくなる。そこで、鋼の変形能、材質の安定性および連続鋳造時の歩留まり向上の観点から、鋼中の全N量の上限を0.04%と定めた。より好ましい上限は、0.03%である。一方、全N量の下限は、固溶N量を確保するために、0.008%以上、より好ましくは0.009%以上含有させる。
Alは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、AlNを形成する。このAlNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Al量は低ければ低い程良いので、0.001%以下とした。より好ましくは0.0005%以下、最も好ましくは0%である。
Tiは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、TiNを形成する。このTiNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Ti量は低ければ低い程良いので、0.002%以下とした。より好ましくは0.001%以下、最も好ましくは0%である。
Nbは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、NbNを形成する。このNbNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Nb量は低ければ低い程良いので、0.001%以下とした。より好ましくは0.0005%以下、最も好ましくは0%である。
Vは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、VNを形成する。このVNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、V量は低ければ低い程良いので、0.001%以下とした。より好ましくは0.0005%以下、最も好ましくは0%である。
Zrは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、ZrNを形成する。このZrNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Zr量は低ければ低い程良いので、0.001%以下とした。より好ましくは0.0005%以下、最も好ましくは0%である。
Bは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、BNを形成する。このBNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、B量は低ければ低い程良いので、0.0001%以下とした。より好ましくは0.00005%以下、最も好ましくは0%である。
Taは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、TaNを形成する。このTaNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Ta量は低ければ低い程良いので、0.0001%以下とした。より好ましくは0.00005%以下、最も好ましくは0%である。
Hfは固溶Nと結合し、固溶N量を減少させ、HfNを形成する。このHfNは、鋼の析出強化や結晶粒粗大化防止に作用するので、変形抵抗を増大させる。そのため、Hf量は低ければ低い程良いので、0.0001%以下とした。より好ましくは0.00005%以下、最も好ましくは0%である。
14[Al]/27+14[Ti]/47.9+14[Nb]/92.9+14[V]/50.9+14[Zr]/91.2+14[B]/10.8+14[Ta]/180.9+14[Hf]/178.5≦0.002% ・・・(1)式
固溶Nは、上述したように、高速冷間加工後の部品強度を向上させる効果を有する。高速冷間加工後の部品強度の上昇効果を十分に確保するために、その下限を0.006%と定めた。好ましい下限は、0.007%、さらに好ましい下限は、0.008%である。一方、固溶N量が過剰になると、変形能が劣化する。そのため、固溶N量は、好ましくは0.035%以下、より好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。なお、固溶N量は、当然のことながら、鋼中の全N量を超えることはない。ここで、本発明における「固溶N量」の値は、JIS G 1228に準拠し、鋼中の全N量から全N化合物を差し引くことで鋼中の固溶N量を算出することができる。
Crは、結晶粒界の強度を高めることにより鋼の変形能を向上させる元素である。そこで必要に応じて、Crを好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上含有させることが推奨される。しかし、Crは過剰になると変形抵抗を増大し、冷間加工性が低下する。従って、Crを含有させる場合、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。
Cuは、鋼材を歪み時効させ硬化させる作用を有するので、加工後の部品強度を向上させることができる。そこで必要に応じて、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上を含有させることが推奨される。しかしながら、過剰に添加しても、その効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず経済的に不利になる上、冷間加工性の劣化を招く、部品の表面性状を悪化させるなどの不具合が生じる。このため、Cuの上限は5%とした。好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
Niは、フェライト−パーライト鋼の変形能を向上させるのに有効である。また、Cu添加時に鋼材表面に発生する表面欠陥の防止に有効である。そこで必要に応じて、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上を含有させることが推奨される。そのため、Cuを添加した時には、Cu量と同量か、Cu量の7割以上添加するのが望ましい。しかしながら、5%を超えて添加しても、効果が飽和し添加量に見合う効果が期待できず経済的に不利となる上、逆に冷間加工性が劣化する。そのため、Ni量の上限は5%とした。Ni量は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
Moは、加工後の硬さ及び変形能を増加させる作用を有している。そこで必要に応じて、好ましくは0.04%以上、より好ましくは0.08%以上を含有させることが推奨される。しかしながら、2%を超える添加は冷間加工性を劣化させる。そのため、Mo量の上限は2%とした。Mo量は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。
Caは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を高めると共に、被削性向上に寄与する元素である。そこで必要に応じて、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.01%以上を含有させることが推奨される。しかしながら、過剰に添加してもその効果が飽和し、添加量に見合う効果が期待できず経済的に不利である。そのため、Caの上限は0.05%とした。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
本発明は、上記化学成分を含有し、上記(1)式を満たす鋼を高速冷間加工に供することを特徴の1つとしている。本発明の鋼は、固溶Nを比較的多量に含有するが、それにもかかわらず、良好な冷間加工性を維持するためには、本発明の鋼を、好ましくは100/s以上、より好ましくは150/s以上、さらに好ましくは200/s以上の歪み速度で冷間加工することが推奨される。一方、歪み速度が速すぎると、断熱的な温度上昇が生じ、割れが発生しやすくなるため、歪み速度の上限値は、好ましくは500/s以下、より好ましくは450/s以下、さらに好ましくは400/s以下である。
高速冷間加工により製造される部品は、部品強度と高速冷間加工中の変形抵抗のバランスが適切なものであることが望ましく、高速冷間加工用鋼を加工温度200℃以下、歪み速度100/s以上で高速冷間加工した場合、高速冷間加工後の部品強度(H)、及び高速冷間加工中の変形抵抗の最大値(DR)が下記(2)式を満たしていることが好ましい。
H≧(DR+1000)/6・・・(2)式
但し、H:部品強度(Hv)、DR:変形抵抗(MPa)である。
部品No.6はC量が多い鋼記号1Fを使用した例であり、Cが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.7はSi量が少ない鋼記号1Gを使用した例であり、Siが所定の範囲より少ないため、割れが発生する。
部品No.14はSi量が多い鋼記号1Nを使用した例であり、Siが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.15はMn量が少ない鋼記号1Oを使用した例であり、Mnが所定の範囲より少ないため、割れが発生する。
部品No.24はMn量が多い鋼記号1Xを使用した例であり、Mnが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.25及びNo.26はP量が多い鋼記号1Y及び1Zを使用した例であり、Pが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.27及びNo.28はS量が多い鋼記号2A及び2Bを使用した例であり、Sが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.29はN量が少ない鋼記号2Cを使用した例であり、Nが所定の範囲より少なく、固溶N量が少ないため、冷間加工性と硬さとのバランスが悪い。
部品No.42はN量が多い鋼記号2Kを使用した例であり、Nが所定の範囲を超えているため、割れが発生する。
部品No.31〜34は本発明の規定を満たす成分組成の鋼記号2Eの鋼材を用いているが、高速冷間加工時の歪み速度が遅く、動的歪み時効が発生し、割れが起こる。
部品No.37〜38は本発明の規定を満たす成分組成の鋼記号2F〜2Gの鋼材を用いているが、高速冷間加工時の温度が高く、動的歪み時効が発生し、割れが起こる。
部品No.52はAl量、B量が多く、(1)式を満たさない鋼記号2Uを使用した例であり、冷間加工性と硬さとのバランスが悪い。
部品No.53はTi量が多く、(1)式を満たさない鋼記号2Vを使用した例であり、冷間加工性と硬さとのバランスが悪い。
部品No.54はV量が多く、(1)式を満たさない鋼記号2Wを使用した例であり、冷間加工性と硬さとのバランスが悪い。
部品No.57はTi量、V量、B量のそれぞれが多く、(1)式を満たさない鋼記号2Zを使用した例であり、冷間加工性と硬さとのバランスが悪い。
Claims (9)
- C:0.03%〜0.6%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:0.005〜0.6%、
Mn:0.05〜2%、
P:0.05%以下(0%を含まない)、
S:0.05%以下(0%を含まない)、
N:0.008〜0.04%、
をそれぞれ含有し、残部は鉄及び不可避的不純物からなり、該不純物において、
Al:0.001%以下(0%を含む)、
Ti:0.002%以下(0%を含む)、
Nb:0.001%以下(0%を含む)、
V:0.001%以下(0%を含む)、
Zr:0.001%以下(0%を含む)、
B:0.0001%以下(0%を含む)、
Ta:0.0001%以下(0%を含む)、
Hf:0.0001%以下(0%を含む)、
を満たし、かつ下記(1)式を満足していると共に、固溶状態としてのNの含有量が0.006%以上であることを特徴とする高速冷間加工用鋼。
14[Al]/27+14[Ti]/47.9+14[Nb]/92.9+14[V]/50.9+14[Zr]/91.2+14[B]/10.8+14[Ta]/180.9+14[Hf]/178.5≦0.002% ・・・・(1)式
[式(1)中、[ ]は各元素の鋼中の全含有量(質量%)を表す。] - さらに、Cr:2%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の高速冷間加工用鋼。
- さらに、Cu:5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1または請求項2に記載の高速冷間加工用鋼。
- さらに、Ni:5%以下(0%を含まない)および/またはCo:5%以下(0%を含まない)を含有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼。
- さらに、Mo:2%以下(0%を含まない)および/またはW:2%以下(0%を含まない)を含有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼。
- さらに、
Ca:0.05%以下(0%を含まない)、
希土類元素(REM):0.05%以下(0%を含まない)、
Mg:0.02%以下(0%を含まない)、
Li:0.02%以下(0%を含まない)、
Pb:0.1%以下(0%を含まない)、
Bi:0.1%以下(0%を含まない)、
よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼。 - 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼を加工温度200℃以下で高速冷間加工することを特徴とする高速冷間加工部品の製造方法。
- 請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼を歪み速度が100/秒以上で高速冷間加工することを特徴とする高速冷間加工部品の製造方法。
- 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の高速冷間加工用鋼を加工温度200℃以下、歪み速度100/s以上で高速冷間加工することにより製造される高速冷間加工部品であって、高速冷間加工後の部品強度(H)、及び高速冷間加工中の変形抵抗の最大値(DR)が下記(2)式を満たしていることを特徴とする高速冷間加工部品。
H≧(DR+1000)/6 ・・・(2)式
但し、H:部品強度(Hv)、DR:変形抵抗(MPa)
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