JP4258371B2 - 加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、Ti炭硫化物を含有している加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼の改良に関するものである。
日用雑貨品、家電製品外装・内装・部品、OA機器外装・内装・部品、携帯電話外装、自動車やオートバイ等の内装部品や外装部品、ライト類の反射板、光学レンズ、食品容器、医療機器、化粧容器、受板、ペットボルト、ゴム型類、樹脂類、導光板、治工具類など、プラスチック或いはプラスチックと同等の成形品を成形する金型に好適に用いられる鉄鋼材料として、低硬度のプレハードン鋼が多用されている。例えばSCM420系の構造用鋼はその一例で、大型サイズのものに至るまで十分な焼入れ性が確保されるような成分であり、非調質状態でもベイナイト組織で、プレハードン鋼に必要なHRC(ロックウェルCスケール硬さ)32前後の硬さと単一組織を得ている。
一方、類似成分で低硬さのプレハードン鋼では、被削性の向上の観点で、一般にベイナイト組織よりもフェライト+パーライト組織の方が被削性は優位となることが知られているが、被削性は硬さや成分の影響に敏感であるため、硬さや成分によっては、フェライト+パーライト組織としたからといって必ずしも被削性が向上するとは限らない。すなわち、焼入れ性が高い従来鋼でフェライト+パーライト組織を得るためには成分調整を行なうことが最も安易な手段であるが、被削性が向上するかどうかは個々の成分によって異なる。
また、快削化手法として、快削化元素を添加することも可能である。しかし、通常の快削化元素の添加ではMn硫化物を形成するため、鏡面性の低下、靱性の低下を招く。
更に、近年では金型の加工に際して放電加工が行なわれるようになってきており、放電加工後の表面粗さを低減することも金型に要求される項目となっている。放電加工による表面粗さは快削化元素を添加し、通常のMn硫化物を形成した場合、添加量に応じて表面粗さが劣化することが特許文献1で知られている。そのため、快削化元素の添加は特性が劣化しない必要最低限までに留められており、快削化効果を十分に得ることができない。
これに対し、快削化手法として快削化元素を添加するが、利用する非金属介在物としてTi炭硫化物を用いることが、特許文献2で提案されている。すなわち、Ti炭硫化物は、Mn硫化物に比較して粒子が小さいため面粗さが向上し、鏡面性の低下や靱性の低下を抑制しつつ被削性を向上させることができるのである。なお、Ti炭硫化物は、TiをVやZrに置き換えたり、SをSeやTeに置き換えたりすることができるため、本明細書ではTi、V、およびZrから選ばれた少なくともTiを含む1または2種以上の元素と、Cと、S、Se、およびTeから選ばれた1または2種以上の元素と、の種々の化合物をTi炭硫化物と総称し、例えば(Ti、Zr、V)4 2 (S、Se、Te)2 と表記できるとともに、一般にTi4 2 2 を含んで構成される。
特開2001−294973号公報 特開2002−332539号公報
しかしながら、このようにTi炭硫化物を利用した鋼材においても、従来の成分ではTi炭硫化物だけでなく他の介在物も形成されるため、放電加工を行なった際に十分な表面粗さが得られない場合があった。すなわち、従来の放電加工では加工面の面粗さが粗い(平均面粗さ100μm以上)ため、従来鋼のように非金属介在物を含んでいてもその部分は目立つことが無かったが、近年の放電加工技術の進歩に伴い、加工面の面粗さが飛躍的に向上したため、放電加工中に非金属介在物が抜け落ちたり溶融したりして生じるピット(穴や溝)が目立つようになったのである。例えば、Mn硫化物は幅が10μm程度で長さが50μm程度のものが殆どであり、しかも融点が低いため、放電加工時にMn硫化物部分が局所的に溶融したりして、比較的大きなピットが発生する。
また、プラスチック成形では、僅かな表面粗さでプラスチックの透明性が損なわれるため、用途によっては金型表面についても高い表面粗さ精度が要求されることがあるが、鏡面仕上げ(研削や研磨など)を行なった場合でも、上記非金属介在物に起因して十分に満足できる鏡面性(面粗さ)が得られ難い場合があった。すなわち、金型の成形面を放電加工する場合でもエンドミル等により切削加工する場合でも、非金属介在物の脱落や溶融などに起因して比較的大きなピットが発生するため、鏡面仕上げを行なってもそれ等のピットに起因して十分に満足できる表面粗さが得られ難いとともに、鏡面仕上げに多くの工数や費用が掛かるのである。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、放電加工や鏡面仕上げ加工等において一層高い表面粗さが得られるプラスチック成形金型用鋼を提供することにある。
かかる目的を達成するために、種々の研究、実験を重ねたところ、Mn硫化物等の他の介在物を減らしてTi炭硫化物をできる限り単独形成させるためには、Mnの含有量を低減することが有効であるとともに、Ti炭硫化物が単独に近ければ近い程、被削性と鏡面性、靱性等のバランスに優れたプラスチック成形金型用鋼が得られ、Mnの含有量を0.4wt%未満にすると、放電加工性すなわち放電加工の面粗さが格段に向上することを見出した。また、Mnの含有量を低減すると、従来添加できないSを添加しても、特性を劣化させずに快削化できる。
また、被削性が向上するようにフェライト+パーライト組織とするため、焼入れ性が低下するように成分調整を行なうに際して、焼入れ性に寄与し且つTi炭硫化物の形成を阻害するMn元素を低減することで目的の組織に調整することが可能であることを見出した。組織の差による被削性の向上効果は大きく、成分の影響は殆どないと考えられる。但し、成分によっては、ベイナイト組織でも被削性や鏡面性、放電加工性の向上効果が得られる。
本発明はかかる知見に基づいて為されたもので、第1発明は、加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼であって、(a) 0.10≦C≦0.35wt%、0.1≦Si≦2.0wt%、0.01≦Mn<0.40wt%、1.0≦Cr≦5.0wt%、および0.01≦Mo≦1.0wt%と、(b) 0.01≦Ti+0.94V+0.53Zr≦0.80wt%を満足し、且つ0.1≦Ti/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦1.0を満足するTi、V、およびZrから選ばれた少なくともTiを含む1または2種以上の元素と、(c) 0.005≦S+0.41Se+0.25Te≦0.20wt%を満足するS、Se、およびTeから選ばれた1または2種以上の元素と、を基本成分として含有し、(d) C/(Ti+0.94V+0.53Zr)が0.2〜15.0の範囲内で、且つ(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)が0.20〜0.70の範囲内であるとともに、(e) 残部がFe及び不可避的不純物から成り、(f) 前記Ti、V、およびZrから選ばれた少なくともTiを含む1または2種以上の元素と、前記Cと、前記S、Se、およびTeから選ばれた1または2種以上の元素と、の化合物(すなわちTi炭硫化物)を含む非金属介在物が、材料断面積の面積率で0.01〜4.0%含み、(g) ロックウェルCスケール硬さ(HRC)が26.0〜36.0の範囲内であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の基本成分に加えて、0.001≦Cu≦0.50wt%、0.005≦Ni≦0.50wt%、0.001≦Co≦0.50wt%、および0.0005≦B≦0.010wt%の何れか1種以上を更に含有していることを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明の基本成分に加えて、0.001≦W≦0.50wt%、0.001≦Nb≦0.30wt%、および0.001≦Ta≦0.30wt%の何れか1種以上を更に含有していることを特徴とする。
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの基本成分に加えて、0.0005≦Mg≦0.10wt%、0.0005≦Al≦0.050wt%、0.0003≦O≦0.015wt%、0.0005≦N≦0.025wt%、0.001≦REM(希土類金属)≦0.10wt%、および0.0002≦H≦0.010wt%の何れか1種以上を更に含有していることを特徴とする。
第5発明は、第1発明〜第4発明の何れかの基本成分に加えて、0.001≦P≦0.030wt%、0.001≦Sn≦0.050wt%、0.0002≦Ca≦0.10wt%、0.001≦Pb≦0.20wt%、および0.001≦Bi≦0.30wt%の何れか1種以上を更に含有していることを特徴とする。
第6発明は、第1発明〜第5発明の何れかのプラスチック成形金型用鋼において、フェライト+パーライト組織であることを特徴とする。
このような本発明のプラスチック成形金型用鋼によれば、硬さHRC26.0〜36.0で優れた被削性が得られるとともに、Mn硫化物等のTi炭硫化物以外の非金属介在物の形成が抑制されて放電加工等の加工面粗さが向上する。特に、放電加工では、Mnの含有量が0.40wt%以上の場合に比較して加工面粗さが格段に向上し、加工条件にもよるが例えば数μm程度の非常に高い面粗さが得られるようになる。これにより、金型製作の納期短縮、加工費用の低減、鏡面加工費用の低減、金型修正費用の低減、金型の耐久性向上等の種々の効果が得られる。
放電加工性について具体的に説明すると、Mn硫化物や炭化物、窒化物、酸化物等のTi炭硫化物以外の非金属介在物は、放電加工中に抜け落ちたり溶融したりして面粗さを損なう一方、ワイヤーカット時にはワイヤーが引っ掛かって切断を引き起こす原因となる場合もある。これ等は何れも介在物のサイズが大きいことが要因となっている。これに対し、Ti炭硫化物は非常にサイズが小さい(約2〜10μm程度)ため、放電加工中に抜け落ち難いとともに、抜け落ちてもピットの大きさが小さく、優れた加工面粗さが得られるのである。また、Ti炭硫化物を多く鋼中に含むことが可能で、Ti炭硫化物による快削化の効果も十分に得ることができる。また、放電加工では介在物の融点が影響するが、融点が低いMn硫化物は放電加工時に溶融し易いが、融点が高いTi炭硫化物は融け難く、この点でも放電加工性(表面粗さ)が向上する。
先ず、含有成分の範囲について具体的に説明する。
〔0.10≦C≦0.35wt%〕
C(炭素)は、プレハードン状態でHRC26〜36の硬さを確保するため、0.10wt%以上の添加が必要である。但し、過度の添加は、必要以上の硬度となるだけでなく、被削性低下や不要な炭化物の晶出を招くため0.35wt%を上限とする。
〔0.1≦Si≦2.0wt%〕
Si(珪素)は、脱酸剤として0.1wt%以上の添加となる。多く添加することで硬さ向上にも寄与する。Cr(クロム)やMo(モリブデン)等の偏析を助長するため、2.0wt%を上限とする。更に被削性向上を目的とした場合、意図的に0.5wt%以上添加することができる。
〔0.01≦Mn<0.40wt%〕
Mn(マンガン)は、焼入れ性を向上させる目的で添加されるが、多量に添加するとTi炭硫化物の形成を阻害し、Mn硫化物の形成を招くため、放電加工性の観点から0.40wt%未満に調整する必要がある。
〔1.0≦Cr≦5.0wt%〕
Cr(クロム)は、Mnと同様に必要硬さ、組織調整のために添加する。Ti炭硫化物を形成するためにMn量を低減するため、Mn分の焼入れ性や硬さを補填するために多く添加することができる。炭化物を形成して、基地の強化(硬さの向上)や耐摩耗性を向上させる効果もある。しかし、多過ぎると被削性が低下するので、上限を5.0wt%とする。また、3.0wt%以上の添加により耐錆性を付与することも可能である。
〔0.01≦Mo≦1.0wt%〕
Mo(モリブデン)は、Mnと同様に必要硬さ、組織調整のために添加する。Crと同様にMn分の焼入れ性や硬さを補填するために多く添加することができる。但し、過剰の添加は炭化物の形成を促進し、被削性が低下するため1.0wt%を上限とする。
〔0.01≦Ti+0.94V+0.53Zr≦0.80wt%、且つ0.1≦Ti/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦1.0〕
上記Ti、V、Zrは、何れもそれ等の元素のwt%である。Ti(チタン)は、Ti炭硫化物の形成に重要な元素で、例えば0.01≦Ti≦0.80wt%のTiを添加することが可能である。Tiの代替として、V(バナジウム)やZr(ジルコニウム)を利用することも可能で、上記範囲はTi当量で規定したものである。Ti(VおよびZrを含む)がCやSに対して過剰、或いは過小である場合、意図しない非金属介在物を形成したり鋼中に残ったりするため、CとSとのバランスが重要である。特にS量との兼ね合いであるが、0.80wt%を上限とする。
〔0.005≦S+0.41Se+0.25Te≦0.20wt%〕
上記S、Se、Teは、何れもそれ等の元素のwt%である。S(硫黄)は、Ti炭硫化物の形成に重要な元素で、例えば0.005≦S≦0.20wt%のSを添加することが可能である。Sの代替としてSe(セレン)やTe(テルル)を利用することも可能で、上記範囲はS当量で規定したものである。S(SeおよびTeを含む)がCやTi(チタン)に対して過剰、或いは過小である場合、S(SeおよびTeを含む)が鋼中に残ったり意図しない非金属介在物を形成したりするため、CやTiとのバランスが重要である。S(SeおよびTeを含む)を添加する場合、Ti炭硫化物を過剰に含ませても被削性向上の効果が得られなくなるため、上限を0.20wt%とする。
〔0.2≦C/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦15.0、0.20≦(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦0.70〕
上記C、Ti、V、Zr、S、Se、Teは、何れもそれ等の元素のwt%である。Ti炭硫化物の形成は、CとS(SeおよびTeを含む)、Ti(VおよびZrを含む)のバランスが重要で、0.2≦C/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦15.0、0.20≦(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦0.70の範囲を外れる程、Ti炭硫化物以外の非金属介在物が増加するため、被削性、放電加工性、鏡面性といった特性の劣化に繋がる。(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)については、0.25以上で且つ0.40以下であることが望ましい。
〔0.01≦Ti炭硫化物を含む非金属介在物の面積率≦4.0%〕
Ti炭硫化物の面積率については、被削性向上の効果を得るため0.01%以上含まれていることが必要で、逆に多過ぎると放電加工性の劣化を招くため4.0%を上限とし、Ti炭硫化物が単独で形成されることが望ましい。なお、Ti炭硫化物以外の非金属介在物が含まれる場合でも、Ti炭硫化物を含む非金属介在物の面積率が上記の範囲内で、その面積率のうちの90%以上がTi炭硫化物であれば効果を得ることができる。Ti炭硫化物以外の非金属介在物としては、Mn硫化物、Cr硫化物、酸化物、窒化物などである。
上記面積率の測定方法について具体的に説明すると、鋼材中から適当な大きさの試験片を採取し、幅15mm×長さ15mmの面を鏡面研磨する。鏡面研磨は、♯100→♯400→♯800→♯1000→♯1500→ダイヤモンド砥粒1μm(バフ)の順に実施する。鏡面研磨後、光学顕微鏡の倍率200倍を用いて、ランダムに10視野撮影する。そして、1視野毎のTi炭硫化物の介在物の面積率を測定し、10視野の平均値を最終的な面積率とする。
〔0.001≦Cu≦0.50wt%、0.005≦Ni≦0.50wt%、0.001≦Co≦0.50wt%、0.0005≦B≦0.010wt%〕
これ等の元素Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、B(ホウ素)は、焼入れ性を向上させるために添加することができる。過度の添加は必要以上に焼入れ性を向上させ、硬さ向上にも寄与するため、それぞれ上記上限値以下に調整する必要がある。
〔0.001≦W≦0.50wt%、0.001≦Nb≦0.30wt%、0.001≦Ta≦0.30wt%〕
これ等の元素W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)は、炭化物を形成し、結晶粒粗大化抑制に効果がある。金型特性として靱性低下は大きな特性劣化となるため、添加することは可能であるが、過剰に添加すると硬さの向上や被削性の劣化に繋がるため、それぞれ上記上限値以下に調整する必要がある。
〔0.0005≦Mg≦0.10wt%、0.0005≦Al≦0.050wt%、0.0003≦O≦0.015wt%、0.0005≦N≦0.025wt%、0.001≦REM≦0.10wt%、0.0002≦H≦0.010wt%〕
これ等の元素Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、O(酸素)、N(窒素)、REM(希土類金属)、H(水素)は、不純物元素として鋼中に含まれるが、これ等の元素の含有量が増えると、酸化物(アルミナ、MgO等)や窒化物(AlN等)を形成する。これ等の化合物は、特に放電加工後の表面粗さを粗くし、或いは鏡面性を低下させるため、それぞれ上記上限値以下に規制する必要がある。製造コストの兼ね合いであるが、望ましくはO≦0.005wt%、N≦0.015wt%にするのが良い。
〔0.001≦P≦0.030wt%、0.001≦Sn≦0.050wt%、0.0002≦Ca≦0.10wt%、0.001≦Pb≦0.20wt%、0.001≦Bi≦0.30wt%〕
これ等の元素P(燐)、Sn(錫)、Ca(カルシウム)、Pb(鉛)、Bi(ビスマス)は、Ti炭硫化物による快削化効果以外に、更に被削性を向上させる目的で添加することができる。過度に添加した場合、被削性向上の効果に比べ、靱性の低下や鏡面性の低下等、他の特性の劣化が大きくなるため、それぞれ上記上限値以下に規制する必要がある。
また、本発明は、プラスチック或いはプラスチックと同等の成形品を成形するための金型用鋼に好適に適用される。
次に、図1の手順に従って表1に示す各鋼材(従来鋼1〜4、比較鋼1〜7、発明鋼1〜17)の試験片を作成し、被削性試験、放電加工性試験、鏡面性評価試験、およびシャルピー衝撃試験を行なった結果を説明する。なお、発明鋼1〜17は、何れも非金属介在物の面積率が0.01〜4.0%の範囲内で、そのうちの90%以上がTi炭硫化物である。また、表1の網掛け部分は、本発明の必須成分である請求項1の基本成分について、本発明の数値範囲から外れている項目を表している。表1の「C/Ti」欄、「S/Ti」欄は、厳密にはそれぞれ「C/(Ti+0.94V+0.53Zr)」、「(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)」である。
Figure 0004258371
図1の溶解工程は、大気誘導炉により溶解し、各鋼材について50kgのインゴットを製造する。鍛造工程では、1200℃に加熱保持した後、断面30×50の大きさに鍛造加工する。熱処理工程はプレハードンに相当するもので、980℃で30分保持した後、空冷(冷却速度1〜0.01℃/秒)し、650℃で1時間保持した後、再び空冷する。硬さ測定では、所定のプレハードン硬さ(HRC26〜36)に調整されているか否かを確認する。試験片精加工では、被削性試験用、放電加工性試験用、鏡面性評価試験用、およびシャルピー衝撃試験用の各試験片を作成する。被削性試験用試験片は25×45×250mm、放電加工性試験用試験片は25×45×150mm、鏡面性評価試験用試験片は25×45×10mmの大きさで、シャルピー衝撃試験用試験片はJISに規定の3号試験片を用いる。
被削性試験は、工具径がφ10でTiAlNコーティングが施された超硬ソリッドエンドミルを使用して、以下の加工条件で切削加工を行い、工具の最大摩耗幅が400μmに達した時を工具寿命と判断して、工具寿命に達するまでの加工長さ(m)を測定した。したがって、この数値が大きい程被削性が優れていることを意味する。
(加工条件)
切削方法:側面切削(ダウンカット)
深さ:10mm
切り込み幅:1.2mm
切削速度:190m/min
送り速度:0.13mm/刃
潤滑方法:乾式
放電加工性試験は、長さ150mm×幅30mm×深さ5mmを放電加工し、加工後の表面状態のまま、任意に選んだ部位5箇所について、50mm測長で、JIS B0601(1994)の規定により算術平均粗さRa (μm)を測定した。この値が小さい程、面粗さが優れていることを意味する。
また、鏡面性評価試験は、機械研磨により♯150→♯400→♯800→♯1500→♯3000で鏡面加工を行い、任意に選んだ部位5箇所について、10mm測長で、JIS B0601(1994)の規定により算術平均粗さRa (μm)を測定した。放電加工性試験と同様に、この値が小さい程、面粗さが優れていることを意味する。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z2242の規定に従って常温で行い、靱性(吸収エネルギー)を求めた。この値が大きい程、ねばりがあって型が割れ難いことを意味する。
表2は、各鋼材の組織および調整硬さ(HRC)と共に、上記被削性試験、放電加工性試験、鏡面性評価試験、およびシャルピー衝撃試験の結果を示したものである。組織の欄の「B」はベイナイト、「F+P」はフェライト+パーライト、「M」はマルテンサイトを意味している。また、網掛け部分は、所定の合格範囲から外れている項目を表しており、発明鋼1〜17は何れも被削性、放電加工性、鏡面性、および靱性の総てについて満足できる良好な結果が得られた。
Figure 0004258371
図2の手順に従って表3に示す各鋼材(従来鋼5、発明鋼18〜19)を製造し、金型に加工して被削性および放電加工性を調べるとともに、その金型を用いて実際に射出成形を行なって靱性および耐久性について調べた結果を説明する。なお、発明鋼18、19は、何れも非金属介在物の面積率が0.01〜4.0%の範囲内で、そのうちの90%以上がTi炭硫化物である。また、表1の網掛け部分は、本発明の必須成分である請求項1の基本成分について、本発明の数値範囲から外れている項目を表している。表1の「C/Ti」欄、「S/Ti」欄は、厳密にはそれぞれ「C/(Ti+0.94V+0.53Zr)」、「(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)」である。
Figure 0004258371
図2の溶解工程は、大気誘導炉により溶解し、各鋼材について3tonのインゴットを製造する。圧延工程では、1230℃に加熱保持した後、断面150×300の大きさに圧延する。熱処理工程はプレハードンに相当するもので、980℃で90分保持した後、空冷(冷却速度1〜0.01℃/秒)し、650℃で2時間保持した後、再び空冷する。硬さ測定では、所定のプレハードン硬さ(HRC26〜36)に調整されているか否かを確認する。金型形状加工は、自動車車内のダッシュボードを成形するための金型形状に加工するもので、以下の3種類の加工を行なった。
加工1:位置決め、吊り穴用のドリル加工
加工2:放電加工による粗加工
加工3:エンドミルでの精加工
そして、上記加工1については、消耗ドリル本数で被削性を評価した。加工2については、加工後にJIS B0601(1994)の規定により算術平均粗さRa (μm)を測定して放電加工性を評価した。加工3については、工具の摩耗量を検査して被削性を評価した。
射出成形テストでは、総ショット数5000回を実施し、その後に金型表面を観察して割れおよび摩耗状態を検査した。
表4は、各鋼材の組織および調整硬さ(HRC)と共に、上記消耗ドリル本数、放電加工性(平均粗さRa )、工具摩耗量、使用後の金型の割れ(靱性)および摩耗量を示したもので、従来鋼5を基準にして評価した。かかる表4から明らかなように、消耗ドリル本数、工具摩耗に関する被削性、および放電加工性については、発明鋼18、19の方が従来鋼5に比較して優れている。また、割れ(靱性)については、従来鋼5と同程度か優れており、金型の摩耗については従来鋼5と同程度であった。
Figure 0004258371
図3は、前記表1の従来鋼1および発明鋼1を基本として、そのS(硫黄)およびTi(チタン)の含有率を種々変化させることにより、従来鋼1についてはMn硫化物の量を、発明鋼1についてはTi炭硫化物の量を、それぞれ変化させて鋼材を製造するとともに、放電加工を行なって平均面粗さRa (μm)を測定して、それ等のMn硫化物、Ti炭硫化物の面積率をパラメータとして表にしたものである。Mn硫化物およびTi炭硫化物の面積率の測定方法は、鋼材中から適当な大きさの試験片を採取し、幅15mm×長さ15mmの面を鏡面研磨した後、光学顕微鏡の倍率200倍を用いてランダムに10視野撮影し、1視野毎の非金属介在物の面積率を測定して、10視野の平均値を最終的な面積率とした。但し、発明鋼1に関しては、Mnの含有率などから非金属介在は総てTi炭硫化物と見做し、従来鋼1については総てMn硫化物と見做した。また、鏡面研磨は、♯100→♯400→♯800→♯1000→♯1500→ダイヤモンド砥粒1μm(バフ)の順で実施した。
この図3から明らかなように、Mn硫化物、Ti炭硫化物の面積率が同じでも、Ti炭硫化物が形成される本発明鋼の方が放電加工性(面粗さRa )が優れている。しかし、Ti炭硫化物の面積率が4%を越えると、放電加工性が急に悪くなるため、本発明ではTi炭硫化物の面積率を4%以下とし、その程度のTi炭硫化物が形成されるようにS(硫黄)等の含有率が定められている。
図4は、前記表1の本発明鋼1を基本として、そのMnの含有率を種々変化させて放電加工性(面粗さRa )への影響を調べたもので、Mnの含有率が0.4wt%以上になると放電加工性が急に悪くなるため、本発明ではMnの含有率を0.4wt%未満にしている。
以上、本発明の実施例を詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明鋼および従来鋼、比較鋼を用いて各種の試験を行なった実施例1の手順を説明する図である。 本発明鋼および従来鋼を用いて各種の試験を行なった実施例2の手順を説明する図である。 Mn硫化物およびTi炭硫化物の面積率と放電加工性との関係を調べた結果を示す図である。 Mnの含有率と放電加工性との関係を調べた結果を示す図である。

Claims (6)

  1. 0.10≦C≦0.35wt%、0.1≦Si≦2.0wt%、0.01≦Mn<0.40wt%、1.0≦Cr≦5.0wt%、および0.01≦Mo≦1.0wt%と、
    0.01≦Ti+0.94V+0.53Zr≦0.80wt%を満足し、且つ0.1≦Ti/(Ti+0.94V+0.53Zr)≦1.0を満足するTi、V、およびZrから選ばれた少なくともTiを含む1または2種以上の元素と、
    0.005≦S+0.41Se+0.25Te≦0.20wt%を満足するS、Se、およびTeから選ばれた1または2種以上の元素と、
    を基本成分として含有し、
    C/(Ti+0.94V+0.53Zr)が0.2〜15.0の範囲内で、且つ(S+0.41Se+0.25Te)/(Ti+0.94V+0.53Zr)が0.20〜0.70の範囲内であるとともに、
    残部がFe及び不可避的不純物から成り、
    前記Ti、V、およびZrから選ばれた少なくともTiを含む1または2種以上の元素と、前記Cと、前記S、Se、およびTeから選ばれた1または2種以上の元素と、の化合物を含む非金属介在物が、材料断面積の面積率で0.01〜4.0%含み、
    ロックウェルCスケール硬さ(HRC)が26.0〜36.0の範囲内である
    ことを特徴とする加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  2. 請求項1の基本成分に加えて、0.001≦Cu≦0.50wt%、0.005≦Ni≦0.50wt%、0.001≦Co≦0.50wt%、および0.0005≦B≦0.010wt%の何れか1種以上を更に含有している
    ことを特徴とする加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  3. 請求項1または2の基本成分に加えて、0.001≦W≦0.50wt%、0.001≦Nb≦0.30wt%、および0.001≦Ta≦0.30wt%の何れか1種以上を更に含有している
    ことを特徴とする加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  4. 請求項1〜3の何れか1項の基本成分に加えて、0.0005≦Mg≦0.10wt%、0.0005≦Al≦0.050wt%、0.0003≦O≦0.015wt%、0.0005≦N≦0.025wt%、0.001≦REM(希土類金属)≦0.10wt%、および0.0002≦H≦0.010wt%の何れか1種以上を更に含有している
    ことを特徴とする加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  5. 請求項1〜4の何れか1項の基本成分に加えて、0.001≦P≦0.030wt%、0.001≦Sn≦0.050wt%、0.0002≦Ca≦0.10wt%、0.001≦Pb≦0.20wt%、および0.001≦Bi≦0.30wt%の何れか1種以上を更に含有している
    ことを特徴とする加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
  6. フェライト+パーライト組織であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の加工性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
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