JP6794043B2 - 加工性および鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼 - Google Patents
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Description
Cは、鋼中に硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに、焼入性を高める元素である。その効果を得るためには、Cは少なくとも0.35%必要である。一方、Cは0.55%より多く含有されると、鋼中に粗大な炭化物を形成し、靱性を悪化し、偏析を助長するため鏡面性およびシボ加工性を悪化する。そこで、Cは0.35〜0.55%とし、望ましくは、Cは0.40〜0.50%とする。
Siは、精錬時の脱酸剤であり、鋼の基地の硬さを得るために必要な元素である。そのためには、Siは少なくとも0.20%必要である。一方、Siは0.49%より多いと固溶強化が進み、靱性が悪化する。そこで、Siは0.20〜0.49%とし、望ましくはSiは0.25〜0.45%とする。
Mnは、精錬時の脱酸剤であり、鋼の焼入性を得るために必要であり、また、硫化物を形成し、応力集中源となることで被削性を向上させる元素である。そのために、Mnは少なくとも0.61%必要である。一方、Mnは1.50%より多いと、マトリックスを脆化させ、靱性を悪化し、かつ偏析を助長するため、鏡面性およびシボ加工性を悪化する。そこで、Mnは0.61〜1.50%とし、望ましくはMnは0.10〜0.50%とする。
Sは、被削性は向上するが、増やしすぎると粗大な硫化物を形成し、鏡面性やシボ加工性を低下させてしまうだけでなく、靭性を低下させ、金型に割れや欠けが生じてしまう恐れがある。そこで、Sは被削性を向上するため少なくとも0.005%とする。しかし、Sは0.140%より多いと、粗大な硫化物を形成し、鏡面性やシボ加工性を低下させてしまい、靭性を低下させ、金型に割れや欠けが生じるものとなる。そこで、Sは0.005〜0.140%とし、望ましくは、0.020〜0.060%とする。
Crは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに焼入性を高めるために、必要な元素である。そのためには、Crは少なくとも0.10%必要である。一方、Crは0.90%より多いと、粗大な炭化物を形成し、靱性を悪化し、さらに偏析を助長するため、鏡面性、シボ加工性を悪化する。そこで、Crは0.10〜0.90%とし、望ましくは、0.10〜0.50%とする。
Mo、Wは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに焼入性、焼戻し軟化抵抗性を高める元素であるが、Mo+W/2は0.10%より多いと、粗大な炭化物を形成して磁性を悪化し、偏析を助長するため、鏡面性およびシボ加工性を悪化する。そこで、Mo+W/2(ただし、Mo、Wのうち1種または2種)は≦0.10%とする。
Alは、脱酸剤として添加されるが、酸化物を形成し、鏡面性を悪化する元素である。そこで、Alは0.030%以下とする。望ましくは、Alは0.004〜0.025%である。
Snは、SnS2を形成し、応力集中源となることで、被削性を向上させる元素である。また、SnS2はMnSと結晶構造が違うため、SnS2とMnSは結合して粗大化することがなく、靱性や鏡面性、あるいはシボ加工性が悪化するのを抑制できる。さらに、Sn自体やSnS2は切削刃の表面に付着することで、潤滑剤として働くため、切削時に潤滑剤が十分に供給されないような場合でも、切削抵抗を小さくして焼きつきを抑制し、被削性を向上させる。そのためには、Snは少なくとも0.002%必要である。一方、Snは0.100%より多く添加しすぎると、熱間脆性による割れが発生して、製造が困難になる。そこで、Snは0.100%以下とする。望ましくは、Snは0.002〜0.050%とする。
フェライト・パーライト組織中のフェライト面積率は、35%より少なくなると、硬いセメンタイトを含むパーライト組織が多くなるため、被削性が低下する。逆にフェライトが65%より多くなると、延展性が高くなり切削抵抗が高くなる。また、フェライト・パーライト組織中のフェライト面積率が35〜65%となることで、鏡面加工時およびシボ加工時に、腐食ムラが発生しない。
硫化物の面積は、2000μm2より大きすぎると、鏡面加工時およびシボ加工時に、ムラを発生させる原因となる。そこで、硫化物の最大面積は2000μm2以下とする。
硫化物の面積率は、0.01%より少なくなりすぎると、応力集中源となることができず、被削性が低下する。一方、硫化物の面積率は、多くなりすぎると、鏡面加工時およびシボ加工時にムラを発生させる原因となりうることから0.15%以下としておくと、被削性と鏡面性、シボ加工性とのバランスが安定的に良好となる。そこで、硫化物の面積率を勘案する場合には、0.01〜0.15%とすることが好ましい。
No.23は、低Cによりフェライト面積率が大となり、切削抵抗が上がったため切削性が低下し穿孔時間が長くなった。
No.24は、高Siにより基地が硬化し、靱性が低下した。
No.25は、低MnによりMnS硫化物が殆ど形成されず、切削性が低下し穿孔時間が長くなった。
No.26は、高Mnにより基地が硬化し、偏析もきついため、靱性が低下し、鏡面磨き後にムラが有り、シボ加工不均一になった。
No.27は、低Sにより硫化物が殆ど形成されず、切削性が低下し穿孔時間が長くなった。
No.28は、高Sであるため硫化物面積率も多くなり、靱性が低下し、鏡面磨き後にピンホールが有り、シボ加工不均一になった。
No.29は、高Sであるため硫化物面積率が多くなり、最大面積も大きくなったため、靱性が極端に低下し、鏡面磨き後にピンホールが有り、シボ加工不均一になった。
No.30は、高Crにより炭化物が粗大となり、偏析もきついため靱性低下、鏡面磨き後にムラが有り、シボ加工不均一になった。
No.31は、高Moにより炭化物が粗大となり、偏析もきついため靱性低下、鏡面磨き後にムラが有り、シボ加工不均一になった。
No.32は、高Alにより酸化物が粗大となり、鏡面磨き後にピンホールが有った。
No.33は、Snが含有されていないことにより潤滑効果が得られず、穿孔時間の差が大きくなった。
No.34およびNo.35はフェライト面積率が範囲外となり、切削性が低下し穿孔時間が長くなり、鏡面磨き後にムラが有り、シボ加工不均一になった。
No.36は硫化物の最大面積が大きくなったため、靱性が低下し、鏡面磨き後にピンホールが有り、シボ加工不均一になった。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.20〜0.49%、Mn:0.61〜1.50%、S:0.005〜0.140%、Cr:0.10〜0.90%、Mo+W/2(Mo、Wのうち1種または2種からなる):≦0.10%、Al:≦0.030%、Sn:0.002〜0.100%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であり、該鋼のフェライト・パーライト組織中のフェライト面積率:35〜65%で、該鋼の硫化物の最大面積:≦2000μm2であることを特徴とする加工性および鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
- 請求項1の構成要件に加えて、硫化物面積率:0.01〜0.15%であることを特徴とする加工性および鏡面性に優れたプラスチック成形金型用鋼。
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