JP4608118B2 - ドレーン材およびその分解促進方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチックボードドレーン工法に使用されるドレーン材、および該ドレーン材の分解促進方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックボードドレーン工法とは、プラスチック製のボード(ドレーン材)を用いて軟弱地盤中の水を速やかに地表面に排出して地盤の圧密強化を図る地質改良のための工法である。プラスチックボードドレーン工法に使用されるドレーン材は一般に、長手方向の全長に延びる溝が多数形成されたプレート状芯材と、水を溝内に透過させるためのシート状透水材とからなる。例えば、図1に示すように溝条3を形成された芯材1の両面に平面形状の透水材2を貼った構成のドレーン材、および上記芯材を袋形状の透水材に収容させた構成のドレーン材が知られている。
【0003】
そのようなドレーン材はプラスチックボードドレーン工法において、例えば、土壌(軟弱地盤)中、鉛直に埋設されて使用される。詳しくは図4に示すように、圧密強化を図ろうとする軟弱地盤41上に砂や砂利などからなる排水層42を形成し、該排水層42の上からドレーン材43を打設機によって軟弱地盤中、鉛直に埋設する。このときドレーン材43は所定長さで折り曲げて二重にして使用され、軟弱地盤中のドレーン材最下端部において折り返された状態になるように埋設される。次いで、その上に盛土44などによって荷重をかけると、軟弱地盤41内に過剰な水圧が発生し、該水圧をもった水はドレーン材表面の透水材から芯材の溝条に流入する。ドレーン材43に流入した水は、水圧および毛管現象等の作用によりドレーン材内で長手方向の全長にわたって設けられている溝条内を上昇し、軟弱地盤と盛土の間にある排水層を通して排水される。その結果、軟弱地盤の圧密強化が達成される。地中のドレーン材はその全長で土圧を受け、地盤の圧密強化が進むにつれ湾曲する。そのため埋設されたドレーン材は、地盤の圧密強化完了後に途中で千切れることなく引き抜くことはできず、埋設されたまま放置されるのが一般的である。
【0004】
このような工法で軟弱地盤の圧密強化を達成するには、一般に1〜3年間を要する。ドレーン材はその間、排水機能を維持する必要があるため、芯材本体及び透水材はポリエチレンのような腐食せず耐久性に優れた合成樹脂で形成されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そのようなドレーン材は一般に地盤に比較的密なる間隔で埋設され、軟弱地盤の圧密強化達成後においても埋設されたまま放置されている。このため、そのような地盤に、例えば、下水管等を通すためのトンネルをシールド工法によって掘ると、シールドカッターがドレーン材に頻繁に引っ掛かかる。従来のドレーン材は耐久性に優れた合成樹脂で形成され、可撓性を有しているため、シールドカッターの刃に当っても、撓んで切断され難い。そのためドレーン材はしばしば繰り返しシールドカッターに絡まって該カッターの前進を阻む。このように、従来のドレーン材は、圧密強化された地盤の整備を行う際、作業能率の著しい低下を引き起こしていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、軟弱地盤の圧密強化が達成された後、該地盤中に埋設されたまま放置されても、作業効率の低下をほとんど引き起こさないドレーン材、および該ドレーン材の分解促進方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は少なくとも片面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成されたプレート状芯材、および該芯材の少なくとも溝条が形成された面を覆って水を溝条内に透過させるためのシート状透水材とからなり、前記芯材および透水材が生分解性樹脂からなることを特徴とするドレーン材に関する。
【0008】
本発明はまた、アルカリ性物質および/またはその溶液をドレーン材が埋設されている土壌表面に散布するか、または該溶液をドレーン材に注入することを特徴する上記ドレーン材の分解促進方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
(生分解性樹脂)
本発明において芯材および透水材を構成する生分解性樹脂は、土壌中に埋設されることにより分解されて強度低下を起こすが、分解速度が比較的遅い特性を有するポリエステルである。分解速度が速すぎると、ドレーン材が排水機能を保持するべき期間の経過前に分解されて排水機能が低下し、軟弱地盤の圧密強化を達成できない。
【0010】
本発明においてそのようなポリエステルは構成モノマーとして少なくとも乳酸を含んでいる。詳しくは、上記ポリエステルとして、モノマーとして少なくとも乳酸を用いたポリエステル(本明細書中、「乳酸含有ポリエステル」という)を単独で用いるか、または乳酸含有ポリエステルとモノマーとして乳酸を用いないポリエステル(本明細書中、「乳酸フリーポリエステル」という)とを組み合わせて用いる。
【0011】
乳酸含有ポリエステルの具体例として、例えば、ポリ乳酸(PLA;ポリ(D-乳酸)、ポリ(L-乳酸)、およびD-乳酸とL-乳酸との共重合体を含む)、乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸系モノマーとの共重合体等が挙げられる。乳酸含有ポリエステルは2種類以上組み合わせて使用してよい。
【0012】
乳酸以外のヒドロキシカルボン酸系モノマーとして、例えば、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、ならびにそれらの混合物等が挙げられる。
【0013】
乳酸フリーポリエステルとして、例えば、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアルコールからなる脂肪族ポリエステル、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアルコールからなる芳香族/脂肪族ポリエステル、環状エステル系モノマーからなる環状エステル系ポリエステル、上記乳酸以外のヒドロキシカルボン酸系モノマーからなるヒドロキシカルボン酸系ポリエステル等が挙げられる。乳酸フリーポリエステルは2種類以上組み合わせて使用してよい。
【0014】
乳酸フリーポリエステルを構成する脂肪族ジカルボン酸の具体例として、例えば、コハク酸、アジピン酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ならびにそれらの混合物等を挙げることができる。
また芳香族ジカルボン酸の具体例として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ならびにそれらの混合物等を挙げることができる。
【0015】
また脂肪族ジアルコールの具体例として、例えば、エチレングリコーン、1,2-または1,3-プロパンジオール、1,2-、1,3-、1,4-または2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ならびにそれらの混合物等を挙げることができる。
また環状エステル系モノマーの具体例として、例えば、ε−カプロラクトン、グリコリド、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ラクチド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ならびにそれらの混合物等を挙げることができる。
【0016】
脂肪族ポリエステルの好ましい具体例として、例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリエチレンスクシネート(PES)等を挙げることができる。
【0017】
芳香族/脂肪族ポリエステルの好ましい具体例として、例えば、ポリブチレンテレフタレートアジペート(PBTA)等を挙げることができる。
【0018】
環状エステル系ポリエステルの好ましい具体例として、例えば、ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)等を挙げることができる。
【0019】
本発明において使用される上記生分解性樹脂は該樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸質量の割合が20質量%以上、好ましくは30〜100質量%であることが望ましい。ドレーン材は一般に1〜3年間埋設され、その間排水機能を保持することが必要とされる。本発明においては、生分解性樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸質量の割合を上記範囲内で制御することにより、ドレーン材の排水機能保持期間を調節することができる。一般的には、乳酸質量の割合を大きくすると分解速度が遅くなって排水機能の保持期間は長くなり、該割合を小さくすると分解速度が速くなって排水機能の保持期間は短くなる。本発明において、ドレーン材は排水機能の保持期間経過直後において強度(特に引張強度)が埋設前の強度に対して50%以上、好ましくは50〜65%、より好ましくは55〜60%であればよい。当該強度が低すぎると、排水機能を保持すべき期間中に当該機能が低下するおそれがあり、軟弱地盤の圧密強化を確実に達成できない。埋設前のドレーン材の引張強度は通常、20〜50MPaである。引張強度はASTM D638に準じて測定された値を用いている。
【0020】
以下、生分解性樹脂を、芯材を形成する生分解性樹脂と透水材を形成する生分解性樹脂とに分けて詳しく説明する。
【0021】
本発明において芯材を構成する生分解性樹脂としては、成形性(押出し安定性)と機械的強度の観点から、乳酸含有ポリエステル、特にポリ乳酸、と乳酸フリーポリエステルとを組み合わせて使用することが好ましく、より好ましくはポリ乳酸と、脂肪族ポリエステルおよび/または芳香族/脂肪族ポリエステルとを組み合わせて使用し、さらに好ましくはポリ乳酸と脂肪族ポリエステル、特にポリブチレンサクシネート(PBS)とを組み合わせて用いる。乳酸含有ポリエステルおよび乳酸フリーポリエステルはそれぞれ2種類以上組み合わせて使用してよい。
【0022】
芯材において乳酸含有ポリエステル、特にポリ乳酸の使用量は、生分解性樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸質量の割合が上記範囲内であれば特に制限されないが、成形性(押出し安定性)と機械的強度のさらなる向上の観点からは芯材を構成する生分解性樹脂全量に対して20〜95質量%、好ましくは30〜80質量%とすることが望ましい。
【0023】
芯材を構成する生分解性樹脂の少なくとも一部としてポリ乳酸を用いる場合、ポリ乳酸は既出のポリエステルの中で分解速度が最も遅いため、ポリ乳酸の使用量を制御することによって芯材の分解速度を容易に制御でき、結果としてドレーン材の排水機能保持期間を有効に調節することができる。ポリ乳酸の使用量を多くすると、分解速度が遅くなって排水機能の保持期間は有効に長くなり、該使用量を少なくすると、分解速度が速くなって該保持期間は有効に短くなる。従って、ドレーン材の排水機能の保持期間、すなわち軟弱地盤を圧密強化するための予定工期によって、芯材に使用するポリ乳酸の使用量を適宜選択すればよい。
【0024】
芯材を構成する生分解性樹脂の融点は透水材との接着の観点から100〜170℃、好ましくは100〜130℃とすることが望ましい。2種以上の樹脂を組み合わせて使用する場合は、混合樹脂の融点が上記範囲内であればよい。
【0025】
融点の制御は、生分解性樹脂としてコポリエステルを用いる場合、モノマー成分の共重合比を変化させればよい。例えば、ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ(D−乳酸)やポリ(L−乳酸)の融点は180℃であるが、(D−乳酸)/(L−乳酸)(モル比)を90/10にする事によって融点を120℃程度にすることが出来る。
【0026】
本明細書中、融点はDSC-7(パーキンエルマー社製)によって測定された値を用いているが、上記装置によって測定されなければならないというわけではなく、上記装置と同様の測定原理に従って測定可能な装置で測定されてもよい。
【0027】
本発明において透水材を構成する生分解性樹脂としては、繊維形成能の観点から、乳酸含有ポリエステルを使用することが好ましく、より好ましくはD/L共重合体を使用する。乳酸含有ポリエステルは2種類以上組み合わせて使用してよい。
【0028】
透水材において、乳酸含有ポリエステルの全モノマー質量に対する乳酸質量の割合は、生分解性樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸質量の割合が上記範囲内であれば特に制限されないが、繊維形成能のさらなる向上の観点からは、60〜100質量%、好ましくは80〜100質量%とすることが望ましい。
【0029】
透水材の生分解性樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸の質量割合を制御することによって、該透水材の分解速度を調節でき、結果としてドレーン材の排水機能保持期間を容易に調整することができる。乳酸の質量割合を大きくすると、分解速度が遅くなって排水機能の保持期間は長くなり、該割合を小さくすると分解速度が速くなって該保持期間は短くなる。従って、排水機能の保持期間、すなわち軟弱地盤を圧密強化するための予定工期によって、透水材に使用する樹脂の乳酸の質量割合を適宜選択すればよい。
【0030】
透水材を構成する生分解性樹脂は芯材との接着の観点から100℃以上の融点を有することが好ましく、特に、透水材と芯材との貼着を熱によって達成する場合には、当該貼着工程を考慮した温度に設定することがより好ましい。詳しくは、透水材を構成する生分解性樹脂は芯材を構成する生分解性樹脂の融点と同じか、それより高い融点を有することが好ましい。透水材を構成する樹脂の融点は通常、100〜170℃である。2種以上の樹脂を組み合わせて使用する場合は、混合樹脂の融点が上記範囲内であればよい。
【0031】
以下、本発明のドレーン材の構成について詳しく説明する。
本発明のドレーン材は、少なくとも片面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成されたプレート状芯材、および該芯材の少なくとも溝条が形成された面を覆って水を溝条内に透過させるためのシート状透水材とからなる。その構成は、▲1▼図1および図2に示すような互いに対向する2枚の平面状透水材2の間に、両面に長手方向の全長に延びる平行溝条3が形成された芯材1が介装されてなる構成であってもよいし、▲2▼片面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成された芯材の、該溝条が形成された面に平面状の透水材を貼った構成であってもよいし、または▲3▼両面または片面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成された芯材を、袋形状の透水材に収容させた構成であってもよいが、得られるドレーン材の排水機能の向上と取り扱いの容易さの観点から、▲1▼の構成を有することが好ましい。以下、▲1▼の構成を有するドレーン材を例に挙げて本発明を説明するが、▲2▼または▲3▼の構成を有するドレーン材も本発明の範囲内であることは明らかである。
【0032】
本発明で使用される芯材は両面に長手方向の全長に伸びる平行溝条が形成されている。溝の形成形態は特に制限されず、図1に示すように芯材1において上方に開口する溝および下方に開口する溝が上下一対となって2つの溝を構成し、そのような一対の溝がドレーン材の幅方向に連続して形成された形態であってもよいし、または図2に示すように芯材1において上方に開口する溝と下方に開口する溝とが交互にドレーン材の幅方向に形成された形態であってもよい。
【0033】
溝の数、ならびに芯材の長手方向に対して垂直な断面における1の溝(水通路)の面積および各溝の境界壁の厚みは、ドレーン材が所定の機械的強度と排水機能とを確保できれば特に制限されない。通常、溝は芯材の幅1cmあたり片面で0.5〜3本形成され、1の溝の断面積は5〜50mm2であり、境界壁の厚みは0.5〜2mmである。
【0034】
また、図1および図2において溝の断面形状は四角形であるが、所望の排水機能が得られる限り、特に制限されない。
【0035】
芯材の製造方法としては、特に限定されず、例えば所定の生分解性樹脂を押出機に供給し、波型のような異型の口金から押出す方法、および所定の樹脂を押出機に供給し、口金(Tダイ)から溶融状のシートを押出した後、シートが冷却されて固化しない内に、シートを成形ローラによって挟圧する方法が挙げられる。特に、後者の方法を採用して図1に示すような芯材1を製造する場合においては、成形ローラは図3に示すような一対の成形ローラを用いる。
【0036】
本発明で使用する透水材は水を透過させる機能を有する限り、その形態は特に制限されず、例えば、織物、編物、不織布等の布帛の形態、好ましくは不織布、特に長繊維不織布の形態を有している。
【0037】
透水材としての布帛を構成する繊維は上記した所定の生分解性樹脂からなっている。詳しくは透水材が1の生分解性樹脂からなる場合、透水材を構成する繊維は該1の樹脂からなる1種の単相繊維のみからなっている。また、透水材が2以上の生分解性樹脂からなる場合、透水材を構成する繊維は、1の樹脂からなる単相繊維を2種以上混合してなる混合繊維からなっていてもよいし、2以上の樹脂からなる1種の複合繊維のみからなっていてもよいし、1種以上の単相繊維と1種以上の複合繊維とを混合してなる混合繊維からなっていてもよいし、または2種以上の複合繊維を混合してなる混合繊維からなっていてもよい。
【0038】
複合繊維の形態は特に制限されず、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、分割型、2層並列型、多層並列型、多層多芯型、多層放射型、粒状混合型、針状混合型などであってよいが、複合繊維を用いる場合は、低融点重合体と該低融点重合体より高い融点を有する高融点重合体とからなり、低融点重合体の少なくとも一部が繊維表面に存在する形態の複合繊維を用いることが好ましい。この様な複合繊維は、芯材と透水材を熱貼着する場合おいて、低融点重合体が軟化または溶融しても高融点重合体は熱による影響を受けることなく繊維形態を維持できるため、幅広い条件で加工でき、加工が容易となるなど利点を有する。
【0039】
不織布、特に長繊維不織布を構成する繊維は、複屈折率が10×10-3〜25×10-3であり、結晶化度が12〜25質量%であることが好ましい。複屈折率が10×10-3未満であったり、または結晶化度が12質量%未満であったりすると、分子配向が十分でなく、結晶性が低すぎるため、繊維の残留伸度が高くなる。その結果、得られる不織布も寸法安定性や機械的特性に劣る結果となる。複屈折率が25×10-3を越えたり、または結晶化度が25質量%を越えると、不織布の加工時の圧着において不具合が生じる。
【0040】
不織布、特に長繊維不織布を構成する繊維の繊度としては1〜7dtexが好ましい。繊度が7dtexを越えると、例えば土中に埋め込んだときに、土中の微細粒子が不織布を通過してしまい、不織布が求められるフィルターとしての性能、効果が十分に得られないものとなる。また、目詰まりを生じやすくなりフィルターとしての機能を発揮できなくなる。逆に1dtex未満である場合には、土中の微細粒子どころか、水の透水をも繊維で阻害されてしまい、ドレーン材の排水能力が低下し、効果的な土壌の改質が出来なくなるために好ましくない。
【0041】
不織布の目付としては30g/m2以上、150g/m2以下であることが望ましい。30g/m2未満であると、繊維をある程度細かいものにしても、繊維間空隙が大きくなり、土中の微細粒子が不織布を通過してしまい、不織布が求められるフィルターとしての性能、効果が十分に得られないものとなる。また150g/m2を超える場合には、繊維間空隙が小さくなり十分な排水能力が得られないものとなり好ましくない。
【0042】
透水材は従来から公知の方法によって製造されてよい。例えば、不織布を形成する場合は、通常のサーマルボンディング法のほかニードルパンチにより繊維を交絡させるニードルパンチ法を採用してよい。また、構成繊維の交点をバインダー樹脂で固めても、上記複数の手法を組み合わせても良い。この場合のバインダー樹脂としては、ポリ乳酸系重合体やポリビニルアルコール、デンプンなどの多糖類など、生分解性を有するものを用いるとよい。
【0043】
また例えば、長繊維不織布を形成する場合は、従来公知の方法、例えば、スパンボンド法などを採用すればよい。すなわち、溶融紡糸法によって長繊維群を引き取りながら、この長繊維群を移動する捕集コンベア上に堆積することによって集積する。具体的には、所定の重合体を通常の紡糸口金から紡出し、紡出された糸条を冷却した後、エアーサッカーにて牽引細化し、ついで公知の方法で開繊させた後、移動堆積装置上にウェブとして堆積させる。エアーサッカーにて牽引する際の引き取り速度は、例えば3000〜6000m/分程度とするのが好ましい。3000m/分未満であると、長繊維の分子配向が十分に増大しないため、得られる長繊維の引張強力が不十分となり、その結果、得られる長繊維不織布の機械的強力が劣る結果となる。一方、6000m/分を超えると、溶融紡糸時の製糸性が低下する傾向となる。
【0044】
このような透水材(不織布等)の芯材への貼着はいかなる手段によって達成されてよく、例えば、熱ロール、接着剤等の貼着手段を採用することができる。透水材が芯材に貼着されると、芯材本体の溝条と透水材との間に水通路が形成される。
【0045】
ドレーン材の排水能力は透水材の透水能力に大きく影響され、また透水材の透水能力は透水材構成繊維の繊度、および透水材の目付および厚みなどにより影響される。
【0046】
ドレーン材の排水能力および透水材の透水能力は透水係数という数値で表され得る。
本発明のドレーン材はその長手方向の透水係数が1.0×10-1cm/sec以上であることが好ましく、さらには1.0×100cm/sec以上であることがより好ましい。この透水係数が1.0×10-1cm/sec未満である場合には、排水能力が低すぎ、排水ドレーン材としての実用に供し得ない。
【0047】
ドレーン材の透水係数はJIS A-1218 土の透水試験方法の定水位透水試験に準拠し、土の代わりにドレーン材を用い、ドレーン材の厚みと透水量の測定結果から透水係数を求めた。
【0048】
(使用方法)
以上のような本発明のドレーン材は軟弱地盤の圧密強化(盛土内に浸透する水の排出)を目的として使用することができる。その使用方法は従来から公知のドレーン材と同様であり、例えば、土壌中、鉛直または水平に埋設されて使用される。
【0049】
ドレーン材を土壌中、鉛直に埋設して使用する場合、詳しくは図4に示すように、圧密強化を図ろうとする軟弱地盤41上に砂や砂利などからなる排水層42を形成し、該排水層42の上からドレーン材43を打設機によって軟弱地盤中、鉛直に埋設する。このときドレーン材43は所定長さで折り曲げて二重にして使用され、軟弱地盤中のドレーン材最下端部において折り返された状態になるように埋設される。次いで、その上に盛土44などによって荷重をかけると、軟弱地盤41内に過剰な水圧が発生し、該水圧をもった水はドレーン材表面の透水材から芯材の溝条(水通路)に流入する。ドレーン材43に流入した水は、水圧および毛管現象等の作用によりドレーン材内で長手方向の全長にわたって設けられている溝条内を上昇し、軟弱地盤と盛土の間にある排水層を通して排水される。その結果、軟弱地盤の圧密強化が達成される。ドレーン材の寸法、設置数、埋設深さは従来のドレーン材を用いる場合と同様に地盤の浸透水量、改良したい地盤の大きさなどによって適宜決定されればよい。
【0050】
排水層として砂や砂利の代わりにドレーン材を水平に用いても良い。この場合、鉛直ドレーン材は軟弱地盤に直接的に埋設され、地盤表面に出ている鉛直ドレーン材の端部に水平ドレーン材を接合し、その上に盛土などによって荷重をかけるようにすることもできる。
【0051】
ドレーン材を水平に埋設して使用する場合、ドレーン材は雨水や地下水などによって盛土内に浸透する水を排出することを主目的として埋設される。盛土は、地盤表面に単に土を積み上げたものであればよく、例えば、上記軟弱地盤の圧密強化時の盛土であってもよい。このときドレーン材は折り曲げられることなく一重で用いられ、両端の少なくとも一方が盛土内から出る限り、いかなる配置で埋設されてよい。通常、各所定深さにおいてドレーン材は互い平行に配置され、所定深さごとにドレーン材の向きを変える。例えば、図5(a)に示すように排水を図ろうとする盛土51の深さD1においては図5(b)のドレーン材の概略配置図に示すように一方向に平行にドレーン材52を配置し、盛土51の深さD2においては図5(c)のドレーン材の概略配置図に示すように、図5(b)の方向と90°異なる方向に平行にドレーン材52を配置する。盛土51の深さD3においては深さD1においてと同様に、深さD4においては深さD2においてと同様に、深さD5においては深さD1においてと同様に、それぞれドレーン材52を配置する。このように配置されたドレーン材52は、浸透する水を芯材の溝(水通路)に収容し、ドレーン材52に流入した水は、土圧等の作用によりドレーン材内で長手方向の全長にわたって設けられている溝(水通路)内を移動し、ドレーン材の端部から排水される。ドレーン材の寸法、設置数、埋設深さは従来のドレーン材を用いる場合と同様に予想される雨水や地下水の量、盛土の大きさなどによって適宜決定されればよい。ドレーン材を盛土内に水平に埋設することにより、盛土が補強される効果も得られる。
【0052】
本発明においては上述したようにドレーン材(芯材および透水材)の構成樹脂における乳酸使用量によってドレーン材の排水機能保持期間を制御できる。すなわち該構成樹脂の乳酸使用量によってドレーン材強度の経時的変化をある程度予測することができる。本発明のドレーン材はそのような予測に基づいて構成樹脂が決定されており、軟弱地盤の圧密強化達成時(排水機能の保持期間経過時)には既に分解が進んで強度がある程度低下している。このため、圧密強化の達成直後に地盤整備を行っても、従来のドレーン材を用いた場合と比較して作業効率が向上する。
【0053】
(分解促進方法)
本発明のドレーン材は、圧密強化された地盤が整備されるとき、強度(特に、引張強度)が埋設前の強度に対して45%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下になっていることが特に好ましい。そのような強度を達成するために以下に示すような分解促進方法を採用するとよい。すなわち、本発明のドレーン材を用いて軟弱地盤の圧密強化を達成した後において、ドレーン材の分解を促進し、ドレーン材の強度をさらに低下させたい場合、または圧密強化が予定よりも早く完了し、圧密強化された地盤の整備を比較的早期に行いたい場合などには、以下に示すようなドレーン材の分解促進方法を採用するとよい。以下の方法は、芯材および透水材それぞれの生分解性樹脂を構成する全モノマー質量に対する乳酸質量の割合が20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であるドレーン材に特に適している。
【0054】
ドレーン材の分解促進方法は、アルカリ性物質および/またはその溶液をドレーン材が埋設されている土壌表面に散布するか、または該溶液をドレーン材に注入することを特徴する。
【0055】
全ての生分解性樹脂の分解機構の詳細は明らかではないが、乳酸含有ポリエステル、特にポリ乳酸の分解は一般に、2段階で行われると言われている。すなわち、初期段階としての加水分解による単純な分子切断による分子量低下と、後期段階としての微生物存在下での酵素分解による炭酸ガスと水への分解である。また、初期段階の加水分解による低分子量化を十分行っていないと後期段階の酵素分解はほとんど進行しないとも言われている。本発明の分解促進方法においては、アルカリ性物質および/またはその水溶液をドレーン材に付与することにより、初期段階の加水分解を促進し、結果として後期段階の酵素分解をも促進して、ドレーン材の強度低下を速める。
【0056】
本発明に用いられるアルカリ性物質は、その飽和水溶液のpHが9以上、好ましくは10以上を示す物質であることが望ましい。上記pHが9未満のものは加水分解の促進効果が比較的低いため好ましくない。
【0057】
そのようなアルカリ性物質の具体例としては、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、フッ化物、過酸化物、炭酸塩、重炭酸塩および硝酸塩、およびアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物が挙げられる。この中でも、KOH、K20、K202、K2C03、Na202、Na2C03、NaOH、NaHC03、CaO、Ca(OH)2に、CaC03、MgO、Mg(OH)2が好ましく、CaO、Ca(OH)2が特に好ましい。アルカリ性物質は2種以上組み合わせて使用されてよく、特に、少なくともCaOおよび/またはCa(OH)2を含むことがさらに好ましい。その理由は、CaO、Ca(OH)2は土壌改質剤として散布される消石灰の主成分であり、安価で入手することができるためである。また、これらは水への溶解度が低く長期間土壌に残留し、また水に触れることで表面が強アルカリ性となる。このため、ドレーン材を強アルカリ性物質に長期間接触させることができ、ドレーン材の加水分解を長期間促進することができるため効率的である。
【0058】
アルカリ性物質はpHを高く保ちやすい物質と混合して使用されてもよい。pHを高く保ちやすい物質としては、Si02等の無機物質が挙げられる。
【0059】
また本発明によれば、アルカリ性物質は、ドレーン材の表面または内部が土壌中においてpH9以上、好ましくはpHlO以上の雰囲気に曝されるように、ドレーン材に付与されることが望ましい。ドレーン材の表面または内部が曝される雰囲気のpHが9未満であると、加水分解の促進効果が低くなる傾向にある。
【0060】
そのようなアルカリ性物質のドレーン材への付与方法は特に制限されないが、例えば、アルカリ性物質および/またはその溶液をドレーン材が埋設されている土壌表面に散布する方法、または該溶液をドレーン材に直接的に注入する方法が挙げられる。埋設されていないドレーン材の分解を促進したい場合は、該ドレーン材の表面に直接的にアルカリ性物質および/またはその溶液を散布すればよい。
【0061】
ドレーン材が鉛直に埋設されている場合は、分解の促進を効率的に行う観点から、アルカリ性物質溶液をドレーン材に直接的に注入することが望ましい。
【0062】
ドレーン材が水平に埋設されている場合は、分解の促進を効率的に行う観点から、アルカリ性物質および/またはその溶液、好ましくは溶液をドレーン材が埋設されている土壌表面に散布することが望ましい。
【0063】
アルカリ性物質を固体状で使用する場合、通常、粉体状にして使用する。
アルカリ性物質を溶液状で使用する場合、通常、水溶液またはアルコール溶液、好ましくは水溶液として使用する。特に、アルカリ性物質溶液をドレーン材に注入する場合の該溶液のpHは9以上、好ましくは10以上である。溶液のpHが9未満では、ドレーン材の分解がほとんど進行しない。
【0064】
散布または注入されるアルカリ性物質の量は土壌の酸性度および被分解物であるドレーン材の被分解能にもよるが、通常、ドレーン材に対して、0.1〜100倍、好ましくは0.3〜30倍の質量のアルカリ性物質を散布または注入する。量が少なすぎると、アルカリ性物質が雨などに流されやすく、ドレーン材の分解がほとんど進行しない。反対に量が多すぎると、散布または注入のコスト、手間の割りに効果が飽和してしまう。アルカリ性物質を溶液状で使用する場合は使用される溶液中に溶解されているアルカリ性物質の量が上記範囲内であればよい。
【0065】
アルカリ性物質の付与は1回で行われても、または複数回で行われてもよいが、複数回で行われる方がより効果的である。アルカリ性物質の付与を複数回で行う場合、それらの合計付与量が上記範囲内であればよい。
【0066】
本発明のドレーン材の分解促進方法においては上記のようなアルカリ性物質の付与条件、例えば、アルカリ性物質の種類、形態、量、付与実施場所、付与方法および付与回数等を適宜選択することによって、ドレーン材の分解速度を制御することができる。詳しくは、上記条件を適宜選択された分解促進方法を適用することによって、ドレーン材の強度を数日〜5ヶ月の期間内で手で容易に砕ける程度にまで低下させることができる。例えば、土壌表面上のドレーン材に直接的に、ドレーン材と同質量のCaC03(飽和水溶液のpHは9)粉体を2度散布すると、ドレーン材は5ヶ月後には手で容易に砕け得る程度に分解されている。また例えば、土壌中、鉛直に埋設されたドレーン材の水通路に、ドレーン材の0.4倍質量のCa(OH)2を用いた水溶液を1回注入すると、ドレーン材は注入後数日で原型を留めない程に分解される。
【0067】
現在の自然環境の土壌は酸性雨の影響により酸性化する方向に向かっており、地球の生態系が崩れる恐れがある。このような自然環境にアルカリ性物質を付与することは、使用済みのドレーン材を速やかに分解させるだけでなく、健全な土壌を保つ上でも非常に有益である。
【0068】
本発明においては、軟弱地盤の圧密強化が達成されるまでドレーン材の排水機能が維持されるかぎり、上記分解促進方法を、地盤の圧密強化達成前にドレーン材に適用することを妨げるものではない。上記分解促進方法を地盤の圧密強化達成前にドレーン材に適用することによって、地盤整備の実施時期をさらに早めることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
【実施例】
(ドレーン材の分解)
実施例1
カーギルダウポリマー社製のポリ乳酸エコプラ4030Dと、昭和高分子社製のビオノーレ♯1903(ポリブチレンサクシネート(PBS))とを75/25の質量比で混合した。次いで、上記で得た混合物を、Tダイスを取付けた押出機に供給し230℃で溶融混煉して溶融状のシートを押出した後、図3に示すような凸条を有する一対の成形ローラによって挟圧し、長手方向の全長に延びる平行溝条を有する芯材を得た。芯材は以下のような寸法を有していた。芯材厚み約3.9mm、芯材幅約94mm、境界壁の厚み約0.5mm、溝(水通路)の平均断面積約5mm2。溝は芯材の幅10cmあたり片面で12本形成されていた。
【0070】
一方、ポリ乳酸(融点;170℃)の繊維(繊度;5dtx)のみからなるスパンボンド不織布(目付;70g/m2、厚み;450μm)を用いた。
【0071】
その後、不織布からなる透水材を一対の熱ローラにより芯材本体の両面に貼着し、芯材本体の溝条と透水材との間に水通路が形成された図1に示すようなドレーン材を得た。得られたドレーン材を以下、「ドレーン材1」と呼ぶものとする。ドレーン材1の長手方向での透水係数は1×100cm/secであった。
ドレーン材1を土中に埋設し、引張強力を測定したところ、埋設前のドレーン材1の引張強度に対して1年後の保持率は約55%、1年半後には約35%となった。
【0072】
実施例2
芯材の原料として、カーギルダウポリマー社製のポリ乳酸エコプラ4030Dと、BASF社製のエコフレックスとを30/70の質量比で混合したものを用いた以外は実施例1と同様に加工し、ドレーン材を得た。得られたドレーン材を以下、「ドレーン材2」と呼ぶものとする。ドレーン材2の長手方向での透水係数は1×100cm/secであった。
ドレーン材2を土中に埋設し、引張強力を測定したところ、埋設前のドレーン材1の引張強度に対して1年後の保持率は約60%、1年半後には約40%となった。
【0073】
比較例1
芯材の原料としてポリエチレンを用いた以外は実施例1と同様に加工し、ドレーン材を得た。得られたドレーン材を以下、「ドレーン材3」と呼ぶものとする。ドレーン材3の長手方向での透水係数は1×100cm/secであった。
ドレーン材3を土中に埋設し、引張強力を測定したところ、1年後の保持率は約95%、1年半後には約92%となった。
【0074】
参考例1
カーギルダウポリマー社製のポリ乳酸エコプラ4030Dを用いてダンベル片、曲げ片を作成し、その物性を測定した。さらに土中に2年間埋設したダンベル片および曲げ片の物性を測定した。結果を表1に示す。
参考例2〜4
実施例1および2、および比較例1で芯材に用いた樹脂で、参考例1と同様の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
引張強度、引張伸度、曲げ強度、曲げ弾性率およびアイゾット衝撃試験の初期値からの変化より、参考例1〜3は参考例4と比較して顕著に脆くなっていることがわかる。
初期の伸度から、参考例2、3は参考例1と比較して大きく改良されていることがわかる。
【0077】
(ドレーン材の分解促進試験)
実施例3、4
土壌表面1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に置き、500gのCaO(飽和水溶液のpHは12)粉体を散布した。
実施例5、6
土壌表面1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に置き、200gのCaO粉体を散布し、14日後にさらに同量のCaO粉体を散布した。
【0078】
実施例7、8
土壌表面1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に置き、200gのCa(OH)2(飽和水溶液のpHは12)粉体を散布した。
実施例9、10
土壌表面1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に置き、100gのCaC03(飽和水溶液のpHは9)粉体を散布し、14日後と28日後にさらに同量のCaC03粉体をそれぞれ散布した。
【0079】
実施例11、12
土壌表面から深さ20cmの場所1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に埋設し、Ca(OH)2の0.2質量%水溶液(pH12)20Lを土壌表面から散布した。
実施例13、14
土壌表面から深さ20cmの場所1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に埋設し、Ca(OH)2の0.2質量%水溶液(pH12)10Lを土壌表面から散布し、14日後にさらに同量のCa(OH)2水溶液を散布した。
【0080】
実施例15、16
100g相当量のドレーン材1、2を、その上端が土壌表面に出るように鉛直に埋設し、ドレーン材の水通路にCa(OH)2の0.2質量%水溶液(pH12)20Lを注入した。
比較例2、3
実施例3、4と同様に土壌表面1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に置き、CaO粉体を散布することなく放置した。
【0081】
比較例4、5
実施例11、12と同様に土壌表面から深さ20cmの場所1m2に100g相当量のドレーン材1、2を水平に埋設し、Ca(OH)2の0.2質量%水溶液(pH12)を散布することなく放置した。
【0082】
評価
試験開始から所定期間経過後、ドレーン材を以下の基準に従って評価した。
◎;3カ月後においてドレーン材は原型を留めない程分解されていた;
○;3カ月後においてドレーン材は手で容易に砕ける程分解されていた;
△;5カ月後においてドレーン材は手で容易に砕ける程分解されていた;
×;5カ月後においてドレーン材は全く分解されていなかった。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例3〜8、11〜14では、3ヶ月後、ドレーン材は土壌表面または土壌中で少なくとも手で簡単に砕ける程に分解が進んでおり、十分な分解速度を呈した。
また実施例9、10では、5ヶ月後、ドレーン材は土壌表面で手で簡単に砕ける程に分解が進んでおり、十分な分解速度を呈した。
さらに実施例15、16では、ドレーン材はアルカリ性物質が注入されて数日後に完全に分解された。
これに対し比較例2〜5では、5カ月経過後においてもドレーン材は十分に分解されておらず、手では簡単には砕けなかった。
【0085】
【発明の効果】
本発明のドレーン材は生分解性樹脂にて形成されているため、ドレーン材が地中に打設されると、土壌中の微生物によって分解される。完全に分解されるまでにはある程度の時間を要するため、地盤の改良に要する期間程度は、ドレーン材としての機能は損われない。
【0086】
地盤改良後の地中に下水管等を通すためのトンネルを掘る場合、シールドカッターがドレーン材に当たる。本発明のドレーン材は土壌中の微生物によって分解され、強度的に弱くなっており、容易に引き千切られ得る。このため本発明のドレーン材がシールドカッターに絡まって、該カッターの前進に支障を来すことはほとんどない。
【0087】
本発明の分解促進方法によれば、アルカリ性物質をドレーン材に付与し、該ドレーン材を土壌表面または土壌中で放置することで、ドレーン材は遅くとも5カ月の期間で分解するので、トンネルをシールド工法によって掘る場合、シールドカッターがドレーン材に引っ掛かることはなく、経済的利点が多い。しかも、酸性雨等により酸性化した土壌をアルカリ性の土壌に改質することが出来るため、自然環境を健全な状態に維持でき、非常に環境に優しいドレーン材の分解方法であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ドレーン材の一例の概略見取り図を示す。
【図2】 ドレーン材の一例の概略見取り図を示す。
【図3】 図1のドレーン材を製造するための成形ローラの概略図を示す。
【図4】 ドレーン材の使用方法を説明するための概略図を示す。
【図5】 (a)、(b)および(c)はドレーン材の使用方法を説明するための概略図を示す。
【符号の説明】
1;芯材、2;透水材、3;溝(水通路)、5;ドレーン材、41;軟弱地盤、42;排水層、43;ドレーン材、44;盛土、51;盛土、52;ドレーン材。
Claims (7)
- 少なくとも片面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成されたプレート状芯材、および該芯材の少なくとも溝条が形成された面を覆って水を溝条内に透過させるためのシート状透水材からなり、前記芯材および透水材が生分解性樹脂からなり、かつ下記(1)、(2)を同時に満足することを特徴とするドレーン材;
(1)芯材を構成する生分解性樹脂がポリ乳酸と脂肪族ポリエステルおよび/または芳香族/脂肪族ポリエステルとからなり、該ポリ乳酸の割合が生分解性樹脂全量に対して20〜95質量%である;
(2)透水材が不織布であって、該透水材を構成する生分解性樹脂の全モノマー質量に対する乳酸質量の割合が80〜100質量%である。 - 互いに対向する2枚の透水材の間に、両面に長手方向の全長に延びる平行溝条が形成された芯材が介装されてなる請求項1に記載のドレーン材。
- 透水係数が1×10-1cm/sec以上である請求項1または2に記載のドレーン材。
- アルカリ性物質および/またはその溶液をドレーン材が埋設されている土壌表面に散布するか、または該溶液をドレーン材に注入することを特徴する請求項1〜3いずれかに記載のドレーン材の分解促進方法。
- アルカリ性物質がその飽和水溶液のpHが9以上を示す物質である請求項4に記載のドレーン材の分解促進方法。
- アルカリ性物質の量がドレーン材に対して0.1〜100質量倍である請求項4または5に記載のドレーン材の分解促進方法。
- アルカリ性物質が少なくともCaOおよび/またはCa(OH)2を含む請求項4〜6いずれかに記載のドレーン材の分解促進方法。
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