JP4650206B2 - 生分解性複合繊維、および、これを用いた繊維構造物と吸収性物品 - Google Patents
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Description
また本出願人らは、紡糸工程における繊維膠着を、第2成分に長鎖分岐構造を持つ脂肪族芳香族ポリエステル共重合体を使用することにより改善する方法、または特定の生分解性樹脂に特定の芳香族ポリエステルを添加して複合紡糸することによって改善する方法を見出し、提案している(例えば、特開2004−3073号公報(特許文献5)、特開2005−89937号公報(特許文献6)参照)。
本発明は以下のような、生分解性複合繊維、および、これを用いた繊維構造物や吸収性物品等を提供する。
[3]生分解性の第1成分と第2成分とを含む生分解性複合繊維であって、(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が180秒以上であり、第1成分の85℃における半結晶化時間が100秒以下である、生分解性複合繊維。
[4]生分解性の第1成分と第2成分とからなる生分解性複合繊維であって、(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が、第1成分の85℃における半結晶化時間よりも100秒以上長い、生分解性複合繊維。
[5]生分解性の第1成分と第2成分とからなる生分解性複合繊維であって、(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が180秒以上であり、第1成分の85℃における半結晶化時間が100秒以下である、生分解性複合繊維。
[7]第1成分に含まれる脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、第2成分に含まれる脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネート・アジペートである、[1]〜[6]のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
[8]繊維成形前の第1成分と第2成分とのMFR比[(第2成分のメルトマスフローレイト)/(第1成分のメルトマスフローレイト)]が2以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
[10][1]〜[8]のいずれかに記載の生分解性複合繊維の繊維接点が熱接合された不織布、ネット状物、編物および織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された繊維構造物。
[11][1]〜[8]のいずれかに記載の生分解性複合繊維を用いた吸収性物品。
[12][9]または[10]に記載の繊維構造物を用いた吸収性物品。
また、本発明の好ましい態様では、熱処理によって高い接着力を持たせることができるので、例えば、引張強度の高い丈夫な不織布等の繊維構造物を提供することができ、高強度が求められる土木シート、フィルター等の産業資材分野に好適に用いることができる。さらに、本発明の好ましい態様の繊維構造物は、高い引張強度と良好な風合を兼ね備えており、例えば、引っ張り強度と風合とのバランスが要求される紙オムツ、生理用品等の衛生材料分野に適している。
また、本発明の好ましい態様の吸収性物品は、例えば、日常生活における温度の変化程度では収縮や膠着等が生じにくく、製品として実用性に優れている。
また、本発明の好ましい態様に係る生分解性複合繊維、繊維構造物、および吸収性物品等は、それを焼却する場合、樹脂原料に起因する有毒ガスの発生もない。また、本発明の好ましい態様に係る生分解性複合繊維、繊維構造物、および吸収性物品等は、発熱量が小さいので、高温で焼却炉を傷める等の問題が生じにくい。このように本発明の本発明の好ましい態様に係る生分解性複合繊維、繊維構造物、および吸収性物品等は、環境対応型の繊維製品に広く好適に用いることができる。
複合繊維の紡糸工程で、複合繊維同士の膠着が発生しないようにするために、例えば、第2成分の85℃における半結晶化時間が、第1成分の85℃における半結晶化時間よりも100秒以上長いように設計することができ、その他の例として、第2成分の85℃における半結晶化時間が180秒以上であり、第1成分の85℃における半結晶化時間が100秒以下であるように設計することができる。
また、本発明の生分解性複合繊維では、生分解性の第1成分と生分解性の第2成分とからなる複合繊維でもよい。
本発明の生分解性複合繊維に含まれる第1成分は、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステル、または該脂肪族ポリエステル共重合体を含む。
この第1成分に用いられる脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)等のポリグリコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)等のポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシカプロレート、ポリ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ポリ−3−ヒドロキシオクタノエート等を挙げることができる。
また、第1成分に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体としては、グリコールとジカルボン酸との縮合重合体も用いられる。具体的には、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートおよびその共重合体等を挙げることができる。
また、第1成分に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体としては、脂肪族ポリエステルアミド系共重合体等の前記脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとの共縮重合体も用いられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、ポリラウロラクタミド(ナイロン12)等を挙げることができる。
本発明の第1成分にポリ乳酸を使用する場合には、得られる生分解性複合繊維の引裂き強度および引張伸度をより向上させるために、特定の割合の糖アルコールおよび/または安息香酸類の混合物を配合した樹脂組成物をさらに用いることが好ましい。
本発明の生分解性複合繊維に含まれる第2成分は、脂肪族ポリエステル共重合体を含み、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する。第2成分は生分解性を有しない成分を含んでも良いが、生分解性を有する成分からなることが好ましい。
この第2成分に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体としては、例えば、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート・アジペート、ポリエチレンテレフタレート・グルタレート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリブチレンテレフタレート・アジペート、ポリブチレンテレフタレート・グルタレート、ポリカプロラクトン等を挙げることができる。
これら共重合体は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、ポリブチレンサクシネートとポリブチレンサクシネート・アジペートは、複合繊維および複合繊維を用いて得られる繊維構造物等の引張強度や風合いを向上できるので好ましい。
本発明の第2成分に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体の好ましい態様は、脂肪族オキシカルボン酸、脂肪族もしくは脂環式ジオール、および、脂肪族ジカルボン酸もしくはその誘導体とを含む脂肪族ポリエステルである。具体的には、下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30mol%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位(但し、エチレングリコール単位を除く)35〜49.99mol%、および下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99molを含み、かつ、数平均分子量が1万〜20万であるものが挙げられる。特にポリブチレンサクシネートなどが、このような構成を有しているのが好ましい。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−O−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基)
HO−R1−COOH (IV)
(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
で表されるものをいう。
更には、(V)式、
(化1)
HO−CH−COOH
| (V)
CxH2x+1
(式中、xは0または1〜10、好ましくは0または1〜5の整数である)
で示される脂肪族オキシカルボン酸は、重合反応性の向上が認められる点で特に好ましい。
HO−R2−OH
(R2は、2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基を示す)
で表される化合物をいう。
R2において、好ましい2価の脂肪族炭化水素基としては例えば
−(CH2)n−
(nは2〜10の整数)
で表される脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記式で表されるR2の中でも特に好ましいのは、nが2〜6の脂肪族炭化水素基である。好ましい2価の脂環式炭化水素基としては、上記式のR2が炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、それらの中でも特に好ましいのは、4〜6の2価の脂環式炭化水素基である。
HOO−R3−COH
(式中、R3は単結合または2価の脂肪族炭化水素基で表され、好ましくは、−(CH2)m−、ただしmは0または1〜10の整数、好ましくは0または1〜6の整数)
で表されるものが挙げられる。
さらに、上記(III)式の脂肪族ジカルボン酸単位に相当する脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体として、例えば、上記式で表される脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体における炭素数1〜4の低級アルコールエステルが挙げられる。具体的には、ジメチルエステル等、またはそれらの酸無水物が挙げられる。
第2成分として好ましい態様の上記脂肪族ポリエステル共重合体を製造する際の脂肪族または脂環式ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体の使用量と実質的に等molであるが、エステル化中に、脂肪族または脂環式ジオールは留出することが一般的であるから、1〜20mol%過剰に用いられることが好ましい。この脂肪族ポリエステル共重合体を製造する際に、添加される脂肪族オキシカルボン酸が少なすぎると添加効果が現れず、多すぎると結晶性が失われ成形上好ましくなく、耐熱性、機械特性などが不十分になる。また、この脂肪族ポリエステル共重合体を製造する際の脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100molに対して、好ましくは0.04〜60mol、より好ましくは1.0〜40mol、特に好ましくは2〜20molである。
本発明の第2成分として好ましい態様の上記脂肪族ポリエステル共重合体は、重合触媒の存在下で製造されることが好ましい。触媒としては、ゲルマニウム化合物が好適である。ゲルマニウム化合物は、特に制限されるものではなく、酸化ゲルマニウム、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物、塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。また、上記触媒と他の触媒の併用も可能である。
第1成分と第2成分との組み合わせは、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含む第1成分と、脂肪族ポリエステル共重合体を含む第2成分であれば、その組み合わせは特に限定されない。具体的には、上記列挙した第1成分の具体例と第2成分の具体例を適宜組み合わせて用いることができる。これらの組み合わせの中でも、好ましい組み合わせ(第1成分/第2成分)は、ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート・グレタレート/ポリブチレンサクシネート,ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート・アジペート,ポリ乳酸/ポリエチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート・グルタレート/ポリエチレンサクシネートであり、特に好ましい組み合わせ(第1成分/第2成分)はポリ乳酸/ポリブチレンサクシネートまたはポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート・アジペートである。
本発明の生分解性複合繊維の第1成分、第2成分に好適に用いられる脂肪族ポリエステル共重合体には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
本発明生分解性複合繊維に含まれる第1成分および第2成分の繊維成形前のペレット状態でのメルトマスフローレイト(JIS K 7210の附属書A表1の条件Dにて測定。以下、「MFR」と略す。)は、紡糸可能な範囲のMFRであれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分の範囲が好ましく、3〜70g/10分の範囲が更に好ましい。また、下記式で求められる、繊維成形前のペレット状態で測定した第1成分と第2成分とのMFRの比(MFR比)を2以下に調節することが好ましく、1.4以下に調整するとさらに好ましい。
MFR比=(第2成分のMFR)/(第1成分のMFR)
MFR比が2以下であれば、紡糸工程において汎用の冷却装置を用いて冷却することで複合繊維同士の膠着を抑えることができる。また、これにより複合繊維の開繊性が良好になることから、複合繊維からなる繊維構造物の風合いを良好にできる。
さらに、繊維成形後に測定した第1成分と第2成分との成形後MFR比[(第2成分の成形後MFR)/(第1成分の成形後MFR)]を2以下に調節することが好ましく、1.5以下に調節するとさらに好ましく、0.7以下に調節するともっとも好ましい。通常、成形後は、成分が熱劣化を受けているので、繊維成形前のMFRに比べて繊維成形後のMFRは大きくなる。また、第1成分の成形後MFRに比べて第2成分の成形後MFRの方が、その増加傾向は大きい。したがって、繊維成形前のMFR比より繊維成形後のMFR比の方が数値が大きくなり易い。繊維成形後のMFR比が2以下の範囲であれば、紡糸工程で複合繊維同士の膠着を防止できるだけでなく、本発明の第1成分と第2成分とをスパンボンド法を用いて加工した場合でも、サクションでの複合繊維同士の膠着等が発生せず、複合繊維の開繊性を良好に保つことができるので、複合繊維からなる繊維構造物の風合いを良好にできる。尚、繊維成形後のMFR比を2以下に保つには、紡糸時の第1成分および第2成分の押出機温度、両成分に共通するノズル温度を調整し、第2成分の成形後MFRが高くならないようにする必要がある。
異なる生分解性樹脂を用いて複合繊維を製造した場合、互いに結晶化速度に差の小さい生分解性樹脂同士を使用すると、紡糸工程において、半結晶化時間の短い生分解性樹脂が結晶化する際に発生する熱で、半結晶化時間の長い生分解性樹脂の冷却が阻害される。したがって、半結晶化時間の長い生分解性樹脂が繊維表面部分を大きく占める場合には、紡糸工程で複合繊維同士の膠着が発生し、曳糸性や開繊性が悪化する。その結果、前記複合繊維から得られる繊維構造物の風合いに悪影響を及ぼすという問題がある。
そこで、本発明の生分解性複合繊維に含まれる第1成分と第2成分の半結晶化時間の差を大きくし、それによって、半結晶化時間の短い生分解性樹脂が結晶化する際に発生する熱で、半結晶化時間の長い生分解性樹脂の冷却を阻害しないようにする。
第1成分の85℃における半結晶化時間は、好ましくは60秒以下、更に好ましくは30秒以下である。これによって、結晶化速度の遅い第2成分が、繊維表面部分の多くを占めている場合でも、紡糸工程で固化不足に起因する複合繊維同士の膠着を低減させることができ、その結果、曳糸性は良好になる。
本発明の生分解性複合繊維に含まれる第1成分と第2成分との組合せによって、風合い、柔軟性および耐熱性等の種々の性質を生分解性複合繊維に任意に付与することが可能である。
また、第1成分と第2成分の融点差が一定以上あると、複合繊維同士の熱接着性および引張強度を良好に保つことができる。そのため、両者の融点差は、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることが更に好ましい。
本発明の生分解性複合繊維を用いて、不織布等の繊維構造物を製造することができる。
本発明の繊維構造物を製造する際、第2成分の融点以上、第1成分の融点未満の温度で、生分解性複合繊維からなるウェブ等の繊維集合体を熱処理することが好ましい。この温度範囲であれば、第1成分が熱による影響を殆ど受けないので、繊維強度を低下させることなく、複合繊維同士を強固に融着させることができる。エンボスロール等の加圧ロールを用いる場合には、第2成分の軟化点以上、第1成分の融点未満の温度で点熱圧着処理することが好ましい。
また、本発明の繊維構造物を製造する際、本発明の生分解性複合繊維を単独で使用してもよいが、必要に応じて他の繊維と混繊または積層し、混合物にして使用してもよい。他の繊維として、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル等の合成繊維、綿、羊毛、麻等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、アセテート等の再生繊維、半合成繊維等、ポリ乳酸繊維、ポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維が利用できる。これらの中でも、特に、ポリ乳酸繊維、ポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維との混繊が好ましい。また、本発明の生分解性複合繊維において、第1成分の融点第2成分の融点に対して40℃以上高い場合には、熱融着性を有しない生分解性繊維同士を熱融着させるためのバインダー繊維として使用することが可能である。
また、良好な生分解性を有し環境に優しく、更に高い衛生性を有していることから、衛生材料分野をはじめ、医療分野、産業資材分野にも好適に使用できる。
本発明の生分解性複合繊維または繊維構造物を少なくとも一部に用いて、吸収性物品を製造することができる。
例えば、本発明の生分解性複合繊維からなる繊維構造物の好ましい態様は、風合いに優れ、高い引張強度を有することから低目付化を図ることができる。したがって、このような繊維構造物を紙オムツや生理用品等の吸収性物品に使用すると、他の生分解性複合繊維を使用した場合と比較して低コスト化が可能となり好ましい。
本発明の生分解性複合繊維は、通常の溶融複合紡糸機を用いて、第1成分と第2成分を含む生分解性を有する複合繊維を紡出して製造される。複合繊維を紡出に際し、紡糸温度は120〜330℃の範囲で紡糸することが好ましく、引き取り速度は40m/分〜1500m/分程度とするのがよい。本発明の複合繊維の延伸は必要に応じて多段延伸を行ってもよく、延伸倍率は通常1.2〜9.0倍程度とするのがよく、延伸温度は、通常、複合繊維が融着しない程度の温度で加熱するのがよい。
本発明の複合繊維に対し、必要に応じてスタッフィングボックス等のクリンパーで捲縮を付与した後、所定長に切断して短繊維とし、公知のカード法、エアレイド法、乾式パルプ法、湿式抄紙法等によりウェブとすることができる。また、複合繊維を所定長に切断せずにトウの状態で分繊ガイド等によりウェブとすることもできる。更に公知のスパンボンド法やメルトブロー法により紡糸工程から直接ウェブにしてもよい。
TAInstrument社製熱分析装置DSC Q10(商品名)を用い、試料を融点以上まで加熱、溶融させた後、温度設定を85℃として、試料を結晶化させた。結晶化工程のサーモグラムからΔHcが1/2となるポイントを読み取り、結晶化が始まったポイントからΔHcが1/2となるポイントまでの時間(秒数)を測定した。この測定を3回繰り返し、その平均値を半結晶化時間とした。
JIS K 7210の附属書A表1の条件D(温度190℃、荷重2.16kg)に準拠し、繊維成形前の第1成分と第2成分のメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。
任意の紡糸温度で第1成分のみを繊維化し、JIS K 7210の附属書A表1の条件D(試験温度190℃、荷重2.16kg)に準拠して、繊維成形後のメルトマスフローレイト(MFR)を測定した。また、同様に繊維成形後の第2成分のMFRを測定した。
TAInstrument社製熱分析装置DSC Q10(商品名)を用い、JIS K 7122に準拠し、融点を測定した。
繊維を溶融紡糸する際に、曳糸性を評価した。評価基準は、紡糸した生分解性複合繊維の膠着の発生状態により、次の3段階で評価した。
A:繊維膠着が全く発生せず、操作性が良好である。
B:若干の繊維膠着が見られるが、操作上問題がない。
C:明らかな繊維膠着が見られ、操作上問題がある。
幅25mm、長さ150mmの短冊状に切断した不織布(繊維構造物)をサンプルとして、(株)島津製作所製オートグラフ AGS500D(商品名)を用い、サンプルの破断強度を測定した。この測定値を引張強度とした。試験条件は、室温下、引張速度100mm/分で実施した。なお、引張強度の値は下記式により目付30g/m2換算値で表した。
引張強度=(引張強度実測値)×(30/目付実測値)
不織布を用いて、5人のパネリストによる官能試験を行なった。判定基準は、しわ等によるガサツキ感がなく、しかもソフトであると全員が判定した場合を優(A)、3名〜4名が同様に判定した場合を良(B)、3名以上がしわ等によるガサツキ感があるかまたはソフト感に欠けると判定した場合を不可(C)とした。
不織布(繊維構造物)を土中に埋没して6ヶ月後に取り出し、不織布がその形態を保持しておらず埋没後の引張強度が測定不可能である場合を優(A)、不織布はその形態を保持しているが埋没後の引張強度が埋没前の引張強度初期値に対して50%未満まで低下している場合を良(B)、不織布の埋没後の引張強度が埋没前の引張強度初期値に対して50%以上を示している場合を不可(C)と評価した。
生分解性複合繊維を、カード機で梳綿しウェブとする工程で、得られたウェブの生分解性複合繊維の絡み具合を、次の3段階の評価基準で判定した。
A:繊維同士の絡みが強く、操作性が良好である。
B:繊維同士の絡みが若干弱い。
C:繊維同士の絡みが非常に弱く、操作上問題がある。
吸収性物品の耐熱性を測定した。吸収性物品を70℃に設定した恒温槽内中に30分間放置し、吸収性物品の熱劣化(特に、膠着状態)を観察し、判断した。
原料として用いられた樹脂の略語は以下の通りである。
PLA−1:ポリ乳酸(トヨタ自動車製 商品名:U´z B4 融点168℃、MFR15 条件D)。
PLA−2:ポリ乳酸(島津製作所製 商品名:ラクティ 9031 融点132℃、MFR6 条件D)。
PBS−1:ポリブチレンサクシネート(三菱化学社製 商品名:GSpla AZ71T 融点110℃、MFR20 条件D)。
PBS−2:ポリブチレンサクシネート(三菱化学社製 商品名:GSpla AZ81T 融点110℃、MFR8 条件D)。
PBS−3:ポリブチレンサクシネート(昭和高分子製 商品名:ビオノーレ 1020 融点114℃、MFR26 条件D)。
PBSA:ポリブチレンサクシネート・アジペート(三菱化学製 商品名:GSpla AD82W 融点86℃、MFR8 条件D)
PES:ポリエチレンサクシネート(日本触媒製 商品名:ルナーレSE 融点102℃、MFR28 条件D)。
PETG:ポリエチレンテレフタレート・グルタレート(デュポン製 商品名:Biomax 4026 融点199℃、MFR22 条件M)。
PBTA:ポリブチレンテレフタレート・アジペート(イーストマン・ケミカル製 商品名:EASTAR BIO GP 融点108℃、MFR28 条件D)
鞘芯型複合紡糸用口金を取り付けた、2機の押出機を有する複合紡糸装置を使用し、鞘芯型複合繊維を製造した。ホッパの芯成分側に、第1成分としてPLA−1を投入し、鞘成分側に、第2成分としてPBS−1を投入して、230℃の紡糸温度で、第1成分と第2成分との容積比率が50/50の同心型の繊維断面形状となるように複合繊維を吐出し、ワインダーによってこれを引き取った。なお、前記引き取り工程において、吐出された複合繊維の表面に、界面活性剤としてアルキルフォスフェートカリウム塩を付着させた。次に、ワインダーで巻き取った複合繊維(未延伸糸)を延伸機によって、3.0倍(延伸温度80℃)に延伸した後、スタッフィングボックスに通して機械捲縮を付与させ、次いで長さ51mmに切断し、捲縮の施された1.0デシテックスのスフを得た。次に、得られたスフをカード機でカーディングしてウェブとし、該ウェブを熱風貫通型ドライヤーで、温度110℃、処理時間1分40秒の条件で熱処理して、複合繊維の交点が熱融着された不織布(繊維構造物)を得た。
原料樹脂である第1成分と第2成分の半結晶化時間および繊維形成前MFR比、製造された繊維の繊維成形後第1成分MFR、繊維成形後第2成分MFR、繊維成形後MFR比、断面形状(型)、曳糸性およびカード通過性、並びに、製造された不織布の目付、引張強度、風合い評価、生分解性能は表1に示したとおりであった。
表1から明らかなように、実施例1の生分解性複合繊維は、その製造時において、複合繊維同士の膠着が認められず、曳糸性も良好であった。更に得られた複合繊維はカード通過性がよく、得られた不織布(本発明の繊維構造物)は、高い引張強度、良好な風合いおよび良好な生分解性能を併せ持っていた。
表1に示した原料樹脂の組合せ、および繊維の断面形状以外は、実施例1と同じ条件で、実施例2〜9の生分解性複合繊維と不織布を製造した。但し、実施例7では、第2成分の紡糸温度を実施例1よりも30℃高く設定して紡糸を行った。
実施例2〜9における原料樹脂、製造された繊維および不織布の性質は表1に示したとおりであった。
表1から明らかなように、実施例2〜9の生分解性複合繊維は、その製造時において、複合繊維同士の膠着が認められず、曳糸性も良好であった。更に得られた複合繊維はカード通過性がよく、得られた不織布(本発明の繊維構造物)は、高い引張強度、良好な風合いおよび良好な生分解性能を併せ持っていた。
実施例1で用いた第1成分および第2成分を使用し、芯成分に第1成分が、鞘成分に第2成分が配置される同心型の断面形状を有する生分解性複合長繊維を紡糸した。第1成分側と第2成分側の紡糸温度条件は共に240℃である。紡糸された長繊維群をスロット型エアーサッカーで牽引し、捕集装置にウェブを捕集した。吹き付けたエアーは捕集装置に備えた吸引装置から吸引され、ウェブをコンベアに密着させた。得られたウェブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度100℃、フラットロール95℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付31g/m2の長繊維不織布(繊維構造物)を得た。
この不織布の風合い評価は優(A)であり、引張強度は30N/2.5cmを示し、実用性の非常に高い不織布であることがわかった。また、この不織布の生分解性評価は優(A)であった。
表2に示した原料樹脂の組合せ、および繊維の断面形状以外は、実施例1に準拠した製造方法と同じ条件で、生分解性複合繊維と不織布を製造した。但し、比較例1では、延伸温度を90℃に変更し、熱風貫通型ドライヤーの温度を140℃に変更した。
比較例1〜3における原料樹脂である第1成分と第2成分の半結晶化時間と繊維形成前MFR比は、表1に示すとおりであった。
半結晶化時間に関して、比較例1の生分解性複合繊維は、融点差のあるポリ乳酸からなる複合繊維であり、原料樹脂の第2成分の85℃における半結晶化時間(25秒)は、第1成分の85℃における半結晶化時間(16秒)よりも9秒だけしか長くなかった。比較例2の生分解性複合繊維における原料樹脂の第2成分の85℃における半結晶化時間(66秒)は、第1成分の85℃における半結晶化時間(16秒)よりも50秒だけしか長くなかった。比較例3の生分解性複合繊維における原料樹脂の第2成分の85℃における半結晶化時間(55秒)は、第1成分の85℃における半結晶化時間(16秒)よりも39秒だけしか長くなかった。
具体的には、比較例1の複合繊維を用いて得られた不織布(繊維構造物)は、硬い感触を有する極めて悪い風合いであり、人の手や皮膚に直接接触する用途に対して、実用性が低かった。
比較例2と比較例3では、複合繊維製造時において、複合繊維同士の膠着が発生し曳糸性が悪かった。また、この複合繊維を用いて得た不織布(繊維構造物)は、極めて風合いが悪かった。
原料樹脂として、比較例3で用いた第1成分および第2成分を使用し、芯成分に第1成分が、鞘成分に第2成分が配置される同心型の断面形状を有する生分解性複合長繊維を紡糸した。紡糸温度条件は第1成分側、第2成分側共に240℃であった。紡糸された長繊維群をスロット型エアーサッカーで牽引し、捕集装置にウェブを捕集した。吹き付けたエアーは捕集装置に備えた吸引装置から吸引しウェブをコンベアに密着した。ウェブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度100℃、フラットロール95℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付30g/m2の長繊維不織布(繊維構造物)を得た。この際、紡糸段階で複合繊維同士の膠着が発生したため、得られた目付30g/m2の不織布は風合いが悪化しており、不織布の風合い評価は、不可(D)の実用性の低いものであった。
実施例1で得られた不織布(繊維構造物)をトップシート層およびバックシート層に用い、両層間にパルプ繊維を使用した吸収材を挟み込んで、吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は日本国内の一般的な真夏の車中の状態を想定した耐熱性試験においても該吸収性物品の収縮、膠着等が発生しなかった。
第2成分として、PBS−1の代わりにPCLを用い、延伸温度を80℃から50℃に、熱風貫通型ドライヤーの温度を110℃から65℃に変更した以外は、実施例1に準拠して複合繊維を製造し、実施例1に準拠して目付31g/m2の不織布を作製した。次に、この不織布をトップシート層およびバックシート層に用い、両層間にパルプ繊維を使用した吸収材を挟み込んで、吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、日本国内の一般的な真夏の車中の状態を想定した耐熱性試験において収縮、膠着が発生し、製品として使用することが困難であることが判明した。
Claims (12)
- 生分解性の第1成分と第2成分とを含む(但し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成し、共重合脂肪族ポリエステルが芯部を形成してなる多葉型複合断面を除く)生分解性複合繊維であって、複合繊維が、並列型または鞘芯型の繊維断面構造を有しており、
(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、
(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が、第1成分の85℃における半結晶化時間よりも100秒以上長い、
生分解性複合繊維。 - 生分解性の第1成分と第2成分とを含む(但し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成し、共重合脂肪族ポリエステルが芯部を形成してなる多葉型複合断面を除く)生分解性複合繊維であって、複合繊維が、並列型または鞘芯型の繊維断面構造を有しており、
(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、
(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が180秒以上であり、第1成分の85℃における半結晶化時間が100秒以下である、
生分解性複合繊維。 - 生分解性の第1成分と第2成分とを含む(但し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成し、共重合脂肪族ポリエステルが芯部を形成してなる多葉型複合断面を除く)生分解性複合繊維であって、複合繊維が、並列型または鞘芯型の繊維断面構造を有しており、
(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、
(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が、第1成分の85℃における半結晶化時間よりも100秒以上長い、
生分解性複合繊維。 - 生分解性の第1成分と第2成分とを含む(但し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成し、共重合脂肪族ポリエステルが芯部を形成してなる多葉型複合断面を除く)生分解性複合繊維であって、複合繊維が、並列型または鞘芯型の繊維断面構造を有しており、
(a)第1成分と第2成分が、繊維の長さ方向に連続しており、
(b)第2成分が、複合繊維の表面の少なくとも一部を形成する脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(c)第1成分が、第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルまたは該脂肪族ポリエステル共重合体を含み、
(d)第2成分の85℃における半結晶化時間が180秒以上であり、第1成分の85℃における半結晶化時間が100秒以下である、
生分解性複合繊維。 - 複合繊維が、同心型、偏心型、または、並列型の繊維断面構造を有している、請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
- 第1成分の85℃における半結晶化時間が60秒以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
- 第1成分に含まれる脂肪族ポリエステルがポリ乳酸であり、第2成分に含まれる脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネートまたはポリブチレンサクシネート・アジペートである、請求項1〜6のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
- 繊維成形前の第1成分と第2成分とのMFR比[(第2成分のメルトマスフローレイト)/(第1成分のメルトマスフローレイト)]が2以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の生分解性複合繊維。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の生分解性複合繊維を用いた繊維構造物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の生分解性複合繊維の繊維接点が熱接合された不織布、ネット状物、編物および織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された繊維構造物。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の生分解性複合繊維を用いた吸収性物品。
- 請求項9または10に記載の繊維構造物を用いた吸収性物品。
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