JP2005089937A - 生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸収性物品 - Google Patents

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Kazuyuki Sakamoto
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Abstract

【課題】紡糸工程においては複合繊維同士の膠着がなく、良好な熱接着性を有する生分解性複合繊維を提供することであり、更に生分解性を有すると共に高い引張強度を持ち、かつ風合い、柔軟性及び耐熱性に優れた生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸収性物品を提供すること。
【解決手段】第1成分と第2成分とからなる生分解性複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続する第2成分で形成されており、第2成分は芳香族ポリエステルを0.01〜0.8重量%含有する脂肪族芳香族コポリエステル組成物であり、第1成分が第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルであることを特徴とする生分解性複合繊維を用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸収性物品に関する。
生分解性繊維は、土壌中に埋めることで、微生物によって短期間に二酸化炭素と水とに分解されることから、廃棄物処理のために開発が進められてきた。なかでも、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の生分解性の脂肪族ポリエステルからなる生分解性繊維は、汎用の合成繊維に近い繊維物性を有することから、一部の用途向けに製品化され始めた。最近では、良好な熱融着性能を付与することを目的に、生分解性を有する複合繊維の開発が進められている。
異なる生分解性樹脂を用いて複合繊維を製造した場合、紡糸工程において生分解性樹脂同士の結晶化速度の差が大きくなり易く、結晶化速度の速い生分解性樹脂が結晶化する際に発生する熱で、結晶化速度の遅い生分解性樹脂の冷却を阻害するため、結晶化速度の遅い生分解性樹脂が繊維表面部分を大きく占める場合には、紡糸工程で複合繊維同士の膠着が発生し、曳糸性や開繊性が悪化する。その結果、前記複合繊維から得られる繊維構造物の風合いに悪影響を及ぼすという問題がある。
融点102℃のポリエチレンサクシネートと融点118℃のポリブチレンサクシネートとからなる複合繊維が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この複合繊維は、前記脂肪族ポリエステルの融点差が小さいことから、繊維形成成分であるポリブチレンサクシネートを溶融せずに、接着成分であるポリエチレンサクシネートを充分に熱溶融させることができず、その結果、接着性が不十分になり、また、ポリエチレンサクシネートが低い引張強度を示すことから、充分な強度を有する複合繊維や該複合繊維を用いた繊維構造物を得ることが困難であった。
融点の異なる2種類のポリ乳酸系重合体からなる熱融着性複合繊維が提案されている(例えば、特許文献3参照)。この複合繊維は、優れた熱接着性を有するものの、感触が硬く、風合い、柔軟性に乏しい。
30℃以上の融点差のある2種類の脂肪族ポリエステルからなり、両者が共通のセグメント鎖を持った複合繊維が提案されている(例えば、特許文献4参照)。具体的には、ポリカプロラクトンが約5%ブロック共重合されたポリ乳酸(融点169℃)と、ポリ乳酸が約5%ブロック共重合されたポリカプロラクトン(融点58℃)とからなる複合繊維が提案されている。前記ポリカプロラクトンが前記ポリ乳酸に比べて100℃以上低い融点を有するので、この複合繊維は優れた熱接着性を有する。しかし、この複合繊維は、耐熱性に乏しく、更に膠着し易いという欠点を有していることから、良好な品質の繊維構造体が得られにくいという問題がある。また、共重合させるポリ乳酸の量を増やし、前記ポリカプロラクトンの融点を上昇させることで、耐熱性は増すものの、得られる複合繊維の感触が硬くなるといった問題がある。そのため、得られる繊維構造物は、風合い、柔軟性が良好にはならず、実用的ではない。
特開平6−207320号公報 特開平6−207324号公報 特開平7−310236号公報 特開平9−157952号公報
本発明の課題は、紡糸工程においては複合繊維同士の膠着がなく、良好な熱接着性を有する生分解性複合繊維を提供することであり、更に生分解性を有すると共に高い引張強度を持ち、かつ風合い、柔軟性及び耐熱性に優れた生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸収性物品を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、特定の生分解性樹脂に特定の芳香族ポリエステルを添加して複合紡糸することによって得られる複合繊維が、前記課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明の構成は以下の通りである。
(1)第1成分と第2成分とからなる生分解性複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続する第2成分で形成されており、第2成分は芳香族ポリエステルを0.01〜0.8重量%含有する脂肪族芳香族コポリエステル組成物であり、第1成分が第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルであることを特徴とする生分解性複合繊維。
(2)脂肪族芳香族コポリエステルが、分子内に長鎖分岐構造を持つことを特徴とする前記(1)項記載の生分解性複合繊維。
(3)脂肪族芳香族コポリエステルが、分子内に長鎖分岐構造を持つポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体である前記(1)項または前記(2)項記載の生分解性複合繊維。
(4)芳香族ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートである前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
(5)第1成分が、ポリ乳酸である前記(1)〜(4)のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
(6)190℃における下記式で表される第1成分と第2成分のメルトフローレート比が2以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
(メルトフローレート比)=(第2成分のメルトフローレート)/(第1成分のメルトフローレート)
(7)前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の生分解性複合繊維を少なくとも一部に用いた吸収性物品。
(8)前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の生分解性複合繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物。
(9)繊維構造物が、生分解性複合繊維の繊維接点が熱接合された不織布、ネット状物、編物及び織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された構造である前記(8)項記載の繊維構造物。
(10)前記(8)項または前記(9)項記載の繊維構造物を少なくとも一部に用いた吸収性物品。
本発明の生分解性複合繊維は、該複合繊維表面の一部またはほぼ全体を、芳香族ポリエステルが0.01〜0.8重量%の範囲で添加された脂肪族芳香族コポリエステル組成物で覆われることにより、紡糸工程等に複合繊維が膠着する等の問題が発生しない。また、本発明の生分解性複合繊維から繊維構造物を製造する場合、熱処理によって高い接着力を持たせることができるので、引張強度の高い丈夫な不織布等の繊維構造物を得ることができ、高強度が求められる土木シート、フィルター等の産業資材分野に好適に用いることができる。また、本発明の繊維構造物は、高い引張強度と良好な風合を兼ね備えているので、これらのバランスを要求される紙オムツ、生理用品等の衛生材料分野に最適である。更に本発明の吸収性物品は、日常生活における温度の変化程度では収縮や膠着等が起こらないので、製品として実用性に優れている。
本発明の生分解性複合繊維、該複合繊維を用いて得た繊維構造物、吸水性物品は、生分解性を有する樹脂原料から構成されていることから、廃棄する場合でも微生物等により完全に分解されるため環境を汚染しない。また、焼却する場合には、樹脂原料に起因する有毒ガスの発生もなく、更に発熱量が小さいので、高温で焼却炉を傷める等の問題がない。
このように本発明の生分解性複合繊維、該複合繊維を用いた繊維構造物及び吸水性物品は、環境対応型の繊維製品に広く好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の生分解性複合繊維は、第1成分と第2成分とからなる生分解性を有する複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続する第2成分で形成されており、第2成分は芳香族ポリエステルを0.01〜0.5重量%含有する脂肪族芳香族コポリエステル組成物であり、第1成分は第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルである。この生分解性複合繊維を用いて繊維構造体をドライヤーにより製造する場合には、生分解性複合繊維からなるウェブ等の繊維集合体を、第2成分の融点以上、第1成分の融点未満の温度で熱処理することが好ましい。この温度範囲であれば、第1成分が熱による影響を殆ど受けないので、繊維強度を低下させることなく、複合繊維同士を強固に融着させることができる。また、繊維構造体を加圧ロールにより製造する場合には、生分解性複合繊維からなるウェブ等の繊維集合体を、第2成分の軟化点以上、第1成分の融点前後の温度で熱処理することが好ましい。第1成分と第2成分との組合せによって、風合い、柔軟性及び耐熱性等の種々の性質を生分解性複合繊維に任意に付与することが可能である。第1成分と第2成分との融点差は、目的とする繊維構造物に応じて適宜設定すればよいが、20℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。融点差が20℃以上あると複合繊維同士の熱接着性及び引張強度を良好に保つことができる。
第1成分は、生分解性の脂肪族ポリエステルが用いられる。脂肪族ポリエステルは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)等のポリグリコール酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)等のポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシカプロレート、ポリ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ポリ−3−ヒドロキシオクタノエートが例示できる。また、これらとポリ−3−ヒドロキシバリレートまたはポリ−4−ヒドロキシブチレートとの共重合体が利用でき、具体的には、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ乳酸またはポリ乳酸の共重合体を挙げることができる。また、グリコールとジカルボン酸との縮合重合体が利用でき、具体的には、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレート及びその共重合体を挙げることができる。また、脂肪族ポリエステルアミド系共重合体等の前記脂肪族ポリエステルと脂肪族ポリアミドとの共縮重合体が利用でき、具体的には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、ポリラウロラクタミド(ナイロン12)等を挙げることができる。これら脂肪族ポリエステルのなかでもポリ乳酸が最も好ましく利用できる。
本発明では、第1成分として、ポリ乳酸に、特定の割合の糖アルコール/安息香酸類混合物を配合した樹脂組成物を利用することが好ましい。これにより、得られる生分解性複合繊維の引裂き強度及び引張伸度を更に向上させることができる。糖アルコールとしては、糖を還元して得られる直鎖状ポリオールが利用でき、炭素数3〜6の直鎖状ポリオールが特に好ましい。具体的には、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール及びソルビトール等を挙げることができる。なかでもソルビトールがポリ乳酸の可塑化効率、糖アルコール自体の不揮発性等の点から最も好ましい。糖アルコールの配合割合は、ポリ乳酸100重量部に対して、引裂き強度及び引張伸度の点から0.5〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。また、安息香酸類は、安息香酸、o−トルイル酸、m−トルイル酸、p−トルイル酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−アミル安息香酸、p−t−オクチル安息香酸、o−メトキシ安息香酸、m−メトキシ安息香酸、アニス酸、無水安息香酸、無水o−トルイル酸、無水m−トルイル酸、無水p−トルイル酸、無水p−t−ブチル安息香酸、無水p−t−アミル安息香酸、無水p−t−オクチル安息香酸、無水o−メトキシ安息香酸、無水m−メトキシ安息香酸及び無水アニス酸等が例示できるが、なかでも安息香酸が最も好ましく使用できる。安息香酸類の配合割合は、ポリ乳酸100重量部に対して、引裂き強度及び引張伸度の点から1〜10重量部、好ましくは2〜6重量部である。
第2成分に使用する生分解性を有する脂肪族芳香族コポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−アジペート共重合体、ポリブチレンテレフタレート−サクシネート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−サクシネート共重合体を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。なかでも、ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体は、複合繊維及び複合繊維を用いて得られる繊維構造物等の引張強度や風合いを向上できるので好ましい。また、これらの脂肪族芳香族コポリエステルは、分子内に長鎖分岐構造を有することがより好ましい。脂肪族芳香族コポリエステルの溶融体は、分子内に長鎖分岐が存在することで、高い溶融張力を示す。伸長したり引張られて細くなったときに歪み硬化と呼ばれる現象が高い溶融張力を示す溶融体に起こるので、溶融体表面の固化が促進される。結晶化速度の異なる2種の成分からなる複合繊維を紡糸する際に、分子内に長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルが繊維表面を被覆していることで、固化不足に起因する複合繊維同士の膠着を低減させることができる。その結果、曳糸性は良好になる。
第2成分に使用される脂肪族芳香族コポリエステル組成物には、脂肪族芳香族コポリエステルに対して芳香族ポリエステルが0.01〜0.8重量%の範囲で添加される。該第2成分に添加される芳香族ポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートを挙げることができ、なかでもポリブチレンテレフタレートが適している。これらの芳香族ポリエステルは、脂肪族芳香族コポリエステルに対して比較的結晶化温度が高いため、第2成分に使用される脂肪族芳香族コポリエステルに添加されると、先に結晶化する。この芳香族ポリエステルの結晶が脂肪族芳香族コポリエステル中で結晶核の役割を果たし、結晶核の生成が律速となっている高温における結晶化速度が速くなる。このため紡糸工程における繊維の固化が速くなり、結晶化不足によるベタツキが抑えられ、繊維同士の膠着を低減することができる。
第2成分への芳香族ポリエステルの添加量は前記したように0.01〜0.8重量%であり、好ましくは0.2〜0.5重量%である。芳香族ポリエステルの添加量が0.01重量%より低くなると、目的とする造核剤効果が得られず、曳糸性が悪化する。また、0.8重量%より大幅に高くなると得られる繊維の生分解性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
第2成分への芳香族ポリエステルの添加、更に第2成分として長鎖分岐構造を持つ脂肪族芳香族コポリエステルの使用を併用することで、前述した歪み効果による溶融体表面の固化促進と、高温における結晶化速度の向上が相乗効果を生み出し、より良好な曳糸性を得ることが可能となる。
本発明に好ましく用いる分子内に長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルは、下記混合物Aと下記有機化合物Bとの混合物から合成される。
混合物Aは、下記(a1)と(a2)とが0.4:1〜1.5:1のmol比で混合された混合物である。
(a1)は、下記[I]及び[II]または下記[I]、[II]及び[III]からなり、[I]は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、[II]は、テレフタル酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、[III]は、スルホネート基含有化合物である。
(a1)が下記[I]及び[II]からなる場合、(a1)中のこれらの比率は、(a1)100mol%に対して、[I]が、35≦[I]≦95mol%、[II]が、5≦[II]≦65mol%であり、これらの合計は100mol%になる。(a2)は、[IV]であり、炭素数2〜6のアルカンジオール及び炭素数5〜10のシクロアルカンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物である。
(a1)が下記[I]、[II]及び[III]からなる場合、(a1)中のこれらの比率は、(a1)100mol%に対して、[I]が、35≦[I]<95mol%、[II]が、5≦[II]<65mol%、[III]が、0<[III]≦5mol%であり、これらの合計は100mol%になる。(a2)は、[IV]であり、炭素数2〜6のアルカンジオール及び炭素数5〜10のシクロアルカンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジヒドロキシ化合物である。
有機化合物Bは、エステル形成可能な基を少なくとも3個有する有機化合物である。混合物Aと有機化合物Bとの混合比率は、混合物A中の(a1)100mol%に対して、有機化合物Bが0.01〜5mol%である混合物から合成できる。
[I]は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸に炭素数1〜6のアルキルをエステル形成させたジアルキル誘導体が好ましく、例えば、ジメチル誘導体、ジエチル誘導体、ジプロピル誘導体、ジブチル誘導体、ジへキシル誘導体、ジペンチル誘導体等を挙げることができ、特に、ジメチル誘導体が好ましい。(a1)中の比率は、(a1)100mol%に対して、[I]が、35≦[I]≦95mol%、好ましくは35≦[I]<95mol%、より好ましくは45≦[I]≦80mol%である。この範囲であれば、複合繊維及び該複合繊維を用いて得られる繊維構造物に良好な生分解性、成形性及び物性を与えることができる。
[II]は、テレフタル酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。テレフタル酸の誘導体としては、テレフタル酸に炭素数1〜6のアルキルをエステル形成させたジアルキルテレフタレートが好ましく、具体的には、ジメチルテレフタレート、ジエチルテレフタレート、ジプロピルテレフタレート、ジブチルテレフタレート、ジペンチルテレフタレート、ジヘキシルテレフタレート等を挙げることができ、特にジメチルテレフタレートが好ましく利用できる。(a1)中の比率は、(a1)100mol%に対して、[II]が、5≦[II]≦65mol%、好ましくは5≦[II]<65mol%、より好ましくは、20≦[II]≦55mol%である。この範囲であれば、複合繊維及び該複合繊維を用いて得られる繊維構造物等に良好な生分解性、成形性及び物性を与えることができる。
[III]は、スルホネート基含有化合物である。前記化合物としては、スルホネート基含有ジカルボン酸及びその誘導体が利用できる。スルホネート基含有ジカルボン酸の誘導体としては、スルホネート基含有ジカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。具体的には、5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩またはその混合物が好ましく、なかでも5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩が好ましい。[III]は、(a1)中に含有されていなくてもよいが、含有されていることで、曳糸性の改善により効果が見られるために好ましい。含有されている場合には、その比率は、(a1)100mol%に対して、[III]が、0<[III]≦5mol%、好ましくは0.1≦[III]≦3mol%、特に好ましくは1≦[III]≦2mol%である。
[IV]は、炭素数2〜6のアルカンジオール及び炭素数5〜10のシクロアルカンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のヒドロキシル化合物である。アルカンジオールは、炭素数2〜6のアルカンにヒドロキシルが2個結合しており、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のヒドロキシル化合物を挙げることができる。また、シクロアルカンジオールは、炭素数5〜10のシクロアルカンにヒドロキシルが2個結合しており、シクロアルカンとヒドロキシルとが直接結合していても、ヒドロキシルとシクロアルカンとの間にアルキレンが結合していてもよく、具体的には、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等のヒドロキシル化合物を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールまたはこれらの混合物が好ましい。
混合物Aは、上記(a1)と上記(a2)との混合物であり、そのmol比((a1):(a2))が、0.4:1〜1.5:1の範囲内であることが好ましい。これらのmol比が、この範囲内であれば、得られる複合繊維及び該複合繊維を用いて得られる繊維構造物等の引張強度の低下が起こりにくく、生分解性も良好である。
[V]の有機化合物Bは、エステル形成可能な基を少なくとも3個有する有機化合物である。前記化合物は、エステル形成可能な基を3〜10個有することが好ましく、エステル形成可能な基を3〜6個有することがより好ましい。また、エステル形成可能な基としては、ヒドロキシルまたはカルボキシルを挙げることができる。有機化合物Bとしては、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルトリオール、グリセロール、トリメシン酸、トリメリット酸またはその無水物、ピロメリット酸またはその2無水物、ヒドロキシイソフタル酸等を挙げることができる。なお、これらは単独で使用しても、2種類以上併用して使用してもよい。また、有機化合物Bの配合量は、上記(a1)100mol%に対し、0.01〜5mol%であり、好ましくは0.05〜4mol%である。有機化合物Bの配合量が多くなるに従い、得られる脂肪族芳香族コポリエステルの溶融粘度が上昇する傾向にある。有機化合物Bの配合量が、上記範囲であれば、複合繊維及び該複合繊維を用いて得られる繊維構造物の加工性は良好になる。一方、有機化合物Bの配合量が0.01mol%を大きく下回ると、長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルを製造することができなくなり、その結果、得られる複合繊維は、繊維同士の膠着が生じ易くなり、良好な曳糸性が得られなくなる。
本発明に用いられる分子内に長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルは、上記[I]〜[V]の化合物から合成することができる。合成方法は、従来公知の方法が採用できる。例えば、上記[I]〜[V]の化合物を所定量混合し、加熱してエステル反応またはエステル交換反応させた後、生成した縮合水またアルコールを除去する方法を挙げることができる。なお、脂肪族芳香族コポリエステルとしては、BASF社のECOFLEX(商品名)を用いることができる。
脂肪族芳香族コポリエステルの構造式を式(1)〜(3)に例示する。式(1)〜(2)に示す脂肪族芳香族コポリエステルは、分子内に長鎖分岐構造(M)を有しているが、式(3)に示す脂肪族芳香族コポリエステルは、分子内に長鎖分岐構造を有していない。

Figure 2005089937

Figure 2005089937

Figure 2005089937
なお、式(1)、式(2)において、Mは長鎖分岐構造形成のための官能基を有する構造体である。
本発明に用いる脂肪族ポリエステル及び脂肪族芳香族コポリエステルには、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤、親水剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
本発明に用いる第1成分及び第2成分は、紡糸可能な範囲のメルトフローレート(以下、MFRと略す)であれば特に限定されることはないが、1〜100g/10分の範囲が好ましく、3〜70g/10分の範囲が更に好ましい。紡糸時の第1成分と第2成分とのMFR比を2以下に調節することが好ましい。なお、MFR比とは、第2成分のMFR/第1成分のMFRをいう。MFR比がこの範囲であれば、紡糸工程において汎用の冷却装置を用いて冷却することで複合繊維同士の膠着を抑えることができる。また、これにより複合繊維の開繊性が良好になることから、複合繊維からなる繊維構造物の風合いを良好にできる。
また、本発明の生分解性複合繊維は、繊維成形後の第1成分のMFRを10〜100g/10分の範囲に調節することで曳糸性がよくなり、10〜70g/10分の範囲に調節することで更に良好となる。同様に繊維成形後の第2成分のMFRを10〜100g/10分の範囲に調節することで曳糸性がよくなり、10〜70g/10分の範囲に調節することで更に良好となる。繊維成形後の第1成分と第2成分とのMFR比を2以下に調節することが好ましい。通常、繊維成形後のMFRは、熱劣化を受けているので繊維成形前のMFRに比べ数値が大きくなる。また、第1成分のMFRに比べて第2成分のMFRの方が、その増加傾向は大きい。従って、前記MFR比より繊維成形後のMFR比の方が数値が大きくなり易い。この数値(繊維成形後のMFR比)が2以下の範囲であれば、紡糸工程で複合繊維同士の膠着を防止できるだけでなく、本発明における第1成分と第2成分とをスパンボンド紡糸法に用いた場合でも、サクションでの複合繊維同士の膠着等が発生せず、複合繊維の開繊性を良好に保つことができるので、複合繊維からなる繊維構造物の風合いを良好にできる。
本発明の生分解性複合繊維は、第2成分が繊維表面の少なくとも一部を繊維長さ方向に連続して形成された構造である。また、本発明の生分解性複合繊維の断面は、同心型、偏心型、並列型、両成分が放射状に交互に配列された放射型等の構造を有していることが好ましく、なかでも、熱接着性の点から同心型、並列型の繊維断面構造を有する複合繊維が好ましい。本発明において、接着性能を考慮すると、第2成分が繊維表面の30%以上を占めることが好ましく、50%以上を占めることがより好ましく、ほぼ全面を占めることが最も好ましい。
本発明の生分解性複合繊維の第1成分と第2成分との容量比は、紡糸可能な範囲であれば特に限定されないが、30:70〜70:30の範囲が好ましく、50:50がより好ましい。
本発明の生分解性複合繊維の単糸繊度は、特に限定されることはなく、用途に応じて適宣選択できる。良好な風合いを要求される生理用品等の用途では、単糸繊度は、0.1〜10デシテックスであることが好ましく、0.5〜6デシテックスであることがより好ましい。単糸繊度が0.1〜10デシテックスの範囲であると、汎用の紡糸装置を用いた紡糸工程で曳糸性が良好になる。また、繊維に高い強度が要求される土木等の用途では、単糸繊度は、10〜2000デシテックスであることが好ましく、100〜1000デシテックスであることがより好ましい。
静電気防止性、開繊性、平滑性等の機能を本発明の生分解性複合繊維に付与するためには、その表面に界面活性剤を付着させることが好ましい。複合繊維に界面活性剤を付着させる方法としては、ローラー法、浸漬法、パットドライ法等が利用できる。その際、用途に合わせて、界面活性剤の種類、その濃度を調整して利用することが好ましい。界面活性剤を付着させる段階は、紡糸、延伸、捲縮のいずれの工程で行ってもよく、必要に応じて、繊維構造物とした後にその表面に界面活性剤を付着させてもよい。界面活性剤としては、アルキルフォスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が例示できる。
本発明の生分解性複合繊維の繊維長は、特に限定されることはなく、用途に応じて適宜選択できる。カード機を用いてウェブを作製するカード法の場合には、一般に20〜76mmの範囲の繊維長が好ましく、抄紙法やエアレイド法の場合では、一般に2mm〜20mmの範囲の繊維長が好ましい。繊維長が2mm以上であれば、複合繊維同士を熱融着させて得られる繊維構造物に充分な引張強力を付与することができる。また、繊度によっても異なるが、繊維長が20〜76mmの範囲であれば、カード法でウェブを作製した場合に、均一な地合のウェブを得ることができる。
繊維成形物等を製造する場合、本発明の生分解性複合繊維は単独で使用してもよいが、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内であれば必要に応じて他の繊維と混繊し、混合物にして使用してもよい。具体的には、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維等の合成繊維、綿、羊毛、麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラ、アセテート等の再生繊維、半合成繊維等、ポリ乳酸繊維、ポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維が利用できる。特に、ポリ乳酸繊維、ポリブチレンサクシネート繊維等の生分解性繊維との混繊が好ましい。また、本発明の生分解性複合繊維が、第2成分に対して第1成分の融点が40℃以上高い場合には、熱融着性を有しない生分解性繊維同士を熱融着させるためのバインダー繊維として使用することが可能である。
本発明の繊維構造物は、本発明の生分解性複合繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物であり、該生分解性複合繊維の繊維接点が熱接合された不織布、ネット状物、編物及び織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された構造物であることが好ましい。また、本発明の繊維構造物に、他のウェブ、織物、編物、不織布を種々積層して用いてもよい。
本発明の生分解性複合繊維は、紡糸工程で複合繊維同士の膠着が発生せず、良好な曳糸性を示し、カード機を用いる際の開繊性に優れているので、これを用いて得られる繊維構造物は、従来の曳糸性に劣る生分解性複合繊維を用いて得られる繊維構造物と比較して、風合いに優れ、高い機械的強度を有する、実用性の高い繊維構造物である。
本発明の繊維構造物は、土木シート、農業用べたがけシート等の用途に利用でき、微生物によって分解されるため、廃棄処理に必要な労力を削減することが可能となる。また、本発明の繊維構造物は、フィルター、ボードに利用することができる。また、良好な生分解性を有しているので、環境に優しく、更に高い衛生性を有していることから、衛生材料分野をはじめ、医療分野、産業資材分野にも好適に使用できる。
本発明の生分解性複合繊維または繊維構造物を少なくとも一部に用いて、吸収性物品を製造することができる。本発明の生分解性複合繊維からなる繊維構造物は、風合いに優れ、高い引張強度を有することから低目付化を図ることができ、これを紙オムツや生理用品等の吸収性物品に使用することで、他の生分解性複合繊維を使用した場合と比較して低コスト化が可能となる。本発明の生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物、吸水性物品は、土壌中への埋立てる等の廃棄した場合には、生分解性を有するため土壌汚染がなく、焼却処理した場合には、有毒ガスの発生がなく、更に汎用樹脂と比較して燃焼熱量が小さいため、焼却炉を傷める可能性も低い。
以下、本発明の生分解性複合繊維及びこれを用いた繊維構造物の製造方法を例示する。
通常の溶融複合紡糸機を用いて、第1成分と、芳香族ポリエステルを添加した第2成分とからなる生分解性を有する複合繊維を紡糸する。紡糸に際し、紡糸温度は、120〜330℃の範囲が好ましく、引き取り速度は40m/分〜1500m/分程度とするのがよい。延伸は必要に応じて多段延伸を行ってもよく、延伸倍率は通常1.2〜9.0倍程度とするのがよく、延伸温度は、通常、複合繊維が融着しない程度の温度で加熱するのがよい。更に前記加工を経た複合繊維に対し、必要に応じてスタッフィングボックス等のクリンパーで捲縮を付与した後、所定長に切断して短繊維とし、公知のカード法、エアレイド法、乾式パルプ法、湿式抄紙法等によりウェブとすることができる。また、複合繊維を所定長に切断せずにトウの状態で分繊ガイド等によりウェブとすることもできる。更に公知のスパンボンド法やメルトブロー法により紡糸工程から直接ウェブにしてもよい。得られたウェブは必要に応じてニードルパンチ法、高圧液体流処理等の公知の高次加工工程、熱風または熱ロール等の公知の熱処理工程を経て、種々の用途に応じた繊維構造物に成形される。また、紡糸延伸後、フィラメント糸条として巻き取り、これを編成または織成して編織物とし、熱処理工程を通して繊維構造物としてもよく、前記短繊維を紡績糸とした後、これを編成または織成して編織物とし、熱処理工程を通して繊維構造物に成形してもよい。更にカード法、エアレイド法、スパンボンド法、抄紙法等の方法で均一にしたウェブ、織物、編物、不織布、フィルム等からなる他の構造物を、本発明の生分解性複合繊維からなる前記ウエブまたは繊維構造体に対して種々積層し、熱処理工程を通して繊維構造物としてもよい。
上記熱処理工程では、熱風ドライヤー、サクションバンドドライヤー、ヤンキードライヤー等のドライヤーを用いる方法や、フラットカレンダーロール、エンボスロール等の加圧ロールを用いる方法が使用できる。熱処理温度は、ドライヤーを用いた場合には、生分解性複合繊維の第2成分の融点以上、第1成分の融点未満の温度が好ましく、加圧ロールを用いた場合には、生分解性複合繊維の第2成分の軟化点以上、第1成分の融点前後の温度が好ましい。用いる脂肪族芳香族コポリエステルや脂肪族ポリエステルの種類にもよるが、一般に60〜165℃の範囲が適当である。また、処理時間は前記ドライヤー等を用いる場合は約5秒以上が、前記加圧ロールを用いる場合は5秒以下が一般的である。
以下、本発明を実施例及び比較例によって説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお実施例、比較例における用語と物性の測定方法は以下の通りである。
(メルトフローレート)
JIS K 7210の表1の条件4(温度190℃、荷重21.18N)に準拠し、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族コポリエステルのMFR値を測定した。
(繊維成形後のメルトフローレート)
任意の紡糸温度で第1成分のみを繊維化し、JIS K 7210の表1の条件4(温度190℃、荷重21.18N)に準拠して、そのMFR値を測定した。また、同様に第2成分のMFR値を測定した。
(融点)
デュポン社製熱分析装置DSC10(商品名)を用い、JIS K 7122に準拠し、各構成樹脂の融点を測定した。
(曳糸性評価)
実施例1〜9及び比較例1〜3において各々の生分解性複合繊維を溶融紡糸する際に、曳糸性を評価した。評価基準は、紡糸した生分解性複合繊維の膠着の発生状態により、次の3段階で評価した。
A:繊維膠着が全く発生せず、操作性が良好である。
B:若干の繊維膠着が見られるが、操作上問題がない。
C:明らかな繊維膠着が見られ、操作上問題がある。
(引張強度)
実施例1〜10及び比較例1〜4において得られた各々の不織布(繊維構造体)を幅25mm、長さ150mmの短冊状に切断してサンプルとした。(株)島津製作所製オートグラフ AGS500D(商品名)を用い、サンプルの破断強度を測定し、これを引張強度とした。試験条件は、室温下、引張速度100mm/分で実施した。なお、引張強度の値は下記式により目付30g/m2換算値で表した。
引張強度=(引張強度実測値)×(30/目付実測値)
(不織布風合い評価)
実施例1〜10及び比較例1〜4で作製した不織布を用いて、5人のパネリストによる官能試験を行なった。判定基準は、しわ等によるガサツキ感がなくしかもソフトであると全員が判定した場合を優(A)、3名〜4名が同様に判定した場合を良(B)、3名以上がしわ等によるガサツキ感があるかまたはソフト感に欠けると判定した場合を不可(C)とした。
(生分解性能評価)
実施例1〜10及び比較例1〜4において得られた各々の不織布(繊維構造体)を土中に埋没して6ヶ月後に取り出し、不織布がその形態を保持しておらず埋没後の引張強度が測定不可能である場合を優(A)、不織布はその形態を保持しているが埋没後の引張強度が埋没前の引張強度初期値に対して50%未満まで低下している場合を良(B)、不織布の埋没後の引張強度が埋没前の引張強度初期値に対して50%以上を示している場合を不可(C)と評価した。
(カード通過性)
実施例1〜9及び比較例1〜3において得られた各々の生分解性複合繊維を、カード機で梳綿しウェブとする工程で、得られたウェブの生分解性複合繊維の絡み具合を、次の3段階の評価基準で判定した。
A:繊維同士の絡みが強く、操作性が良好である。
B:繊維同士の絡みが若干弱い。
C:繊維同士の絡みが非常に弱く、操作上問題がある。
(耐熱性試験)
実施例11及び比較例5において得られた各々の吸収性物品の耐熱性を測定した。吸収性物品を70℃に設定した恒温槽内中に30分間放置し、吸収性物品の熱劣化(特に、膠着状態)を観察し、判断した。
(原料樹脂)
PLA−1:ポリ乳酸(融点179℃、MFR12)。
PLA−2:ポリ乳酸(融点150℃、MFR6)。
PBTA−1:ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体(融点110℃、MFR5)。この共重合体は、式(1)で示される、分子内に長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルである。この共重合体は、[I]アジピン酸64mol%、[II]テレフタル酸35mol%及び[III]5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩1mol%からなる混合物100mol%、[IV]1,4−ブタンジオール100mol%及び[V]酒石酸0.5mol%を共重合させることで得られる。
PBTA−2:ポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体6(融点108℃、MFR28)。この共重合体は、式(3)で示される分子構造が直鎖状で長鎖分岐の存在しない脂肪族芳香族コポリエステルである。この共重合体は、[I]アジピン酸64mol%、[II]テレフタル酸35mol%及び[III]5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩1mol%からなる混合物100mol%及び[IV]1,4−ブタンジオール100mol%を共重合させることで得られる。
PETS:ポリエチレンテレフタレート−サクシネート共重合体(融点102℃、MFR8)。この共重合体は、式(2)で示される、分子内に長鎖分岐構造を有する脂肪族芳香族コポリエステルである。この共重合体は、[I]コハク酸64mol%、[II]テレフタル酸35mol%及び[III]5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩1mol%からなる混合物100mol%、[IV]エチレングリコール100mol%及び[V]酒石酸0.5mol%を共重合させることで得られる。
PBS:ポリブチレンサクシネート(融点114℃、MFR26)。
PES:ポリエチレンサクシネート(融点102℃、MFR28)。
PCL:ポリカプロラクトン(融点60℃、MFR6)。
PBT:ポリブチレンテレフタレート(融点228℃)
PET:ポリエチレンテレフタレート(融点260℃)
実施例1
鞘芯型複合紡糸用口金を取り付けた、2機の押出機を有する複合紡糸装置を使用し、鞘芯型複合繊維を製造した。ホッパの芯成分側に、第1成分としてPLA−1を投入し、鞘成分側に、第2成分としてPBTA−1:99.5重量%及びPBT:0.5重量%を投入して、230℃の紡糸温度で、第1成分と第2成分との容積比率が50/50の同心型の繊維断面形状となるように複合繊維を吐出し、ワインダーによってこれを引き取った。なお、前記引き取り工程において、吐出された複合繊維の表面に、界面活性剤としてアルキルフォスフェートカリウム塩を付着させた。次に、ワインダーで巻き取った複合繊維(未延伸糸)を延伸機によって、3.0倍(延伸温度80℃)に延伸した後、スタッフィングボックスに通して機械捲縮を付与させ、次いで長さ51mmに切断し、捲縮の施された1.0デシテックスのスフを得た。次に、得られたスフをカード機でカーディングしてウェブとし、該ウェブを熱風貫通型ドライヤーで、温度110℃、処理時間1分40秒の条件で熱処理して、複合繊維の交点が熱融着された不織布(繊維構造物)を得た。
実施例2〜9
実施例1に準拠した製造方法により、表1に示した原料樹脂の組合せ、繊維の断面形状で、生分解性複合繊維及び不織布を製造した(実施例2〜9)。但し、実施例7では、第2成分の紡糸温度を実施例1よりも30℃高く設定して紡糸を行った。得られた不織布の物性は表1に示した。
実施例10
実施例1で用いた第1成分及び第2成分を使用し、芯成分に第1成分が、鞘成分に第2成分が配置される同心型の断面形状を有する生分解性複合長繊維を紡糸した。紡糸温度条件は第1成分側、第2成分側共に240℃である。紡糸された長繊維群をスロット型エアーサッカーで牽引し、捕集装置にウェブを捕集した。吹き付けたエアーは捕集装置に備えた吸引装置から吸引しウェブをコンベアに密着させた。得られたウェブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度100℃、フラットロール95℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付31g/m2の長繊維不織布(繊維構造物)を得た。
この不織布の風合い評価は優(A)であり、引張強度は30N/2.5cmを示し、実用性の非常に高い不織布であることがわかった。また、この不織布の生分解性評価は優(A)であった。
比較例1〜3
実施例1に準拠した製造方法により、表2に示した原料樹脂の組合せ、繊維の断面形状で、生分解性複合繊維及び不織布を製造した。但し、比較例1では、延伸温度を80℃から90℃に変更し、熱風貫通型ドライヤーの温度を110℃から160℃に変更した。得られた不織布の物性は表2に示した。
比較例4
比較例3で用いた第1成分及び第2成分を使用し、芯成分に第1成分が、鞘成分に第2成分が配置される同心型の断面形状を有する生分解性複合長繊維を紡糸した。紡糸温度条件は第1成分側、第2成分側共に240℃であった。紡糸された長繊維群をスロット型エアーサッカーで牽引し、捕集装置にウェブを捕集した。吹き付けたエアーは捕集装置に備えた吸引装置から吸引しウェブをコンベアに密着した。ウェブを熱圧着装置に移送し、エンボスロール温度100℃、フラットロール95℃、線圧50N/mmの条件で熱圧着処理し、目付30g/m2の長繊維不織布(繊維構造物)を得た。この際、紡糸段階で複合繊維同士の膠着が発生したため、得られた目付30g/m2の不織布は風合いが悪化しており、不織布の風合い評価は、不可(D)の実用性の低いものであった。
実施例1〜9で得られたデータを表1に、比較例1〜3で得られたデータを表2に示した。
Figure 2005089937
Figure 2005089937
表1から明らかなように、実施例1〜9の本発明の生分解性複合繊維は、その製造時において、複合繊維同士の膠着が全く認められず、曳糸性も良好であった。更に得られた複合繊維はカード通過性がよく、得られた不織布(本発明の繊維構造物)は、高い引張強度、良好な風合い及び良好な生分解性能を併せ持っていた。
これに対し、表2から明らかなように、比較例1の生分解性複合繊維は、融点差のあるポリ乳酸からなる複合繊維であり、この複合繊維を用いて得られた不織布(繊維構造物)は、硬い感触を有する極めて悪い風合いであり、人の手や皮膚に直接接触する用途に対して、実用性が低いと判断できた。
また、比較例2の生分解性複合繊維は、融点差のあるサクシネート系樹脂からなる複合繊維であり、該生分解性複合繊維は、クリンプ保持性が低いことからカード工程において、複合繊維同士の絡みが弱くなり、カード通過性が極めて悪かった。また、この複合繊維から得られた不織布(繊維構造物)は、引張強度が低く、実用性が低いと判断できた。更に比較例3の生分解性複合繊維は、長鎖分岐の存在しない脂肪族芳香族コポリエステルからなる複合繊維であり、該コポリエステルを使用したため、複合繊維製造時において、複合繊維同士の膠着が発生し曳糸性が悪かった。また、この複合繊維を用いて得た不織布(繊維構造物)は、極めて風合いが悪く、実用性が低いと判断できた。
実施例11
実施例1で得られた不織布(繊維構造物)をトップシート層及びバックシート層に用い、両層間にパルプ繊維を使用した吸収材を挟み込んで、吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は日本国内の一般的な真夏の車中の状態を想定した耐熱性試験においても該吸水性物品の収縮、膠着等が発生せず、製品として実用性が高いと判断できた。
比較例5
第2成分として、PBTA−1の代わりにPCLを用い、PBTは添加せず、延伸温度を80℃から50℃に、熱風貫通型ドライヤーの温度を110℃から65℃に変更した以外は、実施例1に準拠して複合繊維を製造し、実施例1に準拠して目付31g/m2の不織布(繊維構造物)を作製した。次に、この不織布をトップシート層及びバックシート層に用い、両層間にパルプ繊維を使用した吸収材を挟み込んで、吸収性物品を作製した。得られた吸収性物品は、日本国内の一般的な真夏の車中の状態を想定した耐熱性試験において収縮、膠着が発生し、製品として使用することが困難であることが判明した。
実施例11で得られた吸収性物品は、吸収性物品として良好な性能を持ち合わせており、実用性に優れているのに対して、比較例5で得られた吸収性物品は、耐熱性に乏しく、熱によって容易に吸収性物品が収縮、膠着する製品であり、実用性の低いことが判明した。

Claims (10)

  1. 第1成分と第2成分とからなる生分解性複合繊維であって、該複合繊維の表面の少なくとも一部はその繊維長さ方向に連続する第2成分で形成されており、第2成分は芳香族ポリエステルを0.01〜0.8重量%含有する脂肪族芳香族コポリエステル組成物であり、第1成分が第2成分よりも融点の高い脂肪族ポリエステルであることを特徴とする生分解性複合繊維。
  2. 脂肪族芳香族コポリエステルが、分子内に長鎖分岐構造を持つことを特徴とする請求項1記載の生分解性複合繊維。
  3. 脂肪族芳香族コポリエステルが、分子内に長鎖分岐構造を持つポリブチレンテレフタレート−アジペート共重合体である請求項1または請求項2記載の生分解性複合繊維。
  4. 芳香族ポリエステルが、ポリブチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
  5. 第1成分が、ポリ乳酸である請求項1〜4のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
  6. 190℃における下記式で表される第1成分と第2成分のメルトフローレート比が2以下である請求項1〜5のいずれか1項記載の生分解性複合繊維。
    (メルトフローレート比)=(第2成分のメルトフローレート)/(第1成分のメルトフローレート)
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の生分解性複合繊維を少なくとも一部に用いた吸収性物品。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項記載の生分解性複合繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物。
  9. 繊維構造物が、生分解性複合繊維の繊維接点が熱接合された不織布、ネット状物、編物及び織物から選ばれる少なくとも一種の布帛で構成された構造である請求項8記載の繊維構造物。
  10. 請求項8または請求項9記載の繊維構造物を少なくとも一部に用いた吸収性物品。
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