近年、コンピュータや通信機器の重要部分には、多数のトランジスタや抵抗などを電気回路として結びつけ、1チップ上に集積化して形成された大規模集積回路(LSI)が多用されている。このため、機器全体の性能は、LSI単体の性能と大きく結び付いている。LSI単体の性能向上は、集積度を高めること、すなわち、素子の微細化により実現できる。
素子の微細化は、ソース・ドレイン拡散層などの拡散層を形成する際のイオン注入と、その後の熱処理(アニール)とを最適化することによって可能となる。これにより、例えば0.2μm以下の浅いソース・ドレイン拡散層を有するMOSトランジスタの実現が可能となる。
浅い拡散層を形成するためには、イオン注入の際に不純物原子を浅く分布させることが必要である。これに加えて、その後の熱処理で不純物が深く拡散しないように、少ない熱予算を組むことも要求される。しかしながら、熱予算を低減させた場合には、結晶欠陥を充分に回復することができずに残留してしまう。
一方、LSIの不良解析を行なうと、不良のLSIではセルの一部でpn接合リーク電流が大きく、電荷の保持特性が著しく悪い場合がある。pn接合リーク電流が大きい場合には、転位などの結晶欠陥が存在する場合が多い。
この種の結晶欠陥は、特に、半導体基板に種々の材料が埋め込まれた領域、具体的にはトレンチキャパシタやトレンチ分離素子などの近傍に見つかることが多い。通常、異種物質(埋め込み物質)と基板半導体との熱膨張率は異なるので、異種物質が半導体基板の中に埋め込まれている場合には、温度の昇降に伴って異種物質と半導体基板との界面を中心に熱応力が発生するからである。
半導体基板の強度は、LSIの工程を経るごとに次第に低下していく。本発明者らは、その原因を調べるためにLSIの工程を経た際のSi基板の機械的強度(Si強度基板)の変化およびSi基板内部の最大応力(Si基板内最大応力)の変化を調べた。その結果、Si基板内最大応力は、CVD法によるSi3N4膜やSiO2膜の成膜工程、あるいはイオン注入後の熱処理工程を経ると増加することがわかった。
その一方、Si基板強度は、LSIの工程を経ることに概ね単調に減少する。スリップやpn接合特性に大きく影響を及ぼす欠陥は、Si基板内最大応力がSi基板強度を上回った時点で、Si基板に塑性変形が生じることにより発生する。Si基板強度が低下する理由は以下のように考えられる。
イオン注入を行うと、Si基板内に点欠陥(Frenkel defect型欠陥)が形成される。こうした点欠陥は、その後の熱処理により基本的に回復するものの、その一部は結合して転位になる。
しかしながら実際には、イオン注入の工程の間にも点欠陥が合体して、点欠陥よりも大きい欠陥(欠陥クラスタ)が生じている。欠陥クラスタは、点欠陥よりもエネルギー的に安定なので、イオン注入後の熱処理を施しても回復しがたく、より大きな転位として残りやすい。こうした大きな転位が存在することによってSi基板強度は低下する。
イオン注入を行うことにより最初に生じる欠陥は、AsイオンがSi基板に打ち込まれた瞬間に生じる空孔や格子間原子のような点欠陥である。また、イオンの運動エネルギーの一部は熱エネルギーに代わるため、点欠陥には熱エネルギーが与えられる。
この結果、空孔と格子間原子とは、わずかに移動できるようになる。これにより、準非結晶状態にあるイオン注入層のボトム付近では、空孔と格子間原子との再結合によって点欠陥の回復が多少は生じる。しかしながら、それと同時に空孔同士の結合による欠陥クラスタや、格子間原子同士の結合による欠陥クラスタも生成される。
また、イオン注入分布の裾野(基板側)部分に位置する注入されたイオンは、イオン注入中においても、基板の奥の格子間に拡散しやすい。欠陥クラスタはこうした現象によっても形成される。このようにして、点欠陥よりも大きく、エネルギー的に安定な欠陥である欠陥クラスタからなる一次欠陥が形成される。
一次欠陥とSi基板強度との間には、次のような相関関係があることが判明した。すなわち、一回目のイオン注入で一次欠陥が形成された段階で、Si基板強度はいったん低下する。しかしながら、Si基板強度は、その後の熱処理で一次欠陥が消滅した分だけ増加する。
引き続いて2回目のイオン注入を行なうことによって、一次欠陥が再び形成され、Si基板強度は大きく低下する。この一次欠陥は、その後の熱処理により回復する。しかしながら、一回目のイオン注入の場合とは異なって二次欠陥が存在しているため、それが核になってより大きな二次欠陥が形成される。したがって、Si基板強度はほとんど増加しない。
このような状態で、ある一定以上の大きさの応力が加われば、二次欠陥(大きな転位)により基板強度の変位が阻害される。このため、簡単に塑性変形が起こり、さらに大きな結晶欠陥に成長してpn接合リーク電流の増加などに至ることになる。
すなわち、イオン注入と熱処理とを繰り返すことによって、Si基板強度が低下し、やがてSi基板に塑性変形を起こす応力が、Si基板内最大応力よりも小さくなる。その結果、大きな結晶欠陥が生じ、これによりpn接合リーク電流が増加するなどの問題が生じる。
上述したように従来の方法では、Si基板にイオン注入を行った後、熱処理を施したところで、Si基板内の結晶欠陥を効果的に低減することができない。結果として、イオン注入と熱処理を繰り返すほどSi基板強度が大きく低下するという問題があった。
イオン注入中にウェハステージを低温にすると、原子空孔がイオン注入中に移動するのを抑制することができる。このため、イオン注入で導入された格子間原子を原子空孔と効率よく結合させて、欠陥を消滅させることが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、通常のリソグラフィーで用いられているフォトレジストを用いて、イオン注入を行う領域以外をマスクして、−160℃程度のイオン注入を行なうと、図1の断面図に示すようにレジストマスク118にクラック122が生じる。この原因の1つとして、フォトレジスト中の水分が凍結して体積膨張することが判明した。レジストにクラックが生じると、マスクを形成している領域においてもイオンが注入され、pn接合特性が劣化してしまうので所望の原子特性が得られない。最悪の場合には、レジストパターン中のクラックの発生した部分で、下地絶縁膜にも同時にクラックが入るという問題が生じる。フォトレジストパターンにクラックが生じると、所望しない領域にイオンが注入されるという問題を具体的に説明するために、図1を用いて説明する。
図1には、従来のフォトレジストをマスクとして用いてイオン注入を行なう際のCMOS−FETの構成を表す断面図を示す。
図示するCMOS−FETは、次のような工程で得られる。まず、半導体基板111に、n型ウェル112、p型ウェル113、および素子分離絶縁膜114を形成する。こうした半導体基板111の上に、ゲート絶縁膜115を形成した後、ゲート電極またはダミーゲート電極116を形成する。その後、半導体基板111にBまたはBF2を、1×1014〜5×1015cm-2程度の濃度でイオン注入して、p型不純物導入層117を形成する。しかる後に、0.5μm〜1.5μmの膜厚のフォトレジスト層を形成し、露光・現像処理を行なってフォトレジストパターン118を得る。このレジストパターン118は、n型不純物導入層120を形成するためのマスクとして用いられる。
こうしてフォトレジストマスク118が形成された半導体基板111を−150℃以下に冷却しつつ、図1に示すように、AsまたはSbなどのn型不純物119を、1×1014〜5×1015cm-2程度の濃度でイオン注入する。半導体基板111を冷却した段階でフォトレジストマスク118に亀裂(クラック)122が発生し、n型不純物119はこのクラックを通過してp型不純物導入層117にもn型拡散層121が形成されてしまう。その結果、pn接合リーク電流が2桁以上大きくなり、良好な素子特性が得られない。
ところで、前述の素子の微細化は、例えばMOS電解効果トランジスタ(MOSトランジスタ)の場合であれば、ゲート長の短縮化およびソース・ドレイン領域の薄層化により実現できる。
浅いソース・ドレイン領域を形成する方法としては、低加速イオン注入法が広く用いられている。この方法により、0.1μm以下の浅いソース・ドレイン領域を形成することができる。しかしながら、低加速イオン注入法で形成された不純物拡散層は、シート抵抗が100Ω/□以上と高く、このままでは微細化による高速化は期待できない。そこで、LOGIC−LSIのように高速性を要求されるデバイスにおいては、ソース・ドレイン・ゲートの抵抗を低減するためにサリサイドが用いられている。このサリサイドは、ソース・ドレイン拡散層およびゲート電極(n+またはp+多結晶Si)表面に、自己整合的にシリサイド膜を形成するというものである。
デュアルゲート(同一層内でシリサイド層の下地として、n+多結晶Siとp+多結晶Siとを用いる)を採用する場合には、サリサイド構造は単にゲート電極を低抵抗化するだけでなく、工程の簡略化にも有効である。これは、サリサイド構造を用いることによって、ソース・ドレインへの不純物ドーピングの際に、同時にゲート多結晶Siへのドーピングもできるためである。これに対して、Wポリサイドをゲート電極として用いる場合には、ゲート電極底部の多結晶Siをn+/p+にドーピング分けする工程と、ソース・ドレインのn+/p+ドーピング分けとを別のタイミングで行う必要がある。したがって、リソグラフィ工程が2回、イオン注入工程が2回、レジスト除去工程が2回増加することになる。
一方、メモリLSIのように高密度素子設計を要求されるデバイスでは、SAC(self−aligned contact)が必要である。SAC構造では、ソースまたはドレイン上の絶縁膜にコンタクトホールを形成する際に、ゲート電極表面を露出させてはいけない。そのためには、Si酸化膜を反応性イオンエッチング(RIE)で加工する際にストッパー膜として作用するSi窒化物膜を、ゲート電極表面に形成する必要がある。したがって、メモリLSIの場合、LOGIC−LSIで用いられるサリサイドをゲート電極に適用することができない。
メモリLSIにおいては、従来から不純物をドープした多結晶Siがゲート電極として用いられており、低抵抗化の必要性から、その多結晶Si上にWシリサイドを積層させたWサリサイド構造が用いられている。さらに低抵抗化する場合には、多結晶Si上に超薄膜のバリアメタルを敷き、その上にW膜を積層させたポリメタル構造が用いられる。ポリメタル構造は、シリサイドを多結晶Si上に積層させた構造よりも比抵抗が低いため、より薄い膜厚で所望のシート抵抗を実現できるものの、LOGIC−LSIでは、デュアルゲートが必要とされる。このため、ゲートの多結晶Siとソース・ドレインとを別のタイミングでドーピングすることが必要になり、大幅なコストアップになる。
LOGICとDRAMとを混載させたLSIの場合には、DRAMでは、ソース・ドレインにサリサイドを貼り付けるとメモリーセル部でpn接合リーク電流が大きくなり、保持特性が低下する。また、上述したようなSAC構造の必要性から、ゲート電極にはWサリサイドが用いられる。一方、LOGICでは、低電圧でできる限り多くの電流を流すため、MOSFETのしきい値電圧を低くする必要がある。そのために、ポリサイドの多結晶Siは、nチャネルMOSFETではPまたはAsをドープしてn+−Siとして用いられ、pチャネルMOSFETではBF2をイオン注入してp+−Siとして用いられる。
なお、DRAMでは、ゲート電流を形成後の熱予算が大きい。このため、多結晶Siを最下層にしたゲート電極構造を用いた場合には、ゲート電極形成後の熱工程で次のような2つの問題が生じる。
第一に、As、Pなどの不純物原子が多結晶SiからWシリサイドに外方拡散して、多結晶Si中の不純物濃度が低下する。その結果、電圧を印加した際にゲート電極内に空乏層が広がって、ゲートの空乏化が生じる。したがってゲート容量は、実際のゲート絶縁膜で決まる値よりも小さくなってしまう。
第二に、多結晶Si中のBがゲート絶縁膜を突き抜けてSi基板に達して、チャネル領域の不純物濃度分布を変化させ、その結果、MOSFETのしきい値電圧が変化する。Bの突き抜け(Bの内方拡散)は、Fや水素がBと共存する場合に促進される。なお、ゲート酸化膜に窒素を添加した場合には、B−N結合が強いために多結晶Siとゲート絶縁膜との界面にB−N結合が形成されて、Bの内方拡散が抑制される。
したがって、問題は次の2つに整理される。(1)LOGIC−LSIおよびメモリLSIのゲート電極は二極化しているので共通化できないこと、(2)ポリサイドやポリメタル構造を用いた場合に起こる、ゲート空乏化とBの突き抜けである。
こうした問題を解決するために、種々の方法が提案されている。例えば、半導体材料ではなく、金属材料をゲート絶縁膜上に直接形成した、いわゆるメタルゲートが挙げられる(例えば、特許文献2参照。)。メタルゲートを用いることによって、不純物の不活性化や不純物の拡散による上述の問題点は解決できるものの、精密なゲート加工が困難である。
さらに、ダミーゲートを用いる方法も提案されている。この方法においては、まず、Si窒化膜/多結晶Si膜からなるダミーゲートを最初に形成し、引き続いて、ソース・ドレインの形成および層間絶縁膜を形成する。その後、ダミーゲートの表面を露出させ、ダミーゲートを除去した後に、新たにメタルゲート膜を形成する。
しかしながら、ダマシンゲートMOSFETでは、従来のMOSFETと比較して高性能のトランジスタが実現可能であるが、製造プロセスが長くなってしまう。RPT(raw process time)で計算すると、Tiサリサイドをソース・ドレイン・ゲートに形成した従来のトランジスタに比較して、22H程度長くなることがわかっている。その理由は、ダマシンゲートMOSFETでは、Si3N4(Si窒化膜)/poly−Si/ダミーゲートを形成して、それを除去してからゲート電極材料を埋め込むというプロセスを用いているためである。RPTの短縮のためには、ダミーゲートを簡略化することが必要であり、これまでに何種類かのダミーゲートが提案されている。
しかしながら、いずれも何らかの問題を伴っている。例えば、SiOH(H:10〜20%)をダミーゲートとして用いた場合には、ソース・ドレイン工程を通過した後に、SiO2と膜質が近づいてしまう。このため、選択エッチングが困難になる。また、スパッタカーボン膜は加工が困難であるのみならず、スパッタの際にパーティクルが多量に発生する。このため、微細パターンの形成が困難であった。しかも、熱工程を経ると、下地酸化膜上から膜はがれが起こるという問題があった。また、カーボン膜は、酸素の存在により容易に酸化されてCOやCO2として蒸発する。したがって、ダミーゲートを加工した後に、ゲートエッチおよびソース・ドレインを酸化することが不可能であった。
なお、半導体基板にソース・ドレイン拡散領域の延長部を形成するためのイオン注入は、これまでは5nm程度の薄いシリコン酸化膜を介して行う方法が主であったが、最近では、30nm以下の浅い接合が求められつつある。このためには、薄いシリコン酸化膜なしで不純物イオン注入することが要求される。しかしながら、上述したようなSi
3N
4(Si窒化膜)/poly−Siからなるダミーゲート構造においては、ソース・ドレイン拡散領域の延長部の薄いシリコン酸化膜を剥離すると、後のダミーゲート除去のためのpoly−Siエッチング時にチャネル部分もエッチングされてしまうという問題がある。
特開平10−261593号公報
特開平11−224947号公報
以下、図面を参照して本発明の半導体装置の製造方法を詳細に説明する。
(実施例I)
(実施例I−1)
図2に、本実施例の方法でイオン注入を行なう際のCMOS−FETの構成を表す断面模式図を示す。
図示するCMOS−FETは、次のような工程で得られる。まず、半導体基板11上に、n型ウェル12、p型ウェル13、および素子分離絶縁膜14を形成する。こうした半導体基板11の上に、ゲート絶縁膜15を形成した後、ゲート電極またはダミーゲート電極16を形成する。その後、半導体基板11にBまたはBF2を1×1014〜5×1015cm-2程度の濃度でイオン注入して、p型不純物導入層17を形成する。
n型不純物19をイオン注入するためのマスク18は、炭素が水素よりも多く含まれるポリマーを用いて、次のような手法で形成することができる。用い得るポリマーとしては、例えば、炭素が原子比で約60%、酸素が1〜2%、水素が40%以下のポリマーが挙げられる。また、下記化学式で表されるポリマーを用いることもできる。
上記化学式中、XはCH=CH2等の架橋点を表し、nは整数である。
こうしたポリマーを含有する溶液を、前述の半導体基板11上に少なくとも1つ以上のノズルから滴下し、半導体基板ウェハを回転させながら均一に塗布する等により塗布し、300〜350℃でベーキングしてポリマー膜を形成する。この加熱は、酸素を含んだ雰囲気中で、30〜60分間行なうことが好ましい。また、ポリマー膜の膜厚は、0.5μm〜1.5μmとすることが好ましい。
その後、炭素過剰の組成のポリマー膜の上に1〜3μmの厚みのフォトレジストのパターンを形成する。
フォトレジストパターンをマスクとして、酸素イオンを用いてポリマー膜を加工した後、フォトレジストパターンをエチレングリコールまたはレジスト用のシンナーを用いて除去する。最後に、N2またはAr、または真空雰囲気中で10分以内600〜900℃、好ましくは600〜800℃の熱処理を行なって、イオン注入マスクとなるポリマーマスク18が形成される。この熱処理時の昇温速度は、50℃/min以下であることが好ましく、10℃/min以下であることがより好ましい。このような速度で昇温することによって、最上層が硬化する前にポリマーマスクから余分なガスを放出させることができる。このため、ブリスタ(ひぶくれ状の突起)を生じることなくポリマーマスク全体を硬化することができる。また、ブリスタを発生させないために、塗布状態におけるポリマーの分子量は、5000以上、さらには10000以上であることが望ましい。
なお、ポリマー膜を加工する前に、こうした600℃以上の熱処理を行なうこともできる。あるいは、熱処理は、200〜400℃の基板温度で、電子ビームまたはフラッシュランプを用いて行なうこともできる。この熱処理は、ポリマー膜の加工前、または加工後のいずれに施してもよいが、加工後に施した場合にはポリマー膜の寸法が体積収縮により減少するために、加工前に行なう方が好ましい。
こうしてポリマーマスク18が形成された半導体基板11を冷却しつつ、図2に示すように、AsまたはSbなどのn型不純物19を1×1014〜5×1015cm-2程度の濃度でイオン注入する。半導体基板11を冷却する温度は、0℃以下とすることが好ましく、−100℃以下とすることがより好ましい。最も好ましくは、半導体基板の冷却温度は−150℃以下である。
本実施例の場合には、半導体基板11を冷却した状態でポリマーマスク18に亀裂(クラック)が発生しないことが、図2の断面図から明らかである。
イオン注入を完了後は、ポリマー膜18を酸素プラズマまたは活性な酸素を用いて除去し、900〜1000℃、10〜30秒のRTA(Rapid Theraml Anealing)熱処理を施す。この熱処理によって、イオン注入された不純物の活性化が行われる。なお、半導体基板表面に凹凸がある半導体基板の場合には、このRTA熱処理を行なう前に、550℃前後で1〜4時間の熱処理を行ってもよい。
熱処理後にpn接合リーク電流を測定したところ、従来のフォトレジストマスクを用いてイオン注入を行った場合に比較して、2桁以上低減することが確認された。
(実施例I−2)
ポリマー中における炭素と水素との原子比(C/H)、炭素の絶対量、および硬化条件等を変えて、ポリマー膜のクラックを評価し、得られた結果を、下記表1にまとめる。
表1中、ポリマー膜の表面状態が“OK”とは、クラックが全く発生しないことを表しており、わずかでもクラックが発生した場合を“NG”とした。
表1に示すように、炭素と水素との原子比が1未満の場合には、クラックが頻発することが判明した。これに対して、炭素と水素との原子比が1以上、さらには1.1以上で、炭素の絶対量が50%以上、さらには55%以上の場合には、クラックは確実に抑制されることが確認された。
したがって、本発明において用いられる炭素過剰の組成のポリマーは、炭素と水素との原子比(C/H)が1以上であり、かつ炭素の絶対量が50%以上であることが望ましく、原子比が1.1以上であり、かつ炭素の絶対量が55%以上であることがより好ましい。また硬化は、300℃以上の条件で行なうことが好ましい。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、素子製造工程によっては、イオン注入後にポリマー膜を除去せずに熱処理を行ってもよく、本発明の技術範囲において種々変形して実施できる。
以上説明したように、本実施例によれば、半導体基板に塑性変形が起こる臨界応力が、半導体基板内の最大応力よりも大きくなる条件で、少なくともイオン注入を行うことにより、イオン注入工程に起因する半導体基板の機械的強度を効果的に防止できる半導体装置の製造方法が提供される。
また本実施例によれば、イオン注入時における半導体基板の表面を低温に保持できるので、本実施例に係る半導体装置の製造方法を容易に実施できる半導体製造装置を実現できる。
(実施例II)
以下、図面を参照して、本実施例および比較例を説明する。
(実施例II−1)
図3は、本実施例に用いられるポリマー膜の炭素と水素の原子比率を変えて加熱を行ない、耐熱性を調べた結果である。熱処理時間は1時間で、耐熱性は膜の熱分解(脱ガス)変形、膜はがれ、またはクラックが起こらない温度を可能温度にしている。ポリマー膜中には、炭素と水素以外に酸素が2%以下で存在している。
図3から明らかなように、C/H比を1以上にすることによって、800℃以上の熱処理に対して耐えることが可能である。
(実施例II−2)
図4〜図6に本実施例のトランジスタの製造方法を示す。
まず、図4(a)に示す構造を作製する。こうした構造は、次のような手順で得ることができる。Si半導体基板31表面にドライエッチングで溝を形成した後、その内部に堆積または塗布によって絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、Si酸化膜を用いることができる。あるいは、Si熱膨張係数(約3ppm/K)に近いSiNOなどを用いてもよい。形成された絶縁膜の表面を、化学機械的研磨法(CMP)または機械研磨法(MP)により研磨して、素子分離絶縁膜32を形成する。
素子分離絶縁膜に挟まれた素子領域上には、ダミーゲート用の3〜10nm程度の酸化膜33を熱酸化により形成し、ダミーゲート34を200〜300nmの膜厚で酸化膜33上に形成する。ダミーゲートは、炭素が水素よりも多く含まれるポリマー、具体的には、すでに実施例Iで説明したポリマーを用いて、前述と同様にして形成することができる。
こうしたポリマーを含有する溶液を、酸化膜33が形成された半導体基板31上に少なくとも1つ以上のノズルを利用して滴下法、および半導体基板の回転等により塗布し、300〜350℃で加熱することによりポリマー膜を形成する。この加熱は、酸素を含んだ雰囲気中で30〜60分間行なうことが好ましい。
次いで、得られたポリマー膜上にフォトレジストパターンまたはEBレジストマスクを形成して、露光を施す。さらに、酸素プラズマを用いたRIE(反応性イオンエッチング)によりポリマー膜を加工した後、フォトレジストパターンを除去する。最後に、N2またはArまたは真空雰囲気中で10分以内600〜800℃、好ましくは600〜900℃の熱処理を行なって、ダミーゲートパターン34が形成される。この熱処理時の昇温速度は、50℃/min以下であることが好ましく、10℃/min以下であることがより好ましい。このような速度で昇温することによって、最上層が硬化する前にポリマーマスクから余分なガスを放出させることができる。このため、ブリスタ(ひぶくれ状の突起)を生じることなくポリマーマスク全体を硬化することができる。また、ブリスタを発生させないために、塗布状態におけるポリマーの分子量は、5000以上、さらには10000以上であることが望ましい。
なお、ポリマー膜を加工する前に、こうした600℃以上の熱処理を行なうこともできる。特に、ポリマー膜の体積収縮による寸法の減少を避けるために、ダミーゲートは、こうして形成することが好ましい。
あるいは、熱処理は、200〜400℃の基板温度で、電子ビームまたはフラッシュランプを用いて行なうこともできる。この熱処理は、ポリマー膜の加工前、または加工後のいずれに施してもよいが、加工後に施した場合にはポリマー膜の寸法が体積収縮により減少するために、加工前に行なう方が好ましい。
場合によっては、このポリマー膜上にSOGのような膜を介在させて、ポリマー膜を加工する際にエッチング選択比を大きくしてもよい。
このダミーゲートパターン34をマスクとして用いて、As、Sb,In、BおよびPなどのイオンを注入して、ソース・ドレインの延長部35をSi半導体基板31に形成する。延長部35は、プラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いて形成することもできる。さらに、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて800〜900℃で30秒以下の熱処理を施して、電気的な活性化を行う。
次いで、図4(b)に示すような構造を作製する。まず、Si窒化膜またはSi窒化酸化膜からなる側壁絶縁膜36を、ダミーゲート34の側壁に5〜30nmの厚みで形成する。この側壁絶縁膜36とダミーゲート34との間には、ダミーゲート除去時に側壁絶縁膜が横方向に後退しないように、10nm以下の酸化膜(図示せず)が介在していることが望まれる。
その後、イオン注入またはプラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いてソース・ドレインの深い部分37を、Si半導体基板31に形成する。電気的な活性化は、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(RapidThermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理を施すことにより行うことができる。
こうして形成されたソース・ドレインの深い部分37における活性化不純物濃度を高めるために、電子ビームを用いて1000℃以上で1秒間の熱処理を行なってもよい。あるいは、紫外線領域の波長を有するレーザー、水銀ランプまたはキセノンランプを用いて、同様の条件で熱処理を行うことにより、活性化不純物濃度を高めることもできる。
ソース・ドレイン拡散層形成後、第1の層間絶縁膜38および第2の層間絶縁膜39を順次形成する。第1の層間絶縁膜38および第2の層間絶縁膜39は、それぞれSi窒化膜およびSi酸化膜を、CVD法により堆積することによって形成することができる。
その後、第1および第2の層間絶縁膜38および39をCMPにより平坦し、図4(c)に示すようにダミーゲート34の表面を露出させる。
次いで、酸素プラズマまたは活性な酸素を用いて、図5(a)に示すようにダミーゲート34を除去する。さらに、下地のSi半導体基板31に結晶欠陥を形成しないように、薄い酸化膜33をエッチング除去して、開口部34’を形成する。
その後、図5(b)に示すように、開口部34’にチャネル不純物イオン40をイオン注入して、ドーピング層41を形成する。例えば、As、Sb、In、BおよびGeなどのイオンを、5〜50keV、1×1010〜1×1014cm-2の条件で注入することができる。この際、半導体基板を冷却しつつ低温でイオン注入を行なうと、原子空孔の集合化を抑制することができる。したがって、熱処理により完全に結晶欠陥を回復することが可能となる。具体的には、−60℃以下、さらには−100℃以下になるように半導体基板を冷却しながらイオン注入を行うことがより好ましい。
次いで、図5(c)に示すように、チャネル上の酸化膜などの絶縁膜を、希釈したフッ酸または希釈したフッ化アンモニウムまたはこれらの混合液により除去する。
その後、1nm以下の酸化膜33”を、酸素ラジカルまたはオゾンを用いて開口部の半導体表面に形成する。さらに、図6(a)に示すように、Si酸化膜よりも比誘電率の大きな絶縁膜42、金属導電性の膜43、および金属膜44を順次形成する。Si酸化膜よりも比誘電率の大きな絶縁膜42としては、Ta2O5、TiO2、HfO2、ZrO2、CeO2およびY2O3などを用いることができる。このような大きな比誘電率を有する絶縁膜42は、SiOxNy膜を2〜3nmの膜厚で半導体基板表面に堆積することによって形成することもできる。あるいは窒素ラジカルなどを用いて、500℃以下の温度で酸化膜の表面を窒化することによって、絶縁膜42を形成してもよい。
金属導電性の膜43は、ゲートの仕事関数を決定する金属窒化物などを用いて、10nm以下の膜厚で堆積することができる。
多結晶金属材料は、結晶面によって仕事関数が変化するという性質を有している。このため、30nm以下の微小な結晶粒の多結晶金属、またはアモルファスの導電性材料を用いることが好ましい。
仕事関数を決める材料としては、具体的には、Ta窒化物、Nb窒化物、Zr窒化物、Hf窒化物などの金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属−Si窒化物、金属−Si炭化物、金属炭素窒化物などが挙げられる。Ti窒化物は、Tiと窒素との組成比が1:1の場合には、仕事関数が4.6eV程度である。こうしたTi窒化物の仕事関数は、結晶面方位を制御して、仕事関数の低い面方位になるように制御することによって4.5eV以下に設定することが可能である。あるいは、TiNにCを添加してアモルファスにする場合には、その組成を制御することにより仕事関数を4.5eV以下に設定することもできる。
望ましくは、これらの材料とゲート絶縁膜との熱的な安定性のために、導電率を50%以上低下させない範囲内で酸素を添加するのが有効である。またこれらの電極材料は、Ta酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、Hf酸化物、Ce酸化物との界面の熱的な安定性も優れている。
続いてAlやWなどの比抵抗が低い金属膜44を堆積し、CMPまたはMPを用いて平坦化しながらエッチングを行なって、図6(b)に示すようにゲート電極44’を完成させる。
なお、ソース・ドレイン領域を低抵抗化する必要がある場合には、ダミーゲート34をマスクとして用いて、CoSi2、TiSi2などの金属シリサイドを、ソース・ドレイン領域に形成してもよい。拡散層37の深さが100nm以下の場合には、シリサイドで侵食される層をpn接合から5nm以上遠ざけることが望まれる。例えば、Si層、Si−Ge層またはSi−Ge−C層をソース・ドレインレイン領域上にエピタキシャル成長させるなどの手法によって、これを達成することができる。
(実施例II−3)
図7〜図9に、本実施例のトランジスタの製造方法を示す。前述の実施例(II−2)と異なる点は、ダミーゲートを形成した後に、半導体表面だけ酸化または酸化膜を成長させる点である。
まず、図7(a)に示す構造を作製する。こうした構造は、次のような手順で得ることができる。Si半導体基板31表面にドライエッチングで溝を形成した後、その内部に堆積または塗布によって絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、Si酸化膜を用いることができる。あるいは、Si熱膨張係数(約3ppm/K)に近いSiNOなどを用いてもよい。形成された絶縁膜の表面を、化学機械的研磨法(CMP)または機械研磨法(MP)により研磨して、素子分離絶縁膜32を形成する。
素子分離絶縁膜に挟まれた素子領域上には、ダミーゲート用の3〜10nm程度の酸化膜33を熱酸化により形成し、ダミーゲート34を200〜300nmの膜厚で酸化膜33上に形成する。ダミーゲートは、炭素が水素よりも多く含まれるポリマー具体的には、すでに実施例Iで説明したポリマーを用いて、前述の実施例(II−2)と同様にして形成することができる。
場合によっては、前記ポリマー膜上にSOGのような膜を介在させて、ポリマー膜を加工する際にエッチング選択比を大きくしてもよい。
その後、所定の条件でSi基板表面のみを選択的に酸化して、ダミーゲートの絶縁膜より大きな膜厚を有する酸化膜また酸窒化膜33’を形成する。具体的には、図10に示す斜線の範囲の酸化条件を用いることができる。典型的な酸化温度は750℃から900℃で、水蒸気と水素の比率(H2O/H2)は100ppmから50%の範囲で行う。
このダミーゲートパターン34をマスクとして用いて、As、Sb,In、BおよびPなどのイオンを注入して、ソース・ドレインの延長部35をSi半導体基板31に形成する。延長部35は、プラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いて形成することもできる。さらに、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて800〜900℃で30秒以下の熱処理を施して、電気的な活性化を行う。
次いで、図7(b)に示すような構造を作製する。まず、Si窒化膜またはSi窒化酸化膜からなる側壁絶縁膜36を、ダミーゲート34の側壁に5〜30nmの厚みで形成する。この側壁絶縁膜36と前述のダミーゲートとの間には、ダミーゲート除去時に側壁絶縁膜が横方向に後退しないように、10nm以下の酸化膜(図示せず)が介在していることが好ましい。
その後、イオン注入またはプラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用い、ソース・ドレインの深い部分37を、Si半導体基板31に形成する。電気的な活性化は、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(RapidThermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理の熱処理を施すことにより行なうことができる。
こうして形成されたソース・ドレインの深い部分37における活性化不純物濃度を高めるために、電子ビームを用いて1000℃以上で1秒以下の熱処理を行なってもよい。あるいは、紫外領域の波長を有するレーザー、水銀ランプまたはキセノンランプを用いて、同様の条件で熱処理を行なうことにより、活性化不純物の濃度を高めることもできる。
ソース・ドレイン拡散層形成後、第1の層間絶縁膜38および第2の層間絶縁膜39を順次形成する。第1の層間絶縁膜38および第2の層間絶縁膜39は、それぞれSi窒化膜およびSi酸化膜を、CVD法により堆積することによって形成することができる。
その後、第1および第2の層間絶縁膜38および39をCMPにより平坦し、図7(c)に示すようにダミーゲート34の表面を露出させる。
次いで、酸素プラズマまたは活性な酸素を用いて、図8(a)に示すようにダミーゲート34を除去する。最後に、下地のSi半導体基板31に結晶欠陥を形成しないように、薄い酸化膜33をエッチング除去して、開口部34’を形成する。
その後、図8(b)に示すように開口部34’にチャネル不純物イオン40をイオン注入して、ドーピング層41を形成する。例えば、As、Sb、In、BおよびGeなどのイオンを、5〜50keV、1×1010〜1×1014cm-2の条件で注入することができる。この際、半導体基板を冷却しつつ低温でイオン注入を行なうと、原子空孔の集合化を抑制することができる。したがって、熱処理により完全に結晶欠陥を回復することが可能となる。具体的には、−60℃以下、望ましくは−100℃以下になるように半導体基板を冷却しながらイオン注入を行うことが望ましい。また、前述と同様の理由から、半導体基板に対して垂直、または垂直から5°以内のほぼ垂直方向からイオン注入を行なうことが好ましい。さらに、上述したような手法によって、水素の混入を抑制することができる。
次いで、図8(c)に示すように、チャネル上の酸化膜などの絶縁膜を、希釈したフッ酸または希釈したフッ化アンモニウムまたはこれらの混合液により除去する。
その後、1nm以下の酸化膜33”を、酸素ラジカルまたはオゾンを用いて開口部の半導体表面に形成する。さらに、図9(a)に示すように、Si酸化膜よりも比誘電率の大きな絶縁膜42、金属導電性の膜43、および金属膜44を順次形成する。Si酸化膜よりも比誘電率の大きな絶縁膜42としては、Ta2O5、TiO2、HfO2、ZrO2、CeO2、およびY2O3などを用いることができる。このような大きな比誘電率を有する絶縁膜42は、SiOxNy膜を2〜3nmの膜厚で半導体基板表面に堆積することによって形成することもできる。あるいは、窒素ラジカルなどを用いて、500℃以下の温度で酸化膜の表面を窒化することによって、絶縁膜42を形成してもよい。
金属導電性の膜43は、ゲートの仕事関数を決定する金属窒化物などを用いて10nm以下の膜厚で堆積することができる。
多結晶金属材料は、結晶面によって仕事関数が変化するという性質を有している。このため、30nm以下の微小な結晶粒の多結晶金属、またはアモルファスの導電性材料をバリアメタル膜として用いることが好ましい。
仕事関数を決める材料としては、具体的には、Ta窒化物、Nb窒化物、Zr窒化物、Hf窒化物などの金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属−Si窒化物、金属−Si炭化物、金属炭素窒化物などが挙げられる。Ti窒化物は、Tiと窒素との組成比が1:1の場合には、仕事関数が4.6eV程度である。こうしたTi窒化物の仕事関数は、結晶面方位を制御して、仕事関数の低い面方位になるように制御することによって4.5eV以下に設定することが可能である。あるいは、TiNにCを添加してアモルファスにする場合には、その組成を制御することにより仕事関数を4.5eV以下に設定することもできる。
望ましくは、これらの材料とゲート絶縁膜との熱的な安定性のために、導電率を50%以上低下させない範囲内で酸素を添加するのが有効である。またこれらの電極材料は、Ta酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、Hf酸化物、Ce酸化物との界面の熱的な安定性も優れている。
続いてAlやWなどの比抵抗が低い金属膜44を堆積し、CMPまたはMPを用いて平坦化しながらエッチングを行なって、図9(b)に示すようにゲート電極44’を完成させる。
なお、ソース・ドレイン領域を低抵抗化する必要がある場合には、ダミーゲート34をマスクとして用いて、CoSi2、TiSi2などの金属シリサイドを、ソース・ドレイン領域に形成してもよい。拡散層37の深さが100nm以下の場合には、シリサイドで侵食される層をpn接合から5nm以上遠ざけることが望まれる。例えば、Si層、Si−Ge層またはSi−Ge−C層をソース・ドレインレイン領域上にエピタキシャル成長させるなどの手法によって、これを達成することができる。
(比較例II−1)
図11および図12に、比較例として、従来法によるダミーゲートを用いたトランジスタの製造方法を示す。
まず、図11(a)に示す構造を作製する。こうした構造は、次のような手順で得ることができる。Si半導体基板51表面にドライエッチングで溝を形成した後、その内部に堆積または塗布によって絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、Si酸化膜を用いることができる。あるいは、Siの熱膨張係数(約3ppm/K)に近いSiNOなどを用いてもよい。形成された絶縁膜の表面を、化学機械的研磨法(CMP)または機械研磨法(MP)により研磨して、素子分離絶縁膜52を形成する。
素子分離絶縁膜に挟まれた素子領域上には、ダミーゲート用の3〜10nm程度の酸化膜53を熱酸化により形成し、その上にはダミーゲート用の膜を形成する。ダミーゲート用の膜は、例えば、Si窒化膜/アモルファスSiまたはSi窒化膜/poly−Siを堆積して形成することができる。こうして形成されたダミーゲート用の膜を、異方性エッチングにより加工して、ゲートと同じパターン54を形成する。図11(a)においては、54aがアモルファスSiまたはpoly−Siであり、54bがSi酸化膜である。
このダミーゲートは、後で形成する層間絶縁膜の平坦化研磨プロセスを考慮して積層されている。すなわち、層間絶縁膜より研磨速度の遅い膜を表面層に形成し、下層には薄い絶縁膜53に対してエッチングの選択比が大きいSi系の膜を設置している。
ダミーゲートパターン54を形成した後、熱酸化により多結晶Siの側壁部が酸化され、ソース・ドレイン部の酸化膜53’は厚膜化する。このダミーゲートパターン54をマスクとして用いて、イオン注入、プラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いて、ソース・ドレインの延長部55を形成する。さらに、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理を施して、電気的な活性化を行う。
次いで、図11(b)に示すような構造を作製する。まず、Si窒化膜またはSi窒化酸化膜からなる側壁絶縁膜56を、ダミーゲート54の側壁に5〜30nmの厚みで形成する。この側壁絶縁膜56とダミーゲートとの間には、ダミーゲート除去時に側壁絶縁膜が横方向に後退しないように、10nm以下の酸化膜(図示せず)が介在していることが好ましい。
その後、イオン注入またはプラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いてソース・ドレインの深い部分57を、Si半導体基板51に形成する。電気的な活性化は、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(RapidThermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理を施すことにより行うことができる。
こうして形成されたソース・ドレインの深い部分57における活性化不純物濃度を高めるために、電子ビームを用いて1000℃以上で1秒間の熱処理を行なってもよい。あるいは、紫外線領域の波長を有するレーザー、水銀ランプまたはキセノンランプを用いて、同様の条件で熱処理を行うことにより、活性化不純物濃度を高めることもできる。
ソース・ドレイン拡散層形成後に、Si窒化膜のような第1の層間絶縁膜58と、Si酸化膜のような第2の層間絶縁膜59を、CVD法により形成する。
その後、第1および第2の層間絶縁膜58および59をCMPにより平坦して図11(c)に示すようにダミーゲート54の表面を露出させる。
次いで、図12(a)に示すように、Si窒化膜54bを加熱したリン酸により除去する。続いて、図12(b)に示すように、CF4/O2混合ガスを用いた化学的ドライエッチングによってSi膜54aを除去し、さらに、ダミーゲート下の薄い酸化膜53を、希釈したフッ酸または希釈したフッ化アンモンまたはこれらの混合液を用いて除去する。
図12(c)には、ゲート絶縁膜53”を熱酸化により新たに形成した状態を示す。従来の製造方法では、ダミーゲートの成膜には多結晶Si膜のCVDとSi窒化膜のCVDとが必要なので、合計10h程度のRPTになっている。またダミーゲートを除去する際には、Si窒化膜の除去に約1h、多結晶Si膜の除去には、約1h要する。
比較例の結果から明らかなように、本発明による炭素含有量が多いダミーゲートを用いることによってRPTが約10H短縮されるため、製造効率を大幅に向上させることができる。また、ゲート寸法の加工精度は、poly−Siを加工する場合に比較して10%以上向上する。
(実施例III)
以下、図面を参照しながら、本実施例および従来例を説明する。
(従来例III−1)
図13〜図15に、従来法によるダミーゲートを用いたトランジスタの製造方法を示す。
まず、図13(a)に示す構造を作製する。こうした構造は、次のような手順で得ることができる。Si半導体基板71表面にドライエッチングで溝を形成した後、その内部に堆積または塗布によって絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、Si酸化膜を用いることができる。あるいは、Siの熱膨張係数(約3ppm/K)に近いSiNOなどを用いてもよい。形成された絶縁膜の表面を、化学機械的研磨法(CMP)または機械研磨法(MP)により研磨して、素子分離絶縁膜72を形成する。
素子分離絶縁膜に挟まれた素子領域上には、ダミーゲート用の3〜10nm程度の酸化膜73を熱酸化により形成し、その上にはダミーゲート用の膜を形成する。ダミーゲート用の膜は、例えば、Si窒化膜/アモルファスSiまたはSi窒化膜/poly−Siを堆積して形成することができる。こうして形成されたダミーゲート用の膜を、異方性エッチングにより加工して、ゲートと同じパターン90を形成する。図13(a)においては、90aがアモルファスSiまたはpoly−Siであり、90bがSi酸化膜である。
このダミーゲートは、後で形成する層間絶縁膜の平坦化研磨プロセスを考慮して積層されている。すなわち、層間絶縁膜より研磨速度の遅い膜を表面層に形成し、下層には薄い絶縁膜73に対してエッチングの選択比が大きいSi系の膜を設置している。
ダミーゲートパターン90を形成した後、熱酸化により多結晶Si90aの側壁部を酸化し、ソース・ドレイン部の酸化膜73を厚膜化してもよい。このダミーゲートパターン90をマスクとして用いて、イオン注入、プラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いて、ソース・ドレインの延長部75を形成する。さらに、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理を施して、電気的な活性化を行う。
次いで、図13(b)に示すような構造を作製する。まず、Si窒化膜またはSi窒化酸化膜からなる側壁絶縁膜76を、ダミーゲート90の側壁に5〜30nmの厚みで形成する。その後、イオン注入またはプラズマドーピングまたは気相拡散の方法を用いて、ソース・ドレインの深い部分77を、Si半導体基板71に形成する。電気的な活性化は、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理を施すことにより行うことができる。
続いて、フッ酸処理などでソース・ドレイン部の酸化膜73を除去する。次いで、抵抗率が20Ωcm程度あるいはそれ以下の抵抗率を有しシリサイドを形成可能な金属を全面に堆積して金属膜を形成する。具体的には、Co膜などを、スパッタ法により10〜20nm程度の膜厚で堆積する。このとき、Co等のようなシリコン酸化膜を還元しない金属を用いる場合は、Co膜の上にさらにTi等シリコン酸化膜を還元できる金属を堆積することが望ましい。後の熱工程でTiがCo膜中を拡散することによって、CoとSi基板と界面の除去しきれなかったシリコン酸化膜を還元することができるためである。
また、Co表面、あるいはその上に堆積したTi膜などが後の窒素雰囲気中の熱処理で窒化されるのを防止するため、窒素等に対するバリア膜を全面に堆積してもよい。バリア膜としては、例えばTiN膜を用いることができる。
その後、例えば窒素雰囲気中で熱処理を行なうことにより、Siが露出しているソース・ドレイン上に堆積されたCoのみがシリサイド反応を起こして、このソース・ドレイン上のみにモノシリサイド層が選択的に形成される。
この熱処理の温度は、堆積された金属に応じて決定することができるが、例えばCoの場合には、500℃程度の熱処理でCoモノシリサイドが形成される。一方、素子分離絶縁膜72、側壁絶縁膜76、およびダミーゲート90上部のSi窒化膜90bの上に堆積されたCoはシリサイド反応を起こさずに未反応のまま残る。このような未反応のCoは、硫酸と過酸化水素水の混合液などを用いて選択的に除去することができる。これにより、図13(c)に示すようにソース・ドレイン上のみに選択的にCoモノシリサイド78aが形成される。その後、800℃程度の熱処理を加えることで、Coモノシリサイド78aは、Siと反応してCoダイシリサイド78bとなる。
続いて、Si酸化膜などの層間絶縁膜79をCVD法等により形成する。この際、Si窒化膜のようなCoの拡散を抑制する膜を20nm程度に薄く堆積してから、層間絶縁膜を形成してもよい。
さらに、CMP等により層間絶縁膜79の表面を平坦化して、図14(a)に示すように、ダミーゲート90の表面を露出させた後、Si窒化膜90bを加熱したリン酸により除去して、図14(b)に示すようにSi膜90aを露出させる。
続いて、CF4/O2混合ガスを用いた化学的ドライエッチングによってSi膜90aを除去する。その後、図14(c)に示すように、ダミーゲート90下の薄い酸化膜73を、希釈したフッ酸または希釈したフッ化アンモンまたはこれらの混合液を用いて除去して、開口部90’を形成する。
その後、1nm以下の酸化膜81を開口部90’の表面に形成する。さらに、Si酸化膜よりも比誘電率が大きな絶縁膜82、および金属導電性の膜83を堆積する。絶縁膜82としては、Ta2O5、TiO2、ZrO2、HfO2、およびCeO2などを用いることができる。また、金属導電性の膜83は、ゲートの仕事関数を決定するものであり、金属窒化物などを用いて10nm以下の膜厚で形成することができる。金属導電性の膜83の上には、AlやWなどの比抵抗の低い金属膜を堆積する。この金属膜を、CMPまたはMPを用いて平坦化しながらエッチングを行なって、図15に示すように、ゲート電極84を完成させる。
上述の製造方法では、ダミーゲート90を成膜するために、多結晶Si膜90aのCVDとSi窒化膜90bのCVDとを行なっているので、合計10h程度のRPTになっている。またダミーゲート90を除去する際には、Si窒化膜90bの除去に約1h、多結晶Si膜90aの除去に約1hが必要である。
なお、上述した従来例では、ソース・ドレインの延長部75を形成する際には、酸化膜73を介してイオン注入を行っているが、30nm以下の延長部の接合深さを実現するには、酸化膜73を介さずにイオン注入することが望ましい。しかしながら、従来例のSi窒化膜/poly−Siのダミーゲート構造では次のような問題が生じるために不可能である。それは、ダミーゲート形成後に水で希釈したフッ酸などによりソース・ドレイン上の酸化膜73を除去した場合には、図16に示されるように、ダミーゲートであるpoly−Si90aの下層においても、酸化膜73もゲートエッジの部分が除去されてしまう。このゲートエッジの部分は、エッチングストッパーとなる下層の酸化膜73が除去されたことになる。したがって、ダミーゲートとしてのpoly−Si90aをエッチングにより除去する際には、ゲートエッジの部分において、図17に示すようにSi基板71がエッチングされた領域91が形成される。これによって、トランジスタ形成が不可能になる。
(実施例III−1)
図18〜図20に、本実施例のトランジスタの製造方法を示す。
まず、図18(a)に示す構造を作製する。こうした構造は、次のような手順で得ることができる。Si半導体基板71表面にドライエッチングで溝を形成した後、その内部に堆積または塗布によって絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、Si酸化膜を用いることができる。あるいは、Si熱膨張係数(約3ppm/K)に近いSiNOなどを用いてもよい。形成された絶縁膜の表面を、化学機械的研磨法(CMP)または機械研磨法(MP)により研磨して、素子分離絶縁膜72を形成する。
素子分離絶縁膜に挟まれた素子領域上には、ダミーゲート用の3〜10nm程度の酸化膜73を熱酸化により形成し、ダミーゲート74を200〜300nmの膜厚で酸化膜73上に形成する。ダミーゲートは74、炭素が水素よりも多く含まれるポリマーを用いて、すでに実施例IIにおいて説明したような手法で形成することができる。場合によっては、ポリマー膜上にSOGのような膜を介在させて、ポリマー膜を加工する際にエッチング選択比を大きくしてもよい。
このダミーゲートパターン74をマスクとして用いて、As、Sb,In、BまたはPなどのイオン注入を行なうことにより、図18(b)に示すようにソース・ドレインの延長部75が形成される。
なお、従来の方法では、イオン注入後には、600℃より高温の熱工程、例えば100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理で行なうことによりソース・ドレインの延長部が形成される。これに対して、本実施例の方法では、As、Sb,In、B、Pなどのイオン注入を行った後は600℃を越える高温での熱処理を行わないことが好ましい。これによって、工程を簡略化するとともに、より浅い接合を形成することが可能となった。本実施例の方法において熱処理を施す場合には、イオン注入によりアモルファス化したSi基板の結晶性を回復させるために、600℃以下の熱工程を行うにとどめておくことが望まれる。
また、30nm以下の延長部接合深さを実現するには、酸化膜73を介さずにイオン注入することが望ましい。これを達成するためには、図18(c)に示すように、ソース・ドレイン領域上の酸化膜73を、水で希釈したフッ酸などで除去した後にイオン注入を行なって、ソース・ドレインの延長部75を形成する。ソース・ドレイン領域上の酸化膜73を除去すると、図18(c)に示されるようにダミーゲート74の下層部分においても、酸化膜73ゲートエッジの部分が除去される。
なお、従来の方法においては、上述したようにトランジスタの形成が不可能になるので、ソース・ドレイン領域上の酸化膜73を除去することはできなかったが、本発明の方法においては、何等問題は生じない。特定の材料によりダミーゲートを形成していることに起因するものであり、これに関しては後に詳細に説明する。
次いで、図19(a)に示すような構造を作製する。まず、Si窒化膜またはSi窒化酸化膜からなる側壁絶縁膜76を、ダミーゲート74の側壁に5〜30nmの厚みで形成する。しかる後に、As、Sb,In、B、またはPなどのイオン注入を行って、ソース・ドレインの深い部分77を形成する。
なお、従来の方法では、イオン注入後には、600℃より高温の熱工程、例えば100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理で行うことにより、ソース・ドレインの深い部分が形成されていた。これに対して本実施例の方法では、As、Sb,In、B、またはPなどのイオン注入を行なった後には、600℃より高温の熱工程は行なわないことが望ましい。これによって、工程を簡略化することが可能になる。本実施例の方法において熱処理を施す場合には、イオン注入によりアモルファス化したSi基板の結晶性を回復させるために、600℃以下の熱処理を行うにとどめておくことが望まれる。
ソース・ドレイン拡散領域を形成後には、フッ酸処理などを施して、ソース・ドレイン部の酸化膜73または自然酸化膜を除去する。次いで、抵抗率が20Ωcm程度あるいはそれ以下の抵抗率を有しシリサイドを形成可能な金属を全面に堆積して金属膜を形成する。具体的には、Co膜などを、スパッタ法により10〜20nm程度の膜厚で堆積する。このとき、Co等のようなシリコン酸化膜を還元しない金属を用いる場合は、Co膜の上にさらにTi等シリコン酸化膜を還元できる金属を堆積することが望ましい。後の熱工程でTiがCo膜中を拡散することによって、CoとSi基板と界面の除去しきれなかったシリコン酸化膜を還元することができるためである。
また、Co表面、あるいはその上に堆積したTi膜などが後の窒素雰囲気中の熱処理で窒化されるのを防止するため、窒素等に対するバリア膜を全面に堆積してもよい。バリア膜としては、例えばTiN膜を用いることができる。
その後、例えば、窒素雰囲気中で熱処理を行なうことにより、Siが露出しているソース・ドレイン上に堆積されたCoのみがシリサイド反応を起こして、このソース・ドレイン上のみにモノシリサイド層が選択的に形成される。
この熱処理の温度は堆積された金属により異なるが、例えばCoの場合には、500℃程度の熱処理でCoモノシリサイドが形成される。一方、素子分離絶縁膜72、側壁絶縁膜76、およびダミーゲート74上に堆積されたCoはシリサイド反応を起こさずに未反応のまま残る。このような未反応のCoは、硫酸と過酸化水素水との混合液などを用いて選択的に除去することができる。これにより、図19(b)に示すように、ソース・ドレイン上のみに選択的にCoモノシリサイド78aが形成される。
続いて、800℃程度の熱工程を加えることで、Coモノシリサイド78aは基板のSiと反応して、比抵抗が20μΩ/cm程度の低抵抗なCoダイシリサイドが形成される。
また、延長部領域やソース・ドレインの深い部分の活性化を行なわなかった場合、具体的には、600℃以下の熱処理のみ行った場合には、本工程においてそれらの活性化も同時に行うことができる。なお、本実施例の方法においては、Coモノシリサイド78aをCoダイシリサイドにする800℃程度の熱工程は省略してもよい。それは、後のチャネル形成の熱工程において行うこともできるためである。
続いて、Si酸化膜などの層間絶縁膜79をCVD法等により形成する。この際、Si窒化膜のようなCoの拡散を抑制する膜を20nm程度に薄く堆積してから、層間絶縁膜を形成してもよい。
その後、CMP等により層間絶縁膜79の表面を平坦化して、図19(c)に示すように、ダミーゲート74の表面を露出させる。
次いで、酸素プラズマまたは活性な酸素を用いて、図20(a)に示すようにダミーゲート74を除去する。さらに、下地のSi半導体基板71に結晶欠陥を形成しないように、薄い酸化膜73をエッチング除去して、開口部74’を形成する。
この際、従来技術においてはソース・ドレイン上の酸化膜73を除去して延長部のイオン注入を行なった場合には、図16に示したようにダミーゲートであるポリシリコン90aの下層の酸化膜73も一部エッチングされてしまう。このため、このポリシリコン90aを除去するエッチング工程において、エッチングストッパーとなる酸化膜73がない部分は、図17に示したようにシリコン基板71までエッチングされてしまうという問題があった。
しかしながら、本発明においては、ダミーゲートは炭素が水素よりも多く含まれるポリマー膜74により形成されているので、そのエッチングには酸素プラズマまたは活性な酸素が用いられる。この酸素プラズマまたは活性な酸素は、シリコン基板71をエッチングすることがないため、ダミーゲート除去の際にダミーゲート下層の酸化膜73が一部エッチング除去されていても、従来技術のようにシリコン基板71までエッチングされてしまうことはない。したがって、本発明により、ソース・ドレイン上の酸化膜73を除去して延長部のイオン注入を行なうことが可能となり、より浅い接合を実現することが可能となった。
その後、開口部74’にチャネル不純物イオン40をイオン注入して、図20(b)に示すようにドーピング層80を形成する。例えば、As、Sb、In、BおよびGeなどのイオンを、5〜50keV、1×1010〜1×1014cm-2の条件で注入することができる。この際、半導体基板を冷却しつつ低温でイオン注入を行なうと、原子空孔の集合化を抑制することができる。したがって、熱処理により完全に結晶欠陥を回復することが可能となる。また、前述と同様の理由から、半導体基板に対して垂直、または垂直から5°以内のほぼ垂直方向からイオン注入を行なうことが好ましい。さらに、上述したような手法によって、水素の混入を抑制することができる。
活性化のための熱処理は、100℃/sec以上の昇温速度で昇温可能なRTA(Rapid Thermal Annealing)を用いて、800〜900℃で30秒以下の熱処理が好ましい。これにより、急峻な深さ方向のプロファイルであるレトログレードチャネル構造の形成がより容易になる。
さらには、このチャネル層80の活性化の工程において、延長部拡散層75とソース・ドレインの深い部分77の不純物の活性化、そして、Coモノシリサイド78aのCoダイシリサイド化も同時に行なってもよい。具体的には、延長部75やソース・ドレインの深い部分77を形成するためのイオン注入を行なった後、すぐに不純物の活性化のための熱工程を行なわなかった場合、あるいはSiの結晶性回復のための600℃以下の熱工程のみを行なっていた場合には、本工程であるチャネル層80の活性化の熱工程において、延長部75とソース・ドレインの深い部分77も同時に活性化される。さらには、図19(b)に示したソース・ドレイン上のみで選択的にCoモノシリサイド78aを形成した後、このCoモノシリサイド78aをCoダイシリサイド78bに変化させる熱工程を、すぐに行なわなかった場合も、チャネル層80の活性化の熱工程において、同時にCoモノシリサイドのCoダイシリサイド化が行われる。
このように、チャネル層80の活性化の熱工程において、延長部75とソース・ドレインの深い部分77の不純物の活性化、そしてCoモノシリサイド78aのCoダイシリサイド化を同時に行なうことにより、次の2つのメリットが得られる。
まず一つは、延長部75を形成するためのイオン注入の後、不純物活性化のための600℃という高い温度の熱工程が一回になるため、イオン注入でシリコン基板に導入された不純物の熱拡散を極力抑えることが可能になる。その結果、より浅い接合を実現することができる。これに対し、従来技術では、延長部75のイオン注入後に加わる600℃より高温の熱工程は、延長部のイオン注入直後に行われる活性化工程、ソース・ドレインの深い部分77の活性化工程、Coモノシリサイド78aをCoダイシリサイド78bにする熱工程、およびチャネル層80の活性化工程の計4回にもなる。したがって、浅い接合の延長部75の形成が困難であることは明白である。
二つ目のメリットは、ダミーゲートの材料に関することである。すなわち、本発明では、ダミーゲートの材料として炭素が水素よりも多く含まれるポリマー膜74を用いているが、この材料の中には製法などの違いにより、600℃より高い温度で形状変化等を引き起こす材料も存在し得る。このような600℃より高い温度の耐熱性の低い材料を用いても、本発明の方法ではトランジスタを形成することができる。すなわち、チャネル層80を活性化する熱工程の際に、延長部75およびソース・ドレインの深い部分77の不純物の活性化、さらにはCoモノシリサイド78aのCoダイシリサイド78b化を同時に行なうことが可能である。これによって、ダミーゲートであるポリマー膜74を成膜して、チャネル層形成前にそのポリマー膜74を除去するまでの熱工程は、全て600℃以下で行なうことができる。したがって、600℃より高い温度の耐熱性のない材料を用いても、全く問題はない。
次いで、図20(b)に示すように、チャネル上の酸化膜などの絶縁膜を、希釈したフッ酸または希釈したフッ化アンモニウムまたはこれらの混合液により除去する。
その後、1nm以下の酸化膜81を、酸素ラジカルまたはオゾンを用いて開口部の半導体表面に形成する。さらに、Si酸化膜よりも比誘電率の大きな絶縁膜82、および金属導電性の膜83を堆積する。絶縁膜82としては、Ta2O5、TiO2、HfO2、ZrO2、CeO2およびY2O3などを用いることができる。このような大きな比誘電率を有する絶縁膜82は、SiOxNy膜を2〜3nmの膜厚で半導体基板表面に堆積することにより形成することもできる。あるいは、窒素ラジカルなどを用いて、500℃以下の温度で酸化膜の表面を窒化することによって、絶縁膜82を形成してもよい。
金属導電性の膜83は、ゲートの仕事関数を決定する金属窒化物などを用い、10nm以下の膜厚で堆積することができる。
多結晶金属材料は、結晶面によって仕事関数が変化するという性質を有している。このため、30nm以下の微小な結晶粒の多結晶金属、またはアモルファスの導電性材料をバリアメタル膜として用いることが好ましい。
仕事関数を決める材料としては、具体的には、Ta窒化物、Nb窒化物、Zr窒化物、Hf窒化物などの金属窒化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属−Si窒化物、金属−Si炭化物、金属炭素窒化物などが挙げられる。Ti窒化物は、Tiと窒素との組成比が1:1の場合には、仕事関数が4.6eV程度である。こうしたTi窒化物の仕事関数は、結晶面方位を制御して、仕事関数の低い面方位になるように制御することによって4.5eV以下に設定することが可能である。あるいは、TiNにCを添加してアモルファスにする場合には、その組成を制御することにより仕事関数を4.5eV以下に設定することもできる。
続いてAlやWなどの比抵抗が低い金属膜を堆積し、CMPまたはMPを用いて平坦化しながらエッチングを行なって、図20(c)に示すようにゲート電極84を完成させる。
本実施例のように炭素含有量が多いポリマーにより構成されたダミーゲートを用いことによって、RPTが約10h短縮される。また、poly−Siを加工する場合に比較して、ゲート寸法の加工精度が10%以上向上する。さらに、シリコン基板上のシリコン酸化膜を除去した後に、ソース・ドレイン拡散領域を形成するためのイオン注入を行なうことができるので、浅い接合が実現することが可能となる。しかも、チャネル領域を形成するための熱工程、ソース・ドレイン拡散層領域を形成するための熱工程、およびシリサイドをダイシリサイド化する熱工程の3つの熱工程を1工程にすることが可能となるので、RPTを4h程度短縮することができる。
本発明は、LOGICとDRAMとを混載させたLSIを製造するために特に有効に用いられ、その工業的価値は絶大である。