MOSFETにおいて、微細かつ高速な素子の実現のために、浅いソース・ドレイン拡散層を形成する要求と、その拡散層上に形成するシリサイド膜による拡散層接合リーク電流の発生の問題を同時に解決できる技術が要求される。この要求を満たす有効な技術として、ソース・ドレイン拡散層上にシリコンをエピタキシャル成長させ、ソース・ドレイン拡散層の表面を元々のシリコン基板の表面よりも迫り上げるエレベーテッド・ソース・ドレイン技術がある。
このエレベーテッド・ソース・ドレイン技術により形成されたエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層、及びシリサイド膜を有するMOSFETの製造工程を以下に示す。
まず、図26(a)に示すように、STI(Shallow Trench Isolation)技術等を用いて、シリコン基板10内にシリコン酸化膜からなる素子分離領域11が形成される。この素子分離領域11が形成されていないシリコン基板10上に、酸化技術を用いて厚さが例えば3nmのゲート酸化膜12が形成される。
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術を用いて、ゲート酸化膜12上に、将来除去されるダミーのゲートとして、厚さが例えば150nmのポリシリコン13が形成され、このポリシリコン13上に厚さが例えば50nmのシリコン窒化膜14が形成される。その後、リソグラフィ技術を用いてシリコン窒化膜14上にパターニングされたレジスト(図示せず)が形成され、RIE(反応性イオンエッチング)技術を用いてポリシリコン13及びシリコン窒化膜14が選択的に除去され、積層構造からなるダミーゲートが形成される。ここで、ポリシリコン13には、リン(P)、ヒ素(As)等のN型不純物、又はボロン(B)等のP型不純物が注入されてもよい。
次に、イオン注入により、シリコン基板10の表面にエクステンション拡散層領域15が形成される。
次に、CVD技術により全面にシリコン酸化膜が形成される。その後、図26(b)に示すように、RIE技術によりシリコン酸化膜がエッチングされ、シリコン基板10の表面が露出されるとともに、ポリシリコン13の側面にシリコン酸化膜の側壁16が形成される。
図26(c)に示すように、シリコン基板10が露出された領域のみ選択的にシリコンをエピタキシャル成長させ、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層17が形成される。この際、ポリシリコン13の側面はシリコン酸化膜16で形成されているため、結晶成長はポリシリコンの側面においてファセットを生じて成長する。
図27(a)に示すように、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層17中の不純物を固相拡散させソース・ドレイン拡散層18が形成される。
図27(b)に示すように、全面にコバルト、あるいはチタン等の金属膜が形成された後、サリサイド・プロセス技術を用いて、ダミーゲートをマスクにエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層17の表面にコバルト、あるいはチタン等のシリサイド膜19が形成される。その後、ウエットエッチング等により、未反応の金属膜が除去される。
次に、CVD法により、全面に例えばシリコン酸化膜等の層間絶縁膜20が形成される。図27(c)に示すように、CMP技術により層間絶縁膜20の平坦化が行われ、ダミーゲート上部のシリコン窒化膜14及びシリコン酸化膜の側壁16の表面が露出される。
図28(a)に示すように、例えばリン酸を用いて、ダミーゲート上部のシリコン窒化膜14が層間絶縁膜20に対し選択的に除去される。この際、シリコン酸化膜の側壁16もポリシリコン13表面の高さ程度までエッチングされる。その後、例えばCDE(Chemical Dry Etching)技術を用いて、ポリシリコン13が層間絶縁膜20、シリコン酸化膜の側壁16に対し選択的に除去される。次に、フッ酸等のウエット処理によりダミーのシリコン酸化膜12が除去され、ゲート電極形成部が全て開口される。
図28(b)に示すように、シリコン基板10の酸化、あるいはCVD法等による高誘電体絶縁膜を堆積してゲート絶縁膜21が形成される。その後、全面に導電体であるバリア膜(反応防止膜)として例えばチタン窒化膜22が形成され、このチタン窒化膜22上に金属膜としてタングステン23が形成される。
図28(c)に示すように、CMP技術を用いて、チタン窒化膜22及びタングステン23の平坦化が行われ、積層構造のゲート電極24が形成される。
しかしながら、上記従来技術による半導体装置の製造方法は以下に示す問題を有している。
第1の問題として、従来の方法においては、シリコン酸化膜をエッチングし、シリコン基板10の表面を露出するとともにシリコン酸化膜の側壁16を形成する際、RIE技術が用いられている。
そのため、図29に示すように、露出したシリコン基板10表面にはエッチングガスの成分としてのカーボン(C)、水素(H)、酸素(O)、フッ素(F)等のいずれかがシリコン基板10に侵入し汚染層25が5乃至30nm程度の深さまで形成される。
また、全面に形成されたシリコン酸化膜をシリコン基板10に対して選択的にRIEを行っている。しかしながら、選択比は無限大ではないため、シリコン基板10の露出面はエッチングされて後退する。
更に、素子分離領域11はシリコン酸化膜で形成されている。このため、RIEにより素子分離領域11もエッチングされて後退し、その結果素子領域のシリコン基板10の側面が露出するという問題も発生する。
従って、図30に示すように、RIEにより生じた汚染層25により、シリコンのエピタキシャル成長が阻害され、エピタキシャル成長が局所的に進まずに低いファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層26が形成される。また、汚染層25により、エピタキシャル層の中に結晶欠陥が形成されるため、ファセット角がばらついたり、堆積膜厚がばらついてしまうといった問題も発生する。
また、上述した汚染層25による不純物の拡散抑制等の問題に加え、シリコン基板10の表面がRIEによりエッチングされている。また、そのエッチング量はウエハ面内あるいはゲート・パターン間でばらつきを生じる。このため、ソース・ドレイン拡散層18を形成する際、ソース・ドレイン拡散層18の深さにばらつきが生じる。このソース・ドレイン拡散層18の深さのばらつきは、ゲート長が細くなるにつれて、MOSFETのしきい値のばらつきに及ぼす影響が増大する。従って、MOSFETの微細化とともに安定な回路の動作が不可能となり、歩留まりが大幅に低下するという問題が生じる。
次に、第2の問題として、従来の方法においては、図26(a)に示すように、イオン注入によってエクステンション拡散層15を形成した後、エピタキシャル成長によりエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層17(図26(c))を形成している。
このため、同一のシリコン基板上にN型とP型のトランジスタを形成する場合、ソース・ドレイン拡散層内の不純物が異なるため、N型とP型のそれぞれの拡散層上のエピタキシャル成長を同じ膜厚に制御することが困難である。また、エピタキシャル成長による熱処理によってエクステンション拡散層15の領域が広がるという問題も生じる。
更に、第3の問題としては、従来の方法においては、図28(b)に示すように、ゲート絶縁膜21を形成する際、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層17表面にシリサイド膜19が形成されている。
このため、シリサイド膜19中のメタルがゲート絶縁膜21へ混入することによりゲート絶縁膜21の信頼性劣化が生じる。また、この問題を回避することが極めて困難となる。
更に、この種のダマシン・ゲート形成技術では、ダミーゲート除去時にチャネル領域のみにイオン注入により不純物を導入することが可能である。しかし、従来の製造方法によると、イオン注入後の活性化の熱工程において、シリサイド膜19のアグロメレーションによりソース・ドレイン拡散層の抵抗が急激に上昇するという問題が発生し、上記問題と併せて更に製造が困難となる。
尚、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のようなものがある。
特開平9−172173号公報
本発明の実施の形態を以下に図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
[第1の実施例]
従来技術の第1の問題にあげたように、シリコンの選択エピタキシャル成長を行う下地のシリコン基板表面は、RIEにより結晶損傷やガス不純物汚染を受けるなど理想的な表面になっていないことが判明している。
これまで、ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層構造を形成するためには、シリコンがエピタキシャル成長する際、ファセットが生じるようにゲート側壁の絶縁膜をシリコン酸化膜で形成する必要があった。そのため、シリコン酸化膜をRIEによりエッチングして側壁を形成する必要があった。
そこで、本発明の第1の実施例によれば、RIE技術を用いることなくシリコン酸化膜の側壁を形成することが可能となる。
以下に、第1の問題を解決する方法として、2つの実施例を示す。
[第1の実施例(1)]
図1(a)に示すように、STI技術等を用いて、シリコン基板100内に酸化膜からなる素子分離領域101が形成される。この素子分離領域101の形成法は、例えばシリコン基板100上にエッチングマスク材として、バッファ酸化膜(図示せず)を介してシリコン窒化膜(図示せず)を積層形成させる。次に、転写用のレジスト(図示せず)がパターンニングされ、RIEによりシリコン窒化膜に素子領域のパターンが形成される。このパターニングされたシリコン窒化膜をマスクとして、素子分離領域101に対応するシリコン基板101がエッチングされる。この後、レジストが除去される。次に、素子分離領域101を含む基板100の全面にシリコン酸化膜などの絶縁膜が堆積され、CMP(Chemical Mechanical Polish:化学的機械研磨)等により、ストッパーとしての前記シリコン窒化膜上面まで平坦化される。その後、シリコン窒化膜とバッファ酸化膜が除去され、素子領域と素子分離領域101とが形成される。
次に、CVD法等を用いて、シリコン基板100上にゲート絶縁膜としてシリコン窒化膜102が形成される。ここで、シリコン窒化膜102の膜厚は10nm以下で形成され、3乃至6nm程度に薄く形成されることが望ましい。また、CVDでは例えばNH3/SiH2Cl2系、又はNH3/SiCl4系、若しくはNH3/Si2Cl6系のガスが用いられる。この際、シリコン窒化膜102の形成時の温度は、使用するガス系により各々780℃、700℃、450乃至700℃である。ここで、窒化層が素子分離領域101とシリコン基板100の界面に形成されることを防ぐには、下地の素子分離領域101とシリコン基板100の界面へのアンモニアの侵入を抑制する必要がある。従って、シリコン窒化膜102の形成時の温度は低温化することが望ましい。また、シリコン窒化膜102の下地としては、3nm以下であれば、自然酸化膜や薬品で形成したシリコン酸化膜であってもよい。
次に、CVD法等により、シリコン窒化膜102上にリン又はヒ素若しくはボロン等のN型やP型となる不純物をドーピングした厚さが例えば100乃至150nmのポリシリコン又はアモルファスシリコン103が形成される。その後、CVD法等により、ポリシリコン103上に厚さが例えば50nmのシリコン酸化膜104が形成される。
次に、リソグラフィ技術により、シリコン酸化膜104上にパターニングされたレジスト(図示せず)が形成される。その後、このレジストをマスクとして、RIE技術によりポリシリコン103及びシリコン酸化膜104がエッチングされる。この際、RIEは、シリコン窒化膜102がシリコン基板100上の全面に残るような選択比で行われる。これより、シリコン窒化膜102、ポリシリコン103、シリコン酸化膜104の積層構造からなるゲート電極が形成される。
この後、図1(b)に示すように、酸化が行われ、ポリシリコン103の側面のみにシリコン酸化膜の側壁105が形成される。この際、シリコン基板100の表面はシリコン窒化膜102により覆われているため、シリコン酸化膜は形成されない。
図2(a)に示すように、加熱したリン酸等の薬液を用いてエッチングを行うことにより、シリコン基板100上でゲート電極の下部以外のシリコン窒化膜102が除去される。この際、下地のシリコン基板100及び素子分離領域101を形成する酸化膜がエッチングされないように、リン酸処理の加熱温度は室温から180℃の範囲であり、160℃程度で使用するのが望ましい。このような温度に制御してシリコン窒化膜102を除去することにより、シリコン窒化膜102とシリコン基板100、又はシリコン窒化膜102とシリコン酸化膜104のエッチング選択比を10以上と高めにすることが可能である。
図2(b)に示すように、N型やP型不純物の含有量が1019cm-3以下のシリコン又はシリコン−ゲルマニウム膜を選択エピタキシャル成長させ、エピタキシャルシリコン層が形成される。その後、このエピタキシャルシリコン層の中の平均不純物濃度が1019cm-3以上になるようにN型やP型不純物がイオン注入等の方法で導入される。ここで、150℃/sec以上の高速昇温で900乃至1100℃まで昇温し、60秒以下の熱処理を行ってエピタキシャル層に不純物をドーピングしてもよい。この熱処理の温度を900℃未満にすると、イオン注入された不純物の分布のテイル(最も基板に近い部分)が急峻でなくなり、不純物分布の深さの割に、50nm程度の深さまで1019cm-3以上を維持しながら、且つシリコン基板100の内部に形成されるpn接合の深さを50nm以下に制御することが困難になる。
このように、シリコン基板100のシリコンを選択エピタキシャル成長させ、ソース・ドレインが形成される領域のシリコン基板100上のみ、選択的にシリコン結晶が成長して、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層が形成される。このエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層は、ゲート電極の下端から離れるに従って、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層の高さが増加していくファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層106である。
この後、熱処理によりファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層106中の不純物を固相拡散させて、エクステンション拡散層領域107が形成される。
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、シリコン窒化膜102の形成時の熱工程や大気中の酸素、又は薬品処理等により、シリコン窒化膜102とシリコン基板100との界面に薄いシリコン酸化膜が形成されることもある。このような場合、シリコン基板100の表面を露出させる際、リン酸処理によりシリコン窒化膜102を除去した後に、フッ酸処理によりシリコン酸化膜を除去すればよい。しかし、このフッ酸処理によってシリコン酸化膜105及び素子分離領域101も同時にエッチングされる。従って、これらを防止するために、このシリコン酸化膜の膜厚は3nm程度以下の薄膜にすることが望ましい。
また、上記シリコン窒化膜102はチタン酸化膜等の金属酸化膜でもよい。例えば、チタン酸化膜はフッ酸に不溶で熱硫酸に可溶のため、シリコン窒化膜と同様の効果を得ることができる。
以上のように、上記第1の実施例(1)によれば、RIEではなくリン酸の薬液処理により、基板上に形成されたシリコン窒化膜等の絶縁膜を除去している。このため、ソース・ドレイン用の選択エピタキシャル成長を行うシリコン基板表面にダメージを与えることなく露出でき、且つゲートの側壁がシリコン酸化膜105で覆われた構造を形成できる。また、リン酸を用いるため、従来技術のように素子分離領域101がエッチングされることもないため、素子分離領域101の後退等の問題はほとんどない。従って、ゲートの側壁がシリコン酸化膜である場合も、ゲート電極の下端から離れるに従って、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層の高さが増加していくファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層106を形成することができる。
[第1の実施例(2)]
実際に量産するMOSFETとしては、ゲート電極及びソース・ドレイン拡散層の低抵抗化、ゲート絶縁膜の高誘電率化、N型MOSFETとP型MOSFETの同一ウエハ内での作り分けが必要である。
そこで、第1の実施例(2)では、ゲートがメタル電極、ゲート絶縁膜が高誘電体膜、ソース・ドレイン拡散層上部にはシリサイドを形成したMOSFETの製造方法について以下説明する。
図3(a)に示すように、STI技術等を用いて、シリコン基板110内に酸化膜からなる素子分離領域111が形成される。
次に、CVD法等を用いて、シリコン基板110上に厚さが例えば6nmの薄い第1のシリコン窒化膜112が形成される。
次に、CVD法等により第1のシリコン窒化膜112上に厚さが例えば150nmのポリシリコン113が形成され、このポリシリコン113上に例えば50nmの第2のシリコン窒化膜114が形成される。ここで、ポリシリコン113は将来除去されるダミーゲートであるため、不純物のドーピングの必要はない。
次に、リソグラフィ技術により、第2のシリコン窒化膜114上にパターニングされたレジスト(図示せず)が形成される。その後、このレジストをマスクとして、RIE技術によりポリシリコン113及び第2のシリコン窒化膜114がエッチングされる。この際、RIEは、第1のシリコン窒化膜112がシリコン基板110上の全面に残るような選択比で行われる。これにより、第1のシリコン窒化膜112、ポリシリコン113、第2のシリコン窒化膜114の積層構造からなるゲート電極構造が形成される。
次に、図3(b)に示すように、酸化が行われ、ポリシリコン113の側面のみ第1のシリコン酸化膜115が形成される。この際、シリコン基板110の表面は第1のシリコン窒化膜112により覆われているため、第1のシリコン酸化膜は形成されない。
以下の製造工程ではN型MOSFETとP型MOSFETが別々に形成される。図4(a)において、領域AはN型MOSFET、領域BはP型MOSFETを示している。
図4(a)に示すように、リソグラフィ技術により、領域B上のみにパターニングされたレジスト116が形成される。その後、このレジスト116をマスクとして、リン酸により第1のシリコン窒化膜112のウエットエッチングが行われ、領域Aのシリコン基板の表面117が露出される。この際、第2のシリコン窒化膜114もエッチングされるが、そのエッチング量は第1のシリコン窒化膜112が薄膜のため微量であり問題ない。
次に、硫酸と過酸化水素水の混合液によりレジスト116が剥離される。この際、領域Aのシリコン基板の表面117に自然酸化膜(図示せず)が形成される。その後、エピタキシャル成長を行う装置で高温の水素を含むアニールにより自然酸化膜は除去される。この際、領域Bのシリコン基板110上は、第1のシリコン窒化膜112で覆われているので、このアニールによる酸化膜の除去プロセスに対しても何らエッチングされることはない。
図4(b)に示すように、リン又はヒ素等のN型半導体となる不純物を含むシリコンの選択エピタキシャル成長を行うことで、領域Aのシリコン基板117上のみにシリコンが選択的に結晶成長し、またゲート側面が第1のシリコン酸化膜115であるためゲート側面はファセットを生じて結晶成長し、N型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118が形成される。このN型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118の高さはダミーゲートのポリシリコン113の高さ以下になるようにする。この後、レジスト116が除去される。
次に、図5(a)に示すように、全面に厚さが例えば3nmの薄い第3のシリコン窒化膜119が形成される。
次に、図4(a)と同様に、リソグラフィ技術により、領域A上のみにパターニングされたレジスト(図示せず)が形成される。その後、このレジストをマスクとして、リン酸により第3のシリコン窒化膜119及び第1のシリコン窒化膜112のウエットエッチングが行われる。これより、図5(b)に示すように、領域Bのシリコン基板の表面120が露出される。このエッチング時に第2のシリコン窒化膜114もエッチングされるが、そのエッチング量は第1のシリコン窒化膜112が薄膜のため微量であり問題ない。
次に、硫酸と過酸化水素水の混合液によりレジストが剥離される。この際、領域Bのシリコン基板の表面120に自然酸化膜(図示せず)が形成される。その後、エピタキシャル成長を行う装置で高温の水素を含むアニールにより自然酸化膜は除去される。この際、領域Aにおいては、第3のシリコン窒化膜119で覆われているので、このアニールによる酸化膜の除去プロセスに対しても何らエッチングされることはない。
図6(a)に示すように、ボロン等のP型半導体となる不純物を含むシリコンの選択エピタキシャル成長を行うことで、領域Bのシリコン基板の表面120のみにP型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層121が形成される。この際、領域Aは第3のシリコン窒化膜119に覆われているため、選択エピタキシャル成長は起こらない。また、P型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層121の高さもN型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118と同様に、ダミーゲートのポリシリコン113の高さ以下になるようにする。
次に、第3のシリコン窒化膜119が除去される。この際、第2のシリコン窒化膜114もエッチングされるが、そのエッチング量は微量であり問題ない。
図6(b)に示すように、CVD法により、全面に厚さが例えば40nmの第2のシリコン酸化膜122が形成される。
次に、熱処理を行うことで、N型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118及びP型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層121のそれぞれの中に含まれる不純物の固相拡散が行われ、シリコン基板110上にエクステンション拡散層123が形成される。ここで、N型とP型の不純物の固相拡散量の違いが大きすぎて同時の熱処理を行えない場合は、まず、例えば図5(a)に示す工程において、ヒ素等の拡散速度の遅いN型不純物のみをある程度の高温によって固相拡散を行う。その後、本工程にてボロン等の拡散速度の速いP型不純物の拡散を行えばよい。
図7(a)に示すように、RIE技術を用いて第2のシリコン酸化膜122のエッチバックが行われ、後述するシリサイドを形成するN型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118及びP型のファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層121の上面が露出される。この際、第2のシリコン酸化膜122は、ゲートの側壁及びファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118、121の側壁に残る。
次に、全面にチタン、あるいはコバルト等の金属膜が堆積される。その後、図7(b)に示すように、サリサイド・プロセス技術により、ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118、121の上面にのみシリサイド層124が選択的に形成される。
次に、CVD法により、全面に酸化膜からなる層間絶縁膜125が堆積される。その後、図8(a)に示すように、層間絶縁膜125が例えばCMP法を用いて平坦化がされ、ダミーゲート上の第2のシリコン窒化膜114の表面が露出される。この際、ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118、121はダミーゲートのポリシリコン113の高さ以下に形成しているため、ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層118、121の上面のシリサイド124は露出しない。
図8(b)に示すように、リン酸によるウエットエッチング技術により、第2のシリコン窒化膜114が層間絶縁膜125に対して選択的に除去される。その後、CDE又は混酸等のウエットエッチングにより、ポリシリコン113が層間絶縁膜125と第1のシリコン酸化膜115と第1のシリコン窒化膜112に対して選択的に除去される。次に、リン酸により、第1のシリコン窒化膜112が層間絶縁膜125と第1のシリコン酸化膜115に対して選択的にエッチングされる。これより、ダミーゲート電極が除去されてゲート電極形成部が開口される。
次に、図8(c)に示すように、全面に高誘電体ゲート絶縁膜として厚さが例えば10nmのタンタル酸化膜126がCVD法等を用いて形成される。このタンタル酸化膜126上に、厚さが例えば10nmの導電体であるバリア膜(反応防止膜)としてのチタン窒化膜127が形成される。その後、チタン窒化膜127上に、ゲート電極としてアルミニウム128が形成され、開口したゲート電極形成部が埋め込まれる。
この後、図8(c)に示すように、CMP技術等を用いてアルミニウム128、チタン窒化膜127、タンタル酸化膜126が平坦化され、層間絶縁膜125の表面が露出されて、ゲート電極が形成される。
以上のように、上部にシリサイドが形成されたファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層構造のソース・ドレイン拡散層を持ち、且つゲート絶縁膜が高誘電体膜、ゲート電極がメタルゲートの構造を持つN型とP型のMOSFETを形成することができる。
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。ゲート絶縁膜を形成するシリコン基板110の表面は、第1のシリコン窒化膜112が図8(b)の工程において除去されるまで形成されている。よって、少なくとも第1のシリコン窒化膜112が形成された工程(図3(a))からこの膜が除去される工程(図8(b))の間において、高温の熱処理を加えることで、図8(b)の工程において第1のシリコン窒化膜112が除去されて露出したシリコン基板表面にはシリコン熱窒化膜層が形成される。そこで、ゲート絶縁膜としてこの熱窒化膜層、又は更に酸化を行って、シリコン熱窒化酸化膜層、若しくはこれらのシリコン熱窒化膜層やシリコン熱窒化酸化膜上に高誘電体膜を成膜した積層構造のゲート絶縁膜を形成することも可能である。
また、上記シリコン窒化膜112はチタン酸化膜等の金属酸化膜でもよい。例えば、チタン酸化膜はフッ酸に不溶で熱硫酸に可溶のため、シリコン窒化膜と同様の効果を得ることができる。
以上のように、上記第1の実施例(2)によれば、シリコン基板上にシリコンの熱酸化膜を形成することなく、ウエットエッチング処理においてシリコン酸化膜とお互いに選択比のある、例えばシリコン窒化膜112を形成している。従って、ウエットエッチング処理によりシリコン窒化膜112を除去できるため、シリコン基板110の表面120にダメージを与えることなく表面120を露出できる。すなわち、ウエットエッチング処理等で一部の領域のシリコン酸化膜の除去が必要なプロセスでは、シリコン窒化膜がエッチングを望まないシリコン酸化膜のバリア膜となる。また、シリコン基板を露出するためにシリコン窒化膜をウエット処理により除去する際は、リン酸処理を行うことによってシリコン酸化膜はエッチングされない。従って、種々の処理に適用できる。
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
次に、従来技術の第2の問題にあげたように、エクステンション拡散層を形成した後、エピタキシャル成長によるエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層を形成する場合、N型、P型の拡散層の不純物の相異により、成長した膜厚を等しくすることが困難であることが判明している。
そこで、この問題を回避するために、第2の実施例では、エピタキシャル成長によるエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層の形成を行った後に、エクステンション拡散層の形成が行われる。
以下に、第2の問題を解決する方法として、2つの実施例を示す。
[第2の実施例(1)]
図9(a)に示すように、シリコン基板200内に、STI技術を用いて、素子分離領域(図示せず)が形成される。
次に、必要に応じて、トランジスタが形成される領域の全面に不純物を注入することにより、トランジスタのチャネル部分の不純物濃度の調整が行われる。
次に、シリコン基板200上にバッファ酸化膜(図示せず)が形成され、このバッファ酸化膜上に非結晶又は多結晶シリコン膜(ポリシリコン)201が形成される。このポリシリコン201上にシリコン窒化膜202が形成される。その後、シリコン窒化膜202上にパターニングされたレジスト(図示せず)が塗布され、このレジストをマスクとして異方性エッチングによりシリコン窒化膜202とポリシリコン201が選択的に除去され、図9(a)に示すように、ダミーゲートが形成される。その後、レジストが除去される。
次に、必要に応じてダミーゲートを酸化させた後、全面に厚さが例えば10nmのシリコン窒化膜が形成される。その後、図9(b)に示すように、異方性エッチングによりシリコン窒化膜がエッチングされ、ダミーゲートの側面部分に極薄の第1のシリコン窒化膜の側壁203が形成される。
図9(c)に示すように、ソース・ドレイン形成領域のシリコン基板200表面を希フッ酸処理と高温水素処理(例えば900℃、5min)によって洗浄し、シリコンを選択的に例えば30nmエピタキシャル成長させ、エピタキシャルシリコン層204が形成される。この際、ダミーゲート上面はシリコン窒化膜202に覆われているため、シリコンはエピタキシャル成長しない。また、ダミーゲートの側面はシリコン窒化膜203で覆われているため、エピタキシャルシリコン層にファセットは生じない。
図10(a)に示すように、不純物イオンが注入され、ソース・ドレイン拡散層から伸びるエクステンション拡散層205が形成される。拡散層の設計方法は深さ方向の伸びが、シリコンエピタキシャル成長させたエピタキシャルシリコン層204分だけ余裕を持つことになり通常のイオン注入技術の範囲で実現できる。例えば、n型拡散層を形成する条件は、不純物がヒ素(As)、加速電圧が20KeV、ドーズ量が1×1015cm-2である。ここで、エクステンション拡散層205を活性化するためのアニール条件は、例えば温度が800℃、処理時間が例えば10秒である。また、不純物はヒ素に限らずリン(P)でもよく、P型拡散層を形成する場合はボロン(B)やフッ化ボロン(BF2)等を用いることによって実現できる。尚、それらのイオン種においてイオンの注入条件は異なる。また、第1のシリコン窒化膜の側壁203は薄く形成されているため、エクステンション拡散層205は、ダミーゲートの端部まで十分に形成することができる。
次に、必要に応じて全面にシリコン酸化膜がエッチングストッパーとして形成され、このシリコン酸化膜上に厚さが例えば50nmのシリコン窒化膜が形成される。
図10(b)に示すように、異方性エッチングによりシリコン酸化膜がエッチングされ、ダミーゲート側面部分にシリコン酸化膜の側壁206及び第2のシリコン窒化膜の側壁207が形成される。
図10(c)に示すように、イオン注入により、第2のシリコン窒化膜の側壁207をマスクとしてソース・ドレイン拡散層208が形成される。ここで、ソース・ドレインを活性化するためのアニール条件は、温度が例えば1000℃、処理時間が例えば10秒である。
次に、図11(a)に示すように、全面に層間絶縁膜209が形成される。その後、CMP等により、層間絶縁膜209が平坦化され、ダミーゲート上面のシリコン窒化膜202の表面が露出される。ここで、平坦化にはCMPを用いたがエッチバックでもよい。
図11(b)に示すように、熱リン酸処理により、シリコン窒化膜202が除去されポリシリコン201の表面が露出されるとともに、このポリシリコン201の表面が露出される位置まで第1及び第2のシリコン窒化膜の側壁が除去される。
図11(c)に示すように、CDEにより、ダミーゲートのポリシリコン201が除去され、溝210が形成される。その後、希フッ酸処理により、バッファとして形成したシリコン酸化膜(図示せず)が除去され、シリコン基板200表面が露出される。ここで、ダミーゲートを除去した際に、バッファ酸化膜越しにイオン注入することで局所的なしきい値調整を行うこともできる。
図12(a)に示すように、露出されたシリコン基板200の表面を酸化させるか、又は絶縁膜(例えば酸化タンタル)を堆積させることによってゲート絶縁膜211が形成される。ここで、ゲート絶縁膜211は酸化タンタルに限らず、誘電率の高い絶縁膜であればよい。次に、全面に導電体であるバリア膜(反応防止膜)としてのチタン窒化膜212が形成され、このチタン窒化膜212上に金属膜としてタングステン(W)213が形成され、溝210が埋め込まれる。ここで、金属膜はタングステンに限らず、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の他の金属でも可能である。また、反応防止膜はチタン窒化膜に限らず、窒化タングステン、窒化タンタルでもよい。尚、電極自体が金属でなく、リンを含んだポリシリコンの場合は反応防止膜を必要としない。
次に、CMP等により平坦化することで、溝210にゲート電極214が形成される。ここで、平坦化にはCMPを用いたがエッチバックでもよい。また、ゲート部分に関しては、CMPで平坦化を行わずに、パターニングとエッチングによりゲート電極を形成してもよい。
その後、通常のトランジスタの形成工程に従ってもよいが、後述するように、側壁を除去する工程を加えることで、より高性能なトランジスタを形成することができる。
まず、図12(b)に示すように、第1及び第2のシリコン窒化膜の側壁203、204が除去される。その後、全面に例えばTEOS等の層間絶縁膜218が形成される。
ここで、ゲート電極214の高さが例えば30nm、第1のシリコン窒化膜の側壁203の厚さが例えば20nmの場合(条件1)、図13(a)に示すように、溝217は層間絶縁膜218によってほぼ埋め込まれる。また、ゲート電極214の高さが例えば100nm、第1のシリコン窒化膜の側壁203の厚さが例えば10nmの場合(条件2)、そのアスペクト比が10になるため、図13(b)に示すように、溝217は層間絶縁膜218によって全ては埋め込まれず、空洞219が形成される。このように、空洞219が形成されることにより、低誘電率化が実現でき誘電特性が向上する。
また、図14(a)に示すように、シリコン窒化膜の側壁206aの側壁にシリコン酸化膜の側壁207aが形成された場合、シリコン窒化膜の側壁203、206aが除去され、図14(b)に示すように溝217aが形成される。ここで、条件1の場合、図15(a)に示すように層間絶縁膜218によって溝217aは埋め込まれ、条件2の場合、図15(b)に示すように空洞219aが形成される。このように、空洞219aが形成されることにより、低誘電率化が実現でき誘電特性が向上する。
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、図5に示す工程後、イオン注入を行う前に、図16(a)、図17(a)に示すように、エクステンション拡散層205を選択エピタキシャル成長させ、エピタキシャルシリコン215、216を形成してもよい。その後、図16(b)、図17(b)に示すように、イオン注入によりソース・ドレイン拡散層208が形成される。
ここで、ソース・ドレイン拡散層208部分にシリサイド層を形成する場合、シリサイド反応はシリコンを消費して行われる。このため、上記実施例のように、予めソース・ドレイン拡散層208部分を嵩上げしておくという狙いがある。また、シリサイド層を形成しない場合であっても、ソース・ドレイン拡散層208の深さに余裕があるため、不純物を高濃度にイオン注入することができ、コンタクト抵抗の低減に有効である。
以上のように、上記第2の実施例(1)によれば、エクステンション拡散層の形成前にエピタキシャルシリコン層を形成する。このため、同一基板にN型、P型のトランジスタを形成する場合、N型、P型上のエピタキシャル成長を同じ膜厚に制御することが容易となる。また、エピタキシャル成長の熱処理によるエクステンション拡散層の広がりも防止できる。
[第2の実施例(2)]
第2の実施例(2)は、ダマシンプロセスを用いない通常のポリシリコンゲート電極を用いたトランジスタに関するものである。
まず、図18(a)に示すように、第2の実施例(1)と同様に、シリコン基板220内に図示しない素子領域と素子分離領域が形成される。必要に応じて、所定の領域に不純物イオンが注入され、形成するトランジスタのしきい値の調整が行われる。
次に、シリコン基板220の表面が酸化され、素子領域上にゲート酸化膜221が形成され、全面にポリシリコン222が形成される。その後、ポリシリコン222上にパターニングされたレジスト(図示せず)が形成される。
その後、図18(a)に示すように、レジストをマスクとして、異方性エッチングによりポリシリコン222が選択的に除去され、ゲート電極が形成される。ここでゲート電極はポリシリコン(多結晶シリコン)に限らず、非結晶シリコンでもよい。また、予め例えばリン等の不純物をドープした多結晶シリコンや、更にその上にタングステンを堆積させた積層膜であってもよい。
次に、ゲート電極を例えば5nm程酸化させ、エッチングダメージが除去される。その後、全面に厚さが例えば10nmのシリコン窒化膜が形成される。次に、図18(b)に示すように、異方性エッチングによりシリコン窒化膜がエッチングされ、ポリシリコン222の側面に第1のシリコン窒化膜の側壁223が形成される。
次に、希フッ酸処理と熱水素処理が行われ、ソース・ドレイン部分のシリコン基板220が露出されると同時に洗浄化される。
図18(c)に示すように、シリコンを選択的に例えば30nmエピタキシャル成長させ、基板200上にエピタキシャルシリコン層224が形成される。尚、ポリシリコン222の上面部にもシリコンが成長する場合があるがトランジスタ特性には影響しない。ここで、ポリシリコン222の側壁はシリコン窒化膜223で形成されているため、エピタキシャルシリコン層224にファセットは生じない。
図19(a)に示すように、エピタキシャルシリコン層224に不純物のイオンが注入され、ソース・ドレイン拡散層から伸びるエクステンション拡散層225が形成される。拡散層の設計方法は深さ方向の伸びが、シリコンエピタキシャル成長させたエピタキシャルシリコン層224分だけ余裕を持つことになり通常のイオン注入技術の範囲で実現できる。例えば、N型拡散層を形成する場合の条件は、例えば不純物をヒ素(As)として、加速電圧が20KeV、ドーズ量が1×1015cm-2である。ここで、エクステンション拡散層225を活性化するためのアニール条件は、温度が例えば800℃、処理時間が例えば10秒で行われる。
次に、必要に応じて全面にエッチングストッパーとしてのシリコン酸化膜が形成され、このシリコン酸化膜上に厚さが例えば50nmのシリコン窒化膜が形成される。
図19(b)に示すように、異方性エッチングにより、ポリシリコン222の側面部分にシリコン酸化膜の側壁226及び第2のシリコン窒化膜の側壁227が形成される。
図19(c)に示すように、イオン注入により、第2のシリコン窒化膜の側壁227をマスクとしてソース・ドレイン拡散層228が形成される。ここで、ソース・ドレイン拡散層228とゲート電極を活性化するアニール条件は、温度が例えば1000℃、処理時間が例えば10秒である。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図19(b)に示す工程後、イオン注入を行う前に、エクステンション拡散層225を選択エピタキシャル成長させ、更にエピタキシャルシリコンを形成してもよい。すなわち、ソース・ドレイン拡散層228部分にシリサイド層を形成する場合、シリサイド反応はシリコンを消費して行われる。このため、上記のように、予めソース・ドレイン拡散層228部分を嵩上げしておくことにより、シリサイド反応時におけるシリコンの不足を防止できるという狙いがある。また、ポリシリコンで形成されたゲート電極はこの時点で不純物が注入され、ゲート配線として使用することができる。
以上のように、上記第2の実施例(2)によれば、エクステンション拡散層の形成前にエピタキシャルシリコン層を形成する。このため、同一基板にN型、P型のトランジスタを形成する場合、N型、P型上のエピタキシャル成長を同じ膜厚に制御することが容易となる。また、エピタキシャル成長の熱処理によるエクステンション拡散層の広がりも防止できる。
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。
次に、従来技術の第3の問題にあげたように、シリサイド膜を形成した後、ゲート絶縁膜を形成する場合、シリサイド膜中のメタルがゲート絶縁膜へ混入することによりゲート絶縁膜の信頼性劣化が生じることが判明している。
そこで、この問題を回避するために、第3の実施例では、ゲート絶縁膜の形成を行った後に、シリサイド膜が形成される。すなわち、第3の実施例では、ソース・ドレイン拡散層上にシリサイド膜を形成する前に、ゲート絶縁膜を形成し、且つダマシン・ゲート形成プロセスを用いたメタル単層のゲート構造を持つMOSFETの製造方法を示す。
まず、図20(a)に示すように、半導体基板300内に素子分離領域301が形成され、将来除去されるダミーのゲートとして、半導体基板300上に厚さが例えば6nmのゲート酸化膜301が形成される。このゲート酸化膜301上に厚さが例えば250nmのポリシリコン303が形成され、このポリシリコン303上に厚さが例えば50nmの第1のシリコン窒化膜304が形成される。その後、パターニングされたレジスト(図示せず)が形成され、このレジストをマスクとしてポリシリコン303及び第1のシリコン窒化膜304が選択的に除去され、積層構造からなるダミーゲートが形成される。次に、不純物イオンを注入することにより、半導体基板300内にエクステンション拡散層領域305が形成される。その後、全面にシリコン窒化膜が形成され、異方性エッチングによりダミーゲートの側壁に幅が例えば40nmの第2のシリコン窒化膜の側壁306が形成される。
図20(b)に示すように、フッ酸処理により、基板上のゲート酸化膜が除去され、ソース・ドレイン領域上のみ半導体基板300が露出される。この露出された半導体基板300の領域のみ選択的にシリコンをエピタキシャル成長させ、高さが半導体基板300の表面から70nm程度のエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307が形成される。ここで、ダミーゲートの側壁はシリコン窒化膜306で形成されているため、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307にファセットは生じない。その後、イオン注入技術によりソース・ドレイン拡散層領域(図示せず)が形成される。この際、図20(a)に示す工程においてエクステンション拡散層領域305を形成したが、これは行わずに本工程のソース・ドレイン拡散層領域形成時に不純物の固相拡散によりエクステンション拡散層領域305を形成しても何ら問題はない。
図20(c)に示すように、全面に層間絶縁膜308が形成され、この層間絶縁膜308はCMP技術により平坦化され、ダミーゲートの上面の第1のシリコン窒化膜304及び第2のシリコン窒化膜304の表面が露出される。ここで、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307上面は、ダミーゲート上面より高さが低いため露出しない。
次に、リン酸により第1のシリコン窒化膜304が除去され、CDE又は混酸等のウエットエッチングによりポリシリコン303が除去される。また、フッ酸処理によりダミーのゲート酸化膜302が除去され、ゲート形成部が開口される。
図21(a)に示すように、酸化、又はCVD法による高誘電体絶縁膜の堆積によりゲート形成部の開口にゲート絶縁膜309が形成される。ここで、ソース・ドレイン上にシリサイド膜は形成されないので、メタルのない状態でゲート絶縁膜を形成することができる。また、ゲート形成部を開口した際に、イオン注入とその活性化工程を加えても従来技術のようにメタル混入によるゲート絶縁膜の信頼性低下の問題は生じない。よって、ゲートを開口した後にチャネル領域のイオン注入を行えば、この工程の後に、ソース・ドレイン拡散層形成等の高温の熱工程は存在しないため、非常に急峻な不純物のデプス・プロファイルを持つチャネル構造の形成も可能である。
図21(b)に示すように、全面に導電体であるバリア膜(反応防止膜)としての例えばチタン窒化膜310が形成され、このチタン窒化膜310上に、CVD法によりゲート電極材料となる金属として例えばアルミニウム311が形成される。
図21(c)に示すように、CMP法を用いて、アルミニウム311、チタン窒化膜310、ゲート絶縁膜309、第2のシリコン窒化膜の側壁306が平坦化され、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307の上面が露出され、ゲート電極312が形成される。
図22(a)に示すように、酸化が行われ、ゲート電極312の上部にアルミ酸化膜313、チタン酸化膜314が形成され、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307上にはシリコン酸化膜315が形成される。
図22(b)に示すように、フッ酸によりエレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307上のシリコン酸化膜315が除去される。この際、アルミ酸化膜313、チタン酸化膜314はフッ酸に不溶のため除去されない。
図22(c)に示すように、全面に金属膜316が形成される。ここで、金属膜316はアルミニウムの融点より低い温度でシリサイドを形成する貴金属(パラジウム、ニッケル、白金、コバルト)のいずれか1つからなる金属、あるいはそれらの少なくとも1つを含む合金とする。
その後、熱処理により、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307の表面に厚さが例えば40nmのシリサイド膜317が形成される。この際、ゲート電極312の表面にはアルミ酸化膜313、チタン酸化膜314が形成されているのでシリサイド反応は起こらない。このため、エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層307領域のみに選択的にシリサイド反応が起こる。また、リーク電流を防止するために、シリサイド膜317はエクステンション拡散層領域305の底面から少なくとも60nm上方に形成する必要がある。この際、エクステンション拡散層領域305のシリコン基板300表面からの深さは50nm乃至60nmとする。
図23に示すように、シリサイド反応をしていない未反応金属316が除去される。この際、除去方法としてウエットエッチング等も考えられるが、未反応金属316が平坦な面に形成されているため、CMP等の平坦化プロセスを用いて未反応金属316を除去することができる。
このように、サリサイド・プロセスにおける未反応金属の選択的除去を、従来のようなウエットプロセスによる薬液処理ではなく、CMP等の平坦化プロセスで除去することが可能となった。そのため、従来のウエットエッチングによる方法での選択性の崩れ等によるメタル残りやゲート電極消失、あるいはシリサイドの溶解等の問題はなく、様々な未反応金属の除去を容易に行える。
従って、これまでウエットプロセスでの選択エッチングが難しいことから、製品に採用されていなかったパラジウム等の金属も用いることができる。
このパラジウムのシリサイドは、現在量産展開されているチタンシリサイドやコバルトシリサイドのようにシリサイドに対して有利な点がある。
すなわち、パラジウムはシリサイド化するとパラジウムシリサイド(Pd2Si)が形成される。このシリサイド時に消費されるシリコンの膜厚Dsiと形成されたシリサイドの膜厚Dsilicideの比をA、すなわちA=Dsi/Dsilicideとする。すると、現在量産されているチタンシリサイドやコバルトシリサイドはA≒1であるのに対し、パラジウムシリサイドはA≒0.5である。
つまり、パラジウム等の貴金属はシリサイド形成時に消費するシリコンの量が、チタンやコバルトがシリサイド形成時に消費するシリコンの量より少ない。ここで、熱反応によるシリサイドの形成では消費するシリコンが多くなるにつれて、図24に示すように、シリコンとシリサイドの界面のモフォロジーが劣化する。このため、拡散層のリーク電流が増加するという問題が生じる。従って、シリコン消費量のより少ないパラジウムシリサイド等を用いることができるCMP等の平坦化が行えることより、このようなリーク電流を防止できる。
尚、パラジウムのようにシリサイド時のシリコン消費量の少ない金属として、プラチナ(A≒0.7、PtSi)がある。
また、第3の実施例による構造であれば、図23に示す工程後のコンタクトホール形成工程において、以下のような利点がある。
まず、上面が平坦であるため、層間絶縁膜のRIEが容易となり、また、層間絶縁膜は薄く形成することができる。これより、コンタクトホールのアスペクト比が小さくなるため、コンタクトホールの埋め込みも容易となる。また、CMP等の平坦化工程、及び層間絶縁膜のリフロー工程が省略可能となる。
以上のように、第3の実施例によれば、以下のような結果が得られた。
図25に、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)測定で得られるゲート絶縁膜の信頼性データの結果を、ワイブル・プロットにして表したものを示す。横軸はゲート絶縁膜に注入した電荷量、縦軸は耐圧不良度合であり、従来の実施例と本実施例のデータを比較してある。
図25に示すように、従来の実施例のワイブル・プロットは、ウエハ面内のチップ間で、耐圧不良が発生する総電荷量がばらついている。これは、確率的にゲート電極の耐圧不良の起こりやすいチップが面内で存在していることを示しており、製品の信頼性が低いことがわかる。このゲート電極の耐圧不良は、確率的にメタルがゲート酸化膜中、あるいは酸化膜界面に混入したことによる不良であることは明らかである。
これに対し、本実施例のワイブル・プロットは、ウエハ面内のどのチップにおいても、ゲート電極の耐圧不良が発生する総電荷量はほぼ一定であることがわかる。従って、確率的なメタルの混入を防止でき、製品の信頼性を向上することができた。
尚、第3の実施例ではメタルゲートの電極材料として、アルミニウム311を用いたが、それ以外にもチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、あるいはこれらの窒化物も用いることも可能である。この場合は、酸化においてアルミ酸化物313ではなく、それぞれチタン酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、ニオブ酸化物、バナジウム酸化物が形成される。
また、第3の実施例は、ダマシン構造のMOSFETだけでなく、通常のMOSFETにも適用できる。
以上のように、上記第3の実施例によれば、ダマシン・ゲート形成プロセスを用いて、ゲート絶縁膜309の形成後にシリサイド膜317を形成するため、シリサイドのメタルがゲート電極に混入することを防止できる。
その他、本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施例には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施例に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
100、110、200、220、300…シリコン基板、101、111、301…素子分離領域、102、202…シリコン窒化膜、103、113、201、222、303…ポリシリコン、104、115…第1のシリコン酸化膜、105、122…第2のシリコン酸化膜、106…ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層、107、123、205、225、305…エクステンション拡散層、112、304…第1のシリコン窒化膜、114…第2のシリコン窒化膜、116…レジスト、117…シリコン基板表面、118…N型ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層、119…第3のシリコン窒化膜、120…シリコン基板表面、121…P型ファセット・エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層、124、317…シリサイド膜、125、209、218、308…層間絶縁膜、126…タンタル酸化膜、127、212、310…チタン窒化膜、128、311…アルミニウム、203、206a、223…第1のシリコン窒化膜の側壁、204、215、216、224…エピタキシャルシリコン層、206、207a、226…シリコン酸化膜の側壁、207、227、306…第2のシリコン窒化膜の側壁、208、228…ソース・ドレイン拡散層、210、217、217a…溝、211、221、309…ゲート絶縁膜、213…タングステン、214、312…ゲート電極、219、219a…空洞、302…ゲート酸化膜、307…エレベーテッド・ソース・ドレイン拡散層、313…アルミ酸化膜、314…チタン酸化膜、315…シリコン酸化膜、316…金属。