JP4606564B2 - グリスフィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフィルターに関し、特に業務用の厨房用グリスフィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、業務用かつ厨房用の大型のグリス(油滴)フィルタ(ー)としては、バッフル方式や3次元金属フィルター方式の物がある。そしてこれらは何れも慣性力を利用して厨房のレンジ、調理台、ガスコン炉等からの排気中の油滴等を除去し、回収するものである。
【0003】
すなわち、バッフル方式では、排気の流れ方向を急変させ、慣性力で排気中の油滴等のコロイドを除去する。また、3次元金属フィルター方式(注、これは方式名であり、勿論他の材質のものもある。)では、細かい金属メッシュに排気中のコロイドを衝突させて付着させて除去する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バッフル方式は、比較的大きな粒子の除去には確かに有効であるが、近年の環境汚染防止に対する高度のフィルター性能への要求のもと、炭素粒等の粒子や液体(水、油)の微粒子と固体の微粒子(カーボンブラック、煙)等からなり拡散性の高い気体コロイドの除去には不充分である。と言って、小さな粒子や気体コロイドの除去にも十分な性能を持たせようとすれば、排気ファンの出力を増大させる必要があり、初期コストや消費電力、更には騒音等の面から好ましくない。
【0005】
また、3次元金属フィルター方式は、粘性が低く拡散性の高い気体コロイドでは、一旦フィルターに捕捉しても、風圧による脱着、再飛散が生じやすい。特に、ある程度捕捉されると、フィルター抵抗の増大による風圧の上昇が生じるため脱着、再飛散が増大し、これまた性能が不充分である。また、業務用の場合にはどうしても建物やその内部での配置からの制約等のため、排気抵抗が大きい場合が多い。そしてこの場合には、排気ファンに必要な出力も増大するため一層好ましくなくなる。
【0006】
このため、近年の環境汚染防止に対する高度のフィルター性能への要望のもとでも十分に小さな粒子や気体コロイドを除去し、しかも低コストのグリスフィルターの開発が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としてなされたものであり、厨房からの排気中には過飽和の水分が多いことに着目し、特に金属製のフィルターの構造、形状に工夫を凝らして排気に断熱圧縮と断熱膨張及び冷却を行なわせ、これにより排気中の微小な粒子を核にして過飽和の水分を凝縮させ、その結果小さな粒子や気体コロイドを除去するものである。
【0008】
すなわち、本願発明のグリスフィルタは、板状の多孔質体よりなり、排気の流れて来る方向に設けられた前部フィルターと、該前部フィルターよりも厚みの薄い板状の多孔質体を折り曲げてなり、上記前部フィルターの後流側に設けられた後部フィルターと、上記前部フィルターと上記後部フィルターの外周部を囲い、かつ両フィルターを固定するフィルター枠と、を備える。上記後部フィルターを構成する上記多孔質体は、スポンジ状の合成樹脂の外面にニッケルを主材料とする金属膜をめっきで薄く形成し、その後前記スポンジ状の合成樹脂を焼却してなるものであることを特徴とする。
本願発明によれば、前部フィルターと後部フィルターの2段式とし、後部フィルターを前部フィルターよりも厚みの薄い板状の多孔質体で形成する。これにより、排気に断熱圧縮と断熱膨張及び冷却を行なわせ、排気中の微小な粒子を核にして過飽和の水分を凝縮させ、その結果小さな粒子や気体コロイドを除去する。
【0009】
後部フィルターは、上記前部フィルターよりも厚みの薄い板状の多孔質体が形成されており、機械的強度が弱くなるが、後部フィルターを折り曲げる構成にしているので、機械的強度が良好となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づいて説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明の第1実施の形態としてのグリスフィルターの断面を示す。本図において、1はグリスフィルター前面(排気が流れて来る方向)に位置する、そして少し厚めの平板状の多孔質体よりなる前部フィルターである。2は、その後流側に位置する、そして薄い平板状の多孔質体をプリーツ(襞、櫛)状に加工した後部フィルターである。そして、何れのフィルター2、3もその空孔率は90〜97%のニッケル合金よりなる。3は、これら2種の多孔質体をその内部に固定、併せてグリスフィルターを排気ダクト等に固定するフィルター枠である。
4は、ドレントラップである。
【0012】
以下、先ず最初に、このグリスフィルターの作用が良好なことについて、目下考えられる大凡の理由について説明する。
【0013】
調理台の方より流れてきた暖かくて軽い(密度の小さい)排気は、先ず前部フィルター1の流路抵抗によりその前方部当りから前部フィルター内で容易に圧縮される。そしてこの際、断熱圧縮で生じた熱は、前部フィルターにより吸収され、最終的にはフィルター枠3を経てダクト側に放出される。更に、併せて排気ガス中の比較的大きい油滴等からなる粒子は、この前部フィルターにて捕捉される。
【0014】
さて、前部フィルターの下流の後部フィルタ2は、薄いため流路抵抗が比較的小さい。このため、前部フィルターを通過した排気ガスは、通過直後に断熱膨張し、温度が最初よりも低下する。その結果排気ガスには、圧縮そしてその直後の膨張という機械的な作用がなされ、また加熱、除熱、そしてそれらの直後の冷却という熱的な作用がなされることとなる。
【0015】
ところで、排気中には、多量の(ケースにより30%程度の)、それも過飽和の状態の水分が含まれている。そしてこれの水分は、かかる機械的、熱的な作用が加わると、前部フィルターをでたところや後部フィルターの前で排気中の1μm前後あるいはそれ以下の微小なカーボン等からなる粒子を核として凝縮する。このため、次に排気が後部フィルターを通過する際、排気中の凝縮により生じた水滴はその中心の核もろともこの後部フィルタにて捕捉されることとなる。しかもこの際、後部フィルターはプリーツ状であるため表面積が広く、捕捉の効率が良好なだけでなく、薄い故に放熱性にも優れるため、排気の温度もそれだけ低下し、このため後部フィルター内での水分の凝縮も促進される。更に、一旦水滴が凝縮によりフィルター表面に付着すれば、熱輻射率の大きくなる(1に近くなる)ため、放熱は一層促進される。
【0016】
更にまた、プリーツ状であるため薄いにも係わらず機械的強度が大きく、加工も簡単となる。
【0017】
次に、ドレントラップ4の作用であるが、捕捉した油滴をフィルターが外に排出すること、及び排気中の極性基を有する(水溶性の)ガスが凝縮した水分に溶け込み、更にこの水分が下部のドレントラップより図示しない油溜まりへ排出されることにより、排気中の極性基を有するガスも除去されることとなる。また、別途アルカリ液の噴霧機構を装着可能としたりすることにより、限定した形ではあるが、ダクトに取り付けたまま付着(捕捉)した粒子、油分の洗浄も可能となる。
【0018】
以上の結果、単に排気中の油及びカーボン等の小さな微粒子が除去されるだけでなく、水分まで除去されうることとなる。
【0019】
更に、凝縮した水滴は極性を有する成分ガス(水溶性のガス)を溶かしこむため、グリスフィルタに捕捉された水分の排出機構を設けることにより、排気中の不完全燃焼ガス成分等をも除去することが可能となる。
【0020】
次に、前部フィルターと後部フィルターの空孔率や寸法あるいはそれらの関係について説明する。
【0021】
前部フィルターであるが、その前面で排気を適度に圧縮する流路抵抗が必要であるが、グリスフィルター全体としての流路抵抗が大きいのは好ましくないと言う制約がある。このため、その厚みをtmm、排気の流れ方向1mm当りのセル(空孔)数をpとしたとき(前述の建物の制約等により多少の相違もありえようが、多くの場合)、空孔率が90〜97%の場合
3.5≦t×p≦8
の関係を充たしているのが好ましい。
【0022】
後部フィルターであるが、その前面で排気が適度に膨張する流路抵抗が必要であるが、グリスフィルター全体としての流路抵抗が大きいのは好ましくないと言う制約がある。また、放熱作用が良好しかも材料費はできるだけ少ないと言う制約もある。このため、そのプリーツ率(図2に示すごとく、プリーツ加工前の長さ/プリーツ加工後の長さ)をsとしたとき、その厚みtmm、厚み方向1mm当りのセル(空孔)数をpとしたとき、空孔率が90〜97%の場合
0.6≦t×p/(s×s)≦2
の関係を充たしているのが好ましい。
【0023】
なお、かかる空孔率としているのは、製造の都合、重量、グリス等の捕捉効率、捕捉したグリス等の保持力等を勘案したものである。このため、上述の設置条件の如何、その他将来の技術の発達、経済条件の変動等の下で、空孔率が99%の場合、より大な数値範囲としても良いのは勿論である。
【0024】
また、後部フィルターのプリーツの一方の頂点部と前部フィルターとを接触させているのは、薄い後部フィルターの補強を多少とも前部フィルターに受け持たせるためである。
【0025】
次に、前部フィルターと後部フィルターの製造方法及び材質について説明する。
【0026】
本実施の形態では、何れのフィルターも、炭素粉末を付着させる等の導電加工を施した骨格網状構造、いわゆるスポンジ状の合成樹脂(ウレタン等)の外面にニッケルを主材料とする金属膜をめっきで薄く形成し、その後合成樹脂を焼却して製造した。ただし、この製造技術については、いわゆる周知技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0027】
材質であるが、単にめっきが容易かつ排気中で耐蝕性が良好しかも適度な機械的強度を有しているだけでなく、付着した油分の洗浄に使用するアルカリに対して十分な耐蝕性を有する必要がある。このため、アルミ等でなくニッケルや強度の面からは更にニッケルメッキ後のクロマイジングにより、ニッケルに僅かにクロムを混ぜたニッケル合金(本実施の形態では、1〜2原子%以下)としている(その他、製造の都合で多少の炭素等も混入している)。
【0028】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の後部フィルターを図3に示す。
【0029】
本実施の形態は、後部フィルターを、縦方向のプリーツ状でなく横方向の波型としたものであり、その他は、先の実施の形態と同じである。波型としたため、多孔質の加工に無理が生じ難くなる。
【0030】
図4の(1)に、繰り返しての折り曲げにより等高の凹凸が繰り返して形成された後部フィルターを示す。
【0031】
なお、等高折り曲げ率(波率s)の定義は、等高折り曲げ(波)加工前の長さ/該加工後の長さである。これを図4の(2)に示す。
【0032】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、後部フィルターのプリーツあるいは波を縦方向とし、更にフィルター枠の下部にドレントラップを設けたものである。
【0033】
本実施の形態の後部フィルターを図5に示す。
【0034】
本図において、前部フィルターと後部フィルター間に多少の隙間がある。これは、排気路の都合で排気圧が高い、すなわち排気速度が大きくても、水分の完全な凝縮を図るためである。また、このため薄い後部フィルターの補強と枠の補強を兼ねて、後部フィルターの前部に相互にクロスする針金5を装着している。
【0035】
以上、本発明をその幾つかの実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は何もこれらに限定されないのは勿論である。すなわち例えば以下の様にしていても良い。
1)フィルター枠は、排気ダクトの一部となっている。このため、前部及び後部フィルタの洗浄の際には、両フィルタを各々単独で取り外したり、ダクト毎取り外したりすることとなる。
2)後部フィルターは、放熱性改善の面から多少炭素を付着させて黒色としている。
3)グリスフィルターは、その平面形状が長方形であったり、フィルター枠にさんを付けていたりしている。
4)ドレントラップは、数個付けている。
5)ニッケル合金(ニッケル90原子%以上)は、あらかじめウレタンにクロム等を混入していたりその骨格網状構造の外面にクロム粉を付着させておき、ウレタンの焼却時に焼結させる、いわゆる粉末焼結にて製造する。あるいは、あらかじめメッキ液にクロムイオン等を含ませていたりして形成する。
6)フィルター本体は、金属に換えてセラッミクとしている。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明で判るように、本発明によれば特に業務用の厨房からの排気中の比較的大きなグリス等の粒子のみならず、直径が1μm以下の小さな粒子や水分、気体コロイド、窒素化合物等を除去しうる。
【0037】
このため、近年の厳しい環境保全からのフィルター性能に対する高度の要求にも十分適合可能である。
【0038】
また、付着した油分を除去して再使用するのも容易であり、この面からもコストの低下につながる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態のグリスフィルターの正面と断面の図である。
【図2】 プリーツ率の定義を示す図である。
【図3】 本発明の第2の実施の形態のグリスフィルターの正面と断面の図である。
【図4】 上記第2の実施の形態のグリスフィルターの後部フィルターの変形例と等高折り曲げ率を示す図である。
【図5】 本発明の第3の実施の形態のグリスフィルターの正面と断面の図である。
【符号の説明】
1 前部フィルター
2 後部フィルター
3 フィルター枠
4 ドレントラップ
5 補強用針金
Claims (8)
- 板状の多孔質体よりなり、排気の流れて来る方向に設けられた前部フィルターと、
前記前部フィルターよりも厚みの薄い板状の多孔質体を折り曲げてなり、前記前部フィルターの後流側に設けられた後部フィルターと、
前記前部フィルターと前記後部フィルターの外周部を囲い、かつ両フィルターを固定するフィルター枠と、を備え、
前記後部フィルターを構成する前記多孔質体は、スポンジ状の合成樹脂の外面に金属膜をめっきで薄く形成し、その後前記スポンジ状の合成樹脂を焼却してなるものであることを特徴とするグリスフィルタ。 - 前記前部フィルターは、
その厚みをtmmとし、排気の流れ方向1mm当りのセル数をpとしたとき、空孔率が90〜97%の場合3.5≦t×p≦8の関係を充たしていることを特徴とする請求項1に記載のグリスフィルター。 - 前記後部フィルターは、プリーツ状に折り曲げ加工されていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のグリスフィルター。
- 前記後部フィルターは、プリーツ加工前の長さとプリーツ加工後の比をsとし、その厚みをtmmとし、厚み方向1mm当りのセル数をpとしたとき、空孔率が90〜97%の場合0.6≦t×p/(s×s)≦2の関係を充たしていることを特徴とする請求項3に記載のグリスフィルター。
- 前記後部フィルターは、いずれの部分においても波高が等しい波の形状に折り曲げ加工されてなることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のグリスフィルター。
- 前記後部フィルターは、折り曲げ前の長さと折り曲げ後の長さの比をsとし、その厚みをtmmとし、厚み方向1mm当りのセル数をpとしたとき、空孔率が90〜97%の場合0.6≦t×p/(s×s)≦2の関係を充たしていることを特徴とする請求項5に記載のグリスフィルター。
- 前記前部フィルター及び前記後部フィルターは、ニッケル若しくはニッケル合金製フィルターであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のグリスフィルター。
- 前記メッキ後、前記スポンジ状の合成樹脂の焼却に先立ち、前記金属膜のクロマイジング処理が施されてなる、請求項1に記載のグリスフィルタ。
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