JP2008180206A - フィルタ部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、例えば自動車等のディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるPMを除去するにおいて、フィルタ部材の閉塞を防止しつつ通過する排気ガスの圧力損失を低減し得るフィルタ部材およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明のフィルタ部材は、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材と、前記網目の周りに形成された金属微粉末からなる焼結層と、該焼結層によって囲まれる開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部と、前記金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末と、を具備し、前記金属粗粉末は、前記焼結層の表面に分散して付着し、前記開口部の開口空間に突出するように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば自動車等のディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤等の粒子状物質の除去用フィルタに利用可能な、フィルタ部材およびその製造方法に関する。
例えば、自動車等のディーゼルエンジンの排気ガス中には、環境に悪影響を与えるとされる、煤等の粒子状物質(以下、PMという)や、一酸化窒素や二酸化窒素といった窒素酸化物(以下、NOxという)が多く含まれており、それらの低減が強く望まれている。
このうちPMは、粒径が100μmを超える粒子状物質から10μm以下の浮遊粒子状物質まで様々の大きさのものがある。このようなPMは、排気ガスの排出路に処理装置を設置して除去する方法が一般的であり、網目で捕集して除去するフィルタ装置(以下、DPFという)や、白金などの触媒の酸化作用で化学的に除去する装置が実用化されている。
上述したDPFには、例えばセラミックや金属からなる多孔質体が使用され、このような多孔質体は三次元的に微細な網目構造を有することが多い。この微細な網目を排気ガスが通過する際に、排気ガス中に含まれる網目よりも大きいPMが網目に引っ掛けられて捕集される。
例えばDPF用途としては、特開2001−334154号公報(特許文献1)のセラミックハニカム構造体や、特開2003−97253号公報(特許文献2)の多孔質金属複合体などが提案されている。これらの多孔質体においては、その網目の開口は実質的に5〜120μm程度に形成され、この小さな網目を用いて排気ガス中のPMを捕集することができる構成となっている。
また、特許文献2には、焼結層を形成する際、基材の表面から焼結層の表面に向かって相対的に平均粒度が小さくなるように粉末を配することにより、つまり、焼結層の表層に微粉を配することによって通過する排気ガス量を減じることのない微細開口を得やすいと記載されている。
特開2001−334154号公報 特開2003−97253号公報
例えば従来のDPFでは、上述した特許文献1、2に開示されるように、排気ガス中に含まれるPMを実質的に5〜120μm程度の微細な網目を形成したフィルタ部材で捕集していた。このために、PMを捕集しつづけていると次第に網目が閉塞してしまい、やがてフィルタ部材を通過する排気ガス量が減じたり、排気ガスが通過しなくなるといった不具合があった。
このような不具合を解決するために、上述した特許文献2では、フィルタ部材によって捕集したPMを、例えばヒータ加熱により燃焼して除去する手段を開示している。また、この他の手段としては、火炎による燃焼除去、プラズマを用いた燃焼除去や化学反応による除去などが知られている。
しかしながら、エンジンの始動時や低速回転時には排気ガス中に多量のPMが含まれているため、短時間に多量のPMがフィルタで捕集されることとなる。例えば上述したヒータ加熱の手段を用いたDPFであっても、特にエンジンの始動時からしばらくはフィルタ部材自体の温度がPMを燃焼できる高温域に達するまでに時間を要し、捕集したPMの除去処理が間に合わなくなる場合があった。また、PMの除去処理が正常に行われない状態では通過する排気ガス量が減じてしまい、つまり圧力損失を生じることとなり、場合によってはフィルタ部材が閉塞し、排気ガスの排出に支障をきたすことがあった。
本発明の目的は、上述の問題点を解決し、例えば自動車等のディーゼルエンジンの排気ガスに含まれるPMを除去するにおいて、フィルタ部材の閉塞を防止しつつ通過する排気ガスの圧力損失を低減し得るフィルタ部材およびその製造方法を提供することである。
本発明者は、上述の問題点を鑑み、排気ガス中のPMをフィルタ部材で捕集するという従来の技術思想ではなく、排気ガス中のPMを接触させるための障害物となる突起状のものをフィルタ部材の表面に形成し、この突起状のものに対してPMを接触させることによってPMがフィルタ部材を通過する時間を遅延させ、これによりフィルタ部材の閉塞を防止しつつ通過する排気ガスの圧力損失を低減できることを見出し本発明に想到した。
すなわち本発明は、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材と、前記網目の周りに形成された金属微粉末からなる焼結層と、該焼結層によって囲まれる開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部と、前記金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末と、を具備し、前記金属粗粉末は、前記焼結層の表面に分散して付着し、前記開口部の開口空間に突出するように構成されているフィルタ部材である。
本発明において望ましくは、開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末が突出していることである。
また、本発明のフィルタ部材は、排気ガス浄化装置(DPF)に使用することができる。
本発明のフィルタ部材は、分散媒と、平均粒径3.0〜15.0の金属微粉末と、バインダとを含むスラリーを、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材の周りに塗布し、前記基材の周りに塗布したスラリーが乾燥する前に、前記スラリーの表面に平均粒径20〜300μmの金属粗粉末を分散して付着させ、前記基材の周りに塗布したスラリーを乾燥させて前駆体を得て、次いで、得られた該前駆体を加熱して前記バインダを除去し、前記金属微粉末を加熱して焼結させて開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部を有する焼結層を形成するとともに、前記焼結によって前記金属粗粉末を前記焼結層に固着させて前記開口部の開口空間に突出させる製造方法によって製造することができる。
本発明のフィルタ部材の製造方法において望ましくは、開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末を突出させることである。
また、本発明において、分散媒として水を使用し、バインダとして前記水に不溶性の熱可塑性樹脂粉末からなるエマルジョンを使用することができる。
あるいはまた、本発明において、分散媒として水を使用し、バインダとして前記水に可溶性のポリビニルアルコールを使用することができる。
上記分散媒としての水とは、純水、超純水、酸性水、アルカリ水、飲料用上水など、これらの総称をいう。
本発明のフィルタ部材は、焼結層によって囲まれた開口部、つまりフィルタの網目となる開口空間に金属粗粉末を突出させて突起状としているため、排気ガス中に存在するPMが突起状に突出した金属粗粉末に接触することにより、一旦捕獲されて、また離脱することにより、フィルタ部材を通過するPMの通過時間を遅延させることができる。
このようにPMの通過時間を遅延させるフィルタ部材を用いてDPFを構成することにより、上述した従来のヒータ加熱、火炎、あるいはプラズマといった手段であっても、本発明のフィルタ部材によってもたらされる遅延時間内に排気ガス中からのPMの除去が可能となる。
本発明のフィルタ部材における重要な特徴は、金属微粉末からなる焼結層の表面に金属粗粉末を分散して付着させ、焼結層によって囲まれた開口部、つまりフィルタの網目となる開口空間に金属粗粉末を突出させた構成としたことである。
排気ガス中のPMは、開口部に突出した、あるいは焼結層の表面に付着した、突起状のもの、つまり金属粗粉末に接触することにより、フィルタ部材の通過時間が遅延される。
このような作用効果を有する本発明のフィルタ部材を、例えば自動車等のディーゼルエンジン用のDPFに使用することにより、DPF内を通過するPMの通過時間が遅延される間に、ヒータ加熱や火炎によりPMを燃焼させる手段や、プラズマによりPMを燃焼または化学反応させる手段による排気ガス中のPMの除去を効率良く実施することが可能となる。また、従来のフィルタ部材のようにPMを捕集することもできるけれども、フィルタ部材の開口部である網目が目詰まりしてしまうほど過剰に捕集することがなくなる。このため、フィルタ部材を通過する排気ガスの圧力損失を引き起こすことも防止される。
本発明のフィルタ部材は、上述したように太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目をもつ基材を有する。フィルタ部材の基材に金属素線を用いるのは、フィルタ部材自体に十分な機械強度を付与するためである。これにより、例えば本発明のフィルタ部材を自動車用のDPFに使用した場合でも、走行中の振動や衝撃に耐えることができ、あるいは高温の排気ガスに曝される環境に耐えることができる。
また、金属素線を使用することにより、基材に通電することが可能となるため、上述したヒータ加熱やプラズマ発生の実用化が容易となる。また、金属素線は塑性変形させることが容易であって、フィルタ部材を、例えばコルゲートなどの波板形状や、円弧形状や、任意の曲線形状等に変形して加工することが可能となる。
また、上記金属素線は、その断面が、例えば略円形、略楕円形、略角形等であって、いずれにおいても太さ0.05〜0.5mmとする。このような太さの金属素線を使用することにより、フィルタ部材において形成する開口部すなわち網目の総個数を増やしつつ開口面積を確保することができる。なお、ここでいう太さとは、金属素線の断面が、例えば略円形であれば平均線径を意図し、略楕円形や略角形であれば最も幅広と考えられる個所の幅を意図するものである。
本発明においては、上記基材における網目の周りには、金属微粉末からなる焼結層が形成される。金属素線からなる基材の表面に直接、金属粗粉末を突起状に突出させて固着させることは難しい場合が多い。
そこで、本発明では、基材の金属素線と金属粗粉末とを確実に固着させるために上記焼結層を設け、焼結層の形成には金属微粉末を使用している。金属微粉末は焼結性が高いために基材を構成する金属素線との接合が容易であり、基材の表面に対して金属微粉末からなる焼結層を密着して形成することができる。
一方、焼結層を形成する際に、金属粗粉末と金属微粉末とは、金属粉末同士の焼結という手段で確実に固着して形成することができる。これにより、金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末が、焼結層の表面に分散して付着し、焼結層によって囲まれる開口部の開口空間に突出するような構成が可能となる。
また、金属微粉末を用いることによって焼結層を緻密に形成できるため、焼結層は高い機械強度を有することができる。また、金属微粉末からなる焼結層であるため、セラミック粉末からなる焼結層に比べて靭性が優れて塑性変形させることが容易となる。このためフィルタ部材を、例えばコルゲートなどの波板形状や、円弧形状や、任意の曲線形状等に変形して加工することが可能となる。このような金属微粉末の粒径としては平均粒径3.0〜15.0μmであることが望ましい。
また、上述した焼結層によって形成された開口部は、焼結層の骨格の断面積を十分に小さく形成することができ、焼結層の骨格の断面積を小さく形成することにより、その分だけ、焼結層の骨格に囲まれて形成される開口部の開口面積をより大きく形成できる。あるいは、焼結層の骨格の断面積を小さく形成できることから、より小さい網目を有する基材を選定することにより、開口部の開口面積を大きくするのではなく、開口部の個数自体を増やすことが可能となる。
また、上記焼結層によって囲まれる複数の開口部の開口面積は0.04〜4.0mmに形成される。この開口面積は、例えば、正方形形状の開口部を形成した場合には正方形の一辺を0.2〜2.0mmに形成すればよい。PMの通過時間を遅延させるためには、比較的小さな開口面積であることが有効と考えられる。しかしながら、排気ガスに含まれる未燃焼の燃料や水分によって湿気をおびたPMが開口部の周囲に付着しやすくなって、排気ガスの透過抵抗が高くなってしまったり、開口部が目詰まりして閉塞を生じてしまったりといった不具合を生じることがある。一方、比較的大きな開口面積であるならば上述の不具合は生じ難くなるものの、PMが開口部の周囲に接触し難くなってPMの通過時間を遅延させ難いことがある。
このようなことから、本発明においては、開口部の開口面積を0.04〜4.0mmに形成することとする。これにより、従来金属微粉末が有していたPMの捕獲性能を得られるばかりか、本発明の金属粗粉末が有するPMを接触させてPMの通過時間を遅延させるという性能をも得ることができる。ただし、開口面積を0.04mm未満に形成すると、PMは金属粗粉末に接触して捕獲されやすいものの、捕獲されたままPMが離脱できなくなることがあり、この状態のままPMを捕集しつづけると、やがて上述したようにフィルタ部材が閉塞してしまうことがある。また、開口面積を4.0mmを超えて形成すると、排気ガス中のPMが開口空間に突出させた金属粗粉末に接触することなく開口空間を通過してしまうことがあり、上述したようにフィルタ部材を通過するPMの通過時間を遅延できないこととなる。
本発明において、上述したように金属微粉末と一体に固着された金属粗粉末は、金属微粉末からなる焼結層の表面から突出して固着されている。具体的には、焼結層によって囲まれた開口部の開口空間に突出する金属粗粉末は、焼結層の表面に分散して付着して形成された場合には、焼結層に近い側にネック状のくびれを有して焼結層に固着して形成される。また、焼結層の表面に幾つかの金属粗粉末が重なり合うように付着して形成された場合には、突起状や塊状の形状を有して焼結層に固着して形成される。
また、金属粗粉末によって形成される焼結層から突出した突起部については、その突出高さと、高さ方向と直行する方向の突出幅とのアスペクト比(突出高さ/突出幅)が、少なくとも0.5〜3.0となる突起部が形成させていることが望ましい。これにより、金属粗粉末によって形成された突出部に排気ガス中のPMを接触させやすくなって、PMがフィルタ部材を通過する時間をより遅延させることができる。
また、本発明においては、開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末が突出していることが望ましい。このように金属粗粉末を開口部の開口空間に突出させることにより、各々の開口部において、PMが金属粗粉末と衝突したり接触したりする機会が増えると推測され、PMが開口部を通過する通過時間をより確実に遅延させることができる。
本発明のフィルタ部材は、上述したようにフィルタの網目となる開口部に設けた金属粗粉末に対して、開口部を通過しようとするPMが衝突したり接触したりすることによってPMの通過時間を遅延させることができる。よって、本発明のフィルタ部材を、例えば自動車等のディーゼルエンジン用のDPFすなわち排気ガス浄化装置に適用することにより、優れたPM除去特性を有する排気ガス浄化装置を実現することができる。
上述した本発明のフィルタ部材は、例えば、分散媒と、平均粒径3.0〜15.0μmの金属微粉末と、バインダとを含むスラリーを、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材の周りに塗布した後に、前記基材の周りに塗布したスラリーが乾燥する前に、前記スラリーの表面に平均粒径3.0〜15.0μmの金属粗粉末を分散して付着させた後に、前記基材の周りに塗布したスラリーを乾燥させて前駆体を得て、次いで、得られた該前駆体を加熱して前記バインダを除去し、前記金属微粉末を加熱して焼結させることによって開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部を有する焼結層を形成するとともに、前記焼結によって前記金属粗粉末を前記焼結層に固着させて前記開口部の開口空間に突出させる、といった製造方法によって製造することができる。
また、上述の製造方法によれば、開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末を突出させることができる。
以下、本発明のフィルタ部材の製造方法の一例を、製造工程に沿って説明する。
まず、分散媒と、金属微粉末と、バインダとを含むスラリーを製造する。スラリーとは、液体である分散媒に微細な固体を分散させた懸濁液のことで、一般にポンプ移送できる程度の流動性を有する混合体の呼称である。スラリーは、分散媒に対して、所望の金属微粉末とバインダとを所定量だけ混合し、金属微粉末がほぼ均一に分散するように十分に攪拌することにより得ることができる。
また、スラリーに用いる分散媒としては、純水、超純水、酸性水、アルカリ水、飲料用上水などの水や、アルコール、水とアルコールとを含む混合液、あるいは油系溶液などから所望に応じて使用することができる。
金属微粉末としては、例えば、SUS310S等のステンレス鋼、ニッケル基等の超耐熱合金、あるいは純チタンやチタン合金などの金属粉末を使用できる。また、これら金属微粉末の平均粒径は、例えば10μm以下、5μm以下、3μm以下と微細になるほど焼結後の骨格を緻密に形成できる。また、上述したように焼結する前の金属粉末層の表面を滑らかに形成できるので金属粗粉末を金属微粉末に対して密接に付着させることができる。また、基材を構成する金属素線との密着性を向上させることができる。望ましくは平均粒径1μm以上の金属微粉末が入手しやすく取り扱いも容易である。
また、バインダとしては、スラリーに用いる分散媒に不溶性の熱可塑性樹脂粉末を使用することができる。熱可塑性樹脂粉末は、分散媒に混在し、スラリーから分散媒を蒸発させたときに樹脂粉末同士が融着し、分散媒に対して不溶性の融着層を形成する。そして、この融着層を用いて金属微粉末を相互に架橋させることができ、すなわち金属微粉末を相互に結合させることができるバインダとなる。
また、分散媒に不溶性の熱可塑性樹脂粉末を使用することにより、上記スラリーの塗布を複数回繰り返して行うことができて、金属微粉末によって成る骨格の断面積を大きく形成することが可能となり、骨格の機械強度を向上させることができる。これは、先に塗布したスラリーの乾燥後には基材の周りに上述した融着層が形成されるためであり、この融着層に対してさらに上記スラリーを塗布したとしても、先に形成された融着層は分散媒に対して不溶性であって、先の融着層が溶け出して剥がれ落ちることがない。つまり、本発明のフィルタ部材を製造するにおいて、バインダとして分散媒に対して不溶性の熱可塑性樹脂粉末を用いることによりスラリーを多層に形成することができ、最後に塗布したスラリーの層が乾燥する前に、その表面に金属粗粉末を分散して付着させることができる。
このような熱可塑性樹脂粉末としては、例えば、アクリル酸エステル共重合体や酢酸ビニール重合体、酢酸ビニールとアクリル酸エステルの共重合体、スチレンとアクリル酸エステルの共重合体等の単体、またはこれらを組合せた樹脂粉末や、また、アクリル樹脂粉末等を水に分散させたエマルジョンが使用できる。上述したこれらの熱可塑性樹脂粉末は、水やアルコールに不溶性を呈するので、分散媒としては、例えば純水や超純水、アルコールなどを使用することが望ましい。また、熱可塑性樹脂粉末は、一般に平均粒径が小さいほど融着層を形成させやすく、平均粒径として望ましくは5μm以下、より望ましくは1μm以下である。
また、上記とは別のバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアチレングリコール(PEG)、メチルセルロース等のセルロースエーテルなどが使用できる。上述したこれらの材料は、水やアルコールに可溶性を呈するので、分散媒としては、例えば純水や超純水、アルコールなどを使用することが望ましい。分散媒に溶け込んだこれらの材料は、スラリーから分散媒を蒸発させたときに金属微粉末を相互に架橋させることができ、すなわち金属微粉末を相互に結合させることができるバインダとなる。
また、上述の熱可塑性樹脂粉末を用いる場合よりも金属微粉末によって成る骨格の断面積を大きく形成することは難しいものの、安価であること、スラリーの取り扱いが容易であることなど、製造コストや生産性については熱可塑性樹脂粉末を用いるよりも有利である。
次いで、上記金属微粉末とバインダとを含むスラリーを、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材の周りに所望する厚さに塗布する。具体的には、基材を上記スラリーに浸漬させる、あるいは基材に上記スラリーを直接スプレー塗布する等によればよい。このとき余分に付着したスラリーは、エアや気体をブローする等の除去手段によって除去することができる。
次に、塗布したスラリーが乾燥する前に、スラリーの表面に金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末を分散して付着させる。具体的には20〜300μmの粒径が望ましく、例えば30μmや60μm、あるいは150μmといった、上述した金属微粉末よりも大粒径で比較的入手しやすい金属粗粉末を使用できる。
また、金属粗粉末は、焼結可能であればどのような材質でも構わない。例えば、Fe、Ni、Al、Cu、Ti等の金属やこれらからなる合金を使用できる。SUS310SやSUS316L等、耐熱性や耐酸化性に優れるステンレス鋼の使用も望ましい。また、環境負荷等の問題はあるもののCrを含むNi−Cr系やNi−Cr−Al系の合金粉末も使用できる。また例えば、ディーゼルエンジンの排ガス処理用途では、耐熱性や耐酸化性を考慮し、質量%でNiが19.0%以上、Crが24.0%以上含有されるSUS310S等のオーステナイト系ステンレス鋼を使用することが望ましい。
この後に、塗布したスラリーを乾燥させて金属粗粉末がその表面に分散して付着した前駆体を得る。具体的には、例えば40〜100℃の温風雰囲気内でワレや剥離を生じないように乾燥させて塗布したスラリーから分散媒を蒸発させる。このとき、バインダが基材における網目の周りに金属微粉末を相互に架橋して骨格を形成することとなる。
次いで、得られた上記前駆体を加熱してバインダを除去し、金属微粉末を加熱して焼結させることによって、開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部を有する焼結層を形成する。そして、この焼結により、金属微粉末からなる焼結層を形成させるとともに、表面に付着する金属粗粉末を焼結層の表面に固着させることにより、焼結層と金属粗粉末とを一体に形成する。
バインダを除去する手段としては、例えば焼結炉を用い、金属微粉末の焼結に含めて実施すればよい。このような金属微粉末の焼結手段としては、例えば、真空または不活性ガス雰囲気中の焼結炉内に前駆体を静置して昇温し、まずバインダを気化あるいは分解して除去する。そして、この後に焼結温度に昇温し、金属微紛末を焼結させる手段とすることができる。また、昇温速度や保持温度等の諸条件は、前駆体の骨格に割れや剥離を生じることのない条件を選定すればよい。
以上の製造手段によって、本発明のフィルタ部材、すなわち、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材と、前記網目の周りに形成された金属微粉末からなる焼結層と、該焼結層によって囲まれる開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部と、前記焼結層の表面に分散して付着し、前記開口部の開口空間に突出する前記金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末とによって構成されているフィルタ部材を得ることができる。
本発明のフィルタ部材の部分拡大図(拡大率30倍)を図1に示す。このフィルタ部材1は、以下の製造方法によって製造した。
まず、フィルタ部材1の略形状を有する基材と、この基板の周りに焼結層3を形成するためのスラリーを準備した。基材の一例について、その部分拡大図(拡大率30倍)を図2に示す。
基材10は、縦110mm、横110mm、最大厚さ0.49mmの略正方形の平板状形状とし、SUS310Sからなる太さ0.25mmの金属素線11を平織することによって形成された金網(阪倉金網製の40メッシュ)を購入して使用した。また、この基材10に備わる複数の網目12は縦0.39mm、横0.39mmの略正方形形状の開口となっている。
上記基材10に対して塗布するスラリーは、分散媒として超純水を、金属微粉末としてSUS310Sからなる平均粒径7μmの金属粉末を、バインダとして超純水に不溶性のLDM7512(ニチゴー・モビニール株式会社製、樹脂固形分50%)を使用した。なお、LDM7512は、熱可塑性樹脂粉末であり、平均粒径0.25μmのアクリル酸エステル共重合体を分散させたエマルジョン液である。
各々の配合比率を質量%で超純水7%、金属微粉末71%、バインダ21%とし、容器内に投入し、十分に混合して攪拌し、金属微粉末がほぼ均一に分散するようにした状態でスラリーとして用いた。
次に、基材10に対して、準備したスラリーを塗布した。これはスラリーを入れた容器内に基材10を浸漬し、基材10の金属素線11の周りにスラリーを十分に付着させることによって行った。次いで、スラリーを塗布した基材10を作業台上に静置し、基材10に余剰に付着したスラリーを自然に落下させて除去した。本実施例1においては、スラリーを再塗布して基材10の周りに形成する骨格を多層に形成することもできるが、骨格の機械強度は十分と考え、形成する骨格を1層とした。
この後、静置した状態の基材10の上方略200mmの高さから金属粗粉末2を均一に分散するようにふるい落し、塗布したスラリーの表面において金属粗粉末2をほぼ均一に分散して付着させた。
次いで、塗布したスラリーに金属粗粉末2を付着させた基材10を、槽内温度80℃の温風循環式乾燥機内に20分間静置して超純水を蒸発させた。このようにスラリーを乾燥し、アクリル酸エステル共重合体粉末を融着させてバインダとなる融着層を形成させて、この融着層を金属微粉末の相互に架橋させた。これにより、金属素線11の周りに、後に焼結層3を形成するための健全な生地が形成された前駆体を得ることができた。
得られた前駆体を、水素ガス雰囲気中の焼結炉内に静置し、昇温速度60℃/hで600℃に昇温して加熱し、2h保持し、金属微粉末を架橋しているアクリル酸エステル共重合体からなる粘着層を気化あるいは分解して除去した。そして引き続き、真空雰囲気中の焼結炉を使用し、昇温速度150℃/hで1250℃に昇温して加熱し、2h保持し、金属微粉末を焼結させて焼結層3を形成し。また、この焼結により、金属微粉末からなる生地と金属粗粉末とを固着させることができた。
上述した製造方法により、図1に示すフィルタ部材1を得ることができた。図1に示すフィルタ部材1には、顕微鏡による拡大視野内において、焼結層3の表面に固着された複数の金属粗粉末2や、焼結層3によって囲まれた開口部4の開口空間に突出する複数の金属粗粉末2が確認できた。また、金属粗粉末2の粒径が25〜120μmのものを確認できた。また、焼結層3からなる骨格によって囲まれた複数の開口部4が形成され、それら開口部4の開口面積が0.04〜0.12mmのものを確認できた。
また、各々の開口部4の開口空間には少なくとも1個以上の金属粗粉末2が突出した突出部が形成されており、開口部4によってその個数は異なるものの金属粗粉末2からなる1〜20個程度の突出部を確認できた。また、これら突出部は、その突出高さが10〜200μm、高さ方向と直行する方向の突出幅が20〜150μmに形成されていた。このことから、突出部が少なくとも0.5〜3.0のアスペクト比(突出高さ/突出幅)を有していることを確認できた。
また、開口部4の開口空間に突出する突出部5の中には、焼結層3に近い側がネック状のくびれを有して形成されているものを確認できた。また、幾つかの金属粗粉末2が重なり合って突起状や塊状の形状を有して形成されている突起部も確認できた。
このように複数の開口部4を有し、焼結層3の表面や開口部4の開口空間には多くの金属粗粉末2が突出している構成のフィルタ部材1であることから、例えばフィルタ部材1をDPFに使用した場合、排気ガス中のPMを、突出する金属粗粉末2に接触させることができるため、これによりフィルタ部材1を通過するPMの通過時間を遅延させることができるものとなった。
また、焼結層3は、基材10の表面に密着かつ緻密に焼結されて形成されていることが確認できた。また、このフィルタ部材1を波板形状に曲げて変形させたが、基材10が破断することもなく、焼結層3が割れたり剥がれ落ちたりすることもなかった。また、金属粗粉末2の脱落は認められたものの極めて軽微であって、本発明のフィルタ部材としての作用効果を損ねるものではなかったことから、フィルタ部材1は、これを変形して加工するために十分な機械強度を有することが確認できた。
本発明のフィルタ部材1との比較のために、基材10に塗布したスラリーの表面に金属粗粉末2を付着させることなしに上述とは別の前駆体を形成し、この金属粗粉末2を有さない前駆体から上述と同様な手段によってバインダを除去し、この後に金属微粉末を焼結させて焼結層3’を形成した。この焼結層3’の一例について、その部分拡大図(拡大率30倍)を図3に示す。
この焼結層3’は、基材の表面に密着して緻密に焼結されて形成されていた。また、焼結層3’によって囲まれた開口部4’の開口空間の周囲には突起状に突出して形成されたものは認められなかった。このフィルタ部材を例えばDPFに使用した場合、開口部4’の開口面積を小さく形成することで排気ガス中のPMの捕集が可能となり、また、開口面積を大きく形成したとしても開口部の周囲にPMが接触することもあり、従来のフィルタ部材と同等の性能を得ることができる。
しかしながら、開口部4’には、その開口空間に突出する突出部を有さないため、上述した本発明のフィルタ部材1と比較すると、PMの通過時間を遅延させる性能が劣ることとなり、フィルタ部材を通過するPMの通過時間を十分に遅延させることができないことが推測できた。
本発明の製造方法によって得た、上述した実施例1とは別のフィルタ部材の部分拡大図(拡大率30倍)を図4に示す。このフィルタ部材21は、以下の製造方法によって製造した。
まず、フィルタ部材21の略形状を有する基材(以下、図示していないが基材20という)と、この基板の周りに焼結層23を形成するためのスラリーを準備した。基材20は、縦110mm、横110mm、最大厚さ0.42mmの略正方形の平板状形状とし、SUS310Sからなる太さ0.21mmの金属素線を平織することによって形成された金網(阪倉金網製の45メッシュ)を購入して使用した。また、この基材20に備わる複数の網目は縦0.35mm、横0.35mmの略正方形形状の開口となっている。
上記基材20に対して塗布するスラリーは、分散媒として超純水を、金属微粉末としてはSUS310Sからなる平均粒径7μmの金属粉末を使用し、バインダとしては分散媒である超純水に対して水溶性のポリビニルアルコール(PVA)の10%水溶液を作製して使用した。そして、金属粉末100重量部に対してバインダ40重量部を容器内に投入し、十分に混合して攪拌し、金属粉末がほぼ均一に分散するようにした状態でスラリーとして用いた。
次に、基材20に対して、準備したスラリーを塗布した。具体的には、0.4MPaの圧縮空気を供給したアネストイワタ製の塗料用スプレー(W−100)を用いて、基材20から略400mm離間した位置から移動速度200mm/sでスラリーを噴霧して塗布し、これによって基材20の表裏両面に対してスラリーを分散して付着させた。本実施例2においては、基材20の周りには1層の骨格を形成した。なお、本実施例2においてここまで同様に製作した別の基材に対して、さらにスラリーを再塗布したところ、先に形成した骨格が溶け出して剥がれ落ちる個所が認められた。
この後、スラリーを塗布した上記基材20に対し、公称目開き212μmの篩を使用して上方略300mmの高さから、平均粒径60μmのSUS310Sから成る金属粗粉末22を均一に分散するようにふるい落し、塗布したスラリーの表面において金属粗粉末22をほぼ均一に分散して付着させた。
次いで、塗布したスラリーに金属粗粉末22を付着させた基材20を室温環境内に静置して超純水を蒸発させた。このようにスラリーを乾燥し、ポリビニルアルコール(PVA)を金属微粉末の相互に架橋させた。これにより、金属素線からなる複数の網目を有する基材20の周りに、後に焼結層23を形成するための健全な生地が形成された前駆体を得ることができた。
得られた前駆体を、水素ガス雰囲気中の焼結炉内に静置し、略80℃/hの昇温速度で600℃に昇温して加熱し、1h保持し、金属微粉末を架橋しているポリビニルアルコール(PVA)を気化あるいは分解して除去した。そして引き続き、Arガスを供給して100〜300Paの間に制御した減圧雰囲気中の焼結炉を使用し、略150℃/hの昇温速度で1250℃に昇温して加熱し、2h保持し、金属微粉末を焼結させて焼結層23を形成した。また、この焼結により、金属微粉末からなる生地と金属粗粉末とを固着させることができた。
上述した製造方法により、図4に示すフィルタ部材21を得ることができた。図4に示すフィルタ部材21には、顕微鏡による拡大視野内において、焼結層23の表面に固着された複数の金属粗粉末22や、焼結層23によって囲まれた開口部24の開口空間に突出する複数の金属粗粉末22が確認できた。また、金属粗粉末22の粒径が25〜120μmのものを確認できた。また、焼結層23からなる骨格によって囲まれた複数の開口部24が形成され、それら開口部24の開口面積が0.04〜0.12mmのものを確認できた。
また、各々の開口部24の開口空間には少なくとも1個以上の金属粗粉末22が突出した突出部が形成されており、いくつかの開口部24では金属粗粉末22からなる1〜20個の突出部を確認できた。また、これら突出部は、その突出高さが10〜200μm、高さ方向と直行する方向の突出幅が20〜150μmに形成されていた。このことから、突出部が少なくとも0.5〜3.0のアスペクト比(突出高さ/突出幅)を有していることを確認できた。
また、開口部24の開口空間に突出する突出部25の中には、焼結層23に近い側がネック状のくびれを有して形成されているものを確認できた。また、幾つかの金属粗粉末22が重なり合って突起状や塊状の形状を有して形成されている突起部も確認できた。
このように複数の開口部24を有し、焼結層23の表面や開口部24の開口空間には多くの金属粗粉末22が突出している構成のフィルタ部材21であることから、例えばフィルタ部材21をDPFに使用した場合、上述の実施例1のフィルタ部材1と同様に、排気ガス中のPMを、突出する金属粗粉末22に接触させることができるため、これによりフィルタ部材21を通過するPMの通過時間を遅延させることができるものとなった。
また、焼結層23は、基材20の表面に密着かつ緻密に焼結されて形成されていることが確認できた。また、このフィルタ部材21を波板形状に曲げて変形させたが、基材20が破断することもなく、焼結層23が割れたり剥がれ落ちたりすることもなかった。また、金属粗粉末22の脱落は認められたものの極めて軽微であって、本発明のフィルタ部材としての作用効果を損ねるものではなかったことから、フィルタ部材21は、上述の実施例1のフィルタ部材1と同様に、これを変形して加工するために十分な機械強度を有することが確認できた。
本発明のフィルタ部材の一例における部分拡大図(写真)である。 本発明において使用する基材の一例における部分拡大図(写真)である。 金属微粉末からなる焼結層の一例における部分拡大図(写真)である。 本発明のフィルタ部材の別の一例における部分拡大図(写真)である。
符号の説明
1.フィルタ部材、2.金属粗粉末、3.焼結層、3’.焼結層、4.開口部、4’.開口部、10.基材、11.金属素線、12.網目、20.基材、21.フィルタ部材、22.金属粗粉末、23.焼結層、24.開口部

Claims (7)

  1. 太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材と、前記網目の周りに形成された金属微粉末からなる焼結層と、該焼結層によって囲まれる開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部と、前記金属微粉末よりも大粒径の金属粗粉末と、を具備し、前記金属粗粉末は、前記焼結層の表面に分散して付着し、前記開口部の開口空間に突出するように構成されていることを特徴とするフィルタ部材。
  2. 開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末が突出していることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ部材。
  3. 排気ガス浄化装置に使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ部材。
  4. 分散媒と、平均粒径3.0〜15.0の金属微粉末と、バインダとを含むスラリーを、太さ0.05〜0.5mmの金属素線からなる複数の網目を有する基材の周りに塗布し、前記基材の周りに塗布したスラリーが乾燥する前に、前記スラリーの表面に平均粒径20〜300μmの金属粗粉末を分散して付着させ、前記基材の周りに塗布したスラリーを乾燥させて前駆体を得て、次いで、得られた該前駆体を加熱して前記バインダを除去し、前記金属微粉末を加熱して焼結させて開口面積0.04〜4.0mmの複数の開口部を有する焼結層を形成するとともに、前記焼結によって前記金属粗粉末を前記焼結層に固着させて前記開口部の開口空間に突出させることを特徴とするフィルタ部材の製造方法。
  5. 開口部の開口空間には20〜300μmの粒径を有する金属粗粉末を突出させることを特徴とする請求項4に記載のフィルタ部材の製造方法。
  6. 分散媒として水を使用し、バインダとして前記水に不溶性の熱可塑性樹脂粉末からなるエマルジョンを使用することを特徴とする請求項4または5に記載のフィルタ部材の製造方法。
  7. 分散媒として水を使用し、バインダとして前記水に可溶性のポリビニルアルコールを使用することを特徴とする請求項4または5に記載のフィルタ部材の製造方法。
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