JP4606562B2 - アセテート繊維用処理剤及び該処理剤が付与されたアセテート繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィラメント糸を緯糸としてエアージェットルームで製織する際に好適なアセテート繊維用処理剤及びその処理剤が付与されたアセテート繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
エアージェットルーム(以下、AJLと略記する)は、ウォータージェットルーム(以下、WJLと略記する)と並ぶ高生産性の織機であり、アセテート繊維やレーヨン等の湿潤性能の低下するセルロース系フィラメント糸に対して、WJLよりも適性が高いことから広く使用されている。
【0003】
一般にセルロース系フィラメント糸をAJLで製織する場合、経糸については従来通りサイジング処理するのが普通であり、乾燥状態での製織であることから、通常の有杼織機での製織と比較しても特に問題はないが、緯糸については搬送方式がエアージェットによる特殊な方式であることから、通常の生産糸をそのまま用いた場合には、織機の稼働率の低下或いは織物品質の低下をきたすという問題がある。
【0004】
かかる稼働率低下、品質低下は、緯糸が搬送流体であるエアージェットに乗り難く、必要な速度で緯入れができない、或いは単糸切れが発生する等によって起こるが、このような問題は、エアージェットが拡散性であり非拡散性のウォータージェットと比較して搬送力が弱いことから、緯糸の形態及びその長さ方向のばらつきによって搬送力が影響を受け変動することが原因で発生する。このようにAJLにおいて、エアージェットによる緯糸の搬送性能は、一般に飛走性と称され、飛走性はAJLでの緯糸のみに要求される特殊な性能である。したがい、AJLに適性の高い緯糸とは、良好な飛走性、即ち低いエアー圧で、かつ一定の圧力で安定に緯打ちの可能な糸であると言える。特にAJLでの高生産性を追求していく上では、緯糸の飛走性の改良が最も大きな課題の一つである。
【0005】
WJLにおける搬送性能の改良は、特開昭56−73169号公報や特開昭62−42070号公報に示されるように、種々提案されているが、前述のような特殊性能を必要とするAJLについては、その飛走性についての改良について充分に開示がなされてはいない。また、油剤については、特開平6−31904号公報に示されるように脂肪族エステル系平滑剤等による紡糸の際の糸切れ、毛羽立ち等の不良に対する改良の提案がなされているが、AJLでの飛走性についてまでは提案されておらず、AJLで適用される油剤について、特開平5−12463号公報にて提案がなされているにすぎない。
【0006】
しかしながら、この提案による炭素数の小さい鉱物油を主成分とした処理剤は、飛走性の向上には寄与するが、処理剤付与糸のチーズ捲き取り時を含めて製織工程までの経過時の間に、一部残存するアセトンの揮発と共に特にチーズの表層部分の低粘度鉱物油成分の一部若しくはかなりの部分が揮発し、本来の処理剤組成と異なる処理剤が糸上に付着してしまうという結果となる。このようにチーズ内外層における処理剤の付着量及び組成が異なってくるため、チーズ内外層で糸に摩擦抵抗変動が生じ、チーズ内外層でAJLでの糸の飛走性が異なってくる。このチーズ内外層での飛走性の違いの発生は、緯糸打ち込みのエアー圧の経時的な調整が必要であったり、織機の停台や製品の欠点の増加の原因となる。特に近年AJLの性能が向上し、従来の織機回転数を大きく上回る回転数で運転が可能となっているが、これらに十分対応可能であるような繊維処理剤が強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、AJLにおけるより向上した織機性能に対応し、かつAJLによる製織の際にAJLでのエアー圧力範囲、即ちワークレンジが広く、飛走性を大幅に向上させることが可能なアセテート繊維用処理剤を提供することにあり、またその処理剤が付与されたアセテート繊維を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、30℃における粘度が8.0〜12.0cStで、炭素数15〜28の流動パラフィン(成分1)30〜60重量%、30℃における粘度が6.0〜15.0cStの脂肪酸エステル(成分2)30〜60重量%、アルコールエチレンオキサイド付加物の末端水酸基をカルボン酸で封鎖した化合物(成分3)5〜15重量%及びアルキルリン酸エステルアミン塩(成分4)5〜10重量%を含有するアセテート繊維用処理剤、及び、該処理剤が0.8〜1.3重量%付与されたAJL緯糸用のアセテート繊維、にある。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の処理剤の構成成分である成分1の流動パラフィンは、実質上芳香族系化合物を含有しないハイグレードの流動パラフィンであり、さらにその粘度範囲、炭素数分布等がAJL製織性と密接に関係することから、30℃における粘度が8.0〜12.0cStの範囲で、炭素数が15〜28、特に炭素数が17〜20の流動パラフィンであることが好ましい。かかる粘度範囲と炭素数を特定することで、処理剤の中粘度による低揮発性と付着性の向上を計り、処理剤を付与した糸を捲き取ったときのチーズ、コーン等糸巻体の内外層での糸の摩擦抵抗変動を抑制する。しかるに炭素数が15未満では、粘度が低くなり揮発性が高くなるため、糸巻体の外層部で飛走性が低下し、内外層で飛走性の差が大きくなる傾向にあり、炭素数が28を超えると、粘度が高くなり飛走性が低下する。成分1の流動パラフィンは、処理剤の構成成分全体の30〜60重量%、好ましくは45〜55重量%含有させる。
【0010】
成分2の脂肪酸エステルは、30℃における粘度が6.0〜15.0cStの脂肪酸エステルであり、この脂肪酸エステルは、糸の摩擦抵抗を低下させるために処理剤の構成成分として含有される。成分2の脂肪酸エステルの生成に用いる脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の脂肪酸が好ましいものとして挙げられ、またアルコールとしては、イソプロピルアルコール、イソオクチルアルコール、イソトリデシルアルコール等の分岐を有する一級アルコールが特に好ましいものとして挙げられる。成分2の脂肪酸エステルは、30〜60重量%、好ましくは30〜40重量%含有される。脂肪酸エステルの粘度が6.0cSt未満では、揮発性が高くなり糸巻体の外層部で飛走性が低下し、内外層で飛走性の差が大きくなる傾向にあり、粘度が15.0cStを超えると、粘度が高くなり飛走性が低下する。
【0011】
成分3に関しては、一般的には、アルコールにエチレンオキサイドを付加重合せしめて得られる非イオンエーテル系活性剤は、アセテート繊維用の処理剤として用いられているが、その場合、酸化エチレンの重合度を下げることによってアセテート繊維に対する失透性を防止する手段が講じられてはいるもののなお十分ではなく、また処理剤の冷却安定性、摩擦性能等においても問題があるものであった。
【0012】
本発明の処理剤における成分3としては、従来の非イオンエーテル系活性剤についての検討の結果見出されたものであり、炭素数8〜18のアルコールのエチレンオキサイド付加物の末端水酸基を、炭素数8〜18の脂肪族カルボン酸でエステルとして封鎖した化合物を用いる。処理剤に成分3が構成成分として含有されることにより、従来の記非イオン系活性剤の欠点を防止し、アセテート繊維に対する失透性の防止性、処理剤の冷却安定性、摩擦性能を向上させる。炭素数8未満のアルコールでは、エステル封鎖された化合物の粘度が低く揮発性が高くなり糸巻体の外層部で飛走性が低下し、内外層で飛走性の差が大きくなる傾向にあり、炭素数18を超えるアルコールでは、エステル封鎖された化合物の粘度が高くなり飛走性が低下する。
【0013】
アルコールに付加するエチレンオキサイドの量は、特に限定はなく、広い範囲で変えることが可能であるが、アルコールエチレンオキサイド付加物としては、とりわけアルコール1モルに対しエチレンオキサイド3〜10モルのアルコールエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。成分3の生成において用いる炭素数8〜18のアルコールとしては、特に限定はないが、エチレンオキサイド付加により親水部分を結合させたとき、液状化を容易にするものが処理剤の調製の容易さの点で都合がよい。
【0014】
好ましく用いられるアルコールとしては、デシルアルコール、ラウリルアルコール等の炭素数10〜12の直鎖の一級アルコール、イソデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソステアリルアルコール等の炭素数10〜18の分岐を有する一級アルコールが挙げられる。分岐を有する一級アルコールについては、ドバノール(シエル化学社製)、オキソコール(日産化学工業社製)、ダイヤドール(三菱化学社製)等の商品名で上市されているオキソ法による合成アルコールが好ましいものとして挙げられる。またタージトール(ユニオンカーバイド社製)、ソフタノール(日本触媒化学工業社製)等の商品名で上市されている炭素数10〜16の二級アルコールもアルコールとして好ましく用いられる。
【0015】
更に、成分3の生成において用いるアルコールエチレンオキサイド付加物の末端水酸基を封鎖する炭素数8〜18の脂肪族カルボン酸としては、直鎖又は側鎖を有する飽和或いは不飽和のカルボン酸、例えば、カプリル酸、ラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等或いはこれらを主体とする混合脂肪酸が挙げられる。成分3は、精錬性、摩擦特性等の点から、処理剤の構成成分全体の5〜15重量%含有させる。しかるに炭素数8未満の脂肪族カルボン酸では、エステル封鎖された化合物の粘度が低くなり易く、揮発性が高くなり糸巻体の外層部で飛走性が低下し、内外層で飛走性の差が大きくなる傾向にあり、炭素数18を超える脂肪族カルボン酸では、エステル封鎖された化合物の粘度が高くなり飛走性が低下する。
【0016】
AJLによる製織の際に、本発明のアセテート繊維用処理剤を非水系で用いる場合、第一の適正条件は処理剤の安定性、特に低温安定性が良好で、ベースオイルとの相溶性が良好なことである。本発明の処理剤においては、これらの点を考慮し、成分4としてアルキルリン酸エステルアミン塩が含有される。従来の帯電防止を目的として用いる陰イオン活性剤も、硫酸エステル系、スルホネート系、脂肪酸系は適合性がなく、またそれらの金属塩も不適である。本発明の処理剤における成分4としては、炭素数8〜18のアルキル基を有するアルキルリン酸エステルアミン塩が好ましいものとして挙げられる。
【0017】
成分4のアルキルリン酸エステルアミン塩の生成の際の中間体であるアルキルリン酸エステルの生成に好ましく用いられアルコールとしては、常温下で液状であることが望ましく、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられ、とりわけ、ドバノール、オキソコール、ダイヤドール等の商品名のオキソ法によるアルコールや炭素数12〜15の側鎖アルコール、例えばタージトール(ユニオンカーバイド社製)、ソフタノール(日本触媒化学工業社製)等の商品名で上市されているアルコール等が好ましいものとして挙げられる。
【0018】
また、中間体のアルキルリン酸エステルをアミン塩とするのに用いられるアミン類としては、特に限定はないが、非水溶型の液状アミン、例えば、トリブチルアミン、ジブチルエタノールアミン等が好ましいものとして挙げられる。
【0019】
繊維、特にアセテート繊維をAJLにより製織する場合、その静電気的特徴は緯糸貯蔵ドラムより糸が放出されるとき、貯蔵ドラム付近で200〜500Vの静電気を発生することが望ましいことである。なぜなら、静電気の発生により糸が若干膨らみ、エアージェットに乗りやすいからである。この場合、静電気が発生しすぎると、糸が膨らみすぎ、毛羽、糸切れ等を生じ、更に毛羽節を生じる原因となるため、あくまでも適度な静電気発生量であることが望まれる。そのため、本発明の処理剤における成分4のアルキルリン酸エステルアミン塩の量を適度に制御する必要がある。しかし、この静電気発生量は、相対的なベースオイルの量にも関連するため、本発明の処理剤においては、成分4のアルキルリン酸エステルアミン塩は、5〜10重量%含有される。成分4のアルキルリン酸エステルアミン塩が5重量%未満では、静電気発生量が大きくなり毛羽、糸切れを生じやすく、10重量%を超えると、エアージェットへの乗りが低下し飛走性が低下する。
【0020】
本発明の処理剤は、成分1が30〜60重量%、成分2が30〜60重量%、成分3が5〜15重量%及び成分4が5〜10重量%の範囲で、かつ成分1、成分2、成分3及び成分4の合計量が100重量%となるように構成される。本発明の処理剤は、繊維、特にアセテート繊維のフィラメント糸をAJLにより製織する際の緯糸用処理剤として好適なるものであり、繊維、特にアセテート繊維に好適に付与されるためには、30℃における粘度が9.0〜15.0cStであることが好ましい。
【0021】
アセテート繊維に本発明の処理剤を付与する方法としては、特に限定されないが、非水系で処理して付与するのが好ましい。また、本発明の処理剤を用いてAJL緯糸用のフィラメント糸、特にアセテートフィラメント糸を製造する場合、繊維に対する付与量は、0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.3重量%とする。
【0022】
本発明の処理剤のアセテート繊維への付与量が0.5重量%未満では、エアージェットによって単糸切れが発生し、製織製品の欠点となったり、糸形成の段階においても単糸切れ等による問題が発生しやすくなる。一方、処理剤付与量が2.0重量%を超えると、繊維の開繊性が悪化し、緯打ち飛走性が悪化する。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例におけるAJLでの製織条件は、AJL織機として津田駒製(AZ110)を用い、回転数900rpm、サブノズル等の条件は同一とし下記の様な条件下で、飛走性をメインノズルエアー圧力を0.22〜4.4MPaの範囲で変更し、ワーキングレンジの測定及び生機評価にて行った。
サブ圧:4.0k
常圧 :0.6k
ケイシピン:52〜180 (ファースト:76〜194)
メイン:46〜166(ファースト76)
緯密度:66本/インチ
織り幅:125cm
実施例及び比較例の糸条件は、同一とし、経糸に84デシテックス(dtex)/21フィラメント(f)のアセテートフィラメント糸を用い、緯糸として135dtex/32fのアセテートフィラメント糸に各種処理剤を付与したもので比較評価した。緯糸は、処理剤が付与されて捲き取られたチーズから供給した。
【0024】
飛走性の評価は、AJL稼働可能エアー圧力と製織された生機の品位から判断し、製織された生機がヒケや毛羽がなく製品として問題のないレベルに製織可能で、かつ停台の生じないエアー圧力範囲をワーキングレンジとして判定した。
【0025】
揮発分評価の方法は、処理剤を80℃で12時間放置したときの放置前との重量変化から算出した処理剤揮発率で評価した。揮発分率が高いとチーズに捲き取ったときチ−ズの表層と内層の実質的な処理剤の付着量差を発生し飛走性に差を生じることとなる。また、処理剤としての総合判定は、製織された生機が製品として使用できないレベルから製品として全く問題のないレベルまでを×、△、○、◎に分けて評価した。
【0026】
処理剤に含有される各成分は下記のとおりである。
成分1−A:流動パラフィン、粘度9.6cSt(30℃)、炭素数15〜28(100%)
成分1−B:流動パラフィン、粘度11.2cSt(30℃)、炭素数15〜28(100%)
成分1−C:流動パラフィン、粘度7.6cSt(30℃)、炭素数9〜18(60%)、炭素数19〜(40%)
成分2−A:イソプロピルミリステート、粘度4.8cSt(30℃)
成分2−B:イソプロピルパルミテート、粘度6.6cSt(30℃)
成分2−C:イソオクチルラウレート、粘度6.7cSt(30℃)
成分2−D:イソオクチルパルミテート、粘度11.2cSt(30℃)
成分2−E:イソオクチルステアレート、粘度13.0cSt(30℃)
成分2−F:イソトリデシルステアレート、粘度23.5cSt(30℃)
成分3 :POE(3)タージトールラウリルエステル
成分4 :ドバノールホスフェートジブチルエタノールアミン塩
【0027】
(実施例1)
成分1−Bを30重量%、成分2−Bを50重量%、成分3を10重量%及び成分4を10重量%混合してなる粘度12.1cStの処理剤を0.9重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにて製織し、AJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.28〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は15.0重量%であった。処理剤としての総合判定は、○〜◎であった。
【0028】
(実施例2)
成分1−Aを35重量%、成分2−Dを55重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度12.3cStの処理剤を1.2重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.42MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は12.6重量%であった。処理剤としての総合判定は○〜◎であった。
【0029】
(実施例3)
成分1−Bを40重量%、成分2−Cを50重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度9.4cStの処理剤を0.9重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.26〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は18.8重量%であった。処理剤としての総合判定は○〜◎であった。
【0030】
(実施例4)
成分1−Aを40重量%、成分2−Cを20重量%、成分2−Dを25重量%、成分3を10重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度11.3cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.26〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は14.8重量%であった。処理剤としての総合判定は○〜◎であった。
【0031】
(実施例5)
成分1−Aを45重量%、成分2−Bを20重量%、成分2−Eを20重量%、成分3を8重量%及び成分4を7重量%混合してなる粘度12.2cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は16.7重量%であった。処理剤としての総合判定は○〜◎であった。
【0032】
(実施例6)
成分1−Bを50重量%、成分2−Cを20重量%、成分2−Eを20重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度11.7cStの処理剤を1.3重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は19.1重量%であった。処理剤としての総合判定は◎であった。
【0033】
(実施例7)
成分1−Bを50重量%、成分2−Bを20重量%、成分2−Dを15重量%、成分3を10重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度11.9cStの処理剤を0.8重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.44MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は18.1重量%であった。処理剤としての総合判定は◎であった。
【0034】
(実施例8)
成分1−Aを55重量%、成分2−Dを35重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度12.0cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.42MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は18.0重量%であった。処理剤としての総合判定は◎であった。
【0035】
(実施例9)
成分1−Aを60重量%、成分2−Eを30重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度12.5cStの処理剤を1.1重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.24〜0.42MPaであり、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は21.1重量%であった。処理剤としての総合判定は◎であった。
【0036】
(比較例1)
成分1−Cを90重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度9.8cStの処理剤を1.2重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.30〜0.42MPaと狭く、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は、59.3重量%であり、特に揮発性が非常に高いためチーズ表層と内層との実質的な処理剤の付着量差が大きく、織機調整等に関する従来技術の問題が存在するものであった。
処理剤としての総合判定は×であった。
【0037】
(比較例2)
成分1−Aを20重量%、成分2−Dを70重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度12.7cStの処理剤を0.9重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.32〜0.42MPaと非常に狭く、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は、12.3重量%であった。処理剤としての総合判定は×であった。
【0038】
(比較例3)
成分1−Bを70重量%、成分2−Cを15重量%、成分3を8重量%及び成分4を7重量%混合してなる粘度12.9cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.32〜0.42MPaと非常に狭く、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は、21.5重量%であった。処理剤としての総合判定は×であった。
【0039】
(比較例4)
成分1−Bを50重量%、成分2−Aを40重量%、成分3を5重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度8.5cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.30〜0.40MPaと非常に狭く、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は、30.5重量%であり、処理剤の揮発性が非常に高いためにチーズ表層と内層との実質的な処理剤の付着量差が大きく、織機調整等に関する従来技術の問題が存在するものであった。処理剤としての総合判定は×であった。
【0040】
(比較例5)
成分1−Aを40重量%、成分2−Fを45重量%、成分3を10重量%及び成分4を5重量%混合してなる粘度18.1cStの処理剤を1.0重量%付与したアセテートフィラメント糸を緯糸に用いてAJLにおける飛走性の評価を行った。この評価結果、AJLメインエアー圧力の変更によって確認された製品として問題のないアセテートフィラメント糸の生機が得られるワーキングレンジは、0.30〜0.40MPaと非常に狭く、またアセテートフィラメント糸に付与の処理剤揮発率は17.6重量%であった。処理剤としての総合判定は×〜△であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明のアセテート繊維用処理剤は、AJLにおける緯糸用処理剤として好適なるものであり、AJLのより向上した織機性能に対応し、かつAJLによる製織の際にAJLでのエアー圧力範囲、即ちワークレンジが広く、低エアー圧から高エアー圧に至るまでその飛走性を大幅に向上させることが可能なるものであり、織機停止回数を減少させることができ、製織速度を高速にしても、製織された生機品位を維持し、製織時のエアー圧力を従来技術と比較して低く抑えることが可能であり、さらに稼動する織機の生産効率が上がり、製織コストを安価にすることを可能とする。特に本発明の処理剤の付与されたアセテート繊維は、AJLにおける緯糸として優れた飛走性を有する。
Claims (5)
- 30℃における粘度が8.0〜12.0cStで、炭素数15〜28の流動パラフィン(成分1)30〜60重量%、30℃における粘度が6.0〜15.0cStの脂肪酸エステル(成分2)30〜60重量%、アルコールエチレンオキサイド付加物の末端水酸基をカルボン酸で封鎖した化合物(成分3)5〜15重量%及びアルキルリン酸エステルアミン塩(成分4)5〜10重量%を含有するアセテート繊維用処理剤。
- 成分2の脂肪酸エステルの生成におけるアルコールが、分岐を有する一級アルコールである請求項1記載のアセテート繊維用処理剤。
- 成分3が、炭素数8〜18のアルコールのエチレンオキサイド付加物の末端水酸基を炭素数8〜18の脂肪族カルボン酸で封鎖した化合物である請求項1又は2記載のアセテート繊維用処理剤。
- 処理剤の30℃における粘度が9.0〜15.0cStである請求項1、2又は3記載のアセテート繊維用処理剤。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の処理剤が0.8〜1.3重量%付与されたエアージェットルーム緯糸用のアセテート繊維。
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