JP4605616B2 - 起毛織物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好なタッチ、高いライティング効果ならびに抗ピル性を有する起毛織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、本発明類似の起毛織物としては特公昭54−28500号公報、特公昭58−55260号公報がある。しかしながら、これらの特許の繊維構成ポリマーはポリエチレンテレフタレートであり、風合い、柔軟性、ドレープ性という点は比較的良いものの、タッチおよび表面を指でなぞった際に模様が出現するいわばライティング効果については十分に満足のいくものではない。また、これらの特性を発現させるためにポリアミド類を繊維構成ポリマーとして使用することが考えられるが、その場合、染色堅牢性が悪いことに起因して洗濯などによる色あせが発生したり、さらには立毛のさばけが悪くなるという欠点が生じてくることになる。
【0003】
また従来、ピリングという点については繊維強度を低下させて抗ピル性を高める手法が存在したが、破れやすくなるため実用的にはならなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、風合い、柔軟性、ドレープ性だけでなくタッチ、立毛のさばけ、およびライティング効果も高く、かつ高い染色堅牢性、抗ピル性も兼ね備えた、従来にない起毛織物を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明の起毛織物は、主として平均繊度0.001〜1デニールの極細繊維からなる紡績糸またはフィラメント糸からなる緯糸を、経糸に3〜8本浮かせた組織であって、主としてその緯糸が起毛されてなる起毛織物において、該緯糸がポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体からなる極細繊維と、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる極細繊維とが混合されたものであることを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、風合い、柔軟性、ドレープ性だけでなくタッチ、立毛のさばけ、およびライティング効果も高く、かつ高い染色堅牢性、抗ピル性も兼ね備えた起毛織物を提供すべく、鋭意検討したところ、特定な組織と特定なポリマーを含む糸とを組合わせたところ、意外にもかかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0007】
本発明の起毛織物を構成する主としてポリプロピレンテレフタレートからなる緯糸は、緻密な立毛性を発現させるために、主として繊度が0.001〜1dの極細繊維からなる紡績糸またはフィラメント糸を用いることが必要である。すなわち、0.001d未満では細すぎて分繊性が劣り、染色しても濃色が得られず、反対に1dを越えると感触がざらつき、スムースなタッチが得られない。繊度においては、濃色における発色性の観点から0.005d以上が、また、ファインタッチを高める上から0.9d以下が、それぞれ好ましい。
【0008】
かかる緯糸が紡績糸の場合、番手としては綿番手10番ないし40番程度がよい。フィラメント糸の場合、50〜500Dのマルチフィラメントがよく、数本合糸して用いることも可能である。
【0009】
該極細繊維の製造手段については、特に限定はないが、1〜10d程度の海島型複合繊維を製造し、主として製織後にこれを極細化処理を施すのが好ましい。
海島型複合繊維の場合、島成分としてはポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体であるが、制電防止、防汚、難燃、抗菌などを目的とした各種添加剤を配合したものでもよい。また、共重合成分としては各種ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなど、目的の性質を損なわない限りであれば、特に制限はなく、紡糸性などを考慮した上で選択すればよい。さらに、共重合比についても特に制限はないが、ポリプロピレンテレフタレート独特の良好なタッチ、ライティング効果を発現させるためにポリプロピレンテレフタレート部分が40%以上含まれることが好ましい。
【0010】
一方、海成分としては、ポリエチレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン類、ナイロンなどの各種ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレートをはじめとする各種ポリエステル類などを使用することができるが、紡糸性や極細化処理時の溶解性あるいは分割性などの加工性などを考慮して使用するのが好ましい。
【0011】
該緯糸にポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体からなる繊維と、それとは異なる繊維とが混合されたものを用いる場合、ポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体以外の成分としては、各種ポリアミド類、ポリエチレンテレフタレートをはじめとする各種ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリウレタンなど各種ポリマーを使用することができる。また、共重合成分の異なる2種のポリプロピレンテレフタレートを混用することも可能である。
【0012】
混用する繊維の太さは、同一にする必要はなく、結果的に、紡績糸の場合、番手としては綿番手10番ないし40番程度、フィラメント糸の場合、50〜500Dのマルチフィラメントになっていれば問題はない。この場合の混合比は共重合の場合と同様に、ポリプロピレンテレフタレート独特の良好なタッチ、ライティング効果を発現させるためにポリプロピレンテレフタレート部分が40%以上含まれることが好ましい。
【0013】
また、その場合の混合方法としては、島成分1としてポリプロピレンテレフタレートを、島成分2として他のポリマーを同一の海島型繊維内で溶融紡糸する方法や別々の繊維として紡糸した後、マルチフィラメントにする際に引揃え混合するなど、いずれの手法を用いても構わない。
【0014】
経糸に用いる繊維は特に制限はないが、織密度を高め、ボリューム感があり、目ずれのない織物にするために伸縮性の嵩高加工糸を用いることが好ましい。伸縮性の嵩高加工糸としては、仮撚加工糸、擦過捲縮糸、押込加工糸、非対称加熱加工糸、賦型加工糸、複合捲縮糸などを使用することができる。かかる加工糸の材質としては、ポリエステル類、ポリアミド類などの熱可塑性重合体がよいが、特にポリプロピレンテレフタレートまたはその共重合体を用いると、良好なタッチ、柔軟性、ドレープ性が高まり、より高級感を出すことができる。ここでの共重合体も緯糸と同様、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類など各種ポリマーを使用することができる。
【0015】
経糸の単糸デニールとしては、15d以下が適当である。かかる経糸を使用することにより、起毛織物の織り目が目立たなくなる。さらに、起毛織物の目ずれを少なくするため、あるいはライティング効果を高めるために、単糸デニールとしては、0.1〜5dが好ましい。また、上記性能を過度に損なわない範囲であれば、経糸に他の繊維を混用しても差し支えない。
【0016】
本発明では、前記のような特定の緯糸と経糸を用いて製織するが、その織組織は緯糸を経糸に3〜8本浮かせた構造が採用される。浮きが2本以下だと起毛しにくく、9本以上だと大きなループ状の輪が生成するので必ずしも好ましくない。好ましい例としては、4枚ないし9枚の朱子織やその変化組織であって、トルコ織やヤブレ斜文などと称されるものを使用することができる。
【0017】
本発明の起毛織物は、織組織密度の小さい織物では、糸の種類や織組織をいかに選択しても、織り目が目立ち、立毛で覆われない表面部分ができやすい。そのため高収縮繊維を用い、製織後高収縮化することが好ましい。織機は有杼、無杼のいずれの形式のものでもよい。製織の際には伸縮性嵩高加工糸を経糸とする場合、捲縮が延びる程度の張力をかけるのが普通で、織り上がったときタテ方向に織りちぢみが生ずる。その他製織の際の注意事項は一般の加工糸織物の場合に準ずる。
【0018】
上記の糸使い、織組織で構成した織物を本発明の起毛織物とするためには、通常、熱処理もしくは収縮処理、極細化処理、起毛処理が施される。これらの順序は任意であり、二つ以上を組み合わせて単一の工程とすることも可能である。直接紡糸法で得た極細繊維を用いる場合は当然ながら極細化処理は必要としないが、その他ほぼ同様に処理することで有効な結果が得られる。必要に応じて染色加工、中間セット、油剤付与、高分子物質の付与、剪毛、バフ加工、欠陥部分の修整、立毛固定処理、ブラッシング、乾燥などを適宜採用するのが好ましい。
【0019】
極細化を溶剤抽出により行うときは、熱処理もしくは収縮処理と組み合わせて行ってもよい。なお極細化は必ずしも完全に行う必要はなく、効果が具現される範囲内で極細化されていればよい。熱処理もしくは収縮処理を単独で行うときは80〜180℃の熱水またはスチーム、または熱風処理による。熱処理の際、経糸方向に10〜50%収縮せしめると、織組織が密になり、起毛性も向上する。
起毛処理の手段は、針布、サンドペーパー、サンドクロス、サンドネット、砥石、スチールブラシ、研磨ブラシ、サンドロール、ガーネット、サンドホーニング等がある。中でも針布による処理が有効である。用途や織組織によっては両面を起毛することもある。
【0020】
高分子物質は必要に応じて付与すればよい。高分子物質の付与は、風合い、立毛安定性、織物バランスの向上などを目的としている。高分子物質としては、ポリウレタンが典型例だが、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド等、目的に応じて選択することができる。付与方法としては、溶液あるいは分散液に起毛織物を含浸したり、非起毛面から塗布したりした後に乾式または湿式で凝固する。付着量の多いときは、再起毛、バフ、くしけずり、ブラッシングなどをして風合いを改善することも可能である。
【0021】
【実施例】
以下に本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明の有効性や権利の範囲はこれによって限定、制約を受けるものではない。
【0022】
また、実施例、比較例中のライティング効果については、以下のような試験法によって、評価した。
【0023】
まず、反を長手方向が上下に、幅方向が左右になるように地面に対して垂直に吊し、エボナイト棒で地面に対して60°の角度で上から下へ続いて下から上へ反表面を10cmほどなぞる。次に、地面に対して45°の角度で同様になぞり、最後に30°の角度で同様になぞる。いずれの角度においてもはっきりとライティング効果が確認できるものを5級、まずまず確認できるものを4級、ある角度においては良好だが、ある角度では効果が薄いものを3級、特定の角度でしか確認できないものを2級、ほとんど確認できないものを1級と定めた。さらに、抗ピル性については、JISに定められているランダムタンブル法(RTPT法)で評価を行った。
【0024】
参考例1
経糸として、ポリエチレンテレフタレート150デニール48フィラメントの仮撚加工糸を用い、緯糸に海島型繊維で、島成分がポリプロピレンテレフタレート、海成分がポリスチレンからなる繊維を用いた。この繊維は島数が16本、島成分比率が50%、3.8デニール、繊維長が51mm、クリンプ数が12山/inであり、これを20/2Sの紡績糸とした。これを織密度タテ糸100本/in、ヨコ糸60本/inとなるように織組織を5枚朱子織の織物とした。
【0025】
これを沸水中に導き入れ、収縮、乾燥させた後、トリクレンで5回十分洗い海成分のポリスチレンを溶解除去した。しかる後、サーキュラー加圧染色機で分散染料を用いて紺色に染め油剤をつけ乾燥した。
【0026】
これをフランス式、ドイツ式起毛機に、計10回通すことによって、良好でかつ、ナップの織組織もほとんど目立たない皮革を得た。
【0027】
さらに、これにポリエーテル75部、ポリエステル25部を用いたMDI系ポリウレタンのDMF溶液に浸漬含浸し、その後、湿式凝固、乾燥し、表面膜のある表面ペーパー化した織物とした。次いでサンドペーパーで起毛処理を行った。
これにより、ライティング効果の高い、緻密で良好なナップを持ち、織組織もほとんど目立たず、柔軟で風合い、タッチ、ドレープ性も良好なスエード調起毛織物を得た。得られた織物についてのライティング効果は4〜5級、抗ピル性は5級と極めて高いものだった。また、JIS法記載の洗濯に対する染色堅牢テストを行った結果、4−5級と極めて良好であった。
【0028】
実施例
経糸として、ポリエチレンテレフタレート150デニール48フィラメントの仮撚加工糸を用い、緯糸に海島型繊維で、島成分がポリプロピレンテレフタレート、海成分がポリスチレンからなる繊維および島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分がポリスチレンからなる繊維を6:4の比で混合したマルチフィラメント糸を用いた。なお、いずれの海島型繊維も島成分比率、繊維長などの条件は参考例1に準ずる。その後の加工は参考例1と同条件で行った。得られた物は参考例1に比べて柔軟性、ドレープ性という点では若干劣るものの、ライティング効果や緻密性の極めて高いスエード調起毛織物を得た。ライティング効果においては、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンテレフタレートの2種のポリマーからなるナップにより、参考例1に比べて、より陰影の富んでいる物が得られ、5級であった。また、同様に2種類のポリマーの発色性が異なることにより、霜降り調で、参考例1よりも自然な感覚の物であった。また、抗ピル性については4−5級という結果が得られた。洗濯に対する染色堅牢度についても5級という結果が得られた。
【0029】
参考例2
経糸として、ポリプロピレンテレフタレート150デニール48フィラメントの仮撚加工糸を用い、緯糸に海島型繊維で、島成分がポリプロピレンテレフタレート参考例1よりもさらに柔軟性、ドレープ性の高い、より高級感が発現したスエード調起毛織物であった。得られた織物のライティング効果は5級、抗ピル性も5級であった。また洗濯に対する染色堅牢度は4−5級であった。
【0030】
比較例1
緯糸に海島型繊維で、島成分にポリエチレンテレフタレートを用い、参考例1と同条件で加工した。得られた起毛織物は緻密性、風合い、柔軟性、ドレープ性は参考例1の織物と同程度あるいは若干劣る程度であった。また、洗濯に対する染色堅牢テストを行った結果、5級と極めて高いものであった。しかしながら、ライティング効果は3級、抗ピル性は3−4級と、実施例と比較して劣るものであった。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明による起毛織物は、緯糸あるいは、および経糸の繊維構成ポリマーに主としてポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体を用いることにより、風合い、柔軟性、ライティング効果、染色堅牢性、高い発色性、抗ピル性を兼ね備えた、従来存在しなかったものであり、衣料用途、資材用途等に幅広く利用することができる。

Claims (2)

  1. 主として平均繊度0.001〜1デニールの極細繊維からなる紡績糸またはフィラメント糸からなる緯糸を、経糸に3〜8本浮かせた組織であって、主としてその緯糸が起毛されてなる起毛織物において、該緯糸がポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体からなる極細繊維と、ポリエチレンテレフタレート繊維からなる極細繊維とが混合されたものであることを特徴とする起毛織物。
  2. 該経糸が、その繊維構成ポリマーとしてポリプロピレンテレフタレートもしくはその共重合体を含むものである請求項記載の起毛織物。
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