JP4605117B2 - Lpg・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材 - Google Patents

Lpg・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、エネルギー輸送船のタンクの大型化に対応し、高強度を有しかつLPGおよびアンモニアのいずれも貯蔵して運搬できるタンクに用いる鋼材およびその製造方法に関する。
近年のエネルギー消費の増大に鑑み、エネルギー輸送船のタンク容量の増大化が進んでいる。
このため、エネルギー輸送船のタンクに用いられる鋼材には、より高強度のものが要求される。また、タンクにはLPGだけでなく、液体アンモニアが貯蔵して運搬されることもあることから、低温貯蔵の観点から母材部および溶接部の低温靱性が基本特性として要求されることに加えて、アンモニアによる応力腐食割れを防止できる鋼材が要求されている。このような要求に対応すべく、種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1において、LPGおよびアンモニアのいずれをも貯蔵することができる鋼材が提案されている。しかしながら、この鋼材は、その降伏強度が400N/mm程度(350〜420N/mm)であり、また引張強度も600N/mm以下(558〜590N/mm)である。この程度の強度では、今後さらに大型化するタンク用の鋼材としては不十分である。
また、特許文献2においても、LPGおよびアンモニアを貯蔵できる鋼材が提案されている。しかしながら、この鋼材は、鋼中に酸化物粒子を分散させるなどすることにより応力腐食割れを防止することが考慮されているため、引張強度は500N/mm以上を確保するものの、降伏強度は440N/mm以下に留まっている。
特開平7−188742号公報 特開2003−3228号公報
タンクの大型化に当たっては、上述したとおり、鋼材自体の強度の問題がある。また、タンクは鋼材を溶接で接合することにより組み立てられるが、この際に溶接部の近傍では溶接による残留応力が存在し、溶接継手の脆性破壊を促進するという問題がある。従来は、溶接後にタンクを焼鈍することによって、この残留応力を取り除いて、残留応力のない製品を得ていたが、タンクが大型化して、既存の焼鈍炉の大きさを超えてしまうと、焼鈍炉に収納できず、焼鈍自体ができなくなるので、残留応力を取り除くことが不可能となる。
大型化したタンクを収納できるだけの大きさを持った焼鈍炉を新たに建設すれば焼鈍は可能となるが、コスト面を考えると、焼鈍炉の新設はできるだけ避けたいところである。そのために、溶接後に焼鈍をしなくても低温タンクとして優れた破壊靭性を有する鋼材が好ましい。
本発明の目的は、タンクの大型化に対応し、溶接時の残留応力除去のための焼鈍熱処理をしなくてもよいLPG・アンモニアを運搬船用タンクに用いられる高強度の鋼材およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、LPG・アンモニア運搬船用タンクの大型化に鑑み、鋼材を溶接しても応力除去熱処理(焼鈍)が不要となる観点並びにLPGおよびアンモニアのいずれも運搬する観点から、タンク積載容量2000m以上かつタンク直径9.0m以上のLPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材の化学組成及びミクロ組織に関して、種々の合金元素及びミクロ構造の影響についての検討と実験を繰り返した結果、本発明を完成した。
本発明の要旨は、次の(1)〜(6)のいずれかに示すとおりである。以下、それぞれ、本発明(1)〜本発明(6)という。本発明(1)〜本発明(6)を総称して、本発明ということがある。
(1) タンク積載容量2000m以上かつタンク直径9.0m以上のLPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材であって、質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cu:0.1〜0.7%、Ni:0.1〜0.7%、Ti:0.005〜0.02%、sol.Al:0.01〜0.06%及びN:0.002〜0.007%を含有し、残部Fe及び不純物からなり、ミクロ組織がベイナイト組織であり、降伏強度500N/mm以上かつ引張強度610N/mm以上であることを特徴とする鋼材。
(2) 質量%で、さらに、Nb:0.06%以下を含有することを特徴とする、上記(1)の鋼材。
(3) 質量%で、さらに、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下及びV:0.06%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)の鋼材。
(4) 質量%で、さらに、Ca:0.0060%以下を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの鋼材。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかの化学組成を有するスラブを、下記の工程(a)、(b)及び(c)で順次処理することを特徴とする鋼材の製造方法。
工程(a):200mm厚以上のスラブを1000〜1180℃に加熱する。
工程(b):スラブ温度が1000〜1180℃で圧延を開始し、750〜880℃の温度域で圧下率50%以上の圧延を実施した後に、750℃以上で圧延を完了する。
工程(c):700℃以上の温度から水冷を開始し、5℃/sec以上の冷却速度にて500℃以下の温度まで冷却したのち、水冷を停止する。
(6) 工程(c)の次にさらに下記の工程(d)で処理することを特徴とする、上記(5)の鋼材の製造方法。
工程(d):450℃以上、Ac1点以下の温度に再加熱し、板厚25.4mmにつき30分以上の均熱保持をしたのち、空冷または水冷する。
なお、本発明で規定する化学組成とミクロ組織を有する鋼材は、タンク積載容量2000m未満かつタンク直径9.0m未満のタンクにも用いることができるが、この場合、焼鈍炉に収容して焼鈍することができるので、溶接後のタンクの応力除去焼鈍に大きな問題を生じないため、あえて本発明の鋼材を適用する必要性は小さい。したがって、本発明ではタンク積載容量を2000m以上かつタンク直径を9.0m以上であると規定した。
本発明によれば、溶接後のタンクの残留応力除去のための焼鈍熱処理(応力除去焼鈍;SR)をしなくてもよいLPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる高強度の鋼材およびその製造方法を提供することができる。したがって、タンク積載容量が2000m以上かつタンク直径が9.0m以上の大型タンクであっても応力除去焼鈍なしにて優れた破壊特性を有し、もって溶接継手の脆性破壊を抑制できるという効果が得られる。
以下に、本発明の構成要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)降伏強度、引張強度
本発明に係る鋼材の降伏強度および引張強度は、それぞれ500N/mm以上および610N/mm以上であることが必要である。容量の大きなタンクでは、それだけタンク内の収容物(LPGまたはアンモニア)が大きくなるにつれて、タンク壁面(特に底面)に係る荷重が大きくなる。このため、鋼材自体の降伏強度および引張強度は一定以上の強度でないとタンク自体の強度を保つことができない。
降伏強度が大きな材料を用いて、溶接後のタンクの応力除去焼鈍処理を省略した場合には、耐SCC(Stress Corrosion Cracking:応力腐食割れ)特性の確保が課題となる。したがって、500N/mm以上の降伏強度と耐SCC特性を両立するためには、以下に述べるように、鋼材の組成を厳格に制御することにより、溶接部の組織を制御する必要がある。
(B)鋼材の化学組成
C:0.03〜0.08%
Cは、鋼材の強度上昇に極めて有効な元素である。その含有量が0.03%未満では所望の強度確保ができず、またベイナイト組織の生成が不十分となるので、0.03%以上含有させる必要がある。しかし、0.08%を超えて含有させると溶接継手部の靭性劣化を招くほか、硬度上昇により耐SCC特性を損なう。このため、Cの含有量は0.03〜0.8%とする。好ましくは、0.04〜0.07%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、Alとともに脱酸材として必要な元素であり、また鋼材の強度上昇にも極めて有効である。十分な脱酸効果と十分な鋼材の強度を得るために0.05%以上含有させる必要がある。しかし、0.5%を超えて含有させると溶接熱影響部の異常硬化及び継手靱性の低下につながる。このため、Siの含有量は0.05〜0.5%とする。好ましくは、0.1〜0.4%である。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、鋼の焼入性を向上させ、強度及び靱性を確保する上で重要な元素である。この効果を得るために1.0%以上含有させる必要がある。しかし、1.8%を超えて含有させると焼戻し脆性が大きくなり、溶接性が劣化するなどの問題を生じる。このため、Mnの含有量は1.0〜1.8%とする。好ましくは、1,2〜1.6%である。
P:0.015%以下
Pは、鋼材の機械的特性、特に低温靱性を低下させることから極力低減することが望ましい不純物元素である。しかしながら、Pの除去には著しいコスト上昇を伴うため、所望特性の確保が可能な0.015%をPの含有量の上限とする。好ましくは0.01%以下である。
S:0.005%以下
Sは、MnSを生成して低温靭性を低下させることから極力低減することが望ましい不純物元素である。しかしながら、Sの除去には著しいコスト上昇が避けられないため、所望特性の確保が可能な0.005%をSの含有量の上限とする。好ましくは0.003%以下である。
Cu:0.1〜0.7%
Cuは、強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るために0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.7%を超えて多量に含有させると溶接性を損なうとともに、Cuチェッキングによる高温割れの懸念がでてくる。このためCuの含有量は0.1〜0.7%とする。好ましくは、0.2〜0.4%である。
Ni:0.1〜0.7%
Niは、低温靱性の向上をもたらす極めて重要な成分である。この効果を得るために0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.7%を超えて多量に含有させると耐SCC特性を著しく劣化させる。このため、Niの含有量は0.1〜0.7%とする。好ましくは、0.2〜0.4%である。
Ti:0.005〜0.02%
Tiは、鋼中のフリーのNを固定してスラブ表面や鋼材表面の清浄性を確保するのに極めて有効な元素である。そして、その添加効果は0.005%以上で顕著になる。しかしながら、0.02%を超える過剰添加では鋼材自身の衝撃特性の低下をもたらす。このため、Tiの含有量は0.005〜0.02%とする。好ましくは、0.007〜0.015%である
sol.Al:0.01〜0.06%
sol.Alは、鋼中のフリーNをAlNとして固定し無害化する。この効果を得るために0.01%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.06%を超えてsol.Alを含有させてもその効果が飽和するばかりか、HAZ(Heat Affected Zone:熱影響部)の靭性の劣化を招く。このため、sol.Al含有量を0.01〜0.06%とする。好ましくは0.015〜0.050%である。
N:0.002〜0.007%
Nは、窒化物を形成することで組織の細粒化に寄与する。この効果を得るために0.002%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.007%を超えてNを含有させると窒化物の凝集を通じて靭性を劣化させる。このため、Nの含有量を0.002〜0.007%とする。好ましくは0.002〜0.005%である。
本発明においては、次のとおり、Nb、Cr、Mo、V及びCaのうち、1種又は2種以上を含有させてもよい。
Nb:0.06%以下
Nbは、圧延によって加工を受けた未再結晶オーステナイト粒の回復及び再結晶化を抑制する効果を有しており、母材靱性の確保に有効であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、0.06%を超えて含有させると、溶接時の割れ性が劣化するため、Nbの含有量は0.06%以下とする。好ましくは0.005〜0.05%であり、さらに好ましくは0.010〜0.05%である。
Cr:0.5%以下
Crは、鋼材の強度上昇に寄与する元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、0.5%を超えて含有させると、この効果が飽和するばかりか、溶接性の著しい低下をもたらすので、Crの含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.05〜0.5%、さらに好ましくは0.1〜0.3%である。
Mo:0.5%以下
Moは、Crと同様に、鋼材の強度上昇に寄与する元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、0.5%を超えて含有させると、この効果が飽和するばかりか、溶接性の著しい低下をもたらすので、Crの含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.05〜0.5%、さらに好ましくは0.1〜0.3%である。
V:0.06%以下
Vは、Cr及びMoと同様に、鋼材の強度上昇に寄与する元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。Cr及びMoに比べて極少量の添加であっても析出強化による強度上昇効果が認められる。しかしながら、0.06%を超えて含有させても効果が飽和するだけでなく、コストが嵩むだけであるので、Vの含有量は0.06%以下とする。好ましくは0.005〜0.06%、さらに好ましくは0.01〜0.05%である。
Ca:0.0060%以下
Caは、鋼中のSと結び付いてCa-Mn-S化合物を形成させることにより、Mn-S化合物の展進化を阻止し、鋼の機械的特性の異方性を減少させるのに極めて有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、0.0060%を超えて含有させても効果が飽和するので、Caの含有量は0.0060%以下とする。好ましくは0.0005〜0.0060%、さらに好ましくは0.0010〜0.0030%である。
本発明においては、さらに、溶接低温割れ感受性指数Pcmを0.20以下と規定するのが好ましい。Pcmを0.20以下と規定すると、溶接時の割れ感受性を低下させることができるので、優れた耐SCC特性を確保できる。なお、Pcmは、次式で表される。

Pcm= C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10+5B)
(C)鋼材のミクロ組織
本発明に係る鋼材のミクロ組織、すなわち、タンクを製造する際の溶接する前の鋼材としてのミクロ組織は、ベイナイト組織であることが必要である。ベイナイト組織は耐SCC特性に優れ、かつ高い降伏強度を有するだけでなく、LPG・アンモニア運搬船用タンクとして使用するために十分な低温靭性をも鋼材に付与することができる。ベイナイト組織は微細であるほどよい。
ミクロ組織を得るためには、具体的には、本発明に係る製造方法に基づいて鋼材を製造すればよい。
なお、ミクロ組織は完全にベイナイト組織でなくてもよく、面積率にて90%以上がベイナイト組織であればよい。すなわち、ベイナイト組織中に若干のフェライト組織が混ざっていても、本発明で規定されるようなタンク積載容量のLPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材として用いることができる。
(D)鋼材の製造方法
以下に、上記ベイナイト組織を得るための鋼材の製造条件を記載する。
まず、上述した組成を有する200mm厚以上のスラブを用意する。ここで、「スラブ」とは、鋼塊、ブルーム、ビレット等の総称として用いている。スラブはインゴット法により製造してもよいが、コスト低減の観点からは、連続鋳造法によりスラブを製造することが好ましい。この場合、板厚中心位置での介在物を制御するために、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに凝固直前の電磁攪拌、凝固時の圧下を行うことが好ましい。
スラブは1000〜1180℃に加熱する。1000℃未満の温度では後の圧延条件変更のみでは充分な強度確保が期待出来ない。1180℃を超える温度では、圧延前のオーステナイト粒を細粒かつ整粒に保つことができなくなり、その後の圧延においてもオーステナイト粒を細粒かつ整粒にすることはできない。したがって、スラブの加熱温度を1000〜1180℃とした。
続いて、熱間圧延を行う。熱間圧延は、スラブ温度が1000〜1180℃で圧延を開始し、750℃〜880℃の温度域で圧下率50%以上の圧延を実施する。その後圧延は750℃以上で完了させる。ここで、圧下率とは、
圧下率=(圧延前の厚み−圧延後の厚み)/(圧延前の厚み)×100
で表される。
これは、強度および靭性の両立には微細なベイナイト組織の形成が必須であるためであり、880℃以下の未再結晶温度で50%以上という十分な圧下率を確保することで、セル状転位組織が形成され、結果として、微細なベイナイト組織が生成する。また、圧延開始温度および仕上げ温度が750℃より低くなると、フェライトの析出が顕著となり、細ベイナイト組織分率が低下するため、目標の強度、靭性を満足できない。
次に750℃以上の温度にて圧延を完了した後、700℃以上の温度から水冷を開始し、5℃/sec以上の冷却速度にて500℃以下の温度まで冷却したのち、水冷を停止する。これは、フェライトが生成するAr点以上の温度から水冷することによってベイナイト生成を促進し、かつ500℃以下の温度まで冷却することによって板厚方向中心部まで充分にベイナイト変態を起こさせるためである。
ここで、加熱温度は、圧延開始までは炉内雰囲気温度によって求め、圧延開始から水冷完了までは鋼材表面の実測温度によって求めた。また、冷却速度は、板厚中央部における計算値を用いた。
なお、水冷後、必要に応じて、さらに、焼戻し熱処理してもよい。すなわち、450℃以上Ac1点以下の温度に再加熱し、板厚25.4mmにつき30分以上の均熱保持したのち、空冷または水冷してもよい。
これは、再加熱し、板厚あたり一定時間以上均熱保持することで、板厚中心部まで均一な熱処理効果を発揮させることができ、さらに圧延したままの鋼材のベイナイト中に存在する硬化組織(M−A)の分解が促進され、より安定した靭性を確保可能であるためである。また、冷却後の速度を大きく保つほど、冷却過程でのP,S等不純物の粒界偏析が軽微となるため、より安定した靭性が確保可能となる。このため、400℃までの平均冷却速度を1℃/分以上とすることが好ましい。
表1に示す化学組成を有する鋼であって、厚みが300mmのスラブを用意し、本発明の製造方法に従って、厚みtが50mmの鋼板を製造した。詳細な製造条件は表2に示すとおりである。
Figure 0004605117
Figure 0004605117
一連の製造工程を経て製造された鋼材は、その板厚(1/4)t位置において、圧延方向と平行の断面のミクロ組織を光学顕微鏡(倍率500倍)によって、2視野にて確認した。また、その板厚(1/4)t位置において、圧延方向とは垂直の断面より、引張試験片(JIS
Z2241、4号試験片)およびシャルピー衝撃試験片(JIS Z2242、2mmVノッチ試験片)を採取し、試験に供した。シャルピー衝撃試験は、試験温度を−78℃とし、47J以上の数値が得られたものを合格と判定した。表3にこれらの結果を示す。
Figure 0004605117
さらに、鋼板の溶接後、未焼鈍のままでも問題がないか否かを調査するために、溶接継手のCTOD値を測定するとともに、腐食試験を行ない、SCCの有無を確認した。具体的には、以下の試験を行った。
CTOD試験およびアンモニアSCC試験向けの溶接継手は、鋼板元厚50mmのまま、入熱量3.5J/mmのサブマージアーク溶接(SAW)により作成した。溶接材料については、日鐵住金溶接工業製のW40ワイヤおよびBL−55フラックスを使用した。硫化物SCC試験向けの溶接継手は、鋼板元厚50mmのまま、入熱量1.0J/mmのガスメタルアーク溶接(GMAW)により作成した。溶接材料は、日鐵住金溶接工業製のSCH−60ワイヤを使用した。
CTOD(Clap Tip Opening Displacement)試験は、溶接継手の一部から切り出した溶接のフュージョンライン(FL)部にノッチを導入した試験片により、LPGタンクの操業温度である−48℃で行った。具体的な試験は、WES1108(日本溶接協会試験規格1108)にしたがって行った。
ここで、CTOD試験の良否は、実際のタンクの使用環境を想定し、WES2805(同2805)に基づいて安全性の検証を行うことにより確認し、0.02mmを良否判定の目安とした。すなわち、0.20mm以上のものを合格品とした。
腐食試験は、アンモニア積載の環境下を考慮した試験およびLPG積載の環境下を考慮した試験を行った。アンモニア積載の環境下を考慮した試験では、アンモニアに対する耐応力腐食割れ性の評価を行った。溶接継手の一部から切り出した試験片を4点曲げによって500N/mmに相当する応力を付与し、試験温度25℃で腐食溶液(飽和NHCONH−液体NH)中に240時間浸漬した後、光学顕微鏡を用いて200倍の倍率で、それぞれの試験片の割れの有無を調査した。その結果、割れが観察されなかった場合を良好(〇)、割れが観察された場合を不良(×)として評価した。
一方、LPG積載の環境下を考慮した試験では、不純物として含まれる硫化物を考慮し、硫化物に対する耐応力腐食割れ性の評価を行った。同じく溶接継手の一部から切り出した試験片を4点曲げによって500N/mmに相当する応力を付与し、試験温度5℃以下で腐食溶液(純水-2%HS)中に168時間浸漬した後、光学顕微鏡を用いて200倍の倍率で、それぞれの試験片の割れの有無を調査した。その結果、割れが観察されなかった場合を良好(〇)、割れが観察された場合を不良(×)として評価した。
表4に、継手CTOD値および応力腐食割れの結果を示す。表4より本願発明で規定する鋼材、すなわち供試鋼No.1〜14は、すべて継手CTOD値は0.15mm以上となり、また応力腐食割れ特性についても良好であった。
Figure 0004605117
一方、供試材No.15〜23は、本発明で規定する組成を満足していないため、所望の特性を得ることができなかった。また、供試鋼24および25は、本発明で規定する組成を満足するが、製造方法が異なるため、所望の特性を得ることができなかった。
本発明によれば、溶接後のタンクの残留応力除去のための焼鈍熱処理をしなくてもよいLPG・アンモニア運搬船用タンクの高強度の鋼材およびその製造方法を提供することができる。したがって、タンク積載容量が2000m以上かつタンク直径が9.0m以上の大型タンクであっても溶接による残留応力が残存せず、もって溶接継手の脆性破壊を抑制できる。

Claims (6)

  1. タンク積載容量2000m以上かつタンク直径9.0m以上のLPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材であって、質量%で、C:0.03〜0.08%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.015%以下、S:0.005%以下、Cu:0.1〜0.7%、Ni:0.1〜0.7%、Ti:0.005〜0.02%、sol.Al:0.01〜0.06%及びN:0.002〜0.007%を含有し、残部Fe及び不純物からなり、ミクロ組織がベイナイト組織であり、降伏強度500N/mm以上かつ引張強度610N/mm以上であることを特徴とする鋼材。
  2. 質量%で、さらに、Nb:0.06%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼材。
  3. 質量%で、さらに、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下及びV:0.06%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼材。
  4. 質量%で、さらに、Ca:0.0060%以下を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の鋼材。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有するスラブを、下記の工程(a)、(b)及び(c)で順次処理することを特徴とする鋼材の製造方法。
    工程(a):200mm厚以上のスラブを1000〜1180℃に加熱する。
    工程(b):スラブ温度が1000〜1180℃で圧延を開始し、750〜880℃の温度域で圧下率50%以上の圧延を実施した後に、750℃以上で圧延を完了する。
    工程(c):700℃以上の温度から水冷を開始し、5℃/sec以上の冷却速度にて500℃以下の温度まで冷却したのち、水冷を停止する。
  6. 工程(c)の次にさらに下記の工程(d)で処理することを特徴とする、請求項5に記載の鋼材の製造方法。
    工程(d):450℃以上Ac1点以下の温度に再加熱し、板厚25.4mmにつき30分以上の均熱保持をしたのち、空冷または水冷する。
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