JP5428999B2 - Lpg・アンモニア混載用鋼材の製造方法 - Google Patents

Lpg・アンモニア混載用鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、靭性が高く降伏強度が規格範囲に適合する、LPGおよびアンモニアのいずれも貯蔵して運搬できるタンクに用いる鋼材の製造方法に関する。
近年のエネルギー需要の増大に鑑み、エネルギー輸送船のタンク容量の拡大が進んでいる。
そして、エネルギー輸送船の空輸送をなくす等の観点から、タンクにはLPGだけでなく液体アンモニアを低温貯蔵して運搬されることもある。したがって、低温貯蔵の観点からタンクの母材部および溶接部の低温靱性が基本特性として要求されることに加えて、アンモニアによる応力腐食割れを防止できる鋼材が要求されている。このような要求に対応すべく、種々の技術が提案されている。
例えば、特許文献1〜3には、低温靭性に優れたLPG・アンモニア混載用鋼材に係る技術が記載されている。これらの特許文献に記載された鋼材は、いずれも、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として720℃以上の温度で熱間圧延を行うことにより製造される。これらの技術においてこのような圧延を行うのは、オーステナイト粒を細粒化することを目的としている。
特開2002−3983号公報 特開2002−3987号公報 特開2006−336065号公報
オーステナイト未再結晶温度域で高圧下した場合、オーステナイト粒は細粒化し、それを引き継ぐ形で鋼材の組織が細粒化する。この場合、細粒効果により鋼材の強度が上昇する。このため、特許文献1〜3に記載された技術では鋼材組織が細粒化するため、鋼材強度の上昇が避けられない。この結果、鋼材の靭性の向上は図れるものの、合わせて降伏強度も上昇することになる。アンモニア貯蔵低温用鋼材では、アンモニア搭載による耐応力腐食割れ特性が要求されることから、降伏強度の規格上限が440MPaと規定されており、オーステナイト未再結晶温度域で高圧下した場合には、この規格範囲を超す鋼材が製造されうる。したがって、アンモニア貯蔵低温用鋼材として必要な特性(靭性)を向上させることができる一方、他の特性(降伏強度)が得られなくなるということが起こりうる。
本発明の目的は、靭性が高く降伏強度が規格範囲に適合する、LPGおよびアンモニアのいずれも低温貯蔵して運搬できるタンクに用いる鋼材の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、靭性が高く降伏強度が規格範囲に適合する、LPG・アンモニア運搬船用タンクに用いる鋼材を製造するにあたり、製造中のミクロ組織の状態を考慮し、そのようなミクロ組織を得るための製造方法を検討した。
鋼材が加熱され、オーステナイト域にあるスラブの残留ひずみが増加すると、フェライト変態の核生成サイトが増加し、鋼材のミクロ組織が微細化される。ミクロ組織の微細化は上述のように降伏強度の増大化を招く。したがって、圧延により付与される残留ひずみを制御することができれば、高降伏強度化は避けることができる。
発明者らは、残留ひずみから予測される降伏強度をシュミレーションにより計算した。その結果、残留ひずみが0.25〜0.35程度である場合には、降伏強度の規格範囲に適合することが判明した。
一方、一定量の残留ひずみはミクロ組織の微細化を促し低温靭性の向上に寄与する。そこで好ましい残留ひずみをスラブに付与すべく、熱間圧延の圧下方法について検討した。
従来の熱間圧延では、オーステナイト再結晶温度域から、オーステナイト未再結晶温度域を挟みオーステナイト-フェライト2相温度域の間で圧延を行っていた。この場合、オーステナイト未再結晶温度域での圧延量が大きくなるため、オーステナイト粒径の細粒化が進んでしまう。
そこで、再結晶の生じるオーステナイト再結晶温度域で多く圧延を行うことによって再結晶による細粒化を避けるとともに、オーステナイト未再結晶温度域で一部圧延を行うことで結晶粒の調整を行うことを考えた。このようにそれぞれの温度域で圧下比率制御をすることで適切な鋼材を得ることができるとの知見を得て、本発明を完成した。
本発明の要旨は、次の(1)〜(5)のいずれかに示すとおりである。以下、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(5)」という。また、本発明(1)〜本発明(5)を総称して、単に「本発明」ということがある。
(1) 質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.005〜0.06%、Cr:0.05〜0.20%、sol.Al:0.015〜0.08%、N:0.008%以下、O:0.005%以下を含有し、残部Fe及び不純物からなるスラブを加熱し、熱間圧延するLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法であって、オーステナイト再結晶温度域からオーステナイト-フェライト2相温度域にかけて熱間圧延を行うにあたり、オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延を開始し、熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とする熱間圧延を行うことを特徴とする、破面遷移温度vTrsが−55℃以下、降伏強度が315〜440MPa、引張強度が446〜494MPaのLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。

(2) スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Cu:0.30%以下及びNi:0.50%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(1)のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
(3) スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Mo:0.08%以下及びV:0.05%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
(4) スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Ca:0.005%以下及びMg:0.005%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかのLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
(5) オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延をした後、圧延を停止し、スラブ温度がオーステナイト未再結晶温度域まで低下した後に、熱間圧延を再開することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかのLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
(6) 粗ミルおよび仕上ミルの2つのミルを用いて製造するLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法であって、仕上ミルにおける熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とすることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかのLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
本発明によれば、破面遷移温度vTrsで−55℃以下という高い靭性を有し、440MPa以下という規格範囲に適合する鋼材を製造することができる。このような特性を有することで、LPG・アンモニアのいずれをも低温貯蔵することにも耐えることができるLPG・アンモニア混載用鋼材を製造することができる。
以下に、本発明の構成要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)スラブの化学組成
C:0.02〜0.10%
Cは、鋼材の強度上昇に極めて有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.02%未満では所望の強度確保ができないので、0.02%以上含有させる必要がある。一方、0.10%を超えて含有させると溶接継手部の靭性劣化を招くほか、硬度上昇により耐SCC特性を損なう。このため、Cの含有量は0.02〜0.10%とする。好ましくは、0.04〜0.07%である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、Alとともに脱酸材として必要な元素であり、また鋼材の強度上昇にも極めて有効である。十分な脱酸効果と十分な鋼材の強度を得るためには、0.05%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.5%を超えて含有させると溶接熱影響部の異常硬化及び継手靱性の低下につながる。このため、Siの含有量は0.05〜0.5%とする。好ましくは、0.1〜0.4%である。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、鋼の焼入性を向上させ、強度及び靱性を確保する上で重要な元素である。この効果を得るために、1.0%以上含有させる必要がある。しかし、1.8%を超えて含有させると焼戻し脆性が大きくなり、溶接性が劣化するなどの問題を生じる。このため、Mnの含有量は1.0〜1.8%とする。好ましくは、1.2〜1.6%である
P:0.02%以下
Pは、不純物として鋼中に存在する。鋼材の機械的特性、特に低温靱性を低下させることから極力低減することが望ましい。しかしながら、Pの除去には著しいコスト上昇を伴うため、所望特性の確保が可能な0.02%をPの含有量の上限とする。好ましくは0.015%以下である。
S:0.01%以下
Sは、不純物として鋼中に存在する。MnSを生成して低温靭性を低下させることから極力低減することが望ましい。しかしながら、Sの除去には著しいコスト上昇が避けられないため、所望特性の確保が可能な0.01%をSの含有量の上限とする。好ましくは0.005%以下である。
Ti:0.005〜0.02%
Tiは、鋼中のフリーのNを固定してスラブ表面や鋼材表面の清浄性を確保するのに極めて有効な元素である。そして、その効果は0.005%以上の含有量で顕著になる。しかしながら、0.02%を超えて過剰に含有させると鋼材の衝撃特性の低下をもたらす。このため、Tiの含有量は0.005〜0.02%とする。好ましくは、0.007〜0.015%である。
Nb:0.005〜0.06%
Nbは、細粒化と炭化物析出により母材の強度および靭性を向上させる。この効果を得るためには、Nbの含有量を0.005%以上とする必要がある。しかしながら、0.06%を超えて含有させると、溶接時の割れ性が低下する。したがって、Nbの含有量は0.005〜0.06%以下とする。好ましくは0.010〜0.04%である。
Cr:0.05〜0.20%
Crは、鋼材の強度上昇に寄与する元素である。この効果を得るには、Crの含有量を0.05%以上とする必要がある。しかしながら、0.20%を超えて含有させると、この効果が飽和するばかりか、溶接性の著しい低下をもたらすので、Crの含有量は0.20%以下とする。好ましくは0.07〜0.18%である。
sol.Al:0.015〜0.08%
sol.Alは、鋼中のフリーNをAlNとして固定し無害化する。また、脱酸材としての効果も有する。この効果を得るために0.015%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.08%を超えてsol.Alを含有させてもその効果が飽和するばかりか、HAZ(Heat Affected Zone:熱影響部)の靭性の劣化を招く。このため、sol.Al含有量を0.015〜0.08%とする。好ましくは0.02〜0.06%である。
N:0.008%以下
Nは、不可避的不純物として鋼中に存在する。Nは、sol.AlによりAlNとして固定されるが、Nが多量に存在する場合にはHAZ靭性の悪化原因になることから極力低減することが望ましい。したがって、N含有量を0.008%以下とする。好ましくは0.006%以下である。
O(酸素):0.005%以下
Oは、不純物として鋼中に存在する。Oが0.005%を超えると、酸化物系介在物が増加して鋼の清浄性と靱性が損なわれる。よって、Si含有量およびAl含有量を適量に規制にした上で0.005%以下にしなければならない。好ましくは0.003%以下である。
本発明に用いるスラブは、上記の成分のほか、残部がFeと不純物からなるものである。なお、不純物とは、スラブを工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分であって、本発明に悪影響を及ぼさない範囲で許容されるものを意味する。
本発明に用いるスラブにおいては、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、V、Ca及びMgのうち、1種又は2種以上を含有させてもよい。
Cu:0.30%以下
Cuには、強度および耐食性をより向上させる効果があるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.30%を超えてCuを含有させると、高温割れが生じる。このため、Cuは0.30%以下とする。好ましくは0.25%以下である。なお、Cuによる強度および耐食性の向上効果を安定的に得るためには、Cuを0.05%以上含有させるのが好ましい。
Ni:0.50%以下
Niには、固溶状態において鋼のマトリックス(生地)の靭性を高めて、靭性をさらに向上する効果があるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.50%を超えて含有させても靱性向上効果は飽和し、合金コストの上昇に見合った特性の向上が得られない。このため、Niは0.50%以下とする。好ましくは0.45%以下である。なお、Niによる靱性向上効果を安定的に得るためには、Niを0.05%以上含有させるのが好ましい。
Mo:0.08%以下
Moは、鋼材の強度上昇に寄与する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.08%を超えてMoを含有させると、鋼材の強度が大きくなりすぎ、降伏強度が規格範囲を超えるほか、溶接性にも影響を及ぼす。よって、Moの含有量は0.08%以下とする。好ましくは0.05%以下である。なお、Moによる鋼材の強度上昇効果を安定的に得るためには、Moを0.005%以上含有させるのが好ましい。
V:0.05%以下
Vは、Moと同様に、鋼材の強度上昇に寄与する元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.05%を超えてVを含有させると、鋼材の強度が大きくなりすぎ、降伏強度が規格範囲を超えてしまう。よって、Vの含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.02%以下である。なお、Vによる鋼材の強度上昇効果を安定的に得るためには、Vを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Ca:0.005%以下
Caは、鋼中のSと結び付いてCa-Mn-S化合物を形成することにより、Mn-S化合物の展進化を阻止し、鋼材の機械的特性の異方性を減少させることができる元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.005%を超えてCaを含有させても、鋼材の機械的特性の異方性減少効果が飽和するので、Caの含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.004%以下である。なお、Caによる鋼材の機械的特性の異方性減少効果を安定的に得るためには、Caを0.002%以上添加するのが好ましい。
Mg:0.005%以下
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制して組織を微細化する効果を有し、溶接部の低温靱性を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させることができる。しかしながら、0.005%を超えてMgを含有させても、溶接部の低温靱性向上効果が飽和するので、Mgの含有量を0.005%以下とする。好ましくは0.004%以下である。なお、Mgによる溶接部の低温靱性向上効果を安定的に得るためには、Mgを0.001%以上添加するのが好ましい。
(B)鋼材の製造方法
以下に、上記のスラブを用いて降伏強度が440MPa以下、靭性が破面遷移温度vTrsで−55℃以下であるLPG・アンモニア混載用鋼材を得るための製造条件を記載する。
まず、上述した組成を有するスラブを用意する。ここで、「スラブ」とは、鋼塊、ブルーム、ビレット等の総称として用いている。スラブはインゴット法により製造してもよいが、コスト低減の観点からは、連続鋳造法によりスラブを製造することが好ましい。この場合、板厚中心位置での介在物を制御するために、溶鋼の温度を過度に高くせず、溶鋼組成から決まる凝固温度に対し、その差が50℃以内になるように管理し、さらに凝固直前の電磁攪拌、凝固時の圧下を行うことが好ましい。スラブ厚は200mm厚以上であることが好ましい。
スラブはオーステナイト再結晶温度域まで加熱する。オーステナイト再結晶温度域で十分な圧延を行うために、Ar点+200℃以上に加熱することが好ましい。具体的には1000〜1180℃に加熱することが好ましい。
続いて、熱間圧延を行う。圧延工程では、オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延を開始し、熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とする熱間圧延を行う。
まず、オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延を開始することで再結晶が起こり、圧延による組織の微細化を避けることができる。ここで、オーステナイト未再結晶温度域での熱間圧延との関係で、熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト再結晶温度域でのパス数の比を50〜30%とすることが好ましい。
オーステナイト再結晶温度域で圧延した後は、圧延を停止し、スラブ温度がオーステナイト未再結晶温度域まで低下した後に熱間圧延を再開することが好ましい。圧延停止時には、スラブ温度の低下を放冷により行ってもよいし、水冷により行ってもよい。スラブ温度がオーステナイト未再結晶温度域まで低下した後は、熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とする熱間圧延を行う。このような熱間圧延を行うことでスラブに付与される残留ひずみを調整し、降伏強度と調整を図るとともに、高靭性化を図ることができる。
オーステナイト未再結晶温度域での圧延は、オーステナイト未再結晶温度域における低温側(オーステナイト未再結晶温度域の中間温度以下)になってから、開始することが好ましい。低温度域で圧延することでより残留ひずみを付与しやすくなるためである。
さらに熱間圧延はオーステナイト-フェライト2相温度域にスラブ温度が低下してから行ってもよい。オーステナイト-フェライト2相温度域で熱間圧延を行うことで、強度・靭性の安定化を図ることができる。
以上の熱間圧延を行えば、靭性が高く、降伏強度が規格範囲に適合する、LPGおよびアンモニアのいずれも貯蔵して運搬できるタンクに用いる鋼材の製造することができる。
なお、粗ミルおよび仕上ミルの2つのミルを用いてLPG・アンモニア混載用鋼材を製造する場合には、粗ミルでのパス数をカウントせず、仕上ミルにおける熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とすればよい。これは残留ひずみの付与量をコントロールするためである。
また、熱間圧延中は圧延により鋼材表面に生じたスケールを除去するためにデスケーリング処理を行ってもよい。すなわち、ミルに隣接して設置されたデスケーラーより鋼材表面へ水を噴射してスケールを除去してもよい。ただし、デスケーリング処理を行うと一時的に鋼材表面が冷却され鋼材表面と中央部の温度差が大きくなり、製造される鋼材ごとに降伏強度のバラツキが大きくなる場合がある。よって、デスケーリング処理はなるべく行わない方が望ましい。
熱間圧延後は特に通常行われる製造方法により鋼材を製造すればよい。例えば、熱間圧延後、空冷して室温まで鋼材を冷却してもよいし、水冷してもよい。水冷する場合には、圧延を完了した後、600℃以上の温度から水冷を開始し、5〜30℃/sec程度の冷却速度にて500℃以下の温度まで冷却したのち、水冷を停止すればよい。このような冷却パターンを取ることで、主としてフェライトからなる組織を形成し、降伏強度を上げることなく要求規格を満足することがより容易となる。
ここで、加熱温度は、圧延開始までは炉内雰囲気温度によって求め、圧延開始から水冷完了までは鋼材表面の実測温度によって求めればよい。また、冷却速度は、板厚中央部における計算値を用いればよい。
なお、水冷後、必要に応じて、さらに、焼戻し熱処理してもよい。例えば、450℃以上Ac点以下の温度に再加熱し、所定時間、均熱保持したのち、空冷または水冷してもよい。焼戻しを行うことにより組織の変態を進行させ安定な組織とすることができる。
(C)鋼材のミクロ組織
本発明に係る鋼材のミクロ組織、すなわち、タンクを製造する際の溶接する前の鋼材としてのミクロ組織は、主としてフェライト組織となる。
鋼材のミクロ組織がフェライト組織であれば、降伏強度はそれほど高くはならないので耐SCC特性に優れたものとなる。また、オーステナイト未再結晶域で一定の制御圧延を行ったことにより、適切なフェライト組織が得られ、LPG・アンモニア運搬船用タンクとして使用するために十分な低温靭性をも鋼材に付与することができる。
なお、ミクロ組織は完全にフェライト組織でなくてもよい。面積率にて60%以上がフェライト組織となればよく、フェライト組織のほかにパーライト組織やベイナイト組織が一部形成されても、LPG・アンモニア運搬船用タンクに用いられる鋼材として十分に使用することができる。
(D)靭性、降伏強度
本発明に係る製造方法で製造した鋼材の靭性は、破面遷移温度vTrsで−55℃以下、降伏強度は315〜440MPaのものが得られる。本発明では、熱間圧延における圧延パスを厳密に制御したことにより、降伏強度が440MPa以下となり、耐SCC(Stress Corrosion Cracking:応力腐食割れ)特性の確保が可能となるとともに、高い靭性を得ることができる。
表1に示す化学組成を有し、厚みが250mmのスラブを用意し、本発明の製造方法に従って、厚みtが16mmの鋼材を製造した。この鋼材の製造にあたっては、粗ミルおよび仕上ミルの2つのミルを用いた。詳細な製造条件は表2に示すとおりである。なお、表2中の未再結晶域2相域境界温度(Ar)は下記式(1)から計算される計算値である。
Ar=868−396C+24.6Si−68.1Mn−36.1Ni−20.9Cu−248Cr・・・(1)式
ここで、式中の元素記号は、スラブ中の各元素の含有量(質量%)を示す。
Figure 0005428999
Figure 0005428999
一連の製造工程を経て製造された鋼材は、その板厚tの鋼材表面から1/4の板厚位置(以下、板厚(1/4)t位置という。)において、圧延方向と平行の断面のミクロ組織を光学顕微鏡(倍率500倍)によって、2視野にて確認した。また、その板厚(1/4)t位置において、圧延方向とは垂直の断面より、引張試験片(JISZ2241、1A号試験片)およびシャルピー衝撃試験片(JIS Z2242、2mmVノッチ試験片)を採取し、試験に供した。
破面遷移温度(vTrs)は、シャルピー衝撃試験を行った試験片より脆性破面率を測定して求めた。なお、衝撃特性の目標はvTrsが−55℃以下とした。
腐食試験は、アンモニア積載の環境下を考慮した試験およびLPG積載の環境下を考慮した試験を行った。アンモニア積載の環境下を考慮した試験では、アンモニアに対する耐応力腐食割れ性の評価を行った。鋼材の一部から切り出した試験片を4点曲げによって500N/mmに相当する応力を付与し、試験温度25℃で腐食溶液(飽和NHCONH−液体NH)中に240時間浸漬した後、光学顕微鏡を用いて200倍の倍率で、それぞれの試験片の割れの有無を調査した。その結果、割れが観察されなかった場合を良好(〇)、割れが観察された場合を不良(×)として評価した。
一方、LPG積載の環境下を考慮した試験では、不純物として含まれる硫化物を考慮し、硫化物に対する耐応力腐食割れ性の評価を行った。同じく鋼材の一部から切り出した試験片を4点曲げによって500N/mmに相当する応力を付与し、試験温度5℃以下で腐食溶液(純水-2%HS)中に168時間浸漬した後、光学顕微鏡を用いて200倍の倍率で、それぞれの試験片の割れの有無を調査した。その結果、割れが観察されなかった場合を良好(〇)、割れが観察された場合を不良(×)として評価した。
表3に、ミクロ組織、引張試験(引張強度TS、降伏強度YP)、破面遷移温度vTrsおよび応力腐食割れ(アンモニア環境下、LPG環境下)の結果を示す。
Figure 0005428999
表3より本願発明で規定する製造方法で製造した鋼材、すなわち製法No.1-1、1-2、2-1、3-1、4-1および5〜7は、降伏強度がすべて315〜440MPaであり規格範囲内となり、破面遷移温度もいずれも−55℃以下と高い靭性を示した。また応力腐食割れ特性についても良好であった。一方、本発明で規定する製造方法を満足しない製造方法で製造した鋼材、すなわち製法No.1-3、2-2、3-2、4-2および8〜10は、所望の特性を得ることができなかった。
本発明によれば、靭性が高く降伏強度が規格範囲に適合する、LPGおよびアンモニアのいずれも貯蔵して運搬できるタンクに用いる鋼材の製造方法を提供することができる。したがって、製造された鋼材は、低温貯蔵用鋼材として使用するのに安全性がより向上するだけでなく、応力腐食割れも適切に防止することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.02〜0.10%、Si:0.05〜0.5%、Mn:1.0〜1.8%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Ti:0.005〜0.02%、Nb:0.005〜0.06%、Cr:0.05〜0.20%、sol.Al:0.015〜0.08%、N:0.008%以下、O:0.005%以下を含有し、残部Fe及び不純物からなるスラブを加熱し、熱間圧延するLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法であって、オーステナイト再結晶温度域からオーステナイト-フェライト2相温度域にかけて熱間圧延を行うにあたり、オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延を開始し、熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とする熱間圧延を行うことを特徴とする、破面遷移温度vTrsが−55℃以下、降伏強度が315〜440MPa、引張強度が446〜494MPaのLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
  2. スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Cu:0.30%以下及びNi:0.50%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1に記載のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
  3. スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Mo:0.08%以下及びV:0.05%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
  4. スラブが、Feの一部に代えて、質量%で、さらに、Ca:0.005%以下及びMg:0.005%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
  5. オーステナイト再結晶温度域で熱間圧延をした後、圧延を停止し、スラブ温度がオーステナイト未再結晶温度域まで低下した後に、熱間圧延を再開することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
  6. 粗ミルおよび仕上ミルの2つのミルを用いて製造するLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法であって、仕上ミルにおける熱間圧延での全パス数に対するオーステナイト未再結晶温度域でのパス数の比を40〜60%とすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載のLPG・アンモニア混載用鋼材の製造方法。
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