JP7323088B1 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

エネルギー輸送船において液化ガスの収容に使用される貯蔵用タンク等に供する、耐アンモニアSCC性および低温靭性に優れる高強度鋼板を提供する。鋼板は、所定の成分組成を有し、また、鋼板の表面から0.5mm深さの位置において、平均硬さがHv210以下で、当該平均硬さのばらつきがHv50以下である硬さ特性と、鋼板の表面から0.5mm深さの位置におけるベイナイト組織の体積率が90%以上、鋼板の板厚の1/2位置において、ベイナイト組織の体積率が20%以上で、かつフェライト組織およびベイナイト組織の合計体積率が60%以上である金属組織と、を有する。

Description

本発明は、靭性および耐食性に優れた高強度鋼板、特に低温かつ液体アンモニア環境下で使用するタンクなどの構造用部材に好適な、低温靱性および耐液体アンモニア応力腐食割れ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年のエネルギー需要の増加に伴い、エネルギー輸送船による液化ガスの輸送が盛んに行われている。エネルギー輸送船の効率的な運用のため、タンクにはLPGだけでなく液体アンモニアが共に運搬される場合がある。
ここで、液化アンモニアを取り扱う炭素鋼製の配管、貯槽、タンク車、ラインパイプなどにおいては、液体アンモニアによる応力腐食割れ(以下、アンモニアSCC(Stress Corrosion Cracking)を引き起こすことが知られている。このため、液体アンモニア環境下で使用される鋼材に対しては、アンモニアSCC感受性の低い鋼材の適用や、アンモニアSCCを抑制するエンジニアリング措置が講じられてきた。
例えば、アンモニアSCCの発生については、材料の強度と相関があることが知られており、炭素鋼の使用にあたっては、440MPa以下の降伏強度(YS)に制御することで、アンモニアによる応力腐食割れの回避が図られている。その一方で、近年のタンク大型化、鋼材使用量の削減の観点から、鋼板の高強度化の要求が高まっている。
また、LPGや液体アンモニアといった液化ガスは低温で輸送されるため、これらの液化ガスの貯蔵用タンクに使用される鋼板は、優れた低温靱性が要求される。
前述したような、液化ガス貯蔵用タンクに必要な、低温靱性と強度範囲とを満たすための技術が、特許文献1および2に開示されている。これらの文献に記載の技術では、熱間圧延後冷却した厚鋼板を数回熱処理する、あるいは熱間圧延後水冷した厚鋼板を数回熱処理するという方法にて、高い低温靱性および所定の強度特性を実現している。
特開平10-140235号公報 特開平10-168516号公報
しかしながら、上記の特許文献1および2に記載された方法では、複数回の熱処理を行う必要があり、そのための設備やエネルギーにかかるコストが大きいという経済的な問題があった。
本発明は、上記の問題を解決し、エネルギー輸送船において液化ガスの収容に使用される貯蔵用タンク等に供する、耐アンモニアSCC性および低温靭性に優れる高強度鋼板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、TMCPプロセスを用いて、鋼板の低温靱性、強度特性に対する各種要因について、鋭意検討を重ねた。その結果、鋼板に対し、C、Si、Mn、N等の元素を所定量以上で添加し、前記鋼板の板厚の1/2位置におけるフェライト組織およびベイナイト組織の合計体積率が60%以上となるように鋼板の金属組織(ミクロ組織)を制御すれば、所望の低温靱性および強度特性の達成に有効に寄与し得ることを見出した。
さらに、前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置におけるベイナイト組織の体積率を90%以上となるようにミクロ組織を制御し、前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置における平均硬さをHv210以下とした上で、かかる平均硬さのばらつきをHv50以下に制御することで、液体アンモニア環境下での耐SCC性が得られ、従来技術のようなコストがかかる熱処理を省略できることを知見した。
すなわち、本発明は、上記の知見に基づきなされたものであって、本発明の要旨は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.010~0.200%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.50~2.50%、
Al:0.060%以下、
N:0.0010~0.0100%、
P:0.020%以下、
S:0.0100%以下および
O:0.0100%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼板であって、
前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置において、平均硬さがHv210以下で、当該平均硬さのばらつきがHv50以下である硬さ特性と、
前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置におけるベイナイト組織の体積率が90%以上であり、前記鋼板の板厚の1/2位置において、ベイナイト組織の体積率が20%以上でかつフェライト組織およびベイナイト組織の合計体積率が60%以上である金属組織と、を有する、鋼板。
2.前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~2.00%、
Cr:0.01~1.00%、
Sn:0.01~0.50%、
Sb:0.01~0.50%、
Mo:0.01~0.50%および
W:0.01~1.00%
のうちから選ばれる1種以上を含有する、前記1に記載の鋼板。
3.前記成分組成が、さらに、質量%で、
V:0.01~1.00%、
Ti:0.005~0.100%、
Co:0.01~1.00%、
Nb:0.005~0.100%、
B:0.0001~0.0100%、
Ca:0.0005~0.0200%、
Mg:0.0005~0.0200%および
REM:0.0005~0.0200%
のうちから選ばれる1種以上を含有する、前記1または2に記載の鋼板。
4.質量%で、
C:0.010~0.200%、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.50~2.50%、
Al:0.060%以下、
N:0.0010~0.0100%、
P:0.020%以下、
S:0.0100%以下および
O:0.0100%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼素材について、圧延終了温度をAr変態点以上として熱間圧延を行い、次いでAr変態点以上の冷却開始温度から冷却する一次冷却を行い、次いで復熱による表面の加熱を行い、次いで二次冷却を行う、鋼板の製造方法であって、
前記一次冷却では、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における600℃から400℃までの冷却速度を30~100℃/sとし、
前記復熱による表面の加熱は、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における到達温度が500℃以上となるまで行い、
前記二次冷却では、鋼板の板厚の1/2位置における600℃以下の冷却停止温度までの冷却速度を10℃/s以上とする、鋼板の製造方法。
5.前記鋼素材の成分組成が、さらに、質量%で、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~2.00%、
Cr:0.01~1.00%、
Sn:0.01~0.50%、
Sb:0.01~0.50%、
Mo:0.01~0.50%および
W:0.01~1.00%
のうちから選ばれる1種以上を含有する、前記4に記載の鋼板の製造方法。
6.前記鋼素材の成分組成が、さらに、質量%で、
V:0.01~1.00%、
Ti:0.005~0.100%、
Co:0.01~1.00%、
Nb:0.005~0.100%、
B:0.0001~0.0100%、
Ca:0.0005~0.0200%、
Mg:0.0005~0.0200%および
REM:0.0005~0.0200%
のうちから選ばれる1種以上を含有する、前記4または5に記載の鋼板の製造方法。
本発明によれば、低温靭性すなわち低温での耐衝撃特性および耐アンモニアSCC性に優れ、低温かつ液体アンモニア環境下で使用されるタンクなどの構造用部材に好適な高い強度を有する鋼板を、安価な工程で提供することができる。
以下に、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の成分(元素)の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
(1)成分組成について
以下、鋼板の成分組成(化学成分)について説明する。
C:0.010~0.200%
Cは、本発明に従う冷却によって製造される鋼板の強度を高めるために最も有効な元素である。かかる効果を得るため、C含有量を0.010%以上に規定する。さらに、他の合金元素の含有量を少なくし、より低コストで製造するという観点からは、C含有量は0.013%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.200%を超えると鋼板の靭性および溶接性の劣化を招く。従って、C含有量を0.200%以下に規定する。さらに、C含有量は、靭性および溶接性の観点から、0.170%以下とすることが好ましい。
Si:0.01~0.50%
Siは、脱酸のため添加する。かかる効果を得るため、Si含有量を0.01%以上に規定する。さらに、0.03%以上とすることが好ましい。一方、Si含有量が0.50%を超えると鋼板の靭性や溶接性の劣化を招く。従って、Si含有量を0.50%以下に規定する。さらに、Si含有量は、靭性および溶接性の観点から、0.40%以下とすることが好ましい。
Mn:0.50~2.50%
Mnは、鋼の焼入れ性を増加させる作用を有する元素であり、本発明のように高強度を満足するためには添加が必要になる重要な元素の1つである。かかる効果を得るため、Mn含有量を0.50%以上に規定する。さらに、他の合金元素の含有量を少なくし、より低コストで製造するという観点からは、Mn含有量は0.70%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が2.50%を超えると、鋼板の靭性や溶接性が低下することに加えて、合金コストが過度に高くなってしまう。従って、Mn含有量を2.50%以下に規定する。さらに、Mn含有量は、靭性および溶接性の低下をより一層抑制する観点から、2.30%以下とすることが好ましい。
Al:0.060%以下
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒を微細化する作用を有する元素である。かかる効果を得るためには、Al含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Al含有量が0.060%を超えると、酸化物系介在物が増加して清浄度が低下すると共に、靭性が低下する。従って、Al含有量を0.060%以下に規定する。さらに、Al含有量は、靭性劣化をより一層防止する観点から、0.050%以下とすることが好ましい。
N:0.0010~0.0100%
Nは、組織の微細化に寄与し、鋼板の靭性を向上させる。かかる効果を得るため、N含有量を0.0010%以上に規定する。好ましくは、0.0020%以上である。一方、N含有量が0.0100%を超えると、かえって靭性の低下を招く。従って、N含有量を0.0100%以下に規定する。さらに、N含有量は、靭性や溶接性の低下をより一層抑制する観点から、0.0080%以下とすることが好ましい。なお、Nは、Tiが存在する場合には、そのTiと結合して、TiNとして析出し得る。
P:0.020%以下
Pは、粒界に偏析することによって靱性や溶接性を低下させるなど、悪影響を及ぼす。そのため、P含有量は、できる限り低くすることが望ましいが、0.020%以下であれば許容できる。一方、P含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、過剰の低減は精錬コストの高騰を招くため、コストの観点からはP含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
S:0.0100%以下
Sは、MnS等の硫化物系介在物として鋼中に存在し、破壊の発生起点となって鋼板の靭性を低下させるなど、悪影響を及ぼす元素である。そのため、S含有量は、できる限り低くすることが望ましいが、0.0100%以下であれば許容できる。一方、S含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、過剰の低減は精錬コストの高騰を招くため、コストの観点からはS含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
O:0.0100%以下
Oは、酸化物を形成し、破壊の発生起点となり、鋼板の靭性を低下させるなど、悪影響を及ぼす元素であることから、0.0100%以下に制限する。O含有量は、0.0050%以下とすることが好ましく、0.0030%以下とすることがより好ましい。一方、O含有量の下限は特に限定されず、0%であってよいが、過剰の低減は精錬コストの高騰を招くため、コストの観点からはO含有量を0.0010%以上とすることが好ましい。
本発明の鋼板の成分組成において、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、上記成分組成は、必要に応じて、以下に記載する元素を含有することができる。
Cu:0.01~0.50%、Ni:0.01~2.00%、Cr:0.01~1.00%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.01~0.50%、Mo:0.01~0.50%、およびW:0.01~1.00%のうちから選ばれる1種以上
Cu、Ni、Cr、Sn、Sb、MoおよびWは、強度や耐アンモニアSCC性を向上させる元素であり、これらのうちの1種以上を含有させることができる。かかる効果を得るため、Cuを含有させる場合には、Cu含有量を0.01%以上に、Niを含有させる場合には、Ni含有量を0.01%以上に、Crを含有させる場合には、Cr含有量を0.01%以上に、Snを含有させる場合には、Sn含有量を0.01%以上に、Sbを含有させる場合には、Sb含有量を0.01%以上に、Moを含有させる場合には、Mo含有量を0.01%以上に、また、Wを含有させる場合には、W含有量を0.01%以上に、それぞれ調整するのが好ましい。一方、Niを過剰に含有させると、溶接性の劣化や合金コストの上昇を招く。また、Cu、Cr、Sn、Sb、MoおよびWを過剰に含有させると、溶接性や靱性が劣化し、合金コストの観点からも不利になる。従って、Cu含有量を0.50%以下に、Ni含有量を2.00%以下に、Cr含有量を1.00%以下に、Sn含有量を0.50%以下に、Sb含有量を0.50%以下に、Mo含有量を0.50%以下に、また、W含有量を1.00%以下に、それぞれ調整するのが好ましい。より好ましくは、Cu含有量を0.40%以下に、Ni含有量を1.50%以下に、Cr含有量を0.80%以下に、Sn含有量を0.40%以下に、Sb含有量を0.40%以下に、Mo含有量を0.40%以下に、また、W含有量を0.80%以下に、それぞれ調整する。
V:0.01~1.00%
Vは、鋼板の強度を向上させる作用を有する元素であり、任意に添加することができる。かかる効果を得るため、Vを添加する場合には、V含有量を0.01%以上とするのが好ましい。一方、V含有量が1.00%を超えると、溶接性の劣化や合金コストの上昇を招く。従って、Vを添加する場合には、V含有量を1.00%以下とするのが好ましい。より好ましくは、V含有量の下限が0.05%であり、上限が0.50%である。
Ti:0.005~0.100%
Tiは、窒化物の形成傾向が強く、Nを固定して固溶Nを低減する作用を有する元素であり、任意に添加することができる。また、Tiは、母材および溶接部の靭性を向上させることができる。これらの効果を得るため、Tiを添加する場合には、Ti含有量を0.005%以上とするのが好ましい。さらに、0.007%以上とすることがより好ましい。一方、Ti含有量が0.100%を超えると、かえって靭性が低下する。従って、Tiを添加する場合には、Ti含有量を0.100%以下とするのが好ましい。さらに、Ti含有量は、0.090%以下とすることがより好ましい。
Co:0.01~1.00%
Coは、鋼板の強度を向上させる作用を有する元素であり、任意に添加することができる。かかる効果を得るため、Coを添加する場合には、Co含有量を0.01%以上とするのが好ましい。一方、Co含有量が1.00%を超えると、溶接性の劣化や合金コストの上昇を招く。従って、Coを添加する場合には、Co含有量を1.00%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Co含有量の下限が0.05%であり、上限が0.50%である。
Nb:0.005~0.100%
Nbは、炭窒化物として析出することで旧オーステナイト粒径を小さくし、靭性を向上させる効果を有する元素である。かかる効果を得るため、Nbを添加する場合には、Nb含有量を0.005%以上とするのが好ましい。さらに、0.007%以上とすることがより好ましい。一方、Nb含有量が0.100%を超えるとNbCが多量に析出し、靭性が低下する。従って、Nbを添加する場合には、Nb含有量を0.100%以下とするのが好ましい。さらに、0.060%以下とすることがより好ましい。
B:0.0001~0.0100%
Bは、微量の添加でも焼入れ性を著しく向上させる作用を有する元素である。すなわち、鋼板の強度を向上させることができる。かかる効果を得るため、Bを添加する場合には、B含有量を0.0001%以上とするのが好ましい。一方、B含有量が0.0100%を超えると溶接性が低下する。従って、Bを添加する場合には、B含有量を0.0100%以下とするのが好ましい。より好ましくは、B含有量の下限が0.0010%であり、上限が0.0030%である。
Ca:0.0005~0.0200%
Caは、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制する作用を有する元素である。すなわち、Caを添加することにより、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性を向上させることができる。かかる効果を得るために、Caを添加する場合には、Ca含有量を0.0005%以上とするのが好ましい。一方、Ca含有量が0.0200%を超えると、鋼の清浄度が低下する。清浄度の低下は、靭性の低下を招く。従って、Caを添加する場合、Ca含有量を0.0200%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Ca含有量の下限が0.0020%であり、上限が0.0100%である。
Mg:0.0005~0.0200%
Mgは、Caと同様、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制する作用を有する元素である。すなわち、Mgを添加することにより、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性を向上させることができる。かかる効果を得るために、Mgを添加する場合には、Mg含有量を0.0005%以上とするのが好ましい。一方、Mg含有量が0.0200%を超えると、鋼の清状度が低下する。清浄度の低下は、靭性の低下を招く。従って、Mgを添加する場合には、Mg含有量を0.0200%以下とするのが好ましい。より好ましくは、Mg含有量の下限が0.0020%であり、上限が0.0100%である。
REM:0.0005~0.0200%
REM(希土類金属)は、CaやMgと同様、Sと結合し、圧延方向に長く伸びるMnS等の形成を抑制する作用を有する元素である。すなわち、REMを添加することにより、硫化物系介在物が球状を呈するように形態制御し、溶接部等の靭性を向上させることができる。かかる効果を得るために、REMを添加する場合には、REM含有量は0.0005%以上が好ましい。一方、REM含有量が0.0200%を超えると、鋼の清状度が低下する。清浄度の低下は、靭性の低下を招く。従って、REMを添加する場合、REM含有量は0.0200%以下が好ましい。より好ましくは、REM含有量の下限が0.0020%であり、上限が0.0100%である。
(2)硬さ特性および金属組織について
本発明の鋼板は、上記成分組成を有することに加えて、鋼板の表面から0.5mm深さの位置(本発明において0.5mm位置ともいう)の平均硬さがHv210以下で、当該平均硬さのばらつきがHv50以下である硬さ特性を有する。
さらに、本発明の鋼板は、0.5mm位置におけるベイナイト組織(以下、単にベイナイトともいう)の体積率が90%以上であり、鋼板の板厚の1/2位置(本発明において板厚の1/2の深さの位置を意味する。以下、単に1/2位置または板厚中心部ともいう)において、ベイナイトの体積率が20%以上で、かつフェライト組織(以下、単にフェライトともいう)およびベイナイトの合計体積率が60%以上である金属組織を有する。
鋼板の硬さ特性および金属組織を上記のように限定する理由を、以下に説明する。
[0.5mm位置において、平均硬さがHv210以下、かつ、そのばらつきがHv50以下]
0.5mm位置における平均硬さは、Hv210以下とし、かつ、そのばらつきをHv50以下とする。鋼板の極表層、具体的には鋼板の表面から0.5mm位置に高硬度領域が存在すると、液体アンモニア環境中での応力腐食割れが助長されてしまう。また、局所的な高硬度領域が存在した場合、鋼板に応力が付与された際に、応力集中が生じ、応力腐食割れが助長されてしまう。そこで、本発明の鋼板では、0.5mm位置における平均硬さをHv210以下とし、かつ、そのばらつきをHv50以下として硬さ特性を調整することで、優れた耐アンモニアSCC性を確保することができる。なお、0.5mm位置における平均硬さの下限は、特に限定されないが、Hv130程度が好ましい。また平均硬さのばらつきの下限は、Hv0であって良いが、工業的にはHv10程度である。
ここで、上記平均硬さは、0.5mm位置におけるビッカース硬さを複数箇所(例えば、100点)測定して算出することができる。また、平均硬さのばらつきは、平均硬さを求めるために測定したビッカース硬さの標準偏差を意味する。
[0.5mm位置におけるベイナイトの体積率が90%以上]
強度特性や耐アンモニアSCC性を満足させるためには、0.5mm位置における組織は、ベイナイトの体積率が90%以上とする必要がある。表層部は、マルテンサイト組織や島状マルテンサイト(MA)組織等の硬質相が生成した場合、表層硬さが上昇し、鋼板内の硬さのばらつきが増大して材質均一性が阻害される。すなわち、ベイナイトの体積率が90%未満であると、これ以外の組織、すなわちフェライト、島状マルテンサイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織、オーステナイト組織の体積分率が増加することになり、十分な強度および/または耐アンモニアSCC性が得られない。
ここで、ベイナイトは、変態強化に寄与する冷却時あるいは冷却後に変態するベイニティックフェライトまたはグラニュラーフェライトと称される組織、またそれらが焼き戻された組織を含むものとする。
体積率で10%以下を占める残部組織には、フェライト、パーライト組織およびオーステナイト組織の他、マルテンサイト組織が含まれていてもよい。残部組織における各組織の分率は特に限定する必要はないが、残部組織はパーライト組織であることが好ましい。
[1/2位置において、ベイナイトの体積率が20%以上、かつフェライトおよびベイナイトの合計体積率が60%以上]
1/2位置における組織は、ベイナイトの体積率が20%以上、かつフェライトおよびベイナイトの合計体積率が60%以上である必要がある。フェライトが過剰に生成した場合、強度あるいは靭性の低下を招く。また、フェライトおよびベイナイトの合計体積率が60%未満であると、これ以外の組織、すなわち島状マルテンサイト組織、マルテンサイト組織、パーライト組織およびオーステナイト組織の体積分率が増加することになり、十分な強度あるいは靭性が得られずに、機械特性を満足することができない。なお、上記フェライトおよびベイナイトの合計体積率は100%であって良い。
ここで、前記フェライトは、焼戻しを受ける前の冷却過程で生成したフェライトを意味し、前記ベイナイトは、焼戻しを受ける前の冷却過程で生成したベイナイトを意味する。また、板厚中心部でのミクロ組織を規定するのは、板厚中心部でのミクロ組織が、かかる板厚中心部の強度特性に影響を与えるためであり、また、かかる板厚中心部の強度特性が、鋼板全体の強度に影響を与えるためである。
体積率で40%以下を占める残部組織は、パーライト組織およびオーステナイト組織の他、マルテンサイト組織が含まれていてもよい。残部組織における各組織の分率は特に限定する必要はないが、残部組織はパーライト組織であることが好ましい。
なお、各種ミクロ組織の体積率は、後述の実施例に記載した方法で測定することができる。
(3)製造条件について
本発明における製造方法は、C:0.010~0.200%、Si:0.01~0.50%、Mn:0.50~2.50%、Al:0.060%以下、N:0.0010~0.0100%、P:0.020%以下、S:0.0100%以下およびO:0.0100%以下を含有し、さらに、必要に応じ、Cu:0.01~0.50%、Ni:0.01~2.00%、Cr:0.01~1.00%、Sn:0.01~0.50%、Sb:0.01%~0.50%、Mo:0.01~0.50%およびW:0.01~1.00%のうちから選ばれる1種以上並びに/またはV:0.01~1.00%、Ti:0.005~0.100%、Co:0.01~1.00%、Nb:0.005~0.100%、B:0.0001~0.0100%、Ca:0.0005~0.0200%、Mg:0.0005~0.0200%およびREM:0.0005~0.0200%のうちから選ばれる1種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼素材について、加熱し熱間圧延を行った後、本発明に従う所定の冷却を行うものである。以下に、鋼板の製造条件の限定理由について説明する。
まず、鋼素材の製造条件は、特に限定する必要はないが、例えば、上述した成分組成を有する溶鋼を、転炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造方法にて、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、造塊-分解圧延法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材としても何ら問題はない。
かようにして得られた鋼素材は、冷却することなく直接熱間圧延するか、あるいは再度加熱してから熱間圧延する。かかる熱間圧延は、圧延終了温度をAr変態点の温度(以下単にAr変態点という)以上として行う。熱間圧延に次いで、Ar変態点以上の冷却開始温度から冷却する一次冷却を所定条件で行い、次いで復熱による表面の加熱を所定条件で行い、次いで二次冷却を所定条件で行う。
鋼素材の加熱温度(熱間圧延に供する際の温度)は特に限定されないが、加熱温度が低すぎると変形抵抗が高くなって、熱間圧延機への負荷が増大し、熱間圧延が困難になるおそれがある。一方、1300℃を超える高温になると、酸化が著しくなって酸化ロスが増大し、歩留りが低下するおそれが増える。このような理由から、加熱温度は、950℃以上1300℃以下にすることが好ましい。
(熱間圧延)
[圧延終了温度:Ar変態点以上]
本発明では、上記温度に加熱後、熱間圧延を開始して、Ar3変態点以上で当該熱間圧延を終了する。
圧延終了温度がAr3変態点未満となると、フェライトが生成し、鋼板表層部での材質均一性が阻害され、硬さのばらつきが増大するため、耐アンモニアSCC性が劣化する。また、生成したフェライトが加工の影響を受けるため、靭性が悪化することになる。さらには、熱間圧延機への負荷が大きくなる。従って、熱間圧延における圧延終了温度は、Ar3変態点以上とする。より好ましくは、熱間圧延における圧延終了温度は、Ar3変態点+10℃以上の温度である。一方、圧延終了温度が950℃を超えると、組織が粗大化し靭性が劣化するおそれがあるため、圧延終了温度は、950℃以下であることが好ましい。
ここで、Ar3変態点は、次式で求めることが可能である。
Ar3(℃)=910-310×C-80×Mn-20×Cu-15×Cr-55×Ni-80×Mo
ただし、各元素は当該元素の鋼中含有量(質量%)を示す。
(一次冷却)
[冷却開始温度:Ar変態点以上]
次に、熱間圧延後の鋼板について、Ar3変態点以上の冷却開始温度から冷却する一次冷却を行う。一次冷却における冷却開始温度がAr3変態点未満では、フェライトが過剰に生成し、強度不足が生じ、さらにはアンモニアSCCが劣化する。そのため、冷却開始温度はAr3変態点以上とする。
[0.5mm位置における600~400℃での冷却速度:30~100℃/s]
一次冷却において、0.5mm位置における600~400℃の範囲での冷却速度(一次冷却速度と称することがある)が100℃/sを超えると、かかる0.5mm位置における平均硬さがHv210超となり、耐アンモニアSCC性が劣化する。一方、30℃/s未満では、フェライトやパーライトが生成して、材質均一性が損なわれることによる耐アンモニアSCC性の劣化を招くおそれがある。また、30℃/s未満では、フェライトやパーライトが過剰に生成し、強度不足を招くおそれがある。従って、上記一次冷却速度を、30~100℃/sに規定する。
なお、冷却停止期間を含む間欠的な冷却による制御冷却により、上記一次冷却速度を制御することができる。また、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における温度は、物理的に直接測定することは困難である。しかし、放射温度計にて測定された冷却開始時の表面温度と目標の冷却停止時の表面温度とをもとに、例えばプロセスコンピューターを用いて差分計算を行うことにより、板厚断面内の温度分布、特には0.5mm位置における温度を、リアルタイムに求めることができる。
(復熱による表面の加熱)
[0.5mm位置における到達温度:500℃以上]
上記一次冷却の後、一時的に冷却を停止し、復熱による鋼板表面の加熱を行う。また、この復熱による表面の加熱は、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における到達温度が500℃以上となるまで行う。表層部に生成したマルテンサイトあるいはベイナイトの組織を、冷却停止に伴う板厚中心部側からの復熱によって焼き戻す。0.5mm位置における到達温度(復熱温度)が500℃未満では、焼戻しの効果は不十分となるため、表層の硬度が高く、また材質均一性が得られなくなって耐アンモニアSCC性が劣化する。一方、0.5mm位置における到達温度の上限は、特に限定されないが、たとえば700℃以下とすることができる。
(二次冷却)
[1/2位置における冷却停止温度:600℃以下]
上記復熱による鋼板表面の加熱を行った後、冷却を再開する、すなわち二次冷却を行う。この二次冷却は、1/2位置における温度が600℃以下となるまで行う。本発明では、熱間圧延終了後に、600℃以下の任意に設定した冷却停止温度まで、所定条件で二次冷却を行うことにより、板厚中心部にてフェライトおよびベイナイトの組織を所定の体積率にすることができる。ここで、冷却停止温度が600℃超であると、フェライト組織やパーライト組織が過剰に生成して、強度不足を招くおそれがある。従って、冷却停止温度は600℃以下に規定する。かかる冷却停止温度の下限は、特に限定されないが、冷却停止温度が過度に低くなると、島状マルテンサイトの体積率が多くなりすぎてしまい、靭性が低下する。そのため、冷却停止温度は、200℃以上とすることが好ましい。
[1/2位置における600℃以下の冷却停止温度までの冷却速度:10℃/s以上]
また、二次冷却の際の冷却速度として、フェライトあるいはベイナイトが所定の体積率になるように、1/2位置における600℃以下の冷却停止温度までの冷却速度(二次冷却速度と称することがある)を、10℃/s以上とする。上記二次冷却速度が10℃/s未満であると、フェライトやパーライトが過剰に生成し、強度不足を招くおそれがある。一方、上記二次冷却速度の上限は、特に限定されないが、たとえば65℃/s以下とすることができる。
ここで、二次冷却における冷却開始温度(1/2位置における冷却開始温度)は、通常は、復熱による表面の加熱を行った直後の1/2位置における温度とすることができる。
なお、冷却停止期間を含む間欠的な冷却による制御冷却により、上記二次冷却速度を制御することができる。また、1/2位置における温度は、物理的に直接測定することは困難である。しかし、放射温度計にて測定された冷却開始時の表面温度と目標の冷却停止時の表面温度とをもとに、例えばプロセスコンピューターを用いて差分計算を行うことにより、板厚断面内の温度分布、特には1/2位置における温度を、リアルタイムに求めることができる。
上記した成分組成を有する鋼素材を、上記した製造条件に従って製造することによって、本発明に従う成分組成ならびに硬さ特性および金属組織を有する鋼板を得ることができる。かくして得られた鋼板は、優れた強度特性と靭性とを具えることになる。ここで、優れた強度特性とは、降伏強さYS(降伏点があるときは降伏点YP、ないときは0.2%耐力σ0.2):360MPa以上および引張強さ(TS):490MPa以上である。また、優れた靭性とは、JIS Z 2241に準拠するvTrsが-30℃以下である。
なお、本発明に従う製造方法では、本明細書に記載のない項目は、いずれも常法を用いることができる。
表1に示す成分組成の鋼(鋼種A~AH、残部はFeおよび不可避的不純物)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚25mmの厚鋼板(No.1~50)とした。次いで、表2に示す条件で、熱間圧延、一次冷却、復熱による表面の加熱、二次冷却を順次行い、鋼板を得た。得られた鋼板について、鋼板表面から0.5mm位置および板厚の1/2位置における金属組織の組織分率の測定、鋼板表面から0.5mm位置における硬さ特性の評価、強度特性および靭性の評価、耐アンモニアSCC性の評価をそれぞれ実施した。各試験方法は次のとおりである。また、これらの結果を、表2に併記する。
[0.5mm位置および1/2位置における金属組織の組織分率]
各鋼板から0.5mm位置あるいは1/2位置(板厚中心部)が観察面となるように、サンプルを採取した。次いで、かかるサンプルを鏡面研磨し、さらにナイタール腐食をした後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10mm×10mmの範囲を倍率:500~3000倍で撮影した。そして、撮影された像について、画像解析装置を用いて解析することによって、ミクロ組織の面分率(金属組織の組織分率)を求めた。ミクロ組織の異方性が小さい場合、面分率は体積率に相当するため、本発明では面分率を体積率と見なした。
なお、本実施例において、サンプルの金属組織の分率を求める際の判別は、次のとおりに行った。すなわち、上述の撮影された像において、ポリゴナル状のフェライトをフェライト(表2におけるF)と判別し、また細長く成長したラス状のフェライトを有し、円相当径で0.05μm以上の炭化物を含む組織をベイナイト(表2におけるB)と判別した。
[硬さ特性]
各鋼板の圧延方向に直角な断面について、JIS Z 2244に準拠して、0.5mm位置において100点のビッカース硬さ(HV0.1)を測定し、その平均値を求めた。また、かかる100点のビッカース硬さの標準偏差を求め、0.5mm位置の平均硬さのばらつきとした。ここで、通常、鋼板の硬度測定に用いられるHV10に代えてHV0.1を用いたのは、HV0.1で測定することにより圧痕が小さくなるので、より表面に近い位置での硬さ情報や、よりミクロ組織に敏感な硬さ情報を得ることが可能となるからである。
[強度特性]
各鋼板の全厚から、圧延方向に直角かつ板厚方向に直角の方向にJIS Z 2201の1B号試験片を採取して、JIS Z 2241に記載の要領で引張試験を行い、降伏強さYS(降伏点があるときは降伏点YP、ないときは0.2%耐力σ0.2)および引張強さ(TS)を測定した。そして降伏強さが360MPa以上、引張強さが490MPa以上のものを、強度特性に優れた鋼板と評価した。
[靭性]
各鋼板の表面側から1mm削った部位から、圧延方向にJIS Z 2202のVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242の要領でシャルピー衝撃試験を行い、vTrs(破面遷移温度)を測定した。そして、かかるvTrsが-30℃以下のものを、靭性に優れた鋼板と評価した。
[耐アンモニアSCC性]
耐アンモニアSCC性は、試験溶液で4点曲げ試験を実施し、腐食を促進させるため定電位アノード電解した促進試験により評価した。
具体的には、以下の手順で実施した:
鋼板表面から、5mm厚×15mm×115mmの試験片を採取して、アセトン中で超音波脱脂を5分間行い、4点曲げにより各鋼板の実際の降伏強さの100%YSの応力を負荷した。かかる4点曲げの試験片を試験セルに設置し、カルバミン酸アンモニウム12.5gと液体アンモニア1Lとを混合した溶液を充填した後、ポテンショスタットにより、試験片に+2.0V vs Ptが流れるように制御し、室温(25℃)で浸漬した。168時間の浸漬後に、割れが認められない場合を、耐アンモニアSCC性が「良」と判定し、また割れが発生した場合を、耐アンモニアSCC性が「不良」と判定した。
Figure 0007323088000001
Figure 0007323088000002
Figure 0007323088000003
表1および2から分かるように、発明例(No.1~31)は、いずれも、360MPa以上の降伏強度YSと490MPa以上の引張強度TSとをもち、vTrsが-30℃以下であり低温での靭性に優れ、かつ耐アンモニアSCC性にも優れた鋼板が得られている。
一方、No.32~39は、成分組成が本発明の範囲内であるものの、製造方法が本発明の範囲外であるため、所望の金属組織および/または硬さ特性が得られていない。その結果、降伏強度YS、引張強度TS、低温での靱性、あるいは耐アンモニアSCC性のいずれかが劣っている。
また、No.40~50は、鋼の成分組成が本発明の範囲外であるため、降伏強度YS、引張強度TS、低温での靱性、あるいは耐アンモニアSCC性のいずれかが劣っている。なお、本発明では、鋼の成分組成は、そのまま鋼板の成分組成と考えてよい。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.010~0.200%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.50~2.50%、
    Al:0.060%以下、
    N:0.0010~0.0100%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0100%以下および
    O:0.0100%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼板であって、
    前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置において、平均硬さがHv210以下で、当該平均硬さのばらつきがHv50以下である硬さ特性と、
    前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置におけるベイナイト組織の体積率が90%以上であり、前記鋼板の板厚の1/2位置において、ベイナイト組織の体積率が20%以上でかつフェライト組織およびベイナイト組織の合計体積率が60%以上である金属組織と、を有する、鋼板。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Cu:0.01~0.50%、
    Ni:0.01~2.00%、
    Cr:0.01~1.00%、
    Sn:0.01~0.50%、
    Sb:0.01~0.50%、
    Mo:0.01~0.50%および
    W:0.01~1.00%
    のうちから選ばれる1種以上を含有する、請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    V:0.01~1.00%、
    Ti:0.005~0.100%、
    Co:0.01~1.00%、
    Nb:0.005~0.100%、
    B:0.0001~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.0200%、
    Mg:0.0005~0.0200%および
    REM:0.0005~0.0200%
    のうちから選ばれる1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載の鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.010~0.200%、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.50~2.50%、
    Al:0.060%以下、
    N:0.0010~0.0100%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0100%以下および
    O:0.0100%以下
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物である成分組成を有する鋼素材について、圧延終了温度をAr3変態点以上として熱間圧延を行い、次いでAr3変態点以上の冷却開始温度から冷却する一次冷却を行い、次いで復熱による表面の加熱を行い、次いで二次冷却を行う、鋼板の製造方法であって、
    前記鋼板は、前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置において、平均硬さがHv210以下で、当該平均硬さのばらつきがHv50以下である硬さ特性と、前記鋼板の表面から0.5mm深さの位置におけるベイナイト組織の体積率が90%以上であり、前記鋼板の板厚の1/2位置において、ベイナイト組織の体積率が20%以上でかつフェライト組織およびベイナイト組織の合計体積率が60%以上である金属組織と、を有し、
    前記一次冷却では、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における600℃から400℃までの冷却速度を30~100℃/sとし、
    前記復熱による表面の加熱は、鋼板の表面から0.5mm深さの位置における到達温度が500℃以上となるまで行い、
    前記二次冷却では、鋼板の板厚の1/2位置における600℃以下の冷却停止温度までの冷却速度を10℃/s以上とする、鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼素材の成分組成が、さらに、質量%で、
    Cu:0.01~0.50%、
    Ni:0.01~2.00%、
    Cr:0.01~1.00%、
    Sn:0.01~0.50%、
    Sb:0.01~0.50%、
    Mo:0.01~0.50%および
    W:0.01~1.00%
    のうちから選ばれる1種以上を含有する、請求項4に記載の鋼板の製造方法。
  6. 前記鋼素材の成分組成が、さらに、質量%で、
    V:0.01~1.00%、
    Ti:0.005~0.100%、
    Co:0.01~1.00%、
    Nb:0.005~0.100%、
    B:0.0001~0.0100%、
    Ca:0.0005~0.0200%、
    Mg:0.0005~0.0200%および
    REM:0.0005~0.0200%
    のうちから選ばれる1種以上を含有する、請求項4または請求項5に記載の鋼板の製造方法。
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