JP4600647B2 - 圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器 - Google Patents

圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器 Download PDF

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本発明は、圧電体膜、圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器に関する。
高画質、高速印刷を可能にするプリンターとして、インクジェットプリンターが知られている。インクジェットプリンターは、内容積が変化するキャビティーを備えたインクジェット式記録ヘッドを備え、このヘッドを走査させつつそのノズルからインク滴を吐出することにより、印刷を行うものである。このようなインクジェットプリンター用のインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッドアクチュエーターとしては、従来、PZT(Pb(Zr,Ti)O)に代表される圧電体膜を用いた圧電素子が用いられている(たとえば、特許文献1)。
また、表面弾性波素子や周波数フィルタ、発振器、電子回路などにおいても、その特性向上が望まれていることから、新たな圧電材料による良好な製品の提供が望まれている。
特開2001−223404号公報
本発明の目的は、良好な圧電特性を有する圧電体膜を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記圧電体膜を用いた圧電素子、圧電アクチュエーター、圧電ポンプ、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器、および電子機器を提供することにある。
本発明の第1の形態にかかる圧電体膜は、
(Pb1−dBi)(B1−a)Oの一般式で示される圧電体からなり、
Bは、ZrおよびTiの少なくとも一方からなり、
Xは、NbおよびTaの少なくとも一方からなり、
aは、0.05≦a≦0.4の範囲であり、
dは、0<d≦0.5の範囲である。
本発明にかかる第2の形態にかかる圧電体膜は、
(Pb1−dBi1−b(B1−a)Oの一般式で示される圧電体からなり、
Bは、ZrおよびTiの少なくとも一方からなり、
Xは、NbおよびTaの少なくとも一方からなり、
a、b、およびdは、
b=(a+d)/(2+d)の関係式を満たし、
aは、0.05≦a≦0.4の範囲であり、
dは、0<d≦0.5の範囲である。
本発明の第3の形態にかかる圧電体膜は、
(Pb1−dBi1−b(B1−a)O3−cの一般式で示される圧電体からなり、
Bは、ZrおよびTiの少なくとも一方からなり、
Xは、NbおよびTaの少なくとも一方からなり、
a、b、c、およびdは、
b=(a+d+2c)/(2+d)の関係式を満たし、
aは、0.05≦a≦0.4の範囲であり、
cは、0≦c≦0.05の範囲であり、
dは、0<d≦0.5の範囲である。
本発明によれば、AサイトにPbを有するペロブスカイト型構造を有する結晶においてPbより価数の高い上述のBiを、Pbと置換させることで、結晶構造全体としての中性を保持することができ、その結果、酸素の欠損を防止することができる。これにより圧電体膜5の絶縁性は良好なものとなり、電流リークを防止することができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
前記Biは、ペロブスカイト型構造のAサイトに存在することができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
前記圧電体膜は、Si、または、SiおよびGeを含むことができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
(Pb1−dBi)(Zr1−p,Ti1−aNbの一般式で示される圧電体からなり、
pは、0.2≦p≦0.6の範囲であることができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
pは、(pMPB−0.05)≦p≦pMPBの範囲であり、
MPBは、該圧電体膜の結晶構造の相境界におけるpの値を示すことができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
該圧電体膜の結晶構造の相境界におけるpを有することができる。
本発明にかかる圧電体膜において、
ロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向していることができる。
本発明にかかる圧電素子は、
上述した圧電体膜と、
前記圧電体膜の上方に形成された上部電極と、
前記圧電体膜の下方に形成された下部電極と、
を有する。
本発明にかかる圧電素子において、
前記下部電極は、ペロブスカイト型構造を有する結晶からなることができる。
本発明にかかる圧電アクチュエーターは、
上述した圧電素子を有する。
本発明にかかる圧電ポンプは、
上述した圧電体膜を有する。
本発明にかかるインクジェット式記録ヘッドは、
上述した圧電体膜を有する。
本発明にかかるインクジェットプリンターは、
上述したインクジェット式記録ヘッドを有する。
本発明にかかる表面弾性波素子は、
上述した圧電体膜が、基板の上方に形成されてなる。
本発明にかかる周波数フィルタは、
上述した表面弾性波素子が有する前記圧電体膜の上方に形成された第1の電極と、
前記圧電体膜の上方に形成された第2の電極と、を含む。
本発明にかかる発振器は、
上述した表面弾性波素子が有する前記圧電体膜の上方に形成された第1の電極と、
前記圧電体膜の上方に形成された第2の電極と、
トランジスタを有する発振回路と、を含む。
本発明にかかる電子回路は、
上述した発振器を含む。
本発明にかかる薄膜圧電共振機は、
上述した圧電体膜を有する共振子が、基板の上方に形成されてなる。
本発明にかかる電子機器は、
上述した電ポンプ、上述した周波数フィルタ、上述した発振器、上述した電子回路、上述した薄膜圧電共振器のうちの少なくとも1つを有する。
以下、本発明に好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1−1.圧電体膜および圧電素子
図1は、本発明にかかる圧電素子1を示す断面図である。この圧電素子1は、基板2上に形成されたバッファ層3と、バッファ層3の上に形成された下部電極4と、下部電極4の上に形成された圧電体膜5と、圧電体膜5の上に形成された上部電極6と、を備える。
基板2は、たとえばシリコン基板を用いることができる。本実施の形態において、基板2には、シリコンの(110)基板を用いている。基板2は加工されることにより、後述するようにインクジェット式記録ヘッド50においてインクキャビティーを形成するものとなる。また、バッファ層3は、インクジェット式記録ヘッド50において弾性膜として機能するものとなる。
バッファ層3としては、単一配向している(厚さ方向にのみ配向方位が揃っている)ものであればよいが、さらに面内配向している(三次元方向の全てに配向方位が揃っている)ものであるのが好ましい。このようなバッファ層3を設けることにより、自然酸化膜を形成したシリコン基板からなる基板2と後述する下部電極4との間で、優れた接合性(密着性)を得ることができる。
また、このバッファ層3は、NaCl構造の金属酸化物、蛍石型構造の金属酸化物、ペロブスカイト構造の金属酸化物等のうちの少なくとも1種を含むものが好ましく、特に、NaCl構造の金属酸化物又は蛍石型構造の金属酸化物と、ペロブスカイト構造の金属酸化物とが積層された構造となっているのが好ましい。NaCl構造の金属酸化物や蛍石型構造の金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が小さいので、後述するように下部電極4として特にペロブスカイト構造のものを形成する場合に、その下地となるペロブスカイト構造の層を形成するうえで有利となることができる。
本実施の形態におけるバッファ層3は、NaCl構造の金属酸化物または蛍石型構造の金属酸化物からなる第1バッファ層7および第2バッファ層8と、この第2バッファ層8の上に形成されたペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる第3バッファ層9とによって構成されている。
第1バッファ層7は、たとえばイオンビームアシスト法で形成することができる。第1バッファ層7は、たとえば立方晶(100)配向のイットリア安定化ジルコニア(以下、「YSZ」という)を用いることができる。YSZとしては、以下の式で表されるものを任意に用いることができる。
Zr1−xLn 0≦x≦1.0
(Ln;Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)
第1バッファ層7の厚さは、たとえば1μm程度に厚く形成される。第1バッファ層7を厚く形成するのは、後述するようにエッチングによって基板2にインクキャビティーを形成する際、この第1バッファ層7をエッチングストッパ層として機能させているためである。また、このように第1バッファ層7を厚く形成しているので、前述したようにバッファ層3をインクジェット式記録ヘッド50において弾性板として機能させた際、実質的にはこの第1バッファ層7が弾性板として機能することができる。
第1バッファ層7は、基板2上に直接形成されるが、シリコン基板からなる基板2表面には通常、自然酸化膜(二酸化シリコン)が形成されている。したがって、この自然酸化膜上にYSZをエピタキシャル成長させることは一般的な成膜法では難しいことから、本実施の形態では、後述するように特にイオンビームアシスト法を用いてエピタキシャル成長させることにより、この第1バッファ層7を形成するものとする。なお、基板2表面に形成されている自然酸化膜は、アモルファス膜であってもよい。
第2バッファ層8は、たとえば立方晶(100)配向のCeOを用いることができる。第2バッファ層8は、第1バッファ層7上にエピタキシャル成長させられるものを用いることができる。第2バッファ層8の厚さは、たとえば100nm程度である。
なお、これら第1バッファ層7および第2バッファ層8としては、YSZやCeOに限定されることなく、任意のNaCl構造の金属酸化物や蛍石型構造の金属酸化物を用いることができる。NaCl構造の金属酸化物としては、たとえばMgO、CaO、SrO、BaO、MnO、FeO、CoO、NiO、または、これらを含む固溶体などが挙げられるが、これらの中でも、特に、MgO、CaO、SrO、BaO、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。このようなNaCl構造の金属酸化物は、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が特に小さいものとなる。
蛍石型構造の金属酸化物としては、たとえば、YSZ、CeO、ZrO、ThO、UO、または、これらを含む固溶体等が挙げられるが、これらの中でも、YSZ、CeO、ZrO、または、これらを含む固溶体のうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。このような蛍石型構造の金属酸化物も、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物との格子不整合が特に小さいものとなる。
第3バッファ層9としては、たとえば層状ペロブスカイト型酸化物であるYBaCu(xは、たとえば7)を用いることができる。第3バッファ層9は、第2バッファ層8上に斜方晶(001)配向でエピタキシャル成長させられるものを用いることができる。第3バッファ層9の厚さは、たとえば30nm程度である。第3バッファ層9にペロブスカイト構造を有する金属酸化物を用いることにより、第3バッファ層9は、前述したように第2バッファ層8との間で格子不整合が特に小さいものとなる。したがって、欠陥等がない良好な結晶構造を有するとともに、この第3バッファ層9上に、ペロブスカイト型の下部電極4を良好にエピタキシャル成長させることができる。
なお、第3バッファ層9としては、YBaCuに限定されることなく、他のペロブスカイト型金属酸化物を用いることもできる。たとえば、CaRuO、SrRuO、BaRuO、SrVO、(La,Sr)MnO、(La,Sr)CrO、(La,Sr)CoO、または、これらを含む固溶体などを用いることもできる。
下部電極4としては、ペロブスカイト型構造を有する結晶、たとえば擬立方晶(100)配向にエピタキシャル成長されたSrRuOを用いることができる。下部電極4に擬立方晶(100)配向でエピタキシャル成長されたものを用いることによって、下部電極4上にロンボヘドラル構造で擬立方晶(100)配向の圧電体膜5を、より良好に形成することができる。下部電極4の厚さは、たとえば50〜150nm程度である。
また、下部電極4としては、たとえば(100)配向したPtを用いることもできる。この場合、下部電極4の厚さは、たとえば30nm程度である。下部電極4としては、たとえば(111)配向したPtを用いることもできる。この場合、後述する圧電体膜5の厚さを100nm以上とすることで、圧電体膜5は成膜途中で擬立方晶(100)配向し、擬立方晶(100)配向した圧電体膜5を得ることができる。
下部電極4の材料としては、上記材料に限定されることなく、Nb−SrTiO、La−SrTiO、Nb−(La,Sr)CoO、LaNiO、あるいはPbBaOなどを用いることができる。ここで、Nb−SrTiOはSrTiOにNbをドープしたものであり、La−SrTiOはSrTiOにLaをドープしたものであり、Nb−(La,Sr)CoOは(La,Sr)CoOにNbをドープしたものである。
圧電体膜5は、ペロブスカイト型の結晶構造を有する下記一般式(1)で示されるものからなる。
(Pb1−dBi)(B1−a)O・・・(1)
一般式(1)において、
Bは、ZrおよびTiの少なくとも一方からなり、
Xは、NbおよびTaの少なくとも一方からなり、
aは、0.05≦a≦0.4の範囲であり、
dは、0<d≦0.5の範囲である。
ペロブスカイト型とは、図2(a)、図2(b)に示すような結晶構造を有するもので、図2(a)、図2(b)においてAで示す位置をAサイト、Bに示す位置をBサイトという。
一般式(1)において、PbおよびBiは、Aサイトに位置し、BおよびXは、Bサイトに位置する。また、O(酸素)は図2(a)、図2(b)中においてOで示したところに位置する。
Xは、Zr,Tiより価数の高い金属元素を用いることができる。Zr,Ti(+4価)より価数の高い金属元素としては、たとえばNb(+5価)、Ta(+5価)である。
Pb系のペロブスカイト型構造を有するもの、たとえばPZTなどは、Pbの蒸気圧が高いために、ペロブスカイト型構造のAサイトに位置するPbが蒸発しやすい。PbがAサイトから抜けると、電荷中性の原理によって同時に酸素が欠損する。この現象は、Schottoky欠陥と呼ばれる。たとえば、PZTにおいて酸素が欠損すると、PZTのバンドギャップが低下する。このバンドギャップの低下によって、たとえばPZTからなる圧電体膜はリーキーなものとなる。すなわち、圧電体膜の絶縁性が低下する。
しかし、本発明によれば、Pbより価数の高い上述のBiを、PZTのAサイトのPbと置換させることで、結晶構造全体としての中性を保持することができ、その結果、酸素の欠損を防止することができる。これにより圧電体膜5の絶縁性は良好なものとなり、電流リークを防止することができる。Xについても、Biと同様に、Zr、Tiより価数の高い元素を用いることにより、結晶構造全体としての中性を保持することができ、その結果、酸素の欠損を防止することができる。
また、Biは酸素との共有結合性がPbに比べて強いため、結晶から抜け難くなっていると考えられる。共有結合性の強度は、結合する原子同士の軌道準位の相対値によって定まる。ペロブスカイト型構造では、Aサイトに入る原子の6p軌道準位が酸素の2p軌道準位に近づくにつれて、Aサイト原子と、当該Aサイトと最近接する酸素原子との軌道が混成しやすくなるため、BiはPbに比べて結晶から抜け難い。このことによっても、圧電体膜5の絶縁性を良好なものとすることができる。なおPbおよびBiの6p軌道は、ペロブスカイト型構造のAサイトにおいては非占有軌道として振る舞うため、6p軌道は共有結合度の増大に寄与することができる。一方、PbおよびBiの6s軌道は占有軌道として振る舞うため、共有結合度の増大に寄与することができない。
図3は、酸素原子の2p軌道準位を基準としたときの、BiとPbの6p軌道準位の相対値を示す。計算方法は密度汎関数法に基づき、相対論的に電子の波動方程式を解くことにより各原子の軌道エネルギーを求めた。Biの6p軌道準位は、Pbの6p軌道準位より、酸素の2p軌道準位に近い。このように、Aサイトに入る原子の6p軌道準位が酸素の2p軌道準位に近づくことによって酸素との共有結合度が高まりAサイトから抜けにくくなる。また同時に、圧電体膜5のキュリー温度や分極モーメント、圧電定数などの強誘電性を高めることができる。なお、6s軌道は、Aサイトにおいては占有軌道になるため、共有結合度に対して有効な寄与をすることはなく、強誘電性を高めることもない。
Xの添加量aは、
0.10≦a≦0.30
の範囲であることが好ましく、
0.20≦a≦0.25
であることがより好ましい。
上述した数値範囲は次の意義を有する。Xの添加量aが0.10未満では、添加による電流リーク防止効果が良好とならず、Xの添加量aが0.30を越えても、それ以上は電流リーク防止効果の向上があまり期待できないからである。Xが+5価の元素の場合とは、たとえばNb、Taの場合であるが、好ましい元素は、Nbである。
Biの添加量dは、0<d≦0.5、より好ましいのは0.05≦d≦0.3である。Biの添加量が0であれば本実施例の効果はなく、またBiの添加量が多すぎると圧電体膜のリーク電流が増大してしまう。
圧電体膜5の厚さは、たとえば500〜1500nm程度である。圧電体膜5は、擬立方晶構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向していることができる。
ここで、「擬立方晶構造」とは、例えば、ロンボヘドラル構造、テトラゴナル構造、およびモノクリニック構造などを含む。圧電体膜5は、下部電極4上に液相法や気相法によって成膜される。圧電体膜5は、特に成膜時の温度条件(加熱条件)等を適宜に制御することにより、擬立方晶(100)に優先配向させることができる。ここで、「優先配向」とは、所望配向の擬立方晶(100)にすべての結晶が配向している場合と、所望配向の擬立方晶(100)にほとんどの結晶が配向しており、擬立方晶(100)に配向していない残りの結晶が他の配向となっている場合とを含むことができる。
ここで圧電体膜5の構造を特定する方法としては、X線回折とラマン散乱を用いる方法を併用することができる。
上記一般式(1)で示されるものの具体例としては、たとえば(Pb1−dBi)(Zr1−p,Ti1−aNbからなるものである。これは、ペロブスカイト型の結晶構造を有するPb(Zr1−pTi)O(以下、「PZT」ともいう。)において、NbおよびBiを添加したものである。
Nbの添加量は、上述の式のaで示される。Biの添加量は、上述の式のdで示される。
(Pb1−dBi)(Zr1−p,Ti1−aNbにおけるpは、ある範囲を有する。pの上限値としては、圧電体膜5の結晶構造の相境界(MPB:Morphotropic Phase Boundary)におけるpの値(以下、「pMPB」ともいう。)となる。相境界におけるpの値(pMPB)とは、ロンボヘドラル構造とテトラゴナル構造とが相転移するときのTiの組成比を示す値である。そして、pの範囲としては、相転移するときの組成比より小さく、これによりロンボヘドラル構造となる範囲とされる。ここで、圧電定数(d31)は、相境界付近で極大値をとる。したがって、pの下限値としては、相境界におけるpの値(pMPB)に近い値が選択される。よって、pの範囲としては、本発明を構成するうえでは比較的小さい値まで許容できるものの、より高い圧電定数(d31)を得るためには、好ましいpの値、すなわち相境界におけるpの値(pMPB)により近い値が選択される。したがって、pの範囲の下限値は、圧電素子1を動作させる際に、許容される圧電定数(d31)の下限値のときのpの値となる。上述の内容を式で示すと、例えば、pは、
(pMPB−0.05)≦p≦pMPB
の範囲であることができる。pMPBは、例えば、0.5程度である。なお、pMPBは、膜応力などによって変り得るため、特に限定されないが、
MPBは、0.25≦p≦0.6
の範囲であることが好ましい。したがって、
pは、0.2≦p≦0.6
の範囲であることが好ましい。
pが上述の範囲内であれば、容易に圧電体膜5をロンボヘドラル構造にコントロールすることができ、高い圧電特性を発現できる。圧電体膜5は、圧電体膜5の結晶構造の相境界におけるp(pMPB)を有することもできる。これにより、圧電定数(d31)を、極大値とすることができる。
なお、上述した一般式(1)は、(Pb1−dBi)(B1−a)Oで示され、Aサイトの原子は欠損していないが、Aサイトの原子を欠損させることもできる。すなわちこの場合の組成式は、
(Pb1−dBi1−b(B1−a)O
の一般式で示される。この場合、Aサイトの欠損量b、a、およびdは、
b=(a+d)/(2+d)
の関係式を満たす。
また、aは、
0.05≦a≦0.4
の範囲であり、dは、
0<d≦0.5
の範囲である。
さらに、Oを欠損させることもできる。すなわち、その場合の組成式は、
(Pb1−dBi1−b(B1−a)O3−c
で示され、a、b、c、およびdは、
b=(a+d+2c)/(2+d)
の関係式を満たし、酸素の欠損量cは、
0≦c≦0.05
の範囲であり、好ましくは、
0<c≦0.03
の範囲である。また、aは、
0.05≦a≦0.4
の範囲であり、dは、
0<d≦0.5
の範囲である。
上部電極6は、下部電極4と同様、たとえば擬立方晶(100)配向にエピタキシャル成長されたSrRuOを用いることができる。あるいは上部電極6は、Ptを用いることもできる。上部電極6の厚さは、たとえば50〜150nm程度である。
本実施の形態において組成の決定には、ICP法、XPS法およびSIMS法を併用することができる。
1−2.圧電体膜および圧電素子の製造方法
次に、本実施の形態における圧電体膜および圧電素子の製造方法について説明する。
(1)まず、表面が(110)面であるシリコン基板からなる基板2を用意する。基板2として用いられるシリコン基板としては、後述するようにこれにキャビティー(インクキャビティー)を形成することから、これに必要な厚さを有したものが用いられる。
続いて、この基板2を基板ホルダーに装填し、真空装置(図示せず)内に設置する。この真空装置内には、基板2に対向して、バッファ層7、8、9の構成元素を含む各ターゲット(バッファ層用ターゲット)、および下部電極4、上部電極6の構成元素を含む各ターゲットを所定距離、離間して配置しておく。各ターゲットとしては、目的とする第1バッファ層7、第2バッファ層8、第3バッファ層9、下部電極4、上部電極6の各組成と同一または近似した組成のものがそれぞれ好適に用いられる。
すなわち、第1バッファ層7用のターゲットとしては、所望のYSZ組成、またはこれに近似した組成のものを用いることができる。第2バッファ層8用のターゲットとしては、所望のCeO組成、またはこれに近似した組成のものを用いることができる。第3バッファ層9用のターゲットとしては、所望のYBaCu組成、またはこれに近似した組成のものを用いることができる。下部電極4および上部電極6のターゲットとしては、それぞれSrRuO組成、またはこれに近似した組成のもの、あるいはPtを主成分としたものを用いることができる。
(2)次いで、図4に示すように、前述したようにイオンビームアシスト法を用いて、基板2上に第1バッファ層7を直接形成する。具体的には以下の通りである。
レーザー光を第1バッファ層7用のターゲットに照射し、このターゲットから酸素原子および金属原子を含む原子を叩き出すレーザーアブレーション法により、プルームを発生させる。このプルームは基板2上に向けて出射し、基板2上に接触するようになる。これとほぼ同時に、基板2の表面に対して、イオンビームを後述する所定角度で照射(入射)し、イオンビームアシストを行う。その結果、基板2表面に自然酸化膜が形成されているにもかかわらず、基板2上に、立方晶(100)配向のYSZからなる第1バッファ層7がエピタキシャル成長によって形成される。
なお、YSZの構成原子をターゲットから叩き出す方法としては、前述したようにレーザー光をターゲット表面に照射する方法のほか、たとえば、アルゴンガス(不活性ガス)プラズマや電子線などをターゲット表面に照射(入射)する方法を用いることもできる。これらの方法の中では、レーザー光をターゲット表面に照射する方法が最も好ましい。この方法によれば、レーザー光の入射窓を備えた簡易な構成の真空装置を用いることにより、原子をターゲットから容易に、かつ確実に叩き出すことができる。
このターゲットに照射するレーザー光としては、波長が150〜300nm程度、パルス長が1〜100ns程度のパルス光が好適に用いられる。具体的には、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、XeClエキシマレーザーなどのエキシマレーザー、さらにYAGレーザー、YVOレーザー、COレーザーなどが挙げられる。これらの中でも、特にArFエキシマレーザー、またはKrFエキシマレーザーが好適に用いられる。ArFエキシマレーザーおよびKrFエキシマレーザーは、いずれも取り扱いが容易であり、また、より効率よく原子をターゲットから叩き出すことができる。
基板2の表面にイオンビームアシストとして照射するイオンビームについては、特に限定されないものの、たとえばアルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトンのような不活性ガスのうちの少なくとも1種のイオン、または、これらのイオンと酸素イオンとの混合イオンなどが好適に用いられる。このイオンビームのイオン源としては、例えば、Kauffmanイオン源などを用いるのが好ましい。このイオン源を用いることにより、イオンビームを比較的容易に生成することができる。
基板2表面に対するイオンビームの照射(入射)角度、すなわち前記の所定角度としては、特に限定されないものの、基板2の表面に対して35〜65°程度傾斜した角度とするのが好ましい。特に、NaCl構造の金属酸化物を主材料として第1バッファ層7を形成する場合には、照射角度を42〜47°程度、また、蛍石型構造の金属酸化物を主材料として第1バッファ層7を形成する場合には、照射角度を52〜57°程度とするのがより好ましい。なお、本実施の形態では、蛍石型構造の金属酸化物であるYSZによって第1バッファ層7を形成するので、照射角度を52〜57°程度、特に55°程度としている。このような照射角度でイオンビームを基板2表面に照射することにより、立方晶(100)配向の第1バッファ層7を良好に形成することができる。
ターゲットに対してはアルゴンなどのイオンを(111)方向から入射させつつ、レーザーアブレーションを行うようにする。ただし、MgOなどのNaCl構造の金属酸化物によって第1バッファ層7を形成する場合には、そのターゲットに対し、アルゴンなどのイオンを(110)方向で入射させつつ、レーザーアブレーションを行うようにする。
第1バッファ層7の形成における各条件については、第1バッファ層7がエピタキシャル成長し得るものであれば特に限定されることなく、たとえば次のような条件を採用することができる。
レーザー光の周波数としては、30Hz以下とするのが好ましく、15Hz以下とするのがより好ましい。レーザー光のエネルギー密度としては、0.5J/cm以上とするのが好ましく、2J/cm以上とするのがより好ましい。
イオンビームの加速電圧としては、100〜300V程度とするのが好ましく、150〜250V程度とするのがより好ましい。イオンビームの照射量としては、1〜30mA程度とするのが好ましく、5〜15mA程度とするのがより好ましい。
基板2の温度としては、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのがより好ましい。基板2とターゲットとの距離としては、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
真空装置内の圧力としては、133×10−1Pa(1×10−1Torr)以下とするのが好ましく、133×10−3Pa(1×10−3Torr)以下とするのがより好ましい。真空装置内の雰囲気としては、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
第1バッファ層7の形成条件をそれぞれ前記範囲とすれば、第1バッファ層7をエピタキシャル成長によって、より効率よく形成することができる。
また、レーザー光およびイオンビームの照射時間を適宜設定することにより、第1バッファ層7の平均厚さを前記厚さ、すなわち1μm程度に調整することができる。このレーザー光およびイオンビームの照射時間は、前記各条件によって異なるものの、通常、200秒以下とするのが好ましく、100秒以下とするのがより好ましい。
このような第1バッファ層7の形成方法によれば、イオンビームの照射角度を調整するイオンビームアシスト法を採用することにより、基板2表面に自然酸化膜が形成されているにもかかわらず、前述したように立方晶(100)配向の第1バッファ層7を良好に形成することができる。なお、このように第1バッファ層7の配向方位を精度よく揃えることができるので、必要に応じて、この第1バッファ層7の平均厚さをより小さくすることもできる。
(3)次に、図5に示すように、第1バッファ層7上に第2バッファ層8を形成する。第2バッファ層8の形成は、自然酸化膜上に形成する第1バッファ層7の場合とは異なり、良好な結晶構造を有する第1バッファ層7の上に形成することから、イオンビームアシスト法を用いることなく、単にレーザーアブレーション法を用いることで行う。すなわち、第1バッファ層7用のターゲットに代えて、所望のCeO組成、またはこれに近似した組成の第2バッファ層8用ターゲットを用いる。そして、第2バッファ層8用ターゲットにレーザー光を照射して、これから酸素原子および金属原子を含む原子を叩き出し、プルームを発生させる。そして、このプルームを基板2上の第1バッファ層7に向けて出射させ接触させる。その結果、第2バッファ層8が第1バッファ層上にエピタキシャル成長して形成される。
第2バッファ層8を形成するための、レーザーアブレーション法等の条件については、第1バッファ層7を形成する際の、レーザーアブレーション法等の条件と同様とすることができる。
(4)次に、図6に示すように、第2バッファ層8上に第3バッファ層9を形成する。これにより第1バッファ層7、第2バッファ層8、および第3バッファ層9からなるバッファ層3を得ることができる。第3バッファ層9の形成では、第2バッファ層9の場合と同様にレーザーアブレーション法を単独で用いる。すなわち、第2バッファ層8用のターゲットに代えて、所望のYBaCu組成、またはこれに近似した組成の第3バッファ層9用ターゲットを用意する。そして、第3バッファ層9用ターゲットにレーザー光を照射し、これから酸素原子および金属原子を含む原子を叩き出し、プルームを発生させる。そして、このプルームを基板2上の第2バッファ層8に向けて出射させ接触させる。その結果、第3バッファ層9が第2バッファ層8上にエピタキシャル成長して形成される。
なお、この第3バッファ層9の形成では、必要に応じて、第1バッファ層7の形成工程と同様に、イオンビームアシストを用いることもできる。すなわち、第2バッファ層8の表面にイオンビームを照射しつつ、これの上に第3バッファ層9を形成することができる。イオンビームアシストを用いることで、より効率よく第3バッファ層9を形成することができる。
第3バッファ層9の形成における各条件については、各種金属原子が、所定の比率(すなわち、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物における組成比)で、第2バッファ層8上に到達し、かつ、第3バッファ層9がエピタキシャル成長し得るものであれば特に限定されることはない。たとえば次のような条件を採用することができる。
レーザー光の周波数としては、30Hz以下程度とするのが好ましく、15Hz以下程度とするのがより好ましい。レーザー光のエネルギー密度としては、0.5J/cm以上とするのが好ましく、2J/cm以上とするのがより好ましい。
第2バッファ層8が形成された基板2の温度としては、300〜800℃程度とするのが好ましく、700℃程度とするのがより好ましい。イオンビームの照射を併用する場合には、この温度を、0〜50℃程度とするのが好ましく、室温(5〜30℃)程度とするのが好ましい。第2バッファ層8が形成された基板2とターゲットとの距離としては、60mm以下とするのが好ましく、45mm以下とするのがより好ましい。
また、真空装置内の圧力としては、1気圧以下が好ましく、そのうち、酸素分圧については、399×10−3Pa(3×10−3Torr)程度とするのが好ましい。イオンビームの照射を併用する場合には、真空装置内の圧力を、133×10−1Pa(1×10−1Torr)以下とするのが好ましく、133×10−3Pa(1×10−3Torr)以下とするのがより好ましい。また、この場合、真空装置内の雰囲気としては、不活性ガスと酸素との混合比を、体積比で300:1〜10:1程度とするのが好ましく、150:1〜50:1程度とするのがより好ましい。
第3バッファ層9の形成条件をそれぞれ上述の範囲とすれば、第3バッファ層9をエピタキシャル成長によって、より効率よく形成することができる。このとき、レーザー光およびイオンビームの照射時間を適宜設定することにより、第3バッファ層9の平均厚さを前記厚さ、すなわち30nm程度に調整することができる。このレーザー光の照射時間は、上述の各条件によっても異なるものの、通常、3〜90分程度とするのが好ましく、15〜45分程度とするのがより好ましい。
(5)次に、図7に示すように、第3バッファ層7(バッファ層3)上に下部電極4を形成する。下部電極4は、ペロブスカイト型構造を有する金属酸化物からなることが好ましい。圧電体膜5は、ペロブスカイト型構造を有する下部電極4の上に形成されることにより、良質な結晶が成長しやすい。これにより圧電体膜5の電流リークを防止することができる。
下部電極4は、たとえばレーザーアブレーション法によって形成することができる。すなわち、所望の電極材料を含むターゲットを用意する。そして、ターゲットにレーザー光を照射し、ターゲットから酸素原子および金属原子を含む原子を叩き出し、プルームを発生させる。そして、このプルームを基板10上に向けて出射させ接触させる。その結果、下部電極4は、第3バッファ層7上にエピタキシャル成長して形成される。
ペロブスカイト型構造を有する下部電極4の材料としては、SrRuO、Nb−SrTiO、La−SrTiO、Nb−(La,Sr)CoO、LaNiO、あるいはPbBaOなどを用いることができる。ここで、Nb−SrTiOはSrTiOにNbをドープしたものであり、La−SrTiOはSrTiOにLaをドープしたものであり、Nb−(La,Sr)CoOは(La,Sr)CoOにNbをドープしたものである。なお、下部電極4は、ペロブスカイト型構造を有するものに限定されることなく、たとえばPt、Ir、IrOを用いて形成されてもよい。
また、下部電極4の形成方法としては、レーザーアブレーション法にかえて、イオンビームアシスト、スパッタ法あるいは真空蒸着法などを用いてもよい。
(6)次に、図8に示すように、下部電極4上に圧電体膜5を形成する。圧電体膜5は、Bi、Pb、Zr、Ti、およびXの少なくともいずれかを含む第1〜第4の原料溶液からなる混合溶液を用意し、これらの混合液に含まれる酸化物を熱処理等により結晶化させて得ることができる。
第1の原料溶液としては、強誘電体膜101の構成金属元素のうち、PbおよびZrによるPbZrO3ペロブスカイト結晶を形成するため酢酸鉛(Pb)と2エチルヘキサン酸ニオブ(Nb)とジルコニウムブトキシド(Zr)などの縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
第2の原料溶液としは、強誘電体膜101の構成金属元素のうち、PbおよびTiによるPbTiO3ペロブスカイト結晶を形成するため酢酸鉛(Pb)と2エチルヘキサン酸ニオブ(Nb)とチタンイソプロポキシド(Ti)などの縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
第3の原料溶液としては、強誘電体膜101の構成金属元素のうち、PbおよびXによるPbXO3ペロブスカイト結晶を形成するため、酢酸鉛(Pb)と2エチルヘキサン酸ニオブ(Nb)などの縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
第4の原料溶液としては、有機酸塩として2エチルヘキサン酸ビスマス(Bi)をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
上記第1、第2、第3、および第4の原料溶液を用いて、強誘電体膜101が所望の組成比となるように、第1、第2、第3、および第4の原料溶液を所望の比で混合する。この混合溶液に熱処理等を加えて結晶化させることにより、強誘電体膜101を形成することができる。
上記第1、第2、第3、および第4の原料溶液においては、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。さらに、原料溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、原料溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸あるいは塩基を添加することができる。
上記第1、第2、第3、および第4の原料溶液を用いて、圧電体膜5が所望の組成比となるように、第1、第2、第3、および第4の原料溶液を所望の比で混合する。この混合溶液に熱処理等を加えて結晶化させることにより、圧電体膜5を形成することができる。
具体的には、混合溶液塗布工程、アルコール除去工程〜乾燥熱処理工程〜脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の回数行い、その後に結晶化アニールにより焼成して圧電体膜5を形成する。各工程における条件は、たとえば以下のとおりである。
混合溶液塗布工程は、混合液の塗布をスピンコートなどの塗布法で行う。まず、下部電極4上に混合溶液を滴下する。滴下された溶液を基板全面に行き渡らせる目的でスピンを行う。スピンの回転数は、たとえば500rpm程度である。次に、回転数を低下させて所望の時間、スピンを行うことによって、混合溶液が下部電極4上に塗布される。このときの回転数は、たとえば50rpm以下である。乾燥熱処理工程は150℃〜180℃で行う。乾燥熱処理は大気雰囲気下でホットプレート等を用いて行う。同様に脱脂熱処理工程では300℃〜350℃に保持されたホットプレート上で、大気雰囲気下で行う。結晶化のための焼成は、酸素雰囲気中でサーマルラピッドアニール(RTA)等を用いて行う。
焼結後の圧電体膜5の膜厚は500〜1500nm程度とすることができる。圧電体膜5は、たとえばスパッタ法、分子線エピタキシー法、あるいはレーザーアブレーション法などを用いて形成することもできる。
圧電体膜5を形成する際には、さらにPbSiOシリケートを、たとえば1〜5モル%の割合で添加することが好ましい。これによりPZTXの結晶化エネルギーを軽減させることができる。すなわち、圧電体膜5としてPZTXを用いる場合、X添加とともに、PbSiOシリケートとを添加することでPZTXの結晶化温度の低減を図ることができる。具体的には、上述した第1〜第3の原料溶液に加え、第4の原料溶液を用いることができる。第4の原料溶液としては、PbSiO結晶を形成するため縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。結晶化を促進する添加剤としては、ゲルマネートを用いることもできる。このようにPbSiOシリケートまたはゲルマネートを用いることにより、圧電体膜5は、SiまたはSiおよびGeを含む場合がある。具体的には、圧電体膜5は、0.5モル%以上であって、5モル%未満のSi、またはSiおよびGeを含むことができる。
(7)次に、図9に示すように、圧電体膜5上に上部電極6を形成する。上部電極6は、たとえばスパッタ法あるいは真空蒸着法などによって形成することができる。上部電極としては、Ptを主とする材料からなるものを用いることが好ましい。上部電極6については、Ptに限定されることなく、Ir、IrO、SrRuO、Nb−SrTiO、La−SrTiO、Nb−(LaSr)CoOなどの公知の電極材料を用いることもできる。
(8)次に、必要に応じて、ポストアニールを酸素雰囲気中でRTA等を用いて行うことができる。これにより、上部電極6と圧電体膜5との良好な界面を形成することができ、かつ圧電体膜5の結晶性を改善することができる。
以上の工程によって、本実施の形態にかかる圧電体膜および圧電体素子を製造することができる。
このようにして得られた圧電素子1について、特にその圧電体膜5をX線回折によって解析したところ、圧電体膜5は室温にてロンボヘドラル構造で擬立方晶(100)配向となっていた。また、圧電体膜5をラマン散乱法を用いて解析したところ、PZTに添加したXがすべてペロブスカイト型構造のBサイトに位置していることが確認できた。
本実施の形態にかかる圧電体膜5の圧電定数d31は、たとえば絶対値で200pC/N程度であることができる。本実施の形態にかかる圧電素子1のリーク電流は、たとえば印加電圧が100kV/cmのときに、10−5A/cm未満であることができる。本実施の形態にかかる圧電素子1の繰り返し耐久性は、印加電圧が300kV/cmのときに、10回を保証することができる。
なお、圧電定数の測定方法は以下のように行うことができる。まず、実際のインクジェット式記録ヘッド50(図10参照)における電圧印加時の圧電体膜5の変位量S1を、レーザー変位計を用いて実測する。この値S1と、有限要素法による圧電変位のシミュレーションで得られた変位量S2とを比較することで、圧電体膜5の実際の圧電定数(d31)と、有限要素法で仮定した圧電体膜5の圧電定数(d'31)との差分を求めることができる。その結果、圧電体膜5の圧電定数(d31)を測定することができる。なお、有限要素法による圧電変位のシミュレーションで必要になる物理量は、各膜のヤング率、膜応力、および仮定した圧電体膜5の圧電定数(d'31)である。
本実施の形態における圧電素子1によれば、圧電体膜5が良好な圧電特性を有することから、圧電素子1としても高性能なものとなる。特に、圧電体膜5の絶縁性が良好であることから、圧電素子1の繰り返し耐久性が飛躍的に向上する。
2−1.インクジェット式記録ヘッド
次に、図1に示した圧電素子1を用いたインクジェット式記録ヘッドについて説明する。図10は、図1に示した圧電素子1を用いたインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す側断面図であり、図11は、このインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。なお、図11は、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
インクジェット式記録ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう)50は、図10に示すように、ヘッド本体57と、ヘッド本体57の上に設けられた圧電部54と、を備える。なお、図10に示した圧電部54は、図1に示した圧電素子1における弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッドおいて、圧電素子1は、圧電アクチュエーターとして機能することができる。圧電アクチュエーターとは、ある物質を動かす機能を有する素子である。
また、図1に示した圧電素子1における弾性膜3は、図10において弾性膜55に相当する。また、基板2(図1参照)は後述するようにヘッド本体57の要部を構成するものとなっている。
すなわち、ヘッド50は、図11に示すようにノズル板51と、インク室基板52と、弾性膜55と、弾性膜55に接合された圧電部(振動源)54とを備え、これらが基体56に収納されて構成されている。なお、このヘッド50は、オンデマンド形のピエゾジェット式ヘッドを構成している。
ノズル板51は、例えばステンレス製の圧延プレート等で構成されたもので、インク滴を吐出するための多数のノズル511を一列に形成したものである。これらノズル511間のピッチは、印刷精度に応じて適宜に設定されている。
ノズル板51には、インク室基板52が固着(固定)されている。インク室基板52は、上述の基板2によって形成されたものである。インク室基板52は、ノズル板51、側壁(隔壁)522、および後述する弾性膜55によって、複数のキャビティー(インクキャビティー)521と、リザーバ523と、供給口524と、を区画形成したものである。リザーバ523は、インクカートリッジ631(図14参照)から供給されるインクを一時的に貯留する。供給口524によって、リザーバ523から各キャビティー521にインクが供給される。
キャビティー521は、図10および図11に示すように、各ノズル511に対応して配設されている。キャビティー521は、後述する弾性膜55の振動によってそれぞれ容積可変になっている。キャビティー521は、この容積変化によってインクを吐出するよう構成されている。
インク室基板52を得るための母材、すなわち上述の基板2としては、(110)配向のシリコン単結晶基板(Si基板)が用いられている。この(110)配向のシリコン単結晶基板は、異方性エッチングに適しているのでインク室基板52を、容易にかつ確実に形成することができる。なお、このようなシリコン単結晶基板は、図1に示した弾性膜3の形成面、すなわち弾性膜55の形成面が(110)面となるようにして用いられている。
インク室基板52のノズル板51と反対の側には弾性膜55が配設されている。さらに弾性膜55のインク室基板52と反対の側には複数の圧電部54が設けられている。弾性膜55は、前述したように図1に示した圧電素子1における弾性膜3によって形成されたものである。弾性膜55の所定位置には、図11に示すように、弾性膜55の厚さ方向に貫通して連通孔531が形成されている。連通孔531により、後述するインクカートリッジ631からリザーバ523へのインクの供給がなされる。
各圧電部54は、前述したように下部電極4と上部電極7との間に圧電体膜6が介挿されて構成されている。各圧電部54は、後述する圧電素子駆動回路に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。すなわち、各圧電部54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエーター)として機能する。弾性膜55は、圧電部54の振動(たわみ)によって振動し(たわみ)、キャビティー521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
基体56は、例えば各種樹脂材料、各種金属材料等で形成されている。図11に示すように、この基体56にインク室基板52が固定、支持されている。
2−2.インクジェット式記録ヘッドの動作
次に、本実施の形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の動作について説明する。本実施の形態におけるヘッド50は、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電部54の下部電極4と上部電極7との間に電圧が印加されていない状態では、図12に示すように圧電体膜6に変形が生じない。このため、弾性膜55にも変形が生じず、キャビティー521には容積変化が生じない。したがって、ノズル511からインク滴は吐出されない。
一方、圧電素子駆動回路を介して所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電部54の下部電極4と上部電極7との間に一定電圧(例えば30V程度)が印加された状態では、図13に示すように圧電体膜6においてその短軸方向にたわみ変形が生じる。これにより、弾性膜55が例えば500nm程度たわみ、キャビティー521の容積変化が生じる。このとき、キャビティー521内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル511からインク滴が吐出される。
すなわち、電圧を印加すると、圧電体膜6の結晶格子は面に対して垂直な方向に引き伸ばされるが、同時に面に平行な方向には圧縮される。この状態では、圧電体膜6にとっては面内に引っ張り応力が働いていることになる。したがって、この応力によって弾性膜55をそらせ、たわませることになる。キャビティー521の短軸方向での圧電体膜6の変位量(絶対値)が大きければ大きいほど、弾性膜55のたわみ量が大きくなり、より効率的にインク滴を吐出することが可能になる。本実施の形態では、前述したように、圧電部54(圧電素子1)の圧電体膜6の圧電定数(d31)が高く、印加された電圧に対してより大きな変形をなすものとなっている。これにより、弾性膜55のたわみ量が大きくなり、インク滴をより効率的に吐出できる。
ここで、効率的とは、より少ない電圧で同じ量のインク滴を飛ばすことができることを意味する。すなわち、駆動回路を簡略化することができ、同時に消費電力を低減することができるため、ノズル511のピッチをより高密度に形成することができる。または、キャビティー521の長軸の長さを短くすることができるため、ヘッド全体を小型化することができる。
1回のインクの吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極4と上部電極6との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電部54は図12に示した元の形状に戻り、キャビティー521の容積が増大する。なお、このとき、インクには、後述するインクカートリッジ631からノズル511へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気がノズル511からキャビティー521へと入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクがインクカートリッジ631からリザーバ523を経てキャビティー521へ供給される。
このように、インク滴の吐出を行わせたい位置の圧電部54に対して、圧電素子駆動回路を介して吐出信号を順次入力することにより、任意の(所望の)文字や図形等を印刷することができる。
2−3.インクジェット式記録ヘッドの製造方法
次に、本実施の形態におけるインクジェット式記録ヘッド50の製造方法の一例について説明する。
まず、インク室基板52となる母材、すなわち(110)配向のシリコン単結晶基板(Si基板)からなる基板2を用意する。次に、図4〜図8に示すように、基板2上に弾性膜3を形成する。次に弾性膜3上に下部電極4、圧電体膜5、上部電極6を順次形成する。なお、ここで形成した弾性膜3が、弾性膜55となるのは前述した通りである。
次いで、上部電極6、圧電体膜5、および下部電極4を、図12および図13に示すように、個々のキャビティー521に対応させてパターニングし、図10に示すように、キャビティー521の数に対応した数の圧電部54を形成する。
次いで、インク室基板52となる母材(基板2)を加工(パターニング)し、圧電部54に対応する位置にそれぞれキャビティー521となる凹部を、また、所定位置にリザーバ523および供給口524となる凹部を形成する。
本実施の形態では、母材(基板2)として(110)配向のシリコン基板を用いているので、高濃度アルカリ水溶液を用いたウェットエッチング(異方性エッチング)が好適に採用される。高濃度アルカリ水溶液によるウェットエッチングの際には、前述したように弾性膜3をエッチングストッパとして機能させることができる。したがって、インク室基板52の形成をより容易に行うことができる。
このようにして母材(基板2)を、その厚さ方向に弾性膜55(弾性膜3)が露出するまでエッチング除去することにより、インク室基板52を形成する。このときエッチングされずに残った部分が側壁522となる。露出した弾性膜3(弾性膜55)は、弾性膜55としての機能を発揮し得る状態となる。
次に、複数のノズル511が形成されたノズル板51を、各ノズル511が各キャビティー521となる凹部に対応するように位置合わせし、その状態で接合する。これにより、複数のキャビティー521、リザーバ523および複数の供給口524が形成される。ノズル板51の接合については、例えば接着剤による接着法や、融着法などを用いることができる。次に、インク室基板52を基体56に取り付ける。
以上の工程によって、本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド50を製造することができる。
2−4.作用・効果
本実施の形態にかかるインクジェット式記録ヘッド50によれば、前述したように、圧電部54が良好な圧電特性を有することで効率的なインクの吐出が可能となっていることから、ノズル511の高密度化などが可能となる。したがって、高密度印刷や高速印刷が可能となる。さらには、ヘッド全体の小型化を図ることができる。
3−1.インクジェットプリンター
次に、上述のインクジェット式記録ヘッド50を備えたインクジェットプリンターについて説明する。図14は、本発明のインクジェットプリンター600を、紙等に印刷する一般的なプリンターに適用した場合の一実施形態を示す概略構成図である。なお、以下の説明では、図14中の上側を「上部」、下側を「下部」と言う。
インクジェットプリンター600は、装置本体620を備えており、上部後方に記録用紙Pを設置するトレイ621を有し、下部前方に記録用紙Pを排出する排出口622を有し、上部面に操作パネル670を有する。
装置本体620の内部には、主に、往復動するヘッドユニット630を備えた印刷装置640と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置640に送り込む給紙装置650と、印刷装置640および給紙装置650を制御する制御部660とが設けられている。
印刷装置640は、ヘッドユニット630と、ヘッドユニット630の駆動源となるキャリッジモータ641と、キャリッジモータ641の回転を受けて、ヘッドユニット630を往復動させる往復動機構642とを備えている。
ヘッドユニット630は、その下部に、上述の多数のノズル511を備えるインクジェット式記録ヘッド50と、このインクジェット式記録ヘッド50にインクを供給するインクカートリッジ631と、インクジェット式記録ヘッド50およびインクカートリッジ631を搭載したキャリッジ632とを有する。
往復動機構642は、その両端がフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸643と、キャリッジガイド軸643と平行に延在するタイミングベルト644とを有する。キャリッジ632は、キャリッジガイド軸643に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト644の一部に固定されている。キャリッジモータ641の作動により、プーリを介してタイミングベルト644を正逆走行させると、キャリッジガイド軸643に案内されて、ヘッドユニット630が往復動する。この往復動の際に、インクジェット式記録ヘッド50から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
給紙装置650は、その駆動源となる給紙モータ651と、給紙モータ651の作動により回転する給紙ローラ652とを有する。給紙ローラ652は、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ652aと、駆動ローラ652bとで構成されており、駆動ローラ652bは、給紙モータ651に連結されている。
3−2.作用・効果
本実施の形態にかかるインクジェットプリンター600によれば、前述したように、高性能でノズルの高密度化が可能なインクジェット式記録ヘッド50を備えているので、高密度印刷や高速印刷が可能となる。
なお、本発明のインクジェットプリンター600は、工業的に用いられる液滴吐出装置として用いることもできる。その場合に、吐出するインク(液状材料)としては、各種の機能性材料を溶媒や分散媒によって適当な粘度に調整して使用することができる。
4−1.圧電ポンプ
次に、本実施の形態に係る圧電ポンプについて図面を参照しながら説明する。図15および図16は、図1に示す圧電素子1を適用した圧電ポンプ20の概略断面図である。本実施の形態にかかる圧電ポンプ20において、圧電素子1は、圧電アクチュエーターとして機能することができる。図15および図16に示す圧電部22は、図1に示した圧電素子1における下部電極4と、圧電体膜5と、上部電極6とからなるものであり、図1に示した圧電素子1における弾性膜3は、図15および図16において振動板24となっている。また、基板2(図1参照)は、圧電ポンプ20の要部を構成する基体21となっている。圧電ポンプ20は、基体21と、圧電部22と、ポンプ室23と、振動板24と、吸入側逆止弁26aと、吐出側逆止弁26bと、吸入口28aと、吐出口28bとを含む。
4−2.圧電ポンプの動作
次に、上述の圧電ポンプの動作について説明する。まず、圧電部22に電圧が供給されると、圧電体膜6(図1参照)の膜厚方向に電圧が印加される。そして、図15に示すように、圧電部22は、ポンプ室23が広がる方向(図15に示す矢印aの方向)にたわむ。また、圧電部22と共に振動板24もポンプ室23が広がる方向にたわむ。このため、ポンプ室23内の圧力が変化し、逆止弁26a、26bの働きによって流体が吸入口28aからポンプ室23内に流れる(図15に示す矢印bの方向)。
次に、圧電部22への電圧の供給を停止すると、圧電体膜6(図1参照)の膜厚方向への電圧の印加が停止される。そして、図16に示すように、圧電部22は、ポンプ室23が狭まる方向(図16に示す矢印aの方向)にたわむ。また、圧電部22と共に振動板24もポンプ室23が狭まる方向にたわむ。このため、ポンプ室23内の圧力が変化し、逆止弁26a、26bの働きによって流体が吐出口28bから外部に吐出される(図16に示す矢印bの方向)。
圧電ポンプ20は、電子機器、例えばパソコン用、好ましくはノートパソコン用の水冷モジュールとして用いることができる。水冷モジュールは、冷却液の駆動に上述の圧電ポンプ20を用い、圧電ポンプ20と循環水路等とを含む構造を有する。
4−3.作用・効果
本実施の形態に係る圧電ポンプ20によれば、前述したように、圧電部22(圧電素子1)が良好な圧電特性を有することによって、流体の吸入・吐出を効率的に行うことができる。したがって、本実施の形態に係る圧電ポンプ20によれば、大きな吐出圧および吐出量を有することができる。また、圧電ポンプ20の高速動作が可能となる。さらには、圧電ポンプ20の全体の小型化を図ることができる。
5−1.表面弾性波素子
次に、本実施の形態に係る表面弾性波素子について、図面を参照しながら説明する。表面弾性波素子は、図17に示すように、単結晶シリコン基板11と、バッファ層12と、導電膜13と、圧電体膜14と、保護膜としての酸化物または窒化物からなる保護層15と、電極16とから構成されている。電極16は、インターディジタル型電極(Inter−Digital Transducer:以下、「IDT電極」という)であり、上部から観察すると、例えば後述する図18および図19に示すインターディジタル型電極141、142、151、152、153のような形状を有する。
5−2.作用・効果
本実施の形態にかかる表面弾性波素子によれば、圧電体膜14が良好な圧電特性を有していることにより、表面弾性波素子自体も高性能なものとなる。
6−1.周波数フィルタ
次に、本実施の形態に係る周波数フィルタについて、図面を参照しながら説明する。図18に、本発明の周波数フィルタの一実施形態を示す。
図に示すように、周波数フィルタは基板140を有する。この基板140としては、例えば図17に示した表面弾性波素子を形成した基板が用いられる。すなわち、(100)単結晶シリコン基板11上に、バッファ層12、導電膜13、圧電体膜14、保護層15をこの順に積層して形成された基板である。保護層15は、保護膜としての酸化物または窒化物からなる。
基板140の上面には、IDT電極141、142が形成されている。また、IDT電極141、142を挟むように、基板140の上面には吸音部143、144が形成されている。吸音部143、144は、基板140の表面を伝播する表面弾性波を吸収するものである。基板140上に形成されたIDT電極141には高周波信号源145が接続されており、IDT電極142には信号線が接続されている。
6−2.周波数フィルタの動作
次に、上述の周波数フィルタの動作について説明する。前記構成において、高周波信号源145から高周波信号が出力されると、この高周波信号はIDT電極141に印加され、これによって基板140の上面に表面弾性波が発生する。IDT電極141から吸音部143側へ伝播した表面弾性波は、吸音部143で吸収されるが、IDT電極142側へ伝播した表面弾性波のうち、IDT電極142のピッチ等に応じて定まる特定の周波数または特定の帯域の周波数の表面弾性波は電気信号に変換されて、信号線を介して端子146a、146bに取り出される。なお、前記特定の周波数または特定の帯域の周波数以外の周波数成分は、大部分がIDT電極142を通過して吸音部144に吸収される。このようにして、本実施形態の周波数フィルタが備えるIDT電極141に供給した電気信号のうち、特定の周波数または特定の帯域の周波数の表面弾性波のみを得る(フィルタリングする)ことができる。
7−1.発振器
次に、本実施の形態に係る発振器ついて、図面を参照しながら説明する。図19に、本発明の発振器の一実施形態を示す。
図19に示すように、発振器は基板150を有する。この基板150としては、先の周波数フィルタと同様に、例えば図17に示した表面弾性波素子を形成した基板が用いられている。すなわち、(100)単結晶シリコン基板11上にバッファ層12、導電膜13、圧電体膜14、保護層15をこの順に積層して形成された基板である。保護層15は、保護膜としての酸化物または窒化物からなる。
基板150の上面には、IDT電極151が形成されており、さらに、IDT電極151を挟むように、IDT電極152、153が形成されている。IDT電極151を構成する一方の櫛歯状電極151aには、高周波信号源154が接続されており、他方の櫛歯状電極151bには、信号線が接続されている。なお、IDT電極151は、電気信号印加用電極に相当し、IDT電極152、153は、IDT電極151によって発生される表面弾性波の特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分を共振させる共振用電極に相当する。
7−2.発振器の動作
次に、上述の発振器の動作について説明する。前記構成において、高周波信号源154から高周波信号が出力されると、この高周波信号は、IDT電極151の一方の櫛歯状電極151aに印加され、これによって基板150の上面にIDT電極152側に伝播する表面弾性波およびIDT電極153側に伝播する表面弾性波が発生する。これらの表面弾性波のうちの特定の周波数成分の表面弾性波は、IDT電極152およびIDT電極153で反射され、IDT電極152とIDT電極153との間には定在波が発生する。この特定の周波数成分の表面弾性波がIDT電極152、153で反射を繰り返すことにより、特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分が共振して、振幅が増大する。この特定の周波数成分または特定の帯域の周波数成分の表面弾性波の一部は、IDT電極151の他方の櫛歯状電極151bから取り出され、IDT電極152とIDT電極153との共振周波数に応じた周波数(または、ある程度の帯域を有する周波数)の電気信号が端子155aと端子155bに取り出すことができる。
7−3.電圧制御SAW発振器
図20および図21は、本発明の発振器(表面弾性波素子)をVCSO(Voltage Controlled SAW Oscillator:電圧制御SAW発振器)に応用した場合の一例を示す図であり、図20は側面透視図であり、図21は上面透視図である。
VCSOは、金属製(Alまたはステンレススチール製)の筐体60内部に実装されて構成されている。基板61上には、IC(Integrated Circuit)62および発振器63が実装されている。この場合、IC62は、外部の回路(不図示)から入力される電圧値に応じて、発振器63に印加する周波数を制御する発振回路である。
発振器63は、基板64上に、IDT電極65a〜65cが形成されており、その構成は、図19に示した発振器とほぼ同様である。なお、基板64は、先の例と同様で図17に示したように、(100)単結晶シリコン基板11上にバッファ層12、導電膜13、圧電体膜14、保護層15をこの順に積層して形成されている。保護層15は、保護膜としての酸化物または窒化物からなる。
基板61上には、IC62と発振器63とを電気的に接続するための配線66がパターニングされている。IC62および配線66が、例えば金線等のワイヤー線67によって接続され、発振器63および配線66が金線等のワイヤー線68によって接続されることにより、IC62と発振器63とが配線66を介して電気的に接続されている。
また、VCSOは、IC62と発振器(表面弾性波素子)63を同一基板上に集積させて形成することも可能である。
図21に、IC62と発振器63とを集積させたVCSOの概略図を示す。なお、図21中において発振器63は、図17に示した表面弾性波素子において酸化物薄膜層12の形成を省略した構造を有している。
図21に示すように、VCSOは、IC62と発振器63とにおいて、単結晶シリコン基板61(単結晶シリコン基板11)を共有させて形成されている。IC62と、発振器63に備えられた電極65a(電極16)とは、図示しないものの電気的に接続されている。本実施の形態では、IC62を構成するトランジスタとして、特に、TFT(薄膜トランジスタ)を採用している。
図20〜図22に示すVCSOは、例えば、図23に示すPLL回路のVCO(Voltage Controlled Oscillator)として用いられる。ここで、PLL回路について簡単に説明する。
図23はPLL回路の基本構成を示すブロック図であり、この図23に示すようにPLL回路は、位相比較器71、低域フィルタ72、増幅器73、およびVCO74から構成されている。位相比較器71は、入力端子70から入力される信号の位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)とを比較し、その差に応じて値が設定される誤差電圧信号を出力するものである。低域フィルタ72は、位相比較器71から出力される誤差電圧信号の位置の低周波成分のみを通過させるものであり、増幅器73は、低域フィルタ72から出力される信号を増幅するものである。VCO74は、入力された電圧値に応じて発振する周波数が、ある範囲で連続的に変化する発振回路である。
このような構成のもとにPLL回路は、入力端子70から入力される位相(または周波数)と、VCO74から出力される信号の位相(または周波数)との差が減少するように動作し、VCO74から出力される信号の周波数を入力端子70から入力される信号の周波数に同期させる。VCO74から出力される信号の周波数が入力端子70から入力される信号の周波数に同期すると、その後は一定の位相差を除いて入力端子70から入力される信号に一致し、また、入力信号の変化に追従するような信号を出力するようになる。
8.電子回路および電子機器
次に、本実施の形態に係る電子回路および電子機器について、図面を参照しながら説明する。図24に、本発明の電子機器の一実施形態として、その電気的構成をブロック図で示す。電子機器とは、たとえば携帯電話機である。
図24に示す電子機器300は、電子回路310、送話部80、受話部91、入力部94、表示部95、およびアンテナ部86を有する。電子回路310は、送信信号処理回路81、送信ミキサ82、送信フィルタ83、送信電力増幅器84、送受分波器85、低雑音増幅器87、受信フィルタ88、受信ミキサ89、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、および制御回路93、を備えて構成されたものである。
送話部80は、例えば音波信号を電気信号に変換するマイクロフォン等で実現されるものである。送信信号処理回路81は、送話部80から出力される電気信号に対して、例えばD/A変換処理、変調処理等の処理を施す回路である。送信ミキサ82は、周波数シンセサイザ92から出力される信号を用いて送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。なお、送信ミキサ82に供給される信号の周波数は、例えば380MHz程度である。送信フィルタ83は、中間周波数(以下、「IF」と表記する)の必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。なお、送信フィルタ83から出力される信号は、図示しない変換回路によってRF信号に変換されるようになっている。送信電力増幅器84は、送信フィルタ83から出力されるRF信号の電力を増幅し、送受分波器85へ出力するものである。
送受分波器85は、送信電力増幅器84から出力されるRF信号をアンテナ86部へ出力し、アンテナ部86から電波の形で送信するものである。また、送受分波器85は、アンテナ部86で受信した受信信号を分波して、低雑音増幅器87へ出力するものである。低雑音増幅器87は、送受分波器85からの受信信号を増幅するものである。なお、低雑音増幅器87から出力される信号は、図示しない変換回路によってIFに変換されるようになっている。
受信フィルタ88は、図示しない変換回路によって変換されたIFの必要となる周波数の信号のみを通過させ、不要となる周波数の信号をカットするものである。受信ミキサ89は、受信フィルタ88から出力される信号を用いて、送信信号処理回路81から出力される信号をミキシングするものである。受信信号処理回路90は、受信ミキサ89から出力される信号に対して、例えばA/D変換処理、復調処理等の処理を施す回路である。受話部91は、例えば電気信号を音波に変換する小型スピーカ等で実現されるものである。
周波数シンセサイザ92は、送信ミキサ82へ供給する信号および受信ミキサ89へ供給する信号を生成する回路である。なお、周波数シンセサイザ92は、例えば760MHzの発振周波数で発信するPLL回路を備え、このPLL回路から出力される信号を分周して周波数が380MHzの信号を生成し、さらに分周して周波数が190MHzの信号を生成するようになっている。制御回路93は、送信信号処理回路81、受信信号処理回路90、周波数シンセサイザ92、入力部94、および表示部95を制御する。表示部95は、たとえば携帯電話機の使用者に対して機器の状態を表示する。入力部94は、操作者の指示を入力する。
以上の構成の電子回路において、送信フィルタ83および受信フィルタ88として、図19に示した周波数フィルタが用いられている。フィルタリングする周波数(通過させる周波数)は、送信ミキサ82から出力される信号のうちの必要となる周波数、および、受信ミキサ89で必要となる周波数に応じて送信フィルタ83および受信フィルタ88で個別に設定されている。また、周波数シンセサイザ92内に設けられるPLL回路は、図23に示すPLL回路のVCO74として、図19に示す発振器、または図20〜図21に示す発振器(VCSO)を設けている。
9−1.第1の薄膜圧電共振器
次に、本実施の形態に係る薄膜圧電共振器について、図面を参照しながら説明する。図25に、本実施の形態に係る第1の薄膜圧電共振器を示す。図25に示す薄膜圧電共振器700は、ダイアフラム型の薄膜圧電共振器700である。
第1の薄膜圧電共振器700は、基体701と、弾性膜703と、下部電極704と、圧電体膜705と、上部電極706と、を含む。基体701としては、例えば(110)配向した単結晶シリコン基板を用いることができる。薄膜圧電共振器700における弾性膜703、下部電極704、圧電体膜705、および上部電極706は、それぞれ図1に示した圧電素子1における弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。すなわち、薄膜圧電共振器700は、基体701上に、図1に示した圧電素子1の主部(基板2を除く部分)を形成した構成となっている。
基体701には、基体701を貫通するビアホール702が形成されている。上部電極706上には、配線708が設けられている。配線708は、弾性膜703上に形成された電極709と、パッド710を介して電気的に接続されている。
9−2.作用・効果
本実施の形態に係る第1の薄膜圧電共振器700によれば、圧電体膜705の圧電特性が良好であり、したがって高い電気機械結合係数を有する。これにより、薄膜圧電共振器700を、高周波数領域で使用することができる。また、薄膜圧電共振器700を、小型(薄型)化し、かつ、良好に動作させることができる。
9−3.第2の薄膜圧電共振器
図26は、本実施の形態に係る第2の薄膜圧電共振器を示す図である。第2の薄膜圧電共振器800が図25に示した第1の薄膜圧電共振器700と主に異なるところは、ビアホールを形成せず、基体801と弾性膜803との間にエアギャップ802を形成した点にある。
第2の薄膜圧電共振器800は、基体801と、弾性膜803と、下部電極804と、圧電体膜805と、上部電極806と、を含む。基体801としては、例えば(110)配向した単結晶シリコン基板を用いることができる。薄膜圧電共振器800における弾性膜803、下部電極804、圧電体膜805、および上部電極806は、それぞれ図1に示した圧電素子1における弾性膜3、下部電極4、圧電体膜5、および上部電極6に相当する。エアギャップ802は、基体801と、弾性膜803との間に形成された空間である。すなわち、薄膜圧電共振器800は、基体801上に、エアギャップ802を介して、図1に示した圧電素子1の主部(基板2を除く部分)を形成した構成となっている。
9−4.作用・効果
本実施の形態に係る第2の薄膜圧電共振器800によれば、圧電体膜805の圧電特性が良好であり、したがって高い電気機械結合係数を有する。これにより、薄膜圧電共振器800を、高周波数領域で使用することができる。また、薄膜圧電共振器800を、小型(薄型)化し、かつ、良好に動作させることができる。
また、前述した第1の薄膜圧電共振器700および第2の薄膜圧電共振器800は、インダクタンスやコンデンサなどの回路構成要素と適宜に組み合わされることにより、良好な誘導フィルタを構成することができる。
以上、本実施の形態に係る圧電素子、圧電アクチュエーター、インクジェット式記録ヘッド、インクジェットプリンター、圧電ポンプ、表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、薄膜圧電共振器及び電子機器について説明したが、本発明は、前記実施の形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。本発明に係る圧電素子は、前述したデバイスに適用されるだけでなく、種々のデバイスに適用可能である。
例えば、前記実施の形態においては電子機器として携帯電話機を、電子回路として携帯電話機内に設けられる電子回路をその一例として挙げ、説明したが、本発明は携帯電話機に限定されることなく、種々の移動体通信機器およびその内部に設けられる電子回路に適用することができる。
さらに、移動体通信機器のみならずBSおよびCS放送を受信するチューナなどの据置状態で使用される通信機器、およびその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。さらには、通信キャリアとして空中を伝播する電波を使用する通信機器のみならず、同軸ケーブル中を伝播する高周波信号または光ケーブル中を伝播する光信号を用いるHUBなどの電子機器およびその内部に設けられる電子回路にも適用することができる。
以上、本発明の実施の形態の一例について述べたが、本発明はこれらに限定されず、その要旨の範囲内で各種の態様を取りうる。
本実施の形態にかかる圧電素子を示す断面図。 ペロブスカイト型結晶構造の説明図。 BiおよびPbの6p軌道準位の相対値を示す図。 圧電素子の製造工程図。 圧電素子の製造工程図。 圧電素子の製造工程図。 圧電素子の製造工程図。 圧電素子の製造工程図。 圧電素子の製造工程図。 インクジェット式記録ヘッドの概略構成図。 インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図。 ヘッドの動作を説明するための図。 ヘッドの動作を説明するための図。 本実施の形態にかかるインクジェットプリンターの概略構成図。 図1に示す圧電素子を適用した圧電ポンプの概略断面図。 図1に示す圧電素子を適用した圧電ポンプの概略断面図。 本実施の形態にかかる表面弾性波素子を示す側断面図。 本実施の形態にかかる周波数フィルタを示す斜視図。 本実施の形態にかかる発振器を示す斜視図。 前記発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。 前記発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。 前記発振器をVCSOに応用した一例を示す概略図。 PLL回路の基本構成を示すブロック図。 本実施の形態にかかる電子回路の構成を示すブロック図。 実施の形態にかかる薄膜圧電共振器を示す側断面図。 実施の形態にかかる薄膜圧電共振器を示す側断面図。
符号の説明
1 圧電素子、2 基板、3 バッファ層、4 下部電極、5 圧電体膜、6 上部電極、7 第1バッファ層、8 第2バッファ層、9 第3バッファ層、11 単結晶シリコン基板(単結晶基板)、12 バッファ層、13 導電膜、14 圧電体膜、15 保護膜、16 電極、20 圧電ポンプ、21 基体、22 圧電素子、23 ポンプ室、24 振動板、50 インクジェット式記録ヘッド、51 ノズル板、52 インク室基板、54 圧電部、55 弾性板、56 基体、57 ヘッド本体、61 単結晶シリコン基板、63 発振器、64 基板、66 配線、67 ワイヤー線、68 ワイヤー線、70 入力端子、71 位相比較器、72 低域フィルタ、73 増幅器、74 VCO、80 送話部、81 送信信号処理回路、82 送信ミキサ、83 送信フィルタ、84 送信電力増幅器、85 送受分波器、87 低雑音増幅器、88 受信フィルタ、89 受信ミキサ、90 受信信号処理回路、91 受話部、92 周波数シンセサイザ、93 制御回路、94 表示回路、95 表示部、140 基板、141、142、IDT電極、511 ノズル、521 キャビティー、522 側壁、523 リザーバ、524 供給口、531 連通孔、600 インクジェットプリンター、620 装置本体、621 トレイ、622 排出口、630 ヘッドユニット、631 インクカートリッジ、632 キャリッジ、640 印刷装置、641 キャリッジモータ、642 往復動機構、643 キャリッジガイド軸、644 タイミングベルト、650 給紙装置、651 給紙モータ、652 給紙ローラ、660 制御部、670 操作パネル、700 薄膜圧電共振器、701 基体、702 ビアホール、703 弾性膜、704 下部電極、705 圧電体膜、706 上部電極、708 配線、709 電極、710 パッド、800 薄膜圧電共振器、801 基体、802 エアギャップ、803 弾性膜、804 下部電極、805 圧電体膜、806 上部電極

Claims (18)

  1. (Pb 1−d Bi )(Zr 1−p ,Ti 1−a Nb の一般式で示される圧電体からなり、
    aは、0.10≦a≦0.30の範囲であり、
    dは、0<d≦0.5の範囲であり、
    pは、0.2≦p≦0.6の範囲である、圧電体膜。
  2. 請求項において、
    前記Biは、ペロブスカイト型構造のAサイトに存在する、圧電体膜。
  3. 請求項1または2において、
    前記圧電体膜は、Si、または、SiおよびGeを含む、圧電体膜。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    pは、(pMPB−0.05)≦p≦pMPBの範囲であり、
    MPBは、該圧電体膜の結晶構造の相境界におけるpの値を示す、圧電体膜。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    該圧電体膜の結晶構造の相境界におけるpを有する、圧電体膜。
  6. 請求項1ないしのいずれかにおいて、
    ロンボヘドラル構造を有し、かつ擬立方晶(100)に優先配向している、圧電体膜。
  7. 請求項1ないしのいずれかに記載の圧電体膜と、
    前記圧電体膜の上方に形成された上部電極と、
    前記圧電体膜の下方に形成された下部電極と、
    を有する、圧電素子。
  8. 請求項において、
    前記下部電極は、ペロブスカイト型構造を有する結晶からなる、圧電素子。
  9. 請求項またはに記載の圧電素子を有する、圧電アクチュエーター。
  10. 請求項1ないしのいずれかに記載の圧電体膜を有する、圧電ポンプ。
  11. 請求項1ないしのいずれかに記載の圧電体膜を有する、インクジェット式記録ヘッド。
  12. 請求項11に記載のインクジェット式記録ヘッドを有する、インクジェットプリンター。
  13. 請求項1ないしのいずれかに記載の圧電体膜が、基板の上方に形成されてなる、表面弾性波素子。
  14. 請求項13に記載の表面弾性波素子が有する前記圧電体膜の上方に形成された第1の電極と、
    前記圧電体膜の上方に形成された第2の電極と、を含む、周波数フィルタ。
  15. 請求項13に記載の表面弾性波素子が有する前記圧電体膜の上方に形成された第1の電極と、
    前記圧電体膜の上方に形成された第2の電極と、
    トランジスタを有する発振回路と、を含む、発振器。
  16. 請求項15に記載の発振器を含む、電子回路。
  17. 請求項1ないしのいずれかの圧電体膜を有する共振子が、基板の上方に形成されてなる、薄膜圧電共振器。
  18. 請求項10記載の圧電ポンプ、請求項14に記載の周波数フィルタ、請求項15に記載の発振器、請求項16に記載の電子回路、請求項17に記載の薄膜圧電共振器のうちの少なくとも1つを有する、電子機器。
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