JP5041120B2 - インクジェット式記録ヘッドおよびインクジェットプリンタ - Google Patents

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Description

本発明は、圧電材料および圧電素子に関する。
インクジェットプリンタのヘッド等に用いられる圧電素子は、圧電材料からなる圧電体層を有する。この圧電材料としては、Pb(Zr,Ti)O(PZT)などが代表的である(例えば特開2001−223404号公報参照)。しかしながら、PZTなどは鉛(Pb)を含むため、環境上、非常に問題となる。
特開2001−223404号公報
本発明の目的は、環境に優しく、圧電特性に優れた新規な圧電材料、および、該圧電材料からなる圧電体層を有する圧電素子を提供することにある。
本発明に係る圧電材料は、
下記一般式(1)で表される。
(Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1)
但し、0<x<1であり、0<y<1である。
この圧電材料は、環境上問題となる鉛(Pb)を含まないため、極めて有用である。さらに、この圧電材料は、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性、例えば充分な格子のひずみ量を得ることができる。
本発明に係る圧電材料において、
0<x≦0.20であり、0<y≦0.30であることができる。
本発明に係る圧電材料において、
擬立方晶の表示で(100)に配向していることができる。
なお、本発明において、例えば、「(100)に配向」とは、(100)にすべての結晶が配向している場合と、(100)にほとんどの結晶(例えば90%以上)が配向しており、(100)に配向していない残りの結晶が(110)等に配向している場合と、を含む。即ち、「(100)に配向」とは、「(100)に優先配向」ということもできる。このことは、本発明において、例えば、「(110)に配向」という場合も同様である。
本発明に係る圧電材料において、
擬立方晶の表示で(110)に配向していることができる。
本発明に係る圧電材料において、
分極方向は、擬立方晶の表示で[111]方向であることができる。
なお、本発明において、「分極方向は、擬立方晶の表示で[111]方向である」とは、分極方向が、擬立方晶の表示で、[111]方向に完全に一致している場合と、分極方向が、擬立方晶の表示で、[111]方向から僅かにずれてはいるが、ほぼ[111]方向になっている場合と、を含む。分極方向が、擬立方晶の表示で、ほぼ[111]方向になっている場合とは、例えば、分極方向が、擬立方晶の表示で、<111>方向と、<100>方向との間にあり、分極方向と、<111>方向との成す角が、例えば10°以下である場合などである。
本発明に係る第1の圧電素子は、
基体と、
前記基体の上方に形成された下部電極と、
前記下部電極の上方に形成された圧電体層と、
前記圧電体層の上方に形成された上部電極と、を含み、
前記圧電体層は、下記一般式(1)で表される圧電材料からなる。
(Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1)
但し、0<x<1であり、0<y<1である。
なお、本発明に係る記載では、「上方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「上方」に形成された他の特定のもの(以下「B」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、A上に直接Bが形成されているような場合と、A上に他のものを介してBが形成されているような場合とが含まれるものとして、「上方」という文言を用いている。
本発明に係る圧電素子において、
前記基体の上方であって、前記下部電極の下方に形成された弾性層を有することができる。
なお、本発明に係る記載では、「下方」という文言を、例えば、「特定のもの(以下「A」という)の「下方」に形成された他の特定のもの(以下「B」という)」などと用いている。本発明に係る記載では、この例のような場合に、Aの下に直接Bが形成されているような場合と、Aの下に他のものを介してBが形成されているような場合とが含まれるものとして、「下方」という文言を用いている。
本発明に係る第2の圧電素子は、
基体と、
前記基体の上方に形成された圧電体層と、
前記圧電体層の上方に形成された第1電極と、
前記圧電体層の上方に形成され、前記第1電極と離間している第2電極と、を含み、
前記圧電体層は、下記一般式(1)で表される圧電材料からなる。
(Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1)
但し、0<x<1であり、0<y<1である。
本発明に係る圧電素子において、
0<x≦0.20であり、0<y≦0.30であることができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電材料は、擬立方晶の表示で(100)に配向していることができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電材料は、擬立方晶の表示で(110)に配向していることができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電材料の分極方向は、擬立方晶の表示で[111]方向であることができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電材料は、ロンボヘドラル構造を有することができる。
本発明に係る圧電素子において、
前記圧電材料は、モノクリニック構造を有することができる。
以下、本発明に好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
1.1. まず、本実施形態に係る圧電材料について説明する。本実施形態に係る圧電材料は、下記一般式(1)で表される。
(Bi,La)(Fe,(Ni2/3Nb1/3))O ・・・(1)
本実施形態に係る圧電材料は、ペロブスカイト型構造を有する。該圧電材料は、擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向していることが望ましい。該圧電材料の分極方向は、擬立方晶の表示で[111]方向であることが望ましい。擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向しており、分極方向が擬立方晶の表示で[111]方向にある圧電材料は、良好な圧電特性を有することができる。本実施形態に係る圧電材料は、ロンボヘドラル構造またはモノクリニック構造を有することが望ましい。また、該圧電材料における各元素の価数は、Biは+3価、Laは+3価、Feは+3価、Niは+2価、Nbは+5価、Oは−2価であることが望ましい。これにより、該圧電材料は、電荷中性であることができる。
また、前記一般式(1)は、下記一般式(1’)で表されることもできる。
(Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1’)
但し、0<x<1であり、好ましくは、0<x≦0.20である。また、0<y<1であり、好ましくは、0<y≦0.30である。xは、ペロブスカイト型構造のAサイトにおけるLa組成であり、yは、BサイトにおけるNiおよびNbの組成である。
1.2. 本実施形態に係る圧電材料は、環境上問題となる鉛(Pb)を含まないため、極めて有用である。さらに、本実施形態に係る圧電材料は、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性、例えば充分な格子のひずみ量を得ることができる。このことは、後述する実験例において確認されている。
2.1. 次に、本実施形態に係る第1の圧電素子100について説明する。図1は、本実施形態に係る圧電材料からなる圧電体層6を有する第1の圧電素子100の一例を模式的に示す断面図である。
圧電素子100は、基体2と、基体2の上方に形成された下部電極4と、下部電極4上に形成され、上述した圧電材料からなる圧電体層6と、圧電体層6上に形成された上部電極7と、を含む。圧電素子100は、さらに、基体2の上であって下部電極4の下に形成された弾性層3を有することができる。下部電極4は、弾性層3上に形成されていることができる。なお、圧電素子100は、弾性層3を有しないこともできる。
基体2としては、例えば、(110)配向の単結晶シリコン基板などを用いることができ、特に限定されない。基体2は、基板単体あるいは基板上に他の層が積層された積層体であってもよい。弾性層3は、例えば、インクジェット式記録ヘッドにおける弾性板として適用されることができる。弾性層3としては、例えば、酸化シリコン、酸化ジルコニウムをこの順に積層した膜などを用いることができ、特に限定されない。弾性層3の膜厚は、例えば1μm程度である。基体2は、例えば、弾性層3の下であって、基体2に開口されたキャビティ20を有することができる。
下部電極4は、圧電体層6に電圧を印加するための一方の電極である。下部電極4の膜厚は、例えば100nm〜300nmである。下部電極4としては、特に限定されないが、例えば、白金(Pt)等の金属膜の上にペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuOなど)を積層した膜などを用いることができる。例えば、この導電性酸化物からなる膜は、上述した圧電材料からなる圧電体層6と同様に、擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向していることが望ましい。これにより、該導電性酸化物膜の結晶構造および配向を引き継いで、下部電極4の上に、ペロブスカイト型構造を有し、擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向している圧電材料からなる圧電体層6を容易に得ることができる。
圧電体層6は、上述した本実施形態に係る圧電材料からなる。圧電体層6の膜厚は特に限定されないが、例えば200nm〜1.5μmである。
上部電極7は、圧電体層6に電圧を印加するための他方の電極である。上部電極7としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、ペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuO等)などの単層、あるいは、これらの積層体を用いることができ、特に限定されない。上部電極7の膜厚は、例えば100nm〜200nmである。
下部電極4、圧電体層6、および上部電極7は、例えば図1に示すようにパターニングされて、柱状の堆積体(柱状部)50を構成することができる。
2.2. 次に、本実施形態に係る第1の圧電素子100の製造方法について図1を参照しながら説明する。
(A)まず、基体2上に弾性層3を形成する。弾性層3は、例えば、熱酸化法、化学気相成長(CVD)法、スパッタ法、蒸着法などにより形成されることができる。
(B)次に、弾性層3上に下部電極4を形成する。下部電極4は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(C)次に、下部電極4上に、本実施形態に係る圧電材料からなる圧電体層6を形成する。圧電体層6は、例えば、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Decomposition)法などを用いて形成されることができる。ゾルゲル法やMOD法を用いる場合の圧電体層6の形成方法は、具体的には以下の通りである。
まず、例えば、スピンコート法などを用いて、圧電体層6を形成するための前駆体溶液を下部電極4上に塗布する(前駆体溶液塗布工程)。前駆体溶液については、例えば、圧電体層6となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含む有機金属化合物を、各構成金属が所望のモル比となるように混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させることにより作製できる。圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。圧電材料の構成金属(Bi、La、Fe、Ni、Nb)を含む有機金属化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ビスマス(Bi)を含む有機金属化合物としては、例えばビスマスイソプロポキシドなどが挙げられる。ランタン(La)を含む有機金属化合物としては、例えばランタンアセチルアセトナート二水和物などが挙げられる。鉄(Fe)を含む有機金属化合物としては、例えば酢酸鉄などが挙げられる。ニッケル(Ni)を含む有機金属化合物としては、例えばニッケルアセチルアセトナートなどが挙げられる。ニオブ(Nb)を含む有機金属化合物としては、例えばニオブエトキシドなどが挙げられる。なお、圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物としては、これらに限定されるわけではない。
前駆体溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。前駆体溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、前駆体溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸または塩基を添加することができる。前駆体溶液への添加剤としては、例えば、ジエタノールアミン、酢酸などを挙げることができる。
スピンコートにおけるスピンの回転数は、例えば、初期では500rpm程度とし、続いて塗布ムラが起こらないように回転数を2000rpm程度に上げることができる。
次に、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、前駆体溶液に用いた溶媒の沸点よりも例えば10℃程度高い温度で熱処理を行う(乾燥熱処理工程)。
次に、前駆体溶液に用いた有機金属化合物の配位子を分解、除去すべく、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、例えば300℃〜400℃程度で熱処理を行う(脱脂熱処理工程)。
なお、上述した前駆体溶液塗布工程、乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の膜厚に応じて適宜回数繰り返すことができる。
次に、結晶化アニール、即ち結晶化のための焼成工程を行うことで圧電体層6を得る。結晶化アニールは、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)等により、酸素雰囲気中にて、550℃〜650℃程度で行われることができる。
なお、圧電体層6は、ゾルゲル法やMOD法の液相法のみならず、例えば、レーザアブレーション法やスパッタ法等の気相法などを用いて形成されることもできる。
(D)次に、圧電体層6上に上部電極7を形成する。上部電極7は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、化学気相成長(CVD)法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(E)次に、必要に応じて、ポストアニールを行うことができる。これにより、圧電体層6と上下電極との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層6の結晶性を改善することができる。ポストアニールは、例えば、RTA等により、酸素雰囲気中にて行われることができる。
(F)次に、必要に応じて、各部材をエッチングによりパターニングして、例えば、柱状部50やキャビティ20などを形成することができる。
以上の工程によって、本実施形態に係る第1の圧電素子100を製造することができる。
2.3. 本実施形態に係る第1の圧電素子100では、圧電体層6は、上述した圧電材料からなる。この圧電材料は、上述したように、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性を有することができる。従って、本実施形態によれば、環境に優しく、圧電特性に優れた圧電素子を提供することができる。
2.4. 次に、実験例について説明する。
以下の方法によって、本実施形態に係る第1の圧電素子100の実験サンプルを得た。
まず、(110)配向のシリコン基板(基体2)上に、SiO膜を500nm、ZrO膜を500nmの膜厚で積層して弾性層3を得た。SiO膜を熱酸化法によって形成し、ZrO膜をスパッタ法によって形成した。次に、スパッタ法によって、ZrO膜上に、下部電極4として、Pt膜を200nm、LaNiO膜を100nmの膜厚で順に積層した。Pt膜およびLaNiO膜のスパッタリングの電力は、200Wとした。得られたLaNiO膜の配向は、擬立方晶の表示で(100)に配向していることが確認された。
次に、LaNiO膜上に、上述した圧電材料からなる圧電体層6を形成した。本実験例では、圧電材料として、上述した一般式(1’):
(Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1’)
におけるxを、0.10に固定して、yを、0.05から、0.05ずつ、0.35まで変化させたもの、および、yを、0.20に固定して、xを、0.05から、0.05ずつ、0.30まで変化させたものを用いた。
圧電体層6は、具体的には、以下のようにして得た。
まず、圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物(ビスマスイソプロポキシド、ランタンアセチルアセトナート二水和物、酢酸鉄、ニッケルアセチルアセトナート、ニオブエトキシド)の試薬をそれぞれ用意した。次に、所望の圧電材料の組成に対応したモル比となるようにこれらを混合するとともに、これらをブチルセロソルブに溶解(分散)させた。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして上述した圧電材料の前駆体溶液を調整した。
次に、この前駆体溶液をスピンコート法によって下部電極4上に塗布した(前駆体溶液塗布工程)。次に、溶媒の沸点(ブチルセロソルブの場合、170℃程度)より約10℃高い温度で熱処理(乾燥)して溶媒を除去しゲル化させた(乾燥熱処理工程)。次に、さらに400℃程度に加熱することで膜中に残存している溶媒以外の有機成分を分解/除去し(脱脂熱処理工程)、膜厚100nmのアモルファス膜を形成した。以上の工程を5回繰り返して行った。次に、RTAにより酸素雰囲気中にて、600℃で1分間加熱し、結晶化を行うことで、膜厚500nmの圧電体層6を形成した。
得られた圧電体層6を構成する圧電材料の結晶構造は、ペロブスカイト型構造であって、ロンボヘドラル構造またはモノクリニック構造であることが確認された。該圧電材料の分極方向は、擬立方晶の表示で[111]方向であることが確認された。該圧電材料は、擬立方晶の表示で(100)に配向していることが確認された。該圧電材料の結晶構造、分極方向、および配向の同定には、X線θ−2θ測定およびラマン散乱を用いた。
また、得られた圧電体層6を構成する圧電材料のxおよびyは、各実験サンプルにおいて、所望の値となっていることを、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)法によって確認した。
次に、スパッタ法によって、圧電体層6上に、上部電極7として、膜厚200nmのPt膜を形成した。
以上のようにして圧電素子100の各実験サンプルを得た。これらの実験サンプルの圧電体層6に対して、上下電極から100kV/cmの電界を印加したときの圧電材料の格子のひずみ量を表1および表2に示す。なお、表1は、xの変化に対する格子のひずみ量を示しており、表2は、yの変化に対する格子のひずみ量を示している。格子のひずみ量は、電界X線によるθ−2θ測定から求めた。
Figure 0005041120
Figure 0005041120
表1に示すように、La組成xが0.05〜0.20の実験サンプルでは、格子のひずみ量は、0.19%以上であり、良好な圧電特性が確認された。なお、参考例として、xが0(ゼロ)の場合の実験サンプルも作製したが、この場合の格子のひずみ量は、表1に示すように、0.07%であった。
また、表2に示すように、NiおよびNbの組成yが0.05〜0.30の実験サンプルでは、格子のひずみ量は、0.16%以上であり、良好な圧電特性が確認された。なお、参考例として、yが0(ゼロ)の場合の実験サンプルも作製したが、この場合の格子のひずみ量は、表2に示すように、0.15%であった。
以上の実験結果から、本実施形態に係る圧電材料が良好な圧電特性を有することが確認された。
3.1. 次に、本実施形態に係る第2の圧電素子200について説明する。図2は、本実施形態に係る圧電材料からなる圧電体層6を有する第2の圧電素子200の一例を模式的に示す断面図である。なお、上述した第1の圧電素子100と同一の部材については、同一の符合を付し、その詳細な説明を省略する。
圧電素子200は、基体2と、基体2の上方に形成され、上述した圧電材料からなる圧電体層6と、圧電体層6上に形成された第1電極40と、圧電体層6上に形成された第2電極70と、を含む。圧電素子200は、基体2上に形成されたバッファ層30を有することができる。圧電体層6は、このバッファ層30上に形成されていることができる。
バッファ層30は、圧電体層6の結晶配向性を制御する機能を有することができる。なお、例えば基体2にこの機能がある場合などに、バッファ層30を設けないこともできる。バッファ層30は、例えば、ペロブスカイト型構造を有し、擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向している酸化物からなることが望ましい。これにより、バッファ層30の結晶構造および配向を引き継いで、バッファ層30の上に、ペロブスカイト型構造を有し、擬立方晶の表示で(100)または(110)に配向している圧電材料からなる圧電体層6を容易に得ることができる。バッファ層30を構成する酸化物としては、例えば、LaNiO、SrRuOなどを挙げることができる。
第1電極40および第2電極70は、圧電体層6に電圧を印加するための電極である。第1電極40および第2電極70としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、ペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuO等)などの単層、あるいは、これらの積層体を用いることができ、特に限定されない。第1電極40および第2電極70の膜厚は、例えば100nm〜200nmである。
3.2. 次に、本実施形態に係る第2の圧電素子200の製造方法について図2を参照しながら説明する。
(A)まず、基体2上にバッファ層30を形成する。バッファ層30は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(B)次に、バッファ層30上に圧電体層6を形成する。本工程は、上述した第1の圧電素子100の一製造工程と同様であるので、詳細な説明を省略する。
(C)次に、圧電体層6上に、第1電極40および第2電極70を形成する。第1電極40および第2電極70は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。第1電極40および第2電極70は、公知の方法によりパターニングされることができる。
(D)次に、必要に応じて、ポストアニールを行うことができる。本工程は、上述した第1の圧電素子100の一製造工程と同様であるので、詳細な説明を省略する。
以上の工程によって、本実施形態に係る第2の圧電素子200を製造することができる。
3.3. 本実施形態に係る第2の圧電素子200は、第1の圧電素子100と同様に、環境に優しく、優れた圧電特性を有することができる。
4. 上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、上述した本発明の実施形態に係る圧電素子は、例えば、インクジェットプリンタ等に用いられるインクジェット式記録ヘッド、アクチュエータ、ジャイロセンサ、FBAR(film bulk acoustic resonator)型やSMR(solid mounted resonator)型等のBAW(bulk acoustic wave)フィルタ、SAW(surface acoustic wave)フィルタ、超音波モータなどに適用されることができる。本発明の実施形態に係る圧電素子は、圧電特性に優れており、各種の用途に好適に適用できる。
本実施形態に係る第1の圧電素子を示す断面図。 本実施形態に係る第2の圧電素子を示す断面図。
符号の説明
2 基体、3 弾性層、4 下部電極、6 圧電体層、7 上部電極、20 キャビティ、30 バッファ層、40 第1電極、50 柱状部、70 第2電極、100 第1の圧電素子,200 第2の圧電素子

Claims (9)

  1. 部電極と、
    前記下部電極の上方に形成され、下記一般式(1)で表される圧電材料からなる圧電体層と、
    前記圧電体層の上方に形成された上部電極と、を有する圧電素子を備えた、インクジェット式記録ヘッド。
    (Bi1−xLa)(Fe1−y(Ni2/3Nb1/3)O ・・・(1)
    但し、0<x<1であり、0<y<1である。
  2. 請求項において、
    0<x≦0.20であり、0<y≦0.30である、インクジェット式記録ヘッド。
  3. 下部電極と、
    前記下部電極の上方に形成され、Bi、La、Fe、NiおよびNbを構成金属として含む圧電体層と、
    前記圧電体層の上方に形成された上部電極と、を有する圧電素子を備え、
    前記圧電体層のペロブスカイト型構造のAサイトにおけるLaの組成xが0<x≦0.20であり、
    前記圧電体層のペロブスカイト型構造のBサイトにおけるNiおよびNbの組成yが0<y≦0.30である、インクジェット式記録ヘッド。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    前記圧電体層の膜厚は200nm〜1.5μmである、インクジェット式記録ヘッド。
  5. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記圧電材料は、擬立方晶の表示で(100)に配向している、インクジェット式記録ヘッド。
  6. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記圧電材料は、擬立方晶の表示で(110)に配向している、インクジェット式記録ヘッド。
  7. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記圧電材料は、ロンボヘドラル構造を有する、インクジェット式記録ヘッド。
  8. 請求項乃至のいずれかにおいて、
    前記圧電材料は、モノクリニック構造を有する、インクジェット式記録ヘッド。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット式記録ヘッドを備える、インクジェットプリンタ。
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