JP4905645B2 - 圧電材料およびその製造方法、並びに液体噴射ヘッド - Google Patents

圧電材料およびその製造方法、並びに液体噴射ヘッド Download PDF

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Description

本発明は、圧電材料およびその製造方法に関する。
高画質、高速印刷を可能にするプリンタとして、インクジェットプリンタが知られている。インクジェットプリンタは、内容積が変化するキャビティを備えたインクジェット式記録ヘッドを備える。このようなインクジェット式記録ヘッドにおけるヘッドアクチュエータとしては、従来、Pb(Zr,Ti)O(PZT)に代表される圧電体膜を用いた圧電素子が用いられている(例えば特開2001−223404号公報参照)。しかしながら、PZTなどは鉛(Pb)を含むため、環境上、非常に問題となる。
特開2001−223404号公報
本発明の目的は、環境に優しく、圧電特性に優れた新規な圧電材料およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る圧電材料は、
下記一般式(1)で表される。
(BaBi)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(1)
但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示し、
a、b、cは、下記式(i)および(ii)を満たす。
2a+3b=2 ・・・(i)
a+b+c=1 ・・・(ii)
この圧電材料は、環境上問題となる鉛(Pb)を含まないため、極めて有用である。さらに、この圧電材料は、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性、例えば充分な格子のひずみ量を得ることができる。
本発明に係る圧電材料において、
bは、1/3以下であり、
cは、1/6以下であることができる。
本発明に係る圧電材料において、
ロンボヘドラル構造を有することができる。
本発明に係る圧電材料において、
モノクリニック構造を有することができる。
本発明に係る圧電材料において、
擬立方晶で(100)に配向していることができる。
なお、本発明において、例えば、「(100)に配向」とは、(100)にすべての結晶が配向している場合と、(100)にほとんどの結晶が配向しており、(100)に配向していない残りの結晶が(110)等に配向している場合と、を含む。即ち、「(100)に配向」とは、「(100)に優先配向」ということもできる。このことは、本発明において、例えば、「(110)に配向」という場合も同様である。
本発明に係る圧電材料において、
擬立方晶で(110)に配向していることができる。
本発明に係る圧電材料の製造方法は、
基体の上方に、下記一般式(A)で表される原料を含む前駆体溶液を塗布する工程と、
前記前駆体溶液に対して熱処理を行い、下記一般式(1)で表される圧電材料を形成する工程と、を含む。
(BaBib’)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(A)
(BaBi)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(1)
但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示し、
a、b、b’、cは、下記式(i)乃至(iii)を満たす。
2a+3b=2 ・・・(i)
a+b+c=1 ・・・(ii)
b<b’ ・・・(iii)
以下、本発明に好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
1. 第1の実施形態
1.1. まず、第1の実施形態に係る圧電材料について説明する。本実施形態に係る圧電材料は、下記一般式(1)で表される。
(BaBi)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(1)
但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示し、
a、b、cは、下記式(i)および(ii)を満たす。
2a+3b=2 ・・・(i)
a+b+c=1 ・・・(ii)
また、0<x<1であり、0.5<x<1であることが望ましい。また、a>bであることが望ましい。
また、圧電性を良好に維持できるBiの比率bの上限値は、1/3である。即ち、bは、1/3以下であることにより、圧電性を良好に維持できる。この場合において、圧電材料の電荷中性を考えると、Aサイトの欠陥Zの比率cの上限値は、1/6である。即ち、cは、1/6以下であることにより、該圧電材料は、前記一般式(1)の下で電荷中性であることができる。
例えば、x=0.8、a=1/2、b=1/3、c=1/6とすることができる。この場合の圧電材料は、下記式(1')で表されることができる。
(Ba1/2Bi1/31/6)((Mg1/3Nb2/3)0.8Ti0.2)O ・・(1')
本実施形態に係る圧電材料は、ペロブスカイト型構造を有する。該圧電材料は、ロンボヘドラル構造またはモノクリニック構造を有することが望ましい。また、該圧電材料は、擬立方晶で(100)または(110)に配向していることが望ましい。ロンボヘドラル構造またはモノクリニック構造を有し、擬立方晶で(100)または(110)に配向している圧電材料は、良好な圧電特性を有することができる。また、該圧電材料における各元素の価数は、Baは+2価、Biは+3価、Mgは+2価、Nbは+5価、Tiは+4価、Oは−2価であることが望ましい。これにより、該圧電材料は、前記一般式(1)の下で電荷中性であることができる。なお、Aサイトの欠陥Zは、電荷0とみなされる。
1.2. 本実施形態に係る圧電材料は、環境上問題となる鉛(Pb)を含まないため、極めて有用である。さらに、本実施形態に係る圧電材料は、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性、例えば充分な格子のひずみ量を得ることができる。このことは、後述する第2の実施形態に係る実験例において確認されている。
2. 第2の実施形態
2.1. 次に、第2の実施形態に係る圧電素子100について説明する。図1は、本発明に係る圧電材料からなる圧電体膜6を含む圧電素子100の一例を模式的に示す断面図である。
圧電素子100は、第1導電層(以下「下部電極」ともいう)4と、下部電極4上に形成され、上記圧電材料からなる圧電体膜6と、圧電体膜6上に形成された第2導電層(以下「上部電極」ともいう)7と、を含む。圧電素子100は、基体2と、基体2上に形成された弾性膜3と、を含むことができる。下部電極4は、この弾性膜3上に形成されることができる。なお、圧電素子100は、基体2および弾性膜3のうちの少なくとも一方を有しないこともできる。
基体2としては、例えば、(110)配向の単結晶シリコン基板などを用いることができ、特に限定されない。基体2は、基板単体あるいは基板上に他の層が積層された積層体であってもよい。弾性膜3は、インクジェット式記録ヘッド50(図3参照)において弾性膜55として適用されることができる。弾性膜3としては、例えば、酸化シリコン、酸化ジルコニウムをこの順に積層した膜などを用いることができ、特に限定されない。弾性膜3の膜厚は、例えば1μm程度である。
下部電極4は、圧電体膜6に電圧を印加するための一方の電極である。下部電極4は、例えば圧電体膜6および上部電極7と同じ平面形状に形成されることができる。下部電極4の膜厚は、例えば100nm〜300nmである。下部電極4としては、特に限定されないが、例えば、白金(Pt)等の金属膜の上にペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuOなど)を積層した膜などを用いることができる。例えば、この導電性酸化物からなる膜は、上記圧電材料からなる圧電体膜6と同様に、擬立方晶で(100)または(110)に配向していることが望ましい。導電性酸化物膜がこのように配向していることで、導電性酸化物膜の上に形成される圧電体膜6は、導電性酸化物膜の配向を引き継ぎ易くなる。
圧電体膜6は、第1の実施形態に係る圧電材料から形成される。即ち、圧電体膜6は、該圧電材料によって構成される。圧電体膜6の膜厚は特に限定されないが、例えば200nm〜1.5μmである。
上部電極7は、圧電体膜6に電圧を印加するための他方の電極である。上部電極7としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、ペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuO等)などの単層、あるいは、これらの積層体を用いることができ、特に限定されない。上部電極7の膜厚は、例えば100nm〜200nmである。
2.2. 次に、本実施形態に係る圧電素子100の製造方法について図1を参照しながら説明する。
(A)まず、基体2上に弾性膜3を形成する。弾性膜3は、例えば、熱酸化法、化学気相成長(CVD)法、スパッタ法、蒸着法などにより形成されることができる。
(B)次に、弾性膜3上に下部電極4を形成する。下部電極4は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(C)次に、下部電極4上に、第1の実施形態に係る圧電材料からなる圧電体膜6を形成する。圧電体膜6は、例えば、ゾルゲル法、MOD(Metal Organic Decomposition)法などを用いて形成されることができる。ゾルゲル法やMOD法を用いる場合の圧電体膜6の形成方法は、具体的には以下の通りである。
まず、例えば、スピンコート法などを用いて、圧電体膜6を形成するための原料を含む前駆体溶液を下部電極4上に塗布する(前駆体溶液塗布工程)。前駆体溶液については、例えば、圧電体膜6となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含む有機金属化合物を混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させることにより作製できる。有機金属化合物を混合する際には、圧電材料の各構成金属のうち、Bi以外の構成金属が上述した一般式(1)の組成比となるように混合し、Biが上述した一般式(1)の組成比よりも多くなるように混合する。以下、このときの混合物(原料)の組成を「仕込み組成」という。仕込み組成は、例えば、下記式(A)で表されることができる。
(BaBib’)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(A)
但し、Bi組成b’は、焼成後のBi組成bよりも大きい値に設定しておくことが好ましい。即ち、b、b’は、下記式(iii)を満たすことが好ましい。
b<b’ ・・・(iii)
これにより、後述する焼成工程においてBiが揮発しても、最終的に狙った圧電材料のBi組成bを得ることができる。Biは、揮発し易い元素であるため、Bi組成b’をこのように設定しておくことが望ましい。具体的には、例えば、b’をbよりも10%程度大きい値に設定しておくことができる。
圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。圧電材料の構成金属(Ba、Bi、Mg、Nb、Ti)を含む有機金属化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
バリウム(Ba)を含む有機金属化合物としては、例えばバリウムエトキシドなどが挙げられる。ビスマス(Bi)を含む有機金属化合物としては、例えばビスマスイソプロポキシドなどが挙げられる。マグネシウム(Mg)を含む有機金属化合物としては、例えば酢酸マグネシウムなどが挙げられる。ニオブ(Nb)を含む有機金属化合物としては、例えばニオブエトキシドなどが挙げられる。チタン(Ti)を含む有機金属化合物としては、例えばチタンイソプロポキシドなどが挙げられる。なお、圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物としては、これらに限定されるわけではない。
前駆体溶液には、必要に応じて安定化剤等の各種添加剤を添加することができる。前駆体溶液に加水分解・重縮合を起こさせる場合には、前駆体溶液に適当な量の水とともに、触媒として酸または塩基を添加することができる。前駆体溶液への添加剤としては、例えば、ジエタノールアミン、酢酸などを挙げることができる。
スピンコートにおけるスピンの回転数は、例えば、初期では500rpm程度とし、続いて塗布ムラが起こらないように回転数を2000rpm程度に上げることができる。
次に、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、前駆体溶液に用いた溶媒の沸点よりも例えば10℃程度高い温度で熱処理を行う(乾燥熱処理工程)。
次に、前駆体溶液に用いた有機金属化合物の配位子を分解、除去すべく、大気雰囲気下でホットプレート等を用い、例えば300℃〜400℃程度で熱処理を行う(脱脂熱処理工程)。
なお、上述した前駆体溶液塗布工程、乾燥熱処理工程、脱脂熱処理工程の一連の工程を所望の膜厚に応じて適宜回数繰り返すことができる。
次に、結晶化アニール、即ち結晶化のための焼成工程を行うことで、下記一般式(1)で表される圧電材料からなる圧電体膜6を得る。
(BaBi)((Mg1/3Nb2/3)Ti(1−x))O ・・・(1)
但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示し、
a、b、cは、下記式(i)および(ii)を満たす。
2a+3b=2 ・・・(i)
a+b+c=1 ・・・(ii)
この組成においては、Biの組成bは、上述した仕込み組成(A)におけるb’よりも小さくなっている。また、圧電材料が前記一般式(1)の下で電荷中性を保つためには、ペロブスカイト型構造のAサイトに欠陥(例えば空孔)Zが生じている。Aサイトの欠陥Zの比率cは、c=1−a−bである。
結晶化アニールは、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)等により、酸素雰囲気中にて、600℃〜750℃程度で行うことができる。
なお、圧電体膜6は、ゾルゲル法やMOD法の液相法のみならず、例えば、レーザアブレーション法やスパッタ法等の気相法などを用いて形成されることもできる。
(D)次に、圧電体膜6上に上部電極7を形成する。上部電極7は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、化学気相成長(CVD)法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(E)次に、必要に応じて、ポストアニールを行うことができる。これにより、圧電体膜6と上下電極との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体膜6の結晶性を改善することができる。ポストアニールは、例えば、RTA等により、酸素雰囲気中にて行うことができる。
以上の工程によって、本実施形態に係る圧電素子100を製造することができる。
2.3. 本実施形態に係る圧電素子100では、圧電体膜6は、第1の実施形態に係る圧電材料によって構成されている。この圧電材料は、上述したように、鉛フリーでありながら、良好な圧電特性を有することができる。従って、本実施形態によれば、環境に優しく、圧電特性に優れた圧電素子100を提供することができる。
2.4. 次に、実験例について説明する。
以下の方法によって、本実施形態に係る圧電素子100のサンプルを得た。
まず、(110)配向のシリコン基板(基体2)上に、SiO膜を500nm、ZrO膜を500nmの膜厚で積層して弾性膜3を得た。SiO膜は熱酸化によって形成し、ZrO膜はスパッタ法によって形成した。次に、スパッタ法によって、ZrO膜上に、下部電極4として、Pt膜を200nm、LaNiO膜を100nmの膜厚で順に積層した。Pt膜およびLaNiO膜のスパッタリングの電力は、200Wとした。得られたLaNiO膜の配向は、擬立方晶で(100)に配向していることが確認された。
次に、LaNiO膜上に、第1の実施形態に係る圧電材料によって構成される圧電体膜6を形成した。圧電体膜6は以下のようにして得た。
まず、下記式(a)で表される原料を含む前駆体溶液を以下のようにして調製した。
(Ba1/2Bi1.1×1/3)((Mg1/3Nb2/3)0.8Ti0.2)O ・・・(a)
まず、圧電材料の構成金属を含む有機金属化合物(バリウムエトキシド、ビスマスイソプロポキシド、酢酸マグネシウム、ニオブエトキシド、チタンイソプロポキシド)の試薬をそれぞれ用意した。次に、上記式(a)で表される原料の組成に対応したモル比となるようにこれらを混合するとともに、これらをブチルセロソルブに溶解(分散)させた。さらに、この溶液の安定化剤としてジエタノールアミンを添加した。このようにして前駆体溶液を調整した。
次に、この前駆体溶液をスピンコート法によって下部電極4上に塗布した(前駆体溶液塗布工程)。次に、溶媒の沸点(ブチルセロソルブの場合、170℃程度)より約10℃高い温度で熱処理(乾燥)して溶媒を除去しゲル化させた(乾燥熱処理工程)。次に、さらに400℃程度に加熱することで膜中に残存している溶媒以外の有機成分を分解/除去し(脱脂熱処理工程)、膜厚100nmのアモルファス膜を形成した。以上の工程を5回繰り返して行った。次に、RTAにより酸素雰囲気中にて、600℃で1分間加熱し、結晶化を行うことで、膜厚500nmの圧電体膜6を形成した。圧電体膜6は、下記式(b)で表される圧電材料からなることが確認された。
(Ba1/2Bi1/31/6)((Mg1/3Nb2/3)0.8Ti0.2)O ・・・(b)
上記式(b)で表される圧電材料の組成の同定には、X線散乱、ラマン散乱、およびXPS測定を用いた。
また、得られた圧電体膜6の結晶構造は、ロンボヘドラル構造またはモノクリニック構造であることが確認された。圧電体膜6は、擬立方晶で(100)または(110)に配向していることが確認された。圧電体膜6の結晶構造および配向の同定には、X線散乱およびラマン散乱を用いた。
次に、スパッタ法によって、圧電体膜6上に、上部電極7として、膜厚200nmのPt膜を形成した。
以上のようにして圧電素子100のサンプルを得た。このサンプルの圧電体膜6に対して、上下電極から100kV/cmの電界を印加したときの圧電材料の格子のひずみ量は、0.07%であり、良好な圧電特性が確認された。なお、格子のひずみ量は、電界X線によるθ−2θ測定から求めた。
また、圧電素子100が良好な圧電特性を示すためには、AサイトにおけるBiの比率(上述した一般式(1)におけるb)の上限値は、1/3であった。この場合において、圧電材料の電荷中性を考えると、Aサイトの欠陥Zの比率(上述した一般式(1)におけるc)の上限値は、1/6である。
3. 第3の実施形態
3.1. 次に、第3の実施形態に係る圧電素子200について説明する。図2は、本発明に係る圧電材料からなる圧電体膜6を含む圧電素子200の一例を模式的に示す断面図である。なお、第2の実施形態に係る圧電素子100と同一の部材については、同一の符合を付し、その詳細な説明を省略する。
圧電素子200は、上記圧電材料からなる圧電体膜6と、圧電体膜6上に形成された第1導電層(以下「第1電極」ともいう)40と、圧電体膜6上に形成された第2導電層(以下「第2電極」ともいう)70と、を含む。圧電素子200は、基体2と、基体2上に形成されたバッファ層30と、を含むことができる。圧電体膜6は、このバッファ層30上に形成されることができる。なお、圧電素子200は、基体2およびバッファ層30のうちの少なくとも一方を有しないこともできる。
バッファ層30は、圧電体膜6の結晶配向性を制御する機能を有することができる。なお、基体2にこの機能がある場合には、バッファ層30を設けないこともできる。バッファ層30は、圧電材料からなる圧電体膜6と同様に、擬立方晶で(100)または(110)に配向していることが望ましい。バッファ層30がこのように配向していることで、バッファ層30の上に形成される圧電体膜6は、バッファ層30の配向を引き継ぎ易くなる。バッファ層30としては、例えばペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuO等)などを用いることができる。
第1電極40および第2電極70は、圧電体膜6に電圧を印加するための電極である。第1電極40および第2電極70としては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrOx)、ペロブスカイト型構造の導電性酸化物(例えばLaNiO、SrRuO等)などの単層、あるいは、これらの積層体を用いることができ、特に限定されない。上部電極7の膜厚は、例えば100nm〜200nmである。
3.2. 次に、本実施形態に係る圧電素子200の製造方法について図2を参照しながら説明する。
(A)まず、基体2上にバッファ層30を形成する。バッファ層30は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。
(B)次に、バッファ層30上に圧電体膜6を形成する。本工程は、上述した第2の実施形態に係る圧電素子の一製造工程と同様であるので、詳細な説明を省略する。
(C)次に、圧電体膜6上に、第1電極40および第2電極70を形成する。第1電極40および第2電極70は、例えば、スパッタ法、スピンコート法、CVD法、レーザアブレーション法などにより形成されることができる。第1電極40および第2電極70は、公知の方法によりパターニングされることができる。
(D)次に、必要に応じて、ポストアニールを行うことができる。本工程は、上述した第2の実施形態に係る圧電素子の一製造工程と同様であるので、詳細な説明を省略する。
以上の工程によって、本実施形態に係る圧電素子200を製造することができる。
3.3. 本実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、環境に優しく、圧電特性に優れた圧電素子200を提供することができる。
4. 第4の実施形態
4.1. 次に、本発明に係る圧電素子を圧電アクチュエータとしてインクジェット式記録ヘッドに適用した例について説明する。インクジェット式記録ヘッドは、例えばインクジェットプリンタなどに適用可能である。図3は、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド50の概略構成を示す側断面図であり、図4は、インクジェット式記録ヘッド50の分解斜視図であり、通常使用される状態とは上下逆に示したものである。
図3および図4に示すように、インクジェット式記録ヘッド50は、ヘッド本体57と、ヘッド本体57上に形成される圧電部54と、を含む。圧電部54は、図1に示す圧電素子100のうち、下部電極4、圧電体膜6、上部電極7が順に積層されて構成されている。なお、図3および図4において、圧電部54の各層の図示は省略されている。インクジェット式記録ヘッド50において、圧電部54は、圧電アクチュエータとして機能する。
ヘッド本体57は、ノズル板51と、インク室基体52と、弾性膜55と、を含む。インク室基体52および弾性膜55は、図1に示す圧電素子100のうち、基体2および弾性膜3から構成されている。これらが筐体56に収納されて、インクジェット式記録ヘッド50が構成されている。
各圧電部54は、圧電素子駆動回路(図示せず)に電気的に接続され、圧電素子駆動回路の信号に基づいて作動(振動、変形)するよう構成されている。即ち、各圧電部54はそれぞれ振動源(ヘッドアクチュエータ)として機能する。弾性膜55は、圧電部54の振動(たわみ)によって振動し、キャビティ521の内部圧力を瞬間的に高めるよう機能する。
4.2. 本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッド50は、環境に優しく、圧電特性に優れた圧電素子100を有する。従って、本実施形態によれば、環境に優しく、インク吐出能力が高く、ノズルが高密度なインクジェット式記録ヘッド50を提供することができる。
4.3. なお、上述では、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本実施形態は、圧電素子を用いた液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
5. 上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、本発明に係る圧電素子は、前述したデバイスに適用されるだけでなく、種々のデバイス(例えば、FBAR(film bulk acoustic resonator)型やSMR(solid mounted resonator)型等のBAW(bulk acoustic wave)フィルタ、SAW(surface acoustic wave)フィルタ、ジャイロセンサ、超音波モータなど)に適用可能である。本発明に係る圧電素子は、圧電特性に優れており、各種の用途に好適に適用できる。
第2の実施形態に係る圧電素子を示す断面図。 第3の実施形態に係る圧電素子を示す断面図。 インクジェット式記録ヘッドの概略構成図。 インクジェット式記録ヘッドの分解斜視図。
符号の説明
2 基体、3 弾性膜、4 下部電極、6 圧電体膜、7 上部電極、30 バッファ層、40 第1電極、50 インクジェット式記録ヘッド、51 ノズル板、52 インク室基体、54 圧電部、55 弾性膜、56 筐体、57 ヘッド本体、70 第2電極、100 圧電素子、200 圧電素子,521 キャビティ

Claims (7)

  1. 下記一般式で表される、圧電材料。
    (Ba1/2Bi1/31/6(Mg1/3Nb2/3 0.8Ti0.2)O
    但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示す。
  2. 請求項1において、
    ロンボヘドラル構造を有する、圧電材料。
  3. 請求項1において、
    モノクリニック構造を有する、圧電材料。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    擬立方晶で(100)に配向している、圧電材料。
  5. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    擬立方晶で(110)に配向している、圧電材料。
  6. 基体の上方に、下記一般式(a)で表される原料を含む前駆体溶液を塗布する工程と、
    前記前駆体溶液に対して熱処理を行い、下記一般式(b)で表される圧電材料を形成する工程と、を含む、圧電材料の製造方法。
    (Ba1/2Bi1.1×1/3(Mg1/3Nb2/3 0.8Ti0.2)O ・・・(a)
    (Ba1/2Bi1/31/6(Mg1/3Nb2/3 0.8Ti0.2)O ・・・(b)
    但し、Zは、ペロブスカイト型構造におけるAサイトの欠陥を示す。
  7. 請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電材料、または請求項6に記載の圧電材料の製造方法によって製造された圧電材料を含む、液体噴射ヘッド。
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