以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。
図1は光ピックアップ装置1の概略構成を示す断面図である。
図1に示す通り、光ピックアップ装置1は光源としての3種類の半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3を有している。半導体レーザ発振器LD1は、BD(又はAOD)10用として波長350〜450nm中の特定波長(例えば405nm,407nm)の光束を出射するようになっている。半導体レーザ発振器LD2は、DVD20用として波長620〜680nm中の特定波長の光束を出射するようになっている。半導体レーザLD3は、CD30用として750〜810nm中の特定波長の光束を出射するようになっている。
半導体レーザ発振器LD1から出射される光(青色光)の光軸方向には、図1中下方から上方に向けてシェイバSH1、スプリッタBS1、コリメータCL、スプリッタBS4,BS5、対物レンズ15が順に並んで配されており、対物レンズ15と対向する位置に光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30が配されるようになっている。スプリッタBS1の図1中右方にはシリンドリカルレンズL11、凹レンズL12及び光検出器PD1が順に並んで配されている。
半導体レーザ発振器LD2から出射される光(赤色光)の光軸方向には、図1中左方から右方に向けてスプリッタBS2,BS4が順に並んで配されている。スプリッタBS2の図1中下方にはシリンドリカルレンズL21、凹レンズL22及び光検出器PD2が順に並んで配されている。
半導体レーザ発振器LD3から出射される光の光軸方向には、図1中右方から左方に向けてスプリッタBS3,BS5が順に並んで配されている。スプリッタBS3の図1中下方にはシリンドリカルレンズL31、凹レンズL32及び光検出器PD3が順に並んで配されている。
本発明に係る対物レンズ15は、光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30に対向配置されるものであり、各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から出射された光をBD10、DVD20又はCD30に集光する機能を有している。対物レンズ15には2次元アクチュエータ2が配されており、当該2次元アクチュエータ2の作動により、対物レンズ15は図1中上下方向に移動自在とされている。
光ピックアップ装置1における動作・作用を簡単に説明すると、BD10への情報の記録時やBD10中の情報の再生時には、始めに半導体レーザ発振器LD1が光を出射する。その光は、図1中実線で示す光線L1となって、シェイバSH1を透過して整形され、スプリッタBS1を透過してコリメータCLで平行光にされ、各スプリッタBS4,BS5及び対物レンズ15を透過してBD10の記録面10a上に集光スポットを形成する。
集光スポットを形成した光は、BD10の記録面10aで情報ピットにより変調されて当該記録面10aで反射し、その反射光は、対物レンズ15、スプリッタBS5及びコリメータCLを透過してスプリッタBS1で反射し、シリンドリカルレンズL11を透過して非点収差が与えられ、凹レンズL12を透過して光検出器PD1で受光される。これにより、BD10への情報の記録やBD10中の情報の再生がおこなわれる。
DVD20への情報の記録時やDVD20中の情報の再生時には、半導体レーザ発振器LD2が光を出射する。その光は図1中1点鎖線で示す光線L2となって、スプリッタBS2を透過してスプリッタBS4で反射し、スプリッタBS5及び対物レンズ15を透過してDVD20の記録面20a上に集光スポットを形成する。
集光スポットを形成した光は、DVD20の記録面20aで情報ピットにより変調されて当該記録面20aで反射し、その反射光は、対物レンズ15及びスプリッタBS5を透過して各スプリッタBS4,BS2で反射し、シリンドリカルレンズL21を透過して非点収差が与えられ、凹レンズL22を透過して光検出器PD2で受光される。これにより、DVD20への情報の記録やDVD20中の情報の再生がおこなわれる。
CD30への情報の記録時やCD30中の情報の再生時には、半導体レーザ発振器LD3が光を出射する。その光は図1中点線で示す光線L3となって、スプリッタBS3を通過してスプリッタBS5で反射し、対物レンズ15を透過してCD30の記録面30a上に集光スポットを形成する。
集光スポットを形成した光は、CD30の記録面30aで情報ピットにより変調されて当該記録面30aで反射し、その反射光は、対物レンズ15を透過して各スプリッタBS5,BS3で反射し、シリンドリカルレンズL31を透過して非点収差が与えられ、凹レンズL32を透過して光検出器PD3で受光される。これにより、CD30への情報の記録やCD30中の情報の再生がおこなわれる。
なお、光ピックアップ装置1は、BD10、DVD20又はCD30への情報の記録時やBD10、DVD20又はCD30中の情報の再生時には、各光検出器PD1,PD2,PD3上でのスポットの形状変化、位置変化による光量変化を検出して合焦検出やトラック検出をおこなうようになっている。そして当該光ピックアップ装置1は、各光検出器PD1,PD2,PD3の検出結果に基づいて、2次元アクチュエータ2が半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3からの光をBD10、DVD20又はCD30の記録面10a,20a,30a上に結像するように対物レンズ15を移動させるとともに、半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3からの光を各記録面10a,20a,30aの所定のトラックに結像させるように対物レンズ15を移動させるようになっている。
図2は対物レンズ15の概略構成を示す断面図である。
図2に示す通り、対物レンズ15は、各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から出射された光を透過光の対象とする光学素子であって、樹脂製の基材40を有している。基材40は、脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂を所定形状に成形した2つの成形品41,42から構成されている。基材40は、各成形品41,42が端部同士で互いに接着されたものであり、各成形品41,42の間に中空部49が形成されている。
第1の成形品としての成形品41は各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3側に配置されており、第2の成形品としての成形品42はBD10、DVD20又はCD30側に配置されている。詳しくは、成形品41の表面41aが半導体レーザLD1に対向し、成形品42の表面42aがBD10、DVD20又はCD30に対向し、成形品41の裏面41bと成形品42の42bとが互いに対向している。
成形品41の表面41a及び裏面41bはともに非球面とされており、図2中拡大図に示す通り、輪帯状の回折構造を有している。ただし、図2中拡大図では、成形品41の表面41aだけを図示している。成形品42の表面42a及び裏面42bもともに非球面とされている。
基材40において、成形品41の表面41aは、各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から出射された光の光路上で各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から最も近い面となっており、成形品42の表面42aは各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から出射された光の光路上で各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から最も遠い面となっている。そのため、各半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3から出射された光は、基材40を透過する際に、第1の面としての表面41aから入射して成形品41中を透過して裏面41bから出射し、さらに中空部49を介し、裏面42bから入射して成形品42中を透過して第2の面としての表面42aから出射し、BD10、DVD20又はCD30の各記録面10a,20a,30aに入射するようになっている。
一方、BD10、DVD20又はCD30の各記録面10a,20a,30aで反射した光は、成形品42の表面42aに入射して当該成形品42中を透過して裏面42bから出射し、さらに中空部49を介し、成形品41の裏面41bに入射して当該成形品41中を透過して表面41aから出射するようになっている。
なお、成形品42は正の近軸パワーを有しており、各成形品41,42は下記式(41),(42)の両条件を満たすように成形されている。
|P1/P2|≦0.2 … (41)
0.8≦d2/f2≦1.8 … (42)
上記式(41)中、P1:成形品41の近軸パワー、P2:成形品42の近軸パワーである。上記式(42)中、d2:成形品42の光軸上の厚さ、f2:波長405nmの光に対する成形品42の焦点距離である。
上記式(41)、(42)の両条件を満たす場合には,BD10、DVD20又はCD30を含む少なくとも3種類の光情報記録媒体に対し情報の記録及び/又は再生を行う際に共用して用いられる対物レンズとして、像高特性が劣化せず、諸収差も良好に補正することが容易にでき、高性能で光利用効率が高い光ピックアップ装置用の対物レンズ15とすることができる。
特に、上記式(41)の条件に関し、この条件を満たすことにより、成形品41の近軸パワーP1が小さくなり、光学面の曲率を小さくできるので、色収差や光情報記録媒体の透明基板厚の差に起因する球面収差などの諸収差を良好に補正するために、光路差や回折光を生じさせる段差を持たせた輪帯構造をその片面又は両面に設けることが容易にできるうえ、その輪帯状の回折構造のピッチを大きくすることできる。そのため、高精度な輪帯状の回折構造を形成することが容易にでき、また、各成形品41,42の製造誤差に起因する光利用効率の低下や輪帯状の回折構造の段差部分による影の影響を小さくできて、光利用効率が高い対物レンズ15とすることができる。また、成形品41の近軸パワーP1が小さくなり、光学面の曲率を小さくできることにより、対物レンズ15と光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30との距離(作動距離WD)を大きく確保することができる。
また、上記式(42)の条件に関し、d2/f2が0.8以上であれば、成形品42の中心厚(軸上厚)が小さくなり過ぎず、像高特性が劣化せず、光学面のシフト感度が大きくならない。他方、d2/f2が1.8以下であれば、成形品42の中心厚が大きくなり過ぎず、像高特性が劣化せず、偏心感度が良好になり、球面収差やコマ収差も良好に補正することができる。尚、この効果は、上記式(41)の条件との関係より、成形品41及び成形品42から構成された対物レンズ15全体として、同様の効果を奏するものである。
ここで、基材40を構成する成形品42の表面42a上には、光の反射を防止する反射防止膜46が成膜されている。その膜の構成を図2の拡大図に示す。
図2の拡大図に示す通り、反射防止膜46は、第1,第2,第3の膜43,44,45の3層の膜から構成されている。第1の膜43は成形品42の表面42a上に直に成膜されており、第2の膜44は第1の膜43上に直に成膜されており、第3の膜45は第2の膜44上に直に成膜されている。
第1の膜43は、波長405nmの光に対する屈折率が1.7未満の低屈折率材料又は中屈折率材料から構成された膜である。本明細書でいう「低屈折率材料」とは、波長405nmの光に対する屈折率が1.55以下の材料であって、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化イットリウムのいずれかの単体又はこれら化合物の2種以上の混合物である。本明細書でいう「中屈折率材料」とは、波長405nmの光に対する屈折率が1.7未満で1.55を上回る材料であって、フッ化鉛、フッ化セリウム、フッ化ネオジウム、フッ化ランタン、酸化アルミニウムのいずれかの単体又はこれら化合物の2種以上の混合物である。
第1の膜43は、低屈折率材料のみから構成された単層で構成されてもよいし、中屈折率材料からのみ構成された単層で構成されてもよいし、低屈折材料と中屈折材料とを混合した単層で構成されてもよいし、これら各単層を任意に積層した2以上の層で構成されてもよい。
第2の膜44は、波長405nmの光に対する屈折率が1.7以上の高屈折率材料から構成された膜である。本明細書でいう「高屈折率材料」とは、波長405nmの光に対する屈折率が1.7以上の材料であって、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、ランタンアルミネート、チタン酸ランタン、チタン酸プラセオジウム、酸化タンタル、酸化チタンのいずれかの単体又はこれら化合物の2種以上の混合物である。
第3の膜45は、波長405nmの光に対する屈折率が1.55以下の低屈折率材料又は低/中屈折率材料から構成された膜である。本明細書でいう「低/中屈折率材料」とは、波長405nmの光に対する屈折率が1.55以下の材料であって、酸化シリコンと酸化アルミニウムとの混合物である。すなわち、第3の膜45は、波長405nmの光に対する屈折率が1.55以下の低屈折率材料又は低/中屈折率材料で構成されたものであるから、具体的には、波長405nmの光に対する屈折率が1.55以下で、かつ、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化イットリウムのいずれかの単体若しくはこれら化合物の2種以上の混合物又は酸化シリコンと酸化アルミニウムとの混合物から構成された膜である。
なお、反射防止膜46は、第1の膜43からのみ構成されてもよく、必ずしも第2,第3の膜44,45を具備しなくてもよい。この場合、第1の膜43からのみ構成された反射防止膜46は膜厚d(nm)が下記式(31)の条件を満たすようになっている。ただし、下記式(31)中、mは0〜6の正の整数である。
d=74×(2m+1)±20 … (31)
また、本実施形態では、反射防止膜46として第1,第2,第3の膜43,44,45の3層の膜を成膜した3層構造の例を示したが、第3の膜45上に第2の膜44と同様の膜を成膜して4層構造としてもよいし、第3の膜45上に第2の膜44と同様の膜と第3の膜45と同様の膜とを交互に成膜して5層以上の層構造としてもよく、これら層構造を含めた成形品42の表面42a上の反射防止膜46の膜構成は、成形品41の表面41aにも適用されており、その他に、成形品41の裏面41bに適用されてもよいし、成形品42の裏面42bに適用されてもよい。
成形品42の表面42a上に成膜された反射防止膜46上には撥水膜47が成膜されている。撥水膜47はフッ素又はシリコンを含有する材料から構成されており、撥水性を具備している。撥水膜47は、具体的には、フッ素系有機化合物やシリコン系有機化合物から構成されるのがよく、その膜厚は通常7nm以下とするのがよい。撥水膜47をフッ素系有機化合物で構成する場合には、例えば、蒸着材料をWR1(メルク(株)製商品名)としたパーフルオロアルキルシランの薄膜を真空蒸着で形成したり、フッ素系塗布液L−182560(住友スリーエム(株)製商品名)の塗布処理で形成したりするのがよい。他方、撥水膜47をシリコン系有機化合物で構成する場合には、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)の薄膜を大気圧プラズマ法で形成するのがよい(特開平2003−161817号公報参照)。
上記構成を具備する対物レンズ15においては、成形品42の表面42aが成形品41の表面41aより耐磨耗性に優れている。
ここでいう「耐磨耗性」とは、MIL規格の「MIL-C-675C」のトピック中、「4.5.1 Cleaning.」にしたがう処理をおこない、その後「4.5.3.1 Physical.」にしたがう試験をおこなった結果導き出される性質のことであり、「成形品42の表面42aが成形品41の表面41aより耐磨耗性に優れている」とは、表面42a及び表面41aの両面に対し同じ条件で「4.5.1 Cleaning.」にしたがう処理をおこない、その後当該両面に対し同じ条件で「4.5.3.1 Physical.」にしたがう試験をおこない、それら表面42aと表面41aとの各試験結果を比較した場合に、表面42aの試験結果が表面41aの試験結果より優れているという意味である。
また対物レンズ15においては、波長350〜450nm中の光に対する成形品42の表面42aの最小反射率が、同光(波長350〜450nm中の光)に対する成形品41の表面41aの最小反射率以上となっており、対物レンズ15における光の透過率が向上している。
次に、基材40(成形品41,42)を構成する「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」について詳細に説明する。
「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000である重合体全繰り返し単位中に、下記式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記式(2)及び/又は下記式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90重量%以上になるように含有し、さらに繰り返し単位(b)の含有量が1重量%以上10重量%未満であり、繰り返し単位(a)の連鎖が下記関係式(Z)を満たす脂環式炭化水素系共重合体を含有することが好ましい。
A≦0.3×B … (Z)
関係式(Z)中、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位の連鎖の重量平均分子量)であり、B=(脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数)である。
式(1)、式(2)及び式(3)中のR1〜R13は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等を表す。その中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基の場合が、耐熱性、低吸水性に優れるので好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができる。極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基;炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
式(1)中のXは脂環式炭化水素基を表し、それを構成する炭素数は、通常4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで複屈折を低減することができる。また脂環式構造は単環構造に限らず、例えばノルボルナン環やジシクロヘキサン環などの多環構造のものでもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性が向上する。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子又は炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、式(3)中の「………」は、主鎖中の炭素−炭素飽和、又は炭素−炭素不飽和結合を示すが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
式(1)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(4)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
式(2)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(5)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
式(3)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(6)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
式(4)、式(5)及び式(6)中の、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rl、Rm、Rnはそれぞれ独立に水素原子または低級鎖状炭化水素基を示し、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
式(2)及び式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の中では、式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の方が、得られる炭化水素系重合体の強度特性に優れている。
本発明においては、炭化水素共重合体中の、式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、式(2)及び/又は式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、重量基準で、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲にすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされる。
脂環式炭化水素系共重合体における鎖状構造の繰り返し単位(b)の含有量は使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、重量基準で1%以上10%未満、好ましくは1%以上8%以下、より好ましくは2%以上6%以下の範囲である。繰り返し単位(b)の含有量が上記範囲にあると、低複屈折性、耐熱性、低吸水性が高度にバランスされる。
また、繰り返し単位(a)の連鎖長は、脂環式炭化水素系共重合体の分子鎖長に対して十分に短く、具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、B=(脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))とした時、AがBの30%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下の範囲である。Aがこの範囲外では、低複屈折性に劣る。
さらに、繰り返し単位(a)の連鎖長が特定の分布を有しているもの好ましい。具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、C=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の数平均分子量)としたとき、A/Cが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3〜8、最も好ましくは1.7〜6の範囲である。A/Cが過度に小さいとブロック程度が増加し、過度に大きいとランダムの程度が増加して、いずれの場合にも低複屈折性に劣る。
本発明の脂環式炭化水素系共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPC)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは50,000〜250,000の範囲である。脂環式炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと成形物の複屈折が大きくなる。
かかる共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜250℃、好ましくは70〜200℃、より好ましくは90〜180℃である。
次に、上記「脂環式構造を有する重合体」の製造方法について説明する。
脂環式炭化水素系共重合体の製造方法は、(1)芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法、(2)脂環式ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、必要に応じて水素化する方法等が挙げられる。
上記の方法で本発明の脂環式炭化水素系共重合体を製造する場合には、芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物(a’)と共重合可能なその他のモノマー(b’)との共重合体で、共重合体中の化合物(a’)由来の繰り返し単位が、D=(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位連鎖の重量平均分子量)、E=(炭化水素系共重合体の重量平均分子量(Mw)×(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位数/炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))、とした時、DがEの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である連鎖構造を有する共重合体の、主鎖、及び芳香環やシクロアルケン環等の不飽和環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法により効率的に得ることができる。 Dが上記範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
本発明では(1)の方法がより効率的に脂環式炭化水素系共重合体を得ることができるので好ましい。
上記水素化前の共重合体は、さらに、F=(芳香族ビニル系化合物及び/又は脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位の連鎖の数平均分子量)、としたときの、D/Fが一定の範囲であるのが好ましい。具体的には、D/Fが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3以上、8以下、最も好ましくは1.7以上、6以下の範囲である。D/Fがこの範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
上記化合物(a’)由来の繰り返し単位の連鎖の重量平均分子量および数平均分子量は、例えば、文献Macromorecules 1983, 16,1925−1928記載の、芳香族ビニル系共重合体の主鎖中不飽和二重結合をオゾン付加した後還元分解し、取り出した芳香族ビニル連鎖の分子量を測定する方法等により確認できる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が過度に小さいと、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に劣り、逆に過度に大きいと水素化反応性に劣る。
上記(1)の方法において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(2)の方法において使用する脂環式ビニル系化合物の具体例としては、例えば、シクロブチルエチレン、シクロペンチルエチレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘプチルエチレン、シクロオクチルエチレン、ノルボルニルエチレン、ジシクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレン、α−t−ブチルシクロヘキシルエチレン、シクロペンテニルエチレン、シクロヘキセニルエチレン、シクロヘプテニルエチレン、シクロオクテニルエチレン、シクロデケニルエチレン、ノルボルネニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレンが好ましい。
これらの芳香族ビニル系化合物及び脂環式ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの鎖状ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物(a’)を重合する方法は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー逐次添加法(モノマー全使用量の内の一部を用いて重合を開始した後、残りのモノマーを逐次添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー逐次添加法を用いると、好ましい連鎖構造を有する炭化水素系共重合体が得られる。水素化前の共重合体は、前述のDの値がより小さい程、及び/又は、D/Fが大きな値を示す程、よりランダムな連鎖構造を有する。共重合体がどの程度のランダム性を有しているかは、芳香族ビニル系化合物の重合速度と共重合可能なその他のモノマーの重合速度との速度比で決まり、この速度比が小さい程、よりランダムな連鎖構造を有していることになる。
前記モノマー逐次添加法によれば、均一に混合された混合モノマーが重合系内に逐次的に添加されるため、バッチ法とは異なり、ポリマーの重合による成長過程においてモノマーの重合選択性をより下げることができるので、得られる共重合体がよりランダムな連鎖構造になる。また、重合系内での重合反応熱の蓄積が小さくてすむので重合温度を低く安定に保つことがでる。
モノマー逐次添加法の場合、まずモノマーの全使用量のうち、通常0.01重量%〜60重量%、好ましくは0.02重量%〜20重量%、より好ましくは0.05重量%〜10重量%のモノマーを初期モノマーとして予め重合反応器内に存在させた状態で開始剤を添加して重合を開始する。初期モノマー量をこのような範囲にすると、重合開始後の初期反応において発生する反応熱除去を容易にすることができ、得られる共重合体をよりランダムな連鎖構造にすることができる。
上記初期モノマーの重合転化率を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上になるまで反応を継続すると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。その後、前記モノマーの残部を継続的に添加するが、添加の速度は重合系内のモノマーの消費速度を考慮して決定される。
通常は、初期モノマーの重合添加率が90%に達するまでの所要時間をT、初期モノマーの全使用モノマーに対する比率(%)をIとしたとき、関係式[(100−I)×T/I]で与えられる時間の0.5〜3倍、好ましくは0.8〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍となる範囲内で残部モノマーの添加が終了するように決定される。具体的には通常0.1〜30時間、好ましくは0.5時間〜5時間、より好ましくは1時間〜3時間の範囲となるように、初期モノマー量と残りモノマーの添加速度を決定する。また、モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率を上記の範囲とすると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
ラジカル重合の場合は、開始剤の存在下、通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いることができるが、特に樹脂中への不純物等の混入等を防止する必要のある場合は、塊状重合、懸濁重合が望ましい。ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノペンタン酸、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムに代表される水溶性触媒やレドックス開始剤などが使用可能である。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えばn−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100重量部に対して200〜10,000重量部となるような割合で用いられる。
上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
重合反応においては、また、重合促進剤や、ランダマイザー(或る1成分の連鎖が長くなるのを防止する機能を有する添加剤)などを使用できる。アニオン重合の場合には、例えばルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用できる。
上記のラジカル重合やアニオン重合により得られた重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法で回収できる。また、重合時に、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素添加工程に使用することができる。
(不飽和結合の水素化方法)
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、且つ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、通常0.01〜80重量%、好ましくは0.05〜60重量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン)錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体に対して、重量基準にて、通常、0.01〜100部、好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜30部である。
水素化反応は、通常10〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合のいずれも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
なお、上記「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」には酸化防止剤が含有されてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、低吸水性を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による成形物の着色や強度低下を防止できる。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル 3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、脂環式炭化水素系共重合体100重量部に対して通常0.001〜5重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
また、上記「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」には、前記脂環式炭化水素系共重合体と、(1)軟質重合体、(2)アルコール性化合物、(3)有機または無機フィラーからなる群から選ばれる少なくとも1種類の配合剤が含有されてもよい。これらの配合剤を配合することにより、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
これらの中でも、(1)軟質重合体、及び(2)アルコール性化合物が、高温高湿度環境下における白濁防止効果、得られる樹脂組成物の透明性に優れる。
(1)軟質重合体本発明に用いる軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であればよい。
これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;
ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、などのケイ素含有軟質重合体; ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体; ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体; ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、などのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
(2)アルコール性化合物また、アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合又はエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。
2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α、β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、 p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、 p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。
(3)有機または無機フィラー有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン; ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β−不飽和酸から誘導された重合体; ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体; ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体; ポリフェニレンオキシド、 ポリカーボネート、 ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体; ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物 などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。
無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物; 二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
上記(1)〜(3)の化合物の配合量は脂環式炭化水素系共重合体と配合される化合物の組み合わせによって決まるが、一般に、配合量が多すぎれば、組成物のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、光学材料として使用するのに不適である。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成形物の白濁を生じる場合がある。配合量としては、脂環式炭化水素系共重合体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.02〜5重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部の割合で配合する。配合量が少なすぎる場合には高温高湿度環境下における白濁防止効果が得られず、配合量が多すぎる場合は成形品の耐熱性、透明性が低下する。
なお、上記「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」には、必要に応じて、その他の配合剤として、紫外線吸収剤、耐光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などを配合することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して用いることができ、その配合量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどが耐熱性、低揮発性などの観点から好ましい。
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下「HALS」と記す。)の中でも、THFを溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1000〜10000であるものが好ましく、2000〜5000であるものがより好ましく、2800〜3800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
このようなHALSの具体例としては、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−〔4,6−ビス− {ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALSなどが挙げられる。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
本発明に係るブロック共重合体に対する上記紫外線吸収剤およびHALSの配合量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.02〜15重量部、特に好ましくは0.05〜10重量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
また、上記「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」の組成物は、上記各成分を適宜混合することにより得ることができる。混合方法としては、炭化水素系重合体に各成分が十分に分散される方法であれば特に限定されなず、例えばミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法などが挙げられる。二軸混練機を用いる場合、混錬後に通常は溶融状態で棒状に押し出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化した成形材料として用いられることが多い。
更に詳しくは「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」は、下記式(11)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する重合体ブロック〔A〕と、下記式(11)で表される繰り返し単位〔1〕並びに下記式(12)で表される繰り返し単位〔2〕又は/及び下記式(13)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する重合体ブロック〔B〕とを有し、前記重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率a(モル%)と、前記重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率b(モル%)との関係がa>bであるブロック重合体を含有することが好ましい。
式(11)中、R1は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であり、R2−R12はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基又はハロゲン基である。
式(12)中、R13は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。
式(13)中、R14及びR15はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基である。
上記式(11)で表される繰り返し単位〔1〕の好ましい構造は、R1が水素またはメチル基で、R2−R12がすべて水素のものである。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。重合体ブロック〔A〕における、前記繰り返し単位〔1〕以外の残部は、鎖状共役ジエンや鎖状ビニル化合物由来の繰り返し単位を水素化したものである。
重合体ブロック〔B〕は、前記繰り返し単位〔1〕ならびに下記式(12)で表される繰り返し単位〔2〕または/および下記式(13)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する。重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量は、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%である。繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔2〕のモル分率をm2(モル%)および、繰り返し単位〔3〕のモル分率をm3(モル%)としたときに、2×m2+m3が、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5〜60モル%、最も好ましくは10〜50モル%である。
上記式(12)で表される繰り返し単位〔2〕の好ましい構造は、R13が水素またはメチル基のものである。
上記式(13)で表される繰り返し単位〔3〕の好ましい構造は、R14が水素で、R15がメチル基またはエチル基のものである。
重合体ブロック〔B〕中の、前記繰り返し単位〔2〕または繰り返し単位〔3〕の含有量が少なすぎると、機械的強度が低下する。したがって、繰り返し単位〔2〕および繰り返し単位〔3〕の含有量が上記範囲にあると、透明性および機械的強度に優れる。重合体ブロック〔B〕は、さらに、下記式(X)で表される繰り返し単位〔X〕を含有していてもよい。繰り返し単位〔X〕の含有量は、本発明のブロック共重合体の特性を損なわない範囲の量であり、好ましくはブロック共重合体全体に対し、30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
式(X)中、R25は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R26はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、もしくはハロゲン基を表し、R27は水素原子を表す。または、R26とR27とは相互に結合して、酸無水物基、もしくはイミド基を形成してもよい。
また、本発明に用いるブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をa、重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をbとした場合に、a>bの関係がある。これにより、透明性、および機械的強度に優れる。
さらに、本発明に用いるブロック共重合体は、ブロック〔A〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma、ブロック〔B〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmbとした場合に、その比(ma:mb)が、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma:mb)が上記範囲にある場合に、機械的強度および耐熱性に優れる。
本発明に用いるブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下「GPC」と記す。)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算重量平均分子量(以下「Mw」と記す。)で、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは15,000〜250,000、特に好ましくは20,000〜200,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが上記範囲にあると、機械的強度、耐熱性、成形性のバランスに優れる。
ブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwと数平均分子量(以下「Mn」と記す。)との比(Mw/Mn)で、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械的強度や耐熱性に優れる。
ブロック共重合体のガラス転移温度(以下「Tg」と記す。)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、示差走査型熱量計(以下「DSC」と記す。)による、高温側の測定値で、好ましくは70〜200℃、より好ましくは80〜180℃、特に好ましくは90〜160℃である。
本発明に用いる上記ブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有し、(〔A〕−〔B〕)型のジブロック共重合体であっても、(〔A〕−〔B〕−〔A〕)型や(〔B〕−〔A〕−〔B〕)型のトリブロック共重合体であっても、重合体ブロック〔A〕と重合体ブロック〔B〕とが、交互に合計4個以上つながったブロック共重合体であってもよい。また、これらのブロックがラジアル型に結合したブロック共重合体であってもよい。
本発明に用いるブロック共重合体は、以下の方法により得ることができる。その方法としては、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く。)を含有するモノマー混合物を重合して、芳香族ビニル化合物または/および脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る。そして該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する方法や、飽和脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、および、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く。)を含有するモノマー混合物を重合して、脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、および、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る方法などが挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としてより好ましいものは、例えば、以下の方法により得ることができる。
(1)第一の方法としては、まず、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a’〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A’〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く。)を2モル%以上含有し、且つ、芳香族ビニル化合物または/および環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a’〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b’〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/および前記脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B’〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有するブロック共重合体を得た後、該ブロック共重合体の芳香環または/および脂肪族環を水素化する。
(2)第二の方法としては、まず、飽和脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、且つ、飽和脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A〕および重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体を得る。
上記方法の中で、モノマーの入手容易性、重合収率、重合体ブロック〔B’〕への繰り返し単位〔1〕の導入のし易さ等の観点から、上記(1)の方法がより好ましい。
上記(1)の方法における芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等や、これらにヒドロキシル基、アルコキシ基などの置換基を有するもの等が挙げられる。中でもスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(1)方法における不飽和脂環族ビニル系化合物の具体例としては、シクロヘキセニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、およびα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等や、これらにハロゲン基、アルコキシ基、またはヒドロキシル基等の置換基を有するもの等が挙げられる。
これらの芳香族ビニル化合物および脂環族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできるが、本発明においては、モノマー混合物〔a’〕および〔b’〕のいずれにも、芳香族ビニル化合物を用いるのが好ましく、中でも、スチレンまたはα−メチルスチレンを用いるのがより好ましい。
上記方法で使用するビニル系モノマーには、鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエン化合物が含まれる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、および1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物および鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のモノマーを含有するモノマー混合物を重合する場合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等のいずれの方法で重合反応を行ってもよいが、アニオン重合によるのが好ましく、不活性溶媒の存在下にリビングアニオン重合を行うのが最も好ましい。
アニオン重合は、重合開始剤の存在下、通常0〜200℃、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜80℃の温度範囲において行う。開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
使用する不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100重量部に対して200〜10,000重量部となるような割合で用いられる。
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、或る1成分の連鎖が長くなるのを防止するために、重合促進剤やランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を得る方法は、従来公知の、逐次付加重合反応法およびカップリング法などが挙げられるが、本発明においては、逐次付加重合反応法を用いるのが好ましい。
逐次付加重合反応法により、重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有する上記ブロック共重合体を得る場合には、重合体ブロック〔A’〕を得る工程と、重合体ブロック〔B’〕を得る工程は、順次連続して行われる。具体的には、不活性溶媒中で、上記リビングアニオン重合触媒存在下、モノマー混合物〔a’〕を重合して重合体ブロック〔A’〕を得、引き続きその反応系にモノマー混合物〔b’〕を添加して重合を続け、重合体ブロック〔A’〕とつながった重合体ブロック〔B’〕を得る。さらに所望に応じて、再びモノマー混合物〔a’〕を添加して重合し、重合体ブロック〔A’〕をつなげてトリブロック体とし、さらには再びモノマー混合物〔b’〕を添加して重合し、重合体ブロック〔B’〕をつなげたテトラブロック体を得る。
得られたブロック共重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法によって回収する。重合反応において、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液そのままを水素化反応工程にも使用することができるので、重合溶液からブロック共重合体を回収しなくてもよい。
上記(1)の方法において得られる、重合体ブロック〔A’〕および重合体ブロック〔B’〕を有するブロック共重合体(以下「水素化前ブロック共重合体」という。)のうち下記の構造の繰り返し単位を有するものが好ましい。
好ましい水素化前ブロック共重合体を構成する重合体ブロック〔A’〕は、下記式(14)で表される繰り返し単位〔4〕を50モル%以上含有する重合体ブロックである。
式(14)中、R16は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R17−R21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはハロゲン基である。尚、上記〔R17−R21〕は、R17、R18、・・およびR21を表す。
また、好ましい重合体ブロック〔B’〕は、前記繰り返し単位〔4〕を必ず含み、下記式(15)で表される繰り返し単位〔5〕および下記式(16)で表される繰り返し単位〔6〕のいずれかを少なくとも1つ含む重合体ブロックである。また、重合体ブロック〔A’〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をa’、ブロック〔B’〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をb’とした場合、a’>b’である。
式(15)中、R22は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
式(16)中、R23は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R24は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を表す。
さらに、ブロック〔B’〕中には、下記式(Y)で示される繰り返し単位〔Y〕を含有していてもよい。
式(Y)中、R28は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R29はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を表し、R30は水素原子を表す。または、R29とR30とは相互に結合して、酸無水物基、またはイミド基を形成してもよい。
さらに、好ましい水素化前ブロック共重合体は、ブロック〔A’〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma’、ブロック〔B’〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmb’とした場合に、その比(ma’:mb’)が、5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma’:mb’)が上記範囲にある場合に、機械的強度や耐熱性に優れる。
好ましい水素化前ブロック共重合体の分子量は、THFを溶媒としてGPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算Mwで、12,000〜400,000、より好ましくは19,000〜350,000、特に好ましくは25,000〜300,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが過度に小さいと、機械的強度が低下し、過度に大きいと、水素添加率が低下する。
好ましい水素化前のブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwとMnとの比(Mw/Mn)で、5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、水素添加率が向上する。
好ましい水素化前のブロック共重合体のTgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、DSCによる高温側の測定値で、70〜150℃、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは90〜130℃である。
上記の、水素化前のブロック共重合体の、芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素不飽和結合、および主鎖や側鎖の不飽和結合等を水素化する方法および反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、およびレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、好ましくは0.01〜80重量%、より好ましくは0.05〜60重量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜100重量部、より好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.1〜30重量部である。
水素化反応は、通常10〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。また水素圧力は、好ましくは0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、より好ましくは1MPa〜20MPa、特に好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、ブロック共重合体の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖および側鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環やシクロアルケン環の炭素−炭素不飽和結合のいずれも、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後、ブロック共重合体は、例えば濾過、遠心分離等の方法により反応溶液から水素化触媒を除去した後、溶媒を直接乾燥により除去する方法、反応溶液を、ブロック共重合体にとっての貧溶媒中に注ぎ、凝固させる方法等によって回収できる。
また、本発明に係るブロック重合体に、最も低いガラス転移温度が30℃以下である軟質重合体を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
上記軟質重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などのオレフィン系軟質重合体;ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンゴム、イソブチレン−スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン・ブロック共重合体、イソプレン−スチレン・ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体;ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのアクリル系軟質重合体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴムなどのエポキシ系軟質重合体;フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴムなどのフッ素系軟質重合体;天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体などが挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械的強度、柔軟性、および分散性の点で優れる。軟質重合体の配合量は、化合物の種類に応じて異なるが、一般に、配合量が多すぎれば、ブロック共重合体のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、レンズとして使用することができない。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成形物の白濁を生じる場合がある。配合量は、ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.02〜5重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部である。
本発明で用いるブロック共重合体に上記配合剤を配合してブロック共重合体組成物を形成する方法は、例えば、ミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などでブロック共重合体を溶融状態にして配合剤と混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法などが挙げられる。二軸混練機を用いる場合、混錬後に通常は溶融状態でストランド状に押し出し、ペレタイザーにてペレット状にカットして用いられることが多い。
なお、以上の樹脂以外に、「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の紫外分光検出器及び示差屈折計で検出されるピーク面積から算出される飽和結合率が99.92〜99.99%のノルボルネン系開環重合体水素添加物を含有するものであってもよい。
飽和結合率とは、下記のごとくゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の紫外分光検出器及び示差屈折計でそれぞれ検出されるピーク面積S1及びS2から算出される開環重合体水素添加物中の全炭素−炭素結合中の炭素−炭素飽和結合の割合に相当する計算値である。飽和結合率は、ノルボルネン系開環重合体水素添加物の分子量を、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したときに、紫外分光検出器で検出されるピーク面積をS1、示差屈折計で検出されるピーク面積をS2としたときに、次の式、飽和結合率(%)=100+k×(S1/S2)で算出した値である。ここでS1の値は、通常、重合体中に存在する炭素−炭素二重結合の割合が小さくなるほど小さくなる。また、「100−飽和結合率」が炭素−炭素不飽和結合の比率となる。完全に水素添加されれば、飽和結合率は100%である。
上記式中のkは、以下の手順で算出される。
(1)1H−NMRにより複数の重合体サンプルの水素添加率を測定する。
(2)溶媒をシクロヘキサンとして重合体の濃度が約0.5重量%になるようにサンプル溶液を調製する。
(3)上記(2)で得られるサンプル溶液の分子量を、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、GPCの紫外分光検出器で検出されるピーク面積(S1)と示差屈折計で検出されるピーク面積(S2)から(S1/S2)を算出する。
(4)縦軸に1H−NMRにより算出された水素添加率、横軸にS1/S2をプロットし、最小二乗法から算出される傾きをkとする。kは、通常負の値となる。ここで1H−NMRによる水素添加率は、水素添加前後の重合体の1H−NMRスペクトル中のピークの面積の積分値から算出する。
飽和結合率は、以下の手順により算出される。
(1)ノルボルネン系開環重合体水素添加物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定用の溶液を調製する。溶媒はシクロヘキサンとし、溶液中の前記水素添加物の濃度を0.5重量%とする。
(2)上記(1)で調製した溶液の分子量を、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、GPCの紫外分光検出器で検出されるピーク面積(S1)と示差屈折計で検出されるピーク面積(S2)からピーク面積比(S1/S2)を算出する。
(3)上記(2)で算出されたピーク面積比(S1/S2)と算出したkとから、下記の式により飽和結合率を算出する。
飽和結合率(%)=100+k×(S1/S2)
ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、下記一般式(21)で表されるノルボルネン系単量体由来の繰り返し単位を50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100%有するものである。
(一般式(21)中、R1〜R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む基を示し、R1とR4が結合して環を形成してもよい。pは0、1または2である。qは0または1である。)
ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加して開環重合を終了してノルボルネン系開環重合体を得、次いで水素添加触媒の存在下で水素添加することにより得られるものである。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物を構成するノルボルネン系単量体は、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン類やヘキサシクロヘプタデセン類等のノルボルネン環を有する多環の環状オレフィン類であり、下記一般式(22)で代表されるものである。また、これらの単量体は、アルキル基やアルケニル基、アルキリデン基などの炭化水素基;窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、又は硫黄原子を含む基;ノルボルネン環の二重結合以外の二重結合;をさらに有してもよい。
(一般式(22)中、R1〜R4、p及びqは上記一般式(21)と同じである。)
ノルボルネン類は、一般式(22)のp及びqが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネンなどの無置換又はアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどの芳香環を有するノルボルネン類;
5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、などの酸素原子を含む基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するノルボルネン類;などが挙げられる。
ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体は、一般式(22)のpが0、qが0又は1で、R1とR4が結合してノルボルネン環、5員環以外に環構造を有するノルボルネン系単量体である。具体的には、pが0で、qが1であるジシクロペンタジエン類、pが0で、qが1で、さらに芳香環を有するノルボルネン誘導体を挙げることができる。ジシクロペンタジエン類の具体例としては、5員環部分に二重結合を有するトリシクロ[4.3.0.12,5 ]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、5員環部分の二重結合を飽和させたトリシクロ[4.3.12,5.0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.0]ウンダ−3−エンなどを挙げることができる。pが0で、qが1で、さらに芳香環を有するノルボルネン誘導体の具体例としては、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)などを挙げることができる。
テトラシクロドデセン類は、一般式(22)のpが1、qが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセンなどの無置換又はアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセンなどの環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセンなどの芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;
8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセンなどのハロゲン原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセンなどのケイ素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;などが挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類は、一般式(22)のpが2で、qが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセンなどの無置換又はアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセンなどの環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセンなどの芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセンなどのハロゲン原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセンなどのケイ素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類などが挙げられる。上記のノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、格別制限はないが、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン ;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体由来の繰り返し単位は、通常0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜10重量%である。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物のシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜100,000、好ましくは13,000〜70,000、より好ましくは14,000〜60,000、特に好ましくは15,000〜50,000である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として表される分子量分布(MWD)は、通常、1.5〜5.0、好ましくは、1.7〜4.0、より好ましくは1.8〜3.0である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)が75,000以上である成分の割合が少ないほうが好ましい。具体的には、全重合体中の15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30〜300℃、好ましくは60〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲である。ガラス転移温度が過度に低いと得られる成形体の耐熱性、耐光性が低下し、過度に高いと成形加工性が悪くなる。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法は、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒(初期添加触媒)とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加して(追加添加触媒)開環重合を終了してノルボルネン系開環重合体を得、次いで水素添加触媒の存在下で水素添加することを含む。
この製造方法が適用できるノルボルネン系単量体としては、水素添加物を構成するノルボルネン系単量体を挙げることができる。ノルボルネン系単量体の割合は、通常50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、特に好ましくは100重量%である。上記範囲にノルボルネン系単量体の割合を設定することで、得られる成形体の機械的強度が向上する。
また、ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法においては、上記ノルボルネン系単量体を共重合可能な単量体を使用してもよい。ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、格別制限はないが、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン ;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらのノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体の割合は、通常0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜10重量%である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、重合反応は、溶媒を用いても、用いなくても可能であるが、用いる場合にはノルボルネン系単量体とその開環重合体を十分に溶解できるものであれば、特に限定されない。中でも不活性有機溶媒中で重合を行うことが望ましい。
不活性有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;スチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。この中でも、好ましくはn−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;またはこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量はノルボルネン系単量体100重量部あたり、通常10〜1000重量部、好ましくは50〜700重量部、より好ましくは100〜500重量部の範囲である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法は、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒(初期添加触媒)とを添加して開環重合を行うことを含む。
この製造方法において、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを混合して添加してもよく、それぞれ別個に添加してもよいが、ノルボルネン系単量体の一部と不活性有機溶媒と助触媒とを反応容器内に仕込んだ後、ノルボルネン系単量体の残部と開環重合触媒とを添加して開環重合を行うことが好ましい。このときのノルボルネン系単量体の仕込み量は、ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法に使用するノルボルネン系単量体全量に対して、50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法に適用できる助触媒は、開環重合触媒の助触媒として用いられているものが挙げられる。具体的には、有機アルミニウム化合物や有機錫化合物が挙げられ、好ましくは有機アルミニウム化合物である。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムや、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルハライドアルミニウムなどが挙げられるが、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドなどが挙げられる。
これらの助触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。助触媒の添加量は、ノルボルネン系単量体に対して、0.005〜10モル%、好ましくは0.02〜5モル%である。助触媒を上記範囲で用いることにより、ゲルや高分子量成分の発生が少なく、かつ重合活性が高く分子量の制御が行いやすくなる。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法では、開環重合反応には、ノルボルネン系単量体、開環重合触媒及び助触媒のほかに、分子量調節剤や反応調整剤を添加することができる。
分子量調節剤としては、通常、鎖状モノオレフィンや鎖状共役ジエン類が用いられる。具体的には、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ドデセン、1、4−ヘキサジエンなどが挙げられる。分子量調節剤の使用量は、重合条件により適宜選択されるが、ノルボルネン系単量体に対して、通常0.2〜10モル%、好ましくは0.4〜7モル%、より好ましくは0.5〜4モル%である。
反応調整剤としては、アルコール、アミン等の活性水素含有極性化合物;エーテル、エステル、ケトン、ニトリル等の活性水素を含有しない極性化合物;から選ばれる少なくとも1種の極性化合物を用いることができる。活性水素含有極性化合物は、ゲルの発生を防ぎ、特定分子量の重合体を得るのに有効であり、なかでもアルコールが好ましい。また活性水素を含有しない極性化合物は、機械的強度の低下の原因となる重合体中の低分子量成分の生成を抑制するのに有効であり、中でもエーテル、エステル、ケトンが好ましく、特にケトンがより好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどの飽和アルコールや、フェノール、ベンジルアルコールなどの不飽和アルコール等が挙げられるが、好ましくはプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールである。
エステルとしては、例えば、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸プロピル、安息香酸イソプロピルなどが挙げられ、これらの中でも酢酸メチルや酢酸エチルが好ましい。
エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルやトリエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられ、これらの中でもジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルが好ましい。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルフェニルケトン、ジフェニルケトンなどが挙げられ、これらの中でもアセトンやメチルエチルケトンが好ましい。
反応調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。特に、ノルボルネン開環重合体水素添加物においては、活性水素含有の極性化合物と活性水素を有さない極性化合物を組み合わせるのが好ましく、特にアルコールとケトン、アルコールとニトリル、アルコールとエーテル及びアルコールとエステルの組み合わせが好ましい。反応調整剤の使用量は、ノルボルネン系単量体に対して、通常0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜5モル%の範囲である。
開環重合の温度条件は、通常−20〜100℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜80℃、最も好ましくは10〜50℃の範囲で行う。温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると反応の制御が困難になり、またエネルギーコストが高くなる。すなわち、温度条件を−20〜100℃の範囲に調整することで、反応の制御が容易で、エネルギーコストを低く抑えることができると共に、適切な反応速度で重合を進行させることができる。
開環重合の圧力条件は、通常0〜5MPa、好ましくは常圧〜1MPa 、より好ましくは常圧〜0.5MPaである。
開環重合は、得られる重合体の酸化による劣化、着色などを防止するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることもある。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法に適用できる開環重合触媒は、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報などに開示されているような公知のノルボルネン系単量体の開環重合触媒である。具体的には、周期表第4〜10族の遷移金属の化合物であり、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体などが挙げられる。
具体例としては、TiCl4、TiBr4、VOCl3、VOBr3、WBr4、WBr6、WCl2、WCl4、WCl5、WCl6、WF4、WI2、WOBr4、WOCl4、WOF4、MoBr2、MoBr3、MoBr4、MoCl4、MoCl5、MoF4、MoOCl4、MoOF4、WO2、H2WO4、NaWO4、K2WO4、(NH4)2WO4、CaWO4、CuWO4、MgWO4、(CO)5WC(OCH3)(CH3)、(CO)5WC(OC2H5)(CH3)、(CO)5WC(OC2H5)(C4H5)、(CO)5MoC(OC2H5)(CH3)、(CO)5Mo=C(C2H5)、(N(C2H5)2)、トリデシルアンモニウムモリブデン酸塩、トリデシルアンモニウムタングステン酸塩等が挙げられる。
上記開環重合触媒の中でも実用上、重合活性などの点から、W、Mo、Ti、またはVの化合物が好ましく、特にこれらのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、またはアルコキシハロゲン化物が好ましい。
開環重合触媒の添加量は、ノルボルネン系単量体に対して通常0.001〜5モル%、好ましくは0.005〜2.5モル%、さらに好ましくは0.01〜1モル%である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加(追加添加触媒)する。開環重合触媒を追加添加する時期としては、例えば、ノルボルネン系単量体添加終了直後や該単量体添加終了後時間が経過した後などが挙げられる。また開環重合触媒を追加添加する方法としては、例えば、一度に開環重合触媒を添加する方法、継続して開環重合触媒を添加する方法、又は断続的に開環重合触媒を添加する方法などが挙げられるが、継続して添加する方法が好ましい。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、ノルボルネン系単量体添加終了時の重合転化率は、好ましくは90〜99%、さらに好ましくは93〜97%であり、追加添加触媒量は、ノルボルネン系単量体に対して、好ましくは0.00005モル%以上、さらに好ましくは0.0025モル%以上である。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、反応系内を攪拌して開環重合を行うことが好ましい。反応系内を攪拌しながら開環重合を行うことにより、重合反応熱による急激な温度上昇を好適に抑制することが可能となる。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、目的に応じた分子量あるいは転化率まで重合を進行させてから、開環重合反応を終了する。その後、重合反応液のゲル化等を防ぐために開環重合触媒を不活性化させて、さらにその後、必要に応じて不活性化させた開環重合触媒を除去する。
開環重合触媒を不活性化する方法としては、たとえば、触媒不活性化剤を重合反応液に加える方法などが挙げられる。
触媒不活性化剤としては、水、アルコール類、カルボン酸類、フェノール類などのヒドロキシル基を有する化合物を好ましく例示できる。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−プロペン−1−オール、1,2−エタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−エトキシエタノール、2,2−ジクロロ−1−エタノール、2−ブロモ−1−エタノール、2−フェニル−1−エタノールなどの脂肪族、脂環族、芳香族のモノ、ジまたはポリアルコール類などが挙げられる。
カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、アクリル酸、シュウ酸、マレイン酸、プロパントリカルボン酸、酒石酸、クエン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フタル酸、ピロメリット酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のモノ、ジまたはポリカルボン酸類などが挙げられる。
フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。これらの触媒不活性化剤は、単独または2種以上混合して使用することができる。
これらのヒドロキシル基を有する化合物のうち、水または水溶性の化合物(たとえば、炭素数4以下の化合物)は、重合体溶液に対する溶解性が低く、重合体中に残存しにくいので、好ましい。中でも、水または低級アルコール類が好ましいが、特に水とアルコール類を同時に使用すると、水を単独で使用する場合に比して、触媒不活性化効率が良好であり、またアルコールを単独で用いる場合に比して、触媒残査の析出が容易になるので好ましい。水とアルコールの好ましい使用比率は、水1重量部に対してアルコール類が0.1〜5重量部、特に0.2〜2重量%である。
触媒不活性化剤の量は、重合触媒を不活性化させるのに十分な量であればよく、重合触媒の不活性化に必要な化学量論量に対し、好ましくは1〜20モル当量、より好ましくは2〜10モル当量の範囲である。例えば、開環重合触媒として六塩化タングステン1モルとトリエチルアルミニウム1.5モルを用い、触媒不活性化剤としてメタノールを用いた場合、化学量論上は、メタノールは六塩化タングステン1モルに対して6モル、トリエチルアルミニウム1モルに対して3モルが必要となるので、開環重合触媒を不活性化するのに必要なメタノールの化学量論量は10.5モルとなる。
さらに、重合体溶液に触媒不活性化剤を添加した結果、重合触媒が析出する場合、析出する不溶解成分の凝集核または凝集助剤として、活性白土、タルク、けいそう土、ベントナイト、合成ゼオライト、シリカゲル粉末、アルミナ粉末などを添加してもよい。添加量の範囲は任意だが、好ましくは開環重合触媒の重量の約0.1〜10倍である。
触媒不活性化剤の添加は、−50℃〜100℃の任意の温度、好ましくは0〜80℃、0〜0.5MPaの任意の圧力、好ましくは常圧〜0.5MPaで行い、その条件下で、0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間攪拌する。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、開環重合触媒に遷移金属ハロゲン化物を使用する場合は、重合触媒不活性化剤の添加によりハロゲン化水素が発生し、水素添加触媒が被毒され易いため、目的に応じた分子量あるいは転化率まで重合が進行した後、重合触媒不活性化剤の添加前に、予め酸捕捉剤を添加しておくことが好ましい。さらに、重合触媒不活性化剤の添加後であって水素添加反応開始前に、追加で酸捕捉剤を添加することが好ましい。
酸捕捉剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、などの金属水酸化物; 酸化カルシウム、酸化マグネシウム、などの金属酸化物; アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、などの金属; 炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウムなどの塩類; エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、などのエポキシ化合物; などが挙げられる。
酸捕捉効果のある塩類としては、アルカリ性を示す塩類であり、強酸と弱アルカリの塩が好ましい。これらの酸捕捉剤の中で、重合触媒不活性化剤の添加前に用いる酸捕捉剤としては、エポキシ化合物と塩類、およびそれらの組み合わせが、酸捕捉効果が優れ好ましい。水素添加時に追加で加える酸捕捉剤としては、塩類が好ましい。水素添加反応時の温度条件で、反応器の腐食を効果的に抑えることができる。
酸捕捉剤の量は、用いた開環重合触媒の加水分解により発生しうるハロゲン化水素の最大量、すなわち化学量論量に対し0.5当量以上、好ましくは1〜100当量、さらに好ましくは2〜10当量である。
酸捕捉剤の添加は、−50℃〜100℃の任意の温度、好ましくは0℃〜80℃、0〜5MPaの任意の圧力、好ましくは常圧〜0.5MPaでおこなう。引き続く重合触媒不活性化剤の添加および反応は前述と同様である。
酸捕捉剤を添加した場合は、開環重合触媒を水素添加工程の前に除去せず、重合触媒残渣が共存した状態でも水素添加触媒の活性を維持するという効果もあり、好ましい。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、上記開環重合反応終了後に、水素添加触媒を添加して水素添加反応を行う。水素添加触媒としては、オレフィン化合物や芳香族化合物の水素添加に際して一般に使用されるものであれば格別な制限はなく、通常、不均一系触媒や均一系触媒が用いられる。
不均一系触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、又はこれらの金属を用いてカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒:ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの組み合わせからなる触媒が挙げられる。
均一系触媒としては、例えば、遷移金属化合物とアルキルアルミ金属化合物又はアルキルリチウムの組み合わせからなる触媒、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、酢酸コバルト/トリイソブチルアルミニウム、酢酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、酢酸ニッケル/トリイソブチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウイム、チタノセンクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンクロリド/n−ブチルリチウムなどの組み合わせからなる触媒が挙げられる。
水素添加反応は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。水素化触媒の使用量は、ノルボルネン系開環重合体100重量部あたり、通常0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部の範囲である。水素添加反応は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaの水素圧下、0〜250℃の温度範囲、1〜20時間の反応時間で行われる。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法において、ノルボルネン系開環重合体水素添加物は以下の手順にて回収される。水素添加触媒として不均一系触媒を用いた場合、上記水素添加反応後に、ろ過して水素添加触媒を除去し、続いて凝固乾燥法、又は薄膜乾燥機等を用いた直接乾燥法にて得ることができる。ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、通常、パウダー状又はペレット状で得ることができる。一方、水素添加触媒として均一系触媒を用いた場合は、水素添加反応後に、アルコールや水を添加して触媒を失活させ、溶剤に不溶化させた後に濾過を行い触媒を除去する。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物には、必要に応じて、その他のポリマー、各種配合剤、有機または無機の充填剤などの添加剤を単独で、あるいは2種以上添加しても良い。
その他のポリマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBS、SIS、SEBSなどのエラストマー;ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホンなどの樹脂;などを配合することができる。また、これらのその他のポリマーはそれぞれ単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤などの配合剤が挙げられる。
中でも、酸化防止剤を加えることが好ましく、そのような酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられるが、これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、低吸水性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等による成形物の着色や強度低下を防止できる。
有機または無機の充填剤としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、塩基性炭酸マグネシウム、ドワマイト、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベストなどの鉱物; ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの繊維;ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどである。
これらの充填剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて添加することができる。充填剤の配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で、それぞれの機能及び使用目的に応じて適宜定めることができる。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物に上記添加剤を配合する方法は、例えばミキサー、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などでノルボルネン系開環重合体水素添加物を溶融状態にして配合剤と混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させ凝固する方法などが挙げられる。二軸混練機を用いる場合、混錬後に通常は溶融状態でストランド状に押し出し、ペレタイザーにてペレット状にカットして用いられることが多い。
ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、成形体に成形して、各種用途に使用することができる。成形方法としては格別な限定はないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等に優れた成形物を得るためには、溶融成形法を用いるのが好ましい。溶融成形法としては、射出成形法、押し出し成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられるが、低複屈折性、寸法安定性などの観点から、射出成形法が好ましい。
成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、射出成形法による場合は、ノルボルネン系開環重合体水素添加物の樹脂温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、成形品にヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるシルバーストリークが発生したり、成形物が黄変するなどの成形不良が発生したりするおそれがある。成形体は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができる。
ノルボルネン開環重合体水素添加物の成形体は、平板状に成形した時の黄色度差ΔYIが0.5以下であることが好ましい。ここで黄色度差ΔYIは、ブランクを空気として、常温(25℃)で、色差計を用いて前記成形体の黄色度指数YIを測定し、空気の黄色度指数YIとの差とする。ΔYIは、着色が少ないほど小さい値となる。
次に、対物レンズ15の製造方法について説明する。
始めに、上記で説明した「脂環式構造を有する重合体を含有する樹脂」を周知の射出成形技術に供して2つの成形品41,42を作製する。各成形品41,42を作製したら、成形品41の表面41a上には反射防止膜46を成膜し、成形品42の表面42a上には反射防止膜46及び撥水膜47を成膜する。
反射防止膜46及び撥水膜47の成膜は、周知の蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)、ゾルゲル法等を適用した処理によりおこなう。透明度の高い反射防止膜46及び撥水膜47を成膜することができれば、反射防止膜46及び撥水膜47の成膜方法は特には限定しない。また、反射防止膜46において光の吸収量を極めて少なくするためには、成膜処理時に導入する酸素ガスの導入量と成膜速度とを適宜調整し、酸素ガスが不足した状態で膜の形成がおこなわれないようにする必要がある。
成膜処理の一例として、反射防止膜46及び撥水膜47の成膜を、蒸着法を適用した処理によりおこなう場合には、各成形品41,42を真空容器内に設置し、その後、真空容器内にガスを導入するときは、酸素ガス、アルゴンガス、四フッ化窒素ガス、窒素ガス等を真空容器内に導入しながら当該真空容器内の真空度を0.5×10-2〜3×10-2Paに保ち、他方、ガスを導入しないときは、真空容器内の真空度を0.7×10-2Paに保つ。
この状態において、成形品41に反射防止膜46を成膜する場合には、電子銃加熱蒸着源を用いて、低屈折率材料又は中屈折率材料を溶融・蒸発させ、成形品41の表面41a上に第1の膜43を形成する。低屈折率材料及び中屈折率材料の混合物から構成される第1の膜43を形成するときには、低屈折率材料用の蒸着源と中屈折率材料用の蒸着源とを別個に真空容器内に配し、両蒸着源を同時に用いて多元蒸着をおこなえばよい。このとき、低屈折率材料と中屈折率材料との混合比を変えることで、405nmの光に対する第1の膜43の屈折率を1.45から1.7未満の範囲内で適宜調整することができる。
第1の膜43を成膜したら、当該第1の膜43を形成したときと同様に、電子銃加熱蒸着源を用いて高屈折率材料を溶融・蒸発させ、第1の膜43上に第2の膜44を形成する。第2の膜44を成膜したら、当該第2の膜44を形成したときと同様に、電子銃加熱蒸着源を用いて低屈折率材料又は低/中屈折率材料を溶融・蒸発させ、第2の膜44上に第3の膜45を形成する。成形品42に反射防止膜46を成膜する場合にも、上記と同様におこなう。
各成形品41,42に反射防止膜46を成膜したら、さらに成形品42に対してのみ、電子銃加熱蒸着源を用いて、フッ素を含有する所定の材料を溶融・蒸発させ、反射防止膜46上に撥水膜47を形成する。
成形品41の表面41a上に反射防止膜46を成膜し、成形品42の表面42a上に反射防止膜46及び撥水膜47を成膜したら、成形品41と成形品42とを端部同士で接着し、対物レンズ15の製造が終了する。
なお、成形品41,42の各表面41a,42aに成膜した反射防止膜46の成膜に関し、第3の膜45上に、さらに第2,第3の膜44,45と同様の膜を成膜する場合には、上記で説明した第2,第3の膜44,45の成膜方法にしたがう処理を適宜おこなえばよく、各表面41a,42a以外の他の面(裏面41b,42b)に、反射防止膜46を成膜する場合(第3の膜45上に、さらに第2,第3の膜44,45と同様の膜を成膜する場合を含む。)にも、上記で説明した第1,第2,第3の膜43,44,45の成膜方法にしたがう処理を適宜おこなえばよい。そして各成形品41,42の成膜処理を終えたら、成形品41と成形品42とを端部同士で接着すればよい。
以上の実施形態では、成形品42の表面42aが、光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30に対向する面となって、成形品41の表面41aより耐磨耗性に優れているから、成形品42の表面42aに付着した塵、埃等を除去するための操作(綿棒で払拭する操作等)をおこなっても、その面に成膜された反射防止膜46及び撥水膜47には剥離・ひび割れ等が発生しにくい。そのため、光ピックアップ装置1及び対物レンズ15は、長期間の使用に際し光情報記録媒体への情報の記録や光情報記録媒体中の情報の再生をおこなうのに十分な光量を容易に確保することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなってもよい。
例えば、本発明に係る対物レンズ15に適用した膜構成や基材40の樹脂組成等は、光ピックアップ装置1を構成するその他のレンズ等に適用されてもよいし、光ピックアップ装置1以外の用途に使用される光学素子に適用されてもよく、終局的には、波長350〜450nm中の特定波長の光を集光するための光学素子であればその全てに好適に適用することができる。
また、成形品42の表面42a上の膜構成で説明すると、当該膜構成では、成形品42の表面42aと第1の膜43との間に、膜の付着性を向上させるための下地層を介在させてもよいし、図2中の撥水膜47のような最も外側に配置される膜(大気に接触する膜)上に、汚れ防止等のための防汚層を設けてもよいし、静電気による塵、埃等の付着を防止するための帯電防止層を設けてもよく、帯電防止層は第1,第2,第3の膜43,44,45及び撥水膜47の各膜の間の任意の境界面や最外表面に設けられてもよい。
「下地層」は、例えばシランカップリング処理層から構成されるのがよい。
「防汚層」は、フッ素系有機化合物やシリコン系有機化合物から構成されるのがよく、その膜厚は通常7nm以下とするのがよい。「防汚層」をフッ素系有機化合物で構成する場合には、例えば、蒸着材料をWR1(メルク(株)製商品名)としたパーフルオロアルキルシランの薄膜を真空蒸着で形成したり、フッ素系塗布液L−182560(住友スリーエム(株)製商品名)の塗布処理で形成したりするのがよい。他方、「防汚層」をシリコン系有機化合物で構成する場合には、ジメチルジエトキシシラン(DMDES)の薄膜を大気圧プラズマ法で形成するのがよい(特開平2003−161817号公報参照)。
「帯電防止層」は、透明導電性の薄膜から構成するのがよく、その膜厚は通常10nm以下とするのがよい。「帯電防止層」は、具体的に、真空蒸着法やスパッタリング法により酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛のいずれかの単体又はこれら化合物の2種以上の混合物で形成されるのがよい。
また、対物レンズ15に代えて、図3に示す対物レンズ100を適用してもよい。図3は対物レンズ100の概略構成を示す断面図である。
図2に示す対物レンズ15は、波長350〜450nm,波長620〜680nm,波長750〜810nmの各光を集光可能な互換性レンズであったのに対し、図3に示す対物レンズ100は、主に、波長350〜450nmの青色光を集光可能な青色光専用レンズとして好適に用いられるものである。そのため、図3に示す対物レンズ100が光ピックアップ装置1に適用された場合には、3種類の半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3のうち半導体レーザ発振器LD1が光を出射するようになっており、図3に示す対物レンズ100は、当該半導体レーザ発振器LD1から出射された光をBD10の記録面10a上に集光スポットを形成するようになっている。
対物レンズ100の構成について詳しく説明すると、図3に示す通り、対物レンズ100は樹脂製の基材50を有しており、基材50は2つの成形品51,52から構成されている。基材50は、各成形品51,52が上記成形品41,42と同様の樹脂から構成され、かつ、各成形品51,52が端部同士で互いに接着されて各成形品51,52の間に中空部59が形成された構成を有しており、これらの点で上記基材40と同様の構成を有している。
第1の成形品としての成形品51は半導体レーザ発振器LD1側に配置されており、第2の成形品としての成形品52はBD10側に配置されている。詳しくは、成形品51の表面51aが半導体レーザ発振器LD1に対向し、成形品52の表面52aがBD10に対向し、成形品51の裏面51bと成形品52の裏面52bとが互いに対向している。
対物レンズ100において、成形品51の表面51aは、半導体レーザ発振器LD1から出射された光の光路上で半導体レーザ発振器LD1から最も近い面となっており、他方、成形品52の表面52aは半導体レーザ発振器LD1から出射された光の光路上で半導体レーザ発振器LD1から最も遠い面となっている。そのため、半導体レーザ発振器LD1から出射された光は、基材50を透過する際に、第1の面としての表面51aから入射して成形品51中を透過して裏面51bから出射し、さらに中空部59を介し、裏面52bから入射して成形品52中を透過して第2の面としての表面52aから出射し、BD10の記録面10aに入射するようになっている。
成形品51は表面51a及び裏面51bがともに非球面とされており、成形品52は裏面52bが非球面とされている。成形品52の表面52aは平坦面とされている。
成形品51の表面51aには、成形品42の表面42a上に適用した反射防止膜46の膜構成が適用されており、成形品52の表面52aには、成形品42の表面42a上に適用した反射防止膜46及び撥水膜47の膜構成が適用されている。成形品42の表面42a上に適用した反射防止膜46の膜構成は、上記対物レンズ15と同様に、成形品51,52の各裏面51a,52bに適用されてもよい。
ここで、上記構成を具備する対物レンズ100においては、成形品52の表面52aが成形品51の表面51aより耐磨耗性に優れている。ここでいう「耐磨耗性」の定義や「成形品52の表面52aが成形品51の表面51aより耐磨耗性に優れている」の意味は、対物レンズ15の説明でおこなったものと同義である。
また、対物レンズ100においては、波長350〜450nm中の光に対する成形品52の表面52aの最小反射率が、同光(波長350〜450nm中の光)に対する成形品51の表面51aの最小反射率以上となっており、対物レンズ100における光の透過率が向上している。
さらに、対物レンズ100においては、各成形品51,52がともに正の近軸パワーを有しており、特に成形品52が下記式(51),(52)の両条件を満たすように成形されている。
0.8≦NA … (51)
0.2≦β≦0.5 … (52)
上記式(51)中、NA:成形品52の像側開口数である。上記式(52)中、β:成形品52のレンズ倍率である。
上記式(51)の条件を満たす場合には、半導体レーザ発振器LD1から出射される光のうち、特に波長405nm前後の単色光で構成された光束から、BD10の記録面10a上に良好なスポット径を有する集光スポットを形成することができる。
上記式(52)の条件に関し、成形品52のレンズ倍率βが0.2以上であれば、温度変化による波面収差の変化が小さくなり、対物レンズ100を使用可能な温度範囲を広範にすることができる。他方、成形品52のレンズ倍率βが0.5以下であれば、成形品52の表面52aとBD10の表面との光軸上の距離が小さくなりすぎないので、対物レンズ100とBD10との衝突の可能性を低減することができる。
なお、対物レンズ100の製造方法、すなわち成形品51,52の作製や各成形品51,52への成膜処理等は、各成形品51,52の大きさや形状等の設計事項が各成形品41,42のそれと異なるだけで、上記対物レンズ15の製造方法と同様である。
さらに上記対物レンズ15に代えて図4に示す対物レンズ200を適用してもよい。図4は対物レンズ200の概略構成を示す断面図である。
図2に示す対物レンズ15は、上記の通り、波長350〜450nm,波長620〜680nm,波長750〜810nmの各光を集光可能な互換性レンズであったのに対し、図4に示す対物レンズ200は、図3に示す対物レンズ100と同様に、主に、波長350〜450nmの青色光を集光可能な青色光専用レンズとして好適に用いられるものである。そのため、図4に示す対物レンズ200が光ピックアップ装置1に適用された場合には、3種類の半導体レーザ発振器LD1,LD2,LD3のうち半導体レーザ発振器LD1が光を出射するようになっており、図4に示す対物レンズ200は、半導体レーザ発振器LD1出射された光をBD10の記録面10a上に集光スポットを形成するようになっている。
対物レンズ200の構成について詳しく説明すると、図4に示す通り、対物レンズ200は、上記成形品41,42と同様の樹脂から構成された基材60を有している。基材60は1つの成形品から構成されている。対物レンズ200は、基材60が上記成形品41,42と同様の樹脂から構成されている点で上記各対物レンズ15,100と同様の構成を有しており、基材60が1つの成形品から構成されている点で上記対物レンズ15,100とは異なる構成を有している。
基材60は、表面60aが半導体レーザ発振器LD1に対向し、裏面60bがBD10に対向している。対物レンズ200において、基材60の表面60aは、半導体レーザ発振器LD1から出射される光の光路上で半導体レーザ発振器LD1から最も近い面となっており、基材60の裏面60bは、半導体レーザ発振器LD1から出射される光の光路上で半導体レーザ発振器LD1から最も遠い面となっている。そのため、半導体レーザ発振器LD1から出射された光は、基材60を透過する際に、第1の面としての表面60aから入射して基材60中を透過し、第2の面としての裏面60bから出射し、BD10の記録面10aに入射するようになっている。基材60は、表面60a及び裏面60bがともに非球面とされている。
基材60の表面には、成形品42の表面42a上に適用した反射防止膜46の膜構成が適用されており、基材60の裏面60bには、成形品42の表面42a上に適用した反射防止膜46及び撥水膜47の膜構成が適用されている。
ここで、上記構成を具備する対物レンズ200において、基材60は裏面60bが表面60aより耐磨耗性に優れている。ここでいう「耐磨耗性」の定義や「裏面60bが表面60aより耐磨耗性に優れている」の意味は、対物レンズ15の説明でおこなったものと同義である。
また対物レンズ200においては、波長350〜450nm中の光に対する基材60の裏面60bの最小反射率が、同光(波長350〜450nm中の光)に対する基材60の表面60aの最小反射率以上となっており、対物レンズ200における光の透過率が向上している。
さらに、対物レンズ200においては、基材60が下記式(60)の条件を満たすように成形されている。
0.8≦d/f≦1.8 … (60)
上記式(60)中、d:光軸上の厚さ、f:波長405nmの光に対する焦点距離である。
上記式(60)の条件は、良好な像高特性を得るための条件である。上記式(60)の条件に関し、d/fが0.8以上であれば、基材60の中心厚が小さくなりすぎず、像高特性が劣化せず、さらに面のシフト感度が大きくならない。他方、d/fが1.8以下であれば、基材60の中心厚が大きくなりすぎず、像高特性が劣化せず、偏心感度が良好になり、球面収差やコマ収差も良好に補正することができる。
なお、対物レンズ200の製造方法、すなわち基材60の作製や基材60への成膜処理等は、基材60の大きさや形状等の設計事項が各成形品41,42のそれと異なるだけで、上記対物レンズ15の製造方法と同様である。