JP4155253B2 - 光学素子の製造方法及び光学素子成形型の加工方法 - Google Patents

光学素子の製造方法及び光学素子成形型の加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学素子の製造方法及び光学素子成形型の加工方法に関する。より詳しくは、樹脂組成物を成形する工程を含む光学素子の製造方法及び該製造方法に用いられる光学素子成形型の加工方法に関する。
カメラ、フィルム一体型カメラ(レンズ付きフィルム)、ビデオカメラ等の各種カメラ、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、CD−Video、MO、DVD等の光ピックアップ装置、複写機及びプリンター等のOA機器といった各種機器等に使用される高性能光学素子の多くは、インジェクション、注型成形、プレス等の成形型を用いて樹脂組成物を成形した樹脂成形体として製造されるものであり、種々の改良が検討されている。
樹脂成形体の破損を回避するために、成形型にシリコンの液状オイルを塗布して成形性の向上させる方法や、特定の離系剤を塗布した成形型を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、成形型の表面をTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析計)で正イオン分析を行った場合、特定の正イオンが特定の割合で存在する成形型を用いて樹脂成形物を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の方法により、固化収縮、硬化収縮が大きい硬化性樹脂であっても、成形型から樹脂成形体を取り出す際の破損が防止できる。
一方、低光学異方性、高屈折率、低吸湿性、高耐熱性、低溶融粘度、成形樹脂の高強度といった観点から、光学素子に用いる樹脂材料の改良がなされている。
高性能光学素子に用いられる樹脂材料としては、例えば、青色透過性を有し、低複屈折、高耐熱性、高耐湿性を有するシクロポリオレフィン系重合体からなる樹脂材料(例えば、特許文献3参照。)や、シクロポリオレフィン系重合体を水素添加処理することにより、色相改善された樹脂材料(例えば、特許文献4参照。)、スチレンとブタジエンとのブロック共重合体の芳香環部分を含む不飽和結合を水素化した特定構造の共重合体からなり、透明性、低複屈折性、機械的強度に優れ、大型で薄型のレンズの作製を可能にした樹脂材料(例えば、特許文献5参照。)、光学異方性が小さく、屈折率が大きいフルオレン骨格を含む樹脂材料(例えば、特許文献6参照。)が知られている。
特開平10−100164号公報 特開2003−266441号公報 特開平11−142645号公報 特開2002−105131号公報 特開2002−148401号公報 特開平7−198901号公報
次世代高密度光ディスクの統一規格「Blu−ray Disc」が日欧韓9社により策定され、発表された。この規格によると、波長390〜430nmの範囲から選択される青紫色レーザとNA=0.85の高開口レンズとを組み合わせ、12cm円板の片面に最大27GB相当の高密度記録及び再生が可能であるが、高光エネルギーを有する波長390〜430nmの青紫色レーザが光学素子の特定箇所に集中するため、光学素子に用いられる樹脂材料の選択条件はより厳しいものとなる。
脂環式構造を有する重合体を含む樹脂組成物を成形した樹脂成形体は、短波長光に対する高い透過性を有し、かつ複屈折の少ない樹脂成形体の一例である。しかしながら、成形型を用いて脂環式構造を有する重合体を含む樹脂組成物を繰り返し成形した場合、樹脂成形体に「欠け」や光学素子表面の「荒れ」といった欠損が発生することがあった。
特に、微細パターンを有する金型において上記の現象は顕著であり、一度、上記の現象が発生した金型においては同様の現象が繰り返して発生し、金型を交換せざるを得なかった。また、高転写性を有する断熱成形型またはヒートサイクル成形型等を使用した場合にも同様の現象が顕著に発生した。
そこで本発明は、短波長光に対する高い透過性を有し、かつ複屈折の少ない光学素子を、樹脂組成物を成形して製造するにあたり、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない光学素子の製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
請求項1に係る発明は、樹脂組成物を成形型で成形する工程を含む光学素子の製造方法において、
前記樹脂組成物は、脂環式構造を有する重合体を含有し、
前記成形型は、第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを備え、
前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を設けたことを特徴とする光学素子の製造方法である。
請求項2に係る発明は、前記成形型の温度を検知する温度検知手段と、
前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段で加熱される第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を冷却する冷却手段と、
前記温度検知手段で検知された温度に基づき、前記加熱手段及び冷却手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法である。
請求項3に係る発明は、前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方は、前記フッ素含有化合物層に接する表面加工層と、前記表面加工層に隣接して設けられた断熱層とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子の製造方法である。
請求項4に係る発明は、前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方は、前記フッ素含有化合物層に接する表面加工層を備え、
前記表面加工層は、微細パターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学素子の製造方法である。
請求項5に係る発明は、前記脂環式構造を有する重合体は、重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらには繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である脂環式構造を有する重合体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法である。
Figure 0004155253
〔上記一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)乃至(3)において、R1乃至R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。〕
請求項6に係る発明は、前記脂環式構造を有する重合体は、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法である。
請求項7に係る発明は、前記脂環式構造を有する重合体は、炭素原子数が2乃至20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法である。
Figure 0004155253
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1乃至R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15乃至R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
Figure 0004155253
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R乃至R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
請求項8に係る発明は、第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを有する光学素子成形型であって、第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を有する光学素子成形型の加工方法において、
前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方に設けられた表面加工層を、0.05乃至0.5質量%のフッ素含有化合物溶液で塗布する工程と、
前記塗布する工程で塗布された表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする光学素子成形型の加工方法である。
請求項9に係る発明は、第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを有する光学素子成形型であって、第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を有する光学素子成形型の加工方法において、
前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方に設けられた表面加工層を、0.05乃至0.5質量%のフッ素含有化合物溶液に浸漬する浸漬工程と、前記浸漬工程で浸漬された表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液から引き上げる引き上げ工程と、
前記引き上げ工程で引き上げられた表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする光学素子成形型の加工方法である。
ここで、「断熱層」とは、例えば、熱伝導率が20W/m・K以下の材料で構成されている。
ここで、「微細パターン」とは、局所的な凹凸形状を含むパターンを意味し、回折パターンや位相差形成パターン等の光路差付与構造のほか、段差を利用して2次元的な照明を行う導光板等も含む。なお、回折パターンとは、光学素子表面、例えばレンズ表面にレリーフを設けて、回折によって光線の角度を変える作用を持たせた形態をいい、位相差形成パターンとは、光学素子表面、例えばレンズ表面に階段形状を設けて、光線に位相差を設ける作用を持たせた形態をいう。
請求項1に記載の発明によれば、成形型を構成する第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を設けたことことにより、成形型の微視的な離型性のばらつきが低減され、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂組成物を成形した場合に付着性の高い部分が成形体表面に局在していても、局地的に成形型に付着することがなく、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
請求項2に記載の発明によれば、温度検知手段で検知された温度に基づき、成形型を加熱及び冷却する、高い転写性を有する成形型を使用した場合であっても、樹脂成形体に欠損が発生しない。したがって、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
請求項3に記載の発明によれば、型母材と表面加工層との間に断熱層を設けた、高い転写性を有する成形型を使用した場合であっても、樹脂成形体に微視的な欠損が発生しない。したがって、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
請求項4に記載の発明によれば、微細パターンが形成された表面加工層を設けた成形型を使用した場合であっても、樹脂成形体に微視的な欠損が発生しない。長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
請求項5に記載の発明によれば、前記脂環式構造を有する重合体は、重合体全繰り返し単位中に、上記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、上記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらには繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である脂環式構造を有する重合体であることにより、短波長光に対する高い透過性を有し、かつ複屈折の少ない光学素子を製造することが可能となる。
請求項6に記載の発明によれば、前記脂環式構造を有する重合体は、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物であることにより、短波長光に対する高い透過性を有し、かつ複屈折の少ない光学素子を製造することが可能となる。
請求項7に記載の発明によれば、前記脂環式構造を有する重合体は、炭素原子数が2乃至20のα−オレフィンと、上記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であることにより、短波長光に対する高い透過性を有し、かつ複屈折の少ない光学素子を製造することが可能となる。
請求項8に記載の発明によれば、成形型に設けられた表面加工層を0.05〜0.5質量%のフッ素含有化合物溶液で塗布した後、該表面加工層を前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄することで、成形型を構成する第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下の均一な膜厚を有するフッ素含有化合物層が設けられる。また、成形型の微視的な離型性のばらつきが低減され、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂組成物を成形した場合に付着性の高い部分が成形体表面に局在していても、局地的に成形型に付着することがなく、樹脂成形体に欠損が発生しない。したがって、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
請求項9に記載の発明によれば、成形型に設けられた表面加工層を0.05〜0.5質量%のフッ素含有化合物溶液に浸漬した後、該表面加工層を引き上げ、前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄することで、成形型を構成する第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層が設けられる。また、成形型の微視的な離型性のばらつきが低減され、脂環式構造を有する重合体を含む樹脂組成物を成形した場合に付着性の高い部分が成形体表面に局在していても、局地的に成形型に付着することがなく、樹脂成形体に欠損が発生しない。したがって、長期に亘って成形型を繰り返し使用しても光学素子に欠損が発生することがない。
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、脂環式構造を有する重合体を含有することを特徴とする。
脂環式構造を有する重合体とは、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のうちの少なくとも一方に、窒素原子または酸素原子を含有していてもよい3乃至7員環炭化水素を含む重合体のことをいう。
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂、樹脂の混合物、樹脂または樹脂の混合物にその他の高分子、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤等を加えた混合物の何れかであり、樹脂ならびに添加剤の選択及びこれらの混合比率を調整することで本発明に係る樹脂組成物とすることができる。
本発明において、脂環式構造を有する重合体の好ましい態様として、下記が挙げられる。
(1)脂環式炭化水素系共重合体
下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらには繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である脂環式構造を有する重合体。
Figure 0004155253
〔上記一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)乃至(3)において、R1乃至R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。〕
(2)ノルボルネン系開環重合体の水素添加物。
(3)α−オレフィン系重合体
炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式(1)または(2)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体。
Figure 0004155253
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1乃至R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15乃至R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
Figure 0004155253
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R1乃至R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
以下、脂環式構造を有する重合体の好ましい態様について説明する。
(1)脂環式炭化水素系共重合体
脂環式構造を有する重合体としては、重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらには繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上、10質量%未満である脂環式炭化水素系共重合体が好ましい。
Figure 0004155253
上記一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)〜(3)において、R1〜R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。その中でも、水素原子または炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基の場合が、耐熱性、低吸水性に優れるので好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を挙げることができる。極性基で置換された鎖状炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のハロゲン化アルキル基が挙げられる。鎖状炭化水素基としては、例えば炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6のアルキル基;炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6のアルケニル基が挙げられる。
一般式(1)におけるXは脂環式炭化水素基を表し、それを構成する炭素数は、通常4個〜20個、好ましくは4個〜10個、より好ましくは5個〜7個である。脂環式構造を構成する炭素数をこの範囲にすることで複屈折を低減することができる。また脂環式構造は単環構造に限らず、例えばノルボルナン環やジシクロヘキサン環などの多環構造のものでもよい。
脂環式炭化水素基は、炭素−炭素不飽和結合を有してもよいが、その含有量は、全炭素−炭素結合の10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。脂環式炭化水素基の炭素−炭素不飽和結合をこの範囲とすることで、透明性、耐熱性が向上する。また、脂環式炭化水素基を構成する炭素には、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、及び極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基等が結合していてもよく、中でも水素原子または炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が耐熱性、低吸水性の点で好ましい。
また、一般式(3)に記載の「−−−」は、主鎖中の炭素−炭素飽和、または炭素−炭素不飽和結合を表すが、透明性、耐熱性を強く要求される場合、不飽和結合の含有率は、主鎖を構成する全炭素−炭素間結合の10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(4)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れており好ましい。
Figure 0004155253
また、前記一般式(2)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(5)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れており好ましい。
Figure 0004155253
また、前記一般式(3)で表される繰り返し単位の中でも、下記一般式(6)で表される繰り返し単位が、耐熱性、低吸水性の点で優れており好ましい。
Figure 0004155253
上記一般式(4)〜(6)において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk、Rl、Rm及びRnは、それぞれ独立に水素原子または低級鎖状炭化水素基を示し、水素原子または炭素数1〜6の低級アルキル基が、耐熱性、低吸水性の点で優れている。
一般式(2)及び(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位の中では、一般式(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位のほうが、得られる炭化水素系重合体の強度特性に優れている点で好ましい。
本発明においては、炭化水素共重合体中の前記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、前記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)との合計含有量は、質量基準で、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、さらには好ましくは97%以上である。合計含有量を上記範囲にすることで、低複屈折性、耐熱性、低吸水性、機械強度が高度にバランスされる。
脂環式炭化水素系共重合体における鎖状構造の繰り返し単位(b)の含有量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常、質量基準で1%以上、10%未満であり、好ましくは1%以上、8%以下、より好ましくは2%以上、6%以下の範囲である。繰り返し単位(b)の含有量を上記範囲とすることにより、低複屈折性、耐熱性、低吸水性が高度にバランスされる。
また、繰り返し単位(a)の連鎖長は、脂環式炭化水素系共重合体の分子鎖長に対して十分に短く、具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の質量平均分子量)、B=(脂環式炭化水素系共重合体の質量平均分子量(Mw)×(脂環式構造を有する繰り返し単位数/脂環式炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))としたとき、AがBの30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらには好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下の範囲であるときに低複屈折性に優れている。
さらには、繰り返し単位(a)の連鎖長が特定の分布を有しているもの好ましい。具体的には、A=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の質量平均分子量)、C=(脂環式構造を有する繰り返し単位連鎖の数平均分子量)としたとき、A/Cが好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3〜8、最も好ましくは1.7〜6の範囲であるときに、適度なブロック程度及びランダムの程度を有し、低複屈折性に優れている。
脂環式構造を有する重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと称す)により測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算質量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは50,000〜250,000の範囲であるときに、成形物の強度特性及び低複屈折に優れている。
脂環式構造を有する重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算の質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常2.5以下、好ましくは2.3以下、より好ましくは2以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
脂環式構造を有する共重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50℃〜250℃、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは90℃〜180℃である。
次いで、本発明に係る脂環式構造を有する重合体の製造方法について説明する。
本発明に係る脂環式構造を有する重合体の製造方法は、
(1)芳香族ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、主鎖及び芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法、
(2)脂環式ビニル系化合物と共重合可能なその他のモノマーとを共重合し、必要に応じて水素化する方法等が挙げられる。
上記の方法に従って、本発明に係る脂環式構造を有する重合体を製造する場合には、芳香族ビニル系化合物及び/または脂環式ビニル系化合物(a′)と共重合可能なその他のモノマー(b′)との共重合体で、共重合体中の化合物(a′)由来の繰り返し単位が、D=(芳香族ビニル系化合物及び/または脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位連鎖の質量平均分子量)、E=(炭化水素系共重合体の質量平均分子量(Mw)×(芳香族ビニル系化合物及び/または脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位数/炭化水素系共重合体を構成する全繰り返し単位数))としたとき、DがEの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下である連鎖構造を有する共重合体の、主鎖、及び芳香環やシクロアルケン環等の不飽和環の炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法により効率的に得ることができる。Dが上記範囲外では、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性が劣る。
本発明においては、上記(1)項に記載の方法が、より効率的に脂環式炭化水素系共重合体を得ることができるので好ましい。
上記水素化前の共重合体は、さらには、F=(芳香族ビニル系化合物及び/または脂環式ビニル系化合物由来の繰り返し単位の連鎖の数平均分子量)としたときの、D/Fが一定の範囲であるのが好ましい。具体的には、D/Fが、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.3以上、8以下、最も好ましくは1.7以上、6以下の範囲であるときに、得られる脂環式炭化水素系共重合体の低複屈折性に優れている。
上記化合物(a′)由来の繰り返し単位の連鎖の質量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、文献Macromorecules 1983,16,1925−1928記載の芳香族ビニル系共重合体の主鎖中不飽和二重結合をオゾン付加した後還元分解し、取り出した芳香族ビニル連鎖の分子量を測定する方法等により確認できる。
水素化前の共重合体の分子量は、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算質量平均分子量(Mw)で、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000の範囲であるときに、それから得られる脂環式炭化水素系共重合体の成形物の強度特性に優れており、水素化反応性が向上する。
上記(1)項に記載の方法において使用する芳香族ビニル系化合物の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等が挙げられ、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(2)項に記載の方法において使用する脂環式ビニル系化合物の具体例としては、例えば、シクロブチルエチレン、シクロペンチルエチレン、シクロヘキシルエチレン、シクロヘプチルエチレン、シクロオクチルエチレン、ノルボルニルエチレン、ジシクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレン、α−t−ブチルシクロヘキシルエチレン、シクロペンテニルエチレン、シクロヘキセニルエチレン、シクロヘプテニルエチレン、シクロオクテニルエチレン、シクロデケニルエチレン、ノルボルネニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシルエチレン、α−メチルシクロヘキシルエチレンが好ましい。
これらの芳香族ビニル系化合物及び脂環式ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合可能なその他のモノマーとしては、格別な限定はないが、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物等が用いられ、鎖状共役ジエンを用いた場合、製造過程における操作性に優れ、また得られる脂環式炭化水素系共重合体の強度特性に優れる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー;1−シアノエチレン(アクリロニトリル)、1−シアノ−1−メチルエチレン(メタアクリロニトリル)、1−シアノ−1−クロロエチレン(α−クロロアクリロニトリル)等のニトリル系モノマー;1−(メトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸メチルエステル)、1−(エトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸エチルエステル)、1−(プロポキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸プロピルエステル)、1−(ブトキシカルボニル)−1−メチルエチレン(メタアクリル酸ブチルエステル)、1−メトキシカルボニルエチレン(アクリル酸メチルエステル)、1−エトキシカルボニルエチレン(アクリル酸エチルエステル)、1−プロポキシカルボニルエチレン(アクリル酸プロピルエステル)、1−ブトキシカルボニルエチレン(アクリル酸ブチルエステル)などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、1−カルボキシエチレン(アクリル酸)、1−カルボキシ−1−メチルエチレン(メタクリル酸)、無水マレイン酸などの不飽和脂肪酸系モノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの鎖状ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の化合物(a′)を重合する方法は、格別制限はないが、一括重合法(バッチ法)、モノマー逐次添加法(モノマー全使用量のうちの一部を用いて重合を開始した後、残りのモノマーを逐次添加して重合を進めていく方法)等が挙げられ、特にモノマー逐次添加法を用いると、好ましい連鎖構造を有する炭化水素系共重合体が得られる。水素化前の共重合体は、前述のDの値がより小さい程、及び/または、D/Fが大きな値を示す程、よりランダムな連鎖構造を有する。共重合体がどの程度のランダム性を有しているかは、芳香族ビニル系化合物の重合速度と共重合可能なその他のモノマーの重合速度との速度比で決まり、この速度比が小さい程、よりランダムな連鎖構造を有していることになる。
前記モノマー逐次添加法によれば、均一に混合された混合モノマーが重合系内に逐次的に添加されるため、バッチ法とは異なり、ポリマーの重合による成長過程においてモノマーの重合選択性をより下げることができるので、得られる共重合体がよりランダムな連鎖構造になる。また、重合系内での重合反応熱の蓄積が小さくてすむので重合温度を低く安定に保つことができる。
モノマー逐次添加法の場合、まずモノマーの全使用量のうち、通常0.01質量%〜60質量%、好ましくは0.02質量%〜20質量%、より好ましくは0.05質量%〜10質量%のモノマーを初期モノマーとして予め重合反応器内に存在させた状態で開始剤を添加して重合を開始する。初期モノマー量をこのような範囲にすると、重合開始後の初期反応において発生する反応熱除去を容易にすることができ、得られる共重合体をよりランダムな連鎖構造にすることができる。
上記初期モノマーの重合転化率を70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上になるまで反応を継続すると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。その後、前記モノマーの残部を継続的に添加するが、添加の速度は重合系内のモノマーの消費速度を考慮して決定される。
通常は、初期モノマーの重合添加率が90%に達するまでの所要時間をT、初期モノマーの全使用モノマーに対する比率(%)をIとしたとき、関係式〔(100−I)×T/I〕で与えられる時間の0.5〜3倍、好ましくは0.8〜2倍、より好ましくは1〜1.5倍となる範囲内で残部モノマーの添加が終了するように決定される。具体的には通常0.1〜30時間、好ましくは0.5時間〜5時間、より好ましくは1時間〜3時間の範囲となるように、初期モノマー量と残りモノマーの添加速度を決定する。また、モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。モノマー添加終了直後の全モノマー重合転化率を上記の範囲とすると、得られる共重合体の連鎖構造がよりランダムになる。
重合反応は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等、特別な制約はないが、重合操作、後工程での水素化反応の容易さ、及び最終的に得られる炭化水素系共重合体の機械的強度を考えると、アニオン重合法が好ましい。
ラジカル重合の場合は、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いることができるが、特に樹脂中への不純物等の混入等を防止する必要のある場合は、塊状重合、懸濁重合が望ましい。ラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物、アゾイソブチロニトリル、4,4−アゾビス−4−シアノペンタン酸、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムに代表される水溶性触媒やレドックス開始剤などが使用可能である。
アニオン重合の場合には、開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において、塊状重合、溶液重合、スラリー重合等の方法を用いることができるが、反応熱の除去を考慮すると、溶液重合が好ましい。この場合、重合体及びその水素化物を溶解できる不活性溶媒を用いる。溶液反応で用いる不活性溶媒は、例えばn−ブタン、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
上記アニオン重合の開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
重合反応においては、また、重合促進剤や、ランダマイザー(ある1成分の連鎖が長くなるのを防止する機能を有する添加剤)などを使用できる。アニオン重合の場合には、例えばルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。
上記のラジカル重合やアニオン重合により得られた重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法で回収できる。また、重合時に、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素添加工程に使用することができる。
次いで、不飽和結合の水素化方法について説明する。
水素化前の共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素二重結合や主鎖の不飽和結合等の水素化反応を行う場合は、反応方法、反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、かつ水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒の何れも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化ケイ素等が挙げられ、触媒の担持量は、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体に対して、質量基準にて、通常、0.01〜100部、好ましくは0.05〜50部、より好ましくは0.1〜30部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、かつ、水素化反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環の炭素−炭素二重結合、不飽和環の炭素−炭素二重結合の何れも、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が低下する。
水素化反応終了後に水素化物を回収する方法は特に限定されていない。通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化物の溶液から溶媒を直接乾燥により除去する方法、水素化物の溶液を水素化物にとっての貧溶媒中に注ぎ、水素化物を凝固させる方法を用いることができる。
脂環式構造を有する重合体としては、重合体ブロック〔A〕及び重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体がさらには好ましい。重合体ブロック〔A〕は、下記一般式(7)で表される繰り返し単位〔1〕を含有する。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
Figure 0004155253
上記一般式(7)において、R14は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R15〜R25はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、またはハロゲン基である。なお、R15〜R25は、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25を表す。
上記一般式(7)で表される繰り返し単位〔1〕の好ましい構造は、R14が水素またはメチル基で、R15〜R25のすべてが水素原子である。重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性及び機械的強度に優れる。重合体ブロック〔A〕における、前記繰り返し単位〔1〕以外の残部は、鎖状共役ジエンや鎖状ビニル化合物由来の繰り返し単位を水素化したものである。
重合体ブロック〔B〕は、前記繰り返し単位〔1〕ならびに下記一般式(8)で表される繰り返し単位〔2〕または下記一般式(9)で表される繰り返し単位〔3〕を含有する。重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕の含有量は、好ましくは40〜95モル%、より好ましくは50〜90モル%である。繰り返し単位〔1〕の含有量が上記範囲にあると、透明性及び機械的強度に優れる。ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔2〕のモル分率をm2(モル%)及び、繰り返し単位〔3〕のモル分率をm3(モル%)としたときに、2×m2+m3が、好ましくは2モル%以上、より好ましくは5〜60モル%、最も好ましくは10〜50モル%である。
Figure 0004155253
上記一般式(8)において、R26は水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基を表す。前記一般式(8)で表される繰り返し単位〔2〕の好ましい構造は、R26が水素またはメチル基のものである。
Figure 0004155253
上記一般式(9)において、R27、R28はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。前記一般式(9)で表される繰り返し単位〔3〕の好ましい構造は、R27が水素で、R28がメチル基またはエチル基のものである。
重合体ブロック〔B〕中の前記繰り返し単位〔2〕または繰り返し単位〔3〕の含有量が少なすぎると、機械的強度が低下する。したがって、繰り返し単位〔2〕及び繰り返し単位〔3〕の含有量が上記範囲にあると、透明性及び機械的強度に優れる。重合体ブロック〔B〕は、さらには、下記一般式(10)で表される繰り返し単位〔X〕を含有していてもよい。繰り返し単位〔X〕の含有量は、本発明に係るブロック共重合体の特性を損なわない範囲の量であり、好ましくはブロック共重合体全体に対し、30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
Figure 0004155253
上記一般式(10)において、R29は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R30はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を表し、R31は水素原子を表す。または、R30とR31とは相互に結合して、酸無水物基またはイミド基を形成してもよい。
また、本発明に用いるブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をa、重合体ブロック〔B〕中の繰り返し単位〔1〕のモル分率をbとしたとき、a>bの関係があることが好ましい。これにより、透明性、及び機械的強度に優れる。
さらには、本発明に係るブロック共重合体は、ブロック〔A〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma、ブロック〔B〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmbとした場合に、その比(ma:mb)が好ましくは5:95〜95:5であり、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma:mb)が上記で規定する範囲にある場合に、機械的強度及び耐熱性に優れる点で好ましい。
本発明に用いるブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算質量平均分子量Mwで、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは15,000〜250,000、特に好ましくは20,000〜200,000の範囲である。ブロック共重合体のMwが上記範囲にあると、機械的強度、耐熱性、成形性のバランスに優れる。
ブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwと数平均分子量(以下、Mnと記す。)との比(Mw/Mn)で、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械的強度や耐熱性に優れる。
ブロック共重合体のガラス転移温度Tgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、示差走査型熱量計(DSC)による、高温側の測定値で、好ましくは70℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃、特に好ましくは90℃〜160℃である。
本発明に用いる上記ブロック共重合体は、重合体ブロック〔A〕及び重合体ブロック〔B〕を有し、(〔A〕−〔B〕)型のジブロック共重合体であっても、(〔A〕−〔B〕−〔A〕)型や(〔B〕−〔A〕−〔B〕)型のトリブロック共重合体であっても、重合体ブロック〔A〕と重合体ブロック〔B〕とが、交互に合計4個以上つながったブロック共重合体であってもよい。また、これらのブロックがラジアル型に結合したブロック共重合体であってもよい。
本発明に用いるブロック共重合体は、以下の方法により得ることができる。その方法としては、芳香族ビニル化合物または/及び環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、及び、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物及び脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、芳香族ビニル化合物または/及び脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、及び、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る。そして該ブロック共重合体の芳香環または/及び脂肪族環を水素化する方法や、飽和脂環族ビニル化合物を含有するモノマー混合物、及び、ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物及び脂環族ビニル化合物を除く)を含有するモノマー混合物を重合して、脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック、及び、ビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る方法などが挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としてより好ましいものは、例えば、以下の方法により得ることができる。
(1)第一の方法としては、まず、芳香族ビニル化合物または/及び環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a′〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/及び環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A′〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物及び脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、かつ、芳香族ビニル化合物または/及び環に不飽和結合を有する脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a′〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b′〕を重合して、芳香族ビニル化合物または/及び前記脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B′〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A′〕及び重合体ブロック〔B′〕を有するブロック共重合体を得た後、該ブロック共重合体の芳香環または/及び脂肪族環を水素化する。
(2)第二の方法としては、まず、飽和脂環族ビニル化合物を50モル%以上含有するモノマー混合物〔a〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔A〕を得る。ビニル系モノマー(芳香族ビニル化合物及び脂環族ビニル化合物を除く)を2モル%以上含有し、かつ、飽和脂環族ビニル化合物をモノマー混合物〔a〕中の割合よりも少ない割合の量で含有するモノマー混合物〔b〕を重合して、飽和脂環族ビニル化合物由来の繰り返し単位とビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含有する重合体ブロック〔B〕を得る。これらの工程を少なくとも経て、前記重合体ブロック〔A〕及び重合体ブロック〔B〕を有するブロック共重合体を得る。
上記方法の中で、モノマーの入手容易性、重合収率、重合体ブロック〔B′〕への繰り返し単位〔1〕の導入のし易さ等の観点から、上記(1)の方法がより好ましい。
上記(1)の方法における芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン等や、これらにヒドロキシル基、アルコキシ基などの置換基を有するもの等が挙げられる。中でもスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等が好ましい。
上記(1)方法における不飽和脂環族ビニル系化合物の具体例としては、シクロヘキセニルエチレン、α−メチルシクロヘキセニルエチレン、及びα−t−ブチルシクロヘキセニルエチレン等や、これらにハロゲン基、アルコキシ基、またはヒドロキシル基等の置換基を有するもの等が挙げられる。
これらの芳香族ビニル化合物及び脂環族ビニル系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできるが、本発明においては、モノマー混合物〔a′〕及び〔b′〕の何れにも、芳香族ビニル化合物を用いるのが好ましく、中でも、スチレンまたはα−メチルスチレンを用いるのがより好ましい。
上記方法で使用するビニル系モノマーには、鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエン化合物が含まれる。
鎖状ビニル化合物の具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の鎖状オレフィンモノマー等が挙げられ、中でも、鎖状オレフィンモノマーが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテンが最も好ましい。
鎖状共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これら鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンの中でも鎖状共役ジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの鎖状ビニル化合物及び鎖状共役ジエンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のモノマーを含有するモノマー混合物を重合する場合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の何れの方法で重合反応を行ってもよいが、アニオン重合によるのが好ましく、不活性溶媒の存在下にリビングアニオン重合を行うのが最も好ましい。
アニオン重合は、重合開始剤の存在下、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜100℃、特に好ましくは20℃〜80℃の温度範囲において行う。開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウムなどのモノ有機リチウム、ジリチオメタン、1,4−ジオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物などが使用可能である。
使用する不活性溶媒としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、中でも脂肪族炭化水素類や脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができる。これらの溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用でき、通常、全使用モノマー100質量部に対して200〜10,000質量部となるような割合で用いられる。
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、ある1成分の連鎖が長くなるのを防止するために、重合促進剤やランダマイザーなどを使用することができる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物などをランダマイザーとして使用できる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
リビングアニオン重合によりブロック共重合体を得る方法は、従来公知の、逐次付加重合反応法及びカップリング法などが挙げられるが、本発明においては、逐次付加重合反応法を用いるのが好ましい。
逐次付加重合反応法により、重合体ブロック〔A′〕及び重合体ブロック〔B′〕を有する上記ブロック共重合体を得る場合には、重合体ブロック〔A′〕を得る工程と、重合体ブロック〔B′〕を得る工程は、順次連続して行われる。具体的には、不活性溶媒中で、上記リビングアニオン重合触媒存在下、モノマー混合物〔a′〕を重合して重合体ブロック〔A′〕を得、引き続きその反応系にモノマー混合物〔b′〕を添加して重合を続け、重合体ブロック〔A′〕とつながった重合体ブロック〔B′〕を得る。さらには所望に応じて、再びモノマー混合物〔a′〕を添加して重合し、重合体ブロック〔A′〕をつなげてトリブロック体とし、さらには再びモノマー混合物〔b′〕を添加して重合し、重合体ブロック〔B′〕をつなげたテトラブロック体を得る。
得られたブロック共重合体は、例えばスチームストリッピング法、直接脱溶媒法、アルコール凝固法等の公知の方法によって回収する。重合反応において、水素化反応で不活性な溶媒を用いた場合には、重合溶液そのままを水素化反応工程にも使用することができるので、重合溶液からブロック共重合体を回収しなくてもよい。
上記(1)の方法において得られる、重合体ブロック〔A′〕及び重合体ブロック〔B′〕を有するブロック共重合体(以下、水素化前ブロック共重合体という。)のうち下記の構造の繰り返し単位を有するものが好ましい。
好ましい水素化前ブロック共重合体を構成する重合体ブロック〔A′〕は、下記一般式(11)で表される繰り返し単位〔4〕を50モル%以上含有する重合体ブロックである。
Figure 0004155253
上記一般式(11)において、R32は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R33〜R37は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはハロゲン基を表す。なお、上記〔R33〜R37〕は、R33、R34、R35、R36及びR37を表す。
また、好ましい重合体ブロック〔B′〕は、前記繰り返し単位〔4〕を必ず含み、下記一般式(12)で表される繰り返し単位〔5〕及び下記一般式(13)で表される繰り返し単位〔6〕の何れかを少なくとも1つ含む重合体ブロックである。また、重合体ブロック〔A′〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をa′、ブロック〔B′〕中の繰り返し単位〔4〕のモル分率をb′とした場合、a′>b′である。
Figure 0004155253
上記一般式(12)において、R38は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。
Figure 0004155253
上記一般式(13)において、R39は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R40は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基を表す。
さらには、ブロック〔B′〕中には、下記一般式(14)で表される繰り返し単位〔Y〕を含有していてもよい。
Figure 0004155253
上記一般式(14)において、R41は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R42はニトリル基、アルコキシカルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、またはハロゲン基を表し、R43は水素原子を表す。または、R42とR43とは相互に結合して、酸無水物基、またはイミド基を形成してもよい。
さらには、好ましい水素化前ブロック共重合体は、ブロック〔A′〕を構成する全繰り返し単位のモル数をma′、ブロック〔B′〕を構成する全繰り返し単位のモル数をmb′としたとき、その比(ma′:mb′)が、5:95〜95:5、より好ましくは30:70〜95:5、特に好ましくは40:60〜90:10である。(ma′:mb′)が上記範囲にある場合に、機械的強度や耐熱性に優れる。
好ましい水素化前ブロック共重合体の分子量は、THFを溶媒としてGPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算Mwで、12,000〜400,000、より好ましくは19,000〜350,000、特に好ましくは25,000〜300,000の範囲であるときに、機械的強度が優れており、水素添加率が向上する。
好ましい水素化前のブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、GPCにより測定されるポリスチレン(またはポリイソプレン)換算のMwとMnとの比(Mw/Mn)で、5以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3以下の範囲である。Mw/Mnがこの範囲にあると、水素添加率が向上する。
好ましい水素化前のブロック共重合体のTgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、DSCによる高温側の測定値で、70℃〜150℃、より好ましくは80℃〜140℃、特に好ましくは90℃〜130℃である。
上記の水素化前のブロック共重合体の芳香環やシクロアルケン環などの不飽和環の炭素−炭素不飽和結合、及び主鎖や側鎖の不飽和結合等を水素化する方法及び反応形態に特別な制限はなく、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましく、例えば、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒の何れも使用可能である。
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、または適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化ケイ素等が挙げられ、触媒の担持量は、好ましくは0.01〜80質量%、より好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物としては、例えば、各種金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物等が用いられる。有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウム等が好適に用いられる。
有機金属錯体触媒の例としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン錯体等の金属錯体が使用される。これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.05〜50質量部、特に好ましくは0.1〜30質量部である。
水素化反応は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、かつ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは80℃〜180℃である。また水素圧力は、好ましくは0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、より好ましくは1MPa〜20MPa、特に好ましくは2MPa〜10MPaである。
このようにして得られた、ブロック共重合体の水素化率は、1H−NMRによる測定において、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、芳香環やシクロアルケン環の炭素−炭素不飽和結合の何れも、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上であるときに、得られる共重合体の低複屈折性、熱安定性等が向上する。
水素化反応終了後、ブロック共重合体は、例えば濾過、遠心分離等の方法により反応溶液から水素化触媒を除去した後、溶媒を直接乾燥により除去する方法、反応溶液を、ブロック共重合体にとっての貧溶媒中に注ぎ、凝固させる方法等によって回収できる。
(2)ノルボルネン系開環重合体の水素添加物
本発明で用いることのできる脂環式構造を有する重合体の1つであるノルボルネン系開環重合体の水素添加物は、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加して開環重合を終了してノルボルネン系開環重合体を得、次いで水素添加触媒の存在下で水素添加することにより得られるものである。
本発明において、ノルボルネン系開環重合体水素添加物を構成するノルボルネン系単量体は、ノルボルネン類、ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体、テトラシクロドデセン類やヘキサシクロヘプタデセン類等のノルボルネン環を有する多環の環状オレフィン類であり、下記一般式(15)で代表されるものである。また、これらの単量体は、アルキル基やアルケニル基、アルキリデン基などの炭化水素基;窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、またはイオウ原子を含む基;ノルボルネン環の二重結合以外の二重結合をさらには有してもよい。
Figure 0004155253
上記一般式(15)において、R44〜R47はそれぞれ単独に水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、またはハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子若しくは窒素原子を含む基を表し、R44とR47が結合して環を形成してもよい。pは0、1または2である。qは0または1である。
ノルボルネン類とは、上記一般式(15)におけるp及びqが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノルボルネンなどの無置換またはアルキル基を有するノルボルネン類;5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノルボルネンなどのアルケニル基を有するノルボルネン類;5−フェニルノルボルネンなどの芳香環を有するノルボルネン類;5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニル−6−カルボキシノルボルネン、等の酸素原子を含む基を有するノルボルネン類;5−シアノノルボルネン、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するノルボルネン類;などが挙げられる。
ノルボルネン環以外に環構造を有するノルボルネン誘導体は、前記一般式(15)におけるpが0、qが0または1で、R44とR47が結合してノルボルネン環、5員環以外に環構造を有するノルボルネン系単量体である。具体的には、pが0で、qが1であるジシクロペンタジエン類、pが0で、qが1で、さらには芳香環を有するノルボルネン誘導体を挙げることができる。ジシクロペンタジエン類の具体例としては、5員環部分に二重結合を有するトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、5員環部分の二重結合を飽和させたトリシクロ[4.3.12,5.0]デカ−3−エン、トリシクロ[4.4.12,5.0]ウンダ−3−エンなどを挙げることができる。pが0で、qが1で、さらには芳香環を有するノルボルネン誘導体の具体例としては、テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)などを挙げることができる。
テトラシクロドデセン類は、上記一般式(15)におけるpが1、qが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、テトラシクロドデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセンなどの無置換またはアルキル基を有するテトラシクロドデセン類;8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリデンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロドデセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペンテニルテトラシクロドデセンなどの環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;8−フェニルテトラシクロドデセンなどの芳香環を有するテトラシクロドデセン類;8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;8−シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;8−クロロテトラシクロドデセンなどのハロゲン原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;8−トリメトキシシリルテトラシクロドデセンなどのケイ素原子を含む基を有するテトラシクロドデセン類;などが挙げられる。
ヘキサシクロヘプタデセン類は、上記一般式(15)におけるpが2で、qが0であるノルボルネン系単量体である。具体例としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチルヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセンなどの無置換またはアルキル基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセンなどの環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−フェニルヘキサシクロヘプタデセンなどの芳香環を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル−12−メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12−ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12−カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸無水物などの酸素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−クロロヘキサシクロヘプタデセンなどのハロゲン原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;12−トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセンなどのケイ素原子を含む基を有するヘキサシクロヘプタデセン類などが挙げられる。上記のノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明に係るノルボルネン系開環重合体水素添加物は、ノルボルネン系単量体と共重合可能な単量体由来の繰り返し単位を含んでもよい。ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、格別制限はないが、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体由来の繰り返し単位は、通常0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
本発明に係るノルボルネン系開環重合体水素添加物のシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリイソプレン換算の質量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜100,000、好ましくは13,000〜70,000、より好ましくは14,000〜60,000、特に好ましくは15,000〜50,000である。また、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)として表される分子量分布(MWD)は、通常、1.5〜5.0、好ましくは、1.7〜4.0、より好ましくは1.8〜3.0である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体水素添加物は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリイソプレン換算の質量平均分子量(Mw)が75,000以上である成分の割合が少ないほうが好ましい。具体的には、全重合体中の15質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体水素添加物のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常30〜300℃、好ましくは60〜250℃、より好ましくは80〜200℃の範囲であるときに、得られる成形体の耐熱性、耐光性及び成形加工性に優れている。
本発明に係るノルボルネン開環重合体水素添加物の製造方法は、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒(初期添加触媒)とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加して(追加添加触媒)開環重合を終了してノルボルネン系開環重合体を得、次いで水素添加触媒の存在下で水素添加することを含む。
本発明に適用できるノルボルネン系単量体としては、本発明の水素添加物を構成するノルボルネン系単量体を挙げることができる。ノルボルネン系単量体の割合は、通常50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。上記範囲にノルボルネン系単量体の割合を設定することで、得られる成形体の機械的強度が向上する。
また、本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法は、上記ノルボルネン系単量体を共重合可能な単量体を使用してもよい。ノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体としては、格別制限はないが、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらのノルボルネン系単量体と共重合可能なその他の単量体の割合は、通常0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜10質量%である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、重合反応は、溶媒を用いても、用いなくても可能であるが、用いる場合にはノルボルネン系単量体とその開環重合体を十分に溶解できるものであれば、特に限定されない。中でも不活性有機溶媒中で重合を行うことが望ましい。
不活性有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;n−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;スチレンジクロリド、ジクロルエタン、ジクロルエチレン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。この中でも、好ましくはn−ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;またはこれらのハロゲン化物が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量はノルボルネン系単量体100質量部あたり、通常10〜1000質量部、好ましくは50〜700質量部、より好ましくは100〜500質量部の範囲である。本発明においては、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒(初期添加触媒)とを添加して開環重合を行うことを含む。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法においては、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを混合して添加してもよく、それぞれ別個に添加してもよいが、ノルボルネン系単量体の一部と不活性有機溶媒と助触媒とを反応容器内に仕込んだ後、ノルボルネン系単量体の残部と開環重合触媒とを添加して開環重合を行うことが好ましい。このときのノルボルネン系単量体の仕込み量は、本発明の製造方法に使用するノルボルネン系単量体全量に対して、50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法に適用できる助触媒は、開環重合触媒の助触媒として用いられているものが挙げられる。具体的には、有機アルミニウム化合物や有機錫化合物が挙げられ、好ましくは有機アルミニウム化合物である。
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムや、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルハライドアルミニウムなどが挙げられるが、好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドなどが挙げられる。
これらの助触媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。助触媒の添加量は、ノルボルネン系単量体に対して、0.005〜10モル%、好ましくは0.02〜5モル%である。助触媒を上記範囲で用いることにより、ゲルや高分子量成分の発生が少なく、かつ重合活性が高く分子量の制御が行いやすくなる。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法では、開環重合反応には、ノルボルネン系単量体、開環重合触媒及び助触媒のほかに、分子量調節剤や反応調整剤を添加することができる。
分子量調節剤としては、通常、鎖状モノオレフィンや鎖状共役ジエン類が用いられる。具体的には、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ドデセン、1,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。分子量調節剤の使用量は、重合条件により適宜選択されるが、ノルボルネン系単量体に対して、通常0.2〜10モル%、好ましくは0.4〜7モル%、より好ましくは0.5〜4モル%である。
反応調整剤としては、アルコール、アミン等の活性水素含有極性化合物;エーテル、エステル、ケトン、ニトリル等の活性水素を含有しない極性化合物;から選ばれる少なくとも1種の極性化合物を用いることができる。活性水素含有極性化合物は、ゲルの発生を防ぎ、特定分子量の重合体を得るのに有効であり、中でもアルコールが好ましい。また活性水素を含有しない極性化合物は、機械的強度の低下の原因となる重合体中の低分子量成分の生成を抑制するのに有効であり、中でもエーテル、エステル、ケトンが好ましく、特にケトンがより好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールなどの飽和アルコールや、フェノール、ベンジルアルコールなどの不飽和アルコール等が挙げられるが、好ましくはプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールである。
エステルとしては、例えば、ぎ酸メチル、ぎ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸プロピル、安息香酸イソプロピルなどが挙げられ、これらの中でも酢酸メチルや酢酸エチルが好ましい。
エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルやトリエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられ、これらの中でもジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルが好ましい。
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルフェニルケトン、ジフェニルケトンなどが挙げられ、これらの中でもアセトンやメチルエチルケトンが好ましい。
反応調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、本発明においては、活性水素含有の極性化合物と活性水素を有さない極性化合物を組み合わせるのが好ましく、特にアルコールとケトン、アルコールとニトリル、アルコールとエーテル及びアルコールとエステルの組み合わせが好ましい。反応調整剤の使用量は、ノルボルネン系単量体に対して、通常0.001〜10モル%、好ましくは0.01〜5モル%の範囲である。
開環重合の温度条件は、通常−20〜100℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜80℃、最も好ましくは10〜50℃の範囲で行う。温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると反応の制御が困難になり、またエネルギーコストが高くなる。すなわち、温度条件を−20〜100℃の範囲に調整することで、反応の制御が容易で、エネルギーコストを低く抑えることができると共に、適切な反応速度で重合を進行させることができる。
開環重合の圧力条件は、通常0〜5MPaであり、好ましくは常圧〜1MPa、より好ましくは常圧〜0.5MPaである。
開環重合は、得られる重合体の酸化による劣化、着色などを防止するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われることもある。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法に適用できる開環重合触媒は、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報などに開示されているような公知のノルボルネン系単量体の開環重合触媒である。具体的には、周期表第4〜10族の遷移金属の化合物であり、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体などが挙げられる。
具体例としては、TiCl4、TiBr4、VOCl3、VOBr3、WBr4、WBr6、WCl2、WCl4、WCl5、WCl6、WF4、WI2、WOBr4、WOCl4、WOF4、MoBr2、MoBr3、MoBr4、MoCl4、MoCl5、MoF4、MoOCl4、MoOF4、WO2、H2WO4、NaWO4、K2WO4、(NH42WO4、CaWO4、CuWO4、MgWO4、(CO)5WC(OCH3)(CH3)、(CO)5WC(OC25)(CH3)、(CO)5WC(OC25)(C45)、(CO)5MoC(OC25)(CH3)、(CO)5Mo=C(C25)、(N(C252)、トリデシルアンモニウムモリブデン酸塩、トリデシルアンモニウムタングステン酸塩等が挙げられる。
上記開環重合触媒の中でも実用上、重合活性などの点から、W、Mo、Ti、またはVの化合物が好ましく、特にこれらのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、またはアルコキシハロゲン化物が好ましい。
開環重合触媒の添加量は、ノルボルネン系単量体に対して通常0.001〜5モル%、好ましくは0.005〜2.5モル%、さらには好ましくは0.01〜1モル%である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、ノルボルネン系単量体と開環重合触媒とを添加して開環重合を行い、該単量体添加終了後も該触媒を添加(追加添加触媒)する。開環重合触媒を追加添加する時期としては、例えば、ノルボルネン系単量体添加終了直後や該単量体添加終了後時間が経過した後などが挙げられる。また開環重合触媒を追加添加する方法としては、例えば、一度に開環重合触媒を添加する方法、継続して開環重合触媒を添加する方法、または断続的に開環重合触媒を添加する方法などが挙げられるが、継続して添加する方法が好ましい。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、ノルボルネン系単量体添加終了時の重合転化率は、好ましくは90〜99%、さらには好ましくは93〜97%であり、追加添加触媒量は、ノルボルネン系単量体に対して、好ましくは0.00005モル%以上、さらには好ましくは0.0025モル%以上である。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、反応系内を攪拌して開環重合を行うことが好ましい。反応系内を攪拌しながら開環重合を行うことにより、重合反応熱による急激な温度上昇を好適に抑制することが可能となる。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、目的に応じた分子量あるいは転化率まで重合を進行させてから、開環重合反応を終了する。その後、重合反応液のゲル化等を防ぐために開環重合触媒を不活性化させて、さらにはその後、必要に応じて不活性化させた開環重合触媒を除去する。
開環重合触媒を不活性化する方法としては、例えば、触媒不活性化剤を重合反応液に加える方法などが挙げられる。
触媒不活性化剤としては、水、アルコール類、カルボン酸類、フェノール類などのヒドロキシル基を有する化合物を好ましく例示できる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−プロペン−1−オール、1,2−エタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−エトキシエタノール、2,2−ジクロロ−1−エタノール、2−ブロモ−1−エタノール、2−フェニル−1−エタノールなどの脂肪族、脂環族、芳香族のモノ、ジまたはポリアルコール類などが挙げられる。
カルボン酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、アクリル酸、シュウ酸、マレイン酸、プロパントリカルボン酸、酒石酸、クエン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、フタル酸、ピロメリット酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のモノ、ジまたはポリカルボン酸類などが挙げられる。
フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。これらの触媒不活性化剤は、単独または2種以上混合して使用することができる。
これらのヒドロキシル基を有する化合物のうち、水または水溶性の化合物(例えば、炭素数4以下の化合物)は、重合体溶液に対する溶解性が低く、重合体中に残存しにくいので、好ましい。中でも、水または低級アルコール類が好ましいが、特に水とアルコール類を同時に使用すると、水を単独で使用する場合に比して、触媒不活性化効率が良好であり、またアルコールを単独で用いる場合に比して、触媒残査の析出が容易になるので好ましい。水とアルコールの好ましい使用比率は、水1質量部に対してアルコール類が0.1〜5質量部、特に0.2〜2質量%である。
触媒不活性化剤の量は、重合触媒を不活性化させるのに十分な量であればよく、重合触媒の不活性化に必要な化学量論量に対し、好ましくは1〜20モル当量、より好ましくは2〜10モル当量の範囲である。例えば、開環重合触媒として六塩化タングステン1モルとトリエチルアルミニウム1.5モルを用い、触媒不活性化剤としてメタノールを用いた場合、化学量論上は、メタノールは六塩化タングステン1モルに対して6モル、トリエチルアルミニウム1モルに対して3モルが必要となるので、開環重合触媒を不活性化するのに必要なメタノールの化学量論量は10.5モルとなる。
さらには、重合体溶液に触媒不活性化剤を添加した結果、重合触媒が析出する場合、析出する不溶解成分の凝集核または凝集助剤として、活性白土、タルク、ケイソウ土、ベントナイト、合成ゼオライト、シリカゲル粉末、アルミナ粉末などを添加してもよい。添加量の範囲は任意だが、好ましくは開環重合触媒の質量の約0.1〜10倍である。
触媒不活性化剤の添加は、−50℃〜100℃の任意の温度、好ましくは0〜80℃、0〜0.5MPaの任意の圧力、好ましくは常圧〜0.5MPaで行い、その条件下で、0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間攪拌する。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、開環重合触媒に遷移金属ハロゲン化物を使用する場合は、重合触媒不活性化剤の添加によりハロゲン化水素が発生し、水素添加触媒が被毒され易いため、目的に応じた分子量あるいは転化率まで重合が進行した後、重合触媒不活性化剤の添加前に、予め酸捕捉剤を添加しておくことが好ましい。さらには、重合触媒不活性化剤の添加後であって水素添加反応開始前に、追加で酸捕捉剤を添加することが好ましい。
酸捕捉剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、等の金属水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等の金属酸化物;アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、等の金属;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ハイドロタルサイト(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウムなどの塩類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、等のエポキシ化合物;などが挙げられる。
酸捕捉効果のある塩類としては、アルカリ性を示す塩類であり、強酸と弱アルカリの塩が好ましい。これらの酸捕捉剤の中で、重合触媒不活性化剤の添加前に用いる酸捕捉剤としては、エポキシ化合物と塩類、及びそれらの組み合わせが、酸捕捉効果が優れ好ましい。水素添加時に追加で加える酸捕捉剤としては、塩類が好ましい。水素添加反応時の温度条件で、反応器の腐食を効果的に抑えることができる。
酸捕捉剤の量は、用いた開環重合触媒の加水分解により発生しうるハロゲン化水素の最大量、すなわち化学量論量に対し0.5当量以上、好ましくは1〜100当量、さらには好ましくは2〜10当量である。
酸捕捉剤の添加は、−50℃〜100℃の任意の温度、好ましくは0℃〜80℃、0〜5MPaの任意の圧力、好ましくは常圧〜0.5MPaで行う。引き続く重合触媒不活性化剤の添加及び反応は前述と同様である。
酸捕捉剤を添加した場合は、開環重合触媒を水素添加工程の前に除去せず、重合触媒残渣が共存した状態でも水素添加触媒の活性を維持するという効果もあり、好ましい。
本発明の製造方法において、上記開環重合反応終了後に、水素添加触媒を添加して水素添加反応を行う。水素添加触媒としては、オレフィン化合物や芳香族化合物の水素添加に際して一般に使用されるものであれば格別な制限はなく、通常、不均一系触媒や均一系触媒が用いられる。
不均一系触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、またはこれらの金属を用いてカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒:ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの組み合わせからなる触媒が挙げられる。
均一系触媒としては、例えば、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム金属化合物またはアルキルリチウムの組み合わせからなる触媒、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、酢酸コバルト/トリイソブチルアルミニウム、酢酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、酢酸ニッケル/トリイソブチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウイム、チタノセンクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンクロリド/n−ブチルリチウムなどの組み合わせからなる触媒が挙げられる。
水素添加反応は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。水素化触媒の使用量は、ノルボルネン系開環重合体100質量部あたり、通常0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部の範囲である。水素添加反応は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜10MPaの水素圧下、0〜250℃の温度範囲、1〜20時間の反応時間で行われる。
本発明に係るノルボルネン開環重合体の製造方法において、ノルボルネン系開環重合体水素添加物は以下の手順にて回収される。水素添加触媒として不均一系触媒を用いた場合、上記水素添加反応後に、濾過して水素添加触媒を除去し、続いて凝固乾燥法、または薄膜乾燥機等を用いた直接乾燥法にて得ることができる。ノルボルネン系開環重合体水素添加物は、通常、パウダー状またはペレット状で得ることができる。一方、水素添加触媒として均一系触媒を用いた場合は、水素添加反応後に、アルコールや水を添加して触媒を失活させ、溶剤に不溶化させた後に濾過を行い触媒を除去する。
また、オレフィン系樹脂は、1成分のモノマーで重合された重合体でもよいが、2成分以上のモノマーを用いて重合された共重合体が好ましく、より好ましくは1成分のモノマーで重合された重合体がさらには重合されたブロック共重合体が好ましい。この共重合体については、100成分以上のモノマーを用いてもよいが生産効率及び重合安定性からモノマーの混合は10成分以下が好ましい。さらには好ましいのは、5成分以下である。
また、得られた共重合体は、結晶性高分子でも非晶性高分子でもかまわないが、好ましくは非晶性高分子がよい。
(3)α−オレフィン系重合体
本発明で好ましく用いることのできる熱可塑性樹脂の1つは、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表される環状構造を有するオレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状オレフィン系重合体である。
Figure 0004155253
上記一般式(I)において、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。
Figure 0004155253
上記一般式(II)において、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R1〜R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
前記一般式(II)において、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、Ra及びRbは、それぞれ独立に、下記に示す原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、Ra、Rbの結合はなくなり、両側の炭素原子が結合して5員環を形成する。
1〜R18ならびにRa及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が例示される。これらの炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。
さらには前記一般式(I)において、R15〜R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかも、このようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで、形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
Figure 0004155253
上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、一般式(I)におけるそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常、炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基及びイソプロピリデン基を挙げることができる。
次いで、前記一般式(II)で表される環状オレフィンについて説明する。
前記一般式(II)において、p及びqは0または1以上の整数であり、m及びnは0、1または2である。またR1〜R19は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。ハロゲン原子は、前記一般式(I)におけるハロゲン原子と同じ意味である。
炭化水素基としては、それぞれ独立に炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びオクタデシル基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基及びアラルキル基、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基及びフェニルエチル基が例示される。
また、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基及びプロポキシ基などを例示することができる。これらの炭化水素基及びアルコキシ基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されていてもよい。
ここで、R9及びR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R9及びR13で表される基が、またはR10及びR11で表される基が、互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはプロピレン基(−CH2CH2CH2−)のうちの何れかのアルキレン基を形成している。
さらには、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば、下記のようなR15とR12がさらには芳香族環を形成している基が挙げられる。
Figure 0004155253
ここでqは、一般式(II)におけるqと同義である。
上記のような一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンのより具体的な例を以下に示す。一例として、
Figure 0004155253
で示されるビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネンともいう。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこの化合物に炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルを例示することができる。
さらには他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン誘導体を例示することができる。
この他、トリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、2−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン、5−メチルトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エンなどのトリシクロ[4.3.0.125]デカ−3−エン誘導体、トリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン、10−メチルトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エンなどのトリシクロ[4.4.0.125]ウンデカ−3−エン誘導体、
Figure 0004155253
で示されるテトラシクロ[4.4.0.125.1710]ドデカ−3−エン(以下、単にテトラシクロドデセンともいう。上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)及びこれに炭化水素基が置換した誘導体が挙げられる。
その置換基の炭化水素基としては、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等を例示することができる。
さらには他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
また、テトラシクロ[4.4.0.125.1710]ドデカ−3−エン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.136.027.0913]ペンタデカ−4−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.125.1912.0813]ペンタデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.136.027.0913]ペンタデカ−4,10−ジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.125.1912.0813]ヘキサデカ−3−エン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.136.027.0914]ヘキサデカ−4−エン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.136.11013.027.0914]ヘプタデカ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.129.147.11117.038.01216]エイコサ−5−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.136.11017.11215.027.01116]エイコサ−4−エン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.129.147.11118.038.01217]ヘンエイコサ−5−エン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.129.147.11118.11316.038.01217]ドコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.147.11320.11518.0210.038.01221.01419]ペンタコサ−5−エン及びその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.158.11421.11619.0211.049.01322.01520]ヘキサコサ−6−エン及びその誘導体などが挙げられる。
本発明で使用することのできる前記一般式(1)または一般式(2)で表される環状オレフィンの具体例は、上述したごとくであるが、より具体的なこれらの化合物の構造については、特開平7−145213号公報の段落番号〔0032〕〜同〔0054〕に示されており、本発明においても、同公報に例示されるものを環状オレフィンとして使用することができる。
上記のような一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンの製造方法としては、例えば、シクロペンタジエンと、対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応を挙げることができる。
これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いることができる。
本発明で用いられる環状オレフィンからなる処理前重合体は、前記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンを用いて、例えば、特開昭60−168708号、同61−120816号、同61−115912号、同61−115916号、同61−271308号、同61−272216号、同62−252406号及び同62−252407号などの公報において提案された方法に従い、適宜、条件を選択することにより製造することができる。
そのうち、炭素原子数が2〜20のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、α−オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で、環状オレフィンから誘導される構成単位を、通常は5〜95モル%、好ましくは20〜80モル%の量で含有している。なおα−オレフィン及び環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定される。
ここで、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を構成する炭素原子数が2〜20のα−オレフィンについて説明する。
α−オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、ヘキサ−1−エン、オクタ−1−エン、デカ−1−エン、ドデカ−1−エン、テトラデカ−1−エン、ヘキサデカ−1−エン、オクタデカ−1−エン、エイコサ−1−エンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状α−オレフィン;3−メチルブタ−1−エン、3−メチルペンタ−1−エン、3−エチルペンタ−1−エン、4−メチルペンタ−1−エン、4−メチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルヘキサ−1−エン、4,4−ジメチルペンタ−1−エン、4−エチルヘキサ−1−エン、3−エチルヘキサ−1−エンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
このα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体では、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位と環状オレフィンから誘導される構成単位とが、ランダムに配列して結合し、実質的に線状構造を有している。この共重合体が実質的に線状であって、実質的にゲル状架橋構造を有していないことは、この共重合体が有機溶媒に溶融した際に、その溶液に不溶分が含まれていないことにより確認することができる。例えば、極限粘度[η]を測定する際に、この共重合体が135℃のデカリンに完全に溶融することにより確認することができる。
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンの少なくとも一部は、下記一般式(III)または一般式(IV)で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
Figure 0004155253
上記一般式(III)において、n、m、q、R1〜R18ならびにRa及びRbは、前記一般式(I)におけるそれぞれと同義である。
Figure 0004155253
上記一般式(IV)において、n、m、p、q及びR1〜R19は、前記一般式(II)におけるそれぞれと同義である。
また、本発明に係るα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、必要に応じ、本発明の目的効果を損なわない範囲内で、他の共重合可能なモノマーから誘導される構成単位を有していてもよい。
このような他のモノマーとしては、上記のような炭素原子数が2〜20のα−オレフィンまたは環状オレフィン以外のオレフィンを挙げることができ、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)シクロヘキサ−1−エン及びシクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、ヘキサ−1,4−ジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチルヘキサ−1,4−ジエン、オクタ−1,7−ジエン、ジシクロペンタジエン及び5−ビニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン類を挙げることができる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体において、上記のような他のモノマーから誘導される構成単位を含有させる場合には、通常、20モル%以下であり、10モル%以下の量とすることが好ましい。
本発明で用いられるα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体は、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンと前記一般式(I)または一般式(II)で表される環状オレフィンとを用いて、前述の公報に開示された製造方法により製造することができる。これらのうちでも、この共重合反応を、炭化水素溶媒中で行い、この炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる製造方法が好ましい。
また、この共重合反応では、固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒を用いることもできる。ここで固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、必要により配合される有機アルミニウム化合物とからなる触媒である。ここで周期律表4族の遷移金属としては、例えば、ジルコニウム、チタンまたはハフニウムが挙げられ、これらの遷移金属が少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を含む配位子を有している触媒である。シクロペンタジエニル骨格を含む配位子の例としては、シクロペンタジエニル基、インデニル基、テトラヒドロインデニル基、フロオレニル基を挙げることができる。ここで、シクロペンタジエニル基にはアルキル基が置換していてもよい。これらの基は、アルキレン基などの他の基を介して結合していてもよい。また、シクロペンタジエニル骨格を含む配位子以外の配位子の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
また、有機アルミニウムオキシ化合物及び有機アルミニウム化合物は、通常ポリオレフィン類の製造に使用されるものを用いることができる。このような固体状の周期律表4族のメタロセン系触媒については、例えば、特開昭61−221206号、同64−106号及び同2−173112号公報等に記載されているものを使用することができる。
本発明において、水素添加処理の処理前重合体として用いられるグラフト変性物は、上記のα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物である。
ここで用いられる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(登録商標))などの不飽和カルボン酸、さらにはこれら不飽和カルボン酸の誘導体例えば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが例示される。
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
これらの中では、α,β−不飽和ジカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、マレイン酸、ナジック酸(登録商標)及びこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
このようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体のグラフト変性物は、所望の変性率になるように、変性剤をこの共重合体に配合してグラフト重合させ製造することもできるし、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性のエチレン・環状オレフィンランダム共重合体とを所望の変性率になるように混合することにより製造することもできる。
α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体と変性剤とからグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。例えば、溶融状態にあるエチレン・環状オレフィンランダム共重合体に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいはエチレン・環状オレフィンランダム共重合体の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などによりグラフト変性物を得ることができる。
このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。また、グラフト反応は、有機過酸化物及びアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
本発明では、水素添加処理の処理前重合体として、上記のようなα−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体、及びそのグラフト変性物の何れかを単独で用いることができ、また同じグループの2種以上や、異なる2以上のグループを組み合わせて用いることもできる。
本発明に係る環状オレフィン系重合体は、DSCで測定(昇温速度10℃/min)したガラス転移温度(Tg)が、60〜230℃であることが好ましく、さらには、70〜210℃であることが好ましい。
また、環状オレフィン系重合体は、非晶性または低結晶性であり、X線回折法によって測定される結晶化度が、通常20%以下であり、好ましくは10%以下、さらには好ましくは2%以下である。
135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]は、好ましくは0.01〜20dl/gであり、より好ましくは0.05〜10dl/g、さらには好ましくは0.08〜5dl/gである。
軟化点は、サーモメカニカルアナライザーで測定した軟化点(TMA)として、通常30℃以上であり、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらには好ましくは90〜250℃、特に好ましくは100〜200℃である。ここで、軟化点の測定は、デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により行った。すなわちシート上に荷重49gをかけた石英製針を乗せ、5℃/minの速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度を軟化点(TMA)とした。
上記の環状オレフィン系重合体の中では、α−オレフィン・環状オレフィンランダム共重合体を水添処理して得られ、軟化点(TMA)が80℃以上であり、かつ極限粘度[η]が0.05〜10dl/gであるものが好ましい。
本発明における水添処理は、前記した処理前重合体を、環状飽和炭化水素を主成分とする溶媒中で、水素添加触媒の存在下に、水素添加することが好ましい。処理前重合体の溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、デカリン、シクロヘプタン、シクロペンタン、n−ヘプタン、n−オクタンなどが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。
これらの中では、シクロヘキサン、n−ヘキサンが好ましく、特に、シクロヘキサンを50質量%以上含有する溶剤が好ましい。
水素添加触媒金属としては、例えば、Pt、Rh、Pd、Cu、Y、Fe、Ru、W、Znなどが挙げられる。好ましくは、ラニーニッケル、活性炭担持パラジウム、ウィルキンソン錯体が用いられる。
水素添加の方法は、例えば、処理前重合体を1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%溶融した前記水素添加用の溶媒に、この重合体に対して0.5〜10質量%の濃度の触媒(金属として)を加え、反応温度20〜200℃、好ましくは40〜120℃、水素分圧0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaにおいて行う。反応時間は、要求される色相の改善度の応じて適宜選ばれるが、通常、5分〜12時間、好ましくは5分〜6時間の間で選ばれる。反応後、触媒は濾過などにより除去される。
<添加剤>
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂または樹脂の混合物に、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐候安定剤、近赤外線吸収剤、酸素スカベンジャーなどの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラー等の添加剤を添加することができる。以下、添加剤について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂または樹脂の混合物に、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、耐候安定剤、近赤外線吸収剤、酸素スカベンジャーなどの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラー等の添加剤を添加することができる。以下、添加剤について説明する。
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、フリーラジカルなど酸化促進因子を補足する機能を有する化合物であり、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を添加することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成形時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る樹脂100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,4−ジ−tert−ペンチルフェニル−3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジアート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
<耐光安定剤>
耐光安定剤は、光化学反応によって発生したフリーラジカルを補足する機能を有する化合物であり、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、レンズの透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤を用いるのが好ましい。
ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSと記す。)としては、一官能、多官能等1分子にヒンダードアミン構造が少なくとも1つ以上あればよく、高分子量体にヒンダードアミン構造がペンダントされた樹脂組成物でもよい。高分子量HALSの分子量は、THFを溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1000〜10000であるものが好ましく、2000〜5000であるものがより好ましく、2800〜3800であるものが特に好ましい。
Mnが1000以上、好ましくは2000以上、より好ましくは2800以上であると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して添加する際に揮発しにくいため所定量の添加が可能となり、射出成形等の加熱溶融成形時に発泡やシルバーストリークが生じにくくなり加工安定性が向上する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生しにくい。
Mnを10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは3800以下とすると、ブロック共重合体への分散性が向上して、レンズの透明性が向上し、耐光性改良の効果が向上する。すなわち、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
このようなHALSの具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートや1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALSなどが挙げられる。
本発明に係る樹脂に対する上記HALSの添加量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20質量部、より好ましくは0.02質量部〜15質量部、特に好ましくは0.05質量部〜10質量部である。添加量を0.01質量部以上とすると耐光性の改良効果が得られ、屋外で長時間使用しても着色が生じない。一方、HALSの添加量を20質量部以下とすると、その一部がガスとなって発生することがなく、樹脂への分散性が向上して、レンズの透明性が向上する。
<紫外線吸収剤>
本発明に用いられる紫外線吸収剤について説明する。
紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミディルメチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールなどが耐熱性、低揮発性などの観点から好ましい。
本発明に係る樹脂に対する上記紫外線吸収剤の添加量は、重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20質量部、より好ましくは0.02質量部〜15質量部、特に好ましくは0.05質量部〜10質量部である。添加量を0.01質量部以上とすると耐光性の改良効果が得られ、屋外で長時間使用しても着色が生じない。
しかし、本発明に係る光学素子を屋外で使用しない場合、すなわち、CD−ROMやDVD−ROMなどの光学装置のピックアップなどに組み込み使用する場合には、紫外線吸収剤の添加は必須ではなく、無添加でもよい。
<低ガラス転移温度化合物>
添加剤として、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を10%未満添加することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。具体的には、軟質重合体及びアルコール性化合物から選ばれる少なくとも1種類の添加剤を添加することにより、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
<軟質重合体>
軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であることが好ましい。
これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、下記の重合体が挙げられる。
(1)液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体。
(2)ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体。
(3)ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体。
(4)ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、等のケイ素含有軟質重合体。
(5)ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体。
(6)ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコール及びアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体。
(7)エチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、等のエポキシ系軟質軟質重合体。
(8)フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、等のフッ素系軟質重合体。
(9)天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体。
なお、上記の軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
<アルコール性化合物>
アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合またはエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらには好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。
2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α,β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。
<有機または無機フィラー>
有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β−不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。
無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化ケイ素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
なお、上記の軟質重合体、アルコール性化合物及び有機または無機フィラーの化合物の添加量は、本発明に係る樹脂組成物に含まれる樹脂及びその他の添加剤の組み合わせによって決まるが、樹脂組成物を成形した成形品の透明性、耐熱性、高温高湿下における白濁防止の観点から、樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部、好ましくは0.02質量部〜5質量部、特に好ましくは0.05質量部〜2質量部の割合で添加される。また、これらの添加剤については、無添加でも本発明の目的を達成することが可能である。
<その他の添加剤>
本発明に係る樹脂組成物には、必要に応じて、その他の添加剤として、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などを添加することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して用いることができ、その添加量は本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
<樹脂組成物の調製方法>
本発明に係る樹脂組成物の調製方法について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、成形する工程(成形プロセス)の前に特定の加工処理をすることが好ましく、加工処理の段階で通常樹脂に添加される可塑剤、酸化防止剤、その他の添加剤を加えてもよい。
本発明に係る樹脂組成物の調製方法としては、下記の混練プロセスまたは混合物を溶媒に溶解、溶媒除去、乾燥を経て組成物を得るプロセス等が好ましい調製方法として挙げられるが、さらには好ましい調製方法は、混練プロセスである。また、混練プロセスとして、通常の樹脂の添加に用いるプロセスを用いることができる。例えば、ロール、バンバリーミキサ、二軸混練機、ニーダールーダなどを用いることができるが、好ましくは、バンバリーミキサ、二軸混練機、ニーダールーダ等が挙げられる。
樹脂の酸化を防ぐ目的で、密閉系で混練可能な装置が好適に使用され、さらには好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性ガス化で混練プロセスを行うことが望ましい。
なお、上記に説明した混練以外にも、樹脂及び添加剤を混合して得られた樹脂組成物を溶媒に溶かし、溶解後乾燥することによっても本発明に係る樹脂組成物は調整可能である。このとき、樹脂を溶解する溶媒は、樹脂を溶解可能な溶媒であれば何でもよく、その種類は限定されない。
<成形型>
本発明に係る成形型は、成形型の温度を検知する温度検知手段と、第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、前記加熱手段で加熱される第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を冷却する冷却手段と、前記温度検知手段で検知された温度に基づき、前記加熱手段及び冷却手段を制御する制御手段とを備えた成形型(以下、ヒートサイクル成形型という)または第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方は、フッ素含有化合物層に接する表面加工層と、前記表面加工層に隣接して設けられた断熱層とを備えた成形型(以下、断熱成形型という)が好ましく用いられる。
ヒートサイクル成形型について、図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る成形型の形状及び構造を説明する側方断面図である。この成形型1は、第1型部材として機能する固定型2と第2型部材として機能する可動型3とを備える。固定型2に対して可動型3を突き合わせることにより、両型2、3間に部材成形空間であるキャビティCAが形成され、その周囲の一部には、キャビティCAに連通するゲートGAが形成される。このキャビティCAには、ゲートGAを介して溶融された樹脂組成物が供給され、内部を充填する。
固定型2は、中央側の第1部材2Aと周辺側の第2部材2Bとからなり、両部材2A,2Bは、ともに単一の鋼材で形成されており、相互に一体的に固定されている。このうち、第1部材2Aは、可動型3に対向する滑らかな凹面の成形面21aを有しており、第2部材2Bは、成形面21aの周囲に配置される環状溝の成形面21bを有している。前者の成形面21aは、成形品である回折レンズ(不図示)の一方のレンズ面に対応し、後者の成形面21bは、この回折レンズの周囲に設けたフランジに対応する。
可動型3は、中央側の型部材である突き出し部3Aと、この突き出し部3Aを周囲から支持する型本体3Bとからなる。このうち、突き出し部3Aに形成された中央側の成形面31は、上述の回折レンズのうち、他方のレンズ面に対応するものであり、全体として凹面になっており、輪帯状の回折パターンDPを有している。微細パターンである回折パターンDPは、通常数μmの深さを有している。一方、型本体3Bによって形成される周囲側の成形面32は、回折レンズの周囲のフランジに対応する。すなわち成形面31は本発明の表面加工層として機能する。
突き出し部3Aは、型本体3Bに設けた孔33中に嵌合した状態で軸AX方向に摺動可能になっている。両型2、3を離間させる型開き後において、この突き出し部3Aを型本体3Bに対して固定型2側に移動させることにより、可動型3側に残る回折レンズを簡単に離型させることができる。
型本体3Bには、温度調節媒体路34が孔33のほぼ全面と対向するように設けられている。温度調節媒体路34には加熱冷却装置35から水や油、エチレングリコールなどの温度調節媒体を流し、突き出し部3A及び成形面31を加熱し、冷却することが可能となっている。すなわち温度調節媒体路34及び加熱冷却装置35は、本発明の加熱手段及び冷却手段として機能する。
また、成形面31近傍には温度センサ4が設けられており、温度センサ4で測定された突き出し部3Aの温度は、制御装置5によりモニターされている。制御装置5は、図示しないCPUやフレームメモリ等から構成され、制御プログラムを読み込んで、加熱冷却装置35を制御する。すなわち制御装置5は、本発明の制御手段として機能する。
次に、図1に示したヒートサイクル成形型を用いた光学素子の成形を説明する。図2はヒートサイクル成形型の動作中の温度変化を示すタイムチャートである。成形型1が閉じると、成形機本体(図示せず)から制御装置5に対し閉信号が出力される(時刻t1)。これを受けた制御装置5は加熱冷却装置35に加熱信号を発し、図示しない加熱ヒータに通電され温度調節媒体路34中の温度調節媒体が加熱される。すると、突き出し部3Aは温度調節媒体の熱伝導により間接的に加熱され全体的に均一に昇温する。ここで突き出し部3Aの温度は温度センサ4により管理される。
突き出し部3Aの温度が樹脂組成物のガラス転移点Tgよりも高い設定温度THになると、制御装置5から加熱完了信号が加熱冷却装置35に出力され、加熱ヒータがOFFになる。これと同時に、成形機本体にも加熱完了信号が送出され、成形機は成形型1へ溶融した樹脂組成物を射出する(時刻t2)。このとき、突き出し部3Aの成形面31が樹脂組成物のガラス転移点よりも高い温度THに加熱されているため、成形面31と樹脂流動層との温度差に起因するスキン層の発生が抑制され、金型表面形状に対して高い充填性が得られるものである。
射出完了後には、成形機本体から制御装置5に対し射出完了信号が出力される(時刻t3)。これを受けて制御装置5は加熱冷却装置35に冷却信号を発し、温度調節媒体路34中の温度調節媒体が冷却される。すると、突き出し部3Aは冷却され、ひいては成形面31も冷却される。成形面31が所定の冷却完了温度TLに冷却されたら、成形型1を開いて突き出し部3Aを型本体3Bに対して固定型2側に移動させることにより成形体を取り出す。同時に、成形機本体からの金型開信号を受けた制御装置5は加熱冷却装置35に冷却を停止するよう指令する(時刻t4)。
以上の成形サイクルを繰り返すことにより、光学素子を成形する。
断熱成形型について、図3を用いて説明する。図3は、断熱成形型の概略構成を示す断面図である。なお、図1で説明したものと同じ部材には同一符号を付して説明を省略する。
突き出し部3Aは、第1材料からなる直径4mm程度の円柱状の母材部分36aを、第2材料からなる約50μm程度の厚さの表面膜36bで被覆した構造となっている。
ここで、母材部分36aは、従来用いられているプレハードン鋼すなわち低炭素鋼(熱伝導率:25乃至35W/m・K程度)等に比較して低熱伝導率の材料で形成されている。母材部分36aの材料としては、例えばTi−6Al−4V(64Ti)が好適であり、その熱伝導率は、7.1W/m・Kとなっている。このとき母材部分36aは、本発明の断熱層として機能するものである。また、表面膜36bは、特開2001−353729号公報及び特開2001−355077号公報に開示された無電解メッキ法を用いて形成した無電解メッキ層とすることができる。
なお、母材部分36aは、64Tiからなるものとしたが、その他の材料であっても、適当な強度を有し熱伝導率が20Wm・K以下のものであれば、金属材料であるステンレス鋼やセラミックス系材料であるジルコニアセラミックス、耐熱性樹脂材料であるポリイミド等であってもよく、低炭素鋼で形成された母材を前述のジルコニアやポリイミド等で被覆したものであってもよい。また、成形面31をセラミックス系材料や耐熱性樹脂材料で形成するようにしてもよい。
図2に示した断熱成形型を用いた光学素子の成形について説明する。閉じた成形型1に、溶融した樹脂組成物(溶融プラスチック樹脂)を、ゲートGAを介して固定型2、可動型3間のキャビティCA中に導入し、キャビティCAを溶融プラスチック樹脂で充填する。
次に、キャビティCA中に充填された溶融プラスチック樹脂を放熱・冷却する。キャビティCA中に射出された溶融プラスチック樹脂の温度は、通常200〜300℃であり、通常100〜180℃に保持された両型2、3の成形面21a、21b、31、32に接すると、溶融プラスチック樹脂が冷却されて硬化する。この際、可動型3については、突き出し部3Aが小さな熱伝導率を有するものとなっているので、突き出し部3Aの成形面31に接する溶融プラスチック樹脂が急冷されず安定して冷却されるので、成形面31に形成された回折パターンDPに溶融プラスチック樹脂がほぼ完全に入り込む。
次に、キャビティCA中に充填された溶融プラスチック樹脂が完全に硬化するまで待ち、成形型1を開いて回折レンズを取り出す。
図1及び図3に示した固定型2の他の実施の形態について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の他の実施の形態に係る成形型の概略構成を示す断面図である。なお、図4に示した成形型において、可動型3は、図1に示したヒートサイクル成形型及び図3に示した断熱成形型のいずれにおいても使用することができるので、可動型3の詳細は省略している。
他の実施の形態に係る固定型2は、単一の鋼材で一体成形された部材2Cで構成されており、図1及び図3に示した第1部材2Aと周辺側の第2部材2Bとからなる構成と異なる。また、可動型3に対向する凹面の成形面21aには、図1及び図3に示した輪帯状の回折パターンDPと同様の数μmの深さを有している回折パターンDP2を有している。また部材2Cは、図1及び図3に示した第2部材2Bと同様に、成形面21aの周囲に配置される環状溝の成形面21bを有している。
<フッ素含有化合物層>
図1及び図3で示した成形型1のキャビティCAとの接触面、すなわち成形面21a、21b、31及び32のうちの少なくとも1つの成形面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層が設けられている。以下、フッ素含有化合物層について説明する。
フッ素含有化合物層は、成形面21a、21b、31及び32のうちの少なくとも1つの成形面に設けられているが、好ましくは微細パターンである回折パターンDPが形成された成形面31を含む複数の成形面に設けられている。
フッ素含有化合物層の平均層厚は、3nm以上20nm以下であり、好ましくは3nm以上10nm以下である。平均層厚が3nmに満たないと、成形型から成形体を取り出す際に、成形体の取り出しが困難になったり、取り出した成形体に欠けや割れが生じる。一方、平均層厚が20nmを越えると、取り出した成形体に欠けや割れが生じたり、成形面の形状精度が十分でなく、所期の光学性能が得られない場合があり、特に成形面の曲率が大きい場合には顕著になる。
なお、層厚は、例えばX線光電子分光測定装置(XPS)で検出される光電子エネルギーのエネルギー値と数を測定することによって特定される、フッ素原子の存在比率から求めることが可能である。本発明では、XPS測定で測定された、任意の10点の層厚の平均を平均層厚とする。
本発明で用いられるフッ素含有化合物としては、旭硝子社製「サイトップCTL−107M」、ダイキン工業社製「オプツールDSX」、国際公開WO2002/077116に記載の(A)加水分解性金属アルコキシド及びその加水分解物、(B)加水分解性金属アルコキシド(A)と反応する官能基を有するパーフルオロアルキル基含有のフッ素化合物、及び(C)密着性向上剤からなる表面処理剤、特開2000−89500号公報に記載のフッ素樹脂等の含フッ素ポリマーが挙げられる。成形型表面にフッ素含有化合物を有する層または膜を形成するに先立ち、成形型表面は、SiO2、ITOなどのスパッタリングなどにより表面を改質したり、界面活性剤を用いた洗浄、フッ酸及びアルカリ溶液を用いた洗浄、炭酸カルシウム、等の無機粒子による研磨などにより、成形体表面を清浄化することにより、成形型とフッ素含有化合物との接着性を向上させてもよい。
フッ素含有化合物層の形成は、フッ素含有化合物を含む塗布液を塗布する塗布工程によりフッ素含有化合物を含む層を形成する方法が簡便なので好ましく用いられ、具体的には、成形型の表面に、フッ素含有化合物を含む塗布液を塗布し、乾燥することによりフッ素含有化合物を含む層が形成される。塗布方法としては、公知の塗布方法、例えば、スプレー塗布、スピン塗布、浸漬塗布、ロールコート塗布、グラビアコート塗布、カーテンフロー塗布等を用いることができるが、均一な離型性及び良好な転写性の観点から、溶剤で希釈されたフッ素含有化合物からなる塗布液への浸漬塗布が好ましい。
浸漬塗布は、成形型を塗布液に所定時間浸漬する浸漬工程と、前記浸漬工程で浸漬された成形型を、前記塗布液から引き上げる引き上げ工程とを含む。浸漬工程における浸漬時間は、浸漬する成形型の形状や塗布液の温度等により適宜調整されるが、回折パターン31の最深部への塗布液の浸透を考慮して、1分以上が好ましい。引き上げ工程は、前記塗布液から定速で引き上げられるのが好ましく、引き上げ速度は目標とするフッ素含有化合物の厚さに応じて適宜調整されるが、0.1mm/秒乃至5mm/秒の定速で引き上げられるのが好ましい。
フッ素含有化合物の塗布に用いられる塗布液は、フッ素含有化合物の溶液、懸濁液または分散液が挙げられる。この塗布液は、通常、溶剤を含有する。溶剤としては、フッ素含有化合物を分散、溶解または懸濁することができれば特に限定されないが、好ましくは、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、ジクロロペンタフルオロプロパン(HCFC−225)等のフッ素系溶媒、エタノール等のアルコールなどを挙げることができる。
フッ素含有化合物の溶剤に対する濃度は、塗布するフッ素化合物の目標とする厚さに応じて適宜調整されるが、0.05質量%乃至0.5質量%の濃度とすることが、良好な離型性及び転写性が長期に亘って得られる点で好ましい。
この塗布液には、フッ素含有化合物の他に、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボン、セメント等の微粉末充填剤、チタン、アルミニウム、ケイ素等のアルコキシド、その他の低分子量ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂の微粉末等を、硬度調整剤または増量剤等として添加してもよい。また、公知の架橋剤を加えることにより、硬度調整を行ってもよい。
前記塗布工程によりフッ素含有化合物を含有する塗布液が塗布された後、乾燥工程を経て成形型にフッ素含有化合物層が形成される。乾燥工程は、特に制限はないが、室温での自然乾燥が好ましい。フッ素含有化合物層が形成された後、浸漬工程で使用した塗布液に含まれる溶剤で成形型を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。洗浄工程は、溶剤で構成される洗浄液に所定時間浸漬することが好ましい。
<光学素子>
本発明の光学素子は、上記の製造方法により得られるが、光学部品への具体的な適用例としては、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルバーサタイルディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサ用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルバーサタイルディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
<ピックアップ装置>
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
本発明の光学素子の用途の一例として、光ディスク用のピックアップ装置に用いる対物レンズとして用いられる例を図5を用いて説明する。
本実施の形態では、使用波長が405nmのいわゆる青紫色レーザ光源を用いた「高密度な光ディスク」をターゲットとしている。この光ディスクの保護基板厚は0.1mmであり、記憶容量は約30GBである。
図5は、本発明に係る光学素子を適用した光ピックアップ装置の一例を示す模式図である。
光ピックアップ装置11において、レーザダイオード(LD)12は、光源であり、波長λが405nmの青紫色レーザが用いられるが、波長が390nm〜420nmである範囲のものを適宜採用することができる。
ビームスプリッタ(BS)13はLD12から入射する光源を対物レンズ(OBL)14の方向へ透過させるが、光ディスク(光情報記録媒体)15からの反射光(戻り光)について、センサレンズ(SL)16を経て受光センサ(PD)17に集光させる機能を有する。
LD12から出射された光束は、コリメータ(COL)18に入射し、これによって無限平行光にコリメートされたのち、ビームスプリッタ(BS)13を介して対物レンズOBL14に入射する。そして光ディスク(光情報記録媒体)15の保護基板15aを介して情報記録面15b上に集光スポットを形成する。次いで情報記録面15b上で反射したのち、同じ経路をたどって、1/4波長板(Q)19によって偏光方向を変えられ、BS13によって進路を曲げられ、センサレンズ(SL)16を経てセンサ(PD)17に集光する。このセンサによって光電変換され、電気的な信号となる。
なお対物レンズOBL14は、樹脂によって射出成形された単玉の本発明に係る光学素子である。そしてその入射面側に絞り(AP)110が設けられており、光束径が定められる。ここでは入射光束は3mm径に絞られる。そして、アクチュエータ(AC)111によって、フォーカシングやトラッキングが行われる。
なお、光情報記録媒体の保護基板厚、さらにはピットの大きさにより、対物レンズOBL14に要求される開口数も異なる。ここでは、高密度な、光ディスク(光情報記録媒体)15の開口数は0.85としている。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<樹脂組成物Aの作成>
100Lステンレス製ポットにメタノール60Lを入れ、別途設置した攪拌機にて攪拌を行い、このビーカー内へアペル5014DP(三井化学(株)製:示差走査熱量測定装置(DSC)により求められたTg:126℃)の15%シクロヘキサン溶液3Lを60分かけて滴下した。滴下終了後60分間攪拌し、析出したポリマーを50cmヌッチェで濾取した。その後50℃で6時間減圧乾燥することにより、添加剤を除去した樹脂Aを432.8g得た。
樹脂A100重量部に対し、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)0.5質量部をポリラボシステム(英弘精機(株))を用いて窒素雰囲気下190℃で、10分間混練を行った。前記と同一条件で10バッチ混練を行って樹脂組成物Aを作製し、粉砕した。
<樹脂組成物Bの作成>
ゼオネックス330R(日本ゼオン(株)製:DSCにより求められたTg:123℃)の15%シクロヘキサン溶液を使用した以外は<樹脂組成物Aの作成>と同様の添加剤除去操作を行い、添加剤を除去した樹脂Bを436.1g得た。
樹脂B100質量部に対し、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.5質量部を添加し、樹脂組成物Aと同様の方法で樹脂組成物Bを作製して粉砕した。
<樹脂組成物Cの作成>
十分に乾燥し窒素置換した、攪拌装置を備えたステンレス鋼製重合器に、脱水シクロヘキサン320質量部、スチレン60質量部、及びジブチルエーテル0.38質量部を仕込み、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.36質量部を添加して重合反応を開始した。1時間重合反応を行った後、反応溶液中に、スチレン8質量部とイソプレン12質量部とからなる混合モノマー20質量部を添加し、さらには1時間重合反応を行った後、反応溶液にイソプロピルアルコール0.2質量部を添加して反応を停止させた。このとき得られるブロック共重合体のMwは102,100で、Mw/Mnは1.11であった。
次いで、上記重合反応溶液400質量部を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として、シリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(日揮化学工業社製;E22U、ニッケル担持量60%)10質量部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらには溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度を高く160℃に設定し、圧力4.5MPaにて8時間反応することにより、芳香環まで水素化を行った。水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、シクロヘキサン800質量部を加えて希釈し、該反応溶液を3500質量部のイソプロパノール(クラス1000のクリーンルームで、孔径1μmのフィルターにてろ過したもの)中に注いでブロック共重合体を析出させ、ろ過により分離回収し、80℃にて48時間減圧乾燥させた。こうして得られるブロック共重合体は、スチレン由来の繰り返し単位を含有するブロック(以下、Stという)、及びスチレンとイソプレン由来の繰り返し単位を含有するブロック(以下、St/Ipという)とからなる2元ブロック共重合体であり、それぞれのブロックのモル比は、St:St/Ip=69:31(St:Ip=10:21)であった。該ブロック共重合体のMwは85,100、Mw/Mnは1.17、主鎖及び芳香環の水素化率は99.9%で、Tgは126.5℃であった。
以上の重合体の製造により得られるブロック共重合体100質量部に対し、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン・ブロック共重合体(クラレ社製、セプトン2002)0.1質量部、及び酸化防止剤としてテトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)0.1質量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、TINUVIN P)を0.1質量部、さらにはHALSとして、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物〔HALS(A)、Mn=3,000〕0.1質量部をそれぞれ添加し、2軸混練機(東芝機械社製、TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィードレート10kg/時間)で混練し、ストランド状に押し出し、これを水冷してペレタイザーで切断し、ペレット化して樹脂組成物Cを作成した。
<樹脂組成物Dの作成>
市販のポリカーボネート樹脂100質量部を、樹脂組成物Aと同様の方法で樹脂組成物Dを作製して粉砕した。
<成形型の加工>
ダイキン工業社製「オプツールDSX」をダイキン工業社製「デムナムソルベント」で希釈して、0.1質量%乃至0.5質量%の「オプツールDSX」希釈溶液を作成した。「オプツールDSX」希釈溶液に図1及び図3に示した成形型を約1分間浸漬した後、引き上げ速度を0.1mm/秒乃至2mm/秒の定速に維持して成形型を引き上げ、約1時間室温で放置した後、「デムナムソルベント」溶液に浸漬して引き上げた後室温放置し、種々の平均膜厚の「オプツールDSX」コーティング層(フッ素含有化合物層)を有する成形型を作成した。
<ヒートサイクル成形型を用いた光学素子の製造>
上述した作成方法で作成された樹脂組成物A、B、C及びDそれぞれの粉砕物を用いて光学用樹脂レンズを作製した。光学用樹脂レンズの作製は、<成形型の加工>において加工されて各種のコーティング層の平均膜厚を有する成形型を装着した、図1に示したヒートサイクル成形型を装着したインライン射出成形機を用い、型締圧力50t、加熱時の型温度160℃、冷却時の型温度120℃、射出圧力69.0MPaの条件下で射出成形を行い、直径1cmのレンズを作製した。なお、樹脂組成物及びコーティング層の平均膜厚の組み合わせを下記表1に示す。
<評価>
1ショット目、5000ショット目、20000ショット目それぞれの成形後の光学用樹脂レンズ表面を目視観察し、下記のようにランク評価した。得られた結果を表1に示す。なお、1回の成形を1ショットと称する。
Figure 0004155253
(ランク評価)
○:欠損がない(実用可)
△:光学素子の表面に僅かに荒れが観察される(実用可)
×:欠損が明らかに観察される(実用不可)
<断熱成形型を用いた光学素子の製造>
図3に示した断熱成形型を装着したインライン射出成形機を用い、表1に示した成形型のコーティング層の平均膜厚及び樹脂組成物と同様の組み合わせで、各種の直径1cmの光学用樹脂レンズを作製したが表1と同様の結果が得られた。なお、型締圧力50t、型温度120℃、射出圧力69.0MPaの条件下で射出成形を行った。
以上から、比較例に比べて、本発明に係る製造方法は優れた光学特性を有する光学素子を長期に亘って製造できることが明らかである。
本発明に係る成形型の形状及び構造を説明する側方断面図である。 ヒートサイクル成形型の動作中の温度変化を示すタイムチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係る成形型の概略構成を示す断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る成形型の概略構成を示す断面図である。 本発明に係る光学素子が適用された光ディスク用のピックアップ装置の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 成形型
2 固定型
2A 第1部材
2B 第2部材
21a、21b 成形面
3 可動型
3A 突き出し部
3B 型本体
31、32 成形面
34 温度調節媒体路
35 加熱冷却装置
36a 母材部分
36b 表面膜
4 温度センサ4
5 制御装置5
11 光ピックアップ装置
12 レーザダイオード
13 ビームスプリッタ
14 対物レンズ
15 光ディスク
15a 保護基板
15b 情報記録面
16 センサレンズ
17 センサ
18 コリメータ
19 1/4波長板
110 絞り
111 アクチュエータ
CA キャビティ
GA ゲート
DP 回折パターン

Claims (9)

  1. 樹脂組成物を成形型で成形する工程を含む光学素子の製造方法において、
    前記樹脂組成物は、脂環式構造を有する重合体を含有し、
    前記成形型は、第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを備え、
    前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を設けたことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記成形型の温度を検知する温度検知手段と、
    前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、
    前記加熱手段で加熱される第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方を冷却する冷却手段と、
    前記温度検知手段で検知された温度に基づき、前記加熱手段及び冷却手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方は、前記フッ素含有化合物層に接する表面加工層と、前記表面加工層に隣接して設けられた断熱層とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方は、前記フッ素含有化合物層に接する表面加工層を備え、
    前記表面加工層は、微細パターンが形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記脂環式構造を有する重合体は、重合体全繰り返し単位中に、下記一般式(1)で表される脂環式構造を有する繰り返し単位(a)と、下記一般式(2)または(3)で表される鎖状構造の繰り返し単位(b)とを、合計含有量が90質量%以上になるように含有し、さらには繰り返し単位(b)の含有量が1質量%以上10質量%未満である脂環式構造を有する重合体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法。
    Figure 0004155253
    〔上記一般式(1)において、Xは脂環式炭化水素基であり、一般式(1)乃至(3)において、R乃至R13は、それぞれ独立に水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、または極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、またはシリル基)で置換された鎖状炭化水素基である。〕
  6. 前記脂環式構造を有する重合体は、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法。
  7. 前記脂環式構造を有する重合体は、炭素原子数が2乃至20のα−オレフィンと、下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとの共重合体を水素添加処理して得られる環状構造を有するオレフィン系重合体であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学素子の製造方法。
    Figure 0004155253
    〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R乃至R18、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表し、R15乃至R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつこの単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。〕
    Figure 0004155253
    〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、m及びnはそれぞれ0、1または2を表し、R乃至R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基を表し、R及びR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素原子数1乃至3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
  8. 第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを有する光学素子成形型であって、第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を有する光学素子成形型の加工方法において、
    前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方に設けられた表面加工層を、0.05乃至0.5質量%のフッ素含有化合物溶液で塗布する工程と、
    前記塗布する工程で塗布された表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする光学素子成形型の加工方法。
  9. 第1型部材と、該第1型部材に対向して部材成形空間を形成する第2型部材とを有する光学素子成形型であって、第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方の前記部材成形空間との接触面に3nm以上20nm以下のフッ素含有化合物層を有する光学素子成形型の加工方法において、
    前記第1型部材及び第2型部材の少なくとも一方に設けられた表面加工層を、0.05乃至0.5質量%のフッ素含有化合物溶液に浸漬する浸漬工程と、前記浸漬工程で浸漬された表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液から引き上げる引き上げ工程と、
    前記引き上げ工程で引き上げられた表面加工層を、前記フッ素含有化合物溶液に含まれる溶剤で洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする光学素子成形型の加工方法。
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