以下、本発明の全自動洗濯機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
まず、本発明の一実施の形態のドラム式(横型)洗濯機601の構成について説明する。
図1に、上記ドラム式洗濯機601の外観の概略斜視図を示す。また、図2に、上記ドラム式洗濯機601の概略垂直断面図の概略を示す。
上記ドラム式洗濯機601は、図2に示すように、箱形の本体610と、この本体610内に配置された水槽620と、この水槽620内に回転自在に配置され、洗濯物を収容するドラム630とを備えている。水槽620もドラム630も円筒形であり、それぞれ前端面に洗濯物投入口621,631を有している。なお、ドラム630は収容槽の一例である。
上記ドラム630の底部中心からは、外向きに軸632が突出している。この軸632が水槽620の底部中心に設けられた軸受622に支えられることにより、ドラム630と水槽620とは、ドラム630を内、水槽620を外とする同心配置となっている。
上記水槽620は、図示しないサスペンション機構により、軸線が水平面に対して角度θ(例えば15°)の傾斜をなすように、ハウジング610内で支持されている。これにより、ドラムの軸線も水平面に対して角度θ(例えば15°)の傾斜をなし、水槽620,ドラム630の後端面に比べ、洗濯物投入口621,631の方がやや持ち上がっている。つまり、水槽620およびドラム630は、軸線が鉛直方向に対して交差するように配置されている。これは、ドラム630の内部を見やすくするためと、洗濯物の出し入れを容易にするためである。
なお、上記ドラム式の洗濯機601においては、上記角度θは0°〜30°の範囲を想定しているが、水槽620,ドラム630の軸心が鉛直方向に対して交差していれば、この範囲に特に限定されるわけではない。
上記ハウジング610の正面側外壁には、洗濯物投入口621,631と向かい合うように、開口611が設けられている。この開口611は、ハウジング610に回動自在に取り付けられた横開きのドア612で開閉される。開口611と洗濯物投入口621とは、軟質合成樹脂又はゴムよりなるドアパッキン613により連結されている。ドアパッキン613は、ドラム630の中で生じる水の飛沫、濡れた洗濯物を出し入れする際の水のしたたり、あるいは洗濯物投入口621からの溢水などが、ハウジング610の内部を濡らすのを防ぐものである。
上記ドアパッキン613の内周面には環状のリップ614が一体に設けられている。このリップ614は、ドア612の内面に設けられた突部615の外周に密着することで、ドアパッキン613とドア突部615との隙間から水が漏れるのを防いでいる。突部615は、ドラム630の中の洗濯物が洗濯物投入口621からはみ出るのを防ぐ役割を担っている。なお、突部615は、ドラム630の内部を見通すことができるように透明材料で形成してもよいし、あるいは透明材料以外の材料で形成してもよい。
上記ドラム630の周壁全域には複数の脱水孔633が設けられている。この脱水孔633は、ドラム630の周壁を貫通している。これにより、ドラム630内の水や空気が脱水孔633を通って水槽620とドラム630との間に流入できたり、水槽620とドラム630との間の水や空気が脱水孔633を通ってドラム63内に流入できたりする。また、ドラム630の内周面には、複数のバッフル634が所定の間隔で設けられている。バッフル634はドラム630の回転に伴って、洗濯物の持上げと落下とを繰り返す働きをする。
上記ドラム630の前端面には、洗濯物投入口631を取り囲むように環状のバランスウェイト(バランサ)635が取り付けられている。また、図示しないが、ドラム630の外周面にもバランスウェイトが取り付けられている。これらのバランスウェイト635は、ドラム630が高速回転したときに発生する振動を抑制するものである。
上記水槽620の底部外面(後端面)には、モータ640が取り付けられている。モータ640はダイレクトドライブ方式のものであり、モータ640のロータにはドラム630の軸632が連結固定されている。なお、上記軸受622は、モータ640の外箱に取り付けられ、モータ640の構成要素の一部となっている。
上記水槽620の上方の空間には、電磁的に開閉する給水弁50が配置されている。この給水弁50には、ハウジング610を貫通して後方に突き出す接続管51の前端部が接続されている。そして、接続管51の後端部には、水道水などの上水を供給する給水ホース(図示せず)が接続されている。また、給水弁50には給水管52の後端部も接続されている。そして、給水管52の前端部は、容器状の給水口53に接続されている。
図3に、上記給水口53の構成の模式図を示す。
上記給水口53は上面が開口しており、内部が洗剤室54と仕上剤室55とに区画されている。洗剤室54は洗剤を入れておく準備空間となる一方、仕上剤室55は洗濯用の仕上剤を入れておく準備空間となる。洗剤室54の底部には、洗剤室54内の水を集水桝653に供給するための注水口56が設けられている。同様に、仕上剤室55の底部にも、仕上剤室55内の水を集水桝653に注水するためのサイホン部57が設けられている。給水桝653内の空間は給水ノズル652を介して水槽620内の空間と連通している。
上記サイホン部57は、仕上剤室55の底面から垂直に立ち上がる内管57aと、内管57aにかぶせられるキャップ状の外管57bとからなっている。内管57aと外管57bとの間には、水の通る隙間が形成されている。内管57aの底部は、集水桝653に向かって開口している。外管57bの下端は、仕上剤室55の底面に対して所定の隙間を有している。内管57aの上端を超えるレベルまで仕上剤室55に水が注ぎ込まれると、サイホンの作用が起こり、仕上剤室55とサイホン部57との間の水は上記隙間を介してサイホン部57内に吸い込まれて集水桝653へと落下する。
上記給水弁50は、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとからなっている。接続管51は、メイン給水弁50aおよびサブ給水弁50bの両方に共通である。つまり、接続管51内の水は、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとのどちらにも供給することができる。
上記メイン給水管52aはメイン給水弁50aと洗剤室54とを接続する一方、サブ給水管52bはサブ給水弁50bと仕上剤室55とを接続している。すなわち、給水弁50と給水ノズル652との間においては、メイン給水管52aから洗剤室54を通って集水桝653に注ぐ経路と、サブ給水管52bから仕上剤室55を通って集水桝653に注ぐ経路とが形成されており、しかもこれらが別系統となっている。なお、メイン給水管52aとサブ給水管52bとは給水管52を構成している。また、メイン給水管52aの途中には、電極113,114を有する銀イオン溶出ユニット100が設けられている。なお、銀イオン溶出ユニット100は効果物質溶出装置の一例である。
上記洗剤室54の上面および仕上剤室55の上面は、それぞれ、開口している。これらの開口は、各々図示しない蓋で閉じられている。使用者は、必要に応じて上記蓋を開け、洗剤室54には洗剤を、仕上剤室55には仕上剤をそれぞれ投入することになる。
また、図2に示すように、上記水槽620の最も低くなった箇所には、排水口623が設けられており、ここに排水管660の後端が接続されている。一方、排水管660の前端は、フィルタケーシング661に接続されている。フィルタケーシング661の中には、糸屑フィルタ662が挿入されている。糸屑フィルタ662は、合成樹脂の網や布により形成され、洗濯液中の糸屑を捕集する。フィルタケーシング661の前端は、着脱自在なキャップ663で閉ざされており、キャップ663を取り外して糸屑フィルタ662を掃除したり、交換したりすることができる。
上記フィルタケーシング661の後端には、排水管664が接続されている。フィルタ662を通過した排水は、排水管664を介してハウジング610の外に排出される。排水管664の途中には、排水弁665が設けられている。
上記フィルタケーシング661には、エアトラップ671が接続されている。そして、エアトラップ671から導出された導圧パイプ672の上端に、水位センサ673が設けられている。水位センサ673は、エアトラップ671内の圧力変化に応じて磁性体をコイル内で移動させ、その結果生じるコイルのインダクタンス変化を発振周波数の変化として検出し、この発振周波数の変化から水位を読みとるものである。ここで、水位センサ673が読みとるのはドラム630内の水位である。
上記ハウジング610の前面側の上部には操作パネル616が設けられている。この操作パネル616下には、マイクロコンピュータを主たる構成要素とする制御部690が設けられている。制御部690は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)など必要な記憶装置691を含んでいる。また、制御部690は、ハウジング610の中に操作パネル616と近接して配置されており、操作スイッチ部684(図1参照)を通じて使用者からの操作指令を受け、モータ640、給水弁50、および排水弁665に動作指令を発する。また、制御部690は、表示部682(図1参照)に表示指令を発する。また、制御部690は銀イオン溶出ユニット100を駆動するための駆動回路を含んでいる。なお、銀イオン溶出ユニット100による作用については、図8のフローチャートの説明で詳述する。なお、操作パネル616は操作部の一例であり、記憶装置691は記憶部の一例である。
ここで、上記操作パネル616は、使用者が所望の洗濯モードを設定するための入力部である。制御部690は、操作パネル616によって設定された洗濯モードに応じて、個別工程を選択し、実行することになる。上記個別工程としては、例えば、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程が考えられる。したがって、制御部690が実行する洗濯工程は、上記洗濯モードに応じて、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程、乾燥工程の少なくとも1個またはそれらの組み合わせからなっている。
以下、上記構成のドラム式洗濯機601の動作について説明する。
まず、使用者は、ドア612を開け、ドラム630の中に洗濯物を入れると共に、給水口53の洗剤室54に洗剤を入れる。このとき、必要であるなら、使用者は、仕上剤室55に仕上剤を入れる。仕上剤は、このときでなくても洗濯工程の途中で入れてもよい。
次に、使用者は、ドア612を閉じ、操作パネル616の操作スイッチ部684を操作して洗濯モード(洗濯条件)を選ぶ。
最後に、使用者がスタートボタンを押せば、図4乃至図7のフローチャートに従い、上記洗濯モードに応じた洗濯工程が遂行される。
図4に、上記洗濯工程全体のフローチャートを示す。
上記洗濯工程が開始されると、まず、ステップS201で、予約運転が選択されているか否かを判定する。ステップS201で、予約運転が選択されていないと判定すると、ステップS202に進む。一方、ステップS201で、予約運転が選択されていると判定すると、ステップS206に進む。なお、上記予約運転は、洗濯工程がスタートする前に使用者によって設定されるものである。
上記ステップS206では、上記予約運転の運転開始時刻になったか否かを判定する。ステップS206で、予約運転の運転開始時刻になったと判定すると、ステップS202に進む。一方、ステップS206で、予約運転の運転開始時刻になっていないと判定すると、再びステップS206を行う。すなわち、ステップS206では、予約運転の運転開始時刻になったと判定するまで、その運転開始時刻の判定を繰り返す。
次に、ステップS202で、洗い工程が選択されているか否かを判定する。ステップS202で、洗い工程が選択されていないと判定すると、直ちにステップS203に進む。一方、ステップS202で、洗い工程が選択されていると判定すると、ステップS300に進む。
上記ステップS300に進む場合は、ステップS300で、別途図5のフローチャートで説明する洗い工程を行った後、ステップS203を進む。
次に、ステップS203で、すすぎ工程が選択されているか否かを判定する。ステップS203で、すすぎ工程が選択されていないと判定すると、直ちにステップS204に進む。一方、ステップS203で、すすぎ工程が選択されていると判定すると、ステップS400−1に進む。
上記ステップS400−1に進む場合は、ステップS400−1,ステップS400−2,ステップS400−1のそれぞれで、別途図6のフローチャートで説明するすすぎ工程を順次行った後、ステップS204に進む。
なお、上記すすぎ工程は、1回または複数回行われる。図4では、上記すすぎ工程が3回にわたって実施されることとし、各回のステップ番号には「S400−1」「S400−2」「S400−3」と枝番号を付して表記している。上記すすぎ工程の回数は、使用者が任意に設定できる。銀イオン溶出ユニット100が溶出するAgイオンと、仕上剤室55内に投入された仕上剤とを、それぞれ、別のすすぎ工程で水槽620内へ投入する場合は、最低でも2回のすすぎ工程を行う必要がある。なお、上記Agイオンは金属イオンの一例である。また、上記Agイオンと仕上剤とを同時に同じすすぎ工程で投入してもよい。この場合、すすぎ工程の回数は1回以上であればよいということになる。
次に、ステップS204で、脱水工程が選択されているか否かを判定する。ステップS204で、脱水工程が選択されていないと判定すると、直ちにステップS205に進む。一方、ステップS204で、脱水工程が選択されていると判定すると、ステップS500に進む。
上記ステップS500に進む場合は、ステップS500で、別途図7のフローチャートで説明する脱水工程を行った後、ステップS205に進む。
次に、ステップS205で、制御部690、特にその中に含まれる演算装置(マイクロコンピュータ)による終了処理が手順に従って自動的に進められる。また、ステップS205で、制御部690は、洗濯工程が完了したことを終了音で使用者に報知する。ステップS205の終了処理および終了音報知すると、洗濯工程が終了して、ドラム式洗濯機601は次の洗濯工程に備えて待機状態に戻る。
なお、図4のフローチャートでは、乾燥工程の判定は行っていなかったが、ステップS204の後に行ってもよい。より詳しくは、ステップS204で、脱水工程が選択されていないと判定すると、直ちに乾燥工程に進むようにすると共に、ステップS500の脱水工程が終わった後、乾燥工程に進むようにしてもよい。この乾燥工程では、例えば、ドラム630内に温風を供給することで、洗濯物が乾燥される。ドラム630から排出される高温多湿の空気は、冷却水によって冷却され、当該空気中の湿気が水に変換される。すなわち、上記乾燥工程では、水冷除湿方式を採用している。冷却水によって冷却された水は、排水管664を介して機外に排出される。
以下、上記洗濯工程のうち、洗い工程、すすぎ工程、脱水工程の各個別工程の詳細について説明する。
まず、上記洗い工程を図5のフローチャートに従って説明する。
上記洗い工程が開始されると、まず、ステップS301で、ドラム630内の水位を検知する。より詳しくは、ステップS301で、水位センサ673(図2参照)の検知しているドラム630内の水位データのとり込みを行う。
次に、ステップS302で、容量センシングが選択されているか否かを判定する。ステップS302で、容量センシングが選択されていないと判定すると、直ちにステップS303に進む。一方、ステップS302で、容量センシングが選択されていると判定すると、ステップS308に進む。
上記ステップS308に進む場合は、ステップS308で、容量センシングを行った後、ステップS303に進む。上記容量センシングでは、ドラム630の回転負荷により洗濯物の量を測定する。
次に、ステップ303で、メイン給水弁50aが開き、メイン給水管52aおよび給水口53を通じてドラム630に水が注がれる。より正確に言うと、水槽620に水が注がれ、その水が脱水孔633を通じてドラム630に浸入する。ドラム630内に侵入する水には、給水口53の洗剤室54に入れられた洗剤が混じっている。このとき、排水弁665は閉じている。そして、水位センサ673が設定水位を検知したら、メイン給水弁50aを閉じて、ステップS304に進む。
次に、ステップS304で、なじませタンブリングを行う。このなじませタンブリングでは、ドラム630が低速で回転し、洗濯物を水から出しては再び水の中に落下させて、洗濯物に水を十分に吸収させる。また、洗濯物の各所にとらわれていた空気を逃がす。
次に、ステップS306で、ドラム630が洗いタンブリングのパターンで回転し、洗濯物を高く持ち上げては落下させる。この落下時の衝撃により、洗濯物の繊維の間に水の噴流が発生し、洗濯物が洗われる。このような洗いタンブリングが洗濯モードに応じた時間行われる。
最後に、ステップS307で、ドラム630をゆるやかに回転させて、洗濯物をほぐし、洗濯物のバランスを取って、洗い工程が終了する。
上記ドラム630がゆるやかに回転した場合、洗濯物は高い位置に持ち上げられる前に、低い位置でドラム630から離れて落下する。これにより、洗濯物はたたきつけられるというよりもむしろ転がるような感じになり、洗濯物同士が比較的ふんわりと重なる。この状態であれば、ドラム630が高速の脱水回転を始めたときに、洗濯物が四方に分散しやすい。すなわち、ドラム630内の洗濯物のバランスをとりやすい。そのため、ドラム630をゆるやかに回転させて洗濯物をほぐし、脱水回転に備えているのである。
これに対して、洗濯物が高い位置から落下した場合には、洗濯物はドラム630の内壁にたたきつけられ、内壁にぺたりとへばりつく。この状態では、ドラム630が高速の脱水回転を始めたとき、ドラム630内の洗濯物のアンバランスが解消されにくい。
次に、上記すすぎ工程を図6のフローチャートに従って説明する。
上記すすぎ工程が開始されると、まず、ステップS500で、脱水工程(ここでは、すすぎ工程の中の脱水工程であるため、以下、「中間脱水工程」と称する)を行うが、これについては図7のフローチャートに従って後で説明する。
次に、ステップS401で、メイン給水弁50aが開き、ドラム630内の水位が設定水位になるまで、ドラム630内への給水が行われる。
次に、ステップS402で、なじませタンブリングを行う。このステップS402のなじませタンブリングは、上述した洗い工程におけるステップS304のなじませタンブリングと同様であるので、説明を省略する。
次に、ステップS403で、使用者の設定に従い、ドラム630をすすぎタンブリングのパターンで回転させる。ドラム630は、回転により洗濯物を水にくぐらせ、また上の方に持ち上げては落下させる。これにより、洗濯物のすすぎが行われる。このようなすすぎタンブリングが洗濯モードに応じた時間行われる。
次に、ステップS406で、ドラム630がゆるやかに回転させて、洗濯物をほぐし、洗濯物のバランスを取って、すすぎ工程が終了する。
なお、上記すすぎ工程では、ドラム630の中にすすぎ水をためておいてすすぎを行う「ためすすぎ」を実行するものとしたが、常に新しい水を補給する注水すすぎ、あるいは、洗濯物に水のシャワーを注ぎかけるシャワーすすぎを行うこととしてもよい。
次に、上記脱水工程を図7のフローチャートに従って説明する。
上記脱水工程が開始されると、まず、ステップS501で、排水弁665を開く。これにより、ドラム630の中の洗濯水(洗濯物を洗うための水、または、洗濯物をすすぐための水)は、排水弁665を通じて排水される。排水弁665は脱水工程中は開いたままである。
上記排水弁665を開いてから所定時間が経過し、洗濯物から大部分の水が抜けたところで、ドラム630が脱水回転を開始する。ドラム630が高速で回転すると、洗濯物は遠心力でドラム630の内周壁に押しつけられる。これにより、洗濯物に含まれていた水も、ドラム630の内周壁面に集まり、脱水孔633からドラム630外へ放出される。ドラム630外へ出た洗濯水は、水槽620の内面にたたきつけられ、水槽620の内面を伝って水槽620の底部に流れ落ちる。そして排水口623、排水管660、フィルタケーシング661、排水管664、および排水弁665を通って、ハウジング610の外に排出される。
図7のフローチャートでは、ステップS502とステップS503とで比較的低速の脱水運転を行った後、ステップS504とステップS505とで比較的高速の脱水運転を行う組み立てとなっている。ステップS505の後は、ステップS506に移行する。ステップS506では、モータ640への通電を断つとともにブレーキを働かせることなくドラム630を慣性で回転させ、自然停止に至らせる。
以下、上記銀イオン溶出ユニット100によるAgイオンの溶出および投入工程について説明する。
図8に、上記銀イオン溶出ユニット100によるAgイオンの溶出および投入工程を説明するためのフローチャートを示す。
図8のフローチャートは、図6のすすぎ工程のフロー中、例えばステップS401の給水の段階で遂行される。
すなわち、上記ステップS401の給水が開始されると、ステップS411で、操作パネル616における選択動作によって「Agイオンの投入」が選択されているか否かを判定する。ステップS411で、「Agイオンの投入」が選択されていると判定すると、ステップS412に進む一方、「Agイオンの投入」が選択されていないと判定すると、ステップS422に進む。なお、ステップS411の判定ステップは、ステップS401の給水が開始される前に行っておいてもよい。
上記ステップS412では、メイン給水弁50aを開いて、銀イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す。これと同時に、制御部690の駆動回路が、電極113,114の間に電圧を印加し、電極構成金属のイオンを水中に溶出させて、Agイオン添加水を得る。このとき、電極113,114を流れる電流は直流である。上記Agイオン添加水は給水口53から水槽620内に投入される。
上記制御部690は、所定量のAgイオン添加水を水槽620内に投入し、すすぎ水のAgイオン濃度が所定値に達したと判断したところで、電極113,114への電圧印加を停止する。
また、上記ステップS402では、サブ給水弁50bを開き、給水口53の仕上剤室55にも水を流す。これにより、上記仕上剤室55に仕上剤が入れられていれば、その仕上剤は、サイホン部57から水と共に水槽620内に投入される。
上記サイホン部57によるサイホン効果は仕上剤室55の中の水位が所定高さに達してはじめて生じるので、サブ給水弁50bを開いて仕上剤室55に水を流すまでは仕上げ剤を仕上剤室55に保持しておくことができる。
本実施の形態では、仕上剤の投入の選択は行わず、常に仕上剤を投入することを前提とした動作が行われる。なお、ユーザーが仕上剤を投入したくない場合は、仕上剤室55に仕上剤をセットしなければよい。
ただし、本実施の形態では、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとは、同時には開かない仕様とした。これは、メイン給水弁50aとサブ給水弁50bとを同時に開くと、給水口54に対する総給水量が大きくなり、給水口54から水が溢れる可能性があるためである。
具体的には、図9に示すように、制御部690は、最初に5秒間サブ給水弁50bのみを開き、10秒間メイン給水弁50aのみを開くという動作を4回繰り返し、その後、20秒間サブ給水弁50bのみを開き、その後、所定水位を検知するまでメイン給水弁50aのみを開く。このような動作にすることで、給水口54から水が溢れることもなく、仕上剤も安定して水槽620内へ投入することができる。
このとき、同図に示すように、制御部690は、銀イオン溶出ユニット100の電極113,114への電圧印加を、メイン給水弁50aを開いているときのみ行うようにしている。これは、メイン給水弁50aからの給水経路中に銀イオン溶出ユニット100が配置されているためである。つまり、メイン給水弁50aが閉じているときには、銀イオン溶出ユニット100中に水がほとんど存在せず、その状態で電圧を印加すると、電流がどのくらい流れるかわからず、Agイオンの溶出量が不明となり、望ましくないからである。
また、本実施の形態では、銀イオン溶出ユニット100の制御部690の駆動回路120の電源と、メイン給水弁50aの電磁弁の電源とを、同じ電源から途中で分岐する形で並列にしている。このように各電源を別々に設けることにより、各電源のON/OFFを独立して制御できるので、メイン給水弁50aが開いているとき以外は、より確実に、銀イオン溶出ユニット100への電圧印加が行われないようにすることができる。
また、本実施の形態では、同図に示すように、制御部690は、電極113,114の極性が20秒おきに反転するように、上記各電極に電圧を印加している。なお、同図では、一方の電極が陽極になる場合を+で、陰極となる場合を−で表記している。
このような電極極性の反転制御を行う理由は、以下の通りである。
(1) 陽極からは、Agイオンが溶け出すため、一方の電極がずっと陽極になると、その電極だけが減耗してしまう。
(2) 陰極にはカルシウムなどからなるスケールが付着しやすい。このスケールは、スケールが付着した電極を陽極にすることで除去できるが、一方の電極がずっと陰極になっているとスケールの付着量が多くなり、陽極にしても除去しにくくなる。
これらの不都合を回避するため、本実施の形態では、電極の極性を周期的に反転させる制御を行っている。
一方、上記ステップS422では、Agイオンの添加は行わない。つまり、制御部690がメイン給水弁50aを開き、銀イオン溶出ユニット100に所定流量の水を流す点は同じであるが、銀イオン溶出ユニット100中の電極113,114への電圧印加は行わない。それ以外の点では、ステップS412と同じである。
図10に、上記操作パネル616の模式図を示す。
上記操作パネル616には、電源入キー700、電源切キー701、スタートキー702、洗乾キー703、洗濯コース選択手段の一例としてのコースキー704、効果物質溶出動作選択手段の一例としてのイオンキー705、乾燥キー706、脱水キー707、すすぎキー708、洗いキー709、水量キー710、予約キー711およびふろ水キー712が設けられている。
ユーザは、コースキー704を押すことにより、8つの洗濯コースから1つを選択することができる。この8つの洗濯コースとは、標準コース、ナイトコース、毛布コース、室内干しコース、ガンココース、槽洗浄コース、倍速コースおよびドライコースである。そして、ユーザは、コース設定表示部713を見て、コースキー704で選択したコースを確認することができる。なお、標準コース、ナイトコース、毛布コース、室内干しコース、ガンココース、槽洗浄コース、倍速コースおよびドライコースのそれぞれは洗濯コースの一例である。
また、ユーザは、イオンキー705を押すことにより、コースキー704で選択したコースにおいてイオン出力を実施するか否かの設定と、Agイオン溶出専用のコースとの選択を行える。コースキー704で選択したコースにおいてイオン出力を実施する設定がされると、イオン設定表示部714の『除菌・防臭』のLEDが点灯する。一方、Agイオン溶出専用のコース、つまり、Agリンスコースまたは槽除菌コースが選択されると、『Agリンス』または『槽除菌』のLEDが点灯する。
上記Agリンスコースは、コース設定表示部713のコースのように、洗濯物や水槽620を洗剤で洗濯することを目的とするものではなくて、洗濯物にAgイオンを付着させることを目的としている。具体的には、上記Agリンスコースは、最初にステップS401を行って、Agイオンを含む水を水槽620に供給した後、ステップS402〜404,S502〜S506を順次行う。
上記槽除菌コースも、洗濯物や水槽620を洗剤で洗濯することを目的とするものではなくて、水槽620をAgイオンで除菌することを目的としている。具体的には、上記槽除菌コースは、最初にステップS401を行って、Agイオンを含む水を水槽620に供給した後、Agイオンを含む水が水槽620に入っている状態を所定時間保持してから、水槽620内の水を排水する。また、上記槽除菌コースにおいて水槽620内へ供給する水のAgイオン濃度は、Agリンスコースにおいて水槽620内へ供給する水のAgイオン濃度よりも高くなるように設定されている。なお、上記槽除菌コースは、Agイオンを含む水が水槽620に入っている状態で、ドラム630を所定時間回転させてから、水槽620内の水を排水してもよい。
このように、上記操作パネル616には、複数の洗濯コースから1つを選択するためのコースキー704と、洗濯コースと無関係な2つのAgイオン使用動作を選択するためのイオンキー705とを設けているから、洗濯コースが8つと多くても、洗濯コースの選択に関する操作性と、Agイオン使用動作の選択に関する操作性とを向上させることができている。
以下、図11A,図11Bを用いて、イオンキー705による設定について説明する。ここでは、最初、標準コースが選択されているとする。
図11Aに示すように、標準コースが選択されている状態、つまり、コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』のLEDのみが点灯した状態800で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『標準』および『除菌・防臭』のLEDがのみ点灯した状態801に変化する。つまり、標準コースで除菌・防臭を行うという設定が選択される。より詳しくは、標準コースのすすぎ工程は、Agイオンを含む水を用いて行う。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』および『除菌・防臭』のLEDのみが点灯した状態801で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、図11Bに示すように、『標準』のLEDが消え、『Agリンス』のLEDのみが点灯した状態802に変化する。つまり、標準コースの設定が解除され、Agリンスコースが選択される。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『Agリンス』のLEDのみが点灯した状態802で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『Agリンス』のLEDが消え、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態803になる。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態803で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、図11Aに示すように、『槽除菌』のLEDが消え、『標準』のLEDのみが点灯した状態800に戻る。つまり、標準コースで除菌・防臭を行わないという設定が選択される。
図13に、図11A,図11Bでのイオンキー705による設定のフローチャートを示す。
まず、標準コースが選択されている状態においてイオンキー705が押された否かの判定を行う(ステップS601)。
上記ステップS601でイオンキー705が押された判定した場合、標準コースの選択を解除すると共に、除菌・防臭コースを選択した後、イオンキー705が押された否かの判定を行う(ステップS602,S603)。
上記ステップS603でイオンキー705が押された判定した場合、標準コースおよび除菌・防臭コースの選択を解除すると共に、Agリンスコースを選択した後、イオンキー705が押された否かの判定を行う(ステップS604,S605)。
上記ステップS605でイオンキー705が押された判定した場合、Agリンスコースの選択を解除すると共に、槽除菌コースを選択した後、イオンキー705が押された否かの判定を行う(ステップS606,S607)。
上記ステップS607でイオンキー705が押された判定した場合、槽除菌コースの選択を解除した後、ステップS601に戻る。
なお、図示しないが、上記ステップS601,S603,S605,S607でイオンキー705が押されていないと判定した場合、スタートキー702が押された否かの判定を行って、イオンキー705が押された判定すると設定を終了する一方、イオンキー705が押されていないと判定するとステップS601,S603,S605,S607に戻る。
また、上記ステップS601,S602が第1の選択制御の一例を構成している。そして、ステップS603〜S606が第2の選択制御の一例を構成している。さらに、ステップS607,S608が第3の選択制御の一例を構成している。
このように、上記イオンキー705をおすだけで、Agリンスコースおよび槽除菌コースを選択することができるので、Agリンス選択専用キーおよび槽除菌選択専用キーを設けなくてもよく、製造コストの増大を防ぐことができる。
また、上記イオンキー705を押すだけで、Agリンスコースおよび槽除菌コースを選択することができるので、Agリンスコースおよび槽除菌コースの選択が容易になり、Agリンスコースおよび槽除菌コースの選択に関する操作性を向上させることができている。
図11A,図11Bを用いて説明した設定では、イオンキー705を押すことにより、標準コースに除菌・防臭を付加していたが、イオンキー705を押すことにより、例えばナイトコースにも除菌・防臭を付加することができる。
以下、図示しないが、ナイトコースが選択されている状態でイオンキー705を複数回押す場合について説明する。
上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『ナイト』のLEDのみが点灯した状態で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『ナイト』および『除菌・防臭』のLEDのみが点灯した状態に変化する。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『ナイト』および『除菌・防臭』のLEDのみが点灯した状態で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『Agリンス』のLEDのみが点灯した状態に変化する。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『Agリンス』のLEDがのみ点灯した状態で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『Agリンス』のLEDが消え、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態になる。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『槽除菌』のLEDが消え、『標準』のLEDが点灯した状態になる。このとき、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『ナイト』、『毛布』、『室内干し』、『ガンコ』、『槽洗浄』、『倍速』および『ドライ』のいずれか1つが点灯するようにしてもよい。
また、上記毛布コース、室内干しコース、ガンココース、槽洗浄コース、倍速コースおよびドライコースのうちの1つが選択されている状態でイオンキー705を複数回押す場合については、ナイトコースが選択されている状態でイオンキー705を複数回押す場合と同様であるので説明を省略する。
ところで、上記イオンキー705による除菌・防臭の選択は記憶装置691に記憶される。この状態で、仮に電源切キー701を押して電源をOFFにしたとしても、イオンキー705による除菌・防臭の選択は記憶装置691から削除されない。このため、次に、電源入キー700を押して電源をONすると、図12Aに示すように、コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』および『除菌・防臭』のLEDのみが点灯した状態801となる。この場合、イオンキー705を押していくと、図11A,図11Bとは異なる選択および解除が行われる。
より詳しく説明すると、電源をONにした直後のコース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』および『除菌・防臭』のLEDが点灯した状態801で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『除菌・防臭』のLEDが消え、『標準』のLEDのみが点灯した状態800になる。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』のLEDのみが点灯した状態800で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、図12Bに示すように、『標準』および『除菌・防臭』のLEDのみが点灯した状態801に変化する。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『標準』および『除菌・防臭』のLEDが点灯した状態801で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、『標準』のLEDが消え、『Agリンス』のLEDが点灯した状態802に変化する。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『Agリンス』のLEDのみが点灯した状態802で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、図12Cに示すように、『Agリンス』のLEDが消え、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態803になる。
次に、上記コース設定表示部713およびイオン設定表示部714において、『槽除菌』のLEDのみが点灯した状態803で、ユーザがイオンキー705を1回押すと、図12Aに示すように、『槽除菌』のLEDが消え、『標準』のLEDのみが点灯した状態800に戻る。
図14に、図12A〜図12Cでのイオンキー705による設定のフローチャートを示す。
図14のフローチャートは、ステップS601を行う前にステップS701,S702を行っている点のみが異なっている。
上記ステップS701では、標準コースおよび除菌・防臭コースが選択された状態においてイオンキー705が押された否かの判定を行う。
上記ステップS701でイオンキー705が押されたと判定した場合、標準コースの選択を維持すると共に、除菌・防臭コースの選択を解除した後、ステップS601に進む(ステップS702)。
なお、図示しないが、上記ステップS701でイオンキー705が押されていないと判定した場合、スタートキー702が押された否かの判定を行って、イオンキー705が押された判定すると設定を終了する一方、イオンキー705が押されていないと判定するとステップS701に戻る。
また、上記ステップS701,S702が解除手段の一例を構成している。
このように、電源が入った直後のコース設定表示部713およびイオン設定表示部714が状態801のとき、ユーザがイオンキー705を押しても、コース設定表示部713およびイオン設定表示部714は状態802にはならずに状態800になるので、以降は図11A,図11Bで示したような選択および解除をイオンキー705で行えるので、Agリンスコースおよび槽除菌コースの選択に関する操作性をさらに向上させることができている。
上記実施の形態では、水槽620に供給すべき水に金属イオンの一例としてのAgイオンを添加していたが、水槽620に供給すべき水に金属イオンの一例としてのCuイオンを添加してもよい。つまり、銀イオン溶出ユニット100の代わりに銅イオン溶出ユニットをメイン給水管52aの途中に設けてもよい。
また、上記洗濯物等に付着させるのは、除菌効果、防臭効果および静電気抑制効果のうちの少なくとも1つを奏する効果物質であればなんでもよい。
上記実施の形態では、乾燥工程を行えるドラム式洗濯機に本発明を用いて一例について説明したが、乾燥工程を行えないドラム式洗濯機に本発明を用いてもよい。
つまり、本発明は、乾燥機能を有する有しないに関係なく、横型全自動洗濯機および縦型洗濯機に適用できるものである。
また、本発明のコース選択部,効果物質溶出動作選択部はボタン式セレクタのものに限られず、例えばジョグダイヤルのような回転型セレクタであってもよい。