JP4596443B2 - 含水性コンタクトレンズの水和処理方法およびそれに用いる注入ノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含水性コンタクトレンズの水和処理方法に係わり、特に、乾燥状態のコンタクトレンズから未反応モノマーを溶出させコンタクトレンズを均一に平衡膨潤状態にするための水和処理する方法及び該水和処理方法において用いる液注入ノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、含水性コンタクトレンズは、各種の方法により、所定のレンズ形状に作製された後、未反応モノマー等の不純物の除去等を目的とした水和処理乃至洗浄処理とが施されて、製品化されており、例えば特開平7−113990号公報や特開平4−227643号公報には、そのような水和・洗浄処理を行う処理容器が提案されている。
【0003】
すなわち、前記公報に記載されたレンズの処理容器は、上下方向に互いに組み付け可能に構成された雄チャンバと雌チャンバとを有し、それら雌雄二つのチャンバが相互に組み付けられた状態下で、互いの対向面間に、レンズを収容可能な空間が形成されるようになっている。また、雄チャンバには、雌チャンバとの組み付け下において、レンズを収容する空間内に、該レンズの水和乃至は洗浄処理を行うための処理水を供給する一つの注水口(前記公報では、水洗用管路として記載される)が、雄チャンバと雌チャンバとの対向面の中心部を上下方向に貫通するように設けられ、さらに、該処理水を、前記空間内から排出する複数の排出口が、該雄チャンバの前記対向面の周縁部から上下方向に延びだした側壁に対して、その周方向に等間隔をおいて形成されている。そして、かかる処理容器にあっては、雌雄二つのチャンバを組み付けて、それらの間に形成される空間内に、所定のレンズ形状に作製された直後のレンズを収容せしめ、その状態下で、前記処理水を雄チャンバの注入口を通じて前記空間内に連続的に供給して、該空間内を該処理水にて満たすことにより、該空間内のレンズが該処理水中に浸漬され、膨潤せしめられて、該レンズの水和処理が行われるようになっており、また、該空間内に過剰に供給された処理水を前記複数の排出口から排出して、処理水を注入口から複数の排水口に向かって流通させることにより、処理水が、レンズの内面上と外面上とにおいて、それぞれ、中心部から放射状に流動せしめられて、該レンズの洗浄処理が実施されるようになっているのである。
【0004】
ところが、このような構造の処理容器にあっては、レンズの水和処理後は、改めて流通ケースに移し替える必要がある。含水性コンタクトレンズは水を含む前は硬いために機械的に取り扱い易いのであるが、含水して柔軟になると、ちょっとした操作上の応力により破損し易く、機械的に取り扱い難い状態となる。したがって、含水性コンタクトレンズが加工・成形された後は出来る限り取り扱い操作を少なくすることが重要であり、特に含水したレンズに直接接触するような操作はない方が望ましいのである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここにおいて、本発明は、上述した事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、含水性コンタクトレンズの水和処理乃至は洗浄処理を充分に行い、かつ含水したレンズに直接接触しない処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そして、本発明にあっては上記課題を解決するために、以下に示す方法を提案するものである。すなわち、含水性コンタクトレンズが収容可能な凹部を有する樹脂製のケースに乾燥状態のレンズを収容して該ケース内にてレンズを含水膨潤させる処理方法において、含水処理液を注入する際に、第一段階において該ケース内の側壁部に対して適当量の液を注入し、続いて第二段階においてケース上部から注入することを特徴とする含水性コンタクトレンズの水和処理方法をその要旨とする。前記水和処理は具体的には、含水性コンタクトレンズを収容可能な凹部を有する樹脂製のケースと、該ケースに対して取り外し可能に取り付けられて、該ケースの前記凹部を覆蓋することにより該ケースとの間に前記レンズが収容される空間を形成する樹脂製の蓋体とから構成される容器内にて実施される。本発明のケースは含水性コンタクトレンズの洗浄処理乃至水和処理を行う処理容器であって流通ケースを兼用する。この容器を用いた処理方法において、前記蓋体の一部に外部と貫通する孔を一つ以上有し、前記収容空間内に前記レンズを収容せしめた状態下で、洗浄処理乃至は水和処理を行う水性処理液を注入する注入口と、前記水性処理液を排出する排出口を有する導管を蓋体をケースに対して押さえつけるようにして かつ貫通孔を通して固定し、該導管を通じて前記注入口から水性処理液を注入する一方、前記排出口から排出して、該収容空間内で流動させながら、該レンズに対して、該水性処理液を接触させることにより該レンズの洗浄処理乃至は水和処理を行うことを特徴とする含水性コンタクトレンズの処理方法を、その要旨とするものである。
【0007】
上記方法に従う本発明によれば、含水性コンタクトレンズを処理する容器が、流通ケースを兼用することにより含水後のレンズに対しては機械的な接触を排除し、また、蓋体をケースに覆蓋することにより、その蓋体とケースの間に形成される収容空間内にレンズを収容した状態下で、蓋体に設けられた貫通孔を通じて水性処理液を注入、排出することで収容空間内で流動する水性処理液とレンズを接触させて、該レンズの水和乃至は洗浄処理が行われる。最初に水性処理液を注入するに際して、ケース凹部の側壁に対して適当量の処理液を噴出し、まず乾燥状態のレンズとケースとの間に処理液を馴染ませるようにし、ついでレンズ上部から追加の処理液をケース本体内を満たすように充填する。含水前のレンズは水性液と接触すると急減に吸水する。従って乾燥状態のレンズに対してその上部から直接液を充填すると、レンズがカールしたり、該カールした部分に気泡を巻き込んでケース内の処理空間にレンズが浮きあがり、レンズの均一な吸水膨潤が妨げられ、未反応モノマーの抽出が効率よく行われなかったりする。一度巻き込んだ空気はレンズから離すのは困難であり、水和処理を行うに際して注意しなければならない。本発明にあっては、初めにケースとレンズとの間に水性液を馴染ませるので、ケースの凹面に沿ってレンズが固定され、後の充填に際して気泡を巻き込む、あるいはレンズが浮き上がってしまうなどの問題が生じない。
【0008】
そして、かかる処理容器においては、特に、蓋体に設けられた貫通孔の上から前記水性処理液の導管を押さえつけることにより、ケース、蓋体、導管から構成されるレンズの収容空間が密閉された構造となり、水性処理液の注入時にケース外へ液が溢れることなく、収容空間を水性処理液で満たすことが出来るのである。ケース、蓋体はそれぞれ樹脂製であり、導管を押しつける圧力は特に蓋体の樹脂の反発力を利用して、収容空間の密閉度を上げることができ、また、導管を通じて注入する液の流速を適度に調整することで、レンズからの未反応モノマーの抽出や、レンズ表面に付着するゴミ等を除去する事が効果的になされることとなる。導管先端部にはケース内凹部側壁へ液を噴出する注入口と、収容空間内に液を充填する注入口との少なくとも2つの注入口と、処理溶液を排出するための排出口を有する注入ノズルが形成されており、それぞれの口と液体が流通する流路が導管内に連通されている。凹部側壁に溶液を噴出する注入口は導管の挿入方向に対して横方向に開口し、処理空間内に液を充填する注入口は下方に開口している。処理液の排出口は注入ノズルのどの方向に対して開口していても良く、横方向、下方向いずれでもよい。
【0009】
注入ノズルを通して、初めに噴出する溶液量はレンズ下面とケースとの接触面およびその周辺を潤す程度の量でよく、大量に噴出すると却ってレンズがカールしたり、気泡を抱き込む可能性があるので、好ましくは2ml以下、より好ましくは1ml以下の少量が良い。この噴出ののち若干の間隔をおいて、収容空間を満たすだけの処理溶液を充填する。充填量は、ケースの容積に応じて適当に調整すればよいが少なくとも収容空間を一杯に満たす程度以上であることが望ましい。そして、収容空間内で一定時間浸漬してレンズを水和膨潤させ、未反応モノマーを溶出させたのち、さらに継続して処理溶液を交換する。溶液の交換は、各注入口より適当な速度で新鮮な処理溶液を注入しつつオーバーフローする余分な溶液を排出口から排出して行う操作法、または初めに排出口より収容空間内の溶液を排出したのち新鮮な処理溶液を充填する操作法とがある。前記処理溶液の交換操作時においては、各注入口からの溶液の排出は同時であって良く、注入する溶液の流れにより収容空間内を攪拌しつつ内溶液の交換を行いながら排出口から処理済みの溶液を排出する。この操作を繰り返すことによりレンズから充分に未反応モノマーを抽出し、最後に流通保存液を充填して、導管を引き抜き、場合により樹脂性の蓋をしたままレンズ収納部を封止シートにより密封する。
【0010】
以上ような本発明に従う含水性コンタクトレンズの処理方法によれば、レンズに気泡を巻き込むことなく変形等のないレンズの水和処理を有効に行い得ると共に、従来の水和処理方法に比して、含水後のレンズを移し替える必要がないために、レンズに傷を付けるなどの不良発生を防止し、また設備的な面においても、工程数においても省略された方法が得られるのである。
【0011】
なお、このような本発明に従う含水性コンタクトレンズの処理方法の好ましい態様の一つによれば、前記導管の液注入ノズルがケースの凹部壁に対する注入口、収容空間内に注入する注入口、および排水口のすべてを有するものを使用することにより、蓋体に形成された貫通孔を1つにすることができるので、導管の配置が複数の管の入り組んだ構造から簡略化され、蓋体の貫通孔からレンズ収容空間内への異物混入などを効果的に減少せしめることができる。
【0012】
また、本発明の他の態様として、一般にレンズケースは射出成形により製造されるが、成形後直ちに加工品のレンズを入れて覆蓋すれば収容空間内部に浸入するほこり等の異物を極力減少させられるために、水和処理工程全体をクリーンエリア内で実施するなど、製品の品質向上に一層の効果を奏することとなる。
【0013】
さらに、本発明に従う含水性コンタクトレンズの処理方法によれば、前記導管の固定については単に圧力により蓋体に対して押さえつけているのみであるので、必要な処理の後は容易に切り離すことが可能であり、また、後続する別のレンズの処理容器に対して順次継続的に使用していくこととなり、自動化・量産化体制の中の一工程として取り入れられるので、生産コストの低減を有利にはかることが可能となる。
【0014】
なお、前記処理ケースに対して蓋(貫通孔を有する)を介さずに水性処理液を注入・排出して処理することも可能である。しかし、コンタクトレンズから未反応モノマーを抽出するためには数分間以上レンズを水性処理液に浸漬して静置し、時間をかけてレンズ内部から溶出させることが必要であり、しかる後再び新しい水性処理液を注入し収容空間内の液交換を行うという操作を繰り返すことが重要である。しかし、蓋を用いない処理ケースでは、繰り返し溶液の注入・排出操作中に液が外部に溢れたり、また静置期間中にレンズ収容空間への異物混入を防止するために、処理ケースに蓋を用いる事が望ましい。本発明では処理ケースが流通ケースをも兼ねるために、レンズ収容部の開口部をレンズの出し入れのための充分な開放面積を有しつつ、上述する処理期間においては開口部を蓋で覆うことにより効果的に異物混入を防止することができるように、かつ導管から処理溶液を注入排出ができるように、導管の径に応じた貫通孔を有する蓋の使用を例に説明した。
【0015】
ところで、本発明により処理された後のケースは上述せるように、流通ケースとして使用されることとなるが、前記処理工程で使用した蓋体については、覆蓋した上から、あるいはこれを取り除いて、レンズを収容する凹部周囲を封止シート(例えばポリプロピレンや他の適当なプラスチックフィルムとアルミニウム箔のラミネートや、プラスチック層を有するバリア材料を形成する酸化シリコンで構成された単一の柔軟なシート)で覆い、凹部の周りに延びる平坦部分にヒートシールすることで、収容したレンズの密封環境を形成し、一般に販売されているブリスターケースとして完成品となる。蓋体をしたままで封止する場合には、前記封止シートと蓋体の少なくとも一部を熱により接着しておくことにより、シートを引き剥がすと同時に、シートに付いたままで蓋体をはずすことができるので、レンズを取り出す操作が容易になり、従来のシートのみで封していた時と同じような取り扱いとなる。そして、蓋体ごと封止シートにより封する場合は、流通過程などでシートに加えられる不意の衝撃に対して、従来タイプのブリスターケースでは穴があいて容器の無菌状態が破られることがあっても、樹脂製の蓋体による封止シートの補強効果によってその破損を有利に防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明をより具体的に明らかにするために、本発明に係る処理方法について、処理容器の構成図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0017】
先ず、図1には、本発明に従う処理方法を達成する為の含水性コンタクトレンズの処理容器の一例が、概略的に示されている。かかる図1からも明らかなように、処理容器1は、容器本体たるケース2と蓋体10とを有して、構成されている。図1に示すケース2および蓋体10の材質は、安価で取り扱いやすいように、一般的な射出成形または熱圧縮成形により例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、プロピレンコポリマー、ポリスチレン、ナイロン等から適宜選択される熱可塑性プラスチックから構成される。したがって、含水性コンタクトレンズの処理が終わった後に封止する封止シートは前述したように熱シールまたは接着剤により良好な接着性を与えるように、ポリエチレン、ポリプロピレンなどケース基材と類似の材料をその表面に有するアルミニウム箔のラミネートやプラスチック層を有するバリア材料を形成する酸化シリコンで構成された他の材料を使用することができる。
【0018】
蓋体10には後述する導管20が接続できるように一つの貫通孔21が設けられている。一方、ケース2にはコンタクトレンズ3を収容する凹部4がケース2の天板部5の略中央に設けられている。天板部を上から見ると正方形の形状をしており、天板部5の四方よりそれぞれから下方に向かって一体的に延びる4つの脚部6とを有して構成されている。より具体的には、図2にしめされている様に、ケース2の天板部5の略中央部に上方に開口する円形の開口部を有する凹部4の開口周縁部には、蓋体10を覆蓋したときに蓋体周縁に設けられている凸条11と組み合わされる様に、周溝7が形成されている。なお、流通ケースとしても兼用されるケース2の凹部4は、開口部の径が、それを通じて、含水性コンタクトレンズ3が容易に出し入れし得る大きさとされており、その深さが、レンズ3の水和処理乃至は洗浄処理を行う水性処理液と共に、レンズ3を該水性処理液に浸漬せしめた状態で収容しうる深さとされている。また、かかる凹部4にあっては、その内面は、レンズ3の外面曲率よりは大きい凹状湾曲面形状とされ、含水状態のレンズに対して余分な外力が加わらないよう形成されている。
【0019】
図1に示す様に蓋体10の貫通孔21には収容空間内に水性処理液を注入する2つの注入口22、23を有する流路32、33と、注入された水性処理液を排出する排出口24を有する流路34を有する注入ノズルを先端に含んだ導管20が挿入され、レンズ3を内部に収容した密閉空間(収容空間)を一体的に形成している。空間内への処理液の充填は二段階により行われる。第一段階は導管20の流路32を通して注入口22よりケース2の凹部4の側壁に向かって、水性の処理溶液が噴射され、噴出された処理溶液は凹部側壁を伝ってレンズ3の周辺部よりレンズと凹部底壁部との間にしみこみ、レンズを予備的に含水させたのち、第二段階で流路33を通して注入口23より収容空間を満たすように水性処理液が充填される。こうして初期の充填を二段階にて行うことにより、はじめからレンズの上方より溶液を充填する場合に比較して、レンズに対する気泡の付着やレンズがカールするようなことの無い処理液の充填が可能となる。
【0020】
処理液を満たしてから、適当な時間レンズを浸漬することにより、レンズ内に残存する未反応モノマーの抽出がなされ、引き続いて流路32、33を通して新鮮な水性処理液を注入して、オーバーフローする処理液を排出口24から流路34を通して、収容空間外へと排出する。このとき、注入する水性処理液の流速または注入を多段階的に行うことによりレンズの洗浄乃至は水和処理の効率を上げることができる。例えば、最初の注入時は乾燥状態から含水状態へ移行する場合であり、レンズが膨潤してサイズが大きくなりつつある状態であるため、形状が不安定になりがちで、その際の流速が速すぎると後に得られるレンズの変形を惹起すると考えられるので、初めの流速はゆっくりとし、2回目以降の処理液の充填は逆に流速を早くして内溶液を攪拌し液の交換効率を高める。含水状態が平行に達したと思われる時には、流速を速くしてレンズに対して新鮮な水性処理液を接触させレンズから抽出される未反応モノマーなどの溶出を促進する。また、液交換の間隔も、初めの頃は抽出される未反応モノマー量が多いので比較的短期間で液の交換を行い、次第に交換間隔を開けることで、処理液の利用効率も向上する。これらの処理後、流通過程で使用する溶液を注入して導管20を取り外し、場合によっては蓋体10を取り除いてケース2の天板部5の上面に封止シートをヒートシールし製品とする。
【0021】
また図1は、蓋体10の貫通孔21を1個とした場合の処理方法を示したが、例えば、前記注入口22、23およびこれと連通する流路32、33を有する導管と、排出口24これと連通する流路34を有する導管の二種を用いて処理する場合には、2つの貫通孔を有する蓋体であってもよく、さらには、貫通孔が1つであっても、前記導管を交互に蓋体と連結させて処理することも可能である。導管はレンズの処理が終わるまで継続して処理空間に連結させ続ける必要はなく、むしろレンズを単に浸漬する時間には、導管を他の処理容器と連結させることにより導管の効率的な使用が達成される。一方、処理ケースは流通ケースと兼用するために、導管を除いて開放状態となった際に、ケース内への異物の侵入を防止するためにも蓋体に形成される貫通孔の数および孔径は小さい方が良い。
【0022】
ところで、このような構造とされた含水性コンタクトレンズの処理容器を用いて、含水性コンタクトレンズの水和処理乃至は洗浄処理を行う際には、以下の如くして、その操作が進められる。
【0023】
すなわち、先ず図1に示されるように、加工が終わり処理されるべき含水性コンタクトレンズ3をケース2の凹部4内に配置した後、蓋体10をケース2に取り付けて、凹部4を蓋体10にて覆蓋し、それら凹部4と蓋体10との間に収容空間12を形成すると共に、該収容空間12内にコンタクトレンズ2を収容せしめる。
【0024】
その後、蓋体10の貫通孔21に導管20の注入ノズルを挿入し、導管20を蓋体10に押さえつけることにより、蓋体10とケース2の周溝7とが密着し、前記収容空間12の液密性を確保する。なお、このときの圧力は収容空間12内から水性処理液の漏出が防止される程度の圧力でよい。
【0025】
ついで、導管20の流路32を通じて注入口22より、第一段階の水性処理液が注入されるが、それは例えば、脱イオン化された水、界面活性剤を含む水溶液、生理的食塩水など含水コンタクトレンズの水和処理乃至は洗浄処理に従来から用いられるものが適宜選択されて、使用される。この水性処理液は前述したように凹部4の内壁を伝ってレンズの周辺部よりレンズ外面側と凹部底壁部との間に初めに水性処理液が浸出し、レンズが凹部曲面に沿って膨潤する。従来、乾燥状態のレンズの内面側から水性液を接触させる場合には、レンズがカールする傾向があり、カール内に気泡を巻き込み、この気泡が簡単には抜けないことが問題とされてきた。本発明では、この点を改良したことに特徴がある。最初の注入から0.数秒〜十数秒の間隔をおいて、同導管20の流路33を通じて注入口23より第二段階の水性処理液が注入される。この時点で、レンズは凹部曲面に対して適度に吸着しあるいは水和されているので、レンズ上部からの注入であっても、レンズがカールしたり気泡を巻き込むことはない。第二段階の水性処理液は、収容空間を一杯に満たす程度に充填されて注入が終了する。
【0026】
排出口24は収容空間12の最上部にあるので、収容空間内に空気が残留することはほとんどない。そして収容空間が一杯に満たされた後は、導管20が貫通孔21から取り除かれ、ケースはそのまま数分間、静置される。一方、取り除かれた導管20は後続する同様のレンズ収容空間に接続され、再びその空間に水性処理液が満たされる。
【0027】
含水性コンタクトレンズ3が、含水膨潤して数分間静置されたのち再び導管20が連結され、注入口23より新鮮な水性処理液を充填することで、収容空間12内の液をオーバーフローさせ流路34より使用済み水性処理液を収容空間外へ排出して内容液を交換する。かくして、収容空間12内を流動する水性処理液とレンズ3との接触によって、未反応モノマー等の不純物をレンズ3中から抽出し、また、この抽出された不純物をかかる水性処理液の流動によって、収容空間から排出口を通じて除去し、以て、レンズの水和処理が行われる。なお、レンズ3のこれらの処理では、好ましくは、収容空間内での水性処理液の流速が数cc/min〜数十cc/min程度とされると共に、該水性処理液の温度が室温〜80℃程度とされ、更に、処理液の交換間隔が数分から数十分程度とされる。このように温水を注入することで、レンズ内からの未反応モノマー等が効率的に除去されることとなる。最後に流通過程でのレンズの保存液を注入して、導管20は取り除かれる。
【0028】
その後、蓋体10を覆蓋したまま乃至はこれを取り除いて、ケース2の天板部5を、封止シールで覆いさらにヒートシールすることにより凹部4を密封空間とする。このように、本実施形態においては、レンズの処理ケースと流通ケースが兼用となるため、含水状態のレンズに対して直接機械的に接触することがないのでレンズの破損等の不良が効果的に除かれる。こうして密封されたケースは、必要に応じて滅菌処理され適当な包装、印刷などが施された後流通過程にのせられる。
【0029】
以上、本発明の具体的な構成について記述してきたが、これはあくまでも例示にすぎないのであって、本発明は上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0030】
例えば、上記蓋体には1つまたは2つの貫通孔の例を示しているが、3つ以上の複数個有していてもよく、さらには貫通孔の場所が中心から偏寄させられていてもよい。更にまた凹部4乃至天板部5の形状や大きさ等は、適宜に変更されるものであることは言うまでもないところである。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に従う含水性コンタクトレンズの処理方法にあっては、含水性コンタクトレンズの水和処理乃至は洗浄処理を充分に行い、また、レンズがカールしたり気泡を巻き込むことなく、含水したレンズに直接接触しない処理方法を提供することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施態様を示す説明図である。
【図2】図2は処理ケースを上から見た平面図である。
【符号の説明】
1 処理容器
2 処理ケース
3 コンタクトレンズ
4 ケース凹部
5 ケース天板部
7 周溝
10 蓋体
12 収容空間
20 導管
21 貫通孔
22、23 注入口
24 排出口
Claims (3)
- 含水性コンタクトレンズが収容可能な凹部を有する樹脂製のケースに乾燥状態のコンタクトレンズを収容して該ケース内にてコンタクトレンズを含水膨潤させる処理方法において、含水処理液を注入する際に、第一段階において該ケース内の側壁部に対して適当量の液を注入し、続いて第二段階においてケース凹部中央上部からケース凹部中央下部に対して注入することを特徴とする含水性コンタクトレンズの水和処理方法。
- 前記ケースが処理ケースと流通ケースを兼ねることを特徴とする請求項1記載の含水性コンタクトレンズの水和処理方法。
- 前記請求項1または2の水和処理方法に用いられる含水処理液を注入するノズルであって、該注入ノズルの先端部に、ノズルの伸長方向に対して横方向への注入口、伸長方向への注入口、およびケース内に充填された処理液排出のための排出口を有することを特徴とする液注入ノズル。
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