以下、本発明の実施の形態を、図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の要部の斜視図である。
上記洗面台は、図1に示すように、シンク1と、水栓機構3と、電波センサ5とを備えると共に、電磁バルブ(図示省略)、及びコントローラ部(図示省略)をも備える。
シンク1には、例えば図1で示すように、全体として略矩形状を呈するものが採用されている。シンク1の短辺側の断面形状は、底部から上部開口に向かって拡がるような略台形状を呈する。シンク1の一方の側面は、外部側面と内部側面とから成る二重構造を呈しており、その内部側面には、電波センサ5が取付けられる。シンク1の後部(例えばトイレブース(ここでは図示しない)等の壁面に密着される方の側)には、水栓機構取付部1aが形成されている。
水栓機構3は、例えば略円柱形状を呈し、給水管(図示省略)に連通する機構本体3aと、その機構本体3aからやや斜め下方に向かって延び、先端部に吐水口3cを持つ吐水部3bとから成る。水栓機構3は、吐水口3cをシンク1の上方に臨ませた状態で、機構本体3aが水栓機構取付部1aに嵌め込まれることにより、シンク1に立設して取付固定されている。
電磁バルブ(図示省略)は、一端側が機構本体3aを通じて吐水口3cに、他端側が機構本体3aを通じて給水管(図示省略)に夫々連通する配水管(図示省略)に取付けられている。電磁バルブ(図示省略)は、コントローラ部(図示省略)からの電磁バルブ制御信号に従って配水管(図示省略)を開/閉する。電磁バルブ(図示省略)が開くことにより、吐水口3cから略下方に向かって水流が吐出される。
電波センサ5には、動体(例えば、シンク1の上方空間に進入する手や、吐水口3cから吐出される水流、或いは水滴)検知のためのマイクロ波センサが採用されている(以下、「電波センサ5」を、「マイクロ波センサ5」と表記する)。マイクロ波センサ5は、電波ビームの放射方向を、符号11、13、15、17で示すようにスキャニングする。
放射方向11は、マイクロ波センサ5の送信部(図示省略)と、吐水口3cとを結ぶ直線と一致する方向であり、放射方向13は、上記送信部(図示省略)と、吐水口3cとシンク1の底面との略中間点とを結ぶ直線と一致する方向である。また、放射方向15は、上記送信部(図示省略)と、シンク1内における、放射方向11、13とは別の任意の点とを結ぶ直線と一致する方向であり、更に、放射方向17は、上記送信部(図示省略)と、シンク1の外部空間であって、洗面台の正面側(図1で示すシンク1では、図1の左端側)における任意の点とを結ぶ直線と一致する方向である。
放射方向11は、マイクロ波センサ5が、シンク1の上方空間(吐水口3aの略直下)に進入しようとする手、即ち、水栓機構3により洗浄しようとする手を主な検知対象とするときのスキャニングの方向である。次に、放射方向13は、マイクロ波センサ5が、吐水口3cから吐出され、洗浄しようとする手に当って落下する水流を主な検知対象とするときの方向である。次に、放射方向15は、マイクロ波センサ5が、シンク1の上方空間において洗浄動作を行わない手(既に洗浄動作を終了した手、及び当初から洗浄動作を行わなかった手)を主な検知対象とするときの方向である。更に、放射方向17は、マイクロ波センサ5が、シンク1外の空間領域における洗浄動作を終了した後の手を主な検知対象とするときの方向である。
マイクロ波センサ5が放射する電波ビームは、或る程度の広がりを持ち、手の進入/退出や、吐水口3cから落下する水流(水滴)等が検知可能な或る程度広がった空間領域を、上述した各放射方向11、13、15、17において夫々形成する。
例えば、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向11に設定されている状態で、放射方向11に沿う空間領域に手が進入すると、マイクロ波センサ5から放射された電波ビームが手に反射されて、反射された反射電波をマイクロ波センサ5が受信する。マイクロ波センサ5は、放射される電波ビームの励振信号と受信された反射電波の信号とに基づいて、両信号間の周波数差に等しい周波数を持つドップラ信号を生成し、該ドップラ信号を、コントローラ部(図示省略)へ出力する。
マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向13、15、17に夫々設定されているときにおいても、マイクロ波センサ5は、上記と同様な対象物の検知動作を行う。
本実施形態では、マイクロ波センサ5は、例えば、断面が略くの字状を呈するマイクロ波センサ固定部材(図示省略)に取付固定された状態で、シンク1の内部側面に取付固定されている。なお、マイクロ波センサ固定部材(図示省略)は、シンク1の略水平面に取付固定されている。
マイクロ波センサ5については、陶器、即ち、シンク1の裏面に直接取り付けることも可能であるが、シンク面の平坦度合のばらつきや出来上がり角度のばらつきにより、センサ設置面が安定しない。そのため、電波ビームの放射角度を正確に設定するには、例えば既述のような断面が略くの字状のマイクロ波センサ固定部材(図示省略)を、シンク1の略水平面に取付固定し、その後に該マイクロ波センサ固定部材(図示省略)にマイクロ波センサ5を取付固定する必要がある。
コントローラ部(図示省略)は、マイクロ波センサ5から出力されるドップラ信号に基づいて、手が上記空間領域に進入したか否か判断し、手が存在すると判断したら、電磁バルブ開の制御信号を出力することによって電磁バルブ(図示省略)を開動作させ、水栓機構3から吐水口3cを通じて水を吐水させる。
コントローラ部(図示省略)は、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向11に設定されている状態で、マイクロ波センサ5から対象物の検知信号が出力された場合には、その対象物を、洗浄のため吐水口3cの略直下の空間領域に向かって進入しようとする手であると判別する。そして、吐水口3cが現在吐水中であれば、吐水を継続すべく、未だ吐水を行っていなければ、吐水を開始すべく、電磁バルブ(図示省略)に制御信号を出力し、上述した配水管(図示省略)を開状態にする。
コントローラ部(図示省略)は、また、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向13に設定されている状態で、マイクロ波センサ5から対象物の検知信号が出力された場合には、該対象物を、上記吐水口3cから吐出され、洗浄しようとする手に当って落下する水流(水滴)であると判別する。そして、吐水口3cからの吐水を継続すべく、電磁バルブ(図示省略)に制御信号を出力し、上述した配水管(図示省略)を開状態にする。
コントローラ部(図示省略)は、また、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向15に設定されている状態で、マイクロ波センサ5から対象物の検知信号が出力された場合には、その対象物を、洗浄動作を行わない手であると判別する。そして、吐水口3cから吐水が行われていれば、吐水を中止すべく、吐水口3cから吐水が行われていなければ、吐水を行わないように(禁止)すべく、電磁バルブ(図示省略)に制御信号を出力し、上述した配水管(図示省略)を閉状態にする。この放射方向15は、洗浄中には手の進入が無い吐水口3cから吐出される水の軌跡に向かって設定してもよく、放射方向15で非検知状態であれば、手が挿入され先浄水が放射方向15と交わる方向に排水されていると判断し、放射方向15で検知状態であれば、手が退去し水流を検知していると判断できる。
ここで、洗浄動作を行わない手とは、既に洗浄が終って更に洗浄動作を行うことの無い手か、或いは、偶々シンク1の近傍を通過して行く、洗浄の意図の無い者の手の何れかである。
コントローラ部(図示省略)は、更に、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、放射方向17に設定されている状態で、マイクロ波センサ5から対象物の検知信号が出力された場合には、その対象物を、洗浄動作を終了して、タオル等で拭っている手であると判別する。そして、吐水口3cから吐水が行われていれば、吐水を中止すべく、吐水口3cから吐水が行われていなければ、吐水を行わないように(禁止)すべく、電磁バルブ(図示省略)に制御信号を出力し、上述した配水管(図示省略)を閉状態にする。
なお、上述した水栓機構3、マイクロ波センサ5、電磁バルブ(図示省略)、及びコントローラ部(図示省略)により、本発明の一実施形態に係る自動吐水制御装置が構成される。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電波センサ、即ち、図1で示したマイクロ波センサ5から放射される電波ビームが含む複数方向の成分に係わる説明図である。
図1で示したマイクロ波センサ5から放射される電波ビームは、図2に示すように、X(縦)方向成分、Y(横)方向成分、及びZ(高さ)方向成分の3次元方向の(ベクトル)成分を持つ。
洗浄を行おうとする手は、基本的には、洗面台の正面(図1で示すシンク1では、図1の左端側)から進入する場合が最も多いが、手の進入方向は、洗面台(シンク)の形状や設置位置や洗面台の使用者の背の高さなどによって異なり、一律に決められるものではない。マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向を、X方向(成分)、Y方向(成分)、及びZ方向(成分)に分解した際に、これら3つの方向成分を持つ電波ビームをマイクロ波センサ5から放射することにより、手がどんな方向からシンク1の上方空間に進入しても、手の有無(手洗い動作の有り無し)を識別し得る検知信号(ドップラ信号)を取得することができる。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向をスキャニングすることにより、検知した手の動作によって洗浄しようとする手であると判別した場合に、吐水を開始させることができる。また、検知した手の動作によって洗浄後の手、又は洗浄するつもりのない手であると判別した場合には、直前の手洗いにより現在吐水を継続中であれば吐水を中止させ、吐水中でなければ吐水を禁止させることができるので、無駄な吐水を防止でき、節水に資する。
また、上述したように、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向をスキャニングすることにより、吐水口3cの略直下において、手が洗浄動作を行っているか否か、又は、その洗浄動作を行っている手から落下する水があるか否かという2種類の検知信号を取得することができる。そのため、マイクロ波センサ5からのどちらか一方の検知信号の出力が途切れたとしても、吐水を継続させることが可能である。なお、上記2種類の検知信号のうちのどちらか一方が途切れる場合としては、手が洗浄動作を止めて単に手を濡らしているような場合や、吐水口3cから落下する水が、手の形状によってマイクロ波センサ5の検知可能領域からずれた場合や、吐水口3cから落下する水をコップに溜めている場合等が想定される。
図3は、本発明の第1の実施形態に係わる電波センサ(マイクロ波センサ)5の詳細構成を示すブロック図である。
図3において、発振回路315で生成された電磁波は、分岐回路317を通じて送信アンテナ323側と、検波回路319側とに分岐され、位相制御回路321を通じて送信アンテナ323側に伝送された電磁波は、送信波として送信アンテナ323から空間に放射される。この送信波がドップラセンサ、即ち、マイクロ波センサ5側に向かって速度Vで移動中の手335に当って反射波になると、該反射波は、ドップラセンサ(即ち、マイクロ波センサ)5側に向かって伝播し、受信アンテナ325によって受信される。受信アンテナ325によって受信された反射波、即ち、電磁波は、位相制御回路321、及び分岐回路317を通じて検波回路319に出力され、検波回路319において、上記分岐された送信波の一部を基準波形として、該送信波の一部とミキシングされる。検波回路319からの出力は、下記の(1)式に示すように、物体、即ち、手335の移動速度Vに比例した周波数成分を持つ信号であり、該信号は、物体、即ち、手335とドップラセンサ(即ち、マイクロ波センサ)5との間の距離が近くなるほど大きな振幅変化を得ることができる。
δF=│Fs−Fb│=2×Fs×v/c (c>>vのとき)・・・(1)
上記(1)式において、δFはドップラ周波数であり、Fsは送信波の周波数であり、Fbは受信波の周波数であり、Vは物体(即ち、手335)の移動速度であり、cは光速(300×1016m/s)である。
図4は、本発明の第1の実施形態に係わるコントローラ部の詳細構成を示す機能ブロック図である。
コントローラ部340は、図4に示すように、位相差設定部341と、受信信号検出部343と、演算処理部345と、バルブ制御部347と、を含む。
位相差設定部341は、(図3で示した)位相制御回路321の位相差を設定するものである。位相差設定部341は、演算処理部345の制御下で、後述するパッチアンテアを構成する複数個の給電素子(例えば、図5に示すマイクロ波センサの回路構成では、パッチアンテナ381の給電素子(アンテナ)369〜375に対し、夫々マイクロ波生成部である発振回路351から所定の給電位相差を持った電力が供給されるよう、発振回路351から上記複数個の給電素子(369〜375)に対する高周波電流の位相差を設定する。そして、決定した給電位相差に基づいて、例えば図5に示す移相器357、359を制御する。
受信信号検出部343は、演算処理部345の制御下で、電波センサ(即ち、マイクロ波センサ)5から出力される信号(ドップラ信号)を受けて、所定の信号処理を施した後、演算処理部345に出力する。
バルブ制御部347は、演算処理部345の制御下で、バルブ駆動部(図示しない)に対し、バルブ349の開/閉動作を制御するための制御信号を出力する。
演算処理部345は、位相差設定部341における上記給電位相差の設定動作を制御すると共に、受信信号検出部343から出力される所定の信号処理が施された後のドップラ信号を受け、該ドップラ信号に基づいて所定の演算処理を施すことにより、バルブ制御部347の動作を制御する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係わるマイクロ波センサ5の要部の構成を示した説明図である。
上述したマイクロ波センサ5において、マイクロ波放射/受信アンテナとして、符号369、371、373、375で示す4個のアンテナが、図5に示すように、2個で1組として合計2組設けられている。アンテナ369、371は、移相器357を通じて検波回路353、及びマイクロ波生成部、即ち、発振回路351に、また、アンテナ373、375は、移相器359を通じて検波回路353、及び発振回路351に、夫々接続されている。
移相器357は、アンテナ369、371から放射されるマイクロ波の放射方向を、上向き(即ち、シンク1の上方空間の使用者の手が進入するであろう領域)、又は横向き(吐水口3cから落下する水滴が検知されるであろう領域)等に、必要に応じて切り替えるための線路切替スイッチ355を備える。線路切替スイッチ355は、例えば図4で示した位相差設定部341からの切替制御信号によって符号361で示す角度45°から符号363で示す角度0°へ、また、符号363で示す角度0°から符号361で示す角度45°へ切替動作する。この切替動作により、アンテナ369/371から放射されるマイクロ波の放射角度が、45°から0°へ、或いは0°から45°へ、切り替えられることになる。
一方、移相器359も、アンテナ373、375から放射されるマイクロ波の放射方向を、上向き、又は横向き等に、必要に応じて切り替えるための線路切替スイッチ355を備える。線路切替スイッチ355も、例えば図4で示した位相差設定部341からの切替制御信号によって符号365で示す角度0°から符号367で示す角度90°へ、また、符号367で示す角度90°から符号365で示す角度0°へ切替動作する。この切替動作により、アンテナ373/375から放射されるマイクロ波の放射角度が、0°から90°へ、或いは90°から0°へ、切り替えられることになる。
検波回路353は、アンテナ369/371、或いは、アンテナ373/375から放射され、検知対象物である使用者の手、又は吐水口3cから落下する水滴に当たって反射し、アンテナ369/371、或いは、アンテナ373/375に入射したマイクロ波を検知する機能を有する。なお、検波器353の出力側端子には、例えば図4で示した受信信号検出部343が接続されているものとする。
発振回路351は、上述したように、発振動作することによってマイクロ波の電流信号を生成し、該マイクロ波の信号を、移相器357を通じてアンテナ369、371に、又は移相器359を通じてアンテナ373、375に、夫々供給する。
なお、上記構成のマイクロ波センサ5では、電波ビームの放射方向を4方向に設定することが可能であるが、電波ビームの放射方向を5方向以上に設定する場合には、アンテナ、及び移相器から成る、位相差の異なる回路構成の組み合わせを、直列接続することで対処可能である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係わるパッチアンテナにおける給電位相差による電波ビームの放射方向の変化を示す図である。
図6において、縦軸にはマイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向の角度(deg)が、横軸には発振回路351から夫々各給電素子(369〜375)に供給される電力の給電位相差(deg)が、夫々設定されている。パッチアンテナの基板(図示しない)上において、対になっている給電素子同士の間隔の大きさにより、一方の給電素子からの電波ビームの放射方向と、他方の給電素子からの電波ビームの放射方向との間に角度の開きが生じる。そして、上記電波ビームの放射方向の角度と、上記給電位相差との間には、図6に示すような関係がある。
ここで、電波ビームの曲がる原理について説明する。
電波ビームは、アレイ化されたアンテナに、位相の異なる高周波電流を供給することにより、例えば、図6に示したような角度で曲がる。図5で示した例では、アンテナ369、371と、アンテナ373、375とが、夫々ペアになっているため、アンテナ369、371のペアと、アンテナ373、375のペアとに夫々供給される電流の位相が異なった場合には、位相の遅れたアンテナのペア側の方向に、放射される電波ビームが曲がる。その位相差を、線路361、363、365、367を選択することにより、4方向に電波ビームを放射させることが可能になる。
図5で示した例では、夫々のアンテナペア369、371と、373、375との基準線路を、線路363、365とし、線路361は、基準線路363よりも位相が45°遅れるように設けられ、線路367は基準線路より90°位相が遅れるように設けられている。従って、線路361、365を選択すると、アンテナ369,371のペアの位相が45°遅れ、線路363、367を選択すると逆にアンテナ369、371のペアの位相が90°進む。同様に、線路361、367では、アンテナ369、371のペアの位相が45°進み、線路363、365を選択すると、双方のアンテナのペアは同じ位相になる。この結果を、図6に記載の内容と照合すると、アンテナからの電波ビームの放射方向は、アンテナ369、371のペア側に12°方向、パッチアンテナ(基板)の法線方向、アンテナ373、375のペア側に12°、21°の4方向になる。
図7は、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台が設置されているトイレブースを示す斜視図である。
図7に示すトイレブースでは、図1で示した自動吐水制御装置を備えた洗面台19が、ロータンク21を備えた洋式便器装置23に向かって左側の壁面25に取付固定されている。そして、上記自動吐水制御装置を構成する電波センサ、即ち、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、夫々矢印方向27、29、31、33、35、37にスキャニングされる。マイクロ波センサ5からの電波ビームの、矢印方向27への放射により、洗浄のため吐水口3cの略直下に進入しようとする手がマイクロ波センサ5によって検知された場合には、(水栓機構3からの)吐水動作が行われる。同様に、マイクロ波センサ5からの電波ビームの、矢印方向29への放射により、洗浄中の手から落下する水流(水滴)がマイクロ波センサ5によって検知された場合にも、(水栓機構3からの)吐水動作が行われる。
また、マイクロ波センサ5からの電波ビームの、矢印方向31への放射により、トイレ扉39の開/閉動作がマイクロ波センサ5によって検知された場合、上記電波ビームの、矢印方向33への放射により、洗浄後の手のタオルによる拭取り動作がマイクロ波センサ5によって検知された場合には、(水栓機構3からの)吐水動作は行われない。同様に、上記電波ビームの、矢印方向35への放射により、洋式便器装置23で用を足すためにトイレブース内を移動する人の動きがマイクロ波センサ5によって検知された場合にも、(水栓機構3からの)吐水動作は行われない。更には、上記電波ビームの、矢印方向37への放射により、洋式便器装置23で用を足す際の人体の動きがマイクロ波センサ5によって検知された場合にも、(水栓機構3からの)吐水動作は行われない。
上述した内容から明らかなように、本発明の第1の実施形態に係る自動吐水制御装置を備える洗面台を採用したトイレブースでは、マイクロ波センサ5が洗浄中の手や、洗浄中の手から落下する水流(水滴)等を検知したときには、水栓機構3からの吐水動作が行われ、それ以外の場合には、(水栓機構3からの)吐水動作は行われない。よって、洗面台の使用者が、手の洗浄をすべく吐水口3cの略直下に手を差出した場合には、確実に吐水が行われると共に、洗浄後の手のタオルによる拭取り動作、トイレ扉39の開/閉動作、洋式便器装置23で用を足す際の人体の動き、及び洋式便器装置23で用を足す際の人体の動きが検知された場合には、吐水が行われないので、無駄な吐水を防止することができる。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台の要部の断面図である。
本実施形態では、洗浄を目的とする手の吐水口(図示省略)の略直下の空間への進入、及び洗浄を終了した手のその空間からの退出を判別するため、洗面台の上方空間、及びその近傍の空間における手の進入/退出の軌跡に沿うような方向にマイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向をスキャニングさせる。そして、マイクロ波センサ5からのドップラ信号の発生推移(差)をチェックすることとした。上記以外の構成については、本発明の一実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台と同様である。
図8において、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、矢印方向41、43、45の順にスキャニングされている状態で、最初のスキャニング方向41、次のスキャニング方向43、最後のスキャニング方向45の何れにおいても、マイクロ波センサ5が移動中の手47を検知した場合には、最後のスキャニング方向45においてマイクロ波センサ5が手47を検知した時点で、吐水が開始される。これは、上記検知された(移動中の)手47が、シンク49の正面方向(図8で示すシンク49では、図8の左端側)から吐水口(図示省略)に向かって進入しようとする手であるから、コントロール部(図示省略)は、洗浄を目的とした手であると判別するため、吐水が開始されることになる。
一方、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、矢印方向45、43、41の順にスキャニングされている状態で、最初のスキャニング方向45、次のスキャニング方向43、最後のスキャニング方向41の何れにおいても、マイクロ波センサ5が移動中の手47を検知した場合には、次のスキャニング方向43においてマイクロ波センサ5が手47を検知した時点で、吐水が停止される。これは、上記検知された(移動中の)手47が、吐水口(図示省略)からシンク49の正面方向に向かって退出しようとする手であるから、コントロール部(図示省略)は、(洗浄終了、又は洗浄をするつもりの無いが故に)洗浄を目的としない手であると判別するため、吐水が停止されることになる。
なお、最後のスキャニング方向41において、手(47)で吐水口(図示省略)から吐水される水を取る動作が行われ、それによりマイクロ波センサ5からのドップラ信号の振幅が大きくなっても、コントロール部(図示省略)は、吐水動作を行わせない。(最後の)スキャニング方向41において、マイクロ波センサ5からのドップラ信号の振幅が大きくなる原因としては、マイクロ波センサ5からの電波ビ−ムがシンク49の近傍を通過する人に当って反射する場合も想定され得る。
図8で示した構成によれば、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向を、所定の方向に沿って順にスキャニングさせることで、コントロール部(図示省略)は、上記電波ビームの各放射方向において検知された対象物の動きの方向を判別することが可能である。
また、コントロール部(図示しない)が、手47の、吐水口(図示省略)の略直下の空間への進入動作において、吐水口(図示省略)から一定距離まで手47が接近したと判定したとき、吐水を開始し、これとは逆に、手47の、その空間からの退出動作において、吐水口(図示省略)から一定距離まで手47が離間したと判定したとき、吐水を停止する制御を行うことも可能である。
更に、スキャニング方向41においてのみ、対象物、即ち、手47が検知された場合には、手47が、偶々シンク49の近傍を通過した人の手、或いは洗浄を終了した人の手(何れも洗浄を行うつもりの無い者の手)と判別して、無駄な吐水を禁止することで、水栓機構の誤動作を防止することが可能である。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る、洗面台の上方空間への手の進入時におけるマイクロ波センサ5からのドップラ信号の波形を示す図である。
図9において、上記ドップラ信号の波形(以下、単に「波形」という)51は、図8で示した矢印方向45に、電波ビームの放射方向をスキャニングしたときのマイクロ波センサ5から出力されるドップラ信号の波形であり、便宜上、ビーム上向き(のドップラ信号)と表記する。次に波形53は、図8で示した矢印方向43に、電波ビームの放射方向をスキャニングしたときのマイクロ波センサ5から出力されるドップラ信号の波形であり、便宜上、ビーム標準(のドップラ信号)と表記する。更に、波形55は、図8で示した矢印方向41に、電波ビームの放射方向をスキャニングしたときのマイクロ波センサ5から出力されるドップラ信号の波形であり、便宜上、ビーム下向き(のドップラ信号)と表記する。
図9において、縦軸は上述した各反射波の振幅(単位:mv)を、横軸は時間(単位:sec)を、夫々示す。
ビーム上向きのドップラ信号51が、マイクロ波センサ5から出力されるときの、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向、即ち、矢印方向45は、ビーム標準のドップラ信号53が、マイクロ波センサ5から出力されるときの、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向、即ち、矢印方向43よりも、例えば時計方向に20°進んだ方向に設定されている。一方、ビーム下向きのドップラ信号55が、マイクロ波センサ5から出力されるときの、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向、即ち、矢印方向41は、ビーム標準のドップラ信号53が、マイクロ波センサ5から出力されるときの、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向、即ち、矢印方向43よりも、例えば反時計方向に20°進んだ方向に設定されている。
図9において、符号t0で示した時間で、図8で示したシンク49の正面側の端部を、手47が通過すると、時間t0から遅れること0.038sec後の時間t1で、ビーム下向きのドップラ信号55の振幅の変動が開始される。即ち、時間t1で、移動する手47が検知される。更に、時間t1から遅れること0.286sec後の時間t2で、ビーム標準のドップラ信号53の振幅の変動が開始される。即ち、時間t2で、移動する手47が検知される。更に、時間t1から遅れること0.583sec後の時間t3で、ビーム上向きのドップラ信号51の振幅の変動が開始される。即ち、時間t3で、移動する手47が検知される。
上述したように、シンク49の正面側から吐水口(図示省略)に向かって移動する手47は、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が矢印方向41にスキャニングされている状態で、先ず検知され、次に、上記電波ビームの放射方向が矢印方向43にスキャニングされている状態でも検知され、更に、上記電波ビームの放射方向が矢印方向45にスキャニングされている状態でも検知される。そして、その最後の検知において、吐水が開始されることになるので、最初に手47が検知されてから、実際に吐水が開始されるまで、多少のタイムラグが生じることになる。
また、上記電波ビームの放射方向を、矢印方向41、43、45の順で連続的にスキャニングして、各放射方向における手47の検知タイミングの時間差を計算することにより、手47の移動方向を判別することが可能である。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る、洗面台の上方空間への手の進入時、及びその上方空間からの手の退出時におけるマイクロ波センサからのドップラ信号の波形を示す図である。
図10では、洗浄のために手がシンク上方の、吐水口の略直下の空間に向けて進入するとき、及びシンク内に手が存在しない状態での、マイクロ波センサから出力されるドップラ信号の実際の具体的な波形例を示す。
図10に示すドップラ信号波形61のうち、波形部分61Aは、手63がシンク65に進入してくるときに第1の電波ビーム67と手63からの反射電波とにより得られたドップラ信号の波形である。この波形部分61Aが検出されると、電波ビームを、第1の電波ビーム67から第2の電波ビーム73に切替えると共に、電磁バルブ(図示省略)をオンすることにより、上記吐水動作を開始する。
上記吐水動作の開始に際しては、上記ドップラ信号の振幅が、例えば1.0V以上あることが必要である。次に、波形部分61Bは、手63を洗浄するため手63に水をかけているときに第2の電波ビーム73と手63より落下する飛散水75からの反射電波とにより得られたドップラ信号の波形である。飛散水75、即ち、手63から落下する水の振舞は、自動水栓(図示省略)から単に落下する水流79のそれよりも大きな空間を占める。よって、上記ドップラ信号の振幅は、例えば2.0V以上と大きな値になる。
換言すれば、シンク65に進入する手63が検知されたことにより、第1の電波ビーム67から第2の電波ビーム73に切替えられ、その後に例えば振幅が2.0V以上のドップラ信号が得られれば、手洗中であるとして、自動水栓(図示省略)からの吐水が継続される。
次に、波形部分61Cは、手63の洗浄を止めた瞬間の、第2の電波ビーム73と自動水栓(図示省略)から落下する水流79からの反射電波とにより得られたドップラ信号の波形である。手洗いを止めることにより、自動水栓(図示省略)から吐出される水は、所謂整流水となって落下するため、上記ドップラ信号の振幅は、例えば1.2V以下と小さくなる。よって、上述した2.0V以上の大きな振幅のドップラ信号が得られた後、1.2V以下の小さな振幅のドップラ信号、即ち、波形部分61Cが検出されると、電波ビームを第2の電波ビーム73から第1の電波ビーム67に切替えると共に、電磁バルブ(図示省略)をオフにすることにより、上記吐水動作を停止する。
次に、波形部分61Dは、手洗いが終わって手63が吐水口(図示省略)の略直下のエリアとは別のエリアから退出するときに、第1の電波ビーム67とその別のエリアから退出する手63からの反射電波とにより得られたドップラ信号の波形である。この場合、上記ドップラ信号の振幅は、図示のように、かなり大きな値になるが、電磁バルブ(図示省略)をオフにした時点から所定時間、例えば0.7秒が経過するまでの間は、コントロール部(図示省略)が上記ドップラ信号に基づく判断処理を行わない、所謂マスク処理を実施することにより、手63の上記別のエリアからの退出動作を無視する。
次に、波形部分61Eは、新たな手洗いに伴う手や、水の検知動作に備える場合のドップラ信号の出力波形であり、上述した波形部分61Aと符合している。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台において、電波センサから複数方向に放射される電波ビームの成分に係わる説明図である。
本実施形態では、マイクロ波センサ5からの電波ビームの放射方向が、矢印方向83、85、87、89の順、及び矢印方向89、87、85、83の順でスキャニングされるように設定されている。なお、図11において、符号91は吐水口を、符号93は吐水口91から吐出される水流を、夫々示す。
本実施形態では、身長の低い使用者の手、即ち、吐水口91から吐出され、シンク49の排水口49aに落下する直前の水流93に差し出される使用者の手95は、図12に示すように、電波センサ5から(比較的下方向の)矢印方向83、85に放射される電波ビームによって検知が可能である。これに対して、身長の高い使用者の手、即ち、シンク49における吐水口91の近傍部位に差し出される使用者の手97は、図13に示すように、電波センサ5から(比較的上方向の)矢印方向87、89に放射される電波ビームによって検知が可能である。
シンク49に差し出される使用者の手の角度は、単に使用者の身長差によるものだけではなく、同一の使用者であっても、シンク49に対して該使用者の取る姿勢によっても異なるし、また、使用者の手にコップや雑巾等が把持されている場合や、使用者の手が石鹸で泡立っている場合にも異なることがある。よって、電波センサ5から或る特定の方向のみに電波ビームを放射すると、シンク49に差し出された使用者の手を検知できない場合が生じるので、使用者が一旦シンク49に差し出した手の位置を変更しない限り、水栓から水が吐出されないという、使い勝手の悪い自動吐水制御装置になる虞がある。
しかし、本実施形態のように、予め電波センサ5から複数の方向に電波ビームが放射されるように設定しておけば、あらゆる使用者に対しても、また、使用者の如何なる状態に対しても、シンク49に差し出された手を確実に検知して、吐水を実行することが可能になる。
図14、及び図15は、本発明の第4の実施形態に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台において、電波センサからの電波ビームの放射方向に係わる説明図である。
図14、及び図15に示す構成の自動吐水制御装置を備えた洗面台では、吐水口3cからの吐水が止水されている状態での、シンク49へ進入する手99の検知に対しては、図14に示すように、電波センサ5からの電波ビームの放射方向を上向きに設定するのが好ましい。これに対して、吐水口3cからの吐水が継続されている状態での、洗浄中の手99から飛散する散乱水101の検知に対しては、図15に示すように、電波センサ5からの電波ビームの放射方向を下向きに設定するのが好ましい。
図16、及び図17は、本発明の第4の実施形態の変形例に係る自動吐水制御装置を備えた洗面台において、電波センサから複数方向に放射される電波ビームの成分に係わる説明図である。
図16、及び図17に示す構成の自動吐水制御装置を備えた洗面台では、吐水口103からの吐水が止水されている状態での、シンク105へ進入する手107の検知に対しては、図16に示すように、電波センサ5からの電波ビームの放射方向を斜め横向きに設定するのが好ましい。これに対して、吐水口103からの吐水が継続されている状態での、洗浄中の手107から飛散する散乱水109の検知に対しては、図17に示すように、電波センサ5からの電波ビームの放射方向を斜め上向きに設定するのが好ましい。
上述した本発明の第3、第4の実施形態、及び第4の実施形態の変形例以外にも、電波センサ5からの電波ビームの放射方向には種々のものが想定され得る。
図18は、本発明に従う自動吐水制御装置を備えた洗面台における、電波センサ5からの電波ビ−ムの放射方向を示す説明図である。
電波センサ(5)からの電波ビームの放射方向は、例えば既述のコントローラ部(図示省略)によって、図18に示すように、4種類の制御パターンのうちの何れか1つに選択的に制御される。
図18において、制御パターン1では、電波ビームの放射方向は、シンクへの手の進入時には略水平方向に、手の洗浄等のための吐水時には斜め下方向に、夫々設定される。次に、制御パターン2では、電波ビームの放射方向は、シンクへの手の進入時には略水平方向に、手の洗浄等のための吐水時には略水平方向、及び斜め下方向に、夫々設定される。次に、制御パターン3では、電波ビームの放射方向は、シンクへの手の進入時には略鉛直方向、斜め上方向、及び略水平方向に、手の洗浄等のための吐水時には斜め下方向に、夫々設定される。次に、制御パターン4では、電波ビームの放射方向は、シンクへの手の進入時には略水平方向に、手の洗浄等のための吐水時には急な角度の斜め下方向と緩い角度の斜め下方向との間をスキャニングするように、夫々設定される。
上述した4つの制御パターンの何れか1つを、シンクとして採用される洗面ボールの形状に応じてコントローラ部(図示省略)が適宜選択することにより、同一の電波センサであらゆる形状の洗面ボールに対応した人体検知用のセンサを実現することができる。そのため、光電センサを人体検知用のセンサとして用いていた従来の自動吐水制御装置付きの洗面台とは異なり、シンクとして用いる洗面ボールの形状や、その色彩や、製造される陶器のばらつき等に起因して、1品毎にセンサの調整を行ったり、多品番のセンサを揃えたりする必要が無くなり、省設計が可能となった。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。