JP4595754B2 - 水和物スラリ製造装置および水和物スラリ製造方法 - Google Patents

水和物スラリ製造装置および水和物スラリ製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、空調設備や産業用の冷熱利用設備の冷熱輸送媒体または蓄冷材として利用される水和物スラリを効率よく製造する装置及び製造方法に関する。
固液相変化時の潜熱を用いた冷熱媒体としては、例えば、水和物スラリが知られている。
ゲスト化合物を含む水溶液を冷却すると、ホスト分子である水分子によって構成された籠状の包接格子内にゲスト化合物が包み込まれて結晶化し、水和物(液系包接水和物)が生成する。
この水和物は、大気圧下において0℃以上の温度で生成でき、しかも潜熱が大きく冷水に比較して数倍の熱量の冷熱を貯蔵することができる。また、この水和物は微細な粒子であり水溶液中に浮遊するため、比較的流動性の高い水和物スラリの形態で存在する。このため、このような水和物スラリは、空調設備や産業用冷熱利用設備などで利用される冷熱輸送媒体として輸送動力を軽減することができ、大幅な省エネルギー効果が得られるなど好ましい特性を有している。
水和物スラリを製造する際には冷却媒体と熱交換器により熱交換して冷却するが、その熱交換器の冷却面には、次第に水和物粒子が付着し、それが熱抵抗となって冷却性能を低下させたり、流路が狭くなり圧力損失を増大させたりする。この問題を解決するための水和物スラリの製造方法及び製造装置が特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示のものは、水溶液もしくは製造途中の水和物スラリと冷却媒体との間で熱交換を行う熱交換器の冷却面に水和物が付着したとき、該熱交換器の冷却媒体流路に加熱媒体を供給することにより、前記付着した水和物を融解するものである。そして、加熱媒体とは、付着している水和物よりも温度が高い媒体をいい、例えば、加熱された温水のほか、冷凍機のドレン水または冷却塔の冷却水と熱交換を行った冷水、空調機の戻り水溶液などでもよいとされている(特許文献1参照)。
一方、水和物スラリを製造する場合には過冷却解除に関する対策が必要である。
従来、上述した水和物スラリは、1台の熱交換器でゲスト化合物を含む水溶液を、冷水などの冷熱媒体と熱交換させて冷却することにより製造していた。この際、ゲスト化合物を含む水溶液を冷却すると過冷却現象が起こり、水和物生成温度より低い温度で水溶液として存在していることがある。
そして、熱交換器内で水溶液が過冷却された後に、熱交換器内部の伝熱面において水溶液の過冷却が解除されると、生成した水和物が熱交換器内部の伝熱面に付着しやすくなり、付着した水和物が熱抵抗となるため、熱交換器の伝熱性能を低下させる。
さらに、熱交換器内で水溶液に大きな過冷却が生じた後に過冷却が解除されると、急激に水和物が生成して流動抵抗および圧力損失が大きくなってポンプ動力が増加する。
以上のように、熱交換器内で水溶液の過冷却が解除されると、これが空調設備全体の運転を不安定にする要因となっていた。
そこで、水溶液の過冷却が熱交換器内部の伝熱面で解除されるのを防止して、効率的に水和物スラリを製造できる製造装置として特許文献2に開示された水和物スラリ製造装置がある。
特許文献2に開示された水和物スラリ製造装置においては、水和物スラリを製造するための熱交換器を、水溶液を過冷却状態にする水溶液熱交換器と、前記水溶液熱交換器の下流側に設けられ水和物スラリを冷却する水和物スラリ熱交換器とに分割し、水溶液熱交換器と水和物スラリ熱交換器との間に過冷却解除器を設けて、水和物スラリ熱交換器内での過冷却の解除を避け、過冷却の解除に伴う問題に対処している。過冷却解除されて生成した水和物スラリは水和物スラリ熱交換器でさらに冷却されて蓄熱密度を高められ、空調負荷へ送られ冷熱を供給して、水和物が融解した水溶液が水溶液熱交換器へ戻る。
また、空調運転中に、水和物スラリ熱交換器の伝熱面で水和物スラリの付着が起こり始めた場合には、水和物スラリ熱交換器への冷水の供給を停止し、冷凍機廃熱やヒータなどによって温めた温水を貯蔵している温水タンクから温水を供給し、熱交換器内部の伝熱面に付着した水和物を融解するようにしている(特許文献2参照)。
特開2001−343139号公報 特開2004−3718号公報
確かに、特許文献2に開示された水和物スラリ製造装置によれば、過冷却解除の問題を解決できると共に、水和物スラリ熱交換器の伝熱面に付着する水和物スラリを確実に融解することができる。
しかしながら、特許文献2においては水和物スラリ熱交換器面に付着する水和物スラリの融解を、温水タンクに貯留している温水を水和物スラリ熱交換器に供給して行うようにしているので、温水タンク、温水を搬送するためのポンプ、温水供給配管、冷水ラインとの切り替え弁等の設備が別途必要となり、設備費が嵩むという問題がある。また、温水を作るのをヒータによって行う場合には、電力が大きく増加してしまうという問題もある。
この点、温水タンクを用いることなく融解運転を行う方法として以下のようなことが考えられる。すなわち、融解運転時には水溶液熱交換器と水和物スラリ熱交換器への冷水供給を停止し、空調負荷から戻ってきた温かい戻り水溶液を水和物スラリ熱交換器の水和物スラリ側ラインに流して、熱交換器内部の伝熱面に付着した水和物を融解する。
しかしながら、この場合には冷水供給を完全に止めるため水和物スラリの製造を全く行えなくなってしまう。また、温かい戻り水溶液は水和物スラリ熱交換器の水和物スラリ側ラインに流すことになるため、温かい戻り水溶液が水和物が付着している水和物スラリ熱交換器に達するまでに時間を要し、速やかな融解が行えない。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、設備費の増加を抑制できると共に、熱交換器の冷却面に付着する水和物による支障が生じることなく水和物スラリを安定して製造することができる水和物スラリ製造装置および製造方法を得ることを目的としている。
(1)本発明に係る水和物スラリ製造装置は、水和物を生成するゲスト化合物の水溶液を冷却媒体によって過冷却状態にする水溶液熱交換器と、該水溶液熱交換器で過冷却状態にされた前記水溶液の過冷却を解除する過冷却解除器と、該過冷却解除器で過冷却解除されて生成された水和物スラリを冷却媒体によって冷却する水和物スラリ熱交換器と、前記水和物スラリ熱交換器の冷却面に付着した水和物を除去するために行う融解運転回路を具備した水和物スラリ製造装置であって、
該融解運転回路は、前記水溶液熱交換器において水溶液と熱交換した冷却媒体を前記水和物スラリ熱交換器に供給する冷却媒体回路と、前記過冷却解除器で過冷却解除されて生成された水和物スラリを、前記水和物スラリ熱交換器をバイパスして負荷側に送るバイパス回路と、を備えてなることを特徴とするものである。
(2)本発明に係る水和物スラリ製造方法は、水和物を生成するゲスト化合物の水溶液と冷却媒体との間で熱交換を行って水溶液を過冷却状態にし、過冷却を解除して水和物スラリを生成した後、水和物スラリを冷却媒体によって冷却する水和物スラリ製造方法であって、水和物スラリと冷却媒体との間で熱交換を行う水和物スラリ熱交換器の冷却面に水和物が付着したとき、該水和物スラリ熱交換器の冷却媒体供給回路に、前記水溶液と熱交換を行った冷却媒体を供給することにより前記付着した水和物を融解するとともに、過冷却解除されて生成された水和物スラリを前記水和物スラリ熱交換器をバイパスして負荷側に送る融解運転工程を備えたことを特徴とするものである。
本発明においては、水和物スラリ熱交換器の冷却面に付着した水和物を除去するために行う融解運転回路を、水溶液熱交換器において水溶液と熱交換して付着水和物よりも温度の高くなった冷却媒体を前記水和物スラリ熱交換器に供給する冷却媒体回路と、過冷却解除器で過冷却解除されて生成された水和物スラリを、水和物スラリ熱交換器をバイパスして負荷側に送るバイパス回路と、を備えてなる構成にしたことにより、簡易な構成でありながら、温水タンクなどの付属機器を設けることなく融解運転が可能となりコストが低減でき、しかも融解運転中においても水和物スラリの製造を継続できるので、エネルギー効率が高い。
図1は本発明に係る水和物スラリ製造装置の構成の説明図である。本発明に係る水和物スラリ製造装置は、水和物を生成するゲスト化合物の水溶液(以下水溶液という)をその溶液状態を保持して冷却媒体(本例では冷水)によって過冷却する水溶液熱交換器1と、水溶液熱交換器1で過冷却された水溶液の過冷却を解除する過冷却解除器3と、過冷却解除器3で過冷却解除されて生成された水和物スラリを冷却媒体によって冷却する水和物スラリ熱交換器5とを備えている。
水溶液熱交換器1、過冷却解除器3および水和物スラリ熱交換器5には前述の水溶液または水和物スラリの冷熱輸送媒体が流れる冷熱輸送媒体用配管7が接続されている。
また、水溶液熱交換器1および水和物スラリ熱交換器5には、図示しない冷凍機で生成された冷水を送るための冷水配管9が接続されている。
以下、水和物スラリ製造装置を構成する各構成機器を詳細に説明する。
1.水溶液熱交換器
水溶液熱交換器1は負荷側から戻される水溶液と冷水との熱交換を行うことにより、水和物を生成するゲスト化合物の水溶液を過冷却状態に冷却する。
なお、水和物を形成して高い潜熱量を有するゲスト化合物としては、テトラn−ブチルアンモニウム塩、テトラiso−アミルアンモニウム塩、テトラiso−ブチルホスホニウム塩、トリiso−アミルスルホニウム塩などの各種塩類などであり、テトラn−ブチルアンモニウム塩の例として、フッ化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NF)、塩化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NCl)、臭化テトラn−ブチルアンモニウム((n−C494NBr)などがある。
また、これらF,Cl,Brの代わりに酢酸(CH3CO2)、クロム酸(CrO4)、タングステン酸(WO4)、シュウ酸(C24)、リン酸(HPO4)でもよい。その他の上記塩についても同様である。
2.過冷却解除器
過冷却解除器3は、水溶液熱交換器1によって過冷却状態にある水溶液の過冷却を解除する。
過冷却解除器3における過冷却解除は、過冷却状態の水溶液に水和物スラリの一部を注入して水和物生成の核とすることにより水溶液の過冷却を解除することにより行われる。
もっとも、過冷却解除器3はこのような態様のものに限定されるものではなく、以下に示すような種々の態様のものを用いることができる。
(1)冷却端型の過冷却解除器
小型冷凍機に接続された冷却部からなっており、冷却部は外部から過冷却状態の水溶液が通る配管中に挿入されている。冷却部は小型冷凍機により水和物生成温度以下に冷却されており、その表面に水和物が付着している。過冷却された水溶液が冷却部に接触すると、冷却部の表面に付着した水和物が生成核として作用し過冷却が解除され、容易に水和物が生成する。
なお、ペルチェ素子などからなる低温突起を過冷却状態の水溶液が通る配管に挿入してもよい。このような低温突起も、前記した小型冷凍機の冷却部と同様に、予め水和物生成温度以下に冷却されており、その表面に水和物が付着している。過冷却された水溶液が低温突起に接触すると、低温突起の表面に付着した水和物が生成核として作用し過冷却が解除され、容易に水和物が生成する。
(2)振動型の過冷却解除器
超音波発振器に接続された発振部からなっており、発振部は外部から過冷却状態の水溶液が通る配管中に挿入されている。過冷却された水溶液が発振部に接触すると、振動によって過冷却が解除されて水和物が生成する。また、超音波の代わりに、数Hz〜数百Hzの低周波振動を用いてもよい。
(3)攪拌型の過冷却解除器
スタティックミキサーを過冷却解除器として用いる。スタティックミキサーは、配管内に流体の流れを分断、ねじり、混合させるためのねじり板が設けられたもので、過冷却された水溶液はスタティックミキサーによって攪拌されて過冷却が解除され、容易に水和物が生成する。
また、回転型撹拌器を過冷却解除器として用いてもよい。回転型撹拌器は、過冷却状態の水溶液が通る配管の途中にモータによって回転する攪拌羽根を挿入する構成からなっている。過冷却された水溶液は攪拌羽根によって攪拌されて過冷却が解除され、容易に水和物が生成する。スタティックミキサーや回転型攪拌機には過冷却解除機能だけでなく、過冷却解除初期の水和物スラリの過冷却解除を早める過冷却解除促進機能もある。
また、小型ポンプを過冷却解除器として用いてもよい。過冷却状態の水溶液が通る配管の途中に設けられたポンプケーシング内でインペラが回転するようなものでもよい。過冷却された水溶液はポンプによって攪拌されて過冷却が解除され、容易に水和物が生成する。また、小型ポンプによって局部循環させ過冷却解除することもできる。
3.水和物スラリ熱交換器
水和物スラリ熱交換器5は、過冷却解除器3によって過冷却が解除されて生成された水和物スラリをさらに冷却して蓄熱密度を高める。
4.冷熱輸送媒体用配管
冷熱輸送媒体用配管7は、空調負荷からの戻り配管11、水溶液熱交換器1と過冷却解除器3を連結する配管13、過冷却解除器3と水和物スラリ熱交換器5を連結する配管15、水和物スラリ熱交換器5と空調負荷側とを連結する配管17、配管15と配管17とを水和物スラリ熱交換器5をバイパスして連結するバイパス管21とを備えて構成される。
そして、配管13には開閉弁23が、また配管15には水和物スラリポンプ25が、さらにバイパス管21には開閉弁29が、それぞれ設けられている。
5.冷水配管
冷水配管9は、図示しない冷凍機で生成された冷水を水溶液熱交換器1および水和物スラリ熱交換器5へ送るための送水管31と、水溶液熱交換器1および水和物スラリ熱交換器5で熱交換した冷水を図示しない冷凍機側に戻すための戻り水管33を備えており、送水管31には冷水ポンプ34が設けられている。
送水管31は冷水を水溶液熱交換器1に送る第1送水管31aと、冷水を水和物スラリ熱交換器5に送る第2送水管31bに分岐している。また、送水管31a、31bにはそれぞれ送水量を調整するための電動二方制御弁37、39が設けられている。
また、戻り水管33には、水溶液熱交換器1の出側に連結されて熱交換後の冷水を冷凍機側に戻す第1戻り水配管33aと、水和物スラリ熱交換器5の出側に連結されて熱交換後の冷水を冷凍機側に戻す第2戻り水配管33bと、が接続されている。また、第1戻り水配管33aには開閉弁41が設けられている。さらに、第2送水管31bと第1戻り水配管33aが連結管43で連結され、第2連結管43には電動二方制御弁45が設けられている。
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。なお、図1は空調運転開始時および空調運転時における弁の開閉状況を示している。
空調運転を開始する際には、水和物スラリポンプ25を稼動してゲスト化合物を含む水溶液を水溶液熱交換器1および水和物スラリ熱交換器5を通して循環させる。
次に、冷凍機を動作させて、冷凍機の熱交換器で生成した4〜6℃の冷水を冷水ポンプ34により送水管31に送り水溶液熱交換器1と水和物スラリ熱交換器5を通して冷凍機の熱交換器へ循環させる。
水溶液熱交換器1では水溶液を過冷却する。もっとも、水溶液熱交換器1での冷却は過冷却解除器3で過冷却が解除できる程度の過冷却度とする。例えば、過冷却度を0.7℃以上とする。なお、過冷却度の調整は水溶液熱交換器1に送られる冷水量を電動二方制御弁37の開度を調整することで行う。
水溶液熱交換器1によって過冷却された水溶液は過冷却解除器3に送られ、過冷却解除器3で過冷却が解除される。過冷却解除の方法は前述のように種々のものが考えられるが、例えば少量の水和物スラリを注入する場合には、注入された水和物スラリが水溶液中で水和物生成の核となり、水和物スラリの過冷却を解除する。
過冷却が解除されることで固相割合の少ない水和物スラリが生成される。
固相割合の少ない水和物スラリは水和物スラリ熱交換器5に送られてさらに冷却され、冷熱密度が高められる。ここで、水和物スラリ熱交換器5に送られるのは水和物スラリであり、過冷却が既に解除されているので、水和物スラリ熱交換器5の冷却面に過冷却解除に伴うような水和物スラリの付着が急激に生ずることはない。
水和物スラリ熱交換器5で冷熱密度が高められた水和物スラリは空調負荷に送られる。なお、空調負荷に送る水和物スラリ温度は、水溶液熱交換器1と同様に水和物スラリ熱交換器5の冷水側入口に設置してある電動二方制御弁39の開度を調整することにより冷水供給量を増減することで行う。
以上のようにして運転開始されると、その後は、同様の動作が繰り返されることによって空調運転が行われる。この空調運転時の動作を水溶液および水和物スラリの温度と共に説明する。空調負荷から戻った10〜12℃の水溶液は、水溶液熱交換器1で約5〜7℃に過冷却され、過冷却解除器3に送られる。過冷却解除器3で過冷却が解除され、約7.4℃の水和物スラリとなり、水和物スラリ熱交換器5に送られる。水和物スラリ熱交換器5では水和物スラリが冷却されて約6.5℃の水和物スラリとなって空調負荷に送られる。
空調運転中に、水和物スラリ熱交換器5の冷却面で水和物スラリの付着が起こり始めていると判断された場合には、閉塞を防止するために水和物スラリ熱交換器5での水和物スラリの製造を停止し、融解運転に入る。
融解運転時は、図2に示すように、水和物スラリ熱交換器5に冷水を供給している第2送水管31bに設けられた電動二方制御弁39を閉じると共に、第1送水管31bと第1戻り水配管33aを連結する連結管43に設けられた電動二方制御弁45を開ける。その後、第1戻り水配管33aに設けられた電動二方弁41を閉める。また、水和物スラリ熱交換器5をバイパスして連結するバイパス管21に設けられた開閉弁29を開にする。
開閉弁29を開にすることで、過冷却解除器3で生成された水和物スラリは水和物スラリ熱交換器5に送られることがなくなり、それ以降は水和物スラリ熱交換器5での水和物スラリの付着が継続することはない。他方、過冷却解除によって生成された水和物スラリはバイパス管21を経由して空調負荷に送られるので空調運転は継続できる。
冷水側では、水溶液熱交換器1に供給される冷水は空調負荷から戻ってきた暖かい戻り水溶液と熱交換して温められ、約9〜11℃となる。この暖められた水は、第1戻り水配管33a、連結管43、第2送水管31bを通って水和物スラリ熱交換器5に送られ、水和物スラリ熱交換器内で付着した水和物を融解する。水和物の融解に供された水は第2戻り水配管33b、戻り水管33を通って冷凍機に戻る。
融解運転終了後は、上述した通常の空調運転に切り替えて水和物スラリ熱交換器5での水和物スラリの冷却を再開する。
なお、融解運転の開始時期については、水和物スラリ熱交換器5の熱交換器の冷却面に水和物が付着して、熱抵抗となり熱交換効率が低下したり、流路の圧力損失が増大したことにより発生する状況が検知されたりしたときに開始する。
より具体的には、例えば水和物スラリの流量、水和物スラリの熱交換器出口温度、水和物スラリ熱交換器出入口間における水和物スラリの差圧、冷水の交換熱量、水和物スラリの交換熱量などのうちいずれか一つを検出し、この検出値が所定範囲より外れた時に融解運転を開始するようにすればよい。
なお、冷水の交換熱量は、次式より算出することができる。
交換熱量=温度差×流量×比熱
温度差は冷水の水和物スラリ熱交換器5の入口温度と出口温度の差であり、流量は水和物スラリ熱交換器5を流れる冷水の流量である。これらの値はそれぞれ温度計、流量計によって測定すればよく、一方、冷水の比熱は既知であるので、これらの測定値を用いて冷水の交換熱量を求めることができる。
また、水和物スラリの交換熱量についても上記と同様に求めればよい。
融解運転の停止する時期は、水和物スラリ熱交換器5の冷水温度が上昇に転じた時とする。水溶液熱交換器1から排出された水の供給により、水和物スラリ熱交換器5の冷却面に付着した水和物がほとんど融解すると、水和物スラリ熱交換器5で冷却されることがなくなるので、融解運転開始時における水和物スラリ熱交換器5の出側の水温よりも高くなるからである。
従来例で示したような冷凍機廃熱やヒータなどによって温めた水を冷水ラインに流す温水供給による融解運転では、温水用のタンクやポンプ、ラインの切替弁が必要であった。
しかし、本実施の形態では、水溶液熱交換器1の冷水側出口から水和物スラリ熱交換器5の冷水側入口に融解運転時に使用するラインとして連結管43を設け、この連結管43に電動二方制御弁45を追加するだけであるので、非常に安価にできる。
また、前述の発明の開示の項で説明したような空調負荷からの温かい戻り水溶液を水和物スラリラインに流すことによる融解運転では、融解運転中は冷水の供給が完全に止まってしまうため、水和物スラリを製造することができなかった。
これに対して、本実施の形態によれば、融解運転中も水和物スラリを生成できるので、空調運転を継続できる。
また、上記のような空調負荷からの温かい戻り水溶液を水和物スラリラインに流すことによる融解運転では、水和物スラリ熱交換器5において冷却面に付着している水和物スラリを外側から融解させるので冷却面の表面の水和物スラリを全て融解するのに時間を要してしまう。
これに対して、本実施の形態では温かい冷水を冷水ラインに流すので、冷却面の内側から冷却面を直接暖めるので冷却面の表面に付着した水和物スラリを短時間で融解できる。
なお、上記実施の形態では製造した水和物スラリを直接空調負荷へ供給する例を示したが、水和物スラリ熱交換器5の下流に蓄冷層を設け、夜間電力を利用して水和物スラリを製造して蓄冷層に貯蔵し、空調運転時に貯蔵した水和物スラリを空調負荷に供給するようにしてもよい。
本発明の一実施の形態に係る水和物スラリ製造装置の構成の説明図である(空調運転時)。 本発明の一実施の形態に係る水和物スラリ製造装置の構成の説明図である(融解運転時)。
符号の説明
1 水溶液熱交換器、3 過冷却解除器、5 水和物スラリ熱交換器、7 冷熱輸送媒体用配管、9 冷水配管、21 バイパス管、29 開閉弁、43 連結管、45 電動二方制御弁。

Claims (2)

  1. 水和物を生成するゲスト化合物の水溶液を冷却媒体によって過冷却状態にする水溶液熱交換器と、該水溶液熱交換器で過冷却状態にされた前記水溶液の過冷却を解除する過冷却解除器と、該過冷却解除器で過冷却解除されて生成された水和物スラリを冷却媒体によって冷却する水和物スラリ熱交換器と、前記水和物スラリ熱交換器の冷却面に付着した水和物を除去するために行う融解運転回路を具備した水和物スラリ製造装置であって、
    該融解運転回路は、前記水溶液熱交換器において水溶液と熱交換した冷却媒体を前記水和物スラリ熱交換器に供給する冷却媒体回路と、前記過冷却解除器で過冷却解除されて生成された水和物スラリを、前記水和物スラリ熱交換器をバイパスして負荷側に送るバイパス回路と、を備えてなることを特徴とする水和物スラリ製造装置。
  2. 水和物を生成するゲスト化合物の水溶液と冷却媒体との間で熱交換を行って水溶液を過冷却状態にし、過冷却を解除して水和物スラリを生成した後、水和物スラリを冷却媒体によって冷却する水和物スラリ製造方法であって、
    水和物スラリと冷却媒体との間で熱交換を行う水和物スラリ熱交換器の冷却面に水和物が付着したとき、該水和物スラリ熱交換器の冷却媒体供給回路に、前記水溶液と熱交換を行った冷却媒体を供給することにより、前記付着した水和物を融解するとともに、過冷却解除されて生成された水和物スラリを前記水和物スラリ熱交換器をバイパスして負荷側に送る融解運転工程を備えたことを特徴とする水和物スラリ製造方法。
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