JP4595628B2 - 液体吐出装置、及び、液体吐出方法 - Google Patents

液体吐出装置、及び、液体吐出方法 Download PDF

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Description

本発明は、素子に所定の動作を行わせて液体を吐出させる液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
素子に所定の動作を行わせて液体を吐出させる液体吐出装置としては、例えば、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、染色装置といったように、種々のものがある。そして、この液体吐出装置では、対象物へ液体を着弾させることによって種々の処理が行われている。例えば、用紙への画像の印刷やカラーフィルタの製造が行われている。この種の液体吐出装置では、複数の素子を支障なく動作させるため、十分な電流を供給する必要がある。これに伴い、電流増幅部によって電流が増幅された駆動信号を用いている(例えば、特許文献1を参照。)。この電流増幅部は、一般的に、相補的に接続されたトランジスタ対によって構成されている。そして、トランジスタ対を構成する充電用のトランジスタは、そのコレクタが電源電位に接続され、放電用のトランジスタは、そのコレクタが接地電位に接続されている。
特開2001−80069号公報
このような電流増幅部で駆動信号の電流増幅を行う場合、充電用のトランジスタにおける消費電力は、電源電位と駆動信号の電位との差に電流を乗じた量となる。一方、放電用のトランジスタにおける消費電力は、駆動信号の電位と接地電位との差に電流を乗じた量となる。このため、各トランジスタにおける消費電力は大きくなりがちであり、この消費電力をできるだけ小さくすることが望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、消費電力を低減することのできる液体吐出装置を実現することにある。
前記目的を達成するための主たる発明は、
アナログ信号をもとにトランジスタ対を介して第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、
パルス信号をもとに他のトランジスタ対及び平滑回路を介して第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部と、
液体を吐出するための動作を行う素子であって、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とによる合成駆動信号に基づいて動作する素子と、
を有する液体吐出装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
すなわち、アナログ信号をもとにトランジスタ対を介して第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、パルス信号をもとに他のトランジスタ対及び平滑回路を介して第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部と、液体を吐出するための動作を行う素子であって、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とによる合成駆動信号に基づいて動作する素子と、を有する液体吐出装置が実現できること。
このような液体吐出装置によれば、素子を動作させるための合成駆動信号は、第1駆動信号と第2駆動信号を合成することで得られる。ここで、第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部では、第2駆動信号を生成する際に、他のトランジスタ対にスイッチング動作をさせている。ここで、他のトランジスタ対における導通時の抵抗値は、極めて小さい。このため、他のトランジスタ対に大きな電流を流しても、消費電力を小さくすることができる。一方、第1駆動信号の電流は、第2駆動信号の電流では補えない分の量で足りる。このため、その電流量を従来よりも減らすことができる。従って、第1駆動信号生成部の消費電力も低減できる。その結果、各トランジスタ対の消費電力をあわせても、消費電力を低減することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記第1駆動信号生成部は、所定周期毎に更新される電位指定情報に基づき、指定された電位のアナログ信号を生成するアナログ信号生成部を有すること。
このような液体吐出装置によれば、吐出させる液体に適合したアナログ信号を容易に生成することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記合成駆動信号は、その電位波形が前記アナログ信号の電位波形に揃えられていること。
このような液体吐出装置によれば、液体の吐出を精度良く行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記合成駆動信号は、第1駆動信号用の出力信号線と第2駆動信号用の出力信号線とを接続することで得られること。
このような液体吐出装置によれば、回路構成の簡素化が図れる。
かかる液体吐出装置であって、前記トランジスタ対は、前記アナログ信号がベースに印加され、且つ、相補的に接続されたNPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタによって構成されていること。
このような液体吐出装置によれば、NPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタは、第2駆動信号の電位に過不足が生じても、この過不足が解消されるように動作する。これにより、所望の電位波形を有する合成駆動信号を得ることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記第2駆動信号生成部は、前記アナログ信号の電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号を生成すること。
このような液体吐出装置によれば、第1駆動信号生成部が有するトランジスタ対の消費電力を、極力小さくすることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記第2駆動信号生成部は、パルス幅変調されたパルス信号をもとに前記第2駆動信号を生成すること。
このような液体吐出装置によれば、アナログ信号の電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号を、容易に生成することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記他のトランジスタ対は、NPN型トランジスタとPNP型トランジスタによって構成されていること。
このような液体吐出装置によれば、スイッチング動作を効率よく行わせることができる。
かかる液体吐出装置であって、前記他のトランジスタ対は、複数の電界効果トランジスタによって構成されていること。
このような液体吐出装置によれば、電界効果トランジスタを用いているので、大きな電流にも容易に対応できる。
かかる液体吐出装置であって、前記平滑回路は、平滑コンデンサと平滑コイルによって構成されていること。
このような液体吐出装置によれば、簡単な構成で第2駆動信号を生成することができる。
かかる液体吐出装置であって、前記平滑回路は、抵抗素子と平滑コンデンサと平滑コイルとによって構成されていること。
このような液体吐出装置によれば、第2駆動信号における波形の歪みを有効に防止することができる。
また、次の液体吐出装置を実現することもできる。
すなわち、所定周期毎に更新される電位指定情報に基づき、指定された電位のアナログ信号を生成するアナログ信号生成部、及び、前記アナログ信号がベースに印加され、且つ、相補的に接続されたNPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタによって構成されたトランジスタ対を有し、前記アナログ信号をもとに前記トランジスタ対を介して第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、NPN型トランジスタとPNP型トランジスタ若しくは複数の電界効果トランジスタによって構成される他のトランジスタ対、及び、平滑コンデンサと平滑コイルによって構成され、又は、抵抗素子と平滑コンデンサと平滑コイルとによって構成された平滑回路を有し、前記パルス信号をもとに前記他のトランジスタ対及び前記平滑回路を介して、前記アナログ信号の電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部と、液体を吐出するための動作を行う素子であって、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とによる合成駆動信号に基づいて動作する素子とを有し、
前記合成駆動信号は、第1駆動信号用の出力信号線と第2駆動信号用の出力信号線とを接続することで得られるものであり、その電位波形が前記アナログ信号の電位波形に揃えられている液体吐出装置を実現することもできる。
このような液体吐出装置によれば、既述のほぼ全ての効果を奏するので、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、アナログ信号をもとにトランジスタ対を介して第1駆動信号を、パルス信号をもとに他のトランジスタ対及び平滑回路を介して第2駆動信号をそれぞれ生成するステップと、前記第1駆動信号と前記第2駆動信号とを合成して合成駆動信号を得るステップと、液体を吐出するための動作を行う素子に前記合成駆動信号を印加して、液体を吐出させるステップと、を有する液体吐出方法を実現することもできる。
===説明の対象===
<液体吐出装置について>
液体吐出装置には、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及びDNAチップ製造装置など、様々な種類があり、全てについて説明することは困難である。そこで、本明細書では、印刷装置としてのプリンタ、及び、このプリンタを有する印刷システムを例に挙げて説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも有するシステムのことであり、液体吐出装置と吐出制御装置とを有する液体吐出システムの一形態に相当する。
===印刷システム100の構成===
<全体構成について>
まず、印刷装置を印刷システムとともに説明する。ここで、図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。プリンタ1は、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体は、液体が吐出される対象となる対象物に相当する。また、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。表示装置120は、ディスプレイを有している。この表示装置120は、例えば、コンピュータプログラムのユーザーインタフェースを表示するためのものである。入力装置130は、例えば、キーボード131やマウス132である。記録再生装置140は、例えば、フレキシブルディスクドライブ装置141やCD−ROMドライブ装置142である。
===コンピュータ110===
<コンピュータ110の構成について>
図2は、コンピュータ110、及びプリンタ1の構成を説明するブロック図である。まず、コンピュータ110の構成について簡単に説明する。このコンピュータ110は、前述した記録再生装置140と、ホスト側コントローラ111とを有している。記録再生装置140は、ホスト側コントローラ111と通信可能に接続されており、例えばコンピュータ110の筐体に取り付けられている。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものであり、前述した表示装置120や入力装置130も通信可能に接続されている。このホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間に介在し、データの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM、磁気ディスク装置等によって構成される。このメモリ114に格納されるコンピュータプログラムとしては、前述したアプリケーションプログラムやプリンタドライバがある。そして、CPU113は、メモリ114に格納されているコンピュータプログラムに従って各種の制御を行う。
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、画素データSI(図6を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、画素データSIは、印刷される画像の画素に関するデータである。ここで、画素とは、用紙上に仮想的に定められた方眼状の升目であり、ドットが形成される領域を示す。そして、印刷データにおける画素データSIは、用紙上に形成されるドットに関するデータ(例えば、階調値)である。本実施形態において、画素データSIは2ビットのデータによって構成されている。すなわち、この画素データSIには、ドット無し(インクの非吐出)に対応するデータ[00]と、小ドットの形成に対応するデータ[01]と、中ドットの形成に対応するデータ[10]と、大ドットの形成に対応するデータ[11]とがある。従って、このプリンタ1は、1画素について4階調で画像の形成ができる。
===プリンタ1===
<プリンタ1の構成について>
次に、プリンタ1の構成について説明する。ここで、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の構成を示す図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の構成を説明する側面図である。なお、以下の説明では、図2も参照する。このプリンタ1は、図2に示すように、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40、駆動信号生成回路50、検出器群60、及び、プリンタ側コントローラ70を有する。そして、駆動信号生成回路50とプリンタ側コントローラ70は共通のコントローラ基板CTRに実装されている。また、ヘッドユニット40は、ヘッド制御部HCと、ヘッド41とを有している。このプリンタ1では、プリンタ側コントローラ70によって制御対象部、すなわち用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、ヘッドユニット40(ヘッド制御部HC,ヘッド41)、及び駆動信号生成回路50が制御される。すなわち、プリンタ側コントローラ70は、コンピュータ110から受け取った印刷データに基づいて制御対象部を制御し、用紙Sに画像を印刷させる。このとき、検出器群60の各検出器は、プリンタ1内の各部の状態を検出しており、検出結果をプリンタ側コントローラ70に出力する。各検出器からの検出結果を受けたプリンタ側コントローラ70は、その検出結果に基づいて制御対象部を制御する。
<用紙搬送機構20について>
用紙搬送機構20は、媒体を搬送させる媒体搬送部に相当する。この用紙搬送機構20は、媒体としての用紙Sを印刷可能な位置に送り込んだり、この用紙Sを搬送方向に所定の搬送量で搬送させたりするものである。この搬送方向は、次に説明するキャリッジ移動方向と交差する方向である。そして、図3A及び図3Bに示すように、用紙搬送機構20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に自動的に送るためのローラであり、この例ではD形の断面形状をしている。搬送モータ22は、用紙Sを搬送方向に搬送させるためのモータであり、その動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを、印刷可能な領域まで搬送するためのローラである。プラテン24は、用紙Sを裏面側から支持するための部材である。排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラである。
<キャリッジ移動機構30について>
キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジCRをキャリッジ移動方向に移動させるためのものである。キャリッジ移動方向には、一側から他側への移動方向と、他側から一側への移動方向が含まれている。なお、ヘッドユニット40はヘッド41を有する。このため、キャリッジ移動方向は、ヘッド41が移動するヘッド移動方向(所定方向)に相当する。また、キャリッジ移動機構30は、ヘッド41を所定方向に移動させるヘッド移動部に相当する。このキャリッジ移動機構30は、キャリッジモータ31と、ガイド軸32と、タイミングベルト33と、駆動プーリー34と、従動プーリー35とを有する。キャリッジモータ31は、キャリッジCRを移動させるための駆動源に相当する。このキャリッジモータ31の動作は、プリンタ側コントローラ70によって制御される。そして、キャリッジモータ31の回転軸には、駆動プーリー34が取り付けられている。この駆動プーリー34は、キャリッジ移動方向の一端側に配置されている。駆動プーリー34とは反対側のキャリッジ移動方向の他端側には、従動プーリー35が配置されている。タイミングベルト33は、キャリッジCRに接続されているとともに、駆動プーリー34と従動プーリー35とに架け渡されている。ガイド軸32は、キャリッジCRを移動可能な状態で支持する。このガイド軸32は、キャリッジ移動方向に沿って取り付けられている。従って、キャリッジモータ31が動作すると、キャリッジCRはこのガイド軸32に沿ってキャリッジ移動方向に移動する。これに伴い、ヘッド41もヘッド移動方向に移動する。
<ヘッドユニット40について>
ヘッドユニット40は、インクを用紙Sに向けて吐出させるためのものである。このヘッドユニット40は、ヘッド41とヘッド制御部HCとを有している。ここで、図4Aは、ヘッド41の構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッド41の一部を拡大して示す断面図である。なお、便宜上、ここではヘッド41について説明し、ヘッド制御部HCについては後で説明することにする。
<ヘッド41について>
ヘッド41は、ケース411と、流路ユニット412と、ピエゾ素子ユニット413とを有する。ケース411は、ピエゾ素子ユニット413を収容するための収容室411aが内部に形成されたブロック状の部材である。ピエゾ素子ユニット413は、ノズル列毎に取り付けられる。例示したヘッド41は4つのノズル列(図示せず)を有している。このため、ケース411には4つの収容室411aが設けられており、4つのピエゾ素子ユニット413が各収容室411aに収容されている。
流路ユニット412は、流路形成板412aと、流路形成板412aの一方の表面に接合された弾性板412bと、流路形成板412aの他方の面に接合されたノズルプレート412cとを有する。流路形成板412aは、シリコンウエハーや金属板等によって作製されている。この流路形成板412aには、圧力室412dとなる溝部、ノズル連通口412eとなる貫通口、共通インク室412f(「共通液室」に相当する。)となる貫通口、インク供給路412g(「液体供給路」に相当する。)となる溝部が形成されている。弾性板412bは、支持枠412hと、ピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部412jとを有する。そして、アイランド部412jの周囲には、弾性膜412iによる弾性領域が形成されている。
ピエゾ素子ユニット413は、ピエゾ素子群413aと、接着用基板413bとから構成されている。ピエゾ素子群413aは櫛歯状をしており、1つ1つの櫛歯状部分がピエゾ素子PZTに相当する。このピエゾ素子群413aは、ノズルNzに対応する数のピエゾ素子PZTを有する。例えば、96本〜180本のピエゾ素子PZTを有する。また、接着用基板413bは、矩形状の板であり、一方の表面にピエゾ素子群413aが接着され、他方の表面がケース411に接着されている。ピエゾ素子PZTは、対向する電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、素子の長手方向に伸縮する。この伸縮量は、ピエゾ素子PZTの電位に応じて定められる。そして、ピエゾ素子PZTの電位は、印加された駆動信号(第1駆動信号と第2駆動信号の合成によって得られた信号。以下、合成駆動信号COMともいう。図5,図8を参照。)によって定められる。従って、ピエゾ素子PZTは、印加された合成駆動信号COMの電位に応じて伸縮する。
そして、ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部412jは圧力室412d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部周辺の弾性膜412iが変形するので、ノズルNzからインクを効率よく吐出させることができる。このようなピエゾ素子PZTは、合成駆動信号COMによって充放電され、インクを吐出するための動作を行う素子に相当する。また、ピエゾ素子PZTは、容量性を有することが知られている。すなわち、ピエゾ素子PZTは、合成駆動信号COMの印加が停止された後も、停止直前における電位を維持すること、つまり、蓄電状態を維持することができる。このような特性を有するピエゾ素子PZTをヘッド41に用いると、極めて微量のインクを効率良く且つ精度良く吐出させることができる。また、印加される駆動パルスPS1〜PS4の形状に応じて、吐出されるインクの量や速度を種々制御することができる。
<駆動信号生成回路50について>
駆動信号生成回路50は、ピエゾ素子PZTの動作(変形状態)を定めるための合成駆動信号COMを生成するものであり、合成駆動信号生成部に相当する。この駆動信号生成回路50に関し、ここでは、生成される合成駆動信号COMについて説明することとし、構成等の詳細については後で説明する。ここで、図5は、駆動信号生成回路50によって生成される合成駆動信号COMを説明する図である。
図5に示すように、合成駆動信号COMは、繰り返し周期Tにおける期間T1で生成される第1波形部SS1と、期間T2で生成される第2波形部SS2と、期間T3で生成される第3波形部SS3と、期間T4で生成される第4波形部SS4とを有する。そして、第1波形部SS1は駆動パルスPS1を有している。また、第2波形部SS2は駆動パルスPS2を、第3波形部SS3は駆動パルスPS3を、第4波形部SS4は駆動パルスPS4を、それぞれ有している。ここで、駆動パルスPS1、駆動パルスPS3、及び駆動パルスPS4は、ノズルNzからインクを吐出させる際に用いられるものであり、互いに同じ波形をしている。また、駆動パルスPS2は、メニスカスを微振動させるための微振動パルスである。これらの駆動パルスPS1〜PS4はピエゾ素子PZTを動作させるための波形部に相当し、その電位波形はピエゾ素子PZTに行わせる動作に基づいて定められている。従って、含まれる駆動パルスの電位波形や繰り返し周期T内に含まれる個数等は適宜定めることができる。
<ヘッド制御部HCについて>
次に、ヘッド制御部HCについて説明する。ここで、図6は、ヘッド制御部HCの構成を説明するためのブロック図である。ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダ83と、制御ロジック84と、ヘッド側スイッチ85とを有する。そして、制御ロジック84を除いた各部、すなわち、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、デコーダ83、ヘッド側スイッチ85は、それぞれピエゾ素子PZT毎、つまりノズルNz毎に設けられる。
ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ70からの画素データSIに基づき、インクを吐出させるべくヘッド41の動作を制御する。具体的には、プリンタ側コントローラ70は、ヘッド制御部HCに対して画素データSIを送信する。受信した画素データSIに基づき、ヘッド制御部HCは、スイッチ制御信号SWをヘッド側スイッチ85へ出力する。このスイッチ制御信号SWは、合成駆動信号COMの必要部分をピエゾ素子PZTへ選択的に印加させるために用いられるものである。そして、ヘッド側スイッチ85は、スイッチ制御信号SWに従ってオンオフし、合成駆動信号COMのピエゾ素子PZTへの印加を制御する。
<合成駆動信号COMの印加制御について>
次に、ヘッド制御部HCによる合成駆動信号COMの印加制御について説明する。ここで、図7は、合成駆動信号COMの印加制御を説明するためのタイミングチャートである。なお、以下の説明では、図6も参照する。このプリンタ1において、画素データSIは2ビットで構成されており、その内容はノズルNz毎(ピエゾ素子PZT毎)に定められる。この画素データSIは、転送用のクロックCLKに同期してヘッド制御部HCへ送られる。そして、画素データSIの上位ビット群は各第1シフトレジスタ81Aにセットされ、下位ビット群は各第2シフトレジスタ81Bにセットされる。第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが接続されている。ここで、プリンタ側コントローラ70からのラッチ信号LATがHレベルになると、各第1ラッチ回路82Aは対応する画素データSIの上位ビットをラッチし、各第2ラッチ回路82Bは画素データSIの下位ビットをラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSI(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、デコーダ83に入力される。
デコーダ83は、画素データSIの上位ビット及び下位ビットに基づいてデコードを行い、ヘッド側スイッチ85を制御するためのスイッチ制御信号SWを出力する。すなわち、制御ロジック84は、吐出されるインクの量に対応した選択データq0〜q3を同時に出力しており、デコーダ83は、これらの選択データq0〜q3の中から1つの選択データを画素データSIに基づいて選択し、スイッチ制御信号SWとして出力する。ここで、選択データq0は、ドット無し用の選択データである。つまり、選択データq0は、用紙Sにドットを形成しない場合において、スイッチ制御信号SWとなる選択データである。選択データq1は、小ドット用の選択データである。つまり、選択データq1は、用紙Sに小ドットを形成する場合において、スイッチ制御信号SWとなる選択データである。同様に、選択データq2は中ドット用の選択データ、選択データq3は大ドット用の選択データである。従って、デコーダ83は、画素データSIがドット無しを示すデータ[00]であった場合、選択データq0をスイッチ制御信号SWとし、小ドットの形成を示すデータ[01]であった場合、選択データq1をスイッチ制御信号SWとする。そして、中ドットや大ドットの形成も同様である。
また、制御ロジック84は、選択データq0〜q3の内容を、ラッチ信号LATやチェンジ信号CHによって定められるタイミングで更新する。例えば、選択データq0については、ラッチ信号LATがHレベルになったタイミングから1番目のチェンジ信号CHがHレベルになるまでの期間(期間T1に対応する。)においてデータ[0]である。そして、1番目のチェンジ信号CHがHレベルになったタイミングから2番目のチェンジ信号CHがHレベルになるまでの期間(期間T2に対応する。)においてデータ[1]である。同様に、2番目のチェンジ信号CHがHレベルになったタイミングから3番目のチェンジ信号CHがHレベルになるまでの期間(期間T3に対応する。)、及び、3番目のチェンジ信号CHがHレベルになったタイミングから次の繰り返し周期Tのラッチ信号LATがHレベルになるまでの期間(期間T4に対応する。)においてデータ[0]である。同様に、選択データq1については、データが[0],[0],[1],[0]の順で更新され、選択データq2については、データが[1],[0],[1],[0]の順で更新され、選択データq3については、データが[1],[0],[1],[1]の順で更新される。
デコーダ83から出力されたスイッチ制御信号SWは、ヘッド側スイッチ85に入力される。このヘッド側スイッチ85は、オン期間において合成駆動信号COMをピエゾ素子PZTへ印加させる。このため、ヘッド側スイッチ85の入力側には駆動信号生成回路50からの合成駆動信号COMが印加され、ヘッド側スイッチ85の出力側にはピエゾ素子PZTが接続されている。そして、スイッチ制御信号SWがデータ[1]の場合、ヘッド側スイッチ85がオン状態となって、合成駆動信号COMがピエゾ素子PZTに印加される。また、スイッチ制御信号SWがデータ[0]の場合、ヘッド側スイッチ85がオフ状態となるので、合成駆動信号COMはピエゾ素子PZTに印加されない。前述したように、ピエゾ素子PZTは合成駆動信号COMの印加が停止された場合において停止直前の電位を維持する。従って、合成駆動信号COMの印加が停止されている期間において、ピエゾ素子PZTは合成駆動信号COMの印加が停止される直前の変形状態を維持する。
<検出器群60について>
検出器群60は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。図3A,図3Bに示すように、この検出器群60には、リニア式エンコーダ61、ロータリー式エンコーダ62、紙検出器63、及び紙幅検出器64が含まれている。リニア式エンコーダ61は、キャリッジCRのキャリッジ移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ62は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出器63は、印刷される用紙Sを検出するためのものである。紙幅検出器64は、印刷される用紙Sの幅を検出するためのものである。
<プリンタ側コントローラ70について>
プリンタ側コントローラ70は、プリンタ1が有する各部を制御するものである。例えば、プリンタ側コントローラ70は、所定の搬送量で用紙Sを搬送させる動作と、キャリッジCR(ヘッド41)を移動させながら断続的にインクを吐出させる動作とを交互に行わせることで、用紙Sに画像を印刷させている。このため、プリンタ側コントローラ70は、搬送モータ22の回転量を制御することによって用紙Sの搬送を制御する。また、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31の回転を制御することによってキャリッジCRの移動を制御する。さらに、画素データSIをヘッド制御部HCへ出力することで、インクを吐出させるための制御を行う。加えて、プリンタ側コントローラ70は、合成駆動信号COM用の生成情報としてのDAC値(電位指定情報,後述する。)を駆動信号生成回路50へ出力する制御も行っている。
このプリンタ側コントローラ70は、図2に示すように、インタフェース部71と、CPU72と、メモリ73と、制御ユニット74とを有する。インタフェース部71は、外部装置であるコンピュータ110との間でデータの受け渡しを行う。CPU72は、プリンタ1の全体的な制御を行うための演算処理装置である。メモリ73は、CPU72のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU72は、メモリ73に記憶されているコンピュータプログラムに従って各制御対象部を制御する。例えば、CPU72は、制御ユニット74を介して用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を制御する。例えば、搬送モータ22やキャリッジモータ31に対する制御信号を出力する。また、CPU72は、ヘッド41の動作を制御するためのヘッド制御信号(クロックCLK,画素データSI,ラッチ信号LAT,チェンジ信号CH,図6を参照。)をヘッド制御部HCへ出力したり、DAC値を駆動信号生成回路50へ出力したりする。
===駆動信号生成回路50の詳細===
<駆動信号生成回路50の特徴について>
前述した構成を有するプリンタ1では、消費電力をできるだけ小さくすることが求められている。これは、消費電力が小さくなることによって、電源容量が小さくでき装置の小型化や発熱の低減が図れること等の利点があるからである。特に、駆動信号生成回路50では、複数のピエゾ素子PZTを40V以上の高い電圧で動作させるので大きな電力を消費する。このため省電力化が強く求められている。
このような事情に鑑み、このプリンタ1では、駆動信号生成回路50を次のように構成している。ここで、図8は、駆動信号生成回路50の構成を説明するための図である。この図8に示すように、駆動信号生成回路50には、アナログ信号ANGをもとにトランジスタ対(NPN型トランジスタQ1,PNP型トランジスタQ2,図10を参照。)を介して第1駆動信号COMAを生成する第1駆動信号生成回路50A(第1駆動信号生成部に相当する。)と、パルス信号PWSをもとに他のトランジスタ対(PNP型トランジスタQ3,NPN型トランジスタQ4,図10を参照。)及び平滑回路54を介して第2駆動信号COMBを生成する第2駆動信号生成回路50B(第2駆動信号生成部に相当する。)とを設けている。そして、これらの第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBを合成した合成駆動信号COMによってピエゾ素子PZTを動作させている。
この構成において、第1駆動信号COMAはアナログ信号ANGと同じ電位波形をしており、第2駆動信号COMBはアナログ信号ANGを近似した電位波形をしている。そして、第2駆動信号COMBを生成する際に、他のトランジスタ対はパルス信号PWSによってスイッチング動作をする。ここで、他のトランジスタ対における導通時の抵抗値は、極めて小さい。このため、他のトランジスタ対に大きな電流を流しても、第2駆動信号生成回路50Bの消費電力を小さくすることができる。一方、第1駆動信号COMAの電流は、第2駆動信号COMBでは調整しきれない分を調整する量で足りる。このため、その電流量を従来よりも減らすことができる。従って、第1駆動信号生成回路50Aの消費電力も低減できる。その結果、各トランジスタ対の消費電力をあわせても、消費電力を低減できる。
<駆動信号生成回路50の構成について>
以下、駆動信号生成回路50の構成について説明する。図8に示すように、第1駆動信号生成回路50AはDAC回路51と電流増幅回路52とを有しており、第2駆動信号生成回路50Bはパルス信号生成回路53と平滑回路54とを有している。そして、第1駆動信号COMAの電位波形はアナログ信号ANGの電位波形に揃えられ、第2駆動信号COMBの電位波形はアナログ信号ANGを近似した電位波形とされている。以下、各部について詳細に説明する。
<DAC回路51について>
DAC回路51は、所定周期毎に更新されるDAC値(電位指定情報に相当する。)に基づき、指定された電位のアナログ信号ANGを生成するものである。すなわち、このDAC回路51は、アナログ信号生成部に相当する。DAC値は、例えば、出力電位を10ビットのデジタル値で表した情報であり、プリンタ側コントローラ70のCPU72から出力される。このため、CPU72は、アナログ信号ANGの電圧に対応するDAC値を求め、求めたDAC値をクロックCLKで規定される更新周期τ(所定周期に相当する。)毎にDAC回路51へ出力する。なお、クロックCLKは例えば24MHzとされる。この場合、更新周期τは41.7nsとなる。そして、DAC回路51で生成されたアナログ信号ANGは、電流増幅回路52にて電流が増幅されることにより、第1駆動信号COMAとなる。
図9は、DAC回路51によるアナログ信号ANGの生成を説明するための概念図である。図9の例において、CPU72は、タイミングt(n)で電位V1に対応するDAC値を出力する。これにより、更新周期τ(n)にて、DAC回路51から出力されるアナログ信号ANGは電位V1となる。そして、更新周期τ(n+4)までは、電位V1に対応するDAC値が順次出力される。このため、アナログ信号ANGは電位V1を維持する。また、タイミングt(n+5)では、電位V2に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+5)にて、アナログ信号ANGは電位V1から電位V2へと下降する。同様に、タイミングt(n+6)では、電位V3に対応するDAC値が出力される。これにより、更新周期τ(n+6)にて、アナログ信号ANGは電位V2から電位V3へ下降する。以下同様にしてDAC値が出力されるため、アナログ信号ANGの電位は次第に下降する。そして、更新周期τ(n+10)にてアナログ信号ANGは電位V4となる。このような構成のDAC回路51を用いた場合、DAC値を指定によってアナログ信号の電位を変更できるので、吐出させるインクに適したアナログ信号ANGを容易に生成することができる。
<電流増幅回路52について>
電流増幅回路52は、DAC回路51で生成されたアナログ信号ANGの電流を増幅することで、第1駆動信号COMAを生成するものである。すなわち、アナログ信号ANGの電流は複数のピエゾ素子PZTを同時に動作させるには不十分な量となっているため、電流増幅回路52は、アナログ信号ANGの電流を増幅する。また、この電流増幅回路52は、第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBの合成駆動信号COMの電位を、アナログ信号ANGの電位に揃えるための電位調整部としても機能する。この点については後で説明する。
図10は、第1駆動信号生成回路50A及び第2駆動信号生成回路50Bの具体的構成を説明するための図である。図10に例示した電流増幅回路52は、相補的に接続(コンプリメンタリ接続)されたトランジスタ対によって構成されている。このように相補的に接続されたトランジスタ対を用いることで、高い電流増幅率を得ることができる。具体的には、電流増幅回路52は、互いのエミッタ同士が接続されたNPN型トランジスタQ1とPNP型トランジスタQ2によって構成されている。NPN型トランジスタQ1は、第1駆動信号COMAの電位上昇時に動作するトランジスタである。つまり、充電用のトランジスタである。このNPN型トランジスタQ1では、コレクタが電源に接続され、エミッタが第1駆動信号COMAの出力信号線CdAに接続されている。そして、ベースにはDAC回路51からのアナログ信号ANGが入力されている。PNP型トランジスタQ2は、第1駆動信号COMAの電位下降時に動作するトランジスタである。つまり、放電用のトランジスタである。このPNP型トランジスタQ2では、コレクタが接地され、エミッタが第1駆動信号COMAの出力信号線CdAに接続されている。そして、ベースにはDAC回路51からのアナログ信号ANGが入力されている。要するに、この電流増幅回路52は、プッシュプル増幅回路によって構成されている。
この電流増幅回路52は、NPN型トランジスタQ1のベース、及び、PNP型トランジスタQ2のベースに入力されたアナログ信号ANGによって動作が制御される。例えば、アナログ信号ANGの電位が上昇状態にあるとき、このアナログ信号ANGによってNPN型トランジスタQ1がオン状態となる。これに伴い、第1駆動信号COMAの電位が上昇する。一方、アナログ信号ANGの電位が下降状態にあるとき、アナログ信号ANGによってPNP型トランジスタQ2がオン状態となる。これに伴い、第1駆動信号COMAの電位が下降する。また、出力電圧が一定である場合、NPN型トランジスタQ1もPNP型トランジスタQ2もオフ状態となる。
なお、電流増幅回路52から出力された第1駆動信号COMAは、第2駆動信号COMBと合成され、合成駆動信号COMとなる。このため、第1駆動信号COMAの出力信号線CdA、第2駆動信号COMBの出力信号線CdB、及び、合成駆動信号COMの出力信号線CdCは、いずれも同電位となる。従って、第2駆動信号COMBの電位が変化すると、これに伴って第1駆動信号の出力信号線CdAの電位も変化する。そして、NPN型トランジスタQ1及びPNP型トランジスタQ2は、ベース電位(アナログ信号ANGの電位)とエミッタ電位(出力信号線CdAの電位)との差が所定値(例えば0.6V)以上になると動作する。例えば、第2駆動信号COMBによって出力信号線CdAの電位が上昇し、アナログ信号ANGの電位よりも所定値以上高くなると、PNP型トランジスタQ2がオン状態になる。これにより、逆方向の電流I1(図10の矢印とは反対方向の電流)が流れ、アナログ信号ANGと出力信号線CdAの電位差を所定値未満にする。反対に、第2駆動信号COMBによって出力信号線CdAの電位が下降し、アナログ信号ANGの電位よりも所定値以上低くなると、NPN型トランジスタQ1がオン状態になる。これにより、正方向の電流I1(図10の矢印と同じ方向の電流)が流れ、アナログ信号ANGと出力信号線CdAの電位差を所定値未満にする。このような動作をする電流増幅回路52は、合成駆動信号COMの電位をアナログ信号ANGの電位に揃えるための調整動作も行っているといえる。すなわち、電流増幅回路52は電位調整部としても機能している。
<パルス信号生成回路53について>
パルス信号生成回路53は、パルス幅変調されたパルス信号(増幅後パルス信号PWS´,後述する。)を生成するものである。図10に示すように、このパルス信号生成回路53は、PWM回路531と、スイッチング回路532とを有している。PWM回路531は、CPU72からのPWM制御信号に基づいてパルス信号PWSを出力する。このパルス信号PWSは、矩形状であってグランド電位と最大電位(例えば42V)との間で電位を変化させている。そして、このパルス信号PWSは、第2駆動信号COMBの電位に応じてパルス幅変調されている。なお、第2駆動信号COMBの電位とパルス信号PWSのパルス幅との関係については、後で説明する。そして、PWM回路531で生成されたパルス信号PWSは、スイッチング回路532へ出力される。
スイッチング回路532は、PWM回路531からのパルス信号PWSに基づいてスイッチング動作をするものであり、PNP型トランジスタQ3及びNPN型トランジスタQ4からなるトランジスタ対(他のトランジスタ対に相当する。)によって構成されている。PNP型トランジスタQ3は、平滑回路54の入力端へ電源電位を接続する際に動作するトランジスタである。このPNP型トランジスタQ3では、エミッタが電源に接続され、コレクタが平滑回路54の入力端に接続されている。そして、ベースにはPWM回路531からのパルス信号PWSが入力されている。NPN型トランジスタQ4は、平滑回路54の入力端へ接地電位を接続する際に動作するトランジスタである。このNPN型トランジスタQ4では、エミッタが接地され、コレクタが平滑回路54の入力端に接続されている。そして、ベースにはPWM回路531からのパルス信号PWSが入力されている。従って、このスイッチング回路532では、PNP型トランジスタQ3がオン状態にあるとき、NPN型トランジスタQ4はオフ状態となる。反対に、PNP型トランジスタQ3がオフ状態にあるとき、NPN型トランジスタQ4はオン状態となる。その結果、平滑回路54には、電源電位と接地電位とが、パルス信号PWSのデューティに応じた期間に亘って交互に印加される。言い換えれば、電流が増幅されて十分な容量となった矩形状のパルス信号(便宜上、増幅後パルス信号PWS´ともいう。)が、平滑回路54に印加される。そして、この実施形態では、スイッチング回路532をPNP型トランジスタQ3及びNPN型トランジスタQ4によって、つまりバイポーラ型トランジスタによって構成しているので、スイッチング動作を効率よく行わせることができる。
そして、これらのPNP型トランジスタQ3及びNPN型トランジスタQ4は、PWM回路531からの矩形状のパルス信号PWSによって動作するため、オン状態における消費電力は極めて小さくなる。例えば、PNP型トランジスタQ3は、平滑回路54に電源電位を接続する際にオン状態となるが、この状態におけるエミッタ−コレクタ間の電位差は、内部抵抗に起因する極めて小さいものとなる。例えば、0.1V程度となる。そして、PNP型トランジスタQ3の消費電力は、エミッタ−コレクタ間の電位差に電流を乗じたものとなるため、非常に小さいものとなる。このことは、NPN型トランジスタQ4についても同様である。従って、増幅後パルス信号PWS´が大きい電流容量の信号であったとしても、PNP型トランジスタQ3及びNPN型トランジスタQ4の消費電力を抑えることができる。
<平滑回路54について>
平滑回路54は、パルス信号生成回路53で生成された増幅後パルス信号PWS´を平滑化するためのものである。例示した平滑回路54は、平滑コンデンサ541と平滑コイル542とを有しており、いわゆるコンデンサインプット型の平滑回路として構成されている。すなわち、平滑コイル542は、スイッチング回路532の出力端と第2駆動信号COMBの出力信号線CdBとの間に直列に接続されている。また、平滑コンデンサ541は、その一端が、スイッチング回路532の出力端と平滑コイル542の間に接続され、他端が接地されている。このような構成の平滑回路54は、入力された増幅後パルス信号PWS´のデューティ(つまり、パルス信号PWSのデューティ)に応じた電位の第2駆動信号COMBを生成して出力する。
以下、生成される第2駆動信号COMBについて説明する。ここで、図11Aは、第2駆動信号COMBの電位を得るための回路を説明する図である。図11Bは、デューティ25%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号COMBの電位を説明する図である。図11Cは、デューティ50%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号COMBの電位を説明する図である。図11Dは、デューティ75%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号COMBの電位を説明する図である。図11Eは、デューティ100%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号COMBの電位を説明する図である。
図11Aに示すように、第2駆動信号COMBの電位とは、平滑コイル542の出力側端部と接地電位との間に負荷LOA(例えば抵抗)を接続した際の出力端子OTからの電位を意味する。なお、駆動信号生成回路50において、第2駆動信号COMBの出力信号線CdBは、第1駆動信号COMAの出力信号線CdAに接続されている。このため、第2駆動信号COMBの電位は、合成駆動信号COMの電位と等しくなっている。すなわち、図11Aの回路は、第2駆動信号COMBの電位の電位を説明するための回路である。
パルス信号PWSがデューティ25%の場合において、PNP型トランジスタQ3は、単位周期における開始タイミングから25%の期間までオン状態となり、その後単位周期の終了タイミングまでオフ状態となる。一方、NPN型トランジスタQ4は、PNP型トランジスタQ3と対称的な動作をする。すなわち、単位周期における開始タイミングから25%の期間までオフ状態となり、その後単位周期の終了タイミングまでオン状態となる。その結果、第2駆動信号COMBの電位は、最大電位の25%程度となる。例えば、最大電位が42Vであったとすると、10.5V程度となる。なお、第2駆動信号COMBの電位は一定値とはならず、多少の幅をもって変動する。また、デューティ50%の場合において、PNP型トランジスタQ3及びNPN型トランジスタQ4は、単位周期の半分の周期でオンオフを繰り返す。その結果、第2駆動信号COMBの電位は、最大電位の50%程度となる。例えば、最大電位が42Vであったとすると、21V程度の電位となる。そして、デューティ75%の場合も同様であり、第2駆動信号COMBの電位は、最大電位の75%程度となる。なお、デューティ100%の場合は、PNP型トランジスタQ3が継続的にオン状態となり、NPN型トランジスタQ4は継続的にオフ状態となる。その結果、第2駆動信号COMBの電位は最大電位とほぼ等しくなる。
<生成される第2駆動信号COMBについて>
次に、第2駆動信号生成回路50Bにて生成される第2駆動信号COMBについて説明する。ここで、図12Aは、第2駆動信号COMBの第2波形部SS2に対応する部分を生成するための制御を説明する図である。図12Bは、生成された第2駆動信号COMBを説明する図である。なお、図12Aに記載されたパルス信号PWSは、単位周期におけるデューティを示している。
前述したように、第2駆動信号COMBの電位は、平滑回路54に印加される増幅後パルス信号PWS´のデューティ(パルス幅)に応じて定まる。このため、増幅後パルス信号PWS´(つまり、PWM回路531からのパルス信号PWS)のデューティを適宜変えることで、所望の電位波形を有する第2駆動信号COMBが生成できる。ここでは、合成駆動信号COMにおける第2波形部SS2を生成する場合について説明する。この第2波形部SS2は、駆動パルスPS2を有している。この駆動パルスPS2は、台形状の電位波形をしており、例えば、その最低電位が21V、最高電位が31.5Vとされる。ここで、合成駆動信号COMの最高電位が42Vとすると、駆動パルスPS2の最低電位は合成駆動信号COMにおける最高電位の50%となり、駆動パルスPS2の最高電位は合成駆動信号COMにおける最高電位の75%となる。
このような駆動パルスPS2を有する第2波形部SS2を生成するため、パルス信号生成回路53は、まず、駆動パルスPS2の生成開始までの期間に亘って、デューティ50%の増幅後パルス信号PWS´を出力する。その後、パルス信号生成回路53は、デューティを次第に増やし、デューティ75%の増幅後パルス信号PWS´を出力する。このデューティ75%を一定時間継続した後、パルス信号生成回路53は、デューティを次第に減らし、駆動パルスPS2の生成終了タイミングでデューティ50%の増幅後パルス信号PWS´を出力する。その結果、第2駆動信号COMBは、図12Bに示す略台形状の電位波形となる。すなわち、アナログ信号ANGを近似した電位波形となる。このように、第2駆動信号生成回路50Bでは、パルス幅変調されたパルス信号PWSをもとに第2駆動信号COMBを生成しているため、アナログ信号ANGの電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号COMBを容易に生成できる。反面、この構成では、第2駆動信号COMBとアナログ信号ANGとの間に電位差が生じる場合がある。これは、平滑回路54による電位の変動の吸収度合いに起因すると考えられる。
<合成駆動信号COMについて>
前述したように、第1駆動信号生成回路50Aにて生成された第1駆動信号COMAと、第2駆動信号生成回路50Bにて生成された第2駆動信号COMBは合成され、ピエゾ素子PZTに印加される合成駆動信号COMとなる。第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBの合成は、第1駆動信号COMAの出力信号線CdAと第2駆動信号COMBの出力信号線CdBとを接続することで行われる。従って、第1駆動信号COMAの出力信号線CdA、第2駆動信号COMBの出力信号線CdB、及び、合成駆動信号COMの出力信号線CdCは、結果的に同電位となる。前述したように、電流増幅回路52を構成するトランジスタ対(NPN型トランジスタQ1,PNP型トランジスタQ2)は、出力信号線CdAの電位をアナログ信号ANGの電位に揃えるべく動作をする。ここで、第2駆動信号COMBは、アナログ信号ANGを近似した電位波形となっている。すなわち、第2駆動信号COMBの電位は、アナログ信号ANGの電位に対して高低のずれがある。このため、NPN型トランジスタQ1,PNP型トランジスタQ2は、この電位のずれを吸収するようにも動作する。以下、この点について説明する。
ここで、図13Aは、アナログ信号ANG(第1駆動信号COMA)と第2駆動信号COMBの電位のずれを説明するための概念図である。図13Bは、第2駆動信号COMBの電位がアナログ信号ANGの電位よりも高い場合における電流増幅回路52の動作を説明する概念図である。図13Cは、第2駆動信号COMBの電位がアナログ信号ANGの電位よりも低い場合における電流増幅回路52の動作を説明する概念図である。なお、図13Aにおいて、実線はアナログ信号ANG(第1駆動信号COMA)の電位、一点鎖線は第2駆動信号COMBの電位である。また、図13B,図13Cにおいて、電流I1,電流I2,電流I3に関し、便宜上、ピエゾ素子PZT側へ流れる方向を正方向とし、反対方向を逆方向という。
タイミングtaにおいて、アナログ信号ANGと第2駆動信号COMBの電位は揃っている。このため、電流増幅回路52の電位調整機能は働いていない。従って、電流増幅回路52は、第2駆動信号COMBに影響されることなく、アナログ信号ANGに基づく動作を行う。そして、このタイミングtaからタイミングtbに亘って第2駆動信号COMBの電位はアナログ信号ANGの電位よりも低くなっている。この場合、図13Cに示すように、電流増幅回路52では、合成駆動信号COMとアナログ信号ANGとの電位差に基づいてNPN型トランジスタQ1がオン状態となる。これにより、正方向の電流I1が流れる。この正方向の電流I1により、第2駆動信号生成回路50B側に向けて逆方向の電流I2が流れ、第2駆動信号COMBでは不足している分の電荷を補う。言い換えれば、正方向の電流I1によって平滑回路54が充電される。そして、この正方向の電流I1は、合成駆動信号COMの電位とアナログ信号ANGの電位とを揃えるように流れる。
次に、タイミングtbからタイミングtcに亘って第2駆動信号COMBの電位はアナログ信号ANGの電位よりも高くなっている。この場合、図13Bに示すように、電流増幅回路52では、合成駆動信号COMとアナログ信号ANGとの電位差に基づいてPNP型トランジスタQ2がオン状態となり、逆方向の電流I1を流す。この逆方向の電流I1により、第2駆動信号生成部から流れる電流I2の中で余剰の部分は、逆方向の電流I1となって流れる。すなわち、この逆方向の電流I1により、平滑回路54が放電される。そして、逆方向の電流I1もまた、合成駆動信号COMの電位とアナログ信号ANGの電位とを揃えるように流れる。
以後は、第2駆動信号COMBとアナログ信号ANGの電位差に応じ、前述した何れかの動作が選択的に行われる。例えば、タイミングtcからタイミングtdではNPN型トランジスタがオン状態となり、第2駆動信号COMBでは不足している分の電荷が補われる。また、タイミングtdからタイミングteではPNP型トランジスタがオン状態となり、第2駆動信号COMBでは余剰となる電荷が放出される。このように、電流増幅回路52を構成するトランジスタ対(NPN型トランジスタQ1及びPNP型トランジスタQ2)が動作をした結果、合成駆動信号COMの電位はアナログ信号ANGの電位に揃えられる。つまり、このトランジスタ対は、第2駆動信号COMBの電位に過不足が生じても、この過不足を解消するように動作する。これにより、所望の電位波形を有する合成駆動信号COMを得ることができる。つまり、合成駆動信号COMを所望の電位波形に調整することができる。
この場合において、第2駆動信号COMBは、パルス幅変調された増幅後パルス信号PWS´を平滑回路54で平滑化することで生成されている。このため、第2駆動信号COMBの生成に必要な消費電力を低減することができる。これは、スイッチング回路532を構成する他のトランジスタ対にスイッチング動作をさせているためである。すなわち、トランジスタ対にスイッチング動作を行わせた場合、各トランジスタQ3,Q4におけるエミッタ−コレクタ間の電位差が非常に小さなものとなるためである。また、第2駆動信号COMBに生成時において、第2駆動信号生成回路50Bは、アナログ信号ANGの電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号COMBを生成している。これにより、アナログ信号ANGと第2駆動信号COMBの電位差を小さくすることができ、電流増幅回路52を構成するトランジスタ対の消費電力を極力小さくすることができる。つまり、第2駆動信号COMBの生成に必要な消費電力が低減できる。
第2駆動信号COMBの生成に必要な消費電力が低減できると、合成駆動信号COMの生成に必要な消費電力も低減できる。図10の例において、合成駆動信号COMの電流I3は、第1駆動信号生成回路50A側からの電流I1と第2駆動信号生成回路50B側からの電流I2との和となる。ここで、電流I1と電流I2の比は、第1駆動信号生成回路50Aの構成や第2駆動信号生成回路50Bの構成によって定まるが、仮に1:1であったとする。この場合、電流I1は電流I3の略1/2となり、電流I2も電流I3の略1/2となる。前述したように、この駆動信号生成回路50では、第2駆動信号COMBを生成するために必要な消費電力は、第1駆動信号COMAを生成するために必要な消費電力よりも十分に小さい。その結果、駆動信号生成回路50の全体として、消費電力を従来のものより少なくすることができる。
なお、消費電力をより低減するという観点からは、第2駆動信号COMBの電流量(電流I2の大きさ)が第1駆動信号COMAの電流量(電流I1の大きさ)よりも大きくなるように、第1駆動信号生成回路50A及び第2駆動信号生成回路50Bの構成を定めることが好ましい。しかし、第1駆動信号COMAの電流量を過度に小さくしてしまうと、合成駆動信号COMの電位波形が第2駆動信号COMBの電位波形に依存して歪むこととなって好ましくない。以上から、第1駆動信号COMAの電流量と第2駆動信号COMBの電流量の比は、合成駆動信号COMが過度に歪まない程度に、第2駆動信号COMBの電流量をできるだけ大きくすることが好ましいと考えられる。
<印刷動作について>
次に、印刷動作について説明する。ここで、図14は、印刷動作を説明するためのフローチャートである。アプリケーションプログラム上で印刷命令が行われると、ホスト側コントローラ111は、印刷対象となる画像データに対して各種の処理を行い、印刷データを生成する。この印刷データはプリンタ1で受信され、プリンタ側コントローラ70に出力される。印刷データを受信したプリンタ側コントローラ70は、この印刷データとメモリ73に記憶されたコンピュータプログラムとに基づいて印刷動作を行う。従って、このコンピュータプログラムは、印刷動作を実行させるためのコードを有する。
プリンタ側コントローラ70は、印刷データ中の印刷命令を受信すると(S10)、給紙動作(S20)、ドット形成動作(S30)、搬送動作(S40)、排紙判断(S50)、排紙処理(S60)、及び印刷終了判断(S70)を順に行う。給紙動作は、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂頭出し位置)に位置決めする動作である。ドット形成動作は、用紙Sにドットを形成するための動作である。搬送動作は、用紙Sを搬送方向へ移動させる動作である。この搬送動作により、先程のドット形成動作によって形成されたドットとは異なる位置にドットを形成することができる。排紙判断は、印刷対象となっている用紙Sに対する排出の要否を判断する動作である。排紙処理は、用紙Sを排出させる処理であり、先程の排紙判断で「排紙する」と判断されたことを条件に行われる。印刷終了判断は、印刷を続行するか否かの判断である。
そして、このプリンタ1では、ドット形成動作において、プリンタ側コントローラ70は、キャリッジモータ31を駆動したり、ヘッド41に対してヘッド制御信号を出力したりする。また、プリンタ側コントローラ70は、合成駆動信号COMを生成させるための制御を駆動信号生成回路50に対して行う。例えば、DAC回路51へDAC信号を出力したり、PWM回路531にPWM制御信号を出力したりする。これにより、第1駆動信号生成回路50Aでは第1駆動信号COMAが生成され、第2駆動信号生成回路50Bでは第2駆動信号COMBが生成される。そして、これらの第1駆動信号COMAと第2駆動信号COMBとを合成することで合成駆動信号COMが得られる。前述したように、第2駆動信号COMBは、パルス幅変調された増幅後パルス信号PWS´を平滑回路54で平滑することで生成されているので、生成時の消費電力を低減することができる。また、平滑回路54を用いている関係で、第2駆動信号COMBとアナログ信号ANGとの間に電位差が生じ得るが、電流増幅回路52が合成駆動信号COMの電位を調整するため、合成駆動信号COMの電位波形がアナログ信号ANGの電位波形に揃えられる。つまり、所望の電位波形に調整された合成駆動信号COMが得られる。そして、この合成駆動信号COMをピエゾ素子PZTに印加してインクを吐出させることにより、インクの吐出を精度良く行うことができる。
===第2実施形態===
前述した第1実施形態において、スイッチング回路532は、PNP型トランジスタQ3とNPN型トランジスタQ4によって構成されていた。また、平滑回路54は、平滑コンデンサ541と平滑コイル542によって構成されていた。しかし、この構成に限定されるものではない。図15は、スイッチング回路532及び平滑回路54に変更が加えられた第2実施形態を説明する図である。この第2実施形態では、一対の電界効果トランジスタF1,F2によってスイッチング回路532´を構成している点、及び、抵抗素子543と平滑コンデンサ541と平滑コイル542とによって平滑回路54´を構成している点に特徴を有している。
即ち、平滑回路54´の入力端を電源電位に接続するための電界効果トランジスタF1と、平滑回路54´の入力端を接地電位に接続するための他の電界効果トランジスタF2とを含んでいる。これらの電界効果トランジスタF1,F2を用いた場合、PNP型トランジスタQ3やNPN型トランジスタQ4を用いた場合に比べて多くの電流を流すことできる。このため、合成駆動信号COMの電流が大きくなったとしても対応が容易であり、ヘッド41が多くのピエゾ素子PZTを有する場合に有利である。また、平滑回路54´が抵抗素子543と平滑コンデンサ541と平滑コイル542とによって構成されているので、第2駆動信号COMBにおける電位波形の歪みを有効に防止することができる。
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタ1を有する印刷システム100について記載されているが、その中には液体吐出装置及び液体吐出システムの開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<駆動信号生成回路50について>
前述した実施形態では、第1駆動信号COMAの出力信号線CdAと第2駆動信号COMBの出力信号線CdBとを接続することで合成駆動信号COMを生成していたが、合成用の回路を設けてもよい。そして、前述した各実施形態のように、第1駆動信号COMA用の出力信号線と第2駆動信号COMB用の出力信号線とを接続することで合成駆動信号COMを生成した場合には、回路構成の簡素化が図れる。
<パルス信号生成回路について>
前述した各実施形態では、パルス幅変調されたパルス信号PWSを用いていたが、パルス周波数変調(PFM)されたパルス信号PWSを用いてもよい。また、PWM回路531に代えて、1ビットのデジタル信号を出力可能なデジタル信号出力部を設けてもよい。
<平滑回路54,54´について>
前述した各実施形態の平滑回路54,54´はあくまで例示であり、他の構成の平滑回路を用いてもよい。例えば、平滑コイルの一端と他端のそれぞれに平滑コンデンサを接続したいわゆるπ型の平滑回路であってもよい。
<液体を吐出するための動作を行う素子について>
前述の実施形態では、液体を吐出するための動作を行う素子としてピエゾ素子PZTを例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエータ用いてもよい。
<ヘッドから吐出される液体について>
前述の実施形態は、プリンタ1の実施形態であったので、液体状の染料インクや顔料インクをノズルNzから吐出させていた。しかし、ノズルNzから吐出させる液体は、液体状であればインクに限られるものではない。その用途に応じた液体を吐出させればよい。
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、プリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
印刷システムの構成を説明する図である。 コンピュータ、及びプリンタの構成を説明するブロック図である。 図3Aは、プリンタの構成を示す図である。図3Bは、プリンタの構成を説明する側面図である。 図4Aは、ヘッドの構造を説明するための断面図である。図4Bは、ヘッドの主要部の構造を説明するための一部を拡大して示す断面図である。 駆動信号生成回路によって生成される合成駆動信号を説明する図である。 ヘッド制御部の構成を説明するためのブロック図である。 駆動信号の印加制御を説明するためのタイミングチャートである。 駆動信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。 DAC回路によるアナログ信号の生成を説明するため図である。 第1駆動信号生成回路及び第2駆動信号生成回路の具体的構成を説明するための図である。 図11Aは、第2駆動信号の電位を得るための回路を説明する図である。図11Bは、デューティ25%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号の電位を説明する図である。図11Cは、デューティ50%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号の電位を説明する図である。図11Dは、デューティ75%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号の電位を説明する図である。図11Eは、デューティ100%におけるPNP型トランジスタQ3のオンオフ状態、NPN型トランジスタQ4のオンオフ状態、及び、第2駆動信号の電位を説明する図である。 図12Aは、第2波形部に対応した第2駆動信号の生成を説明するための図である。図12Bは、生成された第2駆動信号を説明する図である。 図13Aは、アナログ信号の電位と第2駆動信号の電位のずれを説明するための概念図である。図13Bは、第2駆動信号の電位の電位がアナログ信号の電位よりも高い場合における電流増幅回路の動作を説明する概念図である。図13Cは、第2駆動信号の電位の電位がアナログ信号の電位よりも低い場合における電流増幅回路の動作を説明する概念図である。 印刷動作を説明するためのフローチャートである。 第2実施形態を説明する図である。
符号の説明
1 プリンタ,20 用紙搬送機構,21 給紙ローラ,22 搬送モータ,
23 搬送ローラ,24 プラテン,25 排紙ローラ,
30 キャリッジ移動機構,31 キャリッジモータ,32 ガイド軸,
33 タイミングベルト,34 駆動プーリー,35 従動プーリー,
40 ヘッドユニット,41 ヘッド,411 ケース,411a 収容室,
412 流路ユニット,412a 流路形成板,412b 弾性板,
412c ノズルプレート,412d 圧力室,412e ノズル連通口,
412f 共通インク室,412g インク供給路,412h 支持枠,
412i 弾性膜,412j アイランド部,413 ピエゾ素子ユニット,
413a ピエゾ素子群,413b 接着用基板,
50 駆動信号生成回路,50A 第1駆動信号生成回路,
51 DAC回路,52 電流増幅回路,50B 第2駆動信号生成回路,
53 パルス信号生成回路,531 PWM回路,532 スイッチング回路,
532´ スイッチング回路,54 平滑回路,54´ 平滑回路,
541 平滑コンデンサ,542 平滑コイル,543 抵抗素子,
60 検出器群,61 リニア式エンコーダ,
62 ロータリー式エンコーダ,63 紙検出器,64 紙幅検出器,
70 プリンタ側コントローラ,71 インタフェース部,72 CPU,
73 メモリ,74 制御ユニット,81A 第1シフトレジスタ,
81B 第2シフトレジスタ,82A 第1ラッチ回路,
82B 第2ラッチ回路,83 デコーダ,84 制御ロジック,
85 ヘッド側スイッチ,100 印刷システム,110 コンピュータ,
111 ホスト側コントローラ,112 インタフェース部,
113 CPU,114 メモリ,120 表示装置,130 入力装置,
131 キーボード,132 マウス,140 記録再生装置,
141 フレキシブルディスクドライブ装置,
142 CD−ROMドライブ装置,S 用紙,CLK クロック,
SI 画素データ,LAT ラッチ信号,CH チェンジ信号,
CTR コントローラ基板,HC ヘッド制御部,CR キャリッジ,
PZT ピエゾ素子,Nz ノズル,
COMA 第1駆動信号,COMB 第2駆動信号,COM 合成駆動信号,
SS1 第1波形部,SS2 第2波形部,SS3 第3波形部,
SS4 第4波形部,PS1〜PS4 駆動パルス,
q0〜q3 選択データ,
SW スイッチ制御信号,LAT ラッチ信号,CH チェンジ信号
Q1 NPN型トランジスタ,Q2 PNP型トランジスタ,
Q3 PNP型トランジスタ,Q4 NPN型トランジスタ,
CdA 第1駆動信号の出力信号線,CdB 第2駆動信号の出力信号線,
CdC 合成駆動信号の出力信号線,PWS パルス信号,
PWS´ 増幅後パルス信号,ANG アナログ信号,
LOA 負荷,OT 出力端子

Claims (12)

  1. 相補的に接続されたトランジスタによって構成されたトランジスタ対からなり、電位調整部として機能する電流増幅回路を介してアナログ信号をもとに第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部と、
    相補的に接続されたトランジスタによって構成され、スイッチング回路としての機能を有する他のトランジスタ対及び平滑回路を介して、パルス信号をもとに第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部と、
    液体を吐出するための動作を行う素子であって、第1駆動用信号の出力信号線と第2駆動用の出力信号線とを接続することで得られる合成駆動信号に基づいて動作する素子と、
    を有する液体吐出装置。
  2. 請求項1に記載の液体吐出装置であって、
    前記第1駆動信号生成部は、
    所定周期毎に更新される電位指定情報に基づき、指定された電位のアナログ信号を生成するアナログ信号生成部を有する液体吐出装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置であって、
    前記合成駆動信号は、
    その電位波形が前記アナログ信号の電位波形に揃えられている液体吐出装置。
  4. 請求項1から請求項3の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記合成駆動信号は、
    第1駆動信号用の出力信号線と第2駆動信号用の出力信号線とを接続することで得られる液体吐出装置。
  5. 請求項1から請求項4の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記トランジスタ対は、
    前記アナログ信号がベースに印加され、且つ、相補的に接続されたNPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタによって構成されている液体吐出装置。
  6. 請求項1から請求項5の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記第2駆動信号生成部は、
    前記アナログ信号の電位波形を近似した電位波形の第2駆動信号を生成する液体吐出装置。
  7. 請求項6に記載の液体吐出装置であって、
    前記第2駆動信号生成部は、
    パルス幅変調されたパルス信号をもとに前記第2駆動信号を生成する液体吐出装置。
  8. 請求項1から請求項7の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記他のトランジスタ対は、
    NPN型トランジスタとPNP型トランジスタによって構成されている液体吐出装置。
  9. 請求項1から請求項7の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記他のトランジスタ対は、
    複数の電界効果トランジスタによって構成されている液体吐出装置。
  10. 請求項1から請求項9の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記平滑回路は、
    平滑コンデンサと平滑コイルによって構成されている液体吐出装置。
  11. 請求項1から請求項9の何れかに記載の液体吐出装置であって、
    前記平滑回路は、
    抵抗素子と平滑コンデンサと平滑コイルとによって構成されている液体吐出装置。
  12. 相補的に接続されたトランジスタによって構成されたトランジスタ対からなり、電位調整部として機能する電流増幅回路を介してアナログ信号をもとに第1駆動信号を生成するステップと、
    相補的に接続されたトランジスタによって構成され、スイッチング回路としての機能を有する他のトランジスタ対及び平滑回路を介して、パルス信号をもとに第2駆動信号を生成するステップと、
    液体を吐出するための動作を行う素子に、第1駆動用信号の出力信号線と第2駆動用の出力信号線とを接続することで得られる合成駆動信号を印加して、液体を吐出させるステップと、
    を有する液体吐出方法。
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