JP4595211B2 - ディジタル復調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation )方式のディジタル復調装置に係わり、特に誤動作のしにくい高速の位相補正を行うディジタル復調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
陸上移動通信方式の一つとして16QAM方式がある。この16QAM方式の信号を受信し、位相補正を行うとともに復調するディジタル復調装置の例として、準同期方式の従来の復調装置の原理構成図を図3に示す。同図において、IFは受信したRF(高周波)信号を所定周波数の局部発振信号により中間周波数変換した信号(例えば455KHz)であり、乗算器などで構成される直交検波部51に入力し、直交検波が行われる。直交検波により同相成分としてのIチャンネル(I)信号と、直交成分としてのQチャンネル(Q)信号としてそれぞれ出力される。これらの出力は位相補正部52で位相補正され、復調部53でディジタルデータに復号される。位相補正部52での補正は、出力されるI信号とQ信号から位相誤差検出手段54により例えば基準位相抽出部54aで搬送波成分などの基準位相成分を抽出し、抽出された基準位相成分との比較演算により位相誤差算出部54bで誤差が算出され、誤差が少なくなるように、基準位相に対してずれた分、位相を逆方向に回転して補正するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特に移動体に応用する場合、通常の電波強度が得られる場合は問題ないが、移動中など電波が急激に弱くなり、所定の電波強度を得られないという場合がある。このような場合に、従来の位相補正回路では不安定な状態で位相補正回路が位相を誤検出して不必要に補正を行い、正しい位相からはずれてしまい、また、正常な電波状態に復帰しても一旦ずれた位相を元に戻すのに時間がかかる、という問題があった。本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、受信電界レベルが低くなっても位相が大きくずれることを防止するとともに、受信電界レベルが正常になると位相補正を高速に行って復帰するようにしたディジタル復調装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、受信した多値QAM(直交振幅変調)信号をディジタル処理による準同期方式で直交検波して同相成分のI信号と直交成分のQ信号とに分割するディジタル直交検波部と、同ディジタル直交検波部よりの信号から所要の低域成分を取り出すローパスフィルタ(以降LPFとする)と、同LPFから出力されたI信号とQ信号のそれぞれについてDC成分であるDCオフセットレベルを検出するためのDC系統と、前記DCオフセットレベルによりDC成分を打ち消してAC成分のみを通過させるAC系統と、前記DC系統と前記AC系統それぞれにI信号とQ信号とのそれぞれの位相誤差を補正する位相補正部と、受信信号に基づく基準位相を抽出してI信号とQ信号とのそれぞれの位相誤差を算出する位相誤差算出部と、前記位相誤差算出部から前記位相補正部に出力する前記位相誤差の出力データ値を調整する位相誤差リミッタ部とを備え、
前記AC系統の位相補正後のI信号とQ信号とから受信信号の信号レベルを検出するレベル検出部と、検出された前記受信信号の信号レベルと所定の閾値との大小を判別するレベル判別部と、前記レベル判別部が、前記レベル検出部で検出する前記受信信号の信号レベルを前記所定の閾値より小さいと判別する場合、前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部が、前記位相誤差算出部から前記位相補正部に出力する前記位相誤差の出力データ値を制限して前記受信信号の位相補正を行わないようにした。
【0005】
前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部は、前記位相誤差算出部から前記位相補正部へ出力する前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換するリミッタ部と、前記レベル判別部で判別される前記受信信号の信号レベルと前記所定の閾値との大小から前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換する選択を行うセレクタとからなる。
【0006】
前記レベル判別部が、前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値より小さいと判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をゼロとする前記リミッタ部を選択するようにした。
【0007】
前記所定の閾値を、前記第一の閾値と、前記第一の閾値よりレベルの高い第二の閾値とを含む複数の閾値とし、前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値以上で、前記第二の閾値より小さいと判定する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値を所定の比率で制限する前記リミッタ部を選択するようにした。
【0008】
前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第二の閾値以上と判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をそのまま出力する前記リミッタ部を選択するようにした。
【0009】
前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部は、前記位相誤差算出部で算出される位相誤差角度が所定の位相角度を超えるか所定の位相角度以内かどうかを判別する位相誤差判別部を備え、前記位相誤差算出部から出力される前記受信信号の位相誤差角度が前記所定の位相角度を超えると判別される場合、前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換するようにした。
【0010】
前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値以上で前記第二の閾値より小さいと判別し、且つ前記位相誤差判別部が前記受信信号の位相誤差角度を前記所定の位相角度を超えると判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をゼロとする前記リミッタ部を選択するようにした。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。図1は本発明によるディジタル復調装置の一実施例を示す要部ブロック図である。以下、本発明の構成および動作について16QAM信号を準同期方式で検波および復調した実施例を図1に基づいて説明する。図1において、IFは所定周波数(例えば455KHz)の中間周波信号であり、図示しない前段において受信したRF信号を局部発信信号により周波数変換したものである(以下、IF信号と記す)。上記IF信号を1つのA/D変換部1でアナログ信号からディジタル信号に変換する。即ち、IF信号を所定周波数(Fck)のサンプリングクロック(CK)でサンプリングする。このサンプリングにおいて、サンプリングクロック(CK)の周波数Fckは下記のようにする。
Fck=中間周波数(IF)×(4/m) (m:5以上の任意の奇数)
上式から分かるように、mを5以上とすることでA/D変換部1におけるサンプリングは中間周波数より低いサンプリングクロック(CK)となるアンダーサンプリングである。
【0012】
上記A/D変換部1より出力されたディジタル信号はディジタル直交検波部2に入力し、ここで同A/D出力に「1」、「−1」を乗算することによりディジタル直交検波を行う。同ディジタル直交検波により、ディジタル直交検波部2からは同相成分のI信号及び直交成分のQ信号とが出力される。上記ディジタル直交検波部2からのI信号及びQ信号とはルートナイキスト特性のLPF3に入力し、これら入力I信号及びQ信号それぞれを符号間干渉が生じないようにしつつフィルタリング(所要の低域成分を取り出す)処理する。このLPF3は図示しないがI信号用のLPF、Q信号用のLPF及びROMとで構成し、ROMにフィルタ特性を設定するデータを予め幾通りか格納しておき、所要のフィルタ特性をそれぞれ設定するようにしている。このため、ROMに対しては後述のゼロクロス点検出部11よりI軸上のゼロクロス点検出の信号が入力し、ROMはこの入力信号をもとに上記特性の設定をする。このゼロクロス点検出部11から送出されるゼロクロス点検出の信号は実サンプル点と理想サンプル点との時間ずれを表す信号であり、この信号をもとにROMが上記特性の設定をすることによりサンプルポイントが等価的に移動され、適正なベースバンド信号変換が行われることとなる。
【0013】
LPF3よりの出力信号はAFC(自動周波数制御)補正部4に入力し、ここでキャリア(即ち、IF)の周波数ズレを補正する。なお、IFの周波数ズレの要因として例えば局部発振信号の周波数変動等があり、この周波数ズレがあるとシンボルデータが位相回転し、位相誤差となる。上記周波数補正に際し、後述のAFC算出部16において計算された位相回転角を示すデータがAFC補正部4に入力する。同AFC補正部4はこの位相回転角のデータに対応した周波数補正用の制御データを所定数予めROM化してある。従って、AFC補正部4は入力された上記位相回転角のデータに対する所要の周波数補正用制御データをROMより求め、その制御データでI信号及びQ信号それぞれについて周波数補正する。上記AFC補正部4よりの出力信号は第1の位相誤差算出部17に入力する。
【0014】
また、上記パイロットシンボルは16QAM信号点配置図上の原点から最も離れたI信号、Q信号とも正の位置のシンボルであり、このパイロットシンボルは、例えば16シンボルで1フレームを形成する信号において、最初に挿入されるシンボルであり、上記位相誤差、QAMにおけるI軸方向の振幅及びQ軸方向の振幅等を検出する際の基準となるものである。16シンボルで1フレームとするフレーム構成の場合、パイロットシンボル以降の15シンボルが情報データとしてのシンボルであり、各シンボルが情報内容により適宜挿入される。第1の位相誤差算出部17は上述のパイロットシンボルを基準にし、入力されるI信号及びQ信号から位相誤差を算出する。算出の際の基準とするパイロットシンボルの検出データはパイロットシンボル検出部12より検出されて送出される。第1の位相誤差算出部17はこの検出されたパイロットシンボルを基準として位相誤差を算出し、位相誤差データとして出力する。位相誤差データは本実施例では16シンボルごとに出力されることとなる。
【0015】
第1の位相誤差算出部17よりの位相誤差データはAFC算出部16及び後述する第1の位相誤差リミッタ部18を経由して第1の位相補正部19へ入力する。一方のAFC算出部16においては、第1の位相誤差算出部17で算出した位相誤差データをもとにAFC補正部4における周波数補正に供する位相回転角を表すデータを算出する。算出した位相回転角データは、AFC補正部4に送出され周波数補正する。また、他方の第1の位相補正部19においては、第1の位相誤差算出部17で位相誤差データが算出され、第1の位相誤差リミッタ部18で受信信号レベルの状態によりレベルが低い場合には位相誤差データが適正に制限されるなどして位相補正部19へ入力され、検波されたI信号及びQ信号について位相補正する。
【0016】
第1の位相補正部19で位相補正されたI信号及びQ信号は最大ベクトルレベル算出部20へ入力する。この最大ベクトルレベル算出部20では入力されたI信号及びQ信号をもとにパイロットシンボルのIベクトルレベル及びQベクトルレベルとを算出する。パイロットシンボルはI軸及びQ軸双方とも正の最大ベクトルレベルのシンボルであり、従って、算出したIベクトルレベル及びQベクトルレベルそれぞれは最大ベクトルレベルを意味する。最大ベクトルレベル算出部20で算出したIベクトルレベル及びQベクトルレベルそれぞれと、第1の位相補正部19において位相補正されたI信号及びQ号とはオフセット打消レベル算出部21へ入力する。また、後述の最小ベクトルレベル算出部15からは最小ベクトルレベルのベクトルレベルを表すデータもオフセット打消レベル算出部21へ入力する。オフセット打消レベル算出部21は、最小ベクトルレベルのデータが入力されたタイミングに合わせ、入力I信号及びQ信号から最小ベクトルレベルとなるIベクトルレベル及びQベクトルレベルそれぞれを抽出し、抽出した最小のI、Qベクトルレベルデータと、最大ベクトルレベル算出部20で算出した最大のIベクトルレベル及びQベクトルレベルそれぞれとをもとにI、QベクトルのDCオフセット(I軸及びQ軸の直流成分のズレ)のレベルを算出後、DCオフセットを打ち消すに要するレベルを算出する。
【0017】
オフセット打消レベル算出部21で算出されたデータはI信号用加算器5及びQ信号用加算器6とへ送られ、ここでAFC補正部4より入力するI信号及びQ信号それぞれと加算処理される。この加算により入力I信号及びQ信号それぞれのDCオフセットレベルが打ち消される。これら加算器5、6からのI信号及びQ信号それぞれは第2の位相誤差算出部7、第2の位相誤差リミッタ部8及び第2の位相補正部9へと入力する。これら第2の位相誤差算出部7、第2の位相誤差リミッタ部8及び第2の位相補正部9は前述の第1の位相誤差算出部17、第2の位相誤差リミッタ部18及び第1の位相補正部19と同機能のものであり、第2の位相誤差算出部7は入力I信号及びQ信号それぞれから位相誤差を算出し、同算出した位相誤差について第2の位相補正部9で位相補正する。ここで、第1の位相誤差算出部17及び第1の位相補正部19を含む系と、第2の位相誤差算出部7及び第2の位相補正部9を含む系との相違点を挙げれば、前者はDC成分の補正をするDC系統であり、後者はDC成分の除去後のAC成分の更なる補正をするAC系統である。第2の位相補正部9で位相補正されたI信号及びQ信号それぞれは図1に示すように各種の処理ブロックへ分岐入力する。この中、タイミングずれ検出部10はI信号をもとにベースバンド信号(=シンボルデータ)のタイミングずれ、即ち、ベースバンド信号の周期のズレを検出する。
【0018】
また、ゼロクロス点検出部11はタイミングずれ検出部10で検出したタイミングずれのデータと、位相補正されたI信号及びQ信号それぞれとをもとに、I軸上でゼロとなる点(ゼロクロス点)を検出することにより実サンプル点と理想サンプル点との時間ずれを検出する。また、パイロットシンボル検出部12はフレーム中でレベル最大を示すパイロットシンボルを検出する。また、スレッショルドレベル算出部13はデータを判定するためのスレッショルドレベルを算出する。この算出はDCオフセット処理後のパイロットシンボルI、Qベクトルを用い平均演算を行なうことで求める。このように求めたスレッショルドレベルデータをエリア判定部14へ送出する。エリア判定部14はスレッショルドレベル算出部13より送出されたスレッショルドレベルデータをもとに他のスレッショルドレベルを設定し、これらを用いて各シンボルについてエリア判定する。このエリア判定によりデータが復号されることとなる。また、最小ベクトルレベル算出部15はエリア判定部14よりのエリア判定データをもとに16シンボル中で最小のI、Qベクトルレベルを算出し、最小ベクトルレベルとして出力する。
【0019】
図2は位相誤差リミッタ部の動作を説明するための(a)は位相誤差リミッタ部の一例を示す要部構成図、(b)は位相誤差リミッタ部の他の例を示す要部構成図である。図1および図2に基づいて説明する。本発明では、ディジタル直交検波部2から出力するI信号とQ信号とは、I信号とQ信号とからDC成分であるDCオフセットレベルを検出するためのDC系統と、検出されたDCオフセットレベルによりDC成分を打ち消してAC成分のみを通過させるAC系統とに分割され、DC系統とAC系統とは、それぞれ位相補正部9、19と位相誤差算出部7、17と位相誤差リミッタ部8、18とを備えるとともに、それぞれ位相補正を行う。
【0020】
まず、レベル検出部22で検出された受信信号の信号レベルは、図2(a)に示すようにレベル判別部23で所定の閾値との大小が判別される。この場合の所定の閾値として例えばデータ出力が所定のビット誤り率を確保するための受信感度レベルに基づいて設定される第一の閾値とする。即ち、レベル判別部23は所定のビット誤り率、例えば1%のビット誤り率を確保する受信感度点より小さければ0、受信感度点以上であれば1を出力し、位相誤差リミッタ部18のセレクタ26に入力される。一方、位相誤差算出部17から出力される位相誤差信号は位相誤差リミッタ部18に入力し、スルーとするか、位相誤差をゼロとするリミッタ部25を経由してセレクタ26に入力される。セレクタ26は複数のAND回路26a、26b・・とOR回路27とからなる。
【0021】
以上の構成により、レベル判別部23が、受信信号の信号レベルを第一の閾値である感度点より小さいと判別してゼロを出力する場合、セレクタ26が位相誤差の出力データ値をゼロとするリミッタ部25を選択するようにしている。位相誤差の出力データ値をゼロとすることで位相補正部19では位相補正を行わない。これにより、受信信号の受信レベルが受信感度レベルより低い不安定な状態での位相補正を行わないので、誤動作を防止することができる。また、レベル判別部23が、受信信号の信号レベルを第一の閾値である受信感度点以上のレベルと判別して1を出力する場合、セレクタ26が位相誤差の出力データ値をスルーとするリミッタ部25を選択するようにしている。これにより受信信号の受信レベルが受信感度レベル以上のより安定な状態では位相補正を高速に行うことになる。
【0022】
図2(b)は所定の閾値を、前述の第一の閾値と、第一の閾値よりレベルの高い第二の閾値とを含む複数の閾値とする場合の例を示す。さらに、位相誤差リミッタ部18は、位相誤差算出部17で算出される位相誤差角度が所定の位相角度を超えるか所定の位相角度以内かどうかを判別する位相誤差判別部24を備え、位相誤差算出部17から出力される受信信号の位相誤差角度が所定の位相角度を超えると判別される場合、位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換するようにした例である。まず、レベル検出部22で検出された受信信号の信号レベルはレベル判別部23で2つの所定の閾値との大小が判別される。前述と同様に、一方は第一の閾値としての例えば受信感度点より小さければ0、受信感度点以上であれば1を出力し、また、他方は第二の閾値より小さければ0、第二の閾値以上であれば1を出力し、それぞれの判別出力は位相誤差リミッタ部18のセレクタ26に入力される。一方、位相誤差算出部17から出力される位相誤差信号は位相誤差リミッタ部18に入力し、位相誤差をスルー出力とするか、ゼロとするか、1/n(nは1以上の任意の数)とするようなレベルを制限するリミッタ部25を経由してセレクタ26に入力される。セレクタ26では、受信信号の信号レベルと、位相誤差角度とによっていずれかの出力を選択する。
【0023】
レベル判別部23が受信信号の信号レベルを第一の閾値以上であるが、第二の閾値より小さいと判定する場合、セレクタ26が位相誤差の出力データ値を所定の比率で制限するリミッタ部25を選択するようにしている。受信信号の信号レベルが比較的低い状態では何らかの要因で信号レベルが変動してデータの信頼性が低く、このように出力データ値を所定の比率で制限することにより、誤動作を抑えることができる。レベル判別部23が受信信号の信号レベルを第一の閾値以上で、且つ第二の閾値以上と判別する場合、受信信号の信号レベルは十分大きく安定していると判断されるので、セレクタ26が位相誤差の出力データ値をそのまま出力するリミッタ部25を選択するようにしている。以上により、受信信号の信号レベルが低い場合は位相補正の応答を鈍くして誤動作しにくくし、受信信号の信号レベルが高い場合は位相補正の応答を早くして高速に復帰または追随することができる。
【0024】
また、レベル判別部23が受信信号の信号レベルを第一の閾値以上で第二の閾値より小さいと判別し、且つ位相誤差判別部24が受信信号の位相誤差角度を所定の位相角度を超えると判別する場合、セレクタ26が位相誤差の出力データ値をゼロとするリミッタ部25を選択するようにしている。なお、位相誤差判別部24での位相誤差の判別は位相誤差の絶対値と所定の位相角度との大小関係の比較が行われ、位相誤差の絶対値が所定の位相角度の範囲以内か所定の角度閾値の範囲を超えるかが判別される。所定の位相角度とは例えば±40°であり、通常このような大きな誤差が生じることのない角度値が選択される。また、一旦誤動作によりこのような角度値、例えば±40°を超えるような位相誤差信号を許容して位相補正を施すと復帰にかなりの時間を要することから、受信信号の信号レベルが低い場合、このような位相誤差信号を許容しないようにし、怪しい補正を行わないようにしている。受信信号の信号レベルが第二の閾値以上の場合にはそのままスルーとして高速で補正するか、1/2、または所定の比率で1/nに制限してやや遅く補正を行うようにするとよい。以上、受信信号の信号レベルと位相誤差角度との組み合わせ判定の判定結果による位相誤差の出力データ値の制限、または変換についての一例を述べたが、所定の閾値や所定の位相角度をそれぞれもっと細かく設定してもよいし、これ以外に様々な組み合わせが可能であることは云うまでもない。また、位相誤差判別の位相角度実験値を参考として±40°として説明したが、これに限るものではない。
【0025】
レベル検出部22は、受信信号に所定の間隔で含まれるパイロットシンボルのピークレベルを検出することで、受信信号の信号レベルとしている。パイロットシンボルは1フレームに1回のみの出現であり、出現頻度は少ないが、伝送データに左右されず、安定した検出か可能であり、誤検出が少ないという特徴がある。他の方法として、レベル検出部22は、AC系統のI信号とQ信号のそれぞれの振幅の絶対値のピークレベルの平均値を検出することで、受信信号の信号レベルとしてもよい。これにより、検出の頻度を高めることができる。また、レベル検出部22は、AC系統のI信号とQ信号のそれぞれの振幅の絶対値の平均値を検出することで、受信信号の信号レベルとしてもよい。これにより、さらに検出の頻度を高めることができる。信号レベルの検出はそれぞれ伝送する諸条件により適宜選択すればよい。
【0026】
位相補正部9、19による受信信号の位相補正については、パイロットシンボルのピークレベルを検出し、検出後の所定の期間のみ補正を行うようにしている。通常、送信側の位相は頻繁にずれることは少ないので、補正の頻度は少なくても確実に位相誤差を検出し、検出した信頼度の高い値に基づいて補正を行うことが望ましい。また、この位相補正は、フレームシンボル数(例えば16シンボル)を分母とし、入力された位相誤差データを分子として除算した角度を1シンボル当たりの補正量とし、これを前記情報データのシンボル数について均等に補正する、例えば位相誤差データが16度の位相誤差を示すデータであり、情報データのシンボル数が16シンボルである場合、位相誤差データが入力されるごとに1度(=16/16)ごとの均等補正を16シンボルについて行うなど、緩やかに補正を行うようにしてもよい。
【0027】
なお、A/D1を除くディジタル直交検波部2以下の回路は、位相補正部9、19、位相誤差算出部7、17、レベル検出部22、レベル判別部23、および位相誤差リミッタ部8、18などを含めて全て同一のディジタルシグナルプロセッサで構成しており、回路構成を簡単にし、ソフトウエア変更のみで様々な通信方式に対応可能としてコストの上昇を防いでいる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、受信した多値QAM(直交振幅変調)信号をディジタル処理による準同期方式で直交検波して同相成分のI信号と直交成分のQ信号とに分割するディジタル直交検波部と、同ディジタル直交検波部よりの信号から所要の低域成分を取り出すローパスフィルタ(以降LPFとする)と、同LPFから出力されたI信号とQ信号のそれぞれの位相誤差を補正する位相補正部と、受信信号に基づく基準位相を抽出してI信号とQ信号とのそれぞれの位相誤差を算出するとともに、算出した位相誤差データを前記位相補正部に出力する位相誤差算出部とを備え、位相補正部で位相補正後のI信号とQ信号とを復調してデータ出力するディジタル復調装置において、位相補正後のI信号とQ信号とから受信信号の信号レベルを検出するレベル検出部と、検出された受信信号の信号レベルと所定の閾値との大小を判別するレベル判別部と、受信信号の信号レベルの大小によって位相誤差算出部から位相補正部に出力する位相誤差の出力データ値を調整する位相誤差リミッタ部とを備え、レベル判別部が、レベル検出部で検出する受信信号の信号レベルを所定の閾値より小さいと判別する場合、位相誤差リミッタ部が、位相誤差算出部から位相補正部に出力する位相誤差の出力データ値を制限して受信信号の位相補正を行わないようにし、またはレベル判別部が、レベル検出部で検出する受信信号の信号レベルを所定の閾値より大きいと判別する場合、位相誤差リミッタ部が、位相誤差算出部から位相補正部に出力する位相誤差の出力データ値をスルーで出力するようにして受信信号の位相補正を行うようにしたので、受信電界レベルが低くなっても位相が大きくずれることを防止するとともに、受信電界レベルが正常になると位相補正を高速に行って復帰するようにしたディジタル復調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるディジタル復調装置の一実施例を示す要部ブロック図である。
【図2】本発明によるディジタル復調装置の一実施例における、位相誤差リミッタ部の動作を説明するための(a)は位相誤差リミッタ部の一例を示す要部構成図、(b)は位相誤差リミッタ部の他の例を示す要部構成図である。
【図3】従来の復調装置の位相補正の原理構成の一例を示す要部ブロック図である。
【符号の説明】
1 A/D変換部
2 ディジタル直交検波部
3 LPF
4 AFC補正部
5、6 加算器
7、17 位相誤差算出部
8、18 位相誤差リミッタ部
9、19 位相補正部
10 タイミングズレ検出部
11 ゼロクロス点検出部
12 パイロットシンボル検出部
13 スレッショルドレベル算出部
14 エリア判定部
15 最小ベクトルレベル算出部
16 AFC算出部
20 最大ベクトルレベル算出部
21 オフセット打消レベル算出部
22 レベル検出部
23 レベル判別部
24 位相誤差判別部
25 リミッタ部
26 セレクタ
26a、26b、26c、26d AND回路
27 OR回路

Claims (7)

  1. 受信した多値QAM(直交振幅変調)信号をディジタル処理による準同期方式で直交検波して同相成分のI信号と直交成分のQ信号とに分割するディジタル直交検波部と、同ディジタル直交検波部よりの信号から所要の低域成分を取り出すローパスフィルタ(以降LPFとする)と、同LPFから出力されたI信号とQ信号のそれぞれについてDC成分であるDCオフセットレベルを検出するためのDC系統と、前記DCオフセットレベルによりDC成分を打ち消してAC成分のみを通過させるAC系統と、前記DC系統と前記AC系統それぞれにI信号とQ信号とのそれぞれの位相誤差を補正する位相補正部と、受信信号に基づく基準位相を抽出してI信号とQ信号とのそれぞれの位相誤差を算出する位相誤差算出部と、前記位相誤差算出部から前記位相補正部に出力する前記位相誤差の出力データ値を調整する位相誤差リミッタ部とを備え、
    前記AC系統の位相補正後のI信号とQ信号とから受信信号の信号レベルを検出するレベル検出部と、検出された前記受信信号の信号レベルと所定の閾値との大小を判別するレベル判別部と、前記レベル判別部が、前記レベル検出部で検出する前記受信信号の信号レベルを前記所定の閾値より小さいと判別する場合、前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部が、前記位相誤差算出部から前記位相補正部に出力する前記位相誤差の出力データ値を制限して前記受信信号の位相補正を行わないようにしたことを特徴とするディジタル復調装置。
  2. 前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部は、前記位相誤差算出部から前記位相補正部へ出力する前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換するリミッタ部と、前記レベル判別部で判別される前記受信信号の信号レベルと前記所定の閾値との大小から前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換する選択を行うセレクタとからなることを特徴とする請求項1に記載のディジタル復調装置。
  3. 前記レベル判別部が、前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値より小さいと判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をゼロとする前記リミッタ部を選択するようにしたことを特徴とする請求項に記載のディジタル復調装置。
  4. 前記所定の閾値を、前記第一の閾値と、前記第一の閾値よりレベルの高い第二の閾値とを含む複数の閾値とし、前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値以上で、前記第二の閾値より小さいと判定する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値を所定の比率で制限する前記リミッタ部を選択するようにしたことを特徴とする請求項3に記載のディジタル復調装置。
  5. 前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第二の閾値以上と判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をそのまま出力する前記リミッタ部を選択するようにしたことを特徴とする請求項に記載のディジタル復調装置。
  6. 前記DC系統と前記AC系統それぞれの前記位相誤差リミッタ部は、前記位相誤差算出部で算出される位相誤差角度が所定の位相角度を超えるか所定の位相角度以内かどうかを判別する位相誤差判別部を備え、前記位相誤差算出部から出力される前記受信信号の位相誤差角度が前記所定の位相角度を超えると判別される場合、前記位相誤差の出力データ値を制限する、または所定の出力データ値に変換するようにしたことを特徴とする請求項ないしに記載のディジタル復調装置。
  7. 前記レベル判別部が前記受信信号の信号レベルを前記第一の閾値以上で前記第二の閾値より小さいと判別し、且つ前記位相誤差判別部が前記受信信号の位相誤差角度を前記所定の位相角度を超えると判別する場合、前記セレクタが前記位相誤差の出力データ値をゼロとする前記リミッタ部を選択するようにしたことを特徴とする請求項に記載のディジタル復調装置。
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