JP4592902B2 - 樹脂被覆アルミニウム合金部材及びその製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム合金部材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間押出し成形した熱処理系アルミニウム合金の表面上に樹脂被膜を形成した樹脂被覆アルミニウム合金部材、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金に樹脂被膜を被覆した樹脂被覆アルミニウム合金部材は、自動車用窓ガラスのフレーム部品、アルミサッシ等に広く用いられている。このような樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造する方法として、特公昭58-22267等は、まず非熱処理用のアルミニウム合金を熱間押出し成形し、この押出し成形の熱を利用して樹脂粉末を紛体塗装し樹脂被膜を形成する方法を提案している。通常、押出し後に放置して常温まで冷却すると、アルミニウム合金表面には水和物が形成され樹脂が全く密着しなくなるが、この方法では押出し後に連続して紛体塗装するために水和物が殆ど形成されない。また、アルミニウム合金に陽極処理又は化成処理等を施した後、焼き付け塗装を行う方法も既に知られている。
樹脂被覆アルミニウム合金部材を自動車等で利用する場合は高い強度が要求されるため、通常アルミニウム合金を熱処理する必要がある。しかしながら、上記従来技術においてはアルミニウム合金が非熱処理系のものに限られている。これは、従来の方法では樹脂被膜とアルミニウム合金との密着性が低く、また密着性のコントロールが困難であり、熱処理により樹脂が脆化し密着性が損なわれてしまうためである。また、従来から熱処理温度はアルミニウム合金の強度等の特性を維持するためには200℃が上限とされており、融点が200℃を超える樹脂の塗布は困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、樹脂被膜の密着性に優れ、高い強度を有する熱処理系樹脂被覆アルミニウム合金部材、及びその製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、アルミニウム合金を熱間押出し成形し特定の条件下で冷却した後、その表面に樹脂被膜を形成し、更に熱処理及び樹脂再溶融処理を施すことにより、樹脂被膜の密着性及び強度に優れた熱処理系樹脂被覆アルミニウム合金部材が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0005】
すなわち、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材は熱間押出し成形した熱処理系アルミニウム合金の表面上に樹脂被膜を形成したものであり、アルミニウム合金の表面が酸化されており、且つ水和物を形成していないことを特徴とする。
【0006】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の好ましい一実施態様においては、アルミニウム合金は樹脂被膜を形成した後に熱処理され、更に樹脂の再溶融処理が施されている。また、樹脂被膜は200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。この熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレートであるのがより好ましい。このような熱可塑性樹脂は、好ましくは樹脂被膜中で部分的に熱分解される。
【0007】
また、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法は(A)熱処理系アルミニウム合金を350〜530℃で熱間押出し成形する成形工程、(B)大気中、成形したアルミニウム合金を900秒以内に表面温度240〜340℃まで冷却する冷却工程、(C)アルミニウム合金の表面上に樹脂を塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂被覆工程、(D)樹脂被膜を形成したアルミニウム合金を熱処理する熱処理工程、及び(E)樹脂被膜中の樹脂の再溶融処理を施し冷却する樹脂再溶融工程を含むことを特徴とする。本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法によれば、上記本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造することができる。
【0008】
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、冷却工程は乾燥空気を冷却ガスとして用いて行うのが好ましい。また、樹脂被覆工程では樹脂を加熱により溶融状態として塗布するのが好ましい。このとき、溶融状態の樹脂の温度は230〜330℃であるのが好ましい。
【0009】
樹脂被膜は200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。この熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレートであるのがより好ましい。このような熱可塑性樹脂を用いた場合、アルミニウム合金の表面上に熱可塑性樹脂を塗布した後、該樹脂が溶融している状態を1.5秒以上保持してから冷却して樹脂被膜を形成することにより、樹脂被膜中の熱可塑性樹脂を部分的に熱分解させるのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
[1]樹脂被覆アルミニウム合金部材
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材は熱間押出し成形した熱処理系アルミニウム合金の表面上に樹脂被膜を形成したものである。好ましくは、アルミニウム合金は樹脂被膜を形成した後に熱処理され、更に樹脂の再溶融処理が施されている。熱処理及び樹脂再溶融処理についての詳細は後述する。以下、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の各構成要素について詳述する。
【0011】
(A)アルミニウム合金
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材において、アルミニウム合金の表面は酸化されており、且つ水和物を形成していない。アルミニウム合金表面の一部のみが酸化されていても全体が酸化されていてもよい。表面の一部のみが酸化されている場合は活性な無酸化部分が保存されているので、この無酸化部分が樹脂と相互作用し密着性が向上すると考えられる。表面全体が酸化されている場合は、その表面構造を格子欠陥を有するγ-アルミナ又はそれに類似の構造とする必要がある。この表面構造においては、格子欠陥によりアルミニウム原子の一部が表出しており、このアルミニウム原子が活性中心として機能して密着性が向上すると考えられる。このようなアルミニウム合金を含む樹脂被覆アルミニウム合金部材は、後述する本発明の製造方法により得ることができる。
【0012】
本発明で用いるアルミニウム合金は特に限定されず、JIS規格A6063、2024、7075等が使用できる。
【0013】
(B)樹脂被膜
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材において、樹脂被膜をなす樹脂はオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、その変性樹脂等であってよい。また、それらのいずれかを含むポリマーアロイも使用できる。更に、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、アイオノマー等やそれらの混合物であってもよい。
【0014】
樹脂被膜は200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。この熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレートであるのがより好ましい。このような熱可塑性樹脂は、好ましくは樹脂被膜中で部分的に熱分解されている。この熱分解によりアルミニウム合金と樹脂被膜との密着性が改善されるが、これは樹脂の分解により生じたカルボキシル基等がアルミニウム合金表面の活性部位(上記活性な無酸化部分又は表出したアルミニウム活性中心)に配位したり、それらの間で分子間力や電気的な引力が作用したり、イオン結合や共有結合が形成されるためであると考えられる。
【0015】
樹脂被膜の厚さは特に限定されないが、例えば自動車で使用する場合は10〜60μm程度とすればよい。樹脂被膜の形成法については後述する。
【0016】
[2]樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法によれば、上記本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造することができる。本発明の製造方法は(A)成形工程、(B)冷却工程、(C)樹脂被覆工程、(D)熱処理工程、及び(E)樹脂再溶融工程を含む。本発明の製造方法は縦横の幅3〜100mm、厚み0.5〜5mm程度のアルミニウム合金押出し材に、厚さ2〜150μm程度の樹脂被膜を被覆した樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造に好ましく適用できる。
【0017】
図1は本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において好ましく使用できる樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置の一例を示す断面図である。図1に示す樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置1により、アルミニウム合金2の表面を樹脂3により被覆することができる。以下、図1を用いて本発明の製造方法の各工程について詳述するが、本発明はそれらに限定されず本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【0018】
(A)成形工程
まず、熱処理系アルミニウム合金を熱間押出し成形する。本発明で用いるアルミニウム合金は上記の通りである。例えば図1に示すように、アルミニウム合金2をコンテナ41間に載置し、温調コンテナヒーター42により温度を調節しながら、油圧プランジャ43で押出し速度を制御し、ダイス44から押出して成形できる。
【0019】
押出しの際の温度は350〜530℃とすればよく、450〜500℃とするのが好ましい。押出し温度が350℃未満であると押出しが困難であり、530℃を超えると押出し材表面に加工発熱による部分溶融が発生するため好ましくない。
【0020】
(B)冷却工程
次に、大気中、アルミニウム合金を900秒以内に表面温度240〜340℃まで冷却する。より好ましくは300秒以内に表面温度260〜340℃まで冷却する。通常、押出し後にアルミニウム合金を大気中で放置して常温付近まで冷却すると、その表面には水和物が形成され樹脂が全く密着しなくなるが、本発明の方法では冷却条件を厳密に設定することにより、水和物の形成を抑制することができる。更に、上記条件下で冷却することにより前述した好ましい活性表面を有するアルミニウム合金を得ることができる。アルミニウム合金の表面を無酸化状態とするために不活性ガス中で冷却する方法が既に知られているが(特開平11-147073号)、本発明の製造方法では大気中、即ち酸化性雰囲気下で冷却しても活性表面を有するアルミニウム合金が得られ、コスト面で有利である。
【0021】
冷却は単に放置して行ってもよく、また冷却ガスや冷媒を用いて行ってもよい。水和物の形成を防ぎ、且つ密着性をコントロールするためには、乾燥空気を冷却ガスとして用いるのが好ましい。例えば図1に示すように、成形したアルミニウム合金2をベースプレート51間を経てチャンバー52内に導入し、矢印Aの方向に乾燥空気を流して冷却することができる。好ましくは、冷却されたアルミニウム合金の表面温度を放射温度計53で測定し、その表面温度に応じて乾燥空気の温度や流量を制御しながら冷却する。乾燥空気の温度は通常、室温〜50℃とすればよい。
【0022】
(C)樹脂被覆工程
続いて、冷却したアルミニウム合金の表面上に樹脂を塗布し、冷却して樹脂被膜を形成する。例えば図1に示すように、冷却したアルミニウム合金2を、熱電対61により加熱し溶融状態とした樹脂3中に浸漬させ、温調ヒータースリット62を通し、冷却器63により水冷すればよい。
【0023】
樹脂の塗布は大気中で行ってよく、乾燥空気中で行うのが好ましい。空気の湿度が高いと、アルミニウム合金の表面上に水和物が形成されやすく、加えて樹脂の加水分解が起こる場合もあるため、好ましくない。
【0024】
樹脂の塗布方法としては、一般的な浸漬法、樹脂のTダイ押出しによるカーテンコーティング法等が利用できる。樹脂は溶融状態で塗布しても粉体塗装してもよいが、加熱により溶融状態として塗布するのが好ましい。粉体状の樹脂を用いる場合はアルミニウム合金の温度を高く(400℃程度)する必要があるため、樹脂が劣化しやすく十分な密着性が得られない場合がある。また、溶融状態の樹脂を塗布することにより、粉体塗装を行う場合よりも低コスト化が可能である。
【0025】
樹脂を加熱により溶融状態として塗布する場合、樹脂の温度は230〜330℃とするのが好ましく、240〜300℃とするのがより好ましく、260〜280℃とするのが特に好ましい。樹脂温度が230℃未満であると樹脂粘度が高く塗布困難であり、一方、330℃を超えると樹脂の劣化が著しい。
【0026】
樹脂被膜をなす樹脂はオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、その変性樹脂等であってよい。また、それらのいずれかを含むポリマーアロイも使用できる。更に、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、アイオノマー等であってもよい。
【0027】
樹脂被膜は200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。この熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレートであるのがより好ましい。このような熱可塑性樹脂を用いた場合、アルミニウム合金の表面上に熱可塑性樹脂を塗布した後、該樹脂が溶融している状態を1.5秒以上保持してから冷却して樹脂被膜を形成することにより、樹脂被膜中の熱可塑性樹脂を部分的に熱分解させるのが好ましい。この熱分解により、前述したようにアルミニウム合金と樹脂被膜との密着性が改善される。溶融状態保持時間は、より好ましくは1.8秒以上とする。
【0028】
例えば、樹脂としてポリブチレンテレフタレートを用いる場合、塗布後に溶融状態を1.5秒以上保持することにより、ポリブチレンテレフタレートが部分的に下記式(I)のように熱分解し、カルボキシル基を形成する。このカルボキシル基がアルミニウム合金表面の活性部位に配位したり結合を形成したりすることにより、樹脂とアルミニウム合金との密着性が向上する。熱分解により樹脂の分子量が低下するが、通常分子量低下による悪影響はみられない。
【0029】
【化1】
Figure 0004592902
【0030】
樹脂塗布後の冷却は、空冷又は水冷、或いは単に空気中に放置して行うことができ冷却速度も特に限定されないが、水冷により急冷するのが好ましい。急冷することにより結晶性が良くなり、密着性が向上する。
【0031】
本発明の特に好ましい実施態様によれば、表面温度260〜340℃に冷却したアルミニウム合金の表面上に、260〜280℃に加熱し溶融状態としたポリブチレンテレフタレートを塗布し、塗布後に溶融状態を1.8秒以上保持することによりポリブチレンテレフタレートを上記式(I)のように熱分解させ、水冷して樹脂被膜を形成する。このように、本発明の製造方法ではアルミニウム合金の塗布時の表面温度、樹脂温度及び樹脂塗布後の溶融状態保持時間の設定が非常に重要である。
【0032】
(D)熱処理工程
次いで、樹脂被膜を形成したアルミニウム合金を熱処理する。本発明の製造方法においては、上記(A)〜(C)の工程によって樹脂被膜の密着性が高い樹脂被覆部材が得られるので、熱処理が可能となる。
【0033】
熱処理は恒温炉等を用いて、150〜250℃で1〜24時間行ってよい。熱処理温度が150℃未満であると時間がかかり過ぎ、250℃を超えると時効の制御が難しくなる。熱処理温度は160〜240℃とするのが好ましい。また、熱処理の時間は温度に応じて適宜選択すればよいが、通常1〜10時間とするのが好ましい。1時間未満であると熱処理の効果が得られず、10時間を超えると生産性が低下する。
【0034】
(E)樹脂再溶融工程
最後に、アルミニウム合金表面に形成した樹脂被膜中の樹脂を再溶融した後、冷却して樹脂被覆アルミニウム合金部材を得る。
【0035】
再溶融処理は樹脂被膜表面の温度が一瞬融点を超えるように、熱風炉等の装置を用いて230〜300℃で0.1〜300秒程度行えばよい。再溶融の際の加熱温度は230〜240℃とするのが特に好ましい。加熱温度が230℃未満であると再溶融が困難であり、240℃を超えると時効が進み易い。また、時間は加熱温度に応じて適宜選択すればよいが、アルミニウム合金の熱処理特性維持の観点からはなるべく短くするのが望ましく、通常0.1〜10秒とするのが好ましい。
【0036】
再溶融処理後の冷却は、空冷又は水冷、或いは単に空気中に放置して行うことができ、冷却速度も特に限定されないが、水冷により急冷するのが好ましい。急冷することにより樹脂がアモルファス化し伸びと靭性を付与することができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はそれにより限定されない。
【0038】
1.樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造
図1に示す樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置1を用いて、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造した。まず、アルミニウム合金(JIS規格A6063)を450℃で熱間押出し成形し、縦横の幅25mm、厚み3mmの成形品を得た。次に、25℃の乾燥空気を冷却ガスとして用い、大気中でアルミニウム合金成形品を冷却した。続いて冷却したアルミニウム合金成形品を溶融状態のポリブチレンテレフタレート(PBT、帝人株式会社製「C7000」、融点:225℃)に浸漬し、表面上にPBTを塗布した。塗布後、樹脂が溶融している状態を所定時間保持してから水冷し、樹脂被膜を形成した。更に、樹脂被覆したアルミニウム合金を180℃で8時間熱処理した後、樹脂被膜の温度を20秒間で230℃に加熱した。最後に樹脂被膜の温度を230℃で5秒間保持して樹脂再溶融処理を施し、水冷して本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を得た。これらの工程を、樹脂塗布時のアルミニウム合金の表面温度を240℃、260℃、280℃、300℃、320℃又は340℃とし、塗布する際のPBTの温度を240℃、260℃、280℃、300℃又は320℃とし、更に樹脂の溶融状態保持時間を0.7秒、1.0秒又は1.8秒として行い、樹脂被覆アルミニウム合金部材をそれぞれ製造した。なお、押出し後の冷却時間は5〜20秒とした。
【0039】
2.碁盤目切り込みテープ剥離試験
上記のように製造した各樹脂被覆アルミニウム合金部材を純水中で3時間煮沸した後、碁盤目切り込みテープ剥離試験を行って樹脂被膜とアルミニウム合金との密着性を調べた。結果を表1に示す。なお、表1中の「×」は、熱処理前の耐高温水試験にて樹脂被膜が剥離したものを表す。
【0040】
【表1】
Figure 0004592902
【0041】
表1より、PBTの溶融状態保持時間を長くすると、アルミニウム合金の表面温度を低くしても密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金部材が得られることが確認された。即ち、溶融状態のPBTとアルミニウム合金の接触時間を長くして界面での反応を促進することで、密着性に優れた樹脂被膜を形成することができる。溶融状態保持時間を1.8秒とした場合、樹脂塗布時のアルミニウム合金の表面温度は260〜340℃、塗布するPBTの温度は260〜280℃が特に好ましいことがわかる。
【0042】
比較のために、熱処理後に樹脂再溶融処理を施さないこと以外は上記「1.樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造」で用いた製造方法と同様にして、表2に示す樹脂被覆アルミニウム合金部材をそれぞれ製造した。各樹脂被覆アルミニウム合金部材を100℃の水中で3時間煮沸した後、碁盤目切り込みテープ剥離試験を行った。結果を表2に示す。なお、表2中の「×」は、熱処理前の耐高温水試験にて樹脂被膜が剥離したものを表す。また、「※」は耐高温水試験前に樹脂被膜が剥離したものを表す。
【0043】
【表2】
Figure 0004592902
【0044】
表1及び表2の比較により、本発明の製造方法において熱処理後に樹脂再溶融処理を行うことにより、樹脂被膜の密着性が著しく改善されることが確認された。
【0045】
3.XPS測定
上記樹脂被覆アルミニウム合金部材中のPBTをヘプタフルオロイソプロピルアルコール(HFIPA)により溶解除去し、XPS(X線光電子分光法)解析を行った。上記の碁盤目切り込みテープ剥離試験で優れた密着性を示した樹脂被覆アルミニウム合金部材のPBTのXPSスペクトルを図2に、密着性に劣る樹脂被覆アルミニウム合金部材のPBTのXPSスペクトルを図3にそれぞれ示す。
【0046】
図2及び3に示すように、密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金部材のPBTはカルボキシル基のC=O結合に由来するピークを示したが、密着性に劣る樹脂被覆アルミニウム合金部材におけるPBTは示さなかった。このことから、優れた密着性を示す樹脂被覆アルミニウム合金部材においては、上記式(I)の熱分解反応が起こりカルボキシル基が形成され、その結果密着性が改善されていることがわかる。
【0047】
4.樹脂再溶融処理時間の検討
樹脂再溶融処理の時間、即ち樹脂被膜の温度を230℃で保持する時間を0秒、10秒、20秒、40秒、100秒、200秒又は300秒としたこと以外は上記「1.樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造」で用いた製造方法と同様に、樹脂被覆アルミニウム合金部材をそれぞれ製造した。ただし、樹脂塗布時のアルミニウム合金表面温度は300℃、PBT温度は260℃とし、樹脂の溶融状態保持時間は1.8秒とした。各樹脂被覆アルミニウム合金部材の引張強度、耐力及び伸びを測定した結果を表3に示す。なお、「引張強度」は通常の引張試験機を用いて測定した。ここでいう「耐力」とは0.2%耐力であり、引張試験機を用いて測定した。また、「伸び」とは破断時での伸びを測定した結果である。
【0048】
【表3】
Figure 0004592902
【0049】
表3より、引張強度及び耐力の観点からは、樹脂再溶融処理時間を短く設定するのが好ましく、伸びに関しては再溶融処理時間の違いによる影響は少ないことが解る。
【0050】
5.耐久性試験
樹脂塗布時のアルミニウム合金表面温度を300℃、PBT温度を260℃とし、樹脂の溶融状態保持時間を1.8秒として、上記「1.樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造」で用いた製造方法と同様に樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造した。
この樹脂被覆アルミニウム合金部材を用いて各種耐久性試験を行った。
【0051】
5-1.耐水性及び耐湿性
55℃の水中に240時間浸漬した上記樹脂被覆アルミニウム合金部材、及び相対湿度95%Rh以上の条件下、50℃で240時間放置した樹脂被覆アルミニウム合金部材に対して、それぞれテープ剥離試験を行った。その結果、どちらの樹脂被覆アルミニウム合金部材においても樹脂被膜の剥離はみられず、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材が優れた耐水性及び耐湿性を示すことが確認された。
【0052】
5-2.塩水に対する耐性
上記樹脂被覆アルミニウム合金部材に5%NaCl水溶液を噴霧し、960時間保存した後、その樹脂被膜を観察した。その結果、クロスカット部分からの剥離幅は2mm程度であり、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材は塩水に対する耐性においても優れていることが解った。
【0053】
5-3.ガソリンやエンジンオイルに対する耐性
上記樹脂被覆アルミニウム合金部材を無鉛ガソリンに3時間浸漬した後の樹脂被膜、及びエンジンオイルに50℃で7時間浸漬した後の樹脂被膜をそれぞれ観察した。その結果、どちらの樹脂被膜にも膨れ、割れ、剥がれ等の欠陥は見られず、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材はガソリンやエンジンオイルに対しても優れた耐性を示すことが明らかとなった。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材は高い強度を有し、樹脂被膜とアルミニウム合金との密着性に優れている。このような部材は本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において使用できる樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置の一例を示す断面図である。
【図2】樹脂被膜とアルミニウム合金との密着性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金部材におけるPBT樹脂のXPSスペクトルである。
【図3】樹脂被膜とアルミニウム合金との密着性に劣る樹脂被覆アルミニウム合金部材におけるPBT樹脂のXPSスペクトルである。
【符号の説明】
1・・・樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置
2・・・アルミニウム合金
3・・・樹脂
41・・・コンテナ
42・・・温調コンテナヒーター
43・・・油圧プランジャ
44・・・ダイス
51・・・ベースプレート
52・・・チャンバー
53・・・放射温度計
61・・・熱電対
62・・・温調ヒータースリット
63・・・冷却器

Claims (9)

  1. 熱間押出し成形した熱処理系アルミニウム合金の表面上に樹脂被膜を形成した樹脂被覆アルミニウム合金部材において、前記アルミニウム合金の表面が酸化されており、且つ水和物を形成しておらず、前記樹脂被膜が200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなり、前記アルミニウム合金は前記樹脂被膜を形成した後に熱処理され、更に樹脂の再溶融処理(230〜300℃で0.1〜300秒間)が施されており、前記樹脂被膜中の前記熱可塑性樹脂が部分的に熱分解されていることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材。
  2. 請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材において、前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材。
  3. 請求項2に記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材において、前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材。
  4. (A)熱処理系アルミニウム合金を350〜530℃で熱間押出し成形する成形工程、(B)大気中、成形した前記アルミニウム合金を900秒以内に表面温度240〜340℃まで冷却する冷却工程、(C)前記アルミニウム合金の表面上に200℃以上の融点を持つ熱可塑性樹脂を塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂被覆工程、(D)樹脂被膜を形成した前記アルミニウム合金を熱処理する熱処理工程、及び(E)前記樹脂被膜中の樹脂に230〜300℃で0.1〜300秒間の再溶融処理を施し冷却する樹脂再溶融工程を含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  5. 請求項4に記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記冷却工程は乾燥空気を冷却ガスとして用いて行うことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記樹脂被覆工程では前記樹脂を加熱により溶融状態として塗布することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーアロイであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  8. 請求項7に記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  9. 請求項4〜8のいずれかに記載の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記アルミニウム合金の表面上に前記熱可塑性樹脂を塗布した後、該熱可塑性樹脂が溶融している状態を1.5秒以上保持してから冷却して前記樹脂被膜を形成することにより、前記樹脂被膜中の前記熱可塑性樹脂を部分的に熱分解させることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
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