JP2002105664A - 樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法 - Google Patents

樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法

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JP2002105664A
JP2002105664A JP2000293107A JP2000293107A JP2002105664A JP 2002105664 A JP2002105664 A JP 2002105664A JP 2000293107 A JP2000293107 A JP 2000293107A JP 2000293107 A JP2000293107 A JP 2000293107A JP 2002105664 A JP2002105664 A JP 2002105664A
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Shinichi Ogura
新一 小倉
Hitoshi Kazama
仁 風間
Masataka Kumada
正隆 熊田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度であるとともに樹脂被膜の密着性に優
れた熱処理系樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造する
方法を提供する。 【解決手段】 (A)熱処理系アルミニウム合金を350〜53
0℃で熱間押出し成形する成形工程、(B)大気中、成形し
たアルミニウム合金を900秒以内に表面温度240〜340℃
まで冷却する冷却工程、(C)アルミニウム合金の表面上
に樹脂を塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂被覆工
程、(D)樹脂被膜を形成したアルミニウム合金を熱処理
する熱処理工程、(E)樹脂被膜をなす樹脂を再溶融させ
除去する樹脂除去工程、及び(F)樹脂を再塗布し冷却し
て樹脂被膜を形成する樹脂再被覆工程を含む樹脂被覆ア
ルミニウム合金部材の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は樹脂被覆アルミニウ
ム合金部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム合金に樹脂被膜を被覆した
樹脂被覆アルミニウム合金部材は、自動車用窓ガラスの
フレーム部品、アルミサッシ等に広く用いられている。
このような樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造する方
法として、特公昭58-22267等は、まず非熱処理用のアル
ミニウム合金を熱間押出し成形し、この押出し成形の熱
を利用して樹脂粉末を紛体塗装し樹脂被膜を形成する方
法を提案している。通常、押出し後に放置して常温まで
冷却すると、アルミニウム合金表面には水和物が形成さ
れ樹脂が全く密着しなくなるが、この方法では押出し後
に連続して紛体塗装するために水和物が殆ど形成されな
い。また、アルミニウム合金に陽極処理又は化成処理等
を施した後、焼き付け塗装を行う方法も既に知られてい
る。樹脂被覆アルミニウム合金部材を自動車等で利用す
る場合は高い強度が要求されるため、通常アルミニウム
合金を熱処理する必要がある。しかしながら、上記従来
技術においてはアルミニウム合金が非熱処理系のものに
限られている。これは、従来の方法では樹脂被膜とアル
ミニウム合金との密着性が低く、また密着性のコントロ
ールが困難であり、熱処理により樹脂が脆化し密着性が
損なわれてしまうためである。また、従来から熱処理温
度はアルミニウム合金の強度等の特性を維持するために
は200℃が上限とされており、融点が200℃を超える樹脂
の塗布は困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高強
度であるとともに樹脂被膜の密着性に優れた熱処理系樹
脂被覆アルミニウム合金部材を製造する方法を提供する
ことである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、熱間押出し成形し特定の条件下
で冷却したアルミニウム合金の表面に樹脂被膜を形成
し、これに熱処理を施した後、一旦樹脂被膜を除去して
から再度樹脂を塗布することにより、強度及び樹脂被膜
の密着性に優れた熱処理系樹脂被覆アルミニウム合金部
材が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0005】すなわち、本発明の樹脂被覆アルミニウム
合金部材の製造方法は、(A)熱処理系アルミニウム合金
を350〜530℃で熱間押出し成形する成形工程、(B)大気
中、成形したアルミニウム合金を900秒以内に表面温度2
40〜340℃まで冷却する冷却工程、(C)アルミニウム合金
の表面上に樹脂を塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹
脂被覆工程、(D)樹脂被膜を形成したアルミニウム合金
を熱処理する熱処理工程、(E)樹脂被膜をなす樹脂を再
溶融させ除去する樹脂除去工程、及び(F)樹脂を再塗布
し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂再被覆工程を含むこ
とを特徴とする。
【0006】本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の
製造方法において、冷却工程は乾燥空気を冷却ガスとし
て用いて行うのが好ましい。また、樹脂被覆工程では樹
脂を加熱により溶融状態として塗布するのが好ましい。
このとき、溶融状態の樹脂の温度は230〜330℃であるの
が好ましい。
【0007】樹脂被覆工程で形成する樹脂被膜は200℃
以上の融点を持つ熱可塑性樹脂からなるのが好ましい。
この熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂若しくはポリアミ
ド樹脂又はその変性樹脂、或いはそれを含むポリマーア
ロイであるのが好ましく、ポリブチレンテレフタレート
であるのがより好ましい。このような熱可塑性樹脂を用
いた場合、アルミニウム合金の表面上に熱可塑性樹脂を
塗布した後、該樹脂が溶融している状態を1.5秒以上保
持してから冷却して樹脂被膜を形成することにより、樹
脂被膜中の熱可塑性樹脂を部分的に熱分解させるのが好
ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の樹脂被覆アルミニウム合
金部材の製造方法は(A)成形工程、(B)冷却工程、(C)樹
脂被覆工程、(D)熱処理工程、(E)樹脂除去工程、及び
(F)樹脂再被覆工程を含む。本発明の製造方法は縦横の
幅が3〜100mm、厚み0.5〜5mm程度のアルミニウム合金
押出し材に、厚さ2〜150μm程度の樹脂被膜を被覆した
樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造に好ましく適用で
きる。
【0009】本発明の製造方法により得られる樹脂被覆
アルミニウム合金部材においては、アルミニウム合金表
面が酸化されており、且つ水和物を形成していない。ア
ルミニウム合金表面の一部のみが酸化されていても全体
が酸化されていてもよい。表面の一部のみが酸化されて
いる場合は活性な無酸化部分が保存されているので、こ
の無酸化部分が樹脂と相互作用し密着性が向上すると考
えられる。表面全体が酸化されている場合は、その表面
構造を格子欠陥を有するγ-アルミナ又はそれに類似の
構造とする必要がある。この表面構造では格子欠陥によ
りアルミニウム原子の一部が表出しており、このアルミ
ニウム原子が活性中心として機能して密着性が向上する
と考えられる。
【0010】図1は本発明の樹脂被覆アルミニウム合金
部材の製造方法において好ましく使用できる樹脂被覆ア
ルミニウム合金部材製造装置の一例を示す断面図であ
る。図1に示す樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置
1により、アルミニウム合金2の表面を樹脂3により被
覆することができる。以下、本発明の製造方法の各工程
について詳述するが、本発明はそれらに限定されず本発
明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることがで
きる。
【0011】(A)成形工程 まず、熱処理系アルミニウム合金を熱間押出し成形す
る。本発明で用いるアルミニウム合金は特に限定され
ず、JIS規格A6063、2024、7075等が使用できる。例えば
図1に示すように、アルミニウム合金2をコンテナ41間
に載置し、温調コンテナヒーター42により温度を調節し
ながら、油圧プランジャ43で押出し速度を制御し、ダイ
ス44から押出して成形できる。
【0012】押出しの際の温度は350〜530℃とすればよ
く、450〜500℃とするのが好ましい。押出し温度が350
℃未満であると押出しが困難であり、530℃を超えると
押出し材表面に加工発熱による部分溶融が発生するため
好ましくない。
【0013】(B)冷却工程 次に、大気中、成形したアルミニウム合金を900秒以内
に表面温度240〜340℃まで冷却する。より好ましくは30
0秒以内に表面温度260〜340℃まで冷却する。通常、押
出し後にアルミニウム合金を大気中で放置して常温付近
まで冷却すると、その表面には水和物が形成され樹脂が
全く密着しなくなるが、本発明の方法では冷却条件を厳
密に設定することにより、水和物の形成を抑制すること
ができる。更に、上記条件下で冷却することにより前述
した好ましい活性表面を有するアルミニウム合金を得る
ことができる。アルミニウム合金の表面を無酸化状態と
するために不活性ガス中で冷却する方法が既に知られて
いるが(特開平11-147073号)、本発明の製造方法では
大気中、即ち酸化性雰囲気下で冷却しても活性表面を有
するアルミニウム合金が得られ、コスト面で有利であ
る。
【0014】冷却は単に放置して行ってもよく、また冷
却ガスや冷媒を用いて行ってもよい。水和物の形成を防
ぎ、且つ密着性をコントロールするためには、乾燥空気
を冷却ガスとして用いるのが好ましい。例えば図1に示
すように、成形したアルミニウム合金2をベースプレー
ト51間を経てチャンバー52内に導入し、矢印Aの方向に
乾燥空気を流して冷却することができる。好ましくは、
冷却されたアルミニウム合金の表面温度を放射温度計53
で測定し、その表面温度に応じて乾燥空気の温度や流量
を制御しながら冷却する。乾燥空気の温度は通常、室温
〜50℃とすればよい。
【0015】(C)樹脂被覆工程 続いて、冷却したアルミニウム合金の表面上に樹脂を塗
布し、冷却して樹脂被膜を形成する。例えば図1に示す
ように、冷却したアルミニウム合金2を、熱電対61によ
り加熱し溶融状態とした樹脂3中に浸漬させ、温調ヒー
タースリット62を通し、冷却器63により水冷すればよ
い。
【0016】樹脂の塗布は大気中で行ってよく、乾燥空
気中で行うのが好ましい。空気の湿度が高いと、アルミ
ニウム合金の表面上に水和物が形成されやすく、加えて
樹脂の加水分解が起こる場合もあるため、好ましくな
い。
【0017】樹脂の塗布方法としては、一般的な浸漬
法、樹脂のTダイ押出しによるカーテンコーティング法
等が利用できる。樹脂は溶融状態で塗布しても粉体塗装
してもよいが、加熱により溶融状態として塗布するのが
好ましい。粉体状の樹脂を用いる場合はアルミニウム合
金の温度を高く(400℃程度)する必要があるため、樹
脂が劣化しやすく十分な密着性が得られない場合があ
る。また、溶融状態の樹脂を塗布することにより、粉体
塗装を行う場合よりも低コスト化が可能である。
【0018】樹脂を加熱により溶融状態として塗布する
場合、樹脂の温度は230〜330℃とするのが好ましく、24
0〜300℃とするのがより好ましい。樹脂温度が230℃未
満であると樹脂粘度が高く塗布が困難であり、一方、33
0℃を超えると樹脂の劣化が著しい。
【0019】樹脂被膜をなす樹脂はオレフィン系樹脂、
スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリアミド樹脂、その変性樹脂等であってよい。また、
それらのいずれかを含むポリマーアロイも使用できる。
更に、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオ
ロエチレン共重合体、アイオノマー等やそれらの混合物
であってもよい。
【0020】樹脂被膜は200℃以上の融点を持つ熱可塑
性樹脂からなるのが好ましい。この熱可塑性樹脂はポリ
エステル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹
脂、或いはそれを含むポリマーアロイであるのが好まし
く、ポリブチレンテレフタレートであるのがより好まし
い。このような熱可塑性樹脂を用いた場合、アルミニウ
ム合金の表面上に熱可塑性樹脂を塗布した後、該樹脂が
溶融している状態を1.5秒以上保持してから冷却して樹
脂被膜を形成することにより、樹脂被膜中の熱可塑性樹
脂を部分的に熱分解させるのが好ましい。溶融状態保持
時間は、より好ましくは1.8秒以上とする。この熱分解
によりアルミニウム合金と樹脂被膜との密着性が改善さ
れるが、これは樹脂の分解により生じたカルボキシル基
等がアルミニウム合金表面の活性部位(上記活性な無酸
化部分又は表出したアルミニウム活性中心)に配位した
り、それらの間で分子間力や電気的な引力が作用した
り、イオン結合や共有結合が形成されるためであると考
えられる。
【0021】例えば、樹脂としてポリブチレンテレフタ
レートを用いる場合、塗布後に溶融状態を1.5秒以上保
持することにより、ポリブチレンテレフタレートが部分
的に下記式(I)のように熱分解し、カルボキシル基を形
成する。このカルボキシル基がアルミニウム合金表面の
活性部位に配位したり結合を形成したりすることによ
り、樹脂とアルミニウム合金との密着性が向上する。熱
分解により樹脂の分子量が低下するが、通常分子量低下
による悪影響はみられない。
【0022】
【化1】
【0023】樹脂塗布後の冷却は、空冷又は水冷、或い
は単に空気中に放置して行うことができ冷却速度も特に
限定されないが、水冷により急冷するのが好ましい。急
冷することにより結晶がアモルファス化し、密着性が向
上する。
【0024】本発明の特に好ましい実施態様によれば、
表面温度260〜340℃に冷却したアルミニウム合金の表面
上に、240〜300℃に加熱し溶融状態としたポリブチレン
テレフタレートを塗布し、塗布後に溶融状態を1.8秒以
上保持することによりポリブチレンテレフタレートを上
記式(I)のように熱分解させ、水冷して樹脂被膜を形成
する。このように、本発明の製造方法ではアルミニウム
合金の塗布時の表面温度、樹脂温度及び樹脂塗布後の溶
融状態保持時間の設定が非常に重要である。
【0025】(D)熱処理工程 次いで、樹脂被膜を形成したアルミニウム合金を熱処理
する。熱処理は恒温炉等を用いて、150〜250℃で1〜24
時間程度行ってよい。熱処理温度が150℃未満であると
時間がかかり過ぎ、250℃を超えると時効の制御が難し
くなる。熱処理温度は160〜240℃とするのが好ましい。
また、熱処理の時間は温度に応じて適宜選択すればよい
が、通常1〜10時間とするのが好ましい。1時間未満で
あると熱処理の効果が得られず、10時間を超えると生産
性が低下する。
【0026】(E)樹脂除去工程 熱処理後、樹脂被膜をなす樹脂を再溶融させ、除去す
る。樹脂再溶融は赤外線加熱装置、熱風炉等の装置を用
いて樹脂の融点以上の温度まで加熱して行うことができ
る。特に、樹脂の再溶融は赤外線加熱等の手法により、
アルミニウム合金の温度を過時効条件以下に保ちつつ、
樹脂温度のみを融点以上に加熱して行うのが好ましい。
また樹脂の除去は、例えばスキージーにより削ぐことに
より可能である。
【0027】通常、上記(C)樹脂被覆工程により得られ
る樹脂被膜において、熱処理により劣化するのは被膜の
アルミニウム合金との界面部分ではなく、それよりも外
側の部分である。従って、樹脂被膜は完全に除去する必
要は無く、好ましくはアルミニウム合金との界面付近の
樹脂は強い密着性を示すので除去せず、それよりも外側
の部分のみを除去する。即ち、本発明の製造方法では、
樹脂被膜の密着性は(C)樹脂被覆工程により確保し、劣
化した部分のみを除去し再塗布することで性能を回復さ
せるのが好ましい。
【0028】(F)樹脂再被覆工程 最後に、樹脂を除去したアルミニウム合金に樹脂を再塗
布し、冷却して樹脂被膜を再び形成する。樹脂を再塗布
する際には、アルミニウム合金の表面温度を230〜240℃
とするのが好ましい。樹脂の塗布方法及び冷却方法の好
ましい態様は、上記(C)樹脂被覆工程におけるそれらと
同様である。
【0029】樹脂再被覆工程において使用する樹脂は、
上記(C)樹脂被覆工程で使用した樹脂と同じであっても
異なっていてもよい。異なる樹脂を用いる場合は、(C)
樹脂被覆工程で使用した樹脂と相溶性を有するものを用
いるのが好ましい。また、樹脂再被覆工程においてポリ
エステル樹脂等を用いる場合は、必要に応じて塗布後に
樹脂溶融状態を1.5秒以上保持し部分的に熱分解させて
もよい。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はそれにより限定されない。
【0031】1.樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造 図1に示す樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置1を
用いて、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を製造
した。まず、アルミニウム合金(JIS規格A6063)を450
℃で熱間押出し成形し、縦横25mm、厚み3mmの成形品を
得た。次に、25℃の乾燥空気を冷却ガスとして用い、大
気中でアルミニウム合金成形品を冷却した。続いて冷却
したアルミニウム合金成形品を溶融状態のポリブチレン
テレフタレート(PBT、帝人株式会社製「C7000」、融
点:225℃)に浸漬し、表面上にPBTを塗布した。塗布
後、PBTが溶融している状態を所定時間保持してから水
冷し、厚さ40μmのPBT被膜を形成した。更に、樹脂被覆
したアルミニウム合金を180℃で8時間熱処理した後、P
BT被膜の温度を赤外加熱装置を用いて20秒間で230℃ま
で加熱し、PBTを再溶融させ除去した。最後に、アルミ
ニウム合金の表面温度を230℃とし、その表面に260℃の
PBTを再塗布し、水冷して厚さ40μmのPBT被膜を有する
本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材を得た。これら
の工程を、一回目の樹脂塗布時のアルミニウム合金の表
面温度を240℃、260℃、280℃、300℃、320℃又は340℃
とし、塗布するPBTの温度を240℃、260℃、280℃、300
℃又は320℃とし、更にPBTの溶融状態保持時間を0.7
秒、1.0秒又は1.8秒として行い、樹脂被覆アルミニウム
合金部材をそれぞれ製造した。なお、押出し後の冷却時
間は5〜20秒とした。
【0032】2.碁盤目切り込みテープ剥離試験 上記熱処理を施す前の段階での各樹脂被覆アルミニウム
合金部材を純水中で3時間煮沸した後、碁盤目切り込み
テープ剥離試験を行って樹脂被膜とアルミニウム合金と
の密着性を調べた。結果を表1に示す。また、熱処理後
・PBT再溶融除去前の段階での各樹脂被覆アルミニウム
合金部材、及び最終的に得られた本発明の樹脂被覆アル
ミニウム合金部材に対しても、同様に碁盤目切り込みテ
ープ剥離試験を行った。熱処理後の部材の試験結果を表
2に、本発明の部材の試験結果を表3にそれぞれ示す。
なお、表2中の「×」は、熱処理前の耐高温水試験にて
樹脂被膜が剥離したものを表す。また、「※」は耐高温
水試験前に樹脂被膜が剥離したものを表す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】表1〜3より、熱処理により密着性は低下
するが、樹脂の除去・再塗布を行った本発明の樹脂被覆
アルミニウム合金部材では密着性が改善されていること
がわかる。また、PBTの溶融状態保持時間を長くする
と、アルミニウム合金の表面温度を低くしても密着性に
優れた樹脂被覆アルミニウム合金部材が得られることが
確認された。即ち、溶融状態のPBTとアルミニウム合金
の接触時間を長くして界面での反応を促進することで、
密着性に優れた樹脂被膜を形成することができる。溶融
状態保持時間を1.8秒とした場合、樹脂塗布時のアルミ
ニウム合金の表面温度は260〜340℃、塗布するPBTの温
度は240〜300℃が好ましいことがわかる。
【0037】3.XPS測定 上記熱処理前の段階で、密着性を示さなかった樹脂被覆
アルミニウム合金部材(アルミニウム合金表面温度を24
0℃、PBT温度を240℃、塗布後の樹脂溶融状態保持時間
を1.8秒として樹脂被膜を形成したもの)、並びに優れ
た密着性を示した樹脂被覆アルミニウム合金部材(アル
ミニウム合金表面温度を260℃、PBT温度を300℃、塗布
後の樹脂溶融状態保持時間を1.8秒として樹脂被膜を形
成したもの)に180℃、8時間の熱処理を施し、更に純
水中で3時間煮沸して樹脂被膜を剥離させた後の、アル
ミニウム合金表面のXPS解析(Valence Band測定)を行
った。熱処理前から密着性を示さなかった部材のアルミ
ニウム合金表面のXPSスペクトルを図2に、熱処理前に
は優れた密着性を示した部材のアルミニウム合金表面の
XPSスペクトルを図3にそれぞれ示す。また、剥離前の
樹脂被膜のXPSスペクトルを図4に示す。
【0038】図2及び4に示すように、密着性を示さな
かった部材のアルミニウム合金表面は通常の樹脂被膜と
全く異なるXPSスペクトルを示した。このことから、熱
処理前から密着性を示さなかった部材においてはアルミ
ニウム合金と樹脂被膜との界面において樹脂被膜が剥離
したことがわかる。一方、図3に示すように、熱処理前
には密着性を示したが熱処理・煮沸により剥離したもの
の場合、アルミニウム合金表面のXPSスペクトルは図4
に示す通常の樹脂面と同じパターンを示す。このことか
ら、熱処理前には優れた密着性を示した部材において
は、樹脂被膜の剥離はアルミニウム合金との界面におい
て起こったのではなく、それよりも外側の部分で起こっ
たことがわかる。即ち、熱処理により劣化したのは樹脂
の中間部分〜外側部分である。従って、熱処理後に樹脂
を除去・再塗布する本発明の製造方法においては、アル
ミニウム合金との界面付近の樹脂は除去せずに密着性を
確保し、劣化した部分のみを除去し再塗布することで性
能を回復させるのが好ましい。
【0039】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の樹脂被覆
アルミニウム合金部材の製造方法によれば、高強度であ
るとともに樹脂被膜の密着性に優れた熱処理系樹脂被覆
アルミニウム合金部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の樹脂被覆アルミニウム合金部材の製
造方法において使用できる樹脂被覆アルミニウム合金部
材製造装置の一例を示す断面図である。
【図2】 熱処理前から密着性を示さなかった樹脂被覆
アルミニウム合金部材のアルミニウム合金表面のXPSス
ペクトルである。
【図3】 熱処理前には優れた密着性を示した樹脂被覆
アルミニウム合金部材のアルミニウム合金表面のXPSス
ペクトルである。
【図4】 剥離前の樹脂被膜のXPSスペクトルである。
【符号の説明】
1・・・樹脂被覆アルミニウム合金部材製造装置 2・・・アルミニウム合金 3・・・樹脂 41・・・コンテナ 42・・・温調コンテナヒーター 43・・・油圧プランジャ 44・・・ダイス 51・・・ベースプレート 52・・・チャンバー 53・・・放射温度計 61・・・熱電対 62・・・温調ヒータースリット 63・・・冷却器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B05D 7/24 302 B05D 7/24 302V 302X C22F 1/04 C22F 1/04 A // C22F 1/00 612 1/00 612 613 613 683 683 692 692B (72)発明者 熊田 正隆 埼玉県和光市中央一丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 4D075 BB20Z BB22X BB29Y DA23 DB07 EA17 EB35 EB40 4K044 AA06 AB10 BA21 BB01 BB03 BC04 BC05 CA02 CA53 CA62

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)熱処理系アルミニウム合金を350〜53
    0℃で熱間押出し成形する成形工程、(B)大気中、成形し
    た前記アルミニウム合金を900秒以内に表面温度240〜34
    0℃まで冷却する冷却工程、(C)前記アルミニウム合金の
    表面上に樹脂を塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂
    被覆工程、(D)前記樹脂被膜を形成した前記アルミニウ
    ム合金を熱処理する熱処理工程、(E)前記樹脂被膜をな
    す樹脂を再溶融させ除去する樹脂除去工程、及び(F)樹
    脂を再塗布し冷却して樹脂被膜を形成する樹脂再被覆工
    程を含むことを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部
    材の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム
    合金部材の製造方法において、前記冷却工程は乾燥空気
    を冷却ガスとして用いて行うことを特徴とする樹脂被覆
    アルミニウム合金部材の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミ
    ニウム合金部材の製造方法において、前記樹脂被覆工程
    では樹脂を加熱により溶融状態として塗布することを特
    徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の樹脂被覆アルミニウム
    合金部材の製造方法において、溶融状態の前記樹脂の温
    度が230〜330℃であることを特徴とする樹脂被覆アルミ
    ニウム合金部材の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被
    覆アルミニウム合金部材の製造方法において、前記樹脂
    被覆工程で形成する樹脂被膜が200℃以上の融点を持つ
    熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂がポリエステ
    ル樹脂若しくはポリアミド樹脂又はその変性樹脂、或い
    はそれを含むポリマーアロイであることを特徴とする樹
    脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の樹脂被覆アルミニウム
    合金部材の製造方法において、前記熱可塑性樹脂がポリ
    ブチレンテレフタレートであることを特徴とする樹脂被
    覆アルミニウム合金部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6に記載の樹脂被覆アルミ
    ニウム合金部材の製造方法において、前記アルミニウム
    合金の表面上に前記熱可塑性樹脂を塗布した後、該熱可
    塑性樹脂が溶融している状態を1.5秒以上保持してから
    冷却して樹脂被膜を形成することにより、前記樹脂被膜
    中の前記熱可塑性樹脂を部分的に熱分解させることを特
    徴とする樹脂被覆アルミニウム合金部材の製造方法。
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