JP4590789B2 - 自動車の姿勢制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の旋回走行時の姿勢を制御してアンダーステア傾向(ドリフトアウト)やオーバーステア傾向(スピン)を回避・抑制するようにした自動車の姿勢制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の自動車の姿勢制御装置として、例えば特開平6―183288号や特開平7―223520号の各公報に示されるように、ハンドル舵角および車速に基づいて目標ヨーレートを設定すると共に、車両の実際のヨーレートをヨーレートセンサにより検出し、この検出された実際のヨーレートが上記目標ヨーレートに対し所定以上の偏差を持つと、車両のアンダーステア傾向を抑制するアンダーステア制御またはオーバーステア傾向を抑制するオーバーステア制御の各介入をそれぞれ行うようにしたものは知られている。
【0003】
具体的には、実際のヨーレートに所定のしきい値を加えた値よりも目標ヨーレートが大きい場合には、アンダーステア制御の介入を、また目標ヨーレートに所定のしきい値を加えた値よりも実際のヨーレートが大きい場合には、オーバーステア制御の介入をそれぞれ行うようになっている。
【0004】
このように、従来の自動車の姿勢制御装置においては姿勢制御介入の開始しきい値は車速を基準として略一律に設定されているので、運転が下手な人にとっては姿勢制御介入が遅く感じられ、運転が上手な人にとっては姿勢制御介入が早く感じられ、運転の上手下手に関係なく安全性とドライブフィーリングとの両立を満足することが困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ドライバの運転の上手下手を判別することは困難であるから、車両が走行している地理環境に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更することに着目し、地理環境に対応して姿勢制御介入のタイミングを変更することで、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる自動車の姿勢制御装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明による自動車の姿勢制御装置は、車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え、上記地理環境判定手段は、車両が現在走行している道路が直進路か旋回路かを判定し、直進路では上記変更手段が姿勢制御介入の開始しきい値を低く設定するものである。
上記構成の他の地理環境は、直進路、旋回路、下り坂、上り坂、路面の摩擦係数(いわゆる路面μ)、道路の旋回曲率などに設定することができる。また、上記構成の地理環境判定手段は、DVDその他によるナビゲーション装置で構成してもよい。
【0007】
上記構成によれば、道路状況提供手段は車両前方の道路状況(車両が現在走行している道路の状況を含む)を車両に提供し、姿勢制御手段は車両のヨーレート挙動を制御し、地理環境判定手段は上述の道路状況提供手段から受信した道路状況に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定するが、上述の変更手段は地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する。
【0008】
ここで、開始しきい値を下げた場合には、姿勢制御介入のタイミングが早くなり、逆に、開始しいき値を上げた場合には、姿勢制御介入のタイミングが遅くなる。
このように、車両が走行している地理環境に対応して姿勢制御介入の開始しきい値を変更するので、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる。
【0009】
しかも、上記地理環境判定手段は車両が現在走行している道路が直進路か旋回路かを判定し、直進路では上記変更手段が姿勢制御介入の開始しきい値を低く設定するものである。
【0010】
上述の直進路(直線路のこと)は本来車両が姿勢をくずすような領域ではないので、開始しきい値を低く設定し、車両が少しでも姿勢をくずす(例えば横風により姿勢をくずす)と姿勢制御を早く介入させることができ、安全性を確保することができる。
【0011】
この発明による自動車の姿勢制御装置は、また、車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え、上記地理環境判定手段は車両前方のカーブの存在を判定し、カーブ近傍になる程、上記変更手段は姿勢制御介入のしきい値を上げるものである。
【0012】
上記構成によれば、道路状況提供手段は車両前方の道路状況(車両が現在走行している道路の状況を含む)を車両に提供し、姿勢制御手段は車両のヨーレート挙動を制御し、地理環境判定手段は上述の道路状況提供手段から受信した道路状況に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定するが、上述の変更手段は地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する。
このように、車両が走行している地理環境に対応して姿勢制御介入の開始しきい値を変更するので、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる。
【0013】
また、車両がカーブに進入する場合には本来車両の姿勢がくずれるものであって、姿勢制御の介入が早すぎると、車両はカーブを曲がることができなくなる。このためカーブ近傍になる程、開始しきい値を上げて、姿勢制御介入のタイミングを遅らせることで、良好な姿勢制御の介入状態を確保することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、車両のカーブ走行時、上記変更手段は姿勢制御介入の開始しきい値をさらに上げるものである。
上記構成によれば、車両のカーブ走行時においては前後の旋回外輪に作用するコーナリングフォースと遠心力とが釣り合っており、車両は比較的安定しているので、開始しきい値をさらに上げて、姿勢制御が早く入り過ぎることによる違和感を防止して、ドライブフィーリングを確保することができる。
【0015】
この発明による自動車の姿勢制御装置は、さらに、車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え、上記地理環境判定手段は車両が現在走行している旋回路の旋回曲率を判定し、旋回曲率が大きい程、上記変更手段は姿勢制御介入の開始しきい値を上げるものである。
【0016】
上記構成によれば、道路状況提供手段は車両前方の道路状況(車両が現在走行している道路の状況を含む)を車両に提供し、姿勢制御手段は車両のヨーレート挙動を制御し、地理環境判定手段は上述の道路状況提供手段から受信した道路状況に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定するが、上述の変更手段は地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する。
このように、車両が走行している地理環境に対応して姿勢制御介入の開始しきい値を変更するので、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる。
【0017】
しかも、旋回曲率が大きい程、上記開始しきい値を上げて、姿勢制御介入のタイミングを遅らせるので、姿勢制御が早く介入され過ぎることによる違和感をなくすことができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記地理環境判定手段の故障時には上記変更手段による開始しきい値変更または敏感制御感度の変更を規制する規制手段を設けたものである。
【0019】
上記構成によれば、上述の規制手段は地理環境判定手段の故障時(フェール時)に変更手段による開始しきい値の変更または敏感制御感度の変更を規制する。
したがって、地理環境の判定を行なうことができない故障時には、信頼性が得られないので、開始しきい値の変更や敏感制御感度の変更を規制(または禁止)することができる。
【0020】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車の姿勢制御装置を示すが、まず図1を参照して姿勢制御装置全体の構成を概略的に説明する。
【0021】
この姿勢制御装置は、車両1に対して当該車両1が現在走行している道路の状況および車両1前方の道路状況を地理環境データとして提供可能(送信可能)な道路状況提供手段2を備えている。
【0022】
上述の道路状況提供手段2はインターネット3(コンピュータネットワークの集合体)に接続された交通情報センタ4と、情報センタ5と、送受信手段6と、人工衛星7とを備えている。
【0023】
ここで、交通情報センタ4は交通に関する各種情報(例えば交通量、各種道路における平均車速、渋滞情報その他)を提供することができ、また情報センタ5は地理環境としての直進路、旋回路、下り坂、上り坂、路面の摩擦係数(いわゆる路面μ)、道路の旋回曲率などのデータを提供することができる。なお、この情報センタ5は必要に応じて気象情報を提供することもできる。
【0024】
また車両1に対する地理環境データの送信は、送受信手段6から人工衛星7を経由して送信してもよく、或は送受信手段6から直接車両1にデータ送信してもよく、送受信手段6から地上アンテナまたはインフラを介して車両1にデータ送信すべく構成してもよい。
【0025】
さらに、この実施例では車両1には地理環境データを受信するアンテナ8を設けているが、このアンテナ8に代えて携帯電話のアンテナを利用すべく構成してもよい。
【0026】
しかも、上述の車両1には、道路状況提供手段2からの道路状況の提供すなわち地理環境データの受信に基づいて当該車両1が現在走行している地理環境および当該車両1前方の地理環境を判定する地理環境判定手段9と、図2に示すように車両のヨーレート挙動を制御する制御手段としてのEUC10(なかんずく車両安定性制御装置24参照)とを搭載している。ここで、上述の地理環境判定手段9としてはDVDナビゲーション装置を用いることもできる。
【0027】
図2は、姿勢制御装置を示すブロック図で、まず、入力側の各装置について説明すると、11は各車輪の車輪速度を検出する車輪速センサ、12はステアリングホイール(いわゆるハンドル)の操舵角を検出する舵角センサ、13は車両に発生しているヨーレートを検出するヨーレートセンサ、14は車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサ(いわゆる横Gセンサ)、15はスロットル開度を検出するスロットル開度センサ、16は後述するアンチロックブレーキシステムの制御をキャンセルするためのストップランプスイッチ、17はエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサであり、エンジン出力のフィードバック制御を行うために検出するようにしている。
【0028】
また、18はエンジン(パワートレイン)の運転状態を検出するためにシフト位置を検出するシフト位置センサ(AT)であり、このシフト位置検出センサ18は、リバースの場合には姿勢制御をキャンセルするキャンセルスイッチとしても用いるようにしている。さらに、19は第1液圧発生源としてのマスターシリンダ(MC)の液圧を検出するMC液圧センサであり、このMC液圧センサ19の検出結果に応じてブレーキ液圧を運転者のブレーキペダル踏み力に対応した液圧に補正するようにしている。加えて、20はリザーバ内のブレーキ液の存在を検出するリザーバ液面レベルスイッチである。
【0029】
次に、出力側の各装置について説明すると、31は上記アンチロックブレーキシステム21が作動していることを警報するアンチロックブレーキシステムランプ、32は第2液圧発生源としての加圧ポンプに備えられた加圧モータ、33,34はそれぞれ前輪および後輪用に設けられたディスクブレーキ等のブレーキ装置に対してブレーキ液を供給・排出するフロントソレノイドバルブおよびリヤソレノイドバルブ、35はマスターシリンダ側と上記各車輪のブレーキ装置側との間を遮断・開放するTSWソレノイドバルブ、36は上記マスターシリンダと上記加圧ポンプとの間を遮断・開放するASWソレノイドバルブ、37はエンジン出力の制御を行うエンジンコントローラ、38は車両の姿勢制御が行われていることを運転者に対し、音あるいは表示によって警報する警報手段としての警報装置である。
【0030】
次に、上記入力側の各センサ、またはスイッチ11〜20の信号が入力され、上記出力側の各装置31〜38に制御信号を出力する制御手段としてのECU10について説明する。
【0031】
このECU10には、車輪が路面に対してロックしそうになった時、その制動力を制御して車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキシステム21と、制動時に後輪がロックしないように、後輪に付与される制動力の配分を行う電子制動力配分装置22と、車両の走行中に車輪が路面に対してスリップする現象を、各車輪に対する駆動力あるいは制動力を制御することによって抑制するトラクションコントロールシステム23と、例えばドリフトアウトやスピンといったヨーイング方向の姿勢を制御する車両安定性制御装置24とを備えている。
【0032】
次に、上記各装置の信号の入出力について説明すると、上記車輪速センサ11からの信号は車輪速度演算部40および推定車体速演算部41において車輪速度および推定車体速が演算され、また、上記ストップランプスイッチ16からの信号はストップランプ状態判断部42に入力され、そこから上記アンチロックブレーキシステム21、電子制動力配分装置22、トラクションコントロールシステム23、および車両安定性制御装置24にそれぞれ入力されるようになっている。
【0033】
また、上記エンジン回転数センサ17、スロットル開度センサ15、およびシフト位置センサ18からの各信号は、それぞれエンジン回転数演算部43、スロットル開度情報取込み部44、およびシフト位置判断部45に入力され、そこから上記トラクションコントロールシステム23、および車両安定性制御装置24に入力されるようになっている。
【0034】
さらに、上記舵角センサ12、ヨーレートセンサ13、横Gセンサ14、およびMC液圧センサ19の信号は、それぞれ舵角演算部46、ヨーレート演算部47、横G演算部48およびMC液圧演算部50によって舵角、ヨーレート、横加速度、およびMC液圧が演算されて、上記車両安定性制御装置24に入力されるようになっている。
【0035】
加えて、上記リザーバ液面レベルスイッチ20の信号は液面レベル判断部51を経て、上記トラクションコントロールシステム23および車両安定性制御装置24にそれぞれ入力されるようになっている。
【0036】
そして、上記アンチロックブレーキシステム21は、各信号から制御量を演算し、アンチロックブレーキシステムランプ31および加圧モータ32、並びに、フロントソレノイドバルブ33およびリヤソレノイドバルブ34に信号を出力して、これらを制御するようになっている。
【0037】
また、上記電子制動力配分装置22は、リヤソレノイドバルブ34を制御するようになっている。
【0038】
上記トラクションコントロールシステム23は、フロントソレノイドバルブ33、リヤソレノイドバルブ34、加圧モータ32、TSWソレノイドバルブ35およびエンジンコントローラ37に対し信号を出力して、これらを制御するようになっている。
【0039】
そして、上記車両安定性制御装置24は、エンジンコントローラ37、フロントおよびリヤの各ソレノイドバルブ33,34、加圧モータ32、TSWおよびASWの各ソレノイドバルブ35,36並びに警報装置38に対し信号を出力して、これらを制御するようになっている。
【0040】
(車両の姿勢制御)
次に、上記車両安定性制御装置24における車両の姿勢制御について説明する。この車両安定性制御装置24は、ドリフトアウトを回避・抑制する制御であるアンダーステア制御、並びに、スピンを回避・抑制する制御であるオーバーステア制御を行うものであって、上記アンダーステア制御として、第1アンダーステア制御、第2アンダーステア制御およびエンジン制御の3つを備える一方、上記オーバーステア制御として、第1〜第3オーバーステア制御の3つを備えている。
【0041】
上記第1アンダーステア制御は、基本的には制御目標ヨーレートTrψと実際のヨーレートψとの偏差が所定の介入しきい値よりも大きい時に、旋回内側の前輪(旋回内前輪)あるいは旋回内側の後輪(旋回内後輪)に対して制動力を付与する比較的強い制御(車両の姿勢変化が比較的大きい制御)であるのに対し、エンジン制御は、基本的には制御目標ヨーレートTrψと実際のヨーレートψとの偏差が所定の介入しきい値よりも大きい時に、エンジン出力を低下させる制御である。
【0042】
この2つの制御によって、車速の低下による遠心力の低下と、各車輪に付与される制動力のアンバランスによる車両モーメントとが生じ、ドリフトアウトを回避・抑制することができるようになる。
【0043】
これに対し、第2アンダーステア制御は、車両のハンドル舵角の変化に対して実際のヨーレートが所定の変化をしない時に、旋回内側前輪に対して上記第1アンダーステア制御に比べ弱い制御量で制動力を付与する制御である。これにより、比較的弱いアンダーステア傾向や、アンダーステアの成長、および運転者がアンダーステア傾向であると感じてしまうことを抑制することができるようになる。
【0044】
一方、第1オーバーステア制御は、基本的には制御目標ヨーレートTrψと実際のヨーレートψとの偏差が所定の介入しきい値よりも小さい時に、旋回外側の前輪(旋回外前輪)に制動力を付与する比較的強い制御である。このような制御によって、車両前部が旋回外方向となるモーメントが生じ、スピンが回避・抑制できるようになる。
【0045】
これに対し、第2オーバーステア制御は、その制御介入しきい値が第1オーバーステア制御の制御介入しきい値よりも小さく設定されている制御であり、第3オーバーステア制御は、その制御介入しきい値が上記第2オーバーステア制御の制御介入しきい値よりもさらに小さく設定されている制御である。そして、上記第2および第3オーバーステア制御は共に、上記第1オーバーステア制御よりも弱い制御(車両の姿勢変化が小さい制御)とされているが、第2オーバーステア制御は所定のブレーキ圧を上限にしたオープン制御でブレーキ圧を供給する制御であるのに対し、第3オーバーステア制御は制御目標ヨーレートTrψと実際のヨーレートψとの偏差に応じてブレーキ圧を供給するフィードバック制御である。
【0046】
この車両安定性制御装置24による姿勢制御について、図3、図4、図5に示す一連のフローチャートを参照して、さらに詳しく説明する。なお、図面では図示の便宜上、フローチャートを分割して示したが、図3〜図5に示すフローチャートは一連のものである。まず、ステップS1においては、上述した各種センサ等11〜20からの信号の読込みを実行する。
【0047】
次に、ステップS2において、舵角θに基づく第1目標ヨーレートψ(θ)、および横加速度Gyに基づく第2目標ヨーレートψ(G)をそれぞれ演算する。
【0048】
この第1目標ヨーレートψ(θ)は、具体的には、車輪速センサ11の信号に基づき推定車体速演算部41において演算される推定車体速Vと、舵角センサ12によって検出され舵角演算部46において演算される舵角θとを用い、次の式(1)によって算出する。
ψ(θ)=V×θ/{(1+K×V2)×L}……(1)
ここで、Kはスタビリティファクタであり、このKは高μ(摩擦係数)路の旋回から求めた定数である。また、Lはホイールベースである。
【0049】
一方、上記第2目標ヨーレートψ(G)は、上記推定車体速度V、および上記横Gセンサ14の信号に基づき横G演算部48において演算される横加速度Gyを用いて次の式(2)により演算する。
ψ(G)=Gy/V……(2)
そして、ステップS3において、上記第2目標ヨーレートψ(G)の絶対値が第1目標ヨーレートψ(θ)の絶対値よりも小さいか否かを判定する。この判定は上記第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)のうちの何れを制御目標ヨーレートTrψとして設定するかを判定するステップであり、上記第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)のうちの絶対値の小さい方を制御目標ヨーレートTrψとして設定し、車両の姿勢制御を行うようにしている。
【0050】
そして、このステップS3においてNO判定されると、ステップS4に移行する一方、YES判定時には別のステップS5に移行する。
【0051】
上記ステップS4では、第1目標ヨーレートψ(θ)を制御目標ヨーレートTrψとし、この制御目標ヨーレートTrψと、ヨーレートセンサ13によって検出されヨーレート演算部47において演算された実ヨーレートψとの偏差Δψ(θ)を算出する。
【0052】
一方、上記ステップS5では、第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとする。この時、制御目標ヨーレートTrψは、次の式(3)によって舵角成分を考慮した補正を行うようにする。すなわち、
Trψ=ψ(G)+a×k1……(3)
とする。ここで、a=ψ(θ)−ψ(G)であり、k1は変数である。
【0053】
そして、この補正した制御目標ヨーレートTrψと実ヨーレートψとの偏差Δψ(G)を算出する。
【0054】
このように、横加速度Gyに基づく第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとした場合に舵角成分の補正を行うことによって、運転者が意図してアンダーステア傾向としている場合(駆動アンダーステア)には、姿勢制御の介入を抑制することができるようになる。
【0055】
すなわち、例えば車両がアンダーステア傾向にあるときは、舵角θを一定にして駆動力を上げるような運転者が意図的に行っている駆動アンダーステアと、運転者の操舵に対し車両の挙動が追従しないという運転者の意図しないアンダーステアの2種類がある。ここで、例えば横加速度Gyに基づく第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとする場合では、車両に生じる横加速度Gyは上記2種類のアンダーステア傾向のいずれの場合も同じであるため、上記駆動アンダーステアであっても姿勢制御が行われるようになってしまう。そこで、第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとする時は舵角成分を補正することによって、運転者がハンドルが切り込んでいる時にのみ姿勢制御が行われるようになり、駆動アンダーステアでは姿勢制御を行わず、運転者が意図しないアンダーステア傾向の場合にのみ姿勢制御を行うようにすることができる。
【0056】
そして、上式(3)において、k1の値としては、例えば図6に示すように、横加速度Gyに対し変化する特性を有する値とする。すなわち、横加速度Gyが小さい(氷面等、路面が低μの領域)あるいは横加速度Gyが大きい(高μの領域)では小さな値とし、舵角成分の補正割合を小さくするように設定してもよい。
【0057】
そして、上記ステップS4またはステップS5で、制御目標ヨーレートTrψと実ヨーレートψとの偏差Δψ(θ,G)が算出されれば、ステップS6に移行し、このステップS6において、第1オーバーステア制御を行うか否かのしきい値(第1の介入しきい値:THOS)、アンダーステアを抑制するエンジン制御を行うか否かのしきい値(THEUS)、第1アンダーステア制御を行うか否かのしきい値(THUS)、第2オーバーステア制御を行うか否かの第2しきい値(第2の介入しきい値:THOSII)および第3オーバーステア制御を行うか否かのしきい値(第3の介入しきい値:THOSIII)をそれぞれ設定する。
【0058】
なお、THUS>THEUSとなっている。また、THOSII,THOSIIIは、THOSII<THOSかつTHOSIII<THOSIIを満たすように適宜設定すればよく、例えばTHOSIIは、THOSの約10%ダウンとし、THOSIIIは、THOSの約20%ダウンとしてもよい。また、THOSIIを、THOSの約20%ダウンとし、THOSIIIを、THOSの約30%ダウンとしてもよい。
【0059】
こうしてステップS6において、各しきい値が設定されると、次のステップS7に移行する。
【0060】
(第2アンダーステア制御)
上記ステップS7〜ステップS10は、第2アンダーステア制御に係るステップとなっていて、まず、ステップS7において、直進状態からの切り込み操舵であり、かつ上記制御目標ヨーレートTrψと実ヨーレートψとの偏差Δψが第3の介入しきい値THOSIIIよりも小さい(Δψ<THOSIII)か否かを判定する。つまり、第2アンダーステア制御は、直進状態からの切り込み操舵時の、横Gの成長が小さく横Gの検出が困難な操舵初期における弱いアンダーステア傾向や、運転者がアンダーステア傾向であると感じてしまう状態を抑制することを目的としており、このため、直進状態からの切り込み操舵であるか否かを判定している。
【0061】
また、ヨーレート偏差Δψが第3の介入しきい値THOSIII以上のオーバーステア傾向にある時には、まず、オーバーステア傾向を抑制する必要があると共に、アンダーステア傾向を抑制する第2アンダーステア制御を介入させるとオーバーステア傾向を助長させる虞があることから、第2アンダーステア制御を介入させないために、ヨーレート偏差Δψ(θ,G)が第3の介入しきい値THOSIIIよりも小さいか否かを判定している。
【0062】
そして、上記ステップS7において、直進状態からの切り込み操舵でありかつΔψ<THOSIIIである時には、次のステップS8に移行する一方、上記直進状態からの切り込み操舵でない、またはΔψ≧THOSIIIの時には、第2アンダーステア制御を行うことなく図4に示すステップS111(図2B参照)に移行する。
【0063】
上記ステップS8においては、[{第1目標ヨーレートψ(θ)の変化率}−{実ヨーレートψの変化率}]の値が正に増大しているか(第1目標ヨーレートψ(θ)の変化に対して実ヨーレートψが所定の変化をせずに(追従して変化せずに)、両者ψ(θ),ψが互いに離れつつあるか)否かを判定する。これは、ハンドル操舵の変化に対して、実際のヨーレートが追従して変化しないような運転者がアンダーステア傾向であると感じてしまう状態であるか否かを判定するものであると共に、このまま第1目標ヨーレートψ(θ)と実ヨーレートψとが、互いに離れると強いアンダーステア傾向となってしまう状態(アンダーステアの初期状態)にあるか否かを判定するものである。そして、YES判定時には次のステップS9に移行する一方、NO判定時には図4に示すステップS11に移行する。
【0064】
上記ステップS9は、第2アンダーステア制御の介入ステップであり、上限のブレーキ圧を30barに設定して、ブレーキ圧ゲインKmaxでブレーキ圧を旋回内前輪に対して供給する。ここで、ブレーキ圧ゲインKmaxは、最大のゲイン(最大のブレーキ圧供給率(単位時間当たりのブレーキ圧供給量))である。但し、ゲインKmaxでブレーキ圧を供給している時に、スリップが大きくなった時、または切り込み操舵が終了された時には、ブレーキ圧の供給を中止する。
【0065】
そして、ステップS10では、増大傾向にあった[{第1目標ヨーレートψ(θ)の変化率}−{実ヨーレートψの変化率}]が、減少傾向に切り換われば、ブレーキ圧を減圧させる。なお、[{第1目標ヨーレートψ(θ)の変化率}−{実ヨーレートψの変化率}]が減少傾向にならない時には、ブレーキ圧を減圧せずに保持する。このような制御により、ブレーキ圧の時間に対する供給パターンは台形となる。
【0066】
このようにして、第1アンダーステア制御とは別に、アンダーステアの初期状態において第2アンダーステア制御を介入させることで、車両が強いアンダーステア傾向となることが抑制されて、運転者が感じる安定感を向上させることができる。これと共に、運転者がアンダーステア傾向であると感じてしまう状態において第2アンダーステア制御を介入させることで、運転者の意図した方向に車両が姿勢変化するため、運転者が感じる操縦性を向上させることができる。
【0067】
また、第2アンダーステア制御は、上限のブレーキ圧が30barという比較的低い圧力に設定されていると共に、[{第1目標ヨーレートψ(θ)の変化率}−{実ヨーレートψの変化率}]が減少傾向になれば制御を中止するため、第2アンダーステア制御の介入によって運転者の操舵に応じて車両の姿勢が僅かに変化するものの、その姿勢変化は大きくはない。このような弱い制御である第2アンダーステア制御が介入すると、運転者は操舵に対して車両の挙動が追従したと感じるようになって、制御が介入したとは感じ難い。その結果、運転者の違和感を防止しつつ、走り感の向上を図ることができる。
【0068】
さらに、直進状態からのハンドル切り込み時のような、操舵に対して充分なヨーレート変化が得られない場合に、第2アンダーステア制御が介入されるため、旋回路の入口付近において必要なヨーレート変化が得られるようになる。その結果、旋回路の出口付近において小さな旋回Rを取らざるを得ない状況が回避される。すなわち、目標旋回軌跡に対するトレース性の向上を図ることができる。
【0069】
また、第2アンダーステア制御は、旋回内前輪のブレーキを制御するものであるため、アンダーステア傾向の抑制に効果的であって、アンダーステア傾向の抑制を確実かつ迅速に行うことができる。
【0070】
このように、第2アンダーステア制御は、横Gの成長が小さくかつ横Gセンサ14による横Gの検出が困難であるために、横Gに基づく第2目標ヨーレートψ(G)によって第1アンダーステア制御の介入を行うのが困難な旋回初期において特に有効な制御であり、制御量を低下させた第2アンダーステア制御を、ハンドル舵角(第1目標ヨーレートψ(θ))と実ヨーレートψとに基づいて比較的早期に介入させることにより、アンダーステア傾向の抑制が遅れてしまうことを防止することができると共に、強い制御である第1アンダーステア制御が急激に介入されることを回避することができる。しかも、第2アンダーステア制御は、制御量が低下されていると共に、運転者の意図する方向に車両の姿勢を変更させるため、第2アンダーステア制御を早期介入させても、制御介入に運転者がほとんど気付かない。従って、車両の高い安定性を確保しかつ運転者の違和感を防止しつつも、運転者の感じる安定感および操縦性の向上が図られる。
【0071】
(エンジン制御)
上記第2アンダーステア制御の各ステップS7〜S10の後のステップS11〜ステップS18(図4参照)は、アンダーステア傾向を抑制するエンジン制御に係るステップである。
【0072】
まず、ステップS11において、アンダーステアを抑制するエンジン制御を行うか否かのしきい値THEUSが、第1目標ヨーレートψ(θ)と実ヨーレートψとの偏差Δψ(θ)よりも大きいか否かを判定する。すなわち、エンジン制御を行うか否かを判定する。
【0073】
このエンジン制御を行うか否かの判定では、上記ステップS3において目標ヨーレートとして第2目標ヨーレートψ(G)を選択した場合であっても、第1目標ヨーレートψ(θ)の値を基準として判定を行う。
【0074】
これは、次の理由によるものである。すなわち、舵角信号は位相が速いため、第1目標ヨーレートψ(θ)を制御目標ヨーレートTrψとして姿勢制御を行えば、通常、その姿勢制御は早期に開始されるようになる。この実施例においては、第1および第2目標ヨーレートの2つを用いることによって、姿勢制御(第1アンダーステア制御)の早期介入を防止するようにしているが、エンジン出力を低下させてもブレーキを制御する場合に比べて運転者が気づかない場合が多いことから、エンジン制御に限っては早期に開始しても弊害が少ない。
【0075】
また、まず車両の減速をすることがアンダーステア傾向の回避に有効であり、このためにエンジン出力を早期に低下させて車両の減速をすれば、効果的なアンダーステア回避を行うことができるようになる。
【0076】
また、横加速度Gyとヨーレートとは略比例関係にあるため、横加速度Gyに基づく第2目標ヨーレートの値ψ(G)は、実ヨーレートψの値との差が小さく、また、上記実ヨーレートψの値は、アンダーステア傾向の場合は不安定になることから、第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとすれば適正な制御介入が困難となってしまう。以上の理由から、エンジン制御の開始判定は、上記第1目標ヨーレートψ(θ)を制御目標ヨーレートTrψとしている。
【0077】
そして、上記ステップS11において、YES判定されると、次のステップS12に移行する一方、NO判定時には別のステップS13に移行し、第1オーバーステア制御開始の判定を行う。
【0078】
上記ステップS12においては、ヨーレート加速度が所定値以下であるか否かを判定する。これは、制御の誤介入防止を目的とするものであり、実際に車両が所定量以上の姿勢変化を生じているか否かを判定するようにしている。そして、YES判定時にはステップS14に移行する一方、NO判定時にはステップS17にスキップして、エンジン制御を禁止して上記ステップS13に移行する。
【0079】
上記ステップS14においては、車両がオーバーステア中であるか否かを判定する。これは、車両が旋回方向に回転しながら旋回路外方に移動するオーバーステア傾向とアンダーステア傾向とが同時に起きている状態が考えられるためであり、このような場合は、まず、オーバーステア傾向を回避して車両の姿勢を直す必要がある。そこで、YES判定時にはステップS17にスキップしてエンジン制御を禁止してステップS13に移行する一方、NO判定時にはステップS15に移行する。
【0080】
上記ステップS15においては、ブレーキが非操作か否かを判定する。これは、運転者がブレーキ操作を行っている場合には駆動力は発生しておらず、エンジン制御を行っても効果が少ないばかりか、もしエンジン制御を行えば、次にアクセルを踏み込んだときに加速できなくなるため、不要なエンジン制御を行わないようにするためである。そして、YES判定時にはステップS16に移行し、エンジン制御を行うべくエンジン抑制制御量を算出する。次に、ステップS18に移行し、エンジンコントローラ37に信号を出力してエンジン制御を実行、すなわちエンジン出力を低減させる。一方、上記ステップS15においてNO判定されるとステップS17にスキップしてエンジン制御を禁止する。上記ステップS18が終了すれば、ステップS13に移行する。
【0081】
(第1オーバーステア制御)
上記ステップS13,ステップS19〜ステップS21は、第1オーバーステア制御に係るステップであって、上記ステップS13においては、第1オーバーステア制御を行うか否かを判定する。この第1オーバーステア制御の判定は、ステップS4またはステップS5において算出したヨーレート偏差Δψ(θ,G)が、第1の介入しきい値THOSよりも大きいか否かを判定することによって行う。すなわち、ヨーレート偏差Δψ(θ,G)によって表されるオーバーステア傾向が、上記第1の介入しきい値THOSで表される第1の設定基準よりも強いか否かによって判定する。そしてYES判定時にはステップS19に移行し、オーバーステア傾向を回避すべく外前輪、すなわち、ヨーレートの回転方向に対して外側の前輪に付与する制動量を、上記ヨーレート偏差Δψ(θ,G)に応じて設定する。
【0082】
制動量が設定されれば、ステップS20に移行して制動力制御を実行する。これは、加圧モータ32、フロントおよびリヤソレノイドバルブ33,34、TSWおよびASWソレノイドバルブ35,36をそれぞれ制御することによって行う(図7の下図参照)。次いで、ステップS21に移行し、第1オーバーステア制御の終了判定を行いリターンする。
【0083】
(第2および第3オーバーステア制御)
上記ステップS13においてNO判定された場合は、ステップS22に移行するが、このステップS22〜ステップS27は、第2および第3オーバーステア制御に係るステップである。
【0084】
上記ステップS22においては、第2オーバーステア制御を行うか否かを判定する。この第2オーバーステア制御の判定は、上記ステップS4またはステップS5において設定したヨーレート偏差Δψ(θ,G)が、第2の介入しきい値THOSII<Δψであるか否かを判定することによって行う。すなわち、上記ヨーレート偏差Δψ(θ,G)によって表されるオーバーステア傾向が、上記第2の介入しきい値THOSIIで表される第2の設定基準よりも強いか否かによって判定する。THOSII<ΔψのYES判定時には、ステップS23に移行する一方、THOSII≧ΔψのNO判定時には、別のステップS24に移行する。
【0085】
上記ステップS23は、比較的弱いオーバーステア傾向を抑制する第2オーバーステア制御の介入ステップであって、図7に示すブレーキ圧P2(15bar)を上限として、ゲインKmaxでブレーキ圧を、旋回外前輪に対して一気に供給する。そして、ブレーキ圧の供給中にヨーレート偏差Δψが小さくなった時はブレーキ圧の供給を中止してブレーキ圧を減圧に転じる。従って、ヨーレート偏差Δψが大きくなっている時は、上限のブレーキ圧P2までブレーキ圧が供給される。
【0086】
次のステップS26では、第2オーバーステア制御の終了判定を行う。つまり、このステップS26においては、Δψが収束したか否か(Δψが小さくなったか)を判定する。この第2オーバーステア制御を介入させることによって、Δψが小さくなった時、つまりYES判定時には、ステップS27に移行し、制御を徐々に終了させてリターンする。一方、Δψが収束していないNO判定時には、ステップS27に移行することなくリターンして、第2オーバーステア制御を継続させる。
【0087】
一方、上記ステップS22において、THOSII≧Δψのと判定された時(NO判定時)にはステップS24に移行し、この場合は、該ステップS24において、第3オーバーステア制御を行うか否かを判定する。この第3オーバーステア制御介入の判定は、THOSIII<Δψか否かを判定することにより行う。すなわち、上記ヨーレート偏差Δψ(θ,G)によって表されるオーバーステア傾向が、上記第3の介入しきい値THOSIIIで表される第3の設定基準よりも強いか否かによって判定する。THOSIII<ΔψのYES判定時には、ステップS25に移行する一方、THOSIII≧ΔψのNO判定時には、別のステップS28(図5参照)に移行する。
【0088】
上記ステップS25の第3オーバーステア制御の介入ステップにおいては、まず、上限ブレーキ圧(油圧)P1(5bar)まで、ブレーキ圧ゲインKmaxでブレーキ圧を、旋回外前輪に対して一気に供給する。その後、ゲインK1(K1<Kmax)でΔψに応じてブレーキ圧を供給するフィードバック制御を行う。この時の上限のブレーキ圧はP2(15bar)に設定されている(図7参照)。このように第3オーバーステア制御においては、ブレーキ圧ゲインK1でブレーキ圧を供給するため、第2オーバーステア制御におけるブレーキ圧の供給率(ゲインKmax)よりも低いブレーキ圧の供給率になっている。
【0089】
このステップS25においてブレーキ圧の供給を行った後は、上記ステップS26で終了判定を行い、Δψが収束しているYES判定時にはステップS27に移行して、制御を徐々に終了させる一方、Δψが収束していないNO判定時にはステップS27に移行することなくリターンして、第3オーバーステア制御を継続させる。
【0090】
このように、比較的弱いオーバーステア傾向にあるとき(THOSII,THOSIII<Δψの時)に、第2または第3オーバーステア制御が介入されることで、比較的弱いオーバーステア傾向およびオーバーステアの成長が共に抑制されて、運転者が感じる安定感を向上させることができると共に、運転者が感じる操縦の容易さを向上させることができる。
【0091】
一方、介入される第2または第3オーバーステア制御は、上限のブレーキ圧が低く設定されて制御量が低下されている弱い制御であるため、制御が過剰になることがなく、また、不要動作が強くなってしまうことを回避することができる。
【0092】
また、上記第3オーバーステア制御が介入しても、車両のオーバーステアが成長した(強くなった)時には(THOSII<Δψ)、第2オーバーステア制御が上記第3オーバーステア制御に代わって介入され、また、上記第2オーバーステア制御が介入しても、車両のオーバーステアが成長した時には(THOS<Δψ)、第1オーバーステア制御が、記第2オーバーステア制御に代わって介入される。これにより、強い制御である第1オーバーステア制御が急激に介入されることなく、弱い制御である第2および第3オーバーステア制御から強い制御である第1オーバーステア制御に連続的に移行される。
【0093】
したがって、運転者の違和感を大幅に解消することができる。これと共に、第1オーバーステア制御の前に予め第2または第3オーバーステア制御が介入されることで、ブレーキ系の遊びがなくなっている(例えばディスクロータにブレーキパッドが密着した状態になっている)ため、上記第1オーバーステア制御の応答性を向上させることができる。さらに、第3および第2オーバーステア制御に続いて第1オーバーステア制御が介入した場合は、制御開始のしきい値を小さくしたことと同様の結果となり、車両の姿勢の変化が連続的になると共に、車両のより一層の安定性を確保することができる。
【0094】
また、第2オーバーステア制御は、ブレーキ圧を最大のゲインKmaxでオープン制御により供給するようにされているため、制御の応答性が向上する。また、上限のブレーキ圧P2が第1オーバーステア制御におけるブレーキ圧(ブレーキ系が供給可能なブレーキ圧)よりも低い圧力(15bar)に設定されているため、第1オーバーステア制御よりも制御量が低下したオーバーステア制御が実現する。
【0095】
一方、第3オーバーステア制御は、ブレーキ圧をヨーレート偏差Δψに応じたフィードバック制御で供給するようにされているため、オーバーステア傾向の抑制が過剰になることなく、最適な制御を実現することができる。これにより、走り感を損なうことがない。
【0096】
また、第2および第3オーバーステア制御における上限ブレーキ圧P2を15barとすることによって、車両のヨーイング方向の姿勢が僅かに変化するものの、運転者がほとんど気付かない程度に制御を行うことが可能になる。なお、上限ブレーキ圧は、10〜25barの範囲で設定してもよいが、車両の姿勢制御の効果と、運転者が気付くことによる違和感とを比較考慮すると、15barが最も好ましい。また、第2オーバーステア制御における上限のブレーキ圧は、路面μに応じて変更してもよい。例えば低μ路においては、上記上限のブレーキ圧を15barとするのに対し、高μ路においては、上限のブレーキ圧を50barとするようにしてもよい。
【0097】
このように、第1オーバーステア制御に加えて、第2および第3オーバーステア制御を設けることで、車両の高い安定性を確保しつつも、運転者の感じる安定感および操縦の容易さを向上させることができる。
【0098】
(第1アンダーステア制御)
図5に示すステップS28〜ステップS34は第1アンダーステア制御に係るステップであって、上記ステップS24(図4参照)においてNO判定されて図5のステップS28に移行した時は、このステップS28において第1アンダーステア制御を開始するか否かを判定する。そして、上記ステップS28において開始するYES判定時であれば次のステップS29に移行する一方、開始しないNO判定時であればリターンする。
【0099】
上記ステップS29においては、そのアンダーステア傾向が小さいか(弱いか)否かを判定する。小さい場合はステップS30に移行する一方、大きい場合はステップS31に移行する。
【0100】
上記ステップS30においては内前輪の制動量を演算する。一方、ステップS31においては内後輪の制動量を演算する。これはアンダーステア傾向が弱い時は、前輪にはグリップ力がある状態と考えられ、また、前輪に制動力を付与することは後輪に制動力を付与する場合に比べて、より制動効率が良い、すなわち車両をより効率的に減速できるためである。このため、アンダーステア傾向が弱い場合には内前輪に制動を行うことによって、確実かつ迅速なアンダーステア制御を行うことが可能になる。
【0101】
一方、アンダーステア傾向強い場合は、前輪のグリップ力がないものと考えられることから、内後輪に対し制動力を付与する。
このように制動量が演算されれば、ステップS32に移行して、制動力制御を実行する。
【0102】
そして、ステップS33においては、第1アンダーステア制御の終了判定を行う。これは、上記ヨーレート偏差Δψ(θ,G)がしきい値THUSよりも小さくなったか否かを判定することによって行う。そして、YES判定時にはステップS34に移行して制御を終了させてリターンする。一方、NO判定時には制御を終了することなくリターンする。
【0103】
(オーバーステア制御開始判定)
次に、オーバーステア制御開始判定について説明する。第1〜第3オーバーステア制御の開始判定は、制御目標ヨーレートとして、第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)のうちの絶対値の小さい方を制御目標ヨーレートTrψとし、この制御目標ヨーレートTrψと実ヨーレートψとの偏差Δψ(θ,G)が、オーバーステア制御の介入しきい値(第1〜第3の介入しきい値)THOS,THOSII,THOSIIIよりも大きいか否かによって行うようにしている。
【0104】
例えば、図7に示すように、第2目標ヨーレートψ(G)の絶対値が、第1目標ヨーレートψ(θ)の絶対値よりも小さい時は、上記第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとする(同図のT1参照)。ここで、制御目標ヨーレートTrψ(同図の破線参照)が第2目標ヨーレートψ(G)(同図の実線参照)に比べて大きくなっているのは、制御目標ヨーレートTrψに対して舵角成分を考慮した補正を行っているためである(式(3)参照)。
【0105】
そして、ヨーレート偏差Δψが第3の介入しきい値THOSIIIよりも大きくなれば、第3オーバーステア制御を介入させる。この第3オーバーステア制御は、上述したように、上限ブレーキ圧P1(5bar)まで、ブレーキ圧ゲインKmaxでブレーキ圧を一気に供給する。そしてその後、ゲインK1(K1<Kmax)でΔψに応じてブレーキ圧を供給するフィードバック制御を行う(図4のステップS25参照)。また、ヨーレート偏差Δψが第2の介入しきい値THOSIIよりも大きくなれば、第2オーバーステア制御を介入させる。この第2オーバーステア制御は、上述したように、上限のブレーキ圧P2(15bar)まで、ゲインKmaxでブレーキ圧を一気に供給するオープン制御を行う(図4のステップS23参照)。さらに、ヨーレート偏差Δψが第1の介入しきい値THOSよりも大きくなれば、第1オーバーステア制御を介入させる。
【0106】
また、例えば、オーバーステア傾向を回避しようと運転者がカウンターステアを行った場合には、第1目標ヨーレートψ(θ)の値が、上記第2目標ヨーレートψ(G)よりも小さくなる場合がある。この時は、制御目標ヨーレートTrψを第2目標ヨーレートψ(G)から第1目標ヨーレートψ(θ)に変更する(同図のT2参照)。
【0107】
このようにカウンターステアを行った場合には、第1目標ヨーレートψ(θ)の変化に伴い実ヨーレートψの値が第2目標ヨーレートψ(G)の値よりも小さくなる。ここで、例えば、第2目標ヨーレートψ(G)を制御目標ヨーレートTrψとしたままであれば、オーバーステア制御からアンダーステア制御に変更されてしまう。このようにアンダーステア制御となってしまえば、車両のヨーイング方向の姿勢としては未だオーバーステア傾向であり、かつ、運転者がカウンターステアとしているにも拘わらず、そのカウンターステアの効果が生じないような、つまりオーバーステア傾向を助長する制御となってしまう。ところが、第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)のうちの小さい方を制御目標ヨーレートTrψとすれば、カウンターステアを行った場合でもオーバーステア制御(第1オーバーステア制御)が継続して行われ、上記の不都合が解消される。
【0108】
また、上記第1目標ヨーレートψ(θ)の値が中立点を通過し、この第1目標ヨーレートψ(θ)の値と第2目標ヨーレートψ(G)の値との符号が異なる時には、制御目標ヨーレートTrψの値を所定値で一定にし(同図のT3参照)、その後、上記第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)の値が同符号となれば、上記第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)のうちの絶対値の小さい方、図7では上記第2目標ヨーレートψ(G)の値を制御目標ヨーレートTrψに設定する(同図のT4参照)。
【0109】
このように、制御目標ヨーレートTrψの値を一定値で保持するようにするのは、舵角が中立点を越えるような状態遷移の時に制御ゲインが大きくなってしまうことを回避するためである。また、例えば第1目標ヨーレートψ(θ)の値をそのまま制御目標ヨーレートTrψとすれば、制御量が大きくなってしまい、車両が逆方向にスピンしてしまう虞れがあるためである。このように、車両が逆方向にスピンするようになると、その逆方向スピンの回避が困難となることから、上記第1および第2目標ヨーレートψ(θ,G)の値が異符号となる時には、制御目標ヨーレートTrψを所定値で保持する。
【0110】
なお、上記所定値を例えば中立点としてしまうと、その後、車両がヨーイング方向の姿勢変化を起こさなくなってしまうため、上記所定値は中立点に対してオフセットした値としている。
【0111】
図8は地理環境に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値および敏感制御感度を変更するフローチャートを示す。この実施例では図3のフローチャートにおけるステップS6で示した各しきい値THOS、THUS、THEUS、THOSII、THOSIIIのうち、敏感制御に相当する第2の介入しきい値THOSIIおよび第3の介入しきい値THOSIIIを変更するが、このしきい値変更に代えて、いわゆる姿勢制御の本制御に相当するしきい値THOS、THUS、THEUSを変更してもよいので、以下の説明においては姿勢制御介入の開始しきい値として説明する。
【0112】
また図2に示すように、地理環境判定手段9は車両安定性制御装置24に接続されると共に、この地理環境判定手段9は図1で既に説明したように、道路状況提供手段2からの道路状況データの提供すなわち地理環境データの受信に基づいて車両1が現在走行している地理環境(直進路、旋回路、下り坂、上り坂、路面μ、道路の旋回曲率など)および当該車両1前方の地理環境を判定するものである。
【0113】
ステップQ1で地理環境判定手段9(または前記両者2,9の送受信系)が故障か否かが判定され、YES判定時(故障時)にはステップQ2に移行する一方、NO判定時(正常時)には別のステップQ4に移行する。
【0114】
上述のステップQ2では、地理環境判定手段9の故障により、信頼性が得られないことに対応して、開始しきい値の補正を禁止し、次のステップQ3で、基準となる基本開始しきい値を設定する。
【0115】
この基本開始しきい値は車速に基づいて定められた略一律の値(つまり勾配や道路曲率などが考慮されていない値)であって、車速が高い程、その値が低くなるように予め設定されたものである。詳しくは、該基本開始しきい値は横軸に車速をとり、縦軸に目標すべり角βと実際のすべり角βとの偏差(Δβ=β−β)をとって、偏差Δβを超えた時に姿勢制御を実行するように設定したものである。
【0116】
一方、上述のステップQ4でもステップQ3と同様に基本開始しきい値が設定される。
次にステップQ5で道路曲率に対応した補正値bを求める。図中「1.0」は基本開始しきい値に対して補正を行なわないことを意味しており、この補正値bは道路曲率が小さい程、小さい値となり、道路曲率が大きい程、大きい値となる。
【0117】
図中αは道路曲率が過小で、道路が直進路(直線路)または直進路と見なされることを示しており、この直進路αの範囲においては姿勢制御介入の開始しきい値が「1.0」よりも低く設定され、旋回路の曲率が大きくなる程、開始しきい値は順次高い値に設定されている。
【0118】
すなわち、上述の地理環境判定手段9は道路状況提供手段2から直進路、旋回路、下り坂、上り坂、路面μ、道路の旋回曲率などの地理環境データを受信するので、この地理環境判定手段9が受信したデータに基づいて、車両1が現在走行している道路が直進路か旋回路(カーブ)かを判定し、直進路では変更手段としての該ステップQ5が開始しきい値を低く設定し、旋回路では開始しきい値を順次高く設定するものである。
【0119】
これは、直進路では本来車両が姿勢を崩すような領域ではないので、開始しきい値を低く設定し、車両が少しでも姿勢を崩すと姿勢制御を早く介入させるためである。
【0120】
次にステップQ6で道路の勾配に対応した補正値cを求める。この補正値cは所定以上の上り坂ではその勾配が大きい程、大きい値に設定され、所定以上の下り坂ではその勾配が大きい程、「1.0」よりも小さい値に設定されている。
【0121】
つまり、地理環境判定手段9は車両1が現在走行している道路が下り坂か否かを判定し、下り坂では変更手段としての該ステップQ6が下り勾配に対応して開始しきい値を下げるように、補正値cを設定するものである。
【0122】
これは、下り坂では車両1がもつ運動特性がヨー運動を起こしやすくなるので、開始しきい値を下げるように補正値cを設定して、姿勢制御の介入を早めて、安全性を確保するためである。
【0123】
次にステップQ7で車両前方の路面μに対応した補正値dを求める。この補正値dは前方路面μが低い程、すなわち低いμ路になる程、小さい値に設定されている。
つまり、地理環境判定手段9は車両前方の路面μを判定し、路面μが低い程、変更手段としての該ステップQ7は姿勢制御介入の開始しきい値を下げるように、補正値dを設定するものである。
【0124】
これは、低μ路では車両1の姿勢がくずれやすいので姿勢制御の介入を早めるためである。しかも、低μ路を検出してから開始しきい値を下げたのでは、車両の姿勢がくずれるので、車両前方が低μ路であることが判定されると、予め開始しきい値を下げるように補正値dを設定することで、運転者は路面μが低下したことを意識せずに車両1を走行させることができる。
【0125】
次にステップQ8で、カーブまでの距離に対応した補正値eを求める。この補正値eはカーブ近傍になる程、相対的に姿勢制御介入の開始しきい値を上げるように、カーブまでの距離が長い場合に対して大きい値に設定されている。
【0126】
加えて、上記補正値eの特性は車速をパラメータ(変数)とする複数の特性を有し、車速が小さい場合と比較して、車速が大きい場合にはカーブまでの距離が小でも、開始しきい値が小さくなるような特性に設定している。これは、車速が大の場合にはカーブに到達するまでの時間が短く、かつ高速でカーブに侵入する場合には減速して姿勢が変化する領域が早いので、これに対応し得るように補正値eの特性を設定したものである。
【0127】
つまり、地理環境判定手段9は車両前方のカーブの存在を判定し、カーブ近傍になる程、変更手段としての該ステップQ8は姿勢制御介入の開始しきい値を相対的に上げるように、補正値eを設定するものである。
【0128】
次にステップQ9で、地理環境判定手段9が判定した旋回曲率と、車両1が現在走行している道路の旋回曲率との間の旋回偏差の大小に基づいて、敏感制御補正量fを求める。
【0129】
この実施例では、上述の旋回偏差が大きい程、敏感制御の感度を高めるように図7で示した上限ブレーキ圧P2(たとえば15bar)からブレーキ圧を徐々に高めるように補正量fを設定している。
つまり、変更手段としてのステップQ9は上記旋回偏差が大きくなる程、敏感制御の感度を徐々に高めるような補正量fを設定するものである。
【0130】
これは、上述の両旋回曲率間の旋回偏差が大きい程、敏感制御の感度を高めて、運転者がほとんど気付かないように上記偏差をなくして、旋回軌跡に対するトレース性の向上を図るためである。
【0131】
次にステップQ10で、姿勢制御介入の開始しきい値の演算と、敏感制御量の演算とを実行する。
開始しきい値は、基本開始しきい値(ステップQ4参照)に対して各ステップQ5,Q6,Q7,Q8で求められたそれぞれの補正値b,c,d,e(但し全て零以外の数値)を乗算して算出され、図3のステップS6に反映され、敏感制御量はステップQ9で求められた補正量fに基づいて算出され、ブレーキ圧力に反映される。
なお、図8の各ステップQ5〜Q9中に図示した黒丸のポイントを満たす条件下において、それぞれの特性の傾きを変えてもよいことは勿論である。
【0132】
このように上記実施例の自動車の姿勢制御装置は、車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段2と、車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段(ECU10参照)とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、上記道路状況提供手段2からの道路状況提供に基づいて車両1が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段9と、上記地理環境判定手段9の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段(各ステップQ5,Q6,Q7,Q8参照)と備えたものである。
【0133】
この構成によれば、道路状況提供手段2は車両前方の道路状況を車両に提供し、姿勢制御手段(ECU10参照)は車両1のヨーレート挙動を制御し、地理環境判定手段9は上述の道路状況提供手段2から受信した道路状況に基づいて車両1が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定するが、上述の変更手段は地理環境判定手段9の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する。
【0134】
ここで、開始しきい値を下げた場合には、姿勢制御介入のタイミングが早くなり、逆に、開始しいき値を上げた場合には、姿勢制御介入のタイミングが遅くなる。
このように、車両が走行している地理環境に対応して姿勢制御介入の開始しきい値を変更するので、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる。
【0135】
また、上記地理環境判定手段9は車両1が現在走行している道路が直進路か旋回路かを判定し、直進路では上記変更手段(ステップQ5参照)が姿勢制御介入の開始しきい値を低く設定するものである。
【0136】
この構成によれば、直進路は本来車両が姿勢をくずすような領域ではないので、開始しきい値を低く設定し、車両が少しでも姿勢をくずすと姿勢制御を早く介入させることができ、安全性を確保することができる。
【0137】
さらに、上記地理環境判定手段9は車両が現在走行している道路が下り坂か否かを判定し、下り坂では上記変更手段(ステップQ6参照)が姿勢制御介入の開始しきい値を下げるものである。
【0138】
この構成によれば、下り坂においては車両1の荷重がフロント側へ移行し、リヤ側の荷重が減少して、車両1がもつ運動特性がヨー運動を起こしやすくなるので、開始しきい値を下げることで、姿勢制御の介入を早めて、安全性を確保することができる。
【0139】
加えて、上記地理環境判定手段9は車両前方の路面μを判定し、上記路面μが低い時、上記変更手段(ステップQ7参照)は姿勢制御介入の開始しきい値を下げるものである。
この構成によれば、車両前方が低μ路である場合、変更手段(ステップQ7参照)は予め姿勢制御介入の開始しきい値を下げるので、車両が低μ路に侵入しても安全に走行することができる。つまり、低μ路を検出してから開始しきい値を下げたのでは、車両の姿勢がくずれるので、車両前方が低μ路であること雅判定されると、予め開始しきい値を下げるものである。
【0140】
また、上記地理環境判定手段9は車両前方のカーブの存在を判定し、カーブ近傍になる程、上記変更手段(ステップQ8参照)は姿勢制御介入のしきい値を上げるものである。
【0141】
この構成によれば、車両1がカーブに進入する場合には本来車両の姿勢がくずれるものであって、姿勢制御の介入が早すぎると、車両はカーブを曲がることができなくなる。このためカーブ近傍になる程、開始しきい値を上げて、姿勢制御介入のタイミングを遅らせることで、良好な姿勢制御の介入状態を確保することができる。
【0142】
さらに、車両1のカーブ走行時、上記変更手段(ステップQ5参照)は姿勢制御介入の開始しきい値をさらに上げるものである。
この構成によれば、車両1のカーブ走行時においては前後の旋回外輪に作用するコーナリングフォースと遠心力とが釣り合っており、車両は比較的安定しているので、開始しきい値をさらに上げて、姿勢制御が早く入り過ぎることによる違和感を防止して、ドライブフィーリングを確保することができる。
【0143】
加えて、上記地理緩急判定手段9が判定した旋回曲率と、車両1が現在走行している道路の旋回曲率との間の旋回偏差が大きくなる程、上記変更手段(ステップQ9参照)は敏感制御感度を高めるものである。
【0144】
この構成によれば、上述の両旋回曲率間の旋回偏差が大きい程、敏感制御の感度を高めるので、運転者がほとんど気付かないように上記偏差をなくすことができ、旋回軌跡に対するトレース性の向上を図ることができる。
【0145】
また、上記地理環境判定手段9は車両1が現在走行している旋回路の旋回曲率(道路曲率と同意)を判定し、旋回曲率が大きい程、上記変更手段(ステップQ5参照)は姿勢制御介入の開始しきい値を上げるものである。
【0146】
この構成によれば、旋回曲率が大きい程、上記開始しきい値を上げて、姿勢制御介入のタイミングを遅らせるので、姿勢制御が早く介入され過ぎることによる違和感をなくすことができる。
【0147】
さらに、上記地理環境判定手段9の故障時には上記変更手段(各ステップQ5〜Q9参照)による開始しきい値変更または敏感制御感度の変更を規制する規制手段(ステップQ2参照)を設けたものである。
【0148】
この構成によれば、上述の規制手段(ステップQ2参照)は地理環境判定手段9の故障時(フェール時)に変更手段による開始しきい値の変更または敏感制御感度の変更を規制する。
したがって、地理環境の判定を行なうことができない故障時には、信頼性が得られないので、開始しきい値の変更や敏感制御感度の変更を規制(または禁止)することができる。
【0149】
図9は地理環境に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値および敏感制御感度を変更するフローチャートの他の実施例を示し、この図9の実施例においてもステップQ1〜Q10は図8の実施例と同一であるから、異なる点についてのみ説明する。
【0150】
ステップQ10で、姿勢制御介入の開始しきい値および敏感制御量がそれぞれ演算された後に、次のステップQ11に移行する。
このステップQ11で、演算された開始しきい値(演算値)と予め設定された上限値とを比較して、演算値>上限値のYES判定時には次のステップQ12に移行する一方、NO判定時には別のステップQ13に移行する。
【0151】
上述のステップQ12では演算値に上限ガードをかける。つまり上限値を姿勢制御介入の開始しきい値とする。
一方、ステップQ13では、演算された開始しきい値(演算値)と予め設定された下限値とを比較して、演算値<下限値のYES判定時には次のステップQ14に移行する一方、NO判定時にはステップQ1にリターンする。
【0152】
上述のステップQ14では演算値に下限ガードをかける。つまり下限値を姿勢制御介入の開始しきい値とする。
【0153】
このように、演算された開始しきい値を上下限値と比較してガード処理を行なうと、開始しきい値の過大補正、過小補正が防止され、より一層最適な開始しきい値に基づいて姿勢制御の介入を実行することができる。
【0154】
なお、図9に示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例と同様であるから、図9において図8と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0155】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の姿勢制御手段は、実施例の車両安定性制御装置24を含むECU10に対応し、
以下同様に
変更手段は、図8、図9に示す各ステップQ5〜Q9に対応し、
規制手段は、ステップQ2に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0156】
例えば、図8、図9のステップQ10で演算された開始しきい値の演算値に対して所定の係数を乗算すべく構成してもよい。
【0157】
【発明の効果】
この発明によれば、車両が走行している地理環境に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値すなわち姿勢制御介入のタイミングを変更するので、安全性とドライブフィーリングとを高い次元で両立することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の自動車の姿勢制御装置の全体システムを示す概略図。
【図2】 姿勢制御装置を示すブロック図。
【図3】 姿勢制御を示すフローチャート。
【図4】 図3に続くフローチャート。
【図5】 図4に続くフローチャート。
【図6】 横加速度に対する補正係数を示す図。
【図7】 上部は、第1目標ヨーレート、第2目標ヨーレート、制御目標ヨーレートおよび実ヨーレートの変動の一例を示す説明図、下部は、第1〜第3オーバーステア制御におけるブレーキ圧供給の一例を示す説明図。
【図8】 姿勢制御介入の開始しきい値演算ルーチンを示すフローチャート。
【図9】 姿勢制御介入の開始しきい値演算ルーチンの他の実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…車両
2…道路状況提供手段
9…地理環境判定手段
10…ECU(姿勢制御手段)
Q2…規制手段
Q5〜Q9…変更手段

Claims (5)

  1. 車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、
    車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、
    上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、
    上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え
    上記地理環境判定手段は、車両が現在走行している道路が直進路か旋回路かを判定し、直進路では上記変更手段が姿勢制御介入の開始しきい値を低く設定する
    自動車の姿勢制御装置。
  2. 車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、
    車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、
    上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、
    上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え、
    上記地理環境判定手段は、車両前方のカーブの存在を判定し、カーブ近傍になる程、上記変更手段は姿勢制御介入のしきい値を上げる
    自動車の姿勢制御装置。
  3. 車両のカーブ走行時、上記変更手段は姿勢制御介入の開始しきい値をさらに上げる
    請求項記載の自動車の姿勢制御装置。
  4. 車両前方の道路状況を提供可能な道路状況提供手段と、
    車両のヨーレート挙動を制御する姿勢制御手段とを備えた自動車の姿勢制御装置であって、
    上記道路状況提供手段からの道路状況提供に基づいて車両が現在走行している地理環境および車両前方の地理環境を判定する地理環境判定手段と、
    上記地理環境判定手段の判定結果に基づいて姿勢制御介入の開始しきい値を変更する変換手段とを備え、
    上記地理環境判定手段は、車両が現在走行している旋回路の旋回曲率を判定し、
    旋回曲率が大きい程、上記変更手段は姿勢制御介入の開始しきい値を上げる
    自動車の姿勢制御装置。
  5. 上記地理環境判定手段の故障時には、上記変更手段による開始しきい値変更または敏感制御感度の変更を規制する規制手段を設けた
    請求項1,2または4の何れか1つに記載の
    自動車の姿勢制御装置。
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