JP4589552B2 - 雨樋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雨樋に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から,雨樋等の異形長尺成形品として、熱可塑性樹脂及び熱可塑性樹脂をガラス繊維や炭素繊維などで補強した繊維強化樹脂組成物によりつくられたものが知られている。
【0003】
なかでも、長手方向の強度、剛性、熱伸縮性に優れた異形長尺成形品の製造方法として、繊維状液晶樹脂を強化材とし、該液晶樹脂の転移点よりも低い融点を有する熱可塑性樹脂との混合物を押出成形し、所定の断面形状に賦形する方法が知られている(特開平9−85796号公報)。
【0004】
しかし、液晶樹脂は高価であり、この液晶樹脂を強化材として得られる成形体は高価なものとなる。
【0005】
一方、熱可塑性ポリエステルは結晶性樹脂であるため延伸による強度向上が大きく、かつ溶融温度が高いため、熱可塑性樹脂に混合して溶融成形を行っても補強効果を保つことができることが知られており、安価な補強材として液晶樹脂の代替となりうる可能性を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、溶融状態で液晶構造を取らない熱可塑性ポリエステルは、強化材として十分な効果を発現させることが難しく、所望の物性を発現することが困難であった。
【0007】
本発明は、安価な熱可塑性ポリエステルを強化材として用いても、長手方向の強度、剛性、熱伸縮性に優れた雨樋を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の雨樋(以下、「本発明1」という)は、熱可塑性樹脂中に、該熱可塑性樹脂の成形可能温度より高い融点を有する熱可塑性ポリエステルが、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された基材を有し、前記基材は、前記熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を、該熱可塑性ポリエステルの融点以上の温度に加熱して伸張しつつ溶融押出し、溶融押出された混合物を、該熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で押出方向に延伸して得られるものである。
【0009】
本発明1において使用される熱可塑性樹脂は、その成形可能温度が、後述する熱可塑性ポリエステルの融点より低いものであれば特に限定されない。
【0010】
上記熱可塑性樹脂の成形可能温度がポリエステルの融点より高いと、成形時にポリエステルの融点以上の加熱が必要となり、ポリエステルの分子配向が乱れ、強度が低下する。
【0011】
上記成形可能温度とは、可塑性を示し混練成形可能となる温度を指し、結晶性樹脂については融点をいい、非晶性樹脂については熱変形温度又はビカット軟化点より、80℃高い温度をいう。なお、上記熱変形温度とは、JIS K7207 A法による荷重たわみ試験における荷重たわみ温度を指す。
【0012】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(融点約130℃)、ポリプロピレン(融点約170℃)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(熱変形温度約70℃)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(熱変形温度約90℃)等のスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート(熱変形温度約90℃)等のアクリル系樹脂;ナイロン6(融点225℃)等のポリアミド樹脂;ポリビニルアセタール(融点約180℃)等のアセタール系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(熱変形温度約80〜140℃)、及びそれらの変性体、共重合体などがあげられる。これらは単独で使用されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
【0013】
上記熱可塑性樹脂は、請求項3に記載されているように、ビニル芳香族系炭化水素重合体を主成分とするのが好ましい。
上記ビニル芳香族系炭化水素重合体としては、例えば、ポリスチレン及びポリスチレンとアクリル系モノマー等の共重合樹脂などが挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としてビニル芳香族系炭化水素重合体を主成分とすることにより、成形体表面にアクリル系樹脂やスチレン系共重合樹脂等の融着被覆が可能となり、屋外使用時等の耐候性が向上する。
【0014】
本発明1において使用される熱可塑性ポリエステルは、上記熱可塑性樹脂の成形可能温度より高い融点を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチンナフタレートなどが挙げられる。これらは単独で使用されてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
【0015】
中でも、請求項4に記載されているように、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度は約70℃、後述する低温結晶化温度は約160℃、融点は約260℃であり、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリル系樹脂等の汎用樹脂と組み合わせて用いることが容易である。
さらに、ポリエチレンテレフタレート製ボトル(所謂「ペットボトル」)等の回収樹脂を利用することにより、環境負荷を低減することができる。
【0016】
上記熱可塑性ポリエステルの量は、少なすぎると補強効果が小さく、多すぎると成形体中で分散が不十分になりやすくなるので、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、5〜400重量部が好ましい。
【0017】
本発明1の雨樋は、上記熱可塑性樹脂中に、上記熱可塑性ポリエステルが、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された基材を有するものである。
【0018】
分子が一方向に配列した状態は、例えば、複屈折、X線回折、レーザーラマン散乱、偏光蛍光等,通常分子配向の測定に用いられる手段により確認することができる。複屈折は、直交偏光下での2方向の屈折率の差(主延伸方向の屈折率−幅方向の屈折率)として求められ、分子が配列していない場合は0となる。
【0019】
本発明1において、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された状態では、上記複屈折は通常0.01以上となる。
【0020】
本発明1において、ポリエステル分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された状態の基材を得るには、上記熱可塑性樹脂と、上記熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を、該熱可塑性ポリエステルの融点以上の温度に加熱して伸張しつつ溶融押出し、溶融押出された混合物を、上記熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で押出方向に延伸して成形用材料を得、得られた成形用材料を、さらに上記熱可塑性ポリエステルの融点以下の温度で賦形するのが好ましい。
【0021】
上述のように、熱可塑性樹脂と熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を伸張しつつ溶融押出することにより、熱可塑性ポリエステルが押出方向に引き延ばされた状態で分散された混合物を得ることができる。
【0022】
上記樹脂混合物を伸長しつつ溶融押出するには、樹脂通過面断面積を暫時減少させた金型を用いて押出成形を行う、溶融樹脂混合物を引き延ばしつつ冷却を行う等の方法により実現される。この際、この後の延伸工程でポリエステル分子が配向しやすいよう、熱可塑性ポリエステルの結晶化が抑えられていることが好ましい。結晶化の抑制は、溶融状態の熱可塑性ポリエステルを速やかに低温結晶化温度以下に冷却することにより達成される。
【0023】
熱可塑性ポリエステルは、示差熱分析により、昇温時に通常3つの吸熱ピークを示す。この3つのピークを低温側からそれぞれ、ガラス転移温度、低温結晶化温度、融点という。
【0024】
次いで、上記溶融押出された混合物を、上記熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で押出方向に延伸する。ガラス転移温度未満であると分子は配列を変えることができず破断しやすく、低温結晶化温度を超えると分子は自由に運動できるために引き揃える効果が弱く、強度が十分に向上できない。このようにして、分子の配列を引き揃えやすい状態として延伸することにより、熱可塑性ポリエステルの分子配列が一方向に揃えられ、延伸方向での機械的強度が向上する。
【0025】
上記延伸倍率は、低すぎるとポリエステル分子の配列が揃えられにくく、充分な補強効果が得られず、高すぎると配列が揃えられたポリエステル分子が破断してしまいやすくなるので、200〜2000%が好ましい。
【0026】
上記のようにして延伸された成形材料は、熱可塑性ポリエステルの低温結晶化温度〜溶融温度で加熱処理するのが好ましい。低温結晶化温度以下での加熱処理では、ポリエステル分子の結晶化が進まず、融点を超えての加熱処理では、分子配列が乱れる。このようにすることにより、ポリ熱可塑性エステルの結晶化が進み、ポリエステル分子の配列が揃えられて安定化し、強度が向上する。
【0027】
この場合、張力をかけずに加熱処理すると、結晶化時に分子の配列が乱れて収縮し、強度の向上が不十分となるため、延伸方向に張力をかけて収縮を抑制した状態で加熱処理を行うことが望ましい。
【0028】
本発明1において、上記基材中には、請求項5に記載されているように、無機質充填材が添加されているのが好ましい。
【0029】
上記無機質充填材は、基材の弾性率の向上、熱伸縮の抑制、熱変形温度の向上などのために添加されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、マイカ、グラファイト、層状珪酸塩、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、セリサイト、金属箔等の板状充填材;炭酸カルシウム、シリカ等の粒状充填材;チタン酸カリウム、ワラストナイト、酸化マグネシウム等の針状充填材;炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維等の強化繊維などがあげられ、目的に応じ適宜選択される。
【0030】
上記無機質充填材の添加量は、少なすぎると所望とする性能を向上させる効果が弱く、多すぎると成形時の流動性が著しく低下して成形性が悪くなり、成形品(雨樋)の表面平滑性にも悪影響を及ぼすので、上記熱可塑性樹脂100重量部に対して、板状充填材、粒状充填材、針状充填材の場合1〜100重量部、強化繊維の場合1〜40部が好ましい。
【0031】
上記基材中には、さらに必要に応じて、ハロゲン系、ノンハロゲン系、無機系等の難燃材;ヒンダードアミン等の酸化防止剤;変性ポリオレフィン、各種エラストマー等の改質剤が添加されてもよい。
【0032】
本発明2の雨樋は、上記基材の表面に、A−X−S系共重合体(ここで、A:アクリロニトリル成分、X:ブタジエン以外のゴム成分、S:スチレン成分)からなる表層が被覆されているものである。
【0033】
A−X−S系共重合体は、一般にAXSと称されるものであって、上記ブタジエン以外のゴム成分としては、例えば、エチレン−プロピレンゴム(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、酢酸ビニル共重合体などがあげられる。
【0034】
本発明において表層に用いられるA−X−S系共重合体は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体に比べて耐候性に優れ、上記基材が系時的変化により褪色するのを防止するためと、雨樋表面の衝撃強度を高めるために使用される。
【0035】
なお、これらの表層を多層化することにより 表面の平滑化の向上による美観向上や、耐衝撃強度の向上を付与することができる。また、本発明にあっては、軒樋と竪樋のいずれの形態であっても良いのは勿論のことてある。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の形態を、図面に基づきさらに詳しく説明する。
【0037】
図1は、本発明1又は2に使用される、成形用材料を製造するための製造装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本発明1又は2に使用される成形用材料を得るには、熱可塑性樹脂と、熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を、押出機1に供給する。押出機1の先端部には、樹脂通過面断面積を暫時減少させた金型11が取り付けされている。
この金型11に樹脂混合物を通過させることにより、樹脂混合物は伸張されつつ溶融押出される。次いで、上記樹脂混合物を、冷却水槽2を通過させて冷却した後、熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で多数の延伸ロール31、31を有する延伸槽3で押出方向に延伸する。次いで、延伸された成形材料4を、加熱処理槽5で熱可塑性ポリエステルの低温結晶化温度〜溶融温度で加熱処理する。
【0038】
図2は、本発明1又は2に使用される、雨樋製造装置の一例を示す模式図である。
図1の製造装置で得られた、加熱処理された成形材料(通常ストランド状)を、図示しないペレタイザー等によりペレット状とし、別途準備した熱可塑性樹脂とともに、基材用押出機6の第1フィーダー61に供給するとともに、無機質充填材を第2フィーダー62から供給し、基材用押出機6で混練しつつ押出金型63でコの字状に賦形する。
【0039】
一方、表層用押出機7に、アクリロニトリル−(エチレン−プロピレン−ジエン)−スチレン共重合体を供給し、押出金型63で基材上に被覆し、冷却金型64で冷却する。そして、引取機65で引き取りつつ、切断装置66で所定寸法に切断することにより、本発明2の雨樋8が得られる。
【0040】
図3は、本発明2の雨樋の一例を示す断面図である。
図3に示すように、本発明2の雨樋8は、基材81の表面に、アクリロニトリル−(エチレン−プロピレン−ジエン)−スチレン共重合体からなる表層82が被覆されているものである。
【0041】
【実施例】
本発明を、実施例に基づきさらに詳しく説明する。
【0042】
(実施例1)
図1に示した製造装置の押出機1(プラスチック工学研究所製、型式「UT−25」)に、アクリル変性ポリスチレン(A&Mスチレン製、品番「SX200」、ビカット軟化点100℃)40重量%とポリエチレンテレフタレート(三菱レイヨン社製、商品名「ダイヤナイトPA−500」、ガラス転移温度70℃、低温結晶化温度160℃、融点260℃)60重量%を供給し、内径20mm、先端部が通過面断面が15°のテーパーで直径4mmに暫時縮径された金型11に供給し、直径4mmのストランドを押し出し、樹脂混合物を伸長させた。
【0043】
押出機1のバレル温度を200〜260℃、金型11の温度265℃、樹脂吐出量5kg/hrとした。次いで、このストランドを10℃に調整した冷却水槽2を通過させて冷却し、ストランド径2.5mm、樹脂温度15℃とした。
【0044】
次いで、雰囲気温度を95℃に設定した延伸槽3にストランドを導きストランドを加熱し、順次回転速度を速めた延伸ロール31・・・31間を通過させることにより延伸を行いストランド径0.5mmの成形材料4を得た。
【0045】
次いで、雰囲気温度を200℃に設定した加熱処理槽5に成形材料4を導き、60秒間の加熱を行い、熱処理ストランドを得た。
【0046】
得られた熱処理ストランドを、図示しないペレタイザーで長さ6mmのペレット(マスターバッチ)とし、アクリル変性ポリスチレン100重量部、ポリエチレンテレフタレート31重量部となるようにアクリル変性ポリスチレンとマスターバッチを、図2に示した基材用押出機6(日本製鋼社製、型式「TEX44」)の第1フィーダー61に供給するとともに、タルク(勝光山工業所製、商品名「ビクトリライトSK2BB」)23重量部を第2フィーダー62から供給し、基材用押出機6で混練しつつ押出金型63でコの字状に賦形し、幅100mm、高さ50mm、厚み2mmの断面コの字の、熱可塑性ポリエステルが、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された基材のみの雨樋を得た。
【0047】
(実施例2)
実施例1と同様にして、マスターバッチ、アクリル変性ポリスチレン、及びタルクを基材用押出機6に供給するとともに、表層用押出機7(プラスチック工学研究所製、型式「UT−25」)に、アクリロニトリル−(エチレン−プロピレン−ジエン)−スチレン共重合体(日本エイアンドエル社製、商品名「ユニブライトUB400」)を供給して基材表面に被覆し、図3に示した雨樋(表層厚み0.1mm)を得た。
【0048】
(実施例3)
タルクに代えてガラス繊維(日東紡社製、品番「CS3PE956」、長さ4mm)を用い、アクリル変性ポリスチレン100重量部、ポリエチレンテレフタレート29重量部、ガラス繊維14重量部となるように基材用押出機6に供給したこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0049】
(実施例4)
ガラス繊維に代えて炭素繊維(東邦レーヨン社製、商品名「ベスファイトHTAC6SR」、長さ6mm)を用いたこと以外は実施例3と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0050】
(実施例5)
ガラス繊維に代えてジステアリルメチルアンモニウムクロライド変成膨潤性マイカ(コープケミカル社製、品番「MAE100」)を用いたこと以外は実施例3と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0051】
(実施例6)
ガラス繊維に代えてカーボングラファイト(日本黒鉛社製、品番「CP−B」)を用いたこと以外は実施例3と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0052】
(実施例7)
加熱処理槽5における加熱を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0053】
(実施例8)
アクリル変性ポリスチレンに代えて耐衝撃ポリスチレン(A&Mスチレン社製、品番「H8672」、熱変形温度75℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0054】
(実施例9)
アクリル変性ポリスチレンに代えて耐衝撃ポリスチレン(A&Mスチレン社製、品番「H8672」、熱変形温度75℃)を用いたこと以外は実施例2と同様にして図3に示した雨樋(表層厚み0.1mm)を得た。
【0055】
(実施例10)
アクリル変性ポリスチレンに代えてポリプロピレン(モンテル・エスディーケイ・サンライズ社製、商品名「サンアロマーPB170A」、熱変形温度約100℃)樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様である。
【0056】
(実施例11)
アクリル変性ポリスチレンに代えてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(テクノポリマー社製、商品名「テクノABS170」、熱変形温度90℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0057】
(実施例12)
アクリル変性ポリスチレンに代えてポリメチルメタクリレート(アトフィナ・ジャパン社製、商品名「オログラスHFI−10」、熱変形温度80℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0058】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレートペレットを用いず、アクリル変成ポリスチレンとタルクのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0059】
(比較例2)
延伸槽3における延伸及び加熱処理槽5における加熱を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして基材のみの雨樋を得た。
【0060】
物性評価
▲1▼引張弾性率
実施例1、7、8、10〜12、比較例1、2で得られた雨樋の長手方向(押出方向)の引張弾性率を材料試験機(オリエンテック社製、商品名「テンシロンUCT−5T」)を用いて測定した。
【0061】
▲2▼衝撃強度
実施例1、3〜8、10〜12、比較例1、2で得られた雨樋の長手方向(押出方向)の衝撃強度をアイゾット衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用いて測定した。
【0062】
▲3▼線膨張係数
実施例1、3〜8、10〜12、比較例1、2で得られた雨樋の長手方向(押出方向)の線膨張係数を熱分析モジュール(セイコー電子工業製社製、型式「TMA100」を用いて測定した。
【0063】
▲4▼融着強度
実施例2、9で得られた雨樋の基材と表層との融着強度を、JIS K5400に準拠して碁盤目剥離試験により測定し、100箇所中,剥離した箇所の数を計数した。
以上の結果を表1に纏めて示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】
本発明1の雨樋は、熱可塑性樹脂中に、該熱可塑性樹脂の成形可能温度より高い融点を有する熱可塑性ポリエステルが、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された基材を有し、前記基材は、前記熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を、該熱可塑性ポリエステルの融点以上の温度に加熱して伸張しつつ溶融押出し、溶融押出された混合物を、該熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で押出方向に延伸して得られるものであるから、衝撃強度を向上させ、線膨張率を低減させるので、長手方向の強度、剛性、熱伸縮性に優れたものとなる。
【0068】
本発明2の雨樋は、上記基材の表面に、A−X−S系共重合体(ここで、A:アクリロニトリル成分、X:ブタジエン以外のゴム成分、S:スチレン成分)からなる表層が被覆されているので、強度、剛性、熱伸縮性に加え、耐候性に優れたものとなる。
【0069】
本発明1又は2の雨樋において、上記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族系炭化水素重合体を主成分とすると、溶剤系接着剤による部品接合が可能となる。
【0070】
本発明1又は2の雨樋において、上記熱可塑性ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであると、ペットボトル等の回収樹脂を利用でき、環境負荷を低減させることができる。
【0071】
本発明1又は2の雨樋において、上記基材中に、無機質充填材が添加されていると、弾性率の向上、熱伸縮の抑制、熱変形温度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明1又は2に使用される、成形用材料を製造するための製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明1又は2に使用される、雨樋製造装置の一例を示す模式図である。
【図3】本発明2の雨樋の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
8 雨樋
81 基材
82 表層
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂中に、該熱可塑性樹脂の成形可能温度より高い融点を有する熱可塑性ポリエステルが、分子の少なくとも一部が一方向に配列して分散された基材を有し、
前記基材は、前記熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性ポリエステルとの樹脂混合物を、該熱可塑性ポリエステルの融点以上の温度に加熱して伸張しつつ溶融押出し、溶融押出された混合物を、該熱可塑性ポリエステルのガラス転移温度以上、低温結晶化温度以下の温度で押出方向に延伸して得られるものであることを特徴とする雨樋。 - 上記基材の表面に、A−X−S系共重合体(ここで、A:アクリロニトリル成分、X:ブタジエン以外のゴム成分、S:スチレン成分)からなる表層が被覆されていることを特徴とする請求項1記載の雨樋。
- 上記熱可塑性樹脂が、ビニル芳香族系炭化水素重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の雨樋。
- 上記熱可塑性ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の雨樋。
- 上記基材中に、無機質充填材が添加されていることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の雨樋。
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