JP4588903B2 - インクジェット記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタ用の記録材料に関し、特に帯電防止性に優れるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル化が普及し、益々コンピュータから画像イメージなどのデジタルデータを出力する機会が増加している。出力する方式としては、ドットインパクト、レーザーなど様々な方式があげられるが、その中でもインクジェット記録方式は、ハード及びランニングコストが安価であること、カラー出力も可能であることなどのメリットから普及が進んでいる。
【0003】
このようなインクジェット記録材料は、輸送時やインクジェットプリンタでの記録時に静電気が発生する場合がある。発生した静電気によりインクジェット記録材料が帯電すると、記録時の搬送性に悪影響を及ぼすなど取り扱い性を低下させることから、支持体のインク受容層とは反対側の面や、支持体とインク受容層との間に帯電防止層を設け、発生した静電気を瞬時に逃がす(帯電を防止する)手段が採用されている(特開平9−290555号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年のインクジェットプリンタの記録速度などの性能向上に伴い、一部のインクジェットプリンタで静電気の発生が大きいものが出現している。特に、インク受容層表面付近で発生する静電気が問題となっており、搬送性などの取り扱い性に悪影響をもたらすのみならず、記録時にインクが飛散し、地汚れが発生するという問題がある。特に、近年は、高精細、高画質化への要望からインクの粒子が細かくなっていることから静電気の影響を受けやすく、地汚れの発生が大きな問題となりつつある。
【0005】
このような静電気の発生が大きいインクジェットプリンタに従来のような帯電防止処理がされたインクジェット記録材料を使用しても、発生した大きな静電気を瞬時に逃がすことができず、地汚れが発生してしまい、上記問題を解決することができない。
【0006】
ここで、インク受容層中に界面活性剤などの公知の帯電防止剤を添加したり、インク受容層上に公知のポリマータイプの帯電防止剤からなる帯電防止層を設けたインクジェット記録材料においては、インク受容層表面付近で発生した静電気を瞬時に逃がし、地汚れを防止できるとも考えられる。
【0007】
しかし、これらの手段においては確かに地汚れの発生は防止し得るものの、記録された画像の変色、画像の耐光性の低下、インク受容層のインク吸収性の低下、などといった新たな問題が発生してしまった。
【0008】
そこで本発明は、十分な帯電防止性を備え地汚れを防止しつつ、画像の変色や耐光性・インク吸収性を低下させることがないインクジェット記録材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記目的を解決すべく鋭意研究した結果、帯電防止層を特定の組成とすることにより、帯電防止層をインク受容層上に設けた場合であっても、画像の変色や耐光性・インク吸収性を低下させないことを見出しこれを解決するに至った。
【0010】
即ち、本発明のインクジェット記録材料は、支持体上に、インク受容層、帯電防止層を順次有するインクジェット記録材料であって、前記帯電防止層は、固形分の全部がオリゴマー、界面活性剤および電解質である塗布液から形成されてなり、前記オリゴマーが、エステル系オリゴマー及び/又はエーテル系オリゴマーであり、前記電解質が、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とするものである。
【0011】
若しくは、インク受容性を有する支持体上に帯電防止層を有するインクジェット記録材料であって、前記帯電防止層は、固形分の全部がオリゴマー、界面活性剤および電解質である塗布液から形成されてなり、前記オリゴマーが、エステル系オリゴマー及び/又はエーテル系オリゴマーであり、前記電解質が、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とするものである。
【0016】
好ましくは、前記帯電防止層が、フッ素系の界面活性剤を含むことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録材料は、支持体上に、インク受容層、帯電防止層を順次有するものであって、前記帯電防止層は、オリゴマーと電解質を含むことを特徴とするものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明のインクジェット記録材料4の実施の形態を示す図で、このインクジェット記録材料4は、支持体1、インク受容層2、帯電防止層3からなる。
【0019】
支持体は特に制限されることなく使用することができるが、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのプラスチックフィルムが好適に使用される。支持体の厚みは特に限定されるものではないが、インクジェットプリンタへの搬送性などの点から、5〜300μmのものが好適に使用される。
【0020】
なお、支持体は、インク受容性を有する樹脂をフィルム化したもののように、インク受容性を有する支持体であってもよい。この場合、本発明のインクジェット記録材料は、インク受容層を別途設けることを特に必要とせず、インク受容性を有する支持体上に帯電防止層のみを有する構成とすることも可能である。
【0021】
インク受容層は少なくともバインダー樹脂から構成されるものである。
【0022】
バインダー樹脂は、主としてインク受容層のバインダー樹脂として一般的に使用されている水溶性樹脂、親水性樹脂から構成される。このような水溶性ないし親水性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、アラビヤゴム、アルギン酸ソーダなどの天然樹脂、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェニルアセトアセタール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、メラミン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリル酸ソーダ、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの合成樹脂があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0023】
インク受容層の厚みは、5〜50μmであることが好ましい。5μm以上とすることによりインク吸収性を良好にすることができ、50μm以下とすることによりカールの発生を防止することができる。
【0024】
インク受容層中には、インク吸収性を向上させたりブロッキングを防止したりするために、顔料を添加することが好ましい。顔料としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機顔料の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などからなる樹脂ビーズ、若しくはこれらを原料とする中空樹脂ビーズなどの有機顔料があげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0025】
また、インク受容層中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0026】
なお、インク受容層は二層以上からなるものであってもよい。このような複数のインク受容層からなるインクジェット記録材料によれば、インク吸収速度を向上させることができる。
【0027】
帯電防止層は、主としてオリゴマーと電解質を含むものである。帯電防止層をこのような構成とすることにより、十分な帯電防止性を備え地汚れを防止しつつ、かつ画像の変色や耐光性・インク吸収性の低下を防止することができる。この原因は分からないが、オリゴマーと電解質との間に相互作用が生じていること、従来のポリマータイプの帯電防止剤から形成される帯電防止層と異なり帯電防止層を構成する成分がオリゴマーであること、電解質を使用していること、などが関係していると考えられる。
【0028】
オリゴマーとしては、エステル系、エーテル系、エポキシ系、エチレン系、シリコン系、アクリル系、アミド系などがあげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができるが、エステル系及び/又はエーテル系が好適に使用される。
【0029】
オリゴマーの分子量は、500〜2000であることが好ましい。500以上とすることによりオリゴマーの有害性がなくなり取り扱い性を向上させることができ、2000以下とすることにより、インク吸収性を損なうことがなくなる。
【0030】
電解質としては、塩酸、硫酸などの酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなどの塩基、炭酸リチウム、塩化ナトリウム、炭酸カリウムなどの塩などがあげられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができるが、安定性に優れる塩が好適に使用される。
【0031】
塩とは、酸と塩基の中和反応によって生じる化合物のことをいい、上述した炭酸リチウム、塩化ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩、硫酸マグネシウム、クロム酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩などがあげられるが、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適に使用される。また、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の中でも、帯電防止層中で水和水を有し、湿度の影響を大きく受けることなく帯電を防止できるリチウム塩が好適に使用される。
【0032】
帯電防止層には、上述したオリゴマーおよび電解質に加え、界面活性剤を添加することが好ましい。オリゴマー単独ではインク受容層やインク受容性を有する支持体とのぬれ性に若干欠けるが、界面活性剤を添加することにより、インク受容層やインク受容性を有する支持体とのぬれ性を向上させることができる。また、界面活性剤の中でも、帯電防止層の帯電防止性を低下することがないフッ素系の界面活性剤が特に好適に使用される。
【0033】
また、帯電防止層には、上述した性能を害さない範囲で、ポリマー成分を添加することは何ら差し支えない。
【0034】
帯電防止層の厚みは、0.01〜0.50μmであることが好ましい。0.01μm以上とすることにより、地汚れ防止に有効な帯電防止性を付与することができ、0.50μm以下とすることにより、インク吸収性の低下を防止することができる。
【0035】
以上のようなインク受容層および帯電防止層を形成する方法としては、各層の構成成分を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法等の公知の方法により支持体上に塗布・乾燥させる方法があげられる。
【0036】
本発明のインクジェット記録材料においては、インク受容層の接着性を調節するため、インク受容層と支持体との間にアンカーコート層を設けたり、カールの発生を防止するため、支持体のインク受容層とは反対側の面にバックコート層を設けることは何ら差し支えない。
【0037】
このように、本発明のインクジェット記録材料においては、インク受容層あるいはインク受容性を有する支持体上に帯電防止層を有し、かつ帯電防止層中にオリゴマーと電解質を含むものであることから、十分な帯電防止性を備え地汚れを防止しつつ、画像の変色や耐光性・インク吸収性の低下を招くこともない。
【0038】
これに対し、インク受容層中に界面活性剤などの公知の帯電防止剤を多量に添加したものや、インク受容層上に公知のポリマータイプの帯電防止剤からなる帯電防止層を設けたものは、地汚れを防止することができるものの、インク受容層中に多量に混入した帯電防止剤の影響により画像の変色や耐光性の低下を招いたり、インク受容層上に形成された帯電防止層の影響によりインク吸収性が低下するなどの問題を生じてしまう。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0040】
[実施例1]
厚み100μmの透明ポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、ゴーセノールAH-17(日本合成化学工業社)を溶媒にて溶解したインク受容層塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥してインク受容層を形成した。次いで、インク受容層上に、オリゴマー、電解質、フッ素系界面活性剤を含む帯電防止剤(イオンソルバー9A:ソルベックス社)をアルコールにて希釈し、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように、塗布、乾燥して帯電防止層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0041】
[比較例1]
帯電防止層塗布液をELポリマーMO-1(新中村化学工業社)に変更した他は、実施例1と同様にしてインクジェット記録材料を得た。
【0042】
[比較例2]
厚み100μmの透明ポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなる帯電防止性を有するインク受容層塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥し、帯電防止性を有するインク受容層を形成し、インクジェット記録材料を得た。
【0043】
<インク受容層塗布液>
・バインダー樹脂(有効成分100%) 6部
(ゴーセノールAH-17:日本合成化学工業社)
・帯電防止剤(有効成分30%) 10部
(VERSA TL-125:カネボウ・エヌエスシー社)
・純水 84部
【0044】
[比較例3]
インク受容層塗布液を下記の処方に変更した他は、比較例2と同様にしてインクジェット記録材料を得た。
【0045】
<インク受容層塗布液>
・バインダー樹脂(有効成分100%) 9部
(ゴーセノールAH-17:日本合成化学工業社)
・帯電防止剤(有効成分30%) 3部
(VERSA TL-125:カネボウ・エヌエスシー社)
・純水 88部
【0046】
実施例および比較例で得られたインクジェット記録材料につき、インクジェットプリンタ(DesignJet5000:ヒューレットパッカード社)を用いて画像を出力した後、以下の(1)〜(4)の項目の評価を行った。結果を表1に示す。なお、(2)〜(4)でいう基準サンプルとは、実施例1で得られたインクジェット記録材料の帯電防止層を有さないものをいう。
【0047】
(1)地汚れ
非画像部分に静電気による地汚れのないものを「○」、地汚れがあるものを「×」とした。
(2)発色性
基準サンプルに画像を出力したものと比較した結果、同等の発色が再現されているものを「○」、変色したものを「×」とした。
(3)耐光性
紫外線照射試験機にて、100mW/cm2の強度で実暴6ヶ月相当の紫外線を照射した結果、基準サンプル以上に退色しなかったものを「○」、著しく退色したものを「×」とした。
(4)インク吸収性
基準サンプルに画像を出力したものと比較した結果、同等のインク吸収性能が得られたものを「○」、インク吸収力が低下したものを「×」とした。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1のものは、帯電防止層中に、オリゴマーと電解質を含むものである。従って、地汚れ、発色性、耐光性、インク吸収性を満足するものであった。また、帯電防止層中にフッ素系の界面活性剤を含むことから、インク受容層と帯電防止層とのぬれ性にも優れるものであった。
【0050】
比較例1のものは、インク受容層上に公知のポリマータイプの帯電防止剤からなる帯電防止層を設けたものである。従って、発色性、耐光性、インク吸収性を維持できるものではなかった。
【0051】
比較例2のものは、帯電防止層中に公知の帯電防止剤を多量に含有させたものである。従って、発色性、耐光性を維持できるものではなかった。
【0052】
比較例3のものは、帯電防止層中に公知の帯電防止剤を少量含有させたものである。従って、地汚れを改善できるものではなかった。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明のインクジェット記録材料は、支持体上に、インク受容層、帯電防止層を順次有し、かつ帯電防止層中にオリゴマーと電解質を含むものであることから、十分な帯電防止性を備え地汚れを防止しつつ、画像の変色や耐光性・インク吸収性の低下を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録材料の一実施例を示す断面図
【符号の説明】
1・・・支持体
2・・・インク受容層
3・・・帯電防止層
4・・・インクジェット記録材料
Claims (2)
- 支持体上に、インク受容層、帯電防止層を順次有するインクジェット記録材料であって、前記帯電防止層は、固形分の全部がオリゴマー、界面活性剤および電解質である塗布液から形成されてなり、前記オリゴマーが、エステル系オリゴマー及び/又はエーテル系オリゴマーであり、前記電解質が、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とするインクジェット記録材料。
- インク受容性を有する支持体上に帯電防止層を有するインクジェット記録材料であって、前記帯電防止層は、固形分の全部がオリゴマー、界面活性剤および電解質である塗布液から形成されてなり、前記オリゴマーが、エステル系オリゴマー及び/又はエーテル系オリゴマーであり、前記電解質が、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とするインクジェット記録材料。
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