以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
本プレス機械1は、図1〜図12に示す如く、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定運転可能加圧力範囲(PR0l〜PR0u)の過大側値(PR0u)を超えている場合にホルプ圧破断指令信号およびプレス停止指令信号を生成出力可能で、記憶設定運転可能加圧力範囲の過小側値(PR0l)未満である場合にはプレス停止指令信号を生成出力可能に形成されている。
なお、この実施の形態では、検出クランク角度θiが選択下死点位置領域を除く他の領域内に属する場合において算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRu)を超える場合に次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス数(Ns)から設定数(Nde)分だけ減少可能で、記憶設定閾値(PRl)未満である場合には次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス(Ns)数から設定数(Nin)分だけ増大可能であるとともに、検出クランク角度θiが選択下死点位置領域内に属する場合においては算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRu)を超える場合に次回用スライド位置PT(h)を選択スライド位置から設定調整量(Pu)分だけ上昇可能で、記憶設定閾値(PRl)未満である場合には次回用スライド位置を選択スライド位置から設定調整量(Pd)分だけ下降可能に形成し、算出した加圧力が設定閾値を逸脱した場合にスライド加圧力を所定の加圧力に迅速かつ高精度で調整できるように形成してある。
図1において、プレス機械10の駆動機構はクランク軸12を含むクランク機構11から構成されている。このクランク軸12は、軸受14,14に回転自在に支持されかつ直接連結されたAC(交流)サーボモータからなるスライド駆動用モータ30で回転駆動される。すなわち、選択周期毎に図2に示すモーション指令部53からスライドモーションに従って出力される選択位置指令パルス(MPTs)の数に応じてスライド駆動用モータ30を回転(速度)制御させつつスライド17を昇降させることができる。このスライド駆動用モータ30はDC(直流)サーボモータや永久磁石もブラシも有しないレラクタンスモータから形成してもよい。
なお、クランク軸12とモータ30とは、ギヤ(減速機)を介して間接的に連結させてもよい。ギヤ(減速機)を介せば、図1に示す直結の場合に比較して一段と高い加圧力を得ることができる。クランク軸12の角度(θk)とモータ30の回転角度(θm)と減速比γ(例えば、1/5)との関係は、θk=γ・θmになる。以下では、直結であるからクランク角度(=モータ回転角度)を単に“θ”として表わした。
図1のスライド17は、フレーム本体(図示省略)に上下方向に摺動自在に装着され、ウエイトバランス装置18に係合されている。したがって、クランク軸12を回転駆動すれば、コンロッド16を介してウエイトバランスされたスライド17を昇降駆動することができる。金型20は、スライド17側の上型21とボルスタ19側の下型22とからなる。15は、機械式ブレーキである。
プレス機械1のクランク軸12(コンロッド16)とスライド17とは、図3に示すサスペンションポイント構造型のスライド位置調整機構120を介して連結されている。このスライド位置調整機構120は、クランク軸12(コンロッド16)とスライド17との上下方向相対距離を拡縮することでスライド位置PT(h)を上下方向に調整可能で、大別してボール式とリストピン式とが考えられる。この実施形態では小型、低コスト、ガタが少ないなどの長所を有するからボール式を採用している。なお、スライド位置調整機構120は、プレス運転前のダイハイト調整にも利用される。
図3において、スライド位置調整機構120は、ロック解除状態においてクランク軸12とスライド17との上下方向相対距離(スライド位置)を拡縮駆動用信号により拡縮調整可能かつロック状態において拡縮駆動用信号による拡縮調整終了後の上下方向相対距離をそのまま保持可能に形成されている。
詳しくは、コンロッド16(ねじ16a)と調整ねじ軸121(ねじ121a)とは螺合(係合)され、この調整ねじ軸121の下端部にはボール122が固着されている。一方、コラム等に上下移動可能に摺動案内されたスライド17にはボールカップ125が取付けられている。17aはスライド17と一体的な円筒体でウォームホイール120WHを収容させるものであり、17bはボール122の上下動をスライド17に伝達するスライド構成要素である。
なお、過負荷防止装置(126等)については、後記する設定運転可能加圧力範囲比較方式を説明する際に詳細説明する。
コンロッド16とスライド17とは、ボール122とボールカップ125とが形成する球面軸受構造つまりポイント構造を介して連結されているので、コンロッド16の揺動運動によってスライド17を上下方向に直線移動させることができる。そして、スライド17の円筒体17aにウォームねじ120WSで回転される上記ウォームホイール120WHを装着し、一方、ボール122には径方向に延びるピン124を取付け、このピン124をウォームホイール120WHの縦溝120aに差込んで両者122,120WHを同期回転可能に連結されている。
したがって、ロック解除状態においてスライド位置調整用モータ120Mでウォームねじ120WSを回転させれば、ウォームホイール120WHが回転する。この回転はピン124を介してボール122つまり調整ねじ軸121に伝達される。すると、コンロッド16(雌ねじ16a)と調整ねじ軸121(雄ねじ121a)とが相対回転するので、クランク軸12に連結されたコンロッド16に対してスライド17を上下方向に移動させることができる。つまり、スライド位置PT(図5に示すh)を調整することができる。
その後、クランク軸12を回転すれば、コンロッド16がボール122を中心に揺動運動され、これによりスライド17を上下方向にストロークさせて調整後のスライド位置で所定製品をプレス成形することができる。
なお、このスライド位置調整機構120には、図3および図10等では図示省略したが状態切替装置が一体的に組込まれている。つまり、常態(ロック解除信号の出力がない場合)ではウォームホイール120WHがバネ力で回動不能に拘束されたロック状態にあり、コンピュータ80からロック解除信号が出力された場合に状態切替装置が働き(油圧供給)、供給された油圧によりバネ力に抗してスライド位置調整機構120を強制してロック解除状態に切替えることができる。
図1,図2,図6において、ACサーボモータ(30)の各相モータ駆動電流Iu,Iv,Iwに対応する各相電流信号Ui,Vi,Wiは、電流検出器73によって検出される。また、モータ30には、エンコーダ35が連結されている。
このエンコーダ35は、原理的には多数の光学的スリットと光学式検出器とを有し、モータ30(クランク軸12)の回転角度(クランク角度)θを出力するが、この実施形態では、回転角度θ(パルス信号)をスライド17の上下方向位置PT(パルス信号)に変換して出力する信号変換器(図示省略)を含むものとされている。
なお、エンコーダ125の構造等はエンコーダ35の場合と同様である。
図2において、設定選択指令駆動制御部は、設定選択指令部50と位置速度制御部60(160)とモータ駆動部70(170)とから形成されている。また、これら(50、60,70、160,170等)と接続されかつ具体的プレス運転のために必要な図10に示すプレス全体運転駆動制御部や監視部等を構成するコンピュータ80が設けられている。なお、スライド位置調整機構120用の位置速度制御部160およびモータ駆動部170は、スライド駆動用(60,70)と異なる構造としてもよい。
なお、図2では説明便宜のために設定選択指令部50を構成する符号が50番台のモーション指令部53,加圧力パターン部55,加圧力変換部57,加圧力比較部58およびスライド位置指令部59をハードウエア的なブロックとして表わしたが、これらは図10のコンピュータ80つまり当該各制御プログラムを格納させたROM82およびそれを実行可能なCPU81から構成され、定数設定部56も定数(例えば、クランク半径L1,コンロッド長さL2等)を入力する操作パネル54と入力された定数をFRAM83Mに記憶させる制御プログラムを格納させたROM82およびそれを実行可能なCPU81から構成されている。
もとより、これら[モーション指令部53,加圧力パターン部55,加圧力変換部57,加圧力比較部58およびスライド位置指令部59]を、ロジック回路,演算器,シーケンサ等から構成してもよい。例えば、加圧力変換部57をサインROM,コサインROMおよび積和演算器等から構成すれば、詳細後記の(数1),(数2),(数3)を高速演算することができるとともに、プレス全体運転駆動制御部や監視部を構成するコンピュータ80のデータ処理負担を軽減することができる。また、定数設定部56や後記の速度設定器51およびモーションパターン選択器52も例えばメモリ機能付きスイッチボックス等から構成することができる。
図10において、コンピュータ80は、CPU(時計機能を有する。)81,ROM82,RAM83,メモリ(FRAM…電磁誘導体メモリ)83M,操作部(PNL)84,表示部(IND)85,インターフェイス(I/F)86,87,88,89を含み、プレス機械全体の駆動制御、監視等を司る。
インターフェイス(I/F)86にはモータ30用の位置速度制御部60(モータ駆動部70)が接続され、エンコーダ35はインターフェイス(I/F)87に接続されている。
インターフェイス(I/F)88には、スライド位置調整機構120(モータ120M)用の位置速度制御部160(モータ駆動部170)が接続され、エンコーダ125はインターフェイス(I/F)89に接続されている。また、このスライド位置調整機構120をロック状態およびロック解除状態のいずれかに選択的に切替える機能を有する状態切替装置(図示省略)も接続されている。
以下では、各種の固定情報,制御プログラム,演算(算出)式等は、ROM82に固定的またはフラッシュメモリ(FRAM83M)に書換可能に格納されているものとして説明するが、これらは記憶保持可能かつ書替え可能な他のメモリ[例えば、ハードディスク装置(HDD)等]に格納させておくように形成してもよい。
図2に戻り、設定選択指令部50(80)としては、速度設定器51(84、81,82),モーションパターン選択器52(81,82)およびモーション指令部53(81,82)を含み、位置速度制御部60に設定選択モーション指令信号すなわち位置指令パルスMPTsを出力可能に形成されている。なお、スライド調整機構に係る位置速度制御部160に設定選択スライド位置指令信号すなわち位置指令パルスSPTsを出力可能に形成されている。
操作部84からなる速度設定器51(84)は、モータ30の回転速度(例えば、100RPM)を“手動”で設定することができるが、“自動”を選択した場合には、予め選択設定されていた最高回転速度(例えば、120RPM…120spm)が選択されたものとして取扱われる。この速度設定器51は、SPM設定器,生産速度設定器等から形成してもよい。
操作部84からなるモーションパターン選択器52としては、ROM82に予め記憶されかつ表示部85に表示させた複数のスライドモーションパターン(クランク角度θに対応する運転開始からの経過時間tとスライド位置PTとを対応させた関係情報…t−PTカーブ)の中から、キー操作により選択された1つの記憶関係情報(選択スライドモーション)をモーション指令部53(CPU81,ROM82)に出力する。
選択されたスライドモーション(t−PTカーブ)は、速度設定器51(84)を用いて設定されたモータ回転速度[乃至スライド速度(いわゆるスライドストローク数SPM)]とともにモーション指令部53(CPU81,ROM82)に出力される。
ここに、スライドモーション駆動制御手段としてのモーション指令部53(81,82)は、位置指令パルスの払出し方式構造で、選択されたスライドモーション(t−PTカーブ)に則り設定選択モーション指令信号つまり位置指令パルス(群)MPTsを所定のタイミング(例えば、5mSや1mS)で位置速度制御部60(70)に出力する。
モータ30がクランク軸12に直結され、速度設定器51を用いて設定されたモータ回転速度が例えば120RPMで、エンコーダ35から1回転(360度)当りに出力されるパルス数が100万パルスで、払出しサイクルタイムが5mSである場合は、1サイクル(5mS)毎に出力されるパルス数は、10000パルス[=(1000000×120)/(60×0.005)]となる。
なお、設定モータ回転速度や負荷の大きさによっては、急激な速度(位置)変化を防止する策として、起動直後に加速区間(出力パルス数を漸次増加)を、プレス加工領域への突入時やプレス停止直前に減速区間(出力パルス数を漸次減少)を設けることが好ましい。
次に、スライド位置駆動制御手段としてのスライド位置指令部59(CPU81,ROM82)は、モーション指令部53(CPU81,ROM82)の場合と同様に位置指令パルスの払出し方式構造で、選択されたスライド位置に則り設定スライド位置信号つまり位置指令パルス(群)SPTsを所定のタイミング(例えば、5mSや1mS)で位置速度制御部160(170)に出力する。
比較判別手段としての加圧力比較部58(81,82)は、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRl〜PRu)を超える(未満である)か否かを比較判別する。
算出スライド加圧力PRikは、加圧力算出手段としての加圧力変換部57(81,82)で算出される。すなわち、読み込まれた記憶設定閾値(PRl〜PRu),エンコーダ35で検出されたクランク軸回転角度θ,相モータ電流検出器73を用いて検出されたモータ駆動電流I[(|Iu|+|Iv|+|Iw|)/3]や定数(L1,L2等)を利用してスライド加圧力PRikを算出する。
詳しくは、クランク角度θ(θi)とスライド加圧力PR(PRik…Fs)とトルクTとの演算式を、図4を参照して説明する。クランク軸12のトルクをT,クランク半径をL1,コンロッド16の長さをL2,クランク回転方向の力をF1,コンロッド軸方向の力をF2,スライド17の加圧力をFs,F1とFsとのなす角をα,F1とF2とのなす角をβとすると、
が成立するので、設定加圧力Fs(PRin)とクランク角度θとから当該時のトルクTを求めるには、
を演算すればよい。
次に、モータの駆動電流をIとし、モータのトルク定数をKtとすると、T=Kt・Iであるから、
が成立する。したがって、検出クランク角度θ,モータ駆動部70からの検出モータ駆動電流Iを用いてスライド加圧力PRik(Fs)を迅速かつ正確に算出(検出)することができる。すなわち、構造複雑化およびコスト高化を招く格別な圧力検出装置(例えば、複数の歪ゲージ)を設けなくても、スライド加圧力PRikを算出することができるわけである。
なお、定数(クランク半径をL1,コンロッド16の長さをL2等)は、定数設定部56(84、81,82)で設定入力かつ例えばメモリ(83M)に記憶保持される。電流Iはモータ駆動部70から読取ることができる。
ここに、設定閾値(PRl〜PRu)はクランク角度θと対応させた加圧力パターンデータとして加圧力パターンデータテーブルに記憶されており、データ読込制御手段をも兼ねる加圧力パターン部55(81,82)によって検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRl〜PRu)として読み込まれる。
なお、クランク角度θは1度以下(例えば、0.5度や0.01度)毎に細分化してもよい。クランク角度θのサンプリング(検出タイミング)はこの細分化に比例的に高速化される。また、閾値は例えばPRlu±εとして設定してもよい。
この実施形態では、FRAM83M内に形成された加圧力パターンデータテーブルには、クランク角度θと設定閾値(PRl〜PRu)とを対応させた加圧力パターンデータの他に、クランク角度θに対応する設定加圧力PRs(Fs),設定増減数(Nde,Nin)および設定調整量(Pd,Pu)も記憶可能に形成されている。
しかも、これら記憶データ(内容)はリスト形式で表示部85に表示出力可能である。また、操作パネル84を用いて各値を設定変更可能でかつ書換制御手段(CPU81,ROM82)によって変更後値に書換可能である。実機(10)に応じた的確な運用ができ、取扱いも簡単である。
例えば、選択された下死点位置領域(この実施形態では、θi=179度または/および179.9度…下死点近傍)での各設定加圧力はPRs(80ton)で設定閾値(許容誤差)はPRl(72ton)〜PRu(88ton)である。なお、179.9度は、下死点位置(180度)の近似値処理[θ=180度では、(数1)〜(数3)が成立しなくなるので。]である。
選択下死点位置領域を除く他の領域(θi=150,151,…,178度)の設定閾値は、PRl(8,8,…,72ton)〜PRu(12,13,…,88ton)である。ここで、“選択下死点位置領域を除く他の領域”は、実質的には上死点側設定位置(例えば、上死点位置)から選択下死点位置領域に至る以前の領域(下降領域…この実施形態ではθi=150,151,…,178度)をいう。上昇領域(181,182,…,359度)では、加圧力調整という観念はなく専ら生産性向上のためにスライド上昇速度をモータ(30)の最高回転速度にするのが好ましいからである。
各設定閾値(PRl,PRu)は、この実施形態では、クランク角度θi(例えば、175度)に対応するスライド加圧力(80ton→100%)を入力するだけで、100±10%として閾値(72ton,88ton)を自動的に設定可能に形成してある。取扱い簡易化のためである。なお、クランク角度θ(例えば、150度等)によっては100±20%等とされる。
次回設定数分減少信号生成出力手段(CPU81,ROM82)は、領域判別手段(CPU81,ROM82)によって検出クランク角度θi(例えば、175度)が選択下死点位置領域を除く他の領域(150,151,…,178度)内に属すると判別された場合において、算出スライド加圧力PRik(例えば、90ton)が検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値[PRu(88ton)]を超えると判別された場合に、次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス数(Ns)から設定数[Nde…例えば、(|PRik−PRs|/PRs)・Ns]分だけ減少させた補正後の次回用位置指令パルス(MPTs)数を生成出力する。この数(Ns−Nde)は、次回のストローク中で当該クランク角度θi(=175度)までRAM83のワークエリアに一時記憶される。
すなわち、次回用位置指令パルス(MPTs)数は、予め選択された位置指令パルス数(Ns)から予め設定されたパルス数[Nde=(|PRik−PRs|/PRs)・Ns=(|90−80|/80)・Ns=(1/8)・Ns)]分だけ減少させたパルス数[=(1.0−1/8)・Ns=(7/8)・Ns]である。
次回設定数分増大信号生成出力手段(CPU81,ROM82)は、領域判別手段(CPU81,ROM82)によって検出クランク角度θi(例えば、175度)が選択下死点位置領域を除く他の領域(150,151,…,178度)内に属すると判別された場合において、算出スライド加圧力PRik(例えば、70ton)が検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値[PRu(72ton)]未満であると判別された場合に次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス数(Ns)から設定数[Nin…例えば、(|Eik|/PRs)・Ns]分だけ増大させた補正後の次回用位置指令パルス(MPTs)数を生成出力する。この数(Ns+Nin)は、次回のストローク中で当該クランク角度θi(=175度)までFRAM83Mに一時記憶される。
すなわち、次回用位置指令パルス(MPTs)数は、予め選択された位置指令パルス数(Ns)から予め設定されたパルス数[Nin=(|PRik−PRs|/PRs)・Ns=(|70−80|/80)・Ns=0.1・Ns)]分だけ増大させたパルス数[(1.1)・Ns]である。なお、増減させたパルス数はその累計を求めておき、スライド上死点位置停止する際に当該停止位置にて1サイクルの払出しパルス数が一定となるような動作をモーション指令部53は行なう。
かくして、毎回ストロークにおいて、選択されたスライドモーション(パターン)に基づく選択クランク角度θi毎の当該各選択位置指令パルス数(Ns)から各前回で求めた増減分(NinまたはNde)だけ増減した今回次回用位置指令パルス(MPTs)数でスライド下降速度を加減速調整させられるので、選択クランク角度θi毎の加圧力PRi(スライド位置PTi)のバラツキ(誤差)は次第に収斂され選択スライドモーション(パターン)に基づくスライド加圧力(位置)を維持した運転ができる。したがって、例えば所定速度で高品質の深絞りを行なえるとともに、来るべき下死点位置を所定位置にするための前段階的調整効果も発揮することができるわけである。
次に、スライド位置上昇調整信号生成出力手段(81,82)は、領域判別手段(81,82)によって検出クランク角度θiが選択下死点位置領域(θi=179度または179.9度)内に属すると判別された場合において、算出スライド加圧力PRik(例えば、90ton)が検出クランク角度θi(例えば、179.9度)に対応する記憶設定閾値(PRu=88)を超えると判別された場合にスライド位置調整機構120に関与して次回用スライド位置[次ストロークの下死点位置(179.9度)]PTを選択スライド位置(SPTs)から設定調整量(Pu…例えば、最小単位可動量)分だけ上昇させるためのスライド位置上昇調整信号を生成出力する。
スライド位置下降調整信号生成出力手段(81,82)は、算出スライド加圧力PRik(例えば、70Ton)が検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRl=72)未満であると判別された場合には、スライド位置調整機構120に関与して次回用スライド位置[次ストロークの下死点位置(179.9度)]PTを選択スライド位置(SPTs)から設定調整量(Pd…例えば、最小単位可動量)分だけ下降させるためのスライド位置下降調整信号を生成出力する。
すなわち、下死点位置領域(下死点近傍)内では位置指令パルスMPTsの増減調整(加減速調整)の場合よりも直接的なスライド位置(加圧力)調整を採る。つまり、選択スライドモーション(パターン)で決まる選択下死点位置PT(h)を直接補正(調整)するわけである。
因みに、下死点位置領域(θi=179または179.9度)内でのスライド下死点位置(高さh179,h179.9)は図5に示すスライド位置PT(高さh)で、これらは
から算出される。なお、この算出スライド位置(h)や(数1)〜(数3)により算出された加圧力PRikは、表示部85にデジタル表示される。
上死点位置一時停止信号生成出力手段(CPU81,ROM82)は、スライド位置下降調整信号またはスライド位置上昇調整信号が生成出力された場合に上死点位置一時停止信号を生成出力する。この上死点位置一時停止信号でスライド17を一時停止させた後にスライド位置調整機構120のロック解除信号が発せられる。
かくして、スライド位置を選択スライド位置(SPts)から設定調整量(PuまたはPd)分だけ上昇または下降するものと決定された場合には、今回スライドストロークの終わりである上死点側設定点位置にスライド17を停止させ、この停止状態においてスライド位置調整機構120に関与して次回用スライド位置を設定調整量(Pu,Pd)だけ昇降させる。したがって、停止中に作動させればよいので、スライド位置調整機構120自体および昇降制御の簡素化を図ることができる。
次に、位置速度制御部60(160)は、図6に示す位置比較器61,位置制御部62,速度比較器63,速度制御部64を含み、電流制御部71に電流指令信号(トルク信号相当)Siを出力可能に形成されている。なお、速度検出器36は、図示上の便宜性から位置速度制御部60に含めた形で表現した。
まず、位置比較器61は、モーション指令部53(スライド位置指令部59)からの目標値信号である位置指令パルス置信号MPTs(SPTs)とエンコーダ35(125)で検出された実際のスライド位置信号FPT(フィードバック信号)とを比較して、位置偏差信号ΔPTを生成出力する。
位置制御部62は、入力された位置偏差信号ΔPTを累積し、それに位置ループゲインを乗じ、速度信号Spを生成出力する。速度比較器63は、この速度信号Spと速度検出器36からの速度信号(速度フィードバック信号)FSとを比較して、速度偏差信号ΔSを生成出力する。
速度制御部64は、入力された速度偏差信号ΔSに速度ループゲインを乗じ、電流指令信号Siを電流制御部71に生成出力する。この電流指令信号Siは実質的にはトルク信号である。
モータ駆動部70(170)は、電流制御部71とPWM制御部(ドライバー部)72とから構成されている。この電流制御部71は、図7に示す如く、各相電流制御部71U,71V,71Wからなる。例えばU相電流制御部71Uは、電流指令信号(トルク信号相当)Siと相信号生成部40で生成されたU相信号Upとを乗算してU相目標電流信号Usiを生成し、引続きU相目標電流信号Usiと実際のU相電流信号Uiとを比較して電流偏差信号(U相電流偏差信号)Siuを生成出力する。他のV,W相電流制御部71V,71Wでも、V,W相電流偏差信号Siv,Siwが生成出力される。なお、相モータ電流検出器73は、各相電流(値)信号Ui,Vi,Wiを検出して電流制御部71へフィードバックする。
PWM制御部(ドライバー部)72は、図9(A),(B)に示すパルス幅変調を行なう回路(図示省略)と図8(A)に示すアイソレーション回路72Aと図8(B)に示すドライバー72Bとからなる。
すなわち、電流制御部71から出力される各相の電流偏差信号Siu,Siv,SiwからPWM信号Spwmu,Spwmv,Spwmwが生成される。PWM信号Spwmの図9(B)に示すパルス信号幅(Wp)は、点弧信号(+U点弧信号あるいは−U点弧信号)の時間幅Wpで決まるが、高負荷(例えばSiuが大電流)の場合は長く、低負荷の場合は短い。
ドライバー72Bは、図8(B)に示す各相用の各1対のトランジスタ,ダイオードを含むインバータ回路からなり、各PWM信号Spwm(例えば、+U,−U)でスイッチング(ON/OFF)制御され、各相モータ駆動電流Iu,Iv,Iwを出力することができる。
以上までの構成によれば、クランク軸12が設定点位置(上死点位置…θi=0度)に停止されているプレス運転停止状態において、プレス総合運転駆動制御部(80)の駆動制御電源を投入する。また、スライド位置調整機構120をダイハイト調整機構として利用してダイハイト(設定スライド下死点位置)を調整しておく。
ここで、プレス運転指令を発すると、図2のモーション指令部53(81,82)から選択されたスライドモーション(t−PTカーブ)に基づき設定スライド位置信号(位置指令パルスMPTs)が出力(払出し)される。位置速度制御系を形成する位置速度制御部60および電流制御部71が働き、モータ30は各相モータ駆動電流Iu,Iv,Iwにより正(例えば、左回り)回転される。スライド17は、図1に示すクランク軸12,コンロッド16およびスライド位置調整機構120を介して下降する。
すなわち、選択周期毎にスライドモーションに従って選択位置指令パルスMPTsが出力され、この選択位置指令パルス数に応じてスライド駆動用モータ30を回転制御させつつスライドを移動(昇降)させる。この期間中にクランク角度θiが検出(図12)されかつ演算式[(数1),(数2),(数3)]を用いて検出クランク角度θiに対応するスライド加圧力PRikが算出される。
そして、検出クランク角度θi(例えば、177度)が選択下死点位置領域を除く他の領域内に属する場合においては、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値PRuを超えると判別された場合に次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス数(Ns)から設定数(Nde)分だけ減少させる信号が生成出力される。また、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値(PRl)未満であると判別された場合には次回用位置指令パルス(MPTs)数を選択位置指令パルス数(Ns)から設定数(Nin)分だけ増大させる信号が生成出力される。
次回のスライドストロークでかつ他の領域(当該クランク角度177度)内では、選択位置指令パルス数が前回に決められた設定数(NdeまたはSin)分だけ増減されて出力される。設定数分の増大(減少)はスライド下降速度を加速(減速)することでスライド加圧力PRiを高める(低める)ことができる。つまり、スライド加圧力PRiを選択スライドモーション上で決められた所定加圧力に補正(維持)することができる。
なお、算出スライド加圧力PRikが設定閾値(PRl〜PRu)内である場合には、次回用位置指令パルス(MPTs)数は選択位置指令パルス数(Ns)のままである。
一方において、検出クランク角度θiが選択下死点位置領域(例えば、179度)内に属する場合は、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定閾値PRuを超えた場合にスライド位置調整機構120(120M,120Ws)に関与して次回用スライド位置(h)を選択スライド位置から設定調整量(Pu)分だけ上昇させるスライド位置上昇調整信号が生成出力される。
算出スライド加圧力PRikが記憶設定閾値(PRl)未満であると判別された場合には、次回用スライド位置(h)を選択スライド位置から設定調整量(Pd)分だけ下降させるスライド位置下降調整信号が生成出力される。すなわち、スライド位置(hi)を毎回補正することでスライド下死点位置近傍でのプレス加圧力PRiを所定値に保持することができる。
もとより、算出スライド加圧力PRikが閾値(PRl〜PRu)内である場合には選択スライド位置(h)つまりプレス加圧力はそのままである。
しかして、プレス運転中のダイハイトの変化や材料厚み変化があったとしてもスライドの加圧力を迅速かつ高精度に調整することができる。したがって、高品質製品を高能率で生産できる。
ここにおいて、以上までの加圧力調整を行なう設定閾値比較方式により品質向上を図る点に加えて、以下に本願発明の特長とする金型保護の完璧化のための設定運転可能加圧力範囲比較方式について、図11,図12を参照しつつ詳細に説明する。
すなわち、設定運転可能加圧力範囲比較方式により、算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定運転可能加圧力範囲(PR0l〜PR0u)の過大側値(PR0u)を超えている場合にホルプ圧破断指令信号およびプレス停止指令信号を生成出力可能で、記憶設定運転可能加圧力範囲の過小側値(PR0l)未満である場合にはプレス停止指令信号を生成出力可能に形成されている。
ここに、過負荷防止装置(126等)は、図3に示す如く、クランク軸12(詳しくは、コンロッド16)とスライド17との間に設けられ、油圧室126内のホルプ圧が確立(室内油圧力が所定値に保持)された状態でクランク軸12とスライド17との上下方向相対位置が固定化されて加圧力伝達可能でかつホルプ圧の破断状態(室内圧力が解放された状態)でクランク軸12とスライド17との上下方向相対位置が自由化されて過負荷防止可能に構成されている。
図11において、設定運転可能加圧力範囲(PR0l〜PR0u)は、クランク角度θと対応させた加圧力パターンデータとして加圧力パターンデータテーブル83MT2に記憶されており、検出クランク角度θiとともに読み込まれる(図12のST30)。モータ電流IはST31で検出される。
なお、加圧力パターンデータテーブル83MT2には、クランク角度θiと設定運転可能加圧力範囲(PR0l〜PR0u)とを対応させた加圧力パターンデータの他、この実施形態では設定加圧力PRs(Fs)および設定閾値(PRl,PRu)も記憶可能に形成されている。
しかも、これら記憶内容はリスト形式で表示部85に表示出力可能である。また、操作パネル84を用いて設定変更可能でかつ書換制御手段(CPU81,ROM82)によって書換可能である。実機(10)に適応させた的確な運用ができ、取扱いも簡単である。
ここに、運転可能加圧力範囲比較判別手段(CPU81,ROM82)[図2の加圧力比較部58]は、加圧力算出手段としての加圧力変換部57(81,82)によって図12のST31で検出されたデータ(電流I)等を利用して算出(ST32)されたスライド加圧力PRikがST30で読み込まれた検出クランク角度θiに対応する運転可能加圧力範囲の過大側値(PR0u)[過小側値(PR0l)]を超える(未満である)か否かを比較判別(ST33,ST36)する。
運転可能加圧力範囲比較判別手段(CPU81,ROM82)[加圧力比較部58]によって、算出スライド加圧力PRik(例えば、125ton)が検出クランク角度θi(177度)に対応する運転可能加圧力範囲の過大側値(PR0u…120ton)を超えていると判別(ST33でYES)された場合には、ホルプ圧破断指令信号生成出力手段(CPU81,ROM82)がホルプ圧破断指令信号を生成出力(ST35)する。これにより、油圧室126内から油圧が開放され(抜かれ)てホルプ圧は破断される。また、プレス停止指令信号生成出力手段(CPU81,ROM82)が、プレス停止プレス停止指令信号を生成出力(ST38)する。スライドモーション駆動制御手段(81,82)は回路(60,70)に停止信号を入力してプレスを強制的に停止させる。したがって、金型20保護を達成できる。
このプレス停止指令信号生成出力手段(CPU81,ROM82)は、運転可能加圧力範囲比較判別手段(81,82)[加圧力比較部58]によって、算出スライド加圧力PRik(例えば、35ton)が検出クランク角度θi(177度)に対応する運転可能加圧力範囲の過小側値(PR0l…40ton)未満であると判別(ST36でYES)された場合にも、プレス停止指令信号を生成出力(ST38)する。かくして、不良品の生産を最小限に抑制できるとともに折れたパンチの交換作業等を迅速に行なえる。
また、表示制御手段(81,82)は、加圧範囲比較判別手段(81,82)によって算出スライド加圧力PRikが検出クランク角度θiに対応する記憶設定運転可能加圧力範囲の過大側値(PR0u)を超えていると判別(ST33でYES)された場合に過負荷である旨(例えば、“過負荷です”)を表示出力(ST34)しかつ過小側値(PR0l)未満であると判別(ST36でYES)された場合には軽負荷である旨(例えば、“パンチ折れです”)を表示部85に表示出力(ST37)することができる。オペレータの負担を軽減しつつ取扱いが一段と容易になる。
しかして、この実施形態によれば、過負荷および軽負荷のいずれをも検出してプレスを強制停止させることができるから金型保護の完璧化を図れかつプレスを安全停止させることができるとともに、軽負荷(例えば、パンチ折れ等)を自動的に検出可能であるからオペレータの精神的・肉体的負担を軽減でき、パンチ交換等の迅速化を図れかつ生産性低下を防止できる。
(第2の実施形態)
この実施形態は、基本的構成・機能が図13に示すスライド位置調整機構150の構成を除き第1の実施形態の場合(図1〜図12)と同様とされている。
図13において、スライド位置調整機構150は、ダイハイト調整ねじ機構(ダイハイト調整機構)130と一体的に形成され、第1の実施形態等の場合(120)と異なりロック解除状態とロック状態とに切替えなくてもクランク軸12とスライド17との上下方向相対距離を拡縮駆動用信号により拡縮調整可能かつ拡縮駆動用信号による拡縮調整終了後の上下方向相対距離をそのまま保持可能に形成されている。
つまり、スライド上下動調整範囲が比較的に広いダイハイト調整ねじ機構130はロックナット131によって作動不能に拘束されるが、スライド上下動調整範囲が比較的に狭いスライド位置調整機構150ではプレス運転中か停止中かに拘わらずかつロック解除状態・ロック状態である観念無くしてスライド17との間に設けられた伸縮駆動部材(中空円筒部材151)を弾性伸縮させつつスライド加圧力を調整可能に構成されている。
具体的には、ダイハイト調整ねじ機構130は、図13に示す如く、コンロッド16の下端に設けられた球状体16BLと係合する球面軸受132を備えウォームホイール139と連結された調整ねじ軸131と,調整ねじ軸131をロックするロックナット133と,ウォームホイール139と螺合するウォームねじ軸138と,このねじ軸138を回転駆動するモータ(図示省略)と,上部が調整ねじ軸131にねじ131S,151Sを介して螺合しかつその下部がスライド17にシリンダ装置140を介して固定された中空円筒部材151とから構成されている。なお、図13中、135はケース,134はガイド部材である。
したがって、シリンダ装置140を形成するシリンダ室142内の圧油を解放し,ボルト部材152による締付力を消失させることによりロックナット133を締めウォームねじ軸138を回動させると、ウォームホイール139および当該ホイール139と調整ねじ軸131とにわたり挿入されているピン部材134を介して調整ねじ軸131(雄ねじ131S)がスライド17に固定された中空円筒部材151(雌ねじ151S)に対して回動するので、スライド17を上下方向に移動させてダイハイト(下死点位置の上下方向位置)調整を行なうことができる。
次に、スライド位置調整機構150を構成する伸縮駆動部材(151)は、スライド17とダイハイト調整ねじ機構130との間に配設され軸線方向に伸縮可能に形成されている。伸縮駆動部材は、この実施形態では、ダイハイト調整ねじ機構130の一部を構成する中空円筒部材151から形成されている。また、伸縮力付与手段は、伸縮駆動部材(中空円筒部材151)に伸縮力を付与して当該部材(151)を弾性伸縮させる手段で、ボルト部材152,シリンダ装置140および油圧供給手段(油圧供給口144,図示しない切替制御弁および油圧源等)から形成されている。
このシリンダ装置140は、スライド17に固着されたシリンダ141と,シリンダ室142内に上下動可能に収容されたピストン143とから構成されている。シリンダ141には、シリンダ室142内の上部端面とピストン143との間に油圧を供給するための油圧供給口144が形成されている。
また、ボルト部材152は、中空円筒部材151に上下動自在に埋設され、その下端はピストン143に固着され、かつ他端は中空円筒部材151にロックナット133を介して一体的に連結されている。
また、油圧供給手段は、シリンダ装置140のシリンダ室142内に所定圧力値(例えば、最小圧力Pr0〜最大圧力Pr2)の油圧を供給可能に形成されており、図示しない油圧源と,この油圧源とシリンダ141の油圧供給口144とを接続する配管中に介装され拡縮駆動用信号に基づいて(例えば、拡縮駆動用信号に比例して)シリンダ室142内の内圧を制御する電気油圧式サーボ機構(図示しない電気油圧式サーボバルブ,圧力センサ,サーボ増幅器等)とから構成されている。
ここにおいて、シリンダ室142内に油圧を供給すると、ボルト部材152はその他端を中空円筒部材151に固定された状態で引っ張られて伸長し、中空円筒部材151を押し縮める。これにより、スライド17は、中空円筒部材151の収縮分だけ上方へ移動する。
シリンダ装置140内の内圧Priと中空円筒部材151の伸縮量δとの関係は、次のように規定されている。すなわち、シリンダ室142内の内圧Priが最小圧力値Pr0から最大圧力値Pr2まで変動すると中空円筒部材151は最大変形量(b−a=δr)だけ変形する。したがって、シリンダ室142内に予めPr0とPr2との中間値(略中央値)を初期内圧Pr1として掛けておき、その状態より内圧を増大すると、中空円筒部材151は当該内圧増加分だけ収縮する。また、逆に内圧Priを初期圧力Pr1より減少させると、中空円筒部材151は当該内圧減少分だけ伸長する。
なお、任意の内圧Pri(Pr0≦Pri≦Pr2)に対する中空円筒部材151の伸縮量δは、当該内圧Priの値に基づき一義的に算出される。この実施形態では、上記した初期内圧Pr1は、中空円筒部材151の最大伸長量および最大収縮量が等しくなるように選定されている。これにより、下死点位置の上方向,下方向の変動によりクランク軸12とスライド17との上下方向相対距離が変化しても、所定距離(つまり、加圧力)に的確に保持できる。
しかして、この実施形態によれば、第1の実施形態の場合と同様な作用効果を奏することができることに加え、さらにスライド位置調整機構150が中空円筒部材151と,伸縮力付与手段(ボルト部材152,シリンダ装置140,油圧供給手段)とを含み、ロック解除という観念・具体的作業を必要としないで中空円筒部材151の伸縮量を調整することで加圧力(下死点位置)変化を自動的に補正調整可能に構成されているから、プレス運転中における加圧力(下死点位置)変化を迅速かつ定量的に高精度調整することができる。第1〜第3の実施形態の場合に比較して生産性を一段と向上させつつ所定製品精度を安定して一定に保持できる。
また、中空円筒部材151は、δr(=b−a)の範囲内で弾性伸縮させて加圧力調整する構成としたので、スライド17が際限なく下降してしまうようなことはないから、極めて安全な加圧力調整を行なえる。
なお、中空円筒部材151を伸縮させると、当該中空円筒部材151の雌ねじ151Sと調整ねじ軸131の雄ねじ131Sとは互いに軸線方向に圧力を及ぼしあい当該調整ねじ軸131はロックされる。したがって、本スライド位置調整機構(下死点位置補正装置)は、調整ねじ軸131のロック手段を兼ねることができる。
以上とは異なる態様つまり伸縮駆動部材(151)をピエゾ電気効果を発揮するピエゾアクチュエータから形成するとともに、伸縮力付与手段をピエゾアクチュエータに高圧電源を加えて強制的に伸縮駆動するピエゾ駆動手段(高圧電源装置,電荷注入回路,電荷放出回路)より形成し、拡縮駆動用信号に基づいてピエゾ駆動手段を駆動させ、ピエゾアクチュエータの伸縮量を自動調整することによってスライド加圧力調整をするように構成しても、実施することができる。
つまり、中空円筒部材151はボルト部材(ボルト部材152と同様な構造)によってスライド17に固定されており、当該スライド17と中空円筒部材151との間にはシリンダ装置140の代わりにピエゾアクチュエータが介装される構成とすれば、ピエゾアクチュエータが介装されたスライド17およびダイハイト調整ねじ機構130間の間隔が下死点位置変化を打消すように調整されるので、プレス運転中でもダイハイト調整ねじ機構130をロック状態としたままスライド加圧力(スライド下死点位置)を迅速・安全かつ正確に自動調整することができるわけである。